JP4837385B2 - 光記録媒体の再生方法、再生装置 - Google Patents

光記録媒体の再生方法、再生装置 Download PDF

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Description

本発明は、光記録媒体の信号を再生する再生方法及び再生装置に関し、特に記録密度を高める際に好適な再生方法等に関する。
従来、光記録媒体としてCDやDVDが広く利用されている。この種の光記録媒体に要求される記録容量は年々増大してきており、その要求に対応する為に様々な工夫がなされているが、近年、更なる記録容量の増大を図るために、ブルーレイ・ディスク等の新たな規格が提案されている。このブルーレイ・ディスク規格では、データの記録・再生に用いるレーザー光のビームスポット径を小さく絞ることを実現している。具体的には、レーザー光を集束する対物レンズの開口数(NA)を大きくするとともに、レーザー光の波長λを短くする。この結果、情報記録層には25GBの情報を記録することできる。
ブルーレイ・ディスク規格における信号の再生は、レーザー光のビームスポットの照射によって得られた再生信号がビット判定レベル(スライスレベル)と交差するか否かで検出される。
また、このビット判定レベルを基準に信号の再生を行うには、再生信号のC/N(carrier to noise ratio)が重要になる。例えば、光記録媒体の記録密度を高めるために記録マークを小さくすると、ビームスポット径によって決定される解像限界に近づくのでC/Nが悪化しやすい。そこで、記録マークのサイズが解像限界に近づいた場合においても、レーザー光の再生パワーを適宜設定することで、C/Nを向上させる技術が提案されている。
特開2005−209299号公報 特開2003−6872号公報
現在、ブルーレイ・ディスクにおいても、情報記録層に25GBを超える情報記録量が要求されるようになってきている。しかし、情報記録層の記録密度を増大させた場合、再生信号の品質が悪化してしまい、スライス検出によって2値を判断する事が困難となるという問題があった。また、スライス検出による2値判断が難しくなる記録密度領域では、信号再生の品質をC/N特性のみで判断することが困難であるという問題もあった。この結果、更なる高密度化に対応するには、仮にC/N特性が悪化した場合であっても、信号再生の品質を向上させることが必要であった。
更に、情報記録層の記録密度を増大させると、光記録媒体に対するレーザー光のチルトマージン、即ち、光記録媒体に対する光軸の傾斜角度誤差の許容量が極端に小さくなるという問題があった。即ち、ブルーレイ・ディスク規格等においては、情報記録量を増大させながらも、チルトマージンの悪化を抑制して、信号品質を高めることが求められていた。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、光記録媒体において、信号の再生品質とチルトマージンの両方を向上させる再生方法等を提供することを目的としている。
本発明者は、鋭意研究により、光記録媒体の再生信号をPRML識別方式で復号すると共に、再生パワーを増大させると、信号の再生特性を向上させることができることを明らかにした。同時に、再生パワーを増大させると、高密度記録時のチルトマージンを大幅に改善させることになることを明らかにした。即ち、上記目的は、本研究者らの鋭意研究によりなされた以下の手段により達成される。
(1)光記録媒体の情報記録層にレーザービームを照射して情報を再生する場合に、前記レーザービームの波長が400〜410nmとされ、前記レーザービームを集光する対物レンズの開口数NAが0.70〜0.90とされ、前記レーザービームの再生パワーが0.50mWより大きく設定され、前記情報記録層に記録されている最短マーク長が125nm以下であるようにし、前記レーザービームの照射により得られる再生信号が、参照クラスが拘束長5(1,2,2,2,1)となるPRML識別方式で復号されることを特徴とする光記録媒体の再生方法。
(2)前記再生パワーが0.60mW以上であることを特徴とする上記(1)記載の光記録媒体の再生方法。
(3)光入射面から前記情報記録層までの距離が0.100mm以下となる前記光記録媒体を再生することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の光記録媒体の再生方法。
(4)前記情報記録層に記録されている最短マーク長が112nm以下であることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれか記載の光記録媒体の再生方法。
(5)前記情報記録層の組成にBi及びOを含むことを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれか記載の光記録媒体の再生方法。
(6)波長が400〜410nmとなるレーザービームを発生するレーザー光源と、前記レーザービームの再生パワーが0.50mWより大きくなるように前記レーザー光源を制御するレーザーコントローラと、前記レーザービームを集光する開口数NAが0.70〜0.90の対物レンズと、前記レーザービームの反射光を検出する光検出器と、前記光検出器によって検出した再生信号を、参照クラスが拘束長5(1,2,2,2,1)となるPRML識別方式で復号するPRML処理装置と、を備える事を特徴とする情報記録層に記録されている最短マーク長が125nm以下となるような光記録媒体に対する再生装置。

本発明の再生方法及び再生装置によれば、光記録媒体の記録容量又は記録密度を増大させた際に、再生信号の品質劣化の抑制とチルトマージンの改善を両立させる事ができるという優れた効果を奏し得る。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態の例について詳細に説明する。
図1には、本発明の実施の形態に係る再生方法を実現する再生装置100が示されている。この再生装置100は、再生に利用するレーザー光Zを発生させるレーザー光源102、レーザー光源102を制御するレーザーコントローラ104、レーザー光Zを光記録媒体1に導く光学機構106、レーザー光Zの反射光を検出する光検出装置108、この光検出装置108の検出情報を、PRML識別方式で復号するPRML処理装置110、光記録媒体1を回転させるスピンドルモータ112、スピンドルモータ112を回転制御するスピンドルドライバ114、特に図示しないCPU(中央演算装置)との間で復号後のデータのやり取りを行う信号処理装置116を備える。
レーザー光源102は半導体レーザーであり、レーザーコントローラ104によって制御されてレーザー光Zを発生させる。光学機構106は、ハーフミラー106Bや対物レンズ106Aを備え、レーザー光Zの焦点を情報記録層に適宜合わせることが可能となっている。なお、ハーフミラー106Bは、情報記録層の反射光を取り出して光検出装置108に導く。光検出装置108はフォトディテクタであり、レーザー光Zの反射光を受光して、この受光を電気信号に変換して再生信号としてPRML処理装置110に出力する。PRML処理装置110では、この再生信号を復号化し、復号化された2値のデジタル信号を信号処理装置116に出力する。
更にこの再生装置100では、レーザー光Zの波長が400〜410nmに設定されており、このレーザー光Zの再生パワーが0.45mWより大きく設定されている。具体的に再生パワーは0.60mWとなっている。また、光学機構106における対物レンズ106Aの開口数NAは0.70〜0.90に設定されている。従って、光記録媒体1の情報を再生するには、レーザー光源102からレーザー光Zを発生させて、このレーザー光Zを光記録媒体1の情報記録層に照射する。レーザー光Zは情報記録層で反射されて、光学機構106を介して取り出されて光検出装置108で電子信号となる。この電子信号はPRML処理装置110及び信号処理装置116経てデジタル信号となり、CPUに提供される。
次に、この再生装置100の再生に用いられる光記録媒体1について説明する。図2(A)に示されるように、この光記録媒体1は外径が約120mm、厚みが約1.2mmとなる円盤状の媒体である。図2(B)に拡大して示されるように、光記録媒体1は、基板10と、単層となる情報記録層20と、カバー層30と、ハードコート層35がこの順に積層されて構成される。
カバー層30及びハードコート層35は光透過性を有しており、外部から入射されるレーザー光Zを透過するようになっている。従って、光入射面35Aから入射されるレーザー光Zは、ハードコート層35とカバー層30をこの順に透過して情報記録層20に到達し、情報記録層20に保持されている情報を再生する。なお、この光記録媒体1では情報記録層20の記録容量が33.3GBに設定されている。
基板10は、厚さ約1.1mmのとなる円盤状の部材であり、その素材としてガラス、セラミックス、樹脂等の種々の材料を用いることができるが、ここではポリカーボネート樹脂を用いている。なお、樹脂としてはポリカーボネート樹脂以外にも、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等を採用することも出来る。中でも加工や成型の容易性から、ポリカーボネート樹脂やオレフィン樹脂が好ましい。また、基板10における情報記録層側の面には、用途に応じて、グルーブ、ランド、ピット列等が形成される。
カバー層30の材料は様々なものを用いることが出来るが、既に述べたように、レーザー光Zを透過させる為に光透過性材料を用いる必要がある。例えば、紫外線硬化性アクリル樹脂を用いることも好ましい。又この光記録媒体1では、カバー層30の厚みが98μmに設定され、ハードコート層35の厚みが2μmに設定されている。従って、光入射面35Aから情報記録層20までの距離が約100μmとなっている。光記録媒体1は、記録容量(本出願時の現状は25GB)を除いて、現状のブルーレイ・ディスク(Blu−ray Disc)の規格に整合していることになる。
情報記録層20はデータを保持する層であるが、データの保持形態としては、予めデータが書き込まれて書換が不能な再生専用型や、利用者による書き込みが可能な記録型がある。また、データの保持形態が記録型の場合、一度データを書き込んだエリアに再度データの書き込みが出来ない追記型と、データを書き込んだエリアに対してデータを消去し、再度書き込みが可能な書換型がある。なお本実施形態では、再生専用型、記録型のいずれであっても構わない。
図3(A)に示されるように、情報記録層のデータ保持形態が再生専用型である場合、基板10に螺旋状のピット列40が形成され、これによって情報が保持される。この場合、情報記録層20には反射膜が形成される。再生時のレーザー光Zは情報記録層20の反射膜によって反射されるが、反射膜の光反射率は、情報記録層20と当接するピット列40によって変化する。従って、反射光の変化状態を計測すれば、ビット列40のデータを読み取ることができる。
また情報記録層20のデータ保持形態が記録型である場合、図3(B)に示されるように、基板10の表面に螺旋状のグルーブ42(ランド44)が形成される。この場合、情報記録層20には、レーザー光Zのエネルギーによって記録マーク46を形成可能な記録膜が形成される。グルーブ42は、データ記録時におけるレーザー光Zのガイドトラックとしての役割を果たし、このグルーブ42に沿って進行するレーザー光Zのエネルギー強度が変調される事によって、グルーブ42上の情報記録層20に記録マーク46が形成される。なお、データ保持態様が追記型の場合は、この記録マーク46が不可逆的に形成され、消去することが出来ない。一方、データ保持態様が書き換え型の場合は、記録マーク46が可逆的に形成され、消去及び再形成可能となっている。なお、ここではグルーブ42上に記録マーク46を形成する場合を示したが、ランド44上に形成しても良く、グルーブ42とランド44の双方に形成することも可能である。
情報記録層20の記録容量は、記録領域(面積)の大きさと、記録密度の大きさの組み合わせによって決定される。記録領域には物理的な限界があるので、本実施形態では、図3(B)に示されるように、各記録マーク46の線密度、即ち単位記録マーク46の螺旋方向長さを小さくすることによって記録密度を大きくする。換言すると、情報記録層20に形成する記録マーク46の螺旋方向の最短マーク長Tを小さくすれば、記録容量が大きくなる。本実施形態では、この最短マーク長Tを124.3nm〜106.5nmに設定しており、具体的には111.9nmに設定している。なお、最短マーク長Tを124.3nmにした場合には、情報記録層20に30GBの情報を保持させることが可能となり、又最短マーク長Tを106.5nmにした場合には、情報記録層20に35GBの情報を保持させることができる。
次に、PRML処理装置110におけるPRML(Partial Response Maximum Likelihood)識別方式について説明する。このPRML識別方式は、光検出装置108で検出された電気的なアナログ信号に基づいて、情報記録層20に記録されている2値データを推測するものである。このPRML識別方式では、再生特性に応じたPR(Partial Response)の参照クラス特性を適宜選択する必要があるが、ここではPRの参照クラス特性として拘束長5(1,2,2,2,1)特性を選択している。拘束長5(1,2,2,2,1)の特性とは、符号ビット「1」に対する再生応答が5ビットを拘束すると共に、この再生応答波形が系列「12221」で表現できることを意味している。実際に記録されている各種符号ビットの再生応答は、この系列「12221」の畳込み演算によって形成されると推定する。例えば、符号ビット系列00100000に対する応答は00122210となる。同様に符号ビット系列00010000に対する応答は00012221となる。従って、符号ビット系列00110000の応答は、上記2つ応答の畳み込み演算となり、00134431となる。符号ビット系列001110000の応答は001356531となる。
このPRのクラス特性によって得られる応答は理想的な状態を仮定したものである。この意味で上記応答は理想応答と呼ばれている。勿論、実際の応答には雑音が含まれているので、この理想応答に対してずれが生じる。従って、雑音を含む実際の応答と、予め想定されている理想応答を比較して、その差(距離)が最も小さくなるような理想応答を選択し、これを復号化信号とする。これをML(Maximum Likelihood)識別という。記録されている符合ビット「1」を再生すると「12221」に近似するような再生信号が得られる場合、拘束長5(1,2,2,2,1)のPRML識別処理を行えば、再生信号→理想応答「12221」→復号後信号「1」として再生できることになる。
ML識別では、理想応答と実際の応答の差を算出するものとしてユークリッド距離を用いる。例えば、実際の再生応答系列A(=A0,A1,・・・,An)と理想応答系列B(=B0,B1,・・・,Bn)間のユークリッド距離Eは、E = √{Σ(Ai − Bi) で定義される。従って、実際の応答と、予め想定された各種理想応答を、このユークリッド距離を用いて比較し、最も小さいユークリッド距離となる理想応答を選択して復号化を行う。

本実施形態に係る再生装置100では、再生信号の処理として参照クラスが拘束長5(1,2,2,2,1)となるPRML識別方式を採用している。また同時に、再生レーザー光Zの再生パワーが0.6mWに設定されており、本出願時におけるブルーレイ・ディスクの再生パワー規格である0.35mW±0.1mW(0.25〜0.45mW)を超えるように設定されている。
このように、拘束長5(1,2,2,2,1)のPRML識別方式を採用した上でレーザーパワーを増大させると、再生信号におけるビットエラーレート(bER)の低減と、チルトマージンの向上を両立させることが可能となる。特に、bERの低減とチルトマージンの向上の効果は、情報記録層20の記録容量が30GB以上、好ましくは33.3GB以上、より望ましくは35GB以上になると顕著となる。即ち、記録容量を増大させても、エラーレートとチルトマージンの双方を合理的な範囲内に収束させる事ができるようになる。
例えば、記録容量が25GBの場合、再生パワーを0.45mW以上に設定してもチルトマージンは殆ど向上しない。従って、従来の記録容量(25GB)の環境では、再生パワーを増大させる必要性は低い。しかし、記録容量が30GBを超えてくると、再生パワーの増大がチルトマージンの向上に貢献する。特に、記録容量が33.3GB以上の光記録媒体1を再生する場合、従来のパワー(0.45mW以下)では十分なチルトマージンが得られないが、レーザーパワーが0.45mWを超えると、チルトマージンが顕著に増大して目標チルトマージン(0.2deg以上)をクリアできるようになる。
また例えば、記録容量を35GB以上にした場合でも、レーザーパワーを0.5mW以上にすることで、ビットエラーレートを許容範囲内(3.1×10−4以下)にすることが可能となる。
[実施例]
記憶容量の異なる4種類(25GB、30GB、33.3GB、35GB)の光記録媒体1を作成し、既に説明した再生装置100を用いて、再生パワーを変化させながら再生信号の品質とチルトマージンの状態を調べた結果を以下に示す。
まず、光記録媒体1の作成するために、射出成型法によって基板10を製造した。なお、この基板10の表面にはトラックピッチが0.32μmとなる螺旋状のグルーブを形成した。基板10の素材としてポリカーボネート樹脂を用い、厚みを1.1mm、直径120mmに設定した。
次に、この基板10をスパッタリング装置にセットし、グルーブが形成される側の表面に対して厚さ50nmとなる情報記録層20を形成した。この情報記録層20の組成にはビスマス(Bi)、酸素(O)を含有させており、組成比率(atm%)をBi:O=32:68に設定した。
情報記録層20が形成された基板10をスピンコート装置にセットし、回転させながらアクリル系紫外線硬化性樹脂を滴下し、これをスピンコートした。これに紫外線を照射することで厚み98μmのカバー層30を完成させた。更に、カバー層30の上に、紫外線/電子線硬化型ハードコート剤をスピンコート法により塗布した後、大気中で3分間加熱して被膜内部の希釈溶剤を除去し、未硬化ハードコート材料層を形成した。この未硬化のハードコート材料層に対して、表面材料溶液をスピンコート法によって塗布した。なお、この表面材料溶液は、フッ素系溶剤(99.5重量部)に、パーフルオロポリエーテルジアクリレート(0.33重量部、分子量:約2000)と、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート(0.17重量部)とを加えて調整したものである。その後、ハードコート材料層を60℃で3分間乾燥し、更に、窒素気流下で電子線を照射してハードコート材料層と表面材料溶液を同時に硬化させ、ハードコート層35を完成させた。なお、電子線の照射については、電子線照射装置Curetron(日新ハイボルテージ株式会社製)を用い、電子線加速電圧を200kV、照射線量を5Mradとした。照射雰囲気の酸素濃度は80ppmであった。このようにして光記録媒体1を得た。
この光記録媒体1を4枚(サンプルNo1〜4)用意して、それぞれに対して25GB、30GB、33.3GB、35GBに対応する記録密度でランダムデータの書き込みを行った。25GBの光記録媒体1の最短記録マーク長は120nmよりも大きくなり、30GB〜35GBの光記録媒体1の最短マーク長は125nm以下、詳細には124.3nm〜106.5nmとなった。
次に、このサンプルNo1〜4の光記録媒体1を再生装置100にセットし、データ転送速度を72Mbps(2X)に設定して、再生を行った。再生時の再生パワーを変化させながら、再生信号の品質(ビットエラーレート)をSbER評価手法で検査した。なお、SbER(Simulated bit Error Rate)とは、PRML識別方式で復号化する際に決定される1番目のユークリッド距離の第1理想応答と、2番目のユークリッド距離の第2理想応答の差を利用した評価手法である。復号化信号として利用されるのは第1理想応答であるが、この1番目のユークリッド距離と2番目のユークリッド距離を差(これをSAM値という)が小さい場合、信号が誤認識されている可能性が高い。従って、複数の再生信号に関してこのSAM値を算出し、この複数のSAM値から得られる正規分布の平均及び標準偏差に基づいて誤認識の発生確率を評価する。ここではパルステック工業株式会社のSbER測定ユニットを利用した。
なお、ここでは特に示さないが、SbER評価手法以外にも、例えばPRSNR評価手法を採用する事もできる。PRSNR(Partial Response Sigal to Noise Ratio)とは、再生信号の信号対雑音比(S/N比)及び実際の再生信号と理想応答の線形性を同時に表現できる評価手法であり、パルステック工業株式会社のPRSNR計測ボード等を用いて評価することが可能である。
以上の評価結果から得られた、エラーレートと再生レーザーパワーの依存関係を図4に示す。拘束長5(12221)のPRML識別方式を用いた再生方式の場合、レーザーパワーが増大するほど、エラーレートが改善することが分かる。特に、レーザーパワーを0.5mW以上に設定すると、30GB以上の光記録媒体1においてエラーレートが減少する。また0.6mW以上にすると25GBを含めた全ての光記録媒体1でエラーレートが減少する。また、35GBの光記録媒体1の場合、0.5mW以上に設定する事で、エラーレートの許容限界(3.1×10−4)を下回る事が可能となっている。
また、サンプルNo1〜4の光記録媒体1における、エラーレートの許容限界(3.1×10 −4 )を下回ことを条件としたチルトマージンと再生レーザーパワーの依存関係を図5に示す。この結果から明らかなように、現状のブルーレイ・ディスク規格の記録容量とされる25GBでは、この規格で定義されている再生レーザーパワーの上限値(0.45mW)を超えてもチルトマージンが向上しない。一方、記録容量が30GB以上の場合、レーザーパワー0.45mWを超えてもチルトマージンが向上していることが分かる。つまり、記録容量を増やす場合、レーザーパワーの増大がチルトマージンの改善に貢献することがわかる。特に記録容量が33.3GB以上の場合、再生レーザーパワーが0.45mW以下だと目標値である0.2degを下回ってしまうので信号の再生が困難となるが、0.45mWを超えるとチルトマージンが著しく向上する。例えば33.3GBの場合は0.5mWで目標値を上回ることができ、35GBの場合は0.6mWで目標値を上回る事が可能となっている。


以上の結果によれば、参照クラスが拘束長5(1,2,2,2,1)となるPRML識別方式を採用した上で、再生レーザー光Zの再生パワーを0.45mWより増大させると再生信号におけるビットエラーレート(bER)の低減と、チルトマージンの向上を合理的に両立させることができることがわかる。特に、bERの低減とチルトマージンの向上の効果は、情報記録層20の記録容量が30GB以上、好ましくは33.3GB以上、より望ましくは35GB以上になると顕著となる。即ち、記録容量を増大させても、エラーレートとチルトマージンの双方を目標範囲内に収束させる事ができるようになる。
以上、本発明の実施形態における再生時のレーザーパワーは、情報記録層に対して供給されるパワーを意味している。また、本実施形態では、光記録媒体における情報記録層が光入射面から100μmに積層される場合に限って示したが、本発明はそれに限定されず、異なる場所に積層されるようにしても良い。
なお、本発明の再生方法や光記録媒体は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明によれば、光記録媒体の記録容量又は記録密度を増大させても、再生信号の品質を高める事が可能となる。
本発明の実施の形態の例に係る光記録媒体の再生装置を示すブロック図 同光記録媒体の構造を示す斜視図及び拡大断面図 同光記録媒体の情報記録層におけるデータ保持形態を示す拡大斜視図 同再生装置による再生時のエラーレートと再生レーザーパワーの依存関係を示す表図 同再生装置による再生時のチルトマージンと再生レーザーパワーの依存関係を示す表図
符号の説明
1 ・・・ 光記録媒体
10 ・・・ 基板
20 ・・・ 情報記録層
30 ・・・ カバー層
35 ・・・ ハードコート層
35A ・・・ 光入射面
100 ・・・ 再生装置
102 ・・・ レーザー光源
104 ・・・ レーザーコントローラ
106 ・・・ 光学機構
108 ・・・ 光検出装置
110 ・・・ PRML処理装置
112 ・・・ スピンドルモータ
114 ・・・ スピンドルドライバ
116 ・・・ 信号処理装置

Claims (6)

  1. 光記録媒体の情報記録層にレーザービームを照射して情報を再生する場合に、
    前記レーザービームの波長が400〜410nmとされ、
    前記レーザービームを集光する対物レンズの開口数NAが0.70〜0.90とされ、
    前記レーザービームの再生パワーが0.50mWより大きく設定され、
    前記情報記録層に記録されている最短マーク長が125nm以下であるようにし、
    前記レーザービームの照射により得られる再生信号が、参照クラスが拘束長5(1,2,2,2,1)となるPRML識別方式で復号されることを特徴とする光記録媒体の再生方法。
  2. 前記再生パワーが0.60mW以上であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体の再生方法。
  3. 光入射面から前記情報記録層までの距離が0.100mm以下となる前記光記録媒体を再生することを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体の再生方法。
  4. 前記情報記録層に記録されている最短マーク長が112nm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の光記録媒体の再生方法。
  5. 前記情報記録層の組成にBi及びOを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の光記録媒体の再生方法。
  6. 波長が400〜410nmとなるレーザービームを発生するレーザー光源と、前記レーザービームの再生パワーが0.50mWより大きくなるように前記レーザー光源を制御するレーザーコントローラと、前記レーザービームを集光する開口数NAが0.70〜0.90の対物レンズと、前記レーザービームの反射光を検出する光検出器と、前記光検出器によって検出した再生信号を、参照クラスが拘束長5(1,2,2,2,1)となるPRML識別方式で復号するPRML処理装置と、を備える事を特徴とする、情報記録層に記録されている最短マーク長が125nm以下となるような光記録媒体に対する再生装置。
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