JP4836553B2 - 磁性発振素子、磁気センサおよび磁気再生装置 - Google Patents

磁性発振素子、磁気センサおよび磁気再生装置 Download PDF

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Description

本発明は、磁性発振素子、ならびに磁性発振素子を用いた磁気センサおよび磁気再生装置に関する。
ハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッドには、スピンバルブ膜を含むGMR素子が広く用いられている。スピンバルブ膜は、磁化自由層(フリー層)、非磁性中間層(スペーサ層)、磁化固着層(ピンド層)および反強磁性層を積層した構造を有する。スピンバルブ膜では、外部磁場によりフリー層の磁化のみが回転し、ピンド層とフリー層の磁化方向の相対的な角度が変化する。その相対的な角度の変化に伴って抵抗が変化する(巨大磁気抵抗効果)。GMR素子は抵抗変化が大きく、抵抗変化に伴う電圧変化を検出することによって外部からの磁気信号たとえば磁気記録媒体からの信号磁場を高感度に検出することができる。
ところで、近年、磁気記録媒体の高密度化により記録ビットのサイズがますます小さくなってきており、GMR素子のサイズも記録ビットと同程度に微細になっている。素子の微細化に伴い、磁性体の微小磁化の熱揺らぎに起因して生じる熱雑音(マグノイズ)によるS/N比の低下が顕著に現れるようになってきている。このため、検出電圧が熱的なノイズに埋もれにくい、新たな原理で信号磁場を検出できる素子を開発することが必要である。
これまでに、GMR素子のような磁気多層膜における磁化の運動を、磁場によってではなく、電流によって制御する技術が開示されている(特許文献1)。この技術においては、スピントランスファという概念が本質的である。GMR素子に含まれるフリー層/非磁性層/ピンド層という3層構造は、スピントランスファを説明するのに好適な例である。各層の膜面に垂直にフリー層からピンド層に電流を流す場合、電子はピンド層からフリー層へ流れていく。このとき、電子の持つスピンは、まずピンド層内の磁化と相互作用し、ピンド層を通過した電子の流れは、ピンド層の磁化の向きにスピン偏極した電子流となる。そのスピン偏極電子流とフリー層内の磁化とが相互作用する。その結果、スピン偏極電子流によってフリー層の磁化が回転する。つまり、電流によって、フリー層内の磁化の回転を誘発することが可能である。
上記のフリー層/非磁性層/ピンド層構造のような磁気多層膜に定常的に通電した場合に、フリー層の磁化がどのような運動をするのかについては、今なお、産業的にも学術的にも議論の渦中にあり、素子の詳細な構造や磁化に働く有効磁場などの多彩な要因に依存して、磁化運動は多彩な振る舞いを見せる。たとえば、ある条件下で、定常電流によってフリー層の磁化の永続的な歳差運動を励起でき、したがってフリー層/非磁性層/ピンド層構造のような磁気多層膜をマイクロ波発振源として応用できるとの報告がなされている(非特許文献1)。
米国特許第5,695,864号明細書 Nature, 425, 380 (2003)
ところで、たとえば上記の磁化の歳差運動状態のような、定常電流によって励起された磁化の定常な運動状態は、非平衡定常状態と見ることができる。歳差運動状態、さらには、電流誘起の何らかの運動状態では、電流からのエネルギーによって、磁化は平衡状態から離れたエネルギー的に高い状態に移っている。エネルギー的に高い状態は、低い状態に比べて、熱的ゆらぎの影響を受けにくい。熱ゆらぎは、熱という形のエネルギーであり、エネルギー的に高い状態にとって、熱ゆらぎのスケールは相対的に小さくなるからである。
一方、従来のGMR素子を用いた磁気ヘッドにおける外部磁場による磁化回転は、外部磁場によって変化したエネルギー的安定点への緩和過程を利用しており、一旦緩和してしまうと、その磁化回転に寄与するエネルギーは熱的な揺らぎによるエネルギーのみである。そのために、電流を駆動力とする磁化運動に比べてはるかに熱的ゆらぎの影響を受けやすい。
本発明の目的は、素子それ自体がマイクロ波の発振源としての機能を有し、電流誘起の磁化の非平衡定常状態を活かして信号磁場を検出することで熱ゆらぎによるS/N比低下を避けることができる磁性発振素子、磁気センサおよび磁気再生装置を提供することにある。
本発明の一態様に係る磁性発振素子は、第1の強磁性層を含み、第1の磁気共鳴周波数f1を有する第1の磁気共鳴層と、第2の強磁性層を含み、f1以上の大きさの第2の磁気共鳴周波数f2を有する第2の磁気共鳴層と、前記第1および第2の磁気共鳴層間に形成された非磁性中間層と、前記第1および第2の磁気共鳴層の膜面に垂直に、前記第2の磁気共鳴層から前記第1の磁気共鳴層の方向へ電流を通電する手段とを有し、素子が発振を起こす閾値電流密度J c を後述する(5)式で表わしたとき、前記第2の磁気共鳴層にさらなる外部磁場が作用していない場合に、前記第2と第1の磁気共鳴周波数の差(f −f )が、第1の磁気共鳴層が有する磁気共鳴線幅の半分よりも小さく、かつ前記第1および第2の磁気共鳴層に通電される電流の電流密度JがJ≧J を満たすことを特徴とする。
本発明の他の態様に係る磁気センサは、上記の磁性発振素子と、前記第1の磁気共鳴層の第1の磁化と前記第2の磁気共鳴層の第2の磁化との磁性発振状態の外部磁場に対する変化を検出する外部磁場検出手段とを有することを特徴とする。
本発明のさらに他の態様に係る磁気センサは、上記の磁気センサと、磁気記録媒体とを有することを特徴とする。
本発明によれば、素子それ自体がマイクロ波の発振源としての機能を有する磁性発振素子を用い、検出電圧が熱的なノイズに埋もれにくい磁場検出を可能にする磁気センサおよび磁気再生装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、第1の強磁性層を含み、第1の磁気共鳴周波数f1を有する第1の磁気共鳴層と、第2の強磁性層を含み、f1以上の大きさの第2の磁気共鳴周波数f2を有する第2の磁気共鳴層と、前記第1および第2の磁気共鳴層間に形成された非磁性中間層と、前記第1および第2の磁気共鳴層の膜面に垂直に、前記第2の磁気共鳴層から前記第1の磁気共鳴層の方向へ電流を通電する手段とを有する。
本発明の実施形態に係る磁性発振素子において、第1および第2の磁気共鳴層に含まれる第1および第2の強磁性層は、それぞれ磁化を有しており、共に自由に回転できるフリー層である。すなわち、フリー層/非磁性層/ピンド層を基本構造に持つ従来のGMR素子とは異なり、本発明の実施形態に係る磁性発振素子はフリー層/非磁性層/フリー層を基本構造としている。2つのフリー層のそれぞれの磁化は、通電下においてスピントランスファによって互いに相互作用する。そして、ある閾値以上の電流によって、2つの磁化が共鳴的に運動する磁気励起が現れる。この励起が、マイクロ波発振に他ならない。この磁気励起状態は、電流誘起の非平衡定常状態である。なお、第1および第2の磁気共鳴層を一層以上の強磁性層とゼロ層以上の非磁性層と一層以上の反強磁性層からなる交換結合膜で形成することもできる。
本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、通電下においてさらに外部磁場が作用することによって、第1および第2の磁気共鳴層の第1および第2の磁化がそれぞれ互いに共鳴的に運動するという機能を有しており、第2と第1の磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が、第1の磁気共鳴層が有する磁気共鳴線幅の半分よりも小さい。外部磁場がない場合には、第1および第2の磁化が共にほぼ静止した静止状態が現れる。素子に外部磁場が作用すれば磁気励起状態が発現し、外部磁場がなければ静止状態が現れるので、外部磁場の有無を磁気励起状態および静止状態によって区別することができる。すなわち、本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、磁化の運動状態を検出することにより、磁気センサとして機能する。運動状態の相異は、磁気抵抗効果に伴う素子抵抗値の相異をもたらす。したがって、磁化の運動状態の変化は素子電圧の変化として現れる。それゆえ、本発明の実施形態に係る磁気センサは、磁化の運動状態を反映した素子電圧を検出することによって、外部磁場の有無を検出することができる。
このように、本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、通電下において第1および第2の磁化が共鳴的に運動する磁気励起状態が発現し、素子はマイクロ波発振源としての機能を持つ。さらに、本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、その磁気励起状態が非平衡定常状態であり、その状態を利用して外部磁場を検出できるため、磁気センサとして用いた場合に検出電圧が熱的なノイズに埋もれにくい。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以後の説明では、共通の構成に同一の符号を付すものとする。また、模式図においては、形状、寸法、比などが実際の装置とは異なる箇所も含んでいるが、実際の素子製造の際には、以下の説明と公知の技術の参酌により適宜変更することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る磁性発振素子を示す断面図である。この磁性発振素子は、第1の磁気共鳴周波数f1を有する第1の磁気共鳴層1と、f1以上の大きさの第2の磁気共鳴周波数f2を有する第2の磁気共鳴層2と、第1および第2の磁気共鳴層1、2の間に形成された非磁性中間層3とを備えている。第1および第2の磁気共鳴層1、2には、それぞれ、少なくとも1層の強磁性層が含まれており、磁気共鳴層1は第1の強磁性層、磁気共鳴層2は第2の強磁性層を含む。したがって、第1および第2の磁気共鳴層1、2は、それぞれ、第1の磁化M1、第2の磁化M2を有する。そして、これらの2つの磁化は、共に自由に回転できる。第1の磁気共鳴層1、非磁性中間層3、第2の磁気共鳴層2の積層膜の上下には、積層膜の膜面に垂直な方向に電流を供給するための1対の電極層4、5が形成されている。電極層4、5には電源6が接続されており、第2の磁気共鳴層2から第1の磁気共鳴層1の方向へ電流Iが通電される。つまり、本発明の実施形態に係る磁性発振素子においては、磁気共鳴周波数が大きいほうから、磁気共鳴周波数が小さいほうの向きに電流Iが通電される。したがって、電子は第1の磁気共鳴層1から第2の磁気共鳴層2の方向へ流れる。なお、図1には、説明のためにx軸、y軸、z軸を示している。電子はx軸に沿う方向に流れる。
第1および第2の強磁性層の材料としては、Fe,Co,Niまたはそれらを含む合金を用いることができる。非磁性中間層には、V,Cr,Nb,Mo,Ru,Re,Os,Ir,Cu,AgおよびAuからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含有する非磁性材料を用いることができる。また、非磁性中間層には、B,Si,Ge,Ta,W,Nb,Al,Mo,P,V,As,Sb,Zr,Ti,Zn,Pb,Th,Be,Cd,Sc,La,Y,Pr,Cr,Sn,Ga,In,Rh,Pd,Mg,Li,Ba,Ca,Sr,Mn,Fe,Co,Ni,Rbおよび希土類金属からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する酸化物、酸窒化物または窒化物を用いることもできる。電極層には、Ru,Cu,Ag,Auなどの非磁性金属材料を用いることができる。
まず、磁気共鳴周波数について説明する。磁性体の動的特性を調べる手段として、強磁性共鳴吸収現象が知られている。これは、磁性体に振動磁場を印加することによって、磁化の歳差運動が励起される現象である。図2に、磁気共鳴吸収パワーの振動磁場の周波数に対する依存性の典型例を示した。共鳴吸収パワーは、図2のようにピーク構造をとる。その共鳴吸収ピークを与える周波数が、磁気共鳴周波数fRである。また、ピークの半値幅を与えるΔfRは、磁化のエネルギー損失の目安となる量であり、磁気共鳴線幅と呼ばれる。fRおよびΔfRは、磁化に作用する磁場に依存し、特に、本発明に関わる磁気共鳴層のような薄膜形状の場合、fRおよびΔfRはほぼ下記の(1)式および(2)式で見積もることができる。
Figure 0004836553
ここで、γ(≒1.76×10rad/(Oe・sec))は磁気回転比、αはギルバート減衰係数で磁化のエネルギー損失に関わる量である。また、4πM(M:飽和磁化)は膜面垂直方向の異方性磁場、H’は4πM 以外の形状異方性磁場、バイアス磁場、記録媒体からの磁場などを表す。これらの諸量は磁性材料、膜厚、外的磁場に依存するため、fおよびΔfは磁性材料、膜厚、外部磁場が変化すればそれらに応じて変化する。
本発明の実施形態に係る磁性発振素子では、第2の磁気共鳴周波数f2が、第1の磁気共鳴周波数f1以上の大きさを有する。つまり、f2≧f1である。さらに、通電する電流の向きは、大きいfRすなわちf2を有する磁気共鳴層から、小さいfRすなわちf1を有する磁気共鳴層に向かう方向である。この電流の向きに関する条件は、本発明に係る磁性発振素子を磁気センサとして用いるための磁化運動発現に不可欠な条件である。この条件下で、本発明の実施形態に係る磁性発振素子においては、ある閾値以上の電流を通電することで、2つの磁化M1、M2がスピントランスファによって互いに相互作用し、共鳴的に運動する磁気励起状態が現れる。
スピントランスファによって磁化M1、M2が互いに及ぼしあう相互作用は、下記(3)式に示す、それぞれの磁化に作用するトルクとして表すことができる(J. Magn. Magn. Mater., 159, L1 (1996) 参照)。
Figure 0004836553
ここで、i=1,2であり、それぞれ第1および第2の磁気共鳴層に関する量にラベルしている。それゆえ、Γ1はM2がM1に及ぼすトルク、Γ2はM1がM2に及ぼすトルクである。(3)式で、hはプランク定数、eは電気素量、Jは電流密度、diは強磁性層の膜厚、Pはスピン偏極率である。(3)式のトルクはスピントランスファトルクと呼ばれる。
本発明者らは、下記(4)式に示す、スピントランスファトルク項を付加したランダウ・リフシッツ・ギルバート方程式(以下、LLG方程式)を用いて、2つの磁化M1、M2の運動が電流密度Jおよび磁気共鳴周波数の差異f2−f1にどのように依存するのか計算し評価した。
Figure 0004836553
ここで、Heffは磁化に作用する有効磁場であり、外部磁場、異方性磁場などを含んでいる。i=1,2である。
図3は、無通電下で、磁化M1、M2が共に図1のz方向、つまり面内の特定の方向にエネルギー的安定点を有している場合の計算結果を示している。図3には、電流密度Jと、第1と第2の磁気共鳴周波数の差(f2−f1)の座標系において、磁化の静止状態が現れる領域と磁化の励起状態が現れる領域を示す。図3におけるJcやΔf1/2などの値は、磁場、膜厚などの諸パラメタに依存する量であり、それらの値が変われば変化するのであるが、図3はそうしたパラメタの数値に依存することのない、磁化運動の一般的な相図を表している。図3におけるJに関し、電流を図1のように第2の磁気共鳴層2から第1の磁気共鳴層1への向き(つまり、−x方向)に通電する場合の電流密度を正としている(J>0)。
図3において、領域Gでは、図4に示すような、磁化M、Mが共に静止した状態が現れる。領域Eでは、たとえば図5に示すような磁化M、Mが運動する励起状態が現れる。すなわち、領域Eは素子がマイクロ波を発振する領域を表している。図5には磁化の向きm=M/Mおよびm=M/Mの軌跡をプロットしている。mix、miy、mizは磁化の向きのx,y,z成分を表している。図5のような運動は共鳴的であり、電流が通電されている間、磁化M、Mはスピントランスファの効果が繰り込まれた同一周波数で周回し続ける。すなわち、2つの結合した非線形振り子における周波数ロッキングのような状態である。そして、この磁気励起状態は、通電による電流からのエネルギーによって平衡状態から離れた状態であり、エネルギー的に高い状態である非平衡定常状態であって熱的ゆらぎの影響を受けにくい。図3で、Bは、領域Gと領域Eとを隔てる境界線を現している。また、J≧Jであることは、素子が発振するための必要条件である。Jは閾値電流密度であり、下記の(5)式で与えられる。
Figure 0004836553
(αは第1の強磁性層の磁化のギルバート減衰係数、hはプランク定数、eは電気素量、M は第1の強磁性層の飽和磁化、d は第1の強磁性層の膜厚、Hは第1の強磁性層の磁化に作用する有効磁場、Pは第1の強磁性層を流れるスピン偏極電流のスピン偏極率である。)
ここで、(5)式の右辺の諸量は第1の磁気共鳴層に関するものである。図3では、低電流密度域を描いており、J≧Jcであっても、励起が生じない領域Gが存在しているが、J>>Jcであるような高電流密度域では、領域Gは消失していく。つまり、f2≧f1かつJ>>Jcあれば、素子は必ず発振する。したがって、本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、第1および第2の磁気共鳴層に垂直な方向で、かつ、第2の磁気共鳴層から第1の磁気共鳴層の方向に通電することで発振する。
本発明の実施形態に係る磁性発振素子においては、第1と第2の磁気共鳴周波数の差(f2−f1)が、第1の磁気共鳴層が有する磁気共鳴線幅の半分よりも小さい。再び、図3を参照しながら説明する。図3におけるΔf1/2は、第1の磁気共鳴層が有する磁気共鳴線幅の半分を表しており、(2)式から導かれる下記の(6)式で与えられる。
Figure 0004836553
ここで、(6)式の右辺の諸量は第1の磁気共鳴層に関するものである。図3は第1および第2の磁気共鳴周波数に関してf−f<Δf/2であれば、J≧Jである電流密度域において、静止状態を与える電流密度域が必ず存在することを示している。そして、たとえば点Pで示したような、静止状態を与える電流密度値が存在する。点Pにおけるf−fを有する素子は、点Pにおける電流密度値で発振することはない。ところが、上述したように、磁気共鳴周波数fは磁化に作用する磁場に依存する量であって、さらなる外部磁場たとえばδHによって値を変えることができる。これは、(1)式において、H’→H’+δHとすることによって、f→f+δfのようにできるという意味である。したがって、たとえば、fを有する第2の磁気共鳴層のみに外部磁場δH をさらに作用させることによりf→f+δfとするとともにfを固定とすることで、f−fを変化させ、素子の状態を点Pから点Qに移すことができ、素子を発振させることが可能である。そのため、本発明の実施形態に係る磁性発振素子は、通電下で外部磁場をオンオフすることでマイクロ波発振をオンオフすることが可能な素子でもある。
本発明の実施形態に係る磁性発振素子を磁気センサとして用いる場合、外部磁場のオンオフによる発振のオンオフを利用して外部磁場の読み取りを行う。本発明に係る磁気センサでは、外部磁場の有無を図5のような磁気励起状態および図4のような静止状態によって区別する。再び図3の例で述べれば、点Qと点Pでの磁化の運動状態の相異を検出することで外部磁場をセンスする。その運動状態の検出は、通電下での素子抵抗の変化を検出することでなされる。素子抵抗は、従来のGMR素子と同様にMR効果に従い、磁化のなす角に依存する。磁化のなす角が大きいほど素子の抵抗値は大きくなる。本発明の実施形態に係る素子における磁化のなす角は、第1の磁気共鳴層内の第1の磁化と第2の磁気共鳴層内の第2の磁化とのなす角である。図4および図5に関していうと、静止状態における磁化のなす角の時間平均は0°、励起状態における磁化のなす角の時間平均は90°であり、素子抵抗の差異が生じる。したがって、通電下で、磁化の運動状態の変化を反映した素子抵抗の変化を検出することで外部磁場を検出することができる。
ところで、磁気励起状態では、通電による電流からのエネルギーによって、磁化が平衡状態から離れたエネルギー的に高い状態に移っており、熱的ゆらぎの影響を受けにくい。そのため、本発明の実施形態に係る磁気センサでは、検出電圧が熱的ノイズに埋もれにくく、高S/Nの外部磁場読み取りが実現する。
なお、静止状態と励起状態での素子抵抗の差異を大きくして外部磁場読み取りの感度を大きくするには、2つの磁化の静止状態は、磁化が互いに平行(なす角が0°)で素子抵抗が最小値をとる状態と、磁化の反平行(なす角が180°)で素子抵抗が最大値をとる状態であることが望ましい。本発明の実施形態に係る磁性発振素子においては、第1および第2の強磁性層が共に同一方向に面内一軸異方性を有するようにすることで、磁化が平行および反平行の状態が必ず存在するようにすることができる。また、バイアス磁性膜を磁気共鳴層の上部、下部、両側面の少なくとも一部に配置して、第1および第2の強磁性層が有する面内一軸異方性の向きにバイアス磁場を作用させることで、磁化の平行および反平行状態の存在を確固たるものにすることができる。
図6、図7、図8は、それぞれ、バイアス磁性膜を磁気共鳴層の上部、下部、両側面に配置した磁性発振素子を示す断面図である。各図において、21はバイアス磁性膜、22は絶縁層を示す。10は第1の磁気共鳴層1、非磁性中間層3および第2の磁気共鳴層2の積層膜である。本発明の実施形態に係る磁性発振素子を磁気センサとして用いる場合には、積層膜10が外部磁場をセンスする主要な部分であって、センス部と呼ぶべき部分である。
図6は、上部の電極層5の内部にバイアス磁性膜21を配置した磁性発振素子を示す断面図である。下部の電極層4上に、第1の磁気共鳴層1、非磁性中間層3および第2の磁気共鳴層2を含む積層膜10が形成されている。積層膜10の側面を覆うように絶縁層22が形成されている。積層膜10および絶縁層22上には上部の電極層5が形成されている。上部の電極層5の内部にバイアス磁性膜21が配置されている。バイアス磁性膜21から、第1および第2の磁気共鳴層1、2にバイアス磁場が回り込む。そのバイアス磁場の方向を第1および第2の強磁性層が有する面内一軸異方性の向きにすることで、磁化の静止状態としての平行、反平行状態の存在を確固たるものにすることができる。
バイアス磁性膜21は、電極層5内の通電の妨げにならないように、導電性の高い硬磁性膜、または強磁性層と反強磁性層とを積層した交換結合膜で形成することが望ましい。硬磁性材料としては、Co−Pt合金、Fe−Pt合金、遷移金属−希土類合金などが挙げられる。絶縁層22は、磁性発振素子を磁気センサとして用いる上で不可欠なものではないが、外部磁場検出において余分なノイズを除去する役割を果たす。積層膜10の側面に絶縁層22を設けることにより、積層膜10の外に電流が漏れることがなくなる。すなわち、絶縁層22によって分流が回避され、余分なノイズが除去される。絶縁層22には高抵抗の非磁性材料が用いられる。
図7は、下部の電極層4の内部にバイアス磁性膜21を配置した磁性発振素子を示す断面図である。バイアス磁性膜21から、第1および第2の磁気共鳴層1、2にバイアス磁場が回り込む。そのバイアス磁場の方向を第1および第2の強磁性層が有する面内一軸異方性の向きにすることで、磁化の静止状態としての平行、反平行状態の存在を確固たるものにすることができる。バイアス磁性膜21は、電極層4内の通電の妨げにならないように、導電性の高い硬磁性膜、または強磁性層と反強磁性層とを積層した交換結合膜で形成することが望ましい。積層膜10の側面を覆うように絶縁層22を設けることによって分流が回避され、余分なノイズが除去される。
図8は、積層膜10の両側面にバイアス磁性膜21を配置しバイアス磁性膜21上に絶縁層22を積層した磁性発振素子を示す断面図である。図8では、本発明の実施形態に係る磁気センサをHDD用磁気ヘッドへ応用することを考慮して、いわゆるハード・アバッテッド構造を採用している。積層膜10の両側面にバイアス磁性膜21を配置することにより、第1および第2の磁気共鳴層1、2にバイアス磁場が回り込む。そのバイアス磁場の方向を第1および第2の強磁性層が有する面内一軸異方性の向きにすることで、磁化の平行、反平行状態の存在を確固たるものにすることができる。バイアス磁性膜21上に絶縁層22が積層されているため、バイアス磁性膜21へ電流が分流するのを防ぐことができる。絶縁層22は2層以上の絶縁層を含む複合膜であってもよい。
バイアス磁性膜21は、バルクハウゼンノイズを抑制する効果も有する。磁気異方性が制御されることによって、磁気共鳴層内の強磁性層を単磁区化することができるからである。したがって、バイアス磁性膜を備えた磁性発振素子により、ノイズがより低減された高感度の磁気再生が実現される。
本発明の実施形態に係る磁性発振素子を磁気センサとして機能させるために最も簡素な素子構造として、第1の磁気共鳴層1および第2の磁気共鳴層2を全く同一の構造にすることが考えられる。すなわち、同一の材料を用い、膜厚、形状などを揃えることによって、第1および第2の磁気共鳴層1、2がそれぞれ有する磁化およびそれらに作用する内的な磁場を等価にする。この場合、f2=f1であり通電下で磁化は静止状態にあるが、素子に外部磁場をさらに作用させることで、素子をf2>f1の状態(図3における領域E)にすることができ磁気発振させることができる。このように第1の磁気共鳴層1および第2の磁気共鳴層2を全く同一の構造にした磁性発振素子を用いて外部磁場を検出することが可能である。ところが、実際の素子製造においては、2つの磁気共鳴層を全く同一の構造になるように形成することは非常に困難である。積層膜の形成においては、常に結晶格子の歪みなどが生じてしまうからである。しかし、磁気共鳴層を強磁性層/反強磁性層からなる交換結合膜や強磁性層/非磁性層/反強磁性層からなる交換結合膜などで構成することにより、f2≒f1となるように磁気共鳴周波数を調節することができる。また、それ以外にも第1および第2の磁気共鳴周波数f1、f2が所望の条件を満たすように、磁気共鳴層を交換結合膜で形成してもよい。
本発明の他の実施形態に係る磁性発振素子は、第1および第2の磁気共鳴層1、2のうち少なくとも一方が、一層以上の強磁性層と一層以上の反強磁性層を含む交換結合膜、または一層以上の強磁性層と一層以上の非磁性層と一層以上の反強磁性層を含む交換結合膜で形成されている。磁気共鳴層を交換結合膜で形成することにより、反強磁性層からの交換磁場によって、強磁性層内の磁化に作用する磁場が変化し、磁気共鳴層が有する磁気共鳴周波数を変化させることができる。つまり、交換磁場を用いて、第1および第2の磁気共鳴周波数f1、f2が所望の条件を満たすようにすることが可能である。
図9は、第1および第2の磁気共鳴層1、2を共に、強磁性層と反強磁性層からなる交換結合膜で形成した磁性発振素子を示す断面図である。第1の磁気共鳴層1は反強磁性層41と強磁性層31とからなる交換結合膜で形成され、第2の磁気共鳴層2は強磁性層32と反強磁性層42とからなる交換結合膜で形成されている。強磁性層31が第1の強磁性層、強磁性層32が第2の強磁性層である。このように磁気共鳴層を交換結合膜とすることによって、強磁性層内の磁化に内的に作用する磁場を交換磁場によって変化させ、第1および第2の磁気共鳴周波数f1、f2を調節することができる。なお、反強磁性層の材料としては、IrMn,FeMn,PtMn,PdMn,NiMn,PdPtMnなどを用いることができる。
ところで、一般に、強磁性層/反強磁性層からなる交換結合膜は、GMR素子などに用いられている従来のスピンバルブ膜などで広く利用されている。そうしたスピンバルブ膜では、反強磁性層は強磁性層の磁化を固着するために設けられている。つまり、強磁性層をピンド層にするべく設けられている。一方、本発明に係る磁気共鳴層としての交換結合膜においては、反強磁性層は交換磁場によって強磁性層内の磁化に作用する磁場を制御するために設けられており、磁化をピン止めするほどに強力な交換磁場は必要ない。交換磁場の大きさは、交換結合膜における強磁性層または反強磁性層の膜厚によって制御できる。たとえば、強磁性層の膜厚を大きくすると、交換磁場を実効的に小さくすることができる。
また、交換磁場の大きさを制御するために、強磁性層と反強磁性層との間にCu,Ruなどの非磁性層を挟んでもよい。非磁性層によって、強磁性層/反強磁性層の界面を乱したり、強磁性層を反強磁性層から離したりすることができ、強磁性層内の磁化に働く交換磁場の大きさを調節することができる。
図10は、第1の磁気共鳴層1を反強磁性層41と強磁性層31からなる交換結合膜で形成し、第2の磁気共鳴層2を強磁性層32、非磁性層52、反強磁性層42からなる交換結合膜で形成した磁性発振素子を示す断面図である。非磁性層52によって、反強磁性層42と強磁性層32との間の交換結合の大きさを調節することができる。
図9、図10以外にも、例えば、第1および第2の磁気共鳴層1、2を共に、強磁性層、非磁性層、反強磁性層からなる交換結合膜で形成することによって、第1および第2の強磁性層内の磁化に作用する磁場を調節し、第1および第2の磁気共鳴周波数f1、f2が所望の条件を満たすようにすることが可能である。また、交換結合膜を形成する強磁性層、非磁性層、反強磁性層は、それぞれ単層である必要はなく、複数の層を積層したものであってもよい。
本発明の他の実施形態に係る磁性発振素子は、第1の磁気共鳴層、非磁性中間層、第2の磁気共鳴層を含む積層膜が、非磁性層を介して複数積層されている。図11はこのような構造を有する磁性発振素子を示す断面図である。図11に示されるように、第1の磁気共鳴層1、非磁性中間層3および第2の磁気共鳴層2を含む積層膜10が、非磁性層71を介して複数積層されている。さらに、複数の積層膜10と複数の非磁性層71からなる積層構造の上下に、膜面垂直方向に電流を供給するための1対の電極層4、5が形成されている。非磁性層71の材料としては、Cu,Ruなどの非磁性金属を用いることが望ましい。この磁性発振素子では、各々の積層膜10において通電によって磁気励起が生じるが、複数の積層膜10を非磁性層71を介して積層したことによって、通電下で各々の積層膜10が共鳴的に結合して素子全体の出力が大きくなる。
以下、本発明の実施例について説明する。
(第1の実施例)
本実施例においては、図9に示した構造の磁性発振素子を作製した。シリコン基板上にスパッタリングにより各層を成膜し、電子線リソグラフィーによりパターニングした。厚さ20nmのCuからなる下部の電極層4、厚さ10nmのIrMnからなる反強磁性層41、厚さ3nmのCoからなる強磁性層31、厚さ5nmのCuからなる非磁性中間層3、厚さ3nmのCoからなる強磁性層32、厚さ12nmのIrMnからなる反強磁性層42、厚さ15nmのCuと厚さ20nmのAuからなる上部電極層5を成膜した。すなわち、第1の磁気共鳴層1はIrMn(10nm)/Co(3nm)、第2の磁気共鳴層2はCo(3nm)/IrMn(12nm)で形成されている。Coからなる強磁性層31、32、Cuからなる非磁性中間層3、IrMnからなる反強磁性層41、42の各層の各接合面積は約90×160nm2とした。
強磁性層31、32を形成する際に、膜面内(図9におけるz方向)に約1200Oeの一様磁場を印加しながら成膜することで、これらの膜に面内一軸異方性を付与した。また、反強磁性層41、42を形成する際にも約700Oeの一様磁場を印加しながら成膜することで、強磁性層が有する面内一軸異方性と同一方向に、強磁性層と反強磁性層との間の交換磁場が作用するようにした。
作製した素子をコプレナガイドの一端に設置し、素子の膜面に垂直な方向(図9におけるx方向)に振動磁場を印加して、素子の磁気共鳴吸収スペクトルをスペクトラムアナライザーによって調べた。共鳴吸収パワーに2つのピークが現れ、第1の磁気共鳴層1の磁気共鳴周波数f1に対応するピークが25.1GHzに、第2の磁気共鳴層2の磁気共鳴周波数f2に対応するピークが25.3GHzに現れた。磁気共鳴層1の共鳴吸収ピークの磁気共鳴線幅Δf1は、約0.7GHzであった。
電極層5から電極層4の方向に通電し、ネットワークアナライザーによって、素子からのマイクロ波発振を調べた。電流値を0〜6mA(電流密度では約0〜4×107A/cm2)の範囲に設定してマイクロ波発振を確認しようとしたが、微弱なノイズが観測されるのみであった。次に、通電した状態で、z方向に約100Oeの磁場を主に第2の磁気共鳴層2に作用するように印加しながら、電流値を変化させた。電流値を約1.8mA以上にすると、周波数が約24GHzの大きなマイクロ波発振が現れた。そして、通電の間、その発振信号が安定に続いた。また、20nsecのパルス幅を持った、ほぼ矩形のパルス磁場を図9における素子のz方向に印加した場合、約2mA以上の電流値のときに、約5nsecのマイクロ波発振信号が確認された。
本実施例の磁性発振素子は、外部磁場(本実施例ではパルス磁場)の有無によって、素子のマイクロ波発振のオンオフを制御できることが分かった。
(第2の実施例)
磁気センサ、特に磁気ヘッドとして用いることができる磁性発振素子について説明する。図12(a)および(b)に、本発明に係る磁気発振素子を組み込んだ磁気ヘッドの断面図を示す。説明を容易にするために、図中に互いに直交するx軸、y軸、z軸を表示する。x軸は記録媒体上のトラックに沿う方向を示し、y軸は図示しない磁気記録媒体に向かう方向を示し、z軸はトラック幅方向を示す。図12(a)は、媒体対向面にほぼ平行な方向に切断した断面図であり、図12(b)は媒体対向面に対して垂直な方向に切断した断面図である。
図12(a)および(b)の磁気ヘッドを構成する磁性発振素子は、ハード・アバッテッド構造を有し、センス部となる積層膜10の上下には、下部電極層4と上部電極層5とがそれぞれ設けられている。図12(a)に示すように、積層膜10の両側面には、バイアス磁性膜21と絶縁層22が積層して設けられている。図12(b)に示すように、積層膜10の奥側には絶縁層23が形成されている。また、積層膜10の媒体対向面には保護層24が設けられている。
図12(a)および(b)において、磁気共鳴周波数が小さい第1の磁気共鳴層1は、第2の磁気共鳴層2より下部に積層されている。電流は、積層膜10の上下に配置された電極層5、4によって、上から下へ向かう方向(−x方向)に通電される。本実施例の磁気ヘッドによれば、第1および第2の磁気共鳴層1、2が有する磁化が電流誘起の共鳴的な運動をすることを利用して外部磁場を検出するために、検出電圧が熱的なノイズに埋もれにくく、高感度の磁気再生が可能となる。
なお、図12(a)および(b)においては、センス部となる積層膜10として図1に示したものを用いているが、これに限らず、図9、図10または図11に示した積層膜を用いてもよい。また、図12(a)および(b)においては、バイアス磁性膜をセンス部となる積層膜10の両側面に配置したハード・アバッテッド構造の磁性発振素子を用いているが、図6または図7に示したように、バイアス磁性膜および絶縁層をセンス部となる積層膜の上部または下部に配置してもよい。
(第3の実施例)
本発明に係る磁性発振素子を搭載した磁気再生装置について説明する。本発明に係る磁性発振素子または磁気センサを、たとえば記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込んで磁気記録再生装置に搭載することができる。
図13に本発明の実施形態に係る磁気記録再生装置150の斜視図を示す。磁気ディスク(磁気記録媒体)151は、スピンドル152に装着されスピンドルモータにより矢印Aの方向に回転される。磁気ディスク151の近傍に設けられたピボット153には、アクチュエータアーム154が保持されている。アクチュエータアーム154の先端にはサスペンション155が取り付けられている。サスペンション155の下面にはヘッドスライダ156が支持されている。ヘッドスライダ156には、たとえば図12(a)および(b)を参照して説明した磁気ヘッドが搭載されている。アクチュエータアーム154の基端部にはボイスコイルモータ157が形成されている。
磁気ディスク151を回転させ、ボイスコイルモータ157によりアクチュエータアーム154を回動させてヘッドスライダ156を磁気ディスク151上にロードすると、磁気ヘッドを搭載したヘッドスライダ156の媒体対向面(ABS)が磁気ディスク151の表面から所定の浮上量をもって保持される。なお、ヘッドスライダ156は磁気ディスク151と接触するいわゆる接触走行型のものであってもよい。この状態で、磁気ディスク151に記録された情報を読み出すことができる。
図14は、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリを磁気ディスク側から見た拡大斜視図である。磁気ヘッドアッセンブリ160はアクチュエータアーム155を含み、アクチュエータアーム155の一端にはサスペンション154が接続されている。サスペンション154の先端には、たとえば図12(a)および(b)を参照して説明した磁気ヘッドを有するヘッドスライダ153が取り付けられている。サスペンション154には信号の書き込みおよび読み取り用のリード線164が配線され、このリード線164とヘッドスライダ153に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。図中165は磁気ヘッドアッセンブリ160の電極パッドである。
本発明の実施形態に係る磁気再生装置によれば、従来よりも高い記録密度で磁気ディスク151に磁気的に記録された情報を、図12(a)および(b)を参照して説明した磁気ヘッドによって、高感度で読みとることができる。
本発明の一実施形態に係る磁性発振素子を示す断面図。 磁気共鳴吸収パワーの振動磁場の周波数に対する依存性を示す図。 電流密度Jと、第1と第2の磁気共鳴周波数の差(f2−f1)の座標系において、磁化M1、M2の静止状態が現れる領域Gと磁化M1、M2の励起状態Eが現れる領域を示す図。 磁化M1、M2が共に静止した状態を示す図。 磁化M1、M2の励起状態が現れる領域を磁化の向きの軌跡として示す図。 本発明の他の実施形態に係る磁性発振素子を示す断面図。 本発明の他の実施形態に係る磁性発振素子を示す断面図。 本発明の他の実施形態に係る磁性発振素子を示す断面図。 本発明の他の実施形態に係る磁性発振素子を示す断面図。 本発明の他の実施形態に係る磁性発振素子を示す断面図。 本発明の一実施形態に係る磁性発振素子を示す断面図。 実施例2における磁気ヘッドを示す断面図。 実施例3における磁気再生装置の斜視図。 実施例3における磁気再生装置の磁気ヘッドアセンブリを磁気ディスク側から見た斜視図。
符号の説明
1…第1の磁気共鳴層、2…第2の磁気共鳴層、3…非磁性中間層、4、5…電極層、6…電源、10…積層膜、21…バイアス磁性膜、22…絶縁層、23…絶縁層、24…保護膜、31、32…強磁性層、41、42…反強磁性層、52…非磁性層、71…非磁性層、150…磁気再生装置、151…磁気ディスク、152…スピンドル、153…ピボット、154…アクチュエータアーム、155…サスペンション、156…ヘッドスライダ、157…ボイスコイルモータ、160…磁気ヘッドアッセンブリ、164…リード線、165…電極パッド。

Claims (8)

  1. 第1の強磁性層を含み、第1の磁気共鳴周波数fを有する第1の磁気共鳴層と、
    第2の強磁性層を含み、f以上の大きさの第2の磁気共鳴周波数fを有する第2の磁気共鳴層と、
    前記第1および第2の磁気共鳴層間に形成された非磁性中間層と、
    前記第1および第2の磁気共鳴層の膜面に垂直に、前記第2の磁気共鳴層から前記第1の磁気共鳴層の方向へ電流を通電する手段とを有し、
    素子が発振を起こす閾値電流密度Jcを下記式
    Figure 0004836553
    (αは第1の強磁性層の磁化のギルバート減衰係数、hはプランク定数、eは電気素量、Mは第1の強磁性層の飽和磁化、dは第1の強磁性層の膜厚、Hは第1の強磁性層の磁化に作用する有効磁場、Pは第1の強磁性層を流れるスピン偏極電流のスピン偏極率である。)
    表わしたとき、
    前記第2の磁気共鳴層にさらなる外部磁場が作用していない場合に、前記第2と第1の磁気共鳴周波数の差(f −f )が、第1の磁気共鳴層が有する磁気共鳴線幅の半分よりも小さく、かつ前記第1および第2の磁気共鳴層に通電される電流の電流密度JがJ≧J を満たす
    ことを特徴とする磁性発振素子。
  2. 前記第1および第2の強磁性層は、同一方向に面内一軸異方性を有することを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
  3. 前記第1および第2の磁気共鳴層の上部、下部、両側面の少なくとも一部に配置されたバイアス磁性膜を有し、前記バイアス磁性膜によるバイアス磁場の方向が前記面内一軸異方性と同一方向であることを特徴とする請求項2に記載の磁性発振素子。
  4. 前記第1および第2の磁気共鳴層のうち少なくとも一方が、前記非磁性中間層に積層された強磁性層と、前記強磁性層に積層された反強磁性層とを含む交換結合膜で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
  5. 前記第1および第2の磁気共鳴層のうち少なくとも一方が、前記非磁性中間層に積層された強磁性層と、前記強磁性層に積層された非磁性層と、前記非磁性層に積層された反強磁性層を含む交換結合膜で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
  6. 前記第1の磁気共鳴層、前記非磁性中間層および前記第2の磁気共鳴層を含む積層膜が、非磁性層を介して複数積層され、複数の積層膜と複数の非磁性層からなる積層構造の上下に、前記第1および第2の磁気共鳴層の膜面に垂直に前記第2の磁気共鳴層から前記第1の磁気共鳴層の方向へ電流を通電する手段としての電極層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性発振素子。
  7. 請求項1に記載の磁性発振素子を有することを特徴とする磁気センサ。
  8. 請求項7に記載の磁気センサと、磁気記録媒体とを有することを特徴とする磁気再生装置。
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