JP4836309B2 - 腹足類に属する軟体動物用駆除剤 - Google Patents

腹足類に属する軟体動物用駆除剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、腹足類に属する軟体動物用駆除剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
腹足類に属する軟体動物は多数存在するが、中でもナメクジは、鉢植え、盆栽、シイタケ栽培、ハウス栽培等において、それらの対象植物に寄生し、その新芽、花、葉等の食害が著しく問題となる。
【0003】
従来、ナメクジ用駆除剤としては、メタアルデヒドを主成分とする誘引性の毒餌が一般的に用いられているが、その毒餌を食べないと効果は得られず、速効性は期待できなかった。そこで、直接ナメクジに噴射して処理するエアゾール剤或いはスプレー剤等が用いられるようになった。
【0004】
しかし、市販されているエアゾール剤は主成分である殺虫原体独特の臭いがあり、せっかくの植物の匂いが損なわれてしまう。また、現在上市されているスプレー剤では、その独特の液剤のため処理した箇所が着色されてしまう。さらに、十分な速効性を持たず、かかるスプレー剤等で処理したナメクジは、粘液を大量に出しながら這い回ることになり、周囲が汚染される。かかる粘液は容易に除去できないので、汚染された場所を洗浄するのに手間がかかる。つまり、速効性を持たない殺虫剤を使用すると反って後始末が面倒になるなどの欠点を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、速効性を有し、駆除対象である腹足類に属する軟体動物による汚染を実質的に完全に防ぎ、しかも臭い、着色、植物に対する薬害等の問題もない、前記軟体動物用駆除剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる駆除剤を開発するにあたり、まずアルコールの利用に着目した。
【0007】
高濃度のアルコールが速効性のナメクジ駆除効果を有していることは、かなり以前から知られているが、かかるアルコールでは、植物や環境にいくらかの被害を及ぼす恐れがあるため、実際の使用ではなるべく低濃度であることが望ましい。しかし、アルコール濃度が低くなると、その大きな特徴である速効性が失われてしまう。故に、速効性を保持しつつアルコール使用量を抑える必要がある。
【0008】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、比較的低濃度のアルコールをベースに所望の有効成分を1種以上溶解してなるものが、腹足類に属する軟体動物、特にナメクジ駆除に対して速効性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 有効成分としてテルペン類及び界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上とアルコールと水とを含み、該有効成分の含有量が0.1〜1重量%であり、該アルコールの含有量が5〜20重量%である、腹足類に属する軟体動物用駆除剤、
(2) 有効成分が界面活性剤を含む、前記(1)記載の駆除剤、
(3) 前記軟体動物がナメクジである前記(1)又は(2)記載の駆除剤、並びに
(4) その剤型が液剤又はエアゾール剤である前記(1)〜(3)いずれか記載の駆除剤、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の腹足類に属する軟体動物用駆除剤(以下、駆除剤という)は、有効成分としてテルペン類、ポリフェノール類及び界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上を含有するアルコール水溶液タイプの駆除剤である。
【0011】
ここで、腹足類に属する軟体動物(以下、軟体動物という)とは、一般に頭部に伸縮自在の触角を具え、胴部腹面が肉質の扁平な足となってこれで運動し、また、他物に吸着するという性質を持つ動物であり、例えば、ナメクジ、カタツムリ、ウミウシ等が挙げられる。本発明の駆除剤は特に、植物の食害が著しいナメクジ、カタツムリ等に対して使用され、さらに好ましくはナメクジに使用される。
【0012】
本発明にかかるアルコールは特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等を挙げることができるが、安全性という観点から、好ましくはエタノールである。これらは単独で若しくは2種以上混合して用いることができる。また、効力及び植物や自然環境への影響という観点から、駆除剤におけるその含有量は5〜20重量%であり、好ましくは7〜15重量%である。
【0013】
有効成分とは、本発明の駆除剤中に前記範囲内で含有される低濃度アルコールのみでは発現され得ない駆除剤の速効性を、かかる低濃度アルコールと混合して駆除剤中に含有させることで、アルコールとの相乗効果により、有意に高めるという効果を奏するものであり、駆除剤におけるその含有量は、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。かかる有効成分としては、テルペン類、ポリフェノール類及び界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上が用いられる。
【0014】
前記テルペン類としては、(C5 8 n の不飽和炭化水素並びにその誘導体である含酸素化合物及び不飽和度を異にする化合物等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。いろいろな分野での使用実績という観点から、好ましくはメントール、樟脳、テルピネオール、シトロネロール、ヒノキチオール、リナロール、ゲラニオールであり、より好ましくはメントール、樟脳、ヒノキチオールである。
【0015】
前記ポリフェノール類としては、多数のフェノール性水酸基を持つ化合物並びにその誘導体を挙げることができるが、特に限定されるものではない。入手しやすさ、コストという観点から、好ましくはタンニン、フラボノイド、カテキンであり、より好ましくはタンニンである。
【0016】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性系等の種々の界面活性剤を挙げることができ、特に限定されるものではないが、タンパク質の変性効力という観点から、好ましくはアニオン系又はカチオン系の界面活性剤である。具体的に、アニオン系界面活性剤としては、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩、硫酸アルキル塩、リン酸アルキル塩、脂肪酸モノカルボン酸塩であり、カチオン系界面活性剤としては、好ましくはアルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩である。
【0017】
前記テルペン類、ポリフェノール類及び界面活性剤を併用する場合、有効成分中のそれらの量比は特に限定されるものではないが、軟体動物の駆除効果の観点から、具体的にメントールとタンニンとを共に用いるのが好ましく、また、有効成分中におけるそれらの重量比は、好ましくは1:5〜1:10、より好ましくは1:1〜1:3である。
【0018】
本発明の駆除剤に含有される水は、本発明の目的を阻害しないものであればよく、特に限定されるものではない。その具体例としては、超純水、純水、イオン交換水、蒸留水、通常の水道水等が挙げられる。その含有量は、その他の成分を駆除剤に含有させたときに総量が100重量%となるように調整される。水としては、好ましくは70〜95重量%、より好ましくは75〜85重量%である。
【0019】
本発明の駆除剤には、さらに補助成分として乳化剤、溶解剤等を含有させてもよい。
【0020】
前記乳化剤は、水に不溶な有効成分を水に分散させ安定させるという効果を奏する成分である。かかる乳化剤としては、NK9002A、NKST40S(いずれも竹本油脂(株)製)、ソルポール4219(東邦化学工業(株)製)が挙げられ、単独若しくは2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、安定性という観点から、好ましくはNK9002Aである。また、駆除剤中におけるその含有量は、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%である。
【0021】
前記溶解剤は、水に不溶な有効成分を溶解させるという効果を奏する成分である。かかる溶解剤としては、BDG(日本乳化剤(株)製)、MDG(日本乳化剤(株)製)等が挙げられ、単独若しくは2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、安定性という観点から、好ましくはBDGである。また、駆除剤中におけるその含有量は、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%である。
【0022】
本発明の駆除剤は、例えば、前記有効成分と水とを混合して水溶液とし、かかる水溶液にアルコールを加え攪拌することにより、又は、アルコールと水とを混合してアルコール水溶液を調製し、前記有効成分を加え攪拌することにより得られる。或いは、有効成分をアルコール水溶液に溶解させてから水を加えて所望の濃度に調整する。前記補助成分は、前記のようにして有効成分、アルコール及び水の混合物を調製する際、若しくは調製後に適宜加えればよい。また、アルコールとしてエタノールを5〜20重量%、有効成分としてメントールを0.1〜1重量%、補助成分としてNK9002Aを0.2〜2重量%、BDGを0.2〜2重量%、残部を水で総量が100重量%となるように調製した駆除剤が本発明の目的を達成する上で特に好ましい。
【0023】
本発明の駆除剤の剤型は、ナメクジを見つけてすぐ退治するのに好適であるという観点から、好ましくは液剤又はエアゾール剤である。
【0024】
液剤は、駆除剤を前記調製方法に従って水溶液として得たものであり、例えば公知のハンドスプレー、シャワータイプ散布ボトル等の容器に充填する。本発明の目的を達成する観点から、通常のハンドスプレー殺虫剤を用いるようにして、例えば、体長1〜3cm位のナメクジに対し、約2〜4g程度適用して用いられる。
【0025】
エアゾール剤は、駆除剤の水溶液を調製した後、公知の方法に従い、例えば、一般のエアゾール剤に用いられる容器に該水溶液を充填後、L.P.G.等の噴射剤を入れて調製することができ、例えば、かかる容器の内容物噴射用のボタンを押すことで噴射させることができる。かかる容器としては、ブリキ缶、アルミニウム缶、PC缶等が挙げられる。エアゾール剤は、液剤について例示するのと同程度の量を直接軟体動物に噴射して適用することにより用いられる。
【0026】
本発明の駆除剤は、速効性を有し駆除対象の軟体動物による汚染を実質的に完全に防ぐことができ、臭いや着色、植物に対する薬害等の問題もなく、特にナメクジの駆除に最適である。尚、本発明にいう「速効性」とは、軟体動物に駆除剤を散布、噴射等により適用してから、肉眼観察により当該軟体動物が実質的に動かなくなるまでの時間(致死時間)が好ましくは7分以内、より好ましくは5分以内である、駆除剤の効果をいう。
【0027】
【実施例】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。以下に用いた試薬等をまとめて示す。
【0028】
(1)メントール(高砂香料(株)製)
(2)タンニン酸(大日本製薬(株)製)
(3)SDS (片山化学工業(株)製)
(4)乳化剤 (竹本油脂(株)製、NK9002A)
(5)溶解剤 (日本乳化剤(株)製、BDG)
【0029】
実施例1〜3及び比較例1〜15(但し、実施例2は参考例である)
各成分の駆除剤における組成が表1に示す組成になるように、各成分とイオン交換水とを混合、攪拌して駆除剤を調製した。得られた駆除剤を450ml容のポリエチレン容器(吉野工業所(株)製)に充填し、ハンドスプレーを調製した。
【0030】
表1に示す体長のナメクジを、各実施例、比較例につきシャーレ(直径9cm)上に1匹ずつ置き、駆除剤約3gを各ナメクジに噴射してその致死時間を測定した。致死時間の測定は各々3回ずつ行い、その平均を致死時間として表1に示した。尚、致死時間は、駆除剤適用後、シャーレ上のナメクジが実質的に動かなくなるまでの時間とした。
【0031】
また、駆除剤の植物に対する薬害を、対象植物として、5号鉢に鉢植えされた高さ20cm程度のパンジーを用い、駆除剤約10gを植物全体に噴霧し、2日後における該植物の状態を肉眼で観察することにより評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に併記する。
(評価基準)
○:葉や花に変化なし
×:葉や花が変色又は変形等の変化を示した
【0032】
【表1】
Figure 0004836309
【0033】
表1より、実施例1〜3はいずれも致死時間が5分以内であり薬害も認められない。一方、比較例では、比較例15は速効性ではあるがアルコール濃度が高く植物に薬害を与え、また、ほとんどのもので致死時間が10分を超えることが分かる。また、実施例1と比較例1及び2、実施例2と比較例3及び4、実施例3と比較例5及び6のそれぞれの結果の比較から、有効成分とアルコールを共に含有することが、また、実施例1と比較例9、実施例2と比較例12の結果の比較から、駆除剤におけるアルコールの含有量は5重量%以上であることが、駆除剤の速効性に重要であることが分かる。さらに、植物に対する薬害について、実施例1〜3並びに比較例9及び12では薬害は認められないが、比較例15では明確な薬害が認められることから、アルコール濃度は20重量%以下とすべきことが分かる。
【0034】
以上より、本発明の駆除剤は、植物に対する薬害の問題がなく、しかもナメクジに対し速効性の駆除効果を発揮することが明らかである。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、速効性を有し、駆除対象である軟体動物による汚染を実質的に完全に防ぎ、しかも臭い、着色、植物に対する薬害等の問題もない、前記軟体動物用駆除剤を得ることができ、かかる軟体動物を効果的に駆除することができる。

Claims (4)

  1. 有効成分としてテルペン類及び界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上とアルコールと水とを含み、該有効成分の含有量が0.1〜1重量%であり、該アルコールの含有量が5〜20重量%である、腹足類に属する軟体動物用駆除剤。
  2. 有効成分が界面活性剤を含む、請求項1記載の駆除剤。
  3. 前記軟体動物がナメクジである請求項1又は2記載の駆除剤。
  4. その剤型が液剤又はエアゾール剤である請求項1〜3いずれか記載の駆除剤。
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