JP4836060B2 - 塗料組成物および塗料組成物の調製方法 - Google Patents

塗料組成物および塗料組成物の調製方法 Download PDF

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Description

本発明は、透明性を有する保護膜の形成に用いられる塗料組成物およびその調製方法に関する。
シリコン系の被膜は、耐熱性、耐摩耗性、絶縁性などに優れているため、各種部材の保護膜として広く用いられている。シリコン系の被膜の成膜方法のひとつとして、ポリシラザン等の前駆体ポリマーが用いられる。ポリシラザンは、常温でもシリカへの転化反応が進み、その結果、石英ガラスと同じ物性のシリカが得られるため、耐熱温度の低い樹脂製の部材の被膜の形成に適用できる。ところが、シリカの被膜は非常に硬いため、クラックが生じやすく、成膜が難しいという問題がある。また、シリカは、表面が水酸基を有しない有機材料からなる部材との密着性が低いという問題もある。
上記の問題を解決するために、ポリシラザンとアクリル系樹脂などの有機高分子とを混合して用いる方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、ポリシラザンは、水酸基をもつ分子と反応し易く、加水分解することが知られている。そのため、ポリシラザンには、水やアルコール類、また、水を溶け込ませることができるケトン類やエステル類などを、溶媒として使用できない。したがって、ポリシラザンを含む塗料組成物を調製する際には、溶媒の選定や調製方法、また、調製後の保存方法などに注意する必要がある。
特開平9−175868号公報
そこで、発明者等は、上記問題点を解決する新規の塗料組成物を発明するに至った。すなわち、本発明は、保存安定性がよく、硬度の高い透明性保護膜を得ることができる塗料組成物およびその調製方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとが共存する溶液中において、従来、ポリシラザンとともに使用することが困難とされてきたアルコールを用いることに想到し、保存安定性のよい本発明の塗料組成物を完成するに至った。
すなわち、本発明の塗料組成物は、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、アルコール類を含まず該原料高分子を溶解する乾燥溶媒と、アルコールと、の混合物を含むことを特徴とする。
本発明の塗料組成物の調製方法は、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、アルコール類を含まず該原料高分子を溶解する乾燥溶媒と、からなる混合物を不活性雰囲気下で調製する第一調製工程と、該混合物にアルコールを添加して塗料組成物を調製する第二調製工程と、からなることを特徴とする。
ここで、「乾燥溶媒」とは、脱水された溶媒であって、ポリシラザンが加水分解されない程度まで脱水された溶媒を指す。
本発明の塗料組成物および塗料組成物の調製方法において、前記乾燥溶媒と前記アルコールとの合計を100体積%としたときに、該アルコールを95体積%以下含むのが好ましい。
本発明の塗料組成物および塗料組成物の調製方法によれば、アルコールが添加されているため、アルコールと反応したポリシラザン分子と、アルコールと反応していない部分であって大気中の水分とすぐに反応しないポリシラザン分子と、が形成される。そのため、塗料組成物は、大気中に放置しても、保存安定性がよい。そして、アルコールは基材を形成する多くの材料に対して貧溶媒であるため、塗料組成物中でアルコールが溶媒として残存しても、塗料組成物を耐薬品性の低い基材に塗装する場合に溶媒との接触により生じる基材の劣化が抑制される。特に、基材が透明な樹脂基板であれば、白化による透明性の低下を抑制することができる。
なお、本発明の塗料組成物および本発明の塗料組成物の調製方法において、透明性高分子は水酸基を有し、溶媒中でポリシラザンは水酸基と結合して透明性高分子に固定される。そのため、原料高分子の巨視的な相分離は抑制され、透明性高分子とポリシラザンとが微視的に相分離する。その結果、透明性保護膜とした際に、ポリシラザンから転化したシリカの粒子による光の散乱が低減され、透明性保護膜の透明度が向上する。
以下に、本発明の塗料組成物および塗料組成物の調製方法を実施するための最良の形態を説明する。
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、該原料高分子を溶解する乾燥溶媒と、アルコールと、の混合物を含む。
透明性高分子は、水酸基を有する透明な高分子であれば特に限定はない。たとえば、水酸基を有するスチレン類や水酸基を有するアクリル樹脂などが使用できる。また、透明性高分子は、透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入した重合体であってもよい。透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入することにより、透明性高分子が有する水酸基の量や導入位置を調整することができる。
透明樹脂としては、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、などの水酸基を持たないスチレン類(メトキシスチレンなどのアルコキシスチレンやブチロメチルスチレンなどのハロゲン化メチルスチレン等を含む)を重合して得られる高分子や、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、などを重合して得られる高分子のアクリル樹脂、ポリビニルピリジン、ポリビニルカルバゾールなどが使用できる。また、上記以外にも、たとえば、ポリカーボネート、シクロオレフィン樹脂、脂環式オレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、脂環式アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、オレフィン系マレイミド樹脂、などの透明性を有する樹脂であれば使用することができる。なお、これらの透明樹脂は、2種類以上を混合して用いてもよい。
水酸基を有する単量体としては、3−ビニルフェノール、ヒドロキシメチルスチレン、4−ビニルベンジル−4−ヒドロキシブチルエーテル、4−(ヒドロキシメチルシリルフェニル)スチレン、などの水酸基を有するスチレン類や、ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水酸基を有するアクリル樹脂や、N−(4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシカルボニル)メタクリルアミドなどの水酸基を有するアクリルアミド樹脂などが使用できる。なお、これらの水酸基を有する単量体は、2種類以上を混合して用いてもよい。
そして、透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入した重合体は、その重合方法に特に限定はなく、透明樹脂および水酸基をもつ単量体の種類に合った重合方法を適宜選択すればよいが、通常、ラジカル重合や、アニオン重合、カチオン重合、メタセシス重合、リビングカチオン重合、などの方法で合成される。
ポリシラザンは、(−Si−N−)n で表される重合体からなり、通常、Si(珪素原子:4価)の2つの結合手およびN(窒素原子:3価)の1つの結合手には、水素原子や有機基が結合している。また、珪素原子や窒素原子の結合手には、他の珪素原子や窒素原子が結合してもよく、その場合は、環状構造や架橋構造を有するポリシラザンとなる。
そして、ポリシラザンは、水および酸素の存在下で分解して窒素原子と酸素原子とが置換する転化反応により硬化し、シリカとなる。そのため、ポリシラザンを含む塗料組成物から形成される膜は、硬度が高い。さらに、ポリシラザンからシリカへの転化反応は常温でも進み、高温で処理する必要がないので、共に用いられる透明性高分子が劣化するおそれが無く、耐熱性の低い基材や組み立て後の部品などに透明性保護膜を形成することも可能である。
ポリシラザンは、通常、シリカの被膜の形成に用いられているポリシラザンであれば特に限定はない。特に好ましいのは、ペルヒドロポリシラザン(PHPS)である。PHPSは、硬化温度が低いため、本発明に適したポリシラザンである。また、部分メチル化ペルヒドロポリシラザンを用いてもよい。なお、2種以上のポリシラザンを混合して用いてもよい。
水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとの使用割合に特に限定はなく、ポリシラザンの使用割合が多いほど透明性保護膜の硬度は高くなる。具体的には、透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子を100重量%としたときにポリシラザンが10重量%以上であるのが好ましい。ポリシラザンが10重量%以上であれば、十分な硬度を有する透明性保護膜を得ることができる。また、ポリシラザンが95重量%以下であるのが好ましく、透明性保護膜に生じる割れや剥離が抑制される。したがって、ポリシラザンは10〜95重量%であるのが好ましく、さらに好ましくは15〜95重量%である。
また、透明性高分子は、水酸基をもつ成分を2mol%以上含むのが好ましい。ここで「水酸基をもつ成分を2mol%以上」とは、透明性高分子が、透明樹脂に水酸基を1つもつ単量体を導入した重合体である場合の単量体の成分量である。そのため、水酸基を2つもつ単量体を導入する場合は、その半分でよい。ただし、透明性高分子は透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入した重合体に限定されない。つまり、本質的には、透明性高分子中の水酸基の数を表している。水酸基をもつ成分を2mol%以上含んだ透明性高分子を用いた塗料組成物は、巨視的な相分離が効果的に抑制され、ポリシラザンの分散性が良好となる。その結果、高硬度かつ高透明性を有する透明性保護膜を得ることができる。
なお、前述したように、透明性高分子は、透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入することにより、透明性高分子の大きさや、透明性高分子がもつ水酸基の量や位置を調整することができる。その結果、隣接する水酸基の距離を調整することができ、同一分子内で互いに隣接する2以上の水酸基とポリシラザン分子とを結合させたり、透明性高分子の特定の部分にポリシラザン分子を固定させたりすることが可能となる。さらに、水酸基をもつ単量体の分子量や、単量体の有する官能基を選択することにより、他の機能を付加することも可能である。なお、透明性高分子はその成形性より、数平均分子量が3000以上であることが、また隣接する水酸基間の距離は1.5nm以上であることが望ましい。
乾燥溶媒は、原料高分子を溶解することができれば特に限定はない。ここで、「乾燥溶媒」とは、ポリシラザンが加水分解されてゲル化しない程度まで脱水された溶媒である。溶媒が水を含むと、水との反応によりゲル化が進み好ましくないため、乾燥剤を用いるなどの方法により水分を除去した乾燥溶媒を用いる。すなわち、乾燥溶媒としては、用いる透明性高分子およびポリシラザンに対して良溶媒である有機溶媒を使用するのが好ましく、アルコールと混和するものがよい。
具体的には、芳香族炭化水素としてはベンゼン、トルエン、キシレンなど、脂肪族炭化水素としてはペンタン、ヘキサン、ヘプタンなど、エステルとしては酢酸エチル、酢酸n−ブチルなど、ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトンなど、エーテル類としてはジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、また、クロロホルムやピリジン等が挙げられる。中でも、特に、酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびキシレンから選ばれる1種以上であるのが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
また、アルコールの種類にも特に限定はなく、アルコール性水酸基を有すれば、保存安定性を向上させることができる。特に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよびシクロヘキサノールから選ばれる1種以上であるのが好ましい。これらのアルコールを用いれば、得られる透明性保護膜の硬度が大きく低下することがない。
アルコールの割合は、塗料組成物の調製方法、用いる原料高分子の種類や量、乾燥溶媒の種類にもよるが、少しでも混合物に添加されていれば、塗料組成物の保存安定性は向上する。ただし、乾燥溶媒とアルコールとの合計を100体積%としたときに、アルコールを95体積%を超えて添加すると、透明性高分子を含む乾燥溶媒の割合が少なくなり固形分の濃度が低濃度となるため、塗料として実用的ではない。したがって、アルコールの割合は、乾燥溶媒とアルコールとの合計を100体積%としたときに95体積%以下であるのが好ましい。
また、アルコールは、基材を形成する多くの材料に対して貧溶媒であるため、塗料組成物中にアルコールが溶媒として存在しても、塗料組成物を耐薬品性の低い基材に塗装する場合に溶媒との接触により生じる基材の劣化が抑制される。特に、基材が透明な樹脂基板であれば、白化による透明性の低下を抑制することができる。
塗料組成物にアルコールが含まれると、アルコールの少なくとも一部は、ポリシラザンの一部と反応し結合する。この際、複数のポリシラザンの分子が集合した集合体であって、集合体の表面に表出しているポリシラザン分子の少なくとも一部がアルコールの水酸基と反応して結合したポリシラザン集合体が形成される。なお、ポリシラザン集合体の形成過程については、後述する。
ポリシラザン集合体を形成する複数のポリシラザン分子のうち、ポリシラザン集合体の表面に表出しているポリシラザン分子はアルコールの水酸基と反応して結合しているが、ポリシラザン集合体の内部に存在するポリシラザン分子はアルコールと反応せずに残存している。アルコールと反応していないポリシラザン分子は、その大部分がポリシラザン集合体の内部に位置し、塗料組成物を大気中に放置しても大気中の水分とすぐには反応しないので、塗料組成物の保存安定性は、向上する。
また、ポリシラザン集合体は、透明性高分子の水酸基の周囲に位置するため、塗料組成物には、巨視的な相分離やゲル化や沈殿が発生し難く、塗料として良好に使用できる。
なお、本発明の塗料組成物は、他の機能を追加するために、必要に応じて、上記以外の溶媒や、乾燥促進剤や紫外線吸収剤、帯電防止剤などの別の物質を混合してもよい。
[塗料組成物の調製方法]
本発明の塗料組成物の調製方法は、既に説明した塗料組成物を調製する方法である。本発明の塗料組成物の調製方法は、第一調製工程と第二調製工程と、の二工程からなる。
第一調製工程は、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、原料高分子を溶解する乾燥溶媒と、からなる混合物を不活性雰囲気下で調製する工程である。前述したように、ポリシラザンは、水蒸気や酸素が存在する空気中で、ゲル化や転化が進行する。そのため、ポリシラザンの反応性が低い不活性な雰囲気下で、塗料組成物を調製する必要がある。たとえば、水を含まない窒素ガスや希ガスなどの不活性ガス雰囲気中で調製するのが望ましい。
第一調製工程では、透明性高分子とポリシラザンとが乾燥溶媒に良好に分散する。そして、溶媒中で、透明性高分子の水酸基とポリシラザンとの反応が開始する。ポリシラザンは、水酸基と容易に反応して結合する(たとえばPHPSであれば、PHPSのSiH基と水酸基とが脱水素反応を起こしSi−O結合を形成する)。
第二調製工程は、混合物にアルコールを添加して塗料組成物を調製する工程である。通常、混合物は、第一調製工程において、ポリシラザンが透明性高分子にグラフトしたグラフト重合体を形成していたり、ポリシラザンに対する透明性高分子の割合が極めて大きいと架橋されてゲル化した状態となる。このような混合物にアルコールを添加すると、アルコールにより架橋が切断されるとともに固形分濃度が低下するため、ゲルは溶解する。架橋の切断は、アルコールの水酸基との反応により、ポリシラザンのSi−N結合が切断されることに起因する。ポリシラザンとアルコールとの反応により、ポリシラザンのSi−N結合が切断されることは、アルコールの添加後に、水素の他、アンモニア、シランガス(たとえば、アルコールがメタノールであれば、メトキシシラン類など)の気泡が発生することから明らかである。
気泡の発生が終了した時点で、切断されたポリシラザンは、透明性高分子の水酸基の周囲に位置し、複数のポリシラザン分子が集合した、ポリシラザン集合体を形成する。このとき、ポリシラザン集合体を形成する複数のポリシラザン分子のうち、ポリシラザン集合体の表面に表出しているポリシラザン分子の少なくとも一部がアルコールの水酸基と反応し結合する。その結果、アルコキシル基(たとえば、アルコールがメタノールであれば、メトキシ基:−OCH3 )が、ポリシラザン集合体の表面のSiに結合する。このとき、ポリシラザン集合体を形成する複数のポリシラザン分子のうち、アルコールと反応せずに残存するポリシラザン分子は、その大部分がポリシラザン集合体の内部に存在する。ポリシラザン分子のうちアルコールと未反応の部分は反応性が高いが、得られた塗料組成物を大気中に放置しても、ポリシラザン集合体の内部に位置するポリシラザン分子は、大気中の水分とすぐには反応しない。その結果、塗料組成物のポリシラザンは、水や酸素の存在下で生じるゲル化や転化が抑制され、塗料組成物の保存安定性が向上する。
第二調製工程において、混合物にアルコールを添加する方法に特に限定はないが、所定の量のアルコールを混合物に一度に添加するのがよい。この際、前述したように、水素、アンモニア、シランガス等が、気泡となって発生する。
なお、上記のポリシラザン集合体は、アルコールの添加割合や種類にもよるが、原料として用いたポリシラザンの平均分子量が700〜900であれば、アルコールの添加により30〜80程度の平均分子量に切断されたポリシラザン分子が10〜50分子程度集合するのが望ましい。なお、ポリシラザン分子の平均分子量は、60程度が最適である。この際、第一調製工程にて原料高分子として導入したポリシラザンのうち、60〜80体積%がアルコールと反応せずに残存するのが望ましい。
また、本発明の塗料組成物は、高い表面硬度をもち高弾性率であることから、成形体や各種部材の保護膜として用いることができる。特に、樹脂製の基板で構成される有機ガラスとしての使用が好ましく、基板の表面に塗料組成物を塗布し、その塗膜を硬化させることにより、耐摩耗性の高い透明性保護膜を形成することができる。
用いられる基材に特に限定はないが、たとえば、金属製基材や樹脂製基材などを用いることができる。特に、樹脂製基材は、透明性を有する樹脂からなるのが望ましい。樹脂製基材としては、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、シクロオレフィン樹脂などのエンジニアリングプラスチックなどが望ましい。特に、ポリカーボネートは、透明性を有し、寸法安定性に優れ難燃性であるため、有機ガラスの基板として好適である。また、ポリカーボネートは、耐薬品性に劣るため、溶媒にアルコールを含む本発明の塗料組成物を用いれば、白化による透明性の低下を抑制され、基板表面に透明性保護膜を良好に形成することができる。
また、塗料組成物を基材の表面に塗布する塗工法に特に限定はないが、ディップコート法またはフローコート法により塗布するのが望ましい。ディップコート法やフローコート法は、基材の表面が塗料組成物に長時間さらされないので、塗料組成物による基材の劣化が低減される。
そして、ポリシラザンをシリカに転化させることで、塗料組成物は硬化する。前述したように、塗料組成物では、アルコールと未反応のポリシラザン分子が、ポリシラザン集合体の内部に存在する。透明性高分子の水酸基の周囲に集合した未反応のポリシラザン分子は、水と酸素の存在下では、グラフトしたポリシラザン分子が透明性高分子を架橋してゲル化が進行し、その後、ポリシラザン分子が、乾燥溶媒やアルコールの揮発と共にシリカへと転化することにより、透明性保護膜が得られる。
このとき、ポリシラザンに結合したアルコキシル基は、そのまま膜中に残存する。
さらに、塗料組成物中の透明性高分子や基材を劣化させない程度の温度であれば、硬化工程において焼結することによりポリシラザンの転化を促進させることも可能であり、より短時間で塗料組成物が硬化する。
得られる透明性保護膜は、透明性高分子からなる有機部と、透明性高分子の水酸基と反応し結合したポリシラザンが転化したシリカからなる無機部と、をもつ有機−無機ナノコンポジットである。
有機−無機ナノコンポジットでは、無機部は、透過する光の屈折に影響を及ぼさない程度に微細であるため、有機−無機ナノコンポジットからなる透明性保護膜は、高い透明度を有する。そして、透明性保護膜は、有機−無機ナノコンポジットからなるため、高硬度でありながら、割れや剥がれが生じ難く、有機部と無機部の性質を合わせもった透明性保護膜である。
さらに、透明性保護膜は、基材の表面に形成されたときの表面硬度が0.4GPa以上である。表面硬度が0.4GPa以上であれば、耐擦傷性に優れ、自動車のバックウィンドウガラスやサンルーフ等に用いられる有機ガラスとして好適である。
また、透明性保護膜は、その膜厚が10μm以下であっても、優れた耐擦傷性を示す。したがって、透明性保護膜の膜厚を増加させる必要がないため、仮に透明性保護膜の透明度よりも樹脂基板の透明度が高い場合でも、樹脂基板の透明性を保持することができ、高透明度かつ表面硬度の高い有機ガラスとなる。
以上、本発明の塗料組成物および塗料組成物の調製方法の実施形態を説明したが、本発明の塗料組成物およびその調製方法は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、本発明の実施例および比較例を、表を用いて説明する。
[塗料組成物の調製]
透明性高分子として、ポリ(メチルメタクリレート-co-ヒドロキシエチルメタクリレート)を原子移動ラジカル重合により合成した(以下「PMMA」と略記)。PMMAの各成分は、メチルメタクリレート:84.9mol%、ヒドロキシエチルメタクリレート:15.1mol%、数平均分子量は2.3×104 であった。なお、PMMAの各成分のモル分率は、 1H原子を用いた核磁気共鳴吸収法(NMR)により、また、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
次に、PMMAを、金属ナトリウムにより脱水された酢酸エチルに溶解した。その後、窒素雰囲気下、室温にて、ペルヒドロポリシラザン−キシレン溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ製NN−110;PHPS濃度20重量%、数平均分子量700)を加え、24時間攪拌した。得られた溶液に、大気下にて、所定の量のメタノールを全て加え、気泡の発生が終了するまで30〜60分間静置し、塗料1および塗料2を調製した。
さらに、比較例として、メタノールを添加しない他は、塗料1と同様にして塗料3および塗料4を調製した。
表1に、各塗料の溶媒、アルコール、透明性高分子(PMMA)、ペルヒドロポリシラザン−キシレン溶液(NN−110)の調製条件を示す。なお、表1において、「PMMA分率」は、塗料の重量に対するPMMAの重量(計算値)である。
〈塗料の評価〉
上記の手順で得られた塗料を評価するために、塗料1〜4に生じた析出物の有無を目視により確認した。結果を表1に示す。塗料3および塗料4は、メタノールを添加しないため、析出物は生じなかった。また、メタノールはPMMAに対して貧溶媒であるが、メタノールを添加した塗料1および塗料2においても、析出物は生じなかった。
また、塗料1〜4の保存時間に対する塗装性の違いを評価した。各塗料を冷暗所にて密封状態で保存し、塗装が可能であるか否かを検証した。塗料1および2については、調製してから7日間保存した後でも塗装可能であった。一方、塗料3および4については、調製から2日経過すると塗装が困難となった。塗料3、4では、ゲル化の進行により塗料の粘度が上昇したためである。
Figure 0004836060
[透明性保護膜の製造]
調製後、直ちに、塗料1〜4を、ガラス板(76mm×26mm×1mm)、または、ポリカーボネート押し出し成形板(三菱ガス化学製ユーピロンシート(NF−2000):150mm×100mm×1.0mm、以下「PC板」と記載)の表面にフローコート法により塗布した。塗布後、室温で24時間乾燥し、基板表面に透明性保護膜を有する試料1〜4を得た。なお、試料1G、1Rは塗料1、試料2G、2Rは塗料2を用いており、ガラス板を基板とした試料1G、2G、PC板を基板とした試料1R、2Rを作製した。得られた透明性保護膜の膜厚を表2に示す。なお、表2において、「シリカ体積分率」の欄は、透明性保護膜に占めるシリカの体積(計算値)である。
〈試料の評価〉
上記の手順で得られた試料を評価するために、試料の透明性を測定した。各試料の透明性は、紫外可視分光光度計(日本分光製JascoV−530)を用い、200〜1100nmの測定波長範囲で行った。測定結果を表2に示す。なお、表2において、○はガラス板やPC板と同等の透明性、△は僅かに不透明、×は不透明、をそれぞれ示す。試料1G、1Rおよび試料2G、2Rでは、基板としてガラス板、PC板のどちらを用いても、透明性保護膜に割れや剥がれは見られず、濁りのない良好な外観であった。特に、試料1Rおよび試料2Rは、PCに対して貧溶媒であるメタノールが添加されている塗料1や塗料2を用いたため、PC板の表面の劣化が抑制された。一方、試料3は基材としてガラス板を用いたため濁りのない良好な外観であったが、試料4ではPC板の表面劣化のため透明性保護膜の白濁が確認された。
以上の塗料の評価および試料の評価から明らかなように、メタノールを含む混合溶媒を用いた塗料は、保存安定性に優れた塗料であり、かつ、塗装の際に生じるPC板の劣化を抑制することができるため、その塗料を用いて成膜すると透明性に優れた保護膜が得られた。
また、各試料について、表面硬度および弾性率を測定した。表面硬度および弾性率は、ナノインデンテーション法により測定した。ナノインデンターには、原子間力顕微鏡(SHIMADZU社製SPM9500J2)に取り付けたHYSITORON社製Toriboscopeを用いた。なお、ナノインデンテーション法によれば、基板の影響を受けずに、透明性保護膜そのものの硬度、弾性率を測定することができる。表面硬度および弾性率の測定結果を表2に示す。
試料1G、1Rおよび試料2G、2Rは、0.4GPa以上の高い表面硬度と高弾性率をもつ優れた透明性保護膜を有した。
Figure 0004836060

Claims (9)

  1. 水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、アルコール類を含まず該原料高分子を溶解する乾燥溶媒と、アルコールと、の混合物を含むことを特徴とする塗料組成物。
  2. 前記アルコールの少なくとも一部は、前記ポリシラザンの一部と反応し結合している請求項1記載の塗料組成物。
  3. 前記アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよびシクロヘキサノールから選ばれる1種以上である請求項1記載の塗料組成物。
  4. 前記乾燥溶媒は、前記透明性高分子および前記ポリシラザンを溶解する酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびキシレンから選ばれる1種以上を含む請求項記載の塗料組成物。
  5. 前記乾燥溶媒と前記アルコールとの合計を100体積%としたときに、該アルコールを95体積%以下含む請求項1記載の塗料組成物。
  6. 水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、アルコール類を含まず該原料高分子を溶解する乾燥溶媒と、からなる混合物を不活性雰囲気下で調製する第一調製工程と、
    該混合物にアルコールを添加して塗料組成物を調製する第二調製工程と、
    からなることを特徴とする塗料組成物の調製方法。
  7. 前記アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよびシクロヘキサノールから選ばれる1種以上である請求項記載の塗料組成物の調製方法。
  8. 前記乾燥溶媒は、前記透明性高分子および前記ポリシラザンを溶解する酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびキシレンから選ばれる1種以上を含む請求項記載の塗料組成物の調製方法。
  9. 前記第二調製工程は、前記乾燥溶媒と前記アルコールとの合計を100体積%としたときに該アルコールを95体積%以下添加する工程である請求項記載の塗料組成物の調製方法。
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