JP4836061B2 - 塗料組成物、塗料組成物の調製方法、塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法および透明性保護膜を有する有機ガラス - Google Patents

塗料組成物、塗料組成物の調製方法、塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法および透明性保護膜を有する有機ガラス Download PDF

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Description

本発明は、各種部材の保護膜に関するものであって、塗料組成物およびその調製方法、塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法および透明性保護膜を有する有機ガラスに関する。
シリコン系の被膜は、耐熱性、耐摩耗性、絶縁性などに優れているため、各種部材の保護膜として広く用いられている。シリコン系の被膜の成膜方法のひとつとして、ポリシラザン等の前駆体ポリマーが用いられる。ポリシラザンは、常温でもシリカへの転化反応が進み、その結果、石英ガラスと同じ物性のシリカが得られるため、耐熱温度の低い樹脂製の部材の被膜の形成に適用できる。ところが、シリカの被膜は非常に硬いため、クラックが生じやすく、成膜が難しいという問題がある。また、シリカの被膜は、表面に水酸基を有しない有機材料からなる部材に形成されると、部材との密着性が低いという問題もある。
上記の問題を解決するために、ポリシラザンとアクリル系樹脂などの有機高分子とを混合して用いる方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、単にアクリル樹脂にポリシラザンを混合しただけでは、相分離をおこし不均一となり混和しない。このような不均一な混合物を用いて被膜を形成すると、ハードコート膜は白濁し、ポリシラザンから転化したシリカの粒子が光を散乱して十分な透明度を有する被膜が得られない。
また、有機溶剤を含む塗膜を耐薬品性が低い樹脂製の基材に形成すると、溶剤の種類や塗装方法によっては、基材の被塗装面が劣化する。そこで、特許文献1には、ポリシラザンの良溶剤であって基材の樹脂に不活性である溶剤を用い、樹脂製の基板に塗膜を形成することが記載されている。ところが、前述のようにポリシラザンとアクリル樹脂等の有機高分子とを混合して用いる場合には、基板の樹脂に不活性な溶剤は他の有機高分子にも不活性であることが多いため、均一な塗膜を得ることは困難である。
特開平9−175868号公報
そこで、発明者等は、上記問題点を解決する新規の塗料組成物を発明するに至った。すなわち、本発明は、塗装の際に発生する被塗装面の劣化を抑制することができる塗料組成物およびその調製方法、また、その塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法および透明性保護膜を有する有機ガラスを提供することを目的とする。
本発明は、透明性高分子とポリシラザンとを併用した場合であっても、2種類以上の溶媒を混合して用いることにより、被塗装面の劣化を抑制できる塗料組成物が得られることに着目した。さらには、塗料組成物の調製方法を特定の方法とすることで、従来よりも表面硬度の高い透明性保護膜が得られる塗料組成物を調製できることを見出した。
すなわち、本発明の塗料組成物は、水酸基を有する透明性高分子と、ポリシラザンと、からなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも該透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒と、の混合物を含むことを特徴とする。
ここで、「乾燥溶媒」とは、脱水された溶媒であって、ポリシラザンが加水分解されない程度まで脱水された溶媒を指す。
前記原料高分子は、前記ポリシラザンが前記透明性高分子にグラフトしたグラフト重合体を含むのが好ましい。この際、前記第二乾燥溶媒は、前記ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒であって、前記グラフト重合体は、前記透明性高分子からなるコアと、前記ポリシラザンからなるシェルと、をもつ高分子ミセルを形成するのが好ましい。
本発明の塗料組成物の調製方法は、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、を含む溶液を不活性雰囲気下で調製する第一調製工程と、少なくとも前記透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒を前記溶液に添加して塗料組成物を調製する第二調製工程と、からなることを特徴とする。
前記第二乾燥溶媒は、前記ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒であって、前記第二調製工程は、前記溶液に該第二乾燥溶媒を滴下する工程であるのが望ましい。
本発明の塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法は、水酸基を有する透明性高分子と、ポリシラザンと、からなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも該透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒と、の混合物を含む塗料組成物を調製する調製工程と、該塗料組成物を基材の表面に塗布する塗布工程と、前記ポリシラザンをシリカに転化させて該塗料組成物を硬化させ、透明性保護膜とする硬化工程と、からなることを特徴とする。
前記基材は透明性を有する樹脂からなる樹脂製基材であり、前記第二乾燥溶媒は該樹脂に対して不活性な貧溶媒であるのが望ましい。また、前記塗布工程は、通常用いられる塗工法であればスプレー法、スピンコート法などが適用可能であるが、外観品質の点で、ディップコート法またはフローコート法により前記塗料組成物を塗布する工程であるのが望ましい。
本発明の透明性保護膜を有する有機ガラスは、透明性を有し樹脂からなる基板と、該基板の表面に塗布された、水酸基を有する透明性高分子と、ポリシラザンと、からなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも前記基板の樹脂に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒と、の混合物を含む塗料組成物からなり、前記透明性高分子からなる有機部と、該透明性高分子の水酸基と反応し結合した前記ポリシラザンが転化したシリカからなる無機部と、をもつ有機−無機ナノコンポジットである透明性保護膜と、を有することを特徴とする。
前記第二乾燥溶媒は、前記透明性高分子に対して不活性な貧溶媒であり前記ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒であって、前記透明性保護膜は、中心部よりも外側部にシリカを多く含むシリカ粒子を含むのが好ましい。
本発明の塗料組成物および塗料組成物の調製方法、塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法および透明性保護膜を有する有機ガラスにおいて、混合乾燥溶媒中のポリシラザンの分子は、透明性高分子の水酸基と反応し結合して、透明性高分子に固定される。そのため、巨視的な相分離は抑制され、透明性高分子とポリシラザンの分子とが微視的に相分離する。その結果、透明性保護膜とした際に、ポリシラザンから転化したシリカの粒子による光の散乱が低減され、透明性保護膜の透明度が向上する。
また、塗料組成物には、透明性高分子およびポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒が用いられる。第二乾燥溶媒は、透明性高分子に対して不活性であるため、塗料組成物を耐薬品性の低い基材に塗装する場合であっても、溶媒との接触により生じる基材の劣化が抑制される。特に、基材が透明な樹脂基板であれば、白化による透明性の低下を抑制することができる。
また、塗料組成物が上記高分子ミセルを含む場合には、硬化により高分子ミセルが転化したシリカ粒子を含む透明性保護膜が得られる。シリカ粒子の存在により、本発明の透明性保護膜を有する有機ガラスの表面硬度がさらに向上する。
本発明の塗料組成物の調製方法は、本発明の塗料組成物を調製する方法であって、第一調製工程後の第二調製工程にて第二乾燥溶媒を添加することにより、塗料組成物を良好に調製することができる。この際、第二調製工程において、第一調製工程で得られた溶液に第二乾燥溶媒を滴下すると、高分子ミセルが形成される。
本発明の透明性保護膜の製造方法において、塗料組成物をディップコート法またはフローコート法により基材の表面に塗布すれば、塗料組成物と基材との接触時間が短縮され、さらに基材の劣化が抑制される。
本発明の透明性保護膜を有する有機ガラスにおいて、透明性保護膜は、本発明の塗料組成物から形成されるため、白化が抑制されるとともに、耐摩耗性に優れる。
以下に、本発明の塗料組成物、塗料組成物の調製方法、塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法および透明性保護膜を有する有機ガラスを実施するための最良の形態を説明する。
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、混合乾燥溶媒と、の混合物を含む。混合乾燥溶媒は、透明性高分子およびポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる。
透明性高分子は、水酸基を有する透明な高分子であれば特に限定はない。たとえば、水酸基を有するスチレン類や水酸基を有するアクリル樹脂などが使用できる。また、透明性高分子は、透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入した重合体であってもよい。透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入することにより、透明性高分子が有する水酸基の量や導入位置を調整することができる。
透明樹脂としては、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、などの水酸基を持たないスチレン類(メトキシスチレンなどのアルコキシスチレンやブチロメチルスチレンなどのハロゲン化メチルスチレン等を含む)を重合して得られる高分子や、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、などを重合して得られる高分子のアクリル樹脂、ポリビニルピリジン、ポリビニルカルバゾールなどが使用できる。また、上記以外にも、たとえば、ポリカーボネート、シクロオレフィン樹脂、脂環式オレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、脂環式アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、オレフィン系マレイミド樹脂、などの透明性を有する樹脂であれば使用することができる。なお、これらの透明樹脂は、2種類以上を混合して用いてもよい。
水酸基を有する単量体としては、3−ビニルフェノール、ヒドロキシメチルスチレン、4−ビニルベンジル−4−ヒドロキシブチルエーテル、4−(ヒドロキシメチルシリルフェニル)スチレン、などの水酸基を有するスチレン類や、ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水酸基を有するアクリル樹脂や、N−(4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシカルボニル)メタクリルアミドなどの水酸基を有するアクリルアミド樹脂などが使用できる。なお、これらの水酸基を有する単量体は、2種類以上を混合して用いてもよい。
そして、透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入した重合体は、その重合方法に特に限定はなく、透明樹脂および水酸基をもつ単量体の種類に合った重合方法を適宜選択すればよいが、通常、ラジカル重合や、アニオン重合、カチオン重合、メタセシス重合、リビングカチオン重合、などの方法で合成される。
本発明の塗料組成物において用いられるポリシラザンは、(−Si−N−)n で表される重合体からなり、通常、Si(珪素原子:4価)の2つの結合手およびN(窒素原子:3価)の1つの結合手には、水素原子や有機基が結合している。また、珪素原子や窒素原子の結合手には、他の珪素原子や窒素原子が結合してもよく、その場合は、環状構造や架橋構造を有するポリシラザンとなる。
そして、ポリシラザンは、水および酸素の存在下で分解して窒素原子と酸素原子とが置換する転化反応により硬化し、シリカとなる。そのため、ポリシラザンを含む塗料組成物から形成される膜は、硬度が高い。さらに、ポリシラザンからシリカへの転化反応は常温でも進み、高温で処理する必要がないので、共に用いられる透明性高分子が劣化するおそれが無く、耐熱性の低い基材や組み立て後の部品などに透明性保護膜を形成することも可能である。
ポリシラザンは、通常、シリカの被膜の形成に用いられているポリシラザンであれば特に限定はない。特に好ましいのは、ペルヒドロポリシラザン(PHPS)である。PHPSは、硬化温度が低いため、本発明に適したポリシラザンである。また、部分メチル化ペルヒドロポリシラザンを用いてもよい。なお、2種以上のポリシラザンを混合して用いてもよい。
また、原料高分子は、ポリシラザンが透明性高分子にグラフトしたグラフト重合体を含むのが好ましい。ポリシラザンは、水酸基と容易に反応して結合する(たとえばPHPSであれば、PHPSのSiH基と水酸基とが脱水素反応を起こしSi−O結合を形成する)。そのため、原料高分子のうちの少なくとも一部が、透明性高分子からなる幹のブロックにポリシラザンの分子からなる枝のブロックが結合したグラフト重合体を形成していてもよい。さらに、グラフト重合体は、透明性高分子からなるコアと、ポリシラザンからなるシェルと、をもつ高分子ミセルを形成するのが好ましい。この際、高分子ミセルは、10〜5000nmの粒径をもつのが好ましく、さらに好ましくは10〜2000nmである。高分子ミセルの粒径が5000nmを超えると、成膜時の透明性が悪化したり、クラック等が生じやすくなるため好ましくない。なお、高分子ミセルの形成に関しては、[塗料組成物の調製方法]の欄で詳説する。
水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとの使用割合に特に限定はなく、ポリシラザンの使用割合が多いほど透明性保護膜の硬度は高くなる。具体的には、透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子を100重量%としたときにポリシラザンが10重量%以上であるのが好ましい。ポリシラザンが10重量%以上であれば、十分な硬度を有する透明性保護膜を得ることができる。また、ポリシラザンが95重量%以下であるのが好ましく、透明性保護膜に生じる割れや剥離が抑制される。したがって、ポリシラザンは10〜95重量%であるのが好ましく、さらに好ましくは15〜95重量%である。
また、透明性高分子は、水酸基をもつ成分を2mol%以上含むのが好ましい。ここで「水酸基をもつ成分を2mol%以上」とは、透明性高分子が、透明樹脂に水酸基を1つもつ単量体を導入した重合体である場合の単量体の成分量である。そのため、水酸基を2つもつ単量体を導入する場合は、その半分でよい。ただし、透明性高分子は透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入した重合体に限定されない。つまり、本質的には、透明性高分子中の水酸基の数を表している。水酸基をもつ成分を2mol%以上含んだ透明性高分子を用いた塗料組成物は、巨視的な相分離が効果的に抑制され、ポリシラザンの分散性が良好となる。その結果、高硬度かつ高透明性を有する透明性保護膜を得ることができる。
なお、前述したように、透明性高分子は、透明樹脂に水酸基をもつ単量体を導入することにより、透明性高分子の大きさや、透明性高分子がもつ水酸基の量や位置を調整することができる。その結果、隣接する水酸基の距離を調整することができ、同一分子内で互いに隣接する2以上の水酸基とポリシラザン分子とを結合させたり、透明性高分子の特定の部分にポリシラザン分子を固定させたりすることが可能となる。さらに、水酸基をもつ単量体の分子量や、単量体の有する官能基を選択することにより、他の機能を付加することも可能である。なお、透明性高分子はその成形性より、数平均分子量が3000以上であることが、また隣接する水酸基間の距離は1.5nm以上であることが望ましい。
混合乾燥溶媒は、第一乾燥溶媒と第二乾燥溶媒とからなる。ここで、「乾燥溶媒」とは、ポリシラザンが加水分解されてゲル化しない程度まで脱水された溶媒である。溶媒が水を含むと、水との反応によりゲル化が進み好ましくないため、乾燥剤を用いるなどの方法により水分を除去した乾燥溶媒を用いる。また、第一乾燥溶媒および第二乾燥溶媒としては、互いに混和し、混合乾燥溶媒としたときに原料高分子を分散可能な溶媒を選択して用いるのが好ましい。さらに、ポリシラザンは、水酸基と反応し易いため、水酸基を含まない溶媒を用いるほうがよい。
第一乾燥溶媒は、透明性高分子およびポリシラザンに対して良溶媒である溶媒である。そのため、原料高分子は混合乾燥溶媒に溶解し、溶媒中に分散することが可能である。第一乾燥溶媒としては、用いる透明性高分子およびポリシラザンに対して良溶媒である有機溶媒を使用することができる。具体的には、芳香族炭化水素としてはベンゼン、トルエン、キシレンなど、エステルとしては酢酸エチル、酢酸n−ブチルなど、ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトンなど、エーテル類としてはジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、また、クロロホルムやピリジン等が挙げられる。
なお、原料高分子を溶解する溶媒として第一乾燥溶媒のみを使用しても、塗料組成物として使用することは可能である。ところが、透明性高分子に対して良溶媒である第一乾燥溶媒は、耐薬品性の低い材料、特に樹脂に対しても良溶媒となる。そのため、塗料組成物を塗布する際に、塗料組成物との接触面が良溶媒により劣化する虞がある。そこで、本発明の塗料組成物では、第一乾燥溶媒とともに、少なくとも透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒を用いる。
第二乾燥溶媒は、少なくとも透明性高分子に対して貧溶媒、つまり少なくとも透明性高分子に対して不活性であればよく、透明性高分子に対して貧溶媒でありポリシラザンに対して良溶媒であってもよい。具体的には、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカリン、灯油、石油などを用いることができる。なお、透明性高分子およびポリシラザンに対して良溶媒である第一乾燥溶媒と、透明性高分子に対して貧溶媒でありポリシラザンに対して良溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒を用いると、高分子ミセルが形成されやすい。
また、第一乾燥溶媒と第二乾燥溶媒との組み合わせに特に限定はなく、用いる原料高分子の種類や量、溶媒の種類に応じて適宜選択すればよい。特に、第一乾燥溶媒に酢酸エチル、第二乾燥溶媒にシクロヘキサン、を用いれば、透明性に優れた透明性保護膜が得られる。
第二乾燥溶媒の割合は、塗料組成物の調製方法、用いる原料高分子の種類や量、溶媒の種類にもよるが、混合乾燥溶媒を100体積%としたときに10〜90体積%であるのが好ましい。第二乾燥溶媒が10体積%以上であれば、塗料組成物を塗装する基材の劣化を良好に抑制することができる。第二乾燥溶媒が90体積%以下であれば、原料高分子のうち特に透明性高分子を高濃度で用いることができる。また、透明性高分子の濃度が高いと、塗料組成物の粘度が高くなるため、一度の塗装により膜厚の厚い塗膜を形成することができる。第二乾燥溶媒は、さらに好ましくは、20〜80体積%であり、基材の劣化をさらに抑制できるとともに、透明性高分子をさらに高濃度で用いることができる。
なお、本発明の塗料組成物は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、他の機能を追加するために、必要に応じて、乾燥促進剤や紫外線吸収剤、帯電防止剤などの別の物質を混合してもよい。
[塗料組成物の調製方法]
本発明の塗料組成物の調製方法は、既に説明した塗料組成物を調製する方法である。原料高分子と混合乾燥溶媒とを一度に混合してもよいが、本発明の塗料組成物の調製方法は、第一調製工程と第二調製工程と、の二工程からなるのが望ましい。
第一調製工程は、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、透明性高分子およびポリシラザンに対して良溶媒である第一乾燥溶媒と、を含む溶液を不活性雰囲気下で調製する工程である。
前述したように、ポリシラザンは、水蒸気や酸素が存在する空気中で、ゲル化や転化が進行する。そのため、ポリシラザンの反応性が低い不活性な雰囲気下で、塗料組成物を調製する必要がある。たとえば、水を含まない窒素ガスや希ガスなどの不活性ガス雰囲気中で調製するのが望ましい。なお、第一調製工程において、溶液中に溶解され分散した透明性高分子とポリシラザンとの反応がはじまる。ポリシラザンは、水酸基と容易に反応して結合するため、塗料の調製中にポリシラザンを前記透明性高分子にグラフトさせてグラフト重合体を形成することが可能である。
第二調製工程は、少なくとも透明性高分子に対して貧溶媒である第二乾燥溶媒を、第一調製工程で調製された溶液に添加して塗料組成物を調製する工程である。すなわち、第二乾燥溶媒は、グラフト重合体の合成中、または、グラフト重合体の合成終了後に添加されるとよい。第二調製工程は、不活性な雰囲気下で行うのが望ましいが、第二乾燥溶媒中への水の溶解性が低いため、大気中で行ってもよい。
第一調製工程で得られた溶液に第二乾燥溶媒を添加する方法に特に限定はなく、たとえば、所定の量の第二乾燥溶媒を一度に添加してもよいし、少量ずつ分割して添加してもよい。ただし、第二乾燥溶媒を溶液に添加すると、原料高分子に対して良溶媒である第一乾燥溶媒の濃度が低下して原料高分子が析出することがあるが、析出物を除去すれば塗料組成物として良好に用いることができる。
また、第二調製工程は、第一調製工程で得られた溶液に第二乾燥溶媒を滴下する工程であるのが望ましい。この際、第二乾燥溶媒がポリシラザンに対して良溶媒であれば、溶液中で、透明性高分子からなるコアとポリシラザンからなるシェルとをもつ高分子ミセルが形成される。以下に、高分子ミセルの形成過程を説明する。
透明性高分子に対しては、第一乾燥溶媒が良溶媒であり第二乾燥溶媒が貧溶媒であり、ポリシラザンに対しては、第一乾燥溶媒および第二乾燥溶媒が良溶媒である。すなわち、透明性高分子とポリシラザンとが結合したグラフト重合体は、両親媒性をもつ。そのため、原料高分子を第一乾燥溶媒に溶解した溶液に第二乾燥溶媒を滴下すると、グラフト重合体を構成する透明性高分子の部分をコアとしポリシラザンの部分をシェルとする高分子ミセルが形成される。この際、透明性高分子に対して良溶媒である第一乾燥溶媒が高分子ミセルの内部に取り込まれ(可溶化)、透明性高分子に対して貧溶媒である第二乾燥溶媒が高分子ミセルの周辺部を取り囲んでもよい。
なお、高分子ミセルの形成は、塗料組成物における第二乾燥溶媒の添加量を変化させた溶液を調製し、各溶液に対して光散乱測定を行うことにより確認することができる。第二乾燥溶媒の添加量が増加する程、ミセルの形成は進行する。
そして、高分子ミセルが形成されることにより、溶液に多量の第二乾燥溶媒を添加しても、原料高分子(グラフト重合体)の析出が抑制される。特に、第一乾燥溶媒が高分子ミセルの内部に取り込まれる場合には、高分子ミセルを分散する溶媒の実質的な第一乾燥溶媒の濃度は低下する。その結果、塗料組成物を耐薬品性の低い材料に塗布する際に発生する、材料の劣化をさらに低減することができる。
なお、第二乾燥溶媒を0.01〜0.20ml/秒の速度で滴下すれば、高分子ミセルが良好に形成される。また、溶液を攪拌しつつ第二乾燥溶媒を滴下するのが望ましい。
第二調製工程では、第一乾燥溶媒と第二乾燥溶媒との合計を100体積%としたときに第二乾燥溶媒を10〜90体積%添加するのが望ましく、さらに望ましくは20〜80体積%である。
[塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法]
本発明の塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法は、既に説明した塗料組成物を用いて基材の表面に透明性保護膜を製造する方法である。本発明の塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法は、調製工程と塗布工程と硬化工程と、からなる。調製工程については、[塗料組成物の調製方法]の欄で既に述べた。
塗布工程は、塗料組成物を基材の表面に塗布する工程である。基材の種類に限定はなく、たとえば、金属製基材や樹脂製基材などに塗布することができる。特に、樹脂製基材は、透明性を有する樹脂からなるのが望ましい。樹脂製基材としては、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、シクロオレフィン樹脂などのエンジニアリングプラスチックなどが望ましい。この際、第二乾燥溶媒は透明性を有する樹脂に対して貧溶媒であるのが望ましい。貧溶媒を含む塗料組成物は、塗料組成物を樹脂製基材に塗布する際に発生する白化を低減できるため、基材の透明性を損なわない。
また、塗料組成物を基材の表面に塗布する塗工法に特に限定はないが、ディップコート法またはフローコート法により前記塗料組成物を塗布するのが望ましい。ディップコート法やフローコート法は、基材の表面が塗料組成物に長時間さらされないので、塗料組成物による基材の劣化が低減される。
硬化工程は、ポリシラザンをシリカに転化させて塗料組成物を硬化させ、透明性保護膜とする工程である。塗料組成物中では、透明性高分子とポリシラザンとが溶媒中に微視的に相分離した状態で存在する。水と酸素の存在下では、塗料組成物は、ポリシラザンの分子が透明性高分子を架橋してゲル化し、その後、混合乾燥溶媒が揮発すると共にポリシラザンの分子がシリカへと転化することにより、透明性保護膜が得られる。
なお、高分子ミセルを含む塗料組成物を用いた場合には、硬化工程においてポリシラザンが転化しても、高分子ミセルはその形状を保ったままの状態で、中心部よりも外側部にシリカを多く含むシリカ粒子となって透明性保護膜に残存する。
さらに、塗料組成物中の透明性高分子や基材を劣化させない程度の温度であれば、硬化工程において焼結することによりポリシラザンの転化を促進させることも可能であり、より短時間で塗料組成物が硬化する。なお、ポリシラザンのガラス転移温度以下での焼結であれば、塗料組成物がもつ微視的な構造が失われることはない。
[透明性保護膜を有する有機ガラス]
本発明の透明性保護膜を有する有機ガラスは、透明性を有し樹脂からなる基板と、樹脂基板の表面に塗布された本発明の塗料組成物からなり上記の製造方法により得られる有機−無機ナノコンポジットである透明性保護膜と、からなる。
本発明の透明性保護膜を有する有機ガラスにおいて、透明性を有し樹脂からなる基板は、高透明度を有するエンジニアリングプラスチックなどが好ましく、特にポリカーボネートが好ましい。ポリカーボネートは、寸法安定性に優れ難燃性であるため、有機ガラスの基材として好適であるが、耐薬品性に劣る。そのため、本発明の塗料組成物を用いれば、透明性保護膜を良好に形成することができる。
透明性保護膜は、上記塗料組成物からなり、透明性高分子からなる有機部と、透明性高分子の水酸基と反応し結合したポリシラザンが転化したシリカからなる無機部と、をもつ有機−無機ナノコンポジットである。[塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法]の欄で説明したように、樹脂基板の表面に塗布された本発明の塗料組成物には巨視的な相分離は見られず、微視的に相分離した状態でゲル化する。その後、ポリシラザンがシリカに転化することにより、透明性高分子からなる有機部と、透明性高分子の水酸基と反応し結合したポリシラザンが転化したシリカからなる無機部と、をもつ有機−無機ナノコンポジットが形成される。
有機−無機ナノコンポジットでは、無機部は、透過する光の屈折に影響を及ぼさない程度に微細であるため、有機−無機ナノコンポジットからなる透明性保護膜は、高い透明度を有する。その結果、有機−無機ナノコンポジットからなる透明性保護膜を有する有機ガラスは、高い透明度を有する有機ガラスとなる。そして、透明性保護膜は、有機−無機ナノコンポジットからなるため、高硬度でありながら、割れや剥がれが生じ難く、有機部と無機部の性質を合わせもった透明性保護膜である。
透明性保護膜は、中心部よりも外側部にシリカを多く含むシリカ粒子を含むのが好ましい。このシリカ粒子は、塗料組成物に含まれる高分子ミセルが転化反応により硬化して形成されたものである。高分子ミセルは、シリカ粒子となったときにも、高分子ミセルとほぼ同等の大きさと形状を維持する。すなわち、シリカ粒子は、10〜5000nmの粒径をもつのが好ましい。シリカ粒子により、透明性保護膜は高硬度となり、有機ガラスの表面硬度が向上する。
さらに、本発明の透明性保護膜を有する有機ガラスは、表面硬度が0.4GPa以上である。表面硬度が0.4GPa以上であれば、耐擦傷性に優れ、バックウィンドウガラスやサンルーフ等の自動車用ガラスとして好適である。
また、透明性保護膜は、その膜厚が10μm以下であっても、優れた耐擦傷性を示す。したがって、透明性保護膜の膜厚を増加させる必要がないため、仮に透明性保護膜の透明度よりも樹脂基板の透明度が高い場合でも、樹脂基板の透明性を保持することができ、高透明度かつ表面硬度の高い有機ガラスとなる。
以上、本発明の塗料組成物および塗料組成物の調製方法、塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法および透明性保護膜を有する有機ガラスの実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、本発明の実施例および比較例を、表を用いて説明する。
[塗料組成物の調製]
透明性高分子として、ポリ(メチルメタクリレート-co-ヒドロキシエチルメタクリレート)を原子移動ラジカル重合により合成した(以下「PMMA」と略記)。PMMAの各成分は、メチルメタクリレート:84.9mol%、ヒドロキシエチルメタクリレート:15.1mol%、数平均分子量は2.3×104 であった。なお、PMMAの各成分のモル分率は、 1H原子を用いた核磁気共鳴吸収法(NMR)により、また、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
次に、PMMAを、金属ナトリウムにより脱水された酢酸エチル(第一乾燥溶媒)に溶解した。その後、窒素雰囲気下、室温にて、ペルヒドロポリシラザン−キシレン溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ製NN−110;PHPS濃度20重量%、数平均分子量700)を加え、24時間攪拌した。なお、キシレンは、第一乾燥溶媒に分類される。この際、溶液中では、脱水素反応によりPHPSがPMMAにグラフトしたグラフト重合体が合成された。得られた溶液に、大気下にて、所定の量のシクロヘキサン(第二乾燥溶媒)を添加し攪拌して、塗料1〜12を調製した。
さらに、比較例として、シクロヘキサンを添加しない他は、塗料1〜12と同様にして塗料13を調製した。また、酢酸エチルのかわりにテトラヒドロフランを用いた他は、塗料13と同様にして塗料14を調製した。
表1に、各塗料の透明性高分子(PMMA)、溶媒、ペルヒドロポリシラザン−キシレン溶液(NN−110)の調製条件を示す。なお、表1において、「添加方法」は、シクロヘキサンの添加方法を示す。添加方法Aでは、溶液に0.5〜1mlのシクロヘキサンを加えるごとに攪拌し、所望の添加量になるまで繰り返し行った。添加方法Bでは、スターラーにより攪拌されている溶液にシクロヘキサンを0.01〜0.15ml/秒の速度で所望の添加量になるまで滴下した。また、「PMMA分率」は、塗料の重量に対するPMMAの重量(計算値)である。
〈塗料の評価〉
上記の手順で得られた塗料を評価するために、塗料1〜14に生じた析出物の有無を目視により確認した。結果を表1に示す。塗料13および14は、PMMAに対して貧溶媒であるシクロヘキサンを添加しないため、析出物は生じなかった。一方、添加方法Aでシクロヘキサンを添加した塗料1〜4では、グラフト重合体が析出して沈殿した。なお、添加方法Aでシクロヘキサンを添加しても、シクロヘキサンが20重量%未満であれば、析出は生じなかった。また、添加方法Bでシクロヘキサンを添加した塗料5〜12では、析出物は生じなかった。シクロヘキサンを滴下して添加したことで、高分子ミセルが形成されたためである。
そこで、塗料5〜12(添加方法Bによる)について、動的光散乱法による光散乱測定を行い、凝集体の直径を測定した。結果を表1に示す。なお、表1において「×」は、高分子ミセルが形成されていないものである。塗料5〜12では、10〜2000nmの粒径をもつ高分子ミセルが検出された。
Figure 0004836061
[透明性保護膜の製造]
調製された塗料1〜14(塗料1〜4は析出物を取り除いて使用)を、ポリカーボネート押し出し成形板(三菱ガス化学製ユーピロンシート(NF−2000):150mm×100mm×1.0mm、以下「PC板」と記載)の表面にフローコート法により塗布した。塗布後、室温で24時間乾燥し、PC板上に透明性保護膜を有する有機ガラスである試料1〜14を得た。得られた透明性保護膜の膜厚を表2に示す。なお、表2において、「シリカ分率」の欄は、透明性保護膜に占めるシリカの体積(計算値)である。また、「乾燥・焼成方法」の欄は、室温で24時間乾燥したものをa、乾燥後さらに100℃で3時間焼成したものをb、とした。
〈試料の評価〉
上記の手順で得られた試料を評価するために、試料の透明性を測定した。各試料の透明性は、紫外可視分光光度計(日本分光製JascoV−530)を用い、200〜1100nmの測定波長範囲で行った。測定結果を表2に示す。なお、表2において、○はPC板と同等の透明性、△は僅かに不透明、×は不透明、をそれぞれ示す。試料1〜12では、濁りが無く、透明性保護膜に割れや剥がれも見られない良好な外観であった。すなわち、試料1〜12は、PCに対して貧溶媒であるシクロヘキサンが添加されている塗料1〜12を用いたため、PC板の表面の劣化が抑制された。一方、試料13および14では、白化による透明度の低下が確認された。
また、高い透明性をもつ試料1〜12について、表面硬度および弾性率を測定した。表面硬度および弾性率は、ナノインデンテーション法により測定した。ナノインデンターには、原子間力顕微鏡(AFM:SHIMADZU社製SPM9500J2)に取り付けたHYSITORON社製Toriboscopeを用いた。なお、ナノインデンテーション法によれば、基板の影響を受けずに、透明性保護膜そのものの硬度、弾性率を測定することができる。表面硬度および弾性率の測定結果を表2に示す。
試料1〜12は、高い表面硬度および弾性率を有した。なかでも、試料5〜12の表面硬度および弾性率は、試料1〜4の何れの試料よりも高かった。具体的には、試料1と試料5では、透明性保護膜の膜厚やシリカの体積分率は同等程度であるが、試料5は、表面硬度、弾性率ともに試料1よりも高かった。これは、高分子ミセルを含む塗料5を用いて、試料5を作製したためである。
なお、塗料中の高分子ミセルは、転化反応により、高分子ミセルと同程度の粒径をもつシリカ粒子として透明性保護膜に含まれる。このシリカ粒子は、AFMを用いて確認することができる。一例として、上記のAFMにより試料12の表面を観察したAFM像を図1に示す。試料12のAFM像によれば、5.00×5.00μmの範囲に200〜500nmの粒径をもつシリカ粒子が確認された。
また、試料1〜12では、透明性保護膜を2.5μm程度形成すれば、高い表面硬度をもつ有機ガラスが得られた。0.4GPa以上の表面硬度をもつ有機ガラスは、自動車用に好適である。
Figure 0004836061
実施例の透明性保護膜(試料12)の表面を原子間力顕微鏡により観察した結果を示す。

Claims (15)

  1. 水酸基を有する透明性高分子と、ポリシラザンと、からなる原料高分子と、
    該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも該透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒と、
    の混合物を含むことを特徴とする塗料組成物。
  2. 前記原料高分子は、前記ポリシラザンが前記透明性高分子にグラフトしたグラフト重合体を含む請求項1記載の塗料組成物。
  3. 前記第二乾燥溶媒は、前記ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒であって、
    前記グラフト重合体は、前記透明性高分子からなるコアと、前記ポリシラザンからなるシェルと、をもつ高分子ミセルを形成する請求項2記載の塗料組成物。
  4. 前記高分子ミセルは、10〜5000nmの粒径をもつ請求項記載の塗料組成物。
  5. 前記第二乾燥溶媒は、前記混合乾燥溶媒を100体積%としたときに10〜90体積%である請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
  6. 水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、を含む溶液を不活性雰囲気下で調製する第一調製工程と、
    少なくとも前記透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒を前記溶液に添加して塗料組成物を調製する第二調製工程と、
    からなることを特徴とする塗料組成物の調製方法。
  7. 前記第二乾燥溶媒は、前記ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒であって、
    前記第二調製工程は、前記溶液に該第二乾燥溶媒を滴下する工程である請求項6記載の塗料組成物の調製方法。
  8. 前記第二調製工程は、前記第二乾燥溶媒を0.01〜0.20ml/秒の速度で滴下する工程である請求項7記載の塗料組成物の調製方法。
  9. 水酸基を有する透明性高分子と、ポリシラザンと、からなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも該透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒と、の混合物を含む塗料組成物を調製する調製工程と、
    該塗料組成物を基材の表面に塗布する塗布工程と、
    前記ポリシラザンをシリカに転化させて該塗料組成物を硬化させ、透明性保護膜とする硬化工程と、
    からなることを特徴とする塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法。
  10. 前記基材は透明性を有する樹脂からなる樹脂製基材であり、前記第二乾燥溶媒は該樹脂に対して不活性な貧溶媒である請求項9記載の塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法。
  11. 前記塗布工程は、ディップコート法またはフローコート法により前記塗料組成物を塗布する工程である請求項9または10に記載の塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法。
  12. 透明性を有し樹脂からなる基板と、
    該基板の表面に塗布された、水酸基を有する透明性高分子と、ポリシラザンと、からなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも前記基板の樹脂に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒と、の混合物を含む塗料組成物からなり、前記透明性高分子からなる有機部と、該透明性高分子の水酸基と反応し結合した前記ポリシラザンが転化したシリカからなる無機部と、をもつ有機−無機ナノコンポジットである透明性保護膜と、
    を有することを特徴とする透明性保護膜を有する有機ガラス。
  13. 前記第二乾燥溶媒は、前記透明性高分子に対して不活性な貧溶媒であり前記ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒であって、
    前記透明性保護膜は、中心部よりも外側部にシリカを多く含むシリカ粒子を含む請求項12記載の透明性保護膜を有する有機ガラス。
  14. 前記シリカ粒子は、10〜5000nmの粒径をもつ請求項13記載の透明性保護膜を有する有機ガラス。
  15. 前記樹脂基板は、ポリカーボネートである請求項12〜14のいずれかに記載の透明性保護膜を有する有機ガラス。
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