JP4835679B2 - 光ケーブル - Google Patents

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本発明は溝付きスロットの溝内に複数本の光ファイバ心線を収納し、スロットの外周に粗巻き紐、上巻テープ、ケーブル外被を順次施してなる光ケーブルに関する。
近年の映像配信、IP電話、データ通信等のブロードバンドサービスの拡大により、光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス(FTTH:Fiber To The Home)の加入者が増加している。このFTTHでは、架空の幹線光ケーブルからドロップ光ケーブルを用いて加入者宅等に引き落されている。加入者宅への光ファイバの引き落しは、例えば、市街の電柱等に布設された幹線光ケーブルを、通常、クロージャと称されている接続函で分岐し、分岐された光ファイバ心線にドロップ光ケーブルを融着接続又は光コネクタを用いて接続している。
幹線光ケーブルは、例えば、図1に示すように、SZ状に形成された複数条の溝2aを有し、中心にテンションメンバ3を埋設した樹脂製のロッドからなるスロット2(スペーサとも言う)が用いられる。スロット2の溝2aには、複数本の単心光ファイバ心線あるいは多心の光ファイバテープ心線4を収納し、ケーブル製造中にこれらがスロットの溝2aから脱落するのを防止するのに、粗巻き紐5を巻いている。そして、この粗巻き紐5の上から、上巻テープ6(押え巻とも言う)を巻き付けて、光ファイバテープ心線4を覆っている。そして、上巻テープ6の外側を、押出し成形によるケーブル外被7(シースとも言う)で被覆した形状のものが一般的である。
上述のような幹線光ケーブル1の途中部分から、光ファイバを加入者宅等に引き落すには、ケーブルに収納されている複数本の光ファイバ心線の内から、1本〜数本の光ファイバ心線を引出す分岐作業が行われる。この分岐(中間後分岐とも言われている)作業は、分岐部分のケーブル外被7を一定の長さ(50cm程度)除去する。このケーブル外被7が除去された部分では、上巻テープ6が露出されるが、この上巻テープ6をニッパ等より切裂き開始端を形成してから切断する。次いで、上巻テープ6を巻ほぐして剥ぎ取り、次いで、粗巻き紐5を切断し、内部の光ファイバテープ心線4を取り出している。
この場合、粗巻き紐5に撚られていない繊維束が用いられていると、光ケーブルを解体、あるいは、中間分岐する際に、切断された繊維がバラけて互いに絡みあい、スロットの周りに纏わりつき、除去し難くなるという問題があった。これを改善する方法として、例えば、特許文献1には、粗巻き紐5として、撚られた繊維束を用いることが開示され、また、特許文献2には、粗巻き紐5として、伸縮可能な撚った繊維束を用い、切断された際に収縮により分離除去しやすい状態とする技術が開示されている。
特開2007−212523号公報 特開2007−226073号公報
しかしながら、粗巻き紐として撚られた繊維束を巻付けたとしても、繊維束の撚り方向やスロットへの巻付け方向に等によっては、切断した際の粗巻き紐がスロット上に巻付いて残り、必ずしも作業性がよくはならないことがあった。また、粗巻き紐には、合成樹脂繊維が用いられるが、その材質によっては熱収縮率が大きく、ケーブル外被の成型時の熱で収縮を起こし、スロット外面に食い込んで固着するなどで、分離が難しくなる場合がある。
また、上記の光ケーブルの中間分岐作業は、電柱上やバケット車上というような作業環境の悪い状況で行うことが多く、できるだけ簡単で短時間に行えることが要望されている。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、スロットの溝から光ファイバ心線が脱落するのを防止する粗巻き紐を、光ファイバの取出し等のために除去する際には、スロット上から簡単に分離除去することが可能な光ケーブルの提供を目的とする。
本発明による光ケーブルは、溝付きスロットの溝内に光ファイバ心線を収納し、スロットの外周に粗巻き紐、上巻テープ、ケーブル外被が順次施された光ケーブルで、粗巻き紐は、合成樹脂繊維の単糸の複数本を片撚りした撚糸からなり、スロット上への巻付け方向が撚糸の撚り方向と同方向とされる。
また、粗巻き紐は、片撚りした撚糸の複数本を撚り方向と反対方向に撚り合わせた諸撚り撚糸であってもよい。また、粗巻き紐の巻付けピッチは、60mm以下とするのが好ましく、さらに、粗巻き紐の合成樹脂繊維の合計が840dn以上であることが望ましい。また、粗巻き紐の合成樹脂繊維は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
本発明によれば、光ケーブルの解体等で、光ケーブルのスロット上に巻付けている粗巻き紐の端部を切断することにより、自然に巻付け状態が解される。このため、スロット上に巻付けられた粗巻き紐の分離除去を極めて簡単に短時間で行なうことができ、光ケーブルの中間分岐作業等を効率よく実施することが可能となる。
図により本発明の実施の形態を説明する。図1(A)は本発明で対象とする光ケーブルの断面を示す図、図1(B)は光ファイバの中間分岐の作業形態を説明する図、図2(A)〜図2(C)は粗巻き紐の例を説明する図である。図中、1は光ケーブル、2はスロット、2aはスロットの溝、3はテンションメンバ、4は光ファイバ心線(テープ心線)、5は粗巻き紐、5aは合糸、5b、5b’は片撚り撚糸、5cは諸撚り撚糸、6は上巻テープ、7はケーブル外被、8は単糸を示す。
本発明による光ケーブル1は、図1(A)に示すように、中心にテンションメンバ(抗張力体ともいう)3を埋設一体化し、外面に複数条の溝2aを設けたプラスチック材からなるスロット(スペーサともいう)2により構成される。スロット2の溝2aは、SZ状に形成され、溝2a内には複数本の光ファイバ心線又はテープ状の光ファイバ心線4(以下、テープ心線いう)が収納される。光ケーブル1の製造過程で、テープ心線4が溝2a内に収納された後、溝2aから脱落するのを防止するために、粗巻き紐5がスロット2の外周に巻き付けられる。
粗巻き紐5が施されたスロット2の外周には、ケーブル内への止水のため、または、ケーブル外被の成形時に、成形材の熱が光ファイバ心線に悪影響を与えないように熱絶縁のための上巻テープ6が施される。この上巻テープ6は、螺旋巻きあるいは縦添えで施され、その外側をケーブル外被7で被覆して光ケーブル1とされる。なお、螺旋スロットの場合は、粗巻き紐5を用いずに上巻テープ6でテープ心線4の脱落を防止することも可能であるが、SZスロットの場合はテープ心線4を集線して溝2aに収納した後、直ちに粗巻き紐5を施す必要がある。
上述のように構成された光ケーブル1の途中部分から、光ファイバを加入者宅等に引き落すには、光ケーブル1のスロット2の溝2aに収納されている複数本の光ファイバ心線4の内から、1本〜数本の光ファイバ心線を引出す分岐作業が行われる。この分岐作業は、例えば、光ケーブル1の分岐部分のケーブル外被7を一定の長さ(通常、50cm程度)除去する。このケーブル外被7が除去された部分では、上巻テープ6が露出されるが、この上巻テープ6をニッパ等より切裂き開始端を形成し、この開始端を始点にして切り裂く。次いで、この上巻テープ6を巻き解して剥ぎ取る。
上巻テープ6を剥ぎ取ると、粗巻き紐5が露出されるが、露出された粗巻き紐5の端部を刃物等で切断し、その巻付けが緩んだ状態でスロット2から巻き解して除去する。粗巻き紐5を除去すると、SZ状に形成された溝2a内のテープ心線4が、溝2aから脱落して下方に垂れ下がる。この垂れ下がった部分のテープ心線4を外部に取り出し、クロージャ等の接続箱を介して、ドロップ光ケーブル等に接続する作業が行なわれる。
図2は、上述した粗巻き紐5の例を示す図で、図2(A)は合成樹脂繊維の単糸8の複数本を単に並べたもの(以下、合糸5aという)、図2(B)は合成樹脂繊維の単糸8の複数本を一方向に撚ったもの(1次加工したもので、以下、片撚り撚糸5bという)、図3(C)は1次加工した片撚り撚糸5b’の複数本を集めて片撚り方向と反対の方向に、片撚り回数より少ないより回数で撚ったもの(2次加工したもので、以下、諸撚り撚糸5cという)の例を示す。
粗巻き紐5として、図2(A)の合糸5aを用いた場合は、スロットに巻付けられた状態で切断すると、スロット上で単糸8の繊維がバラけて互いに絡み合うため、スロットから分離除去に手間を要し、作業性が極めて悪い。粗巻き紐5として、図2(B)の片撚り撚糸5bを用いた場合は、合糸5aと比べてスロットに巻付けられた状態で切断しても、単糸8の繊維のバラけが少なく、スロット上で絡み合うことは軽減される。
しかし、片撚り撚糸5bの撚り方向と反対の方向でスロット上に巻付けると、巻付けに対して巻き戻そうとする反発力が生じない。すなわち、巻付け状態が馴染むため除去分離のため切断しても、スロット上に巻付いた状態が維持される。したがって、粗巻き紐5の露出された端部を切断した後、巻付け状態を巻き解すようにして、スロットに沿って取り除くこととなる。
図2(C)の諸撚り撚糸5cを用いた場合は、片撚り撚糸5b’の撚り方向と反対の方向(片撚り撚糸5b’の複数本を撚る方向と同じ方向)でスロット上に巻付けると、やはり、上記と同様に粗巻き紐を除去分離のため切断しても、スロット上に巻付いた状態を維持される。このため、上記と同様に、粗巻き紐5の露出された端部を切断した後、巻付け状態を巻き解すようにして、スロットに沿って取り除くこととなる。
本発明においては、上述の点を考慮して、粗巻き紐として、合成樹脂繊維の単糸の複数本を片撚りした撚糸を用い、且つ、スロット上には片撚り撚糸の撚り方向と同じ方向で巻付ける。また、諸撚り撚糸を用いる場合も、スロット上には1次加工の片撚り撚糸の撚り方向と同じで巻付ける。この、粗巻き紐のスロット上への巻付け形態を採用することにより、解体性に優れた光ケーブルとすることができる。
図3は、本発明による上記の光ケーブルの解体性を評価した結果を示す図で、図3(A)は、本発明で粗巻き紐として用いる撚糸の形状を示し、図3(B)は粗巻き紐の解体性の評価結果を示している。
なお、解体性の評価は、光ケーブルのケーブル外被と上巻テープの500mm長を除去して、スロット上に巻付けてある粗巻き紐を露出させ、露出した粗巻き紐の500mm長の両端部をニッパ等の刃物で切断し、スロット上からの分離性を評価したものである。
評価用の粗巻き紐としては、合成樹脂繊維24本分に相当する250dn(デニール)の単糸を6本使用した片撚り撚糸で、図3(A−イ)に示すS撚り撚糸(No.1)と、図3(A−ロ)に示すZ撚り撚糸(No.2)との2種類を用意した。また、図3(A−ハ)に示すような、上記と同じ単糸の2本をZ撚りした撚糸の3本をS撚りした諸撚り撚糸(No.3)と、単糸の2本をS撚りした撚糸の3本をZ撚りした諸撚り撚糸(No.4)との2種類を用意した。
そして、片撚り撚糸の2種類については、撚りピッチ80回/mで撚り(1次加工)、諸撚り撚糸の2種類については、片撚りの撚りピッチ160回/mで撚った後(1次加工)、諸撚りを撚りピッチピッチ80回/mで撚った(2次加工)。スロットは外径の異なる3種(スロット径6.0,9.0,12.0mm)を対象に、スロット直上には、4種の巻付けピッチ(20,40,60,80mm)で、各種類で撚糸の片撚り方向と同じ方向と反対の方向に巻付けて評価した。
評価結果は、図3(B)に示すように、撚糸を用いることで、いずれの場合も樹脂繊維がバラけることはなかった。しかし、No.1およびNo.2の片撚り撚糸の例で示すように、片撚りの撚り方向がS撚りの場合は、スロット上への巻付け方向は同じS方向に巻付けた方が、片撚りの撚り方向がZ撚りの場合は、スロット上への巻付け方向は同じZ方向に巻付けた方が、解体性はベター(◎)であった。No.3およびNo.4の諸撚り撚糸の例においても、1次加工の片撚り撚糸の撚り方向と同じ方向でスロット上に巻付けた方が、解体性はベター(◎)であった。
なお、解体性がベターとは、粗巻き紐の両端を切断したとき、巻付けから解放された撚糸が、巻付けがS方向であったものがZ方向の巻き癖になるように変形して大幅に緩み、極めて分離しやすくなる状態をいう。これに対し、片撚り撚糸の撚り方向と反対の方向で巻付けた場合は、粗巻き紐の両端を切断したときに、多少の緩みは生じるものの、巻付け状態を維持していて、手で巻き解してやる必要がある状態である。
これは、撚糸とすることで、撚り方向と反対の方向に撚りを戻そうとする反発力が残存していることによるものと想定される。例えば、S撚りで片撚りされている撚糸は、Z方向に撚りが戻ろうとする反発力が発生している。そこで、S撚りの撚糸をスロットにS方向で巻付けると、S撚りによる反発力が残存すると共に増強される形態となるため、巻付けを解放すると、その反発力が働いて自然と巻付けが解かれる。
一方、S撚りの撚糸をスロットにZ方向で巻付けると、反発力を解消する形態となるため、スロットへの巻付けが馴染んで、巻付けを解放しても、自然と巻付けが解かれることはなく、スロットに巻付いた状態のままとなる。なお、諸撚り撚糸の場合は、1次加工の撚りが2次加工によるものより大きいため、1次加工の撚り方向で左右される。
なお、撚糸の撚りピッチについては、上述の反発力を高める上では高ピッチとするのが好ましい。しかし、ケーブル外被の肉厚や、粗巻き紐の繊度によっては、ケーブル外被に螺旋状の筋が浮き出ることもあり、図3(B)で示したような程度のピッチとするのが望ましい。
また、粗巻き紐のスロット上への巻付けピッチについては、ピッチが長くなるほど反発力は弱くなる。巻付けピッチが60mmを超えると反発力は、実質的はなくなり、上記のように自然にスロットへの巻付けが解かれるというような解体性は期待することができない。したがって、粗巻き紐の巻付けピッチは60mm未満とするのが望ましい。
撚糸のサイズについては、粗巻き紐として機能、ケーブル外被の外観を考慮すると、小さい方が好ましい。しかし、このサイズをあまり小さくすると、上述した反発力が低下し、粗巻き紐の解体性の向上は難しくなる。したがって、撚糸のサイズとしては、粗巻き紐全体として、840dn(デニール)以上とするのが望ましい。なお、図3では、250dn×6で評価したものを示したが、250dn×5(片撚り)の場合も同様な好ましい結果であった。
また、上記の粗巻き紐には、通常、ナイロン繊維を用いることが多いが、ケーブル外被の肉厚が1.5mm以上の場合は、スロット表面に固着されることがある。これは、ケーブル外被の肉厚が厚ければ厚いほど、その成型時のケーブル外被の温度は、高温になりやすい。このため、例えば、ケーブル外被厚2.0mmの成型時の温度が200℃前後とすると、この温度は上巻テープを経て粗巻き紐まで伝わり、粗巻き紐の温度は140℃程度となる。
粗巻き紐の温度がこの程度の高温になると、粗巻き紐は巻付け径の中心側に向かって収縮し、さらには軟化することで、その樹脂繊維がスロット表面に食い込んで固着することがある。粗巻き紐がスロットに固着すると、その解体性は著しく低下する。そこで、粗巻き紐としての要求特性としては、強度、伸度は従来程度に確保して、軟化温度が高く、収縮率の小さい樹脂繊維材料が望まれる。
図4は、ナイロン樹脂製の紐とポリエステル樹脂製の紐の性能を比較した図である。これによれば、ポリエステル樹脂製の紐は、強度、伸度では大きな差はないが、180℃における収縮率で、ナイロン樹脂製の紐の11%と比べて、4%と小さい。また、ナイロン樹脂製の紐は、融点215℃、軟化点180℃に対して、ポリエステル樹脂製の紐は、融点260℃、軟化点240℃である。したがって、ケーブル外被の肉厚が1.5mm以上の厚さを要する場合は、粗巻き紐はポリエステル樹脂製とするのが好ましい。
本発明による光ケーブルの概略を説明する図である。 光ケーブルで用いられる粗巻き紐の形状を説明する図である。 本発明による粗巻き紐の解体性の評価結果を示す図である。 粗巻き紐の状態を示す図である。
符号の説明
1…光ケーブル、2…スロット、2a…スロットの溝、3…テンションメンバ、4…光ファイバ心線(テープ心線)、5…粗巻き紐、5a…合糸、5b,5b’…片撚り撚糸、5c…諸撚り撚糸、6…上巻テープ、7…ケーブル外被、8…単糸。

Claims (5)

  1. 溝付きスロットの溝内に光ファイバ心線を収納し、前記スロットの外周に粗巻き紐、上巻きテープ、ケーブル外被が順次施された光ケーブルであって、
    前記粗巻き紐は、合成樹脂繊維の単糸の複数本を片撚りした撚糸からなり、前記スロット上への巻付け方向が前記撚糸の撚り方向と同方向であることを特徴とする光ケーブル。
  2. 前記粗巻き紐が、片撚りした撚糸の複数本を撚り方向と反対方向に撚り合わせた諸撚り撚糸であることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブル。
  3. 前記粗巻き紐の巻付けピッチが、60mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ケーブル。
  4. 前記粗巻き紐の合成樹脂繊維の合計が、840dn以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ケーブル。
  5. 前記粗巻き紐の合成樹脂繊維は、ポリエステル樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ケーブル。
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