しかし、特許文献1に記載のような収集体の接地や逆帯電、また特許文献2に記載のような対向電極の接地や逆帯電は、高分子ウエブの製造が継続している間解除されることはない。このため、接地や逆帯電され続ける収集体の裏面には、帯電した埃やゴミなどの静電付着を招くし、高分子ファイバが回り込んでの静電付着も生じる。また、特許文献2に記載のように接地や逆帯電され続ける対向電極にも同様に、帯電した埃やゴミなどの静電付着を招くし、高分子ファイバが回り込んでの静電付着も生じる。
これら接地され逆帯電される収集体の裏面や対向電極に静電付着した、埃やゴミ、回り込み高分子ファイバは、収集体上に収集され堆積する高分子ファイバと同極性であるため互いに反発し合い、紡糸ないし生成される高分子ファイバの収集体上への収集、堆積を阻害する働きをする。しかも、これら埃やゴミ、回り込み高分子ファイバの静電付着量は、高分子ウエブの製造継続時間に比例し、その影響度は次第に高まっていく。
特許文献2には、収集体上に少なくとも1以上の紡糸ノズル毎に高分子ファイバ構造体およびまたは収集体の表面を除電して、次の1以上の紡糸ノズルからの高分子ファイバの収集時に既収集、既堆積の高分子ファイバ構造体と反発し合わずスムーズに収集、堆積され、最終の収集、堆積後の高分子ファイバ構造体を巻き取った後、巻き解いて剥離していくときの下層の帯電影響を防止し、毛羽立ちなどが生じないようにする技術が開示されている。しかし、この技術でも、接地や逆帯電される収集体や対向電極に埃やゴミ、回り込み高分子ファイバが高分子ウエブ製造の間静電付着し続け、紡糸される高分子ファイバの収集、堆積を阻害することは解消されない。
本発明の目的は、対向電極を採用するが、接地ないしは逆帯電させ続けなくても、紡糸される高分子ファイバを収集体上に収集、堆積させて高分子ウエブを製造し、対向電極を接地ないし逆帯電させることによる問題を軽減ないしは解消することができる高分子ウエブの製造方法と装置を提供することにある。
上記のような目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば、高分子ファイバ原料液の孔からの流出ないしは吐出と帯電とによって高分子ファイバを生成して収集体上に電荷誘導して収集、堆積させて、高分子ウエブを製造する高分子ウエブの製造方法において、収集体を介した高分子ファイバ生成源との対向域を含む循環経路にて、その循環経路方向に電気的に独立した複数の電極を循環させて、前記対向域を繰り返し通過させながら、少なくとも高分子ファイバ生成源との対向域を通過する間は高分子ファイバと逆極性に帯電させ又は接地することにより、前記高分子ファイバ生成源から生成され帯電している高分子ファイバを電荷誘導して、前記収集体上に収集、堆積させ高分子ウエブを製造することを特徴としている。
このような構成によれば、高分子ファイバ生成源から生成され帯電された高分子ファイバは、収集体を介し高分子ファイバ生成源に対向した対向電極を接地ないしは高分子ファイバと逆極性に逆帯電させたときの電荷誘導により、収集体上に収集、堆積させて高分子ファイバを製造する。このとき、前記電極は、収集体を介した高分子ファイバ生成源との対向域を含む循環経路にて、その循環経路方向に電気的に独立した複数のものとして循環させることにより前記対向域を繰り返し通過させながら、少なくとも高分子ファイバ生成源との対向域を通過する間だけ、他から独立して、高分子ファイバと逆極性に帯電させ又は接地し、対向する高分子ファイバ生成源からの高分子ファイバを収集体の側に電荷誘導して、収集体上に収集、堆積させて高分子ウエブとすることができる。一方、前記電極間の循環経路方向での電極ギャップはあるが、電極ギャップに続いて通過する電極が電荷誘導を即時に補完することを繰り返すので、高分子ファイバを収集体上に電荷誘導して収集、堆積させる静電作用が特に対向域間で低下したり、乱れたりすることがない。特に、前記電極は少なくとも高分子ファイバ生成源との対向域を通過する間だけ逆帯電又は接地していればよく、対向域外では逆帯電又は接地から解放され得て、高分子ウエブ製造時間中の一部の時間でしか逆帯電又は接地されず、埃やゴミ、回り込み高分子ファイバの静電付着自体を抑えられる。しかも、逆帯電からの解放によっては電圧印加を失い、また接地からの解放によっては接地によって生じていた電荷誘導のバックアップ電荷の供給を失うので、埃やゴミ、回り込み高分子ファイバの静電付着自体をさらに抑えられる。
本発明の第7の態様によれば、高分子ファイバ原料液の孔からの吐出と帯電とを図って高分子ファイバを生成する高分子ファイバ生成源と、収集体を介した高分子ファイバの生成源との対向域を含む循環経路にて、その循環経路方向に電気的に独立して循環駆動され、前記対向域を繰り返し通過させられる複数の電極と、これら電極が少なくとも高分子ファイバ生成源との対向域を通過する間は高分子ファイバと逆極性に帯電させ又は接地することにより、前記生成される高分子ファイバを電荷誘導して、前記収集体上に収集、堆積させる電荷誘導手段と、を備え、高分子ウエブの収集体上への収集、堆積によって高分子ウエブを製造することを特徴とする高分子ウエブの製造装置をなし、第1の態様の高分子ウエブの製造方法を実現することができ自動的に達成される。
本発明の第2の態様によれば、高分子ファイバ原料液の孔からの流出ないしは吐出と帯電とによって高分子ファイバを生成して収集体上に電荷誘導して収集、堆積させて、高分子ウエブを製造する高分子ウエブの製造方法において、収集体を介した高分子ファイバ生成源との対向域を含む循環経路にて、その循環経路方向に電気的に独立した複数の電極を循環させて、前記対向域を繰り返し通過させながら、少なくとも高分子ファイバ生成源との対向域を通過する間は高分子ファイバと逆極性に帯電させ又は接地することにより、前記高分子ファイバ生成源から生成され帯電している高分子ファイバを電荷誘導して、前記収集体上に収集、堆積させるのに併せ、前記対向域外を通過している電極には、前記対向域外のほぼ一部からほぼ全域までの範囲の所定位置または所定域において電極が静電的に高分子ファイバの前記収集またはおよび堆積を不安定にするのを安定化する静電措置を採りながら、高分子ウエブを製造することを特徴としている。
このような構成によれば、第1の態様の場合に加え、さらに、前記対向域外を通過している電極には、逆帯電又は接地から解放するだけでなく、前記対向域外のほぼ一部からほぼ全域までの範囲の所定位置または所定域において、電極が静電的に高分子ファイバの前記収集またはおよび堆積を不安定になるのを安定化する静電措置を採るので、静電措置を採った程度に応じて、電極が静電的に高分子ファイバの前記収集またはおよび堆積を安定化させられる。
本発明の第8の態様によれば、高分子ファイバ原料液の孔からの吐出と帯電とを図って高分子ファイバを生成する高分子ファイバ生成源と、収集体を介した高分子ファイバの流出ないしは吐出源との対向域を含む循環経路にて、その循環経路方向に電気的に独立して循環駆動され、前記対向域を繰り返し通過させられる複数の電極と、これら電極が少なくとも高分子ファイバの流出ないしは吐出源との対向域を通過する間は高分子ファイバと逆極性に帯電させ又は接地することにより、前記生成される高分子ファイバを電荷誘導して、前記収集体上に収集、堆積させる電荷誘導手段と、を備え、循環する電極に対し、その前記対向域を外れる対向域外のほぼ一部からほぼ全域までの範囲の所定位置または所定域にて、電極が高分子ファイバの収集またはおよび堆積を静電的に不安定にするのを安定化する静電措置手段を働かせ、高分子ウエブの収集体上への安定化を伴う収集、堆積によって高分子ウエブを製造することを特徴とする高分子ウエブの製造装置をなし、第2の態様の高分子ウエブの製造方法を実現することができ、自動的に達成される。
本発明の第3の態様によれば、第2の態様の場合に加え、さらに、静電措置は、前記電極への静電付着物の除去またはおよび除電であることを特徴としている。
このような構成によれば、前記電極への埃やゴミ、回り込み高分子ファイバの付着は、それらが収集体上に電荷誘導にて収集される高分子ファイバと同じ極性の電荷を有して、電荷誘導特性を静電的に低下させたり乱したりして、高分子ファイバの収集、堆積率を低下させ、また、高分子ファイバの収集、堆積を乱す原因になるところ、前記電極に静電付着している埃やゴミ、回り込み高分子ファイバを、前記電極が高分子ファイバ生成源との対向域を外れたのを利用した高分子ファイバの収集、堆積に影響のない状態で除去して解消できる。また、前記電極は対向域外で帯電や接地から解放されて、印加され、または接地にて生じていた電荷は自然放電によって低下はするものの電荷はなお残留して、対向域外においても埃やゴミの付着を招いたり、収集体が前記電極の循環経路から離れる際に静電吸着による抵抗で離れにくくしたりすることがあるところ、前記電極を対向域外のほぼ一部からほぼ全域までの範囲の所定位置又は所定域において、高分子ファイバの静電誘導による収集体上への収集、堆積に全く影響しない状態で除電して解消できる。
本発明の第9の態様によれば、第8の態様において、さらに、静電措置手段は、電極への静電付着物の除去またはおよび除電を行うものであることを特徴とし、第3の態様の方法を実現する。
本発明の第4の態様によれば、第1〜第3の態様のいずれか1つにおいて、さらに、収集体は少なくとも高分子ファイバの収集、堆積域での前記電極によるバックアップを伴い搬送し、高分子ウエブを連続に製造することを特徴としている。
このような構成では、第1〜第3の態様のいずれか1つに加え、さらに、収集体を少なくとも高分子ファイバの収集、堆積域での前記電極によるバックアップを伴い搬送することで、循環する電極に収集体の支持や案内、または搬送の機能を持たせられる上、収集、堆積域での収集体と前記電極との間にギャップが生じないようにでき、電荷誘導効率を高められる。
本発明の第5の態様によれば、第4の態様において、さらに、電極に対する除電は、電極が前記収集、堆積域を超えた位置と、この位置よりも下流で電極から収集体が離れる位置までの間で行うことを特徴としている。
このような構成では、第4の態様の場合に加え、さらに、電極への除電位置を、対向域外のほぼ一部に限定するにも、電極が前記収集、堆積域を超えた位置と、この位置よりも下流で電極から収集体が離れる位置までの間で行うことにより、収集体が離れていく位置に達する電極は既に除電されていることになるので、収集体が除電され済みの電極から、帯電している高分子ウエブとの静電吸着なしに難なく離れていくことを保証することができる。
本発明の第6の態様によれば、第1〜第5の態様のいずれか1つにおいて、さらに、電極に対する除電は、前記収集、堆積域での電極の高分子ファイバ生出源との対向域が、前記電極の循環経路方向に不連続で、この不連続域を通過する電極に対して行うことを特徴としている。
このような構成では、第1〜第5の態様のいずれか1つの場合に加え、さらに、対向域が複数並ぶ収集、堆積域であっても、対向域が途切れる対向域間の対向域外を利用して、電極を除電し、埃やゴミが静電付着するのを防止することができるし、特に、収集、堆積域であることによる高分子ファイバの無駄な回り込み付着を回避させられる。
本発明の1つの特徴の高分子ウエブの製造方法、装置によれば、高分子ファイバ生成源からの帯電された高分子ファイバを、収集体を介し高分子ファイバ生成源に対向した電極が接地ないしは逆帯電されて電荷誘導し、収集体上に収集、堆積させ高分子ファイバを製造するのに、電極は高分子ファイバ生成源との対向域を含む循環経路にて循環経路方向に電気的に独立した配列状態で循環させながら、少なくとも対向域を通過する間だけ接地又は逆帯電させることにより、対向域を電極が通過する毎に高分子ファイバ生成源からの高分子ファイバに対して電荷誘導作用をなして収集体上に収集、堆積させ高分子ファイバを製造することができ、電極は対向域外では逆帯電又は接地から解放されてよいので、高分子ウエブ製造時間中の一部の時間でしか逆帯電又は接地せずに、埃やゴミ、回り込み高分子ファイバの静電付着自体を抑えられ、これら静電付着物が収集体上に収集、堆積される高分子ファイバと同極性で反発し合い高分子ファイバの収集体上への収集、堆積を静電的に邪魔したり乱したりするのを軽減できるのに併せ、逆帯電からの解放によっては逆極性電荷の印加を絶たれ、また接地からの解放によっては接地でのバックアップ電荷の外部からの供給が絶たれるので電荷はそれ以上高まらないし、残留電荷は、収集体上の高分子ファイバ、高分子ウエブの残留電荷との釣り合い残留もあるが、循環により高分子ファイバ、高分子ウエブと対向しなくなった範囲では特に、静電付着物との釣り合い残留はあっても、大方の残留電荷は経時的に大気へ放電して減少していき、それ以上の静電付着自体を抑え、延いては、静電付着物の静電担持力をも低減させて循環する電極から自然落下しやすく、対向気流により吹き落とされやすくすることができ、全体に電極への埃などの静電付着、および静電付着物による高分子ファイバの収集体上への収集、堆積への静電反発、共に抑制し、高分子ファイバの電荷誘導による収集、堆積の効率及び均一化を高め、高分子ウエブの生産性、品質の向上が図れる。
本発明の別の特徴の高分子ウエブの製造方法と装置によれば、1つの特徴の場合に加え、さらに、対向域外を通過している電極にはそのほぼ一部からほぼ全域の範囲までの所望箇所で、電極が残留電荷や付着静電物によって静電的に高分子ファイバの収集、堆積を不安定にさせるのを安定化する措置を採ることにより、高分子ファイバの前記収集またはおよび堆積をさらに安定化させて、高分子ウエブの生産性、品質をさらに高められる。
本発明の高分子ウエブの製造方法と装置のさらなる特徴によれば、安定化措置として、電極への静電付着物の除去またはおよび除電を行い、静電付着物の除去によっては、静電付着物が収集体上に収集され、または収集、堆積している高分子ファイバ、高分子ウエブとの静電反発をなくして、高分子ファイバの収集、堆積率が低下したり、収集、堆積が乱れたりするのを解消し、併せ、電極の残留電荷が静電付着物などとの釣り合いから抜けにくいのを解消することができる。また、除電によっては、電極は対向域外で帯電や接地から解放されて残留電荷が経時的に減少し場合により付着物の静電保持力も低下するがなお残留して高分子ファイバと静電反発し収集、堆積を不安定にさせやすいのを、対向域外を移動中であるのを利用した残留電荷の強制的な除去により、高分子ファイバの静電誘導による収集体上への収集、堆積に全く影響しないで解消できる。
以下、本発明の実施の形態に係る高分子ウエブの製造方法と装置について図1〜図14を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
本実施の形態の高分子ウエブの製造方法の基本的な特徴は、その幾つかの原理を採用した図1〜図3の各例、図7、図8の各例に示す高分子ウエブの製造装置を参照して説明すると、高分子ファイバ生成源4における高分子ファイバ原料液1の孔ないし小さい孔9からの流出ないしは吐出と電圧V2での帯電とによって静電爆発、静電延伸を伴い、サブミクロンはもとより、ナノ単位といった微小径の高分子ファイバ2をある長さないしは長さ範囲で生成して収集体3上に電荷誘導して収集し堆積させ高分子ウエブ6を製造するが、本実施の形態では、特に、収集体3を介した高分子ファイバ生成源4との対向域5を含む循環経路16にて、その循環経路方向に電気的に独立した複数の電極7を循環させて対向域5を繰り返し通過させながら、少なくとも高分子ファイバ生成源4との対向域5を通過する間は高分子ファイバ2と逆極性の電圧V1にて帯電させ又は接地することにより、高分子ファイバ生成源4から生成され帯電している高分子ファイバ2を電荷誘導して、収集体3上に収集、堆積させ高分子ウエブ6を製造する。電圧V2は直流で例えば1KV〜100KV程度であればよく、電極7側からの電荷誘導のためには、電圧V1との間に所定以上の電位差があればよく、接地に代えて電圧V1を印加する場合は逆極性とするのが好適であるが、前記電位差を満足すれば逆極性に限られることはない。同極性の電圧V1の印加を選択する積極的な理由は特にないが、前記電位差を調整することはできる。
なお、高分子ファイバ原料液1に用いる高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ナイロン、アラミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
上記高分子物質を高分子ファイバ原料液1とするのに使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、水等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
既述の繊維形成性物質と溶媒に無機質固体材料を混入することも可能である。当該無機質固体材料としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。
当該酸化物としては、Al2O3、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb2O3、As2O3、CeO2、V2O5、Cr2O3、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、HfO2、Nb2O5等を例示でき、これらより選ばれる少なくとも一種が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、収集体3は高分子ウエブ6の連続した製造上からは、連続したものを一方向に搬送しながら高分子ファイバ2の収集、堆積を図れる、いわば長尺シート材とするのが好適である。また、製造後の高分子ウエブ6の取り扱いからはそれを担持している収集体3と共に巻き取れるのが便利であり、この意味から収集体3は可撓性のある不織シート、ネット、樹脂シートなどが好適であり、電気的には通常誘電体となる。しかし、収集体3が誘電体であることは電極7による収集体3を介した高分子ファイバ2への電荷誘導の妨げにはならない。もっとも、上記以外の材料を採用することもできる。
これらを用いての前記の製造方法では、高分子ファイバ生成源4から生成され電圧V2に帯電された高分子ファイバ2は、収集体3を介し高分子ファイバ生成源4に対向した電極7を接地ないしは高分子ファイバ2と逆極性の電圧V1で逆帯電させたときの電荷誘導により、収集体3上に収集、堆積させて高分子ファイバ6を製造することができる。特に、電極7は、収集体3を介した高分子ファイバ生成源4との対向域5を含む循環経路16にて、その循環経路方向に電気的に独立した複数のものとして循環させるので、この循環により対向域5を繰り返し通過させながら、少なくとも高分子ファイバ生成源4との対向域5を通過する間だけ、他から独立して、高分子ファイバ2と逆極性V1に帯電させ又は接地することができる。これにより、電極7は印加電圧V1によっては、誘電体である収集体3を介した帯電電圧V2を持った高分子ファイバ2との電気的な対向によって、収集体3内での誘電分極を伴い高分子ファイバ2を収集体3側に電荷誘導し、収集体3の上に収集、堆積させることができ、接地によっては、誘電体である収集体3を介した帯電電圧V2を持った高分子ファイバ2との電気的な対向によって、収集体3内での誘電分極を伴い高分子ファイバ2側の帯電電圧V2に対するバックアップ電荷を生成する結果として、高分子ファイバ2を収集体3側に電荷誘導し、収集体3の上に収集、堆積させることができる。
このとき、電極7間には図4に示すような循環経路方向での電極ギャップL1があっても、電極ギャップL1に続いて通過する後続の各電極7が電荷誘導を順次に補完することを繰り返すので、高分子ファイバ2を収集体3上に電荷誘導して収集、堆積させる静電作用が特に対向域5間で低下したり、乱れたりすることがない。しかし、電極7の高分子ファイバ2に対する電荷誘導効率からは電極ギャップL1は電極7の幅以下、よりよくは放電の原因とならない程度に小さくするのが有利ではある。
特に、電極7は少なくとも高分子ファイバ生成源4との対向域5を通過する間だけ逆帯電又は接地していればよく、対向域5外では逆帯電又は接地から解放されて、高分子ウエブ製造時間中の一部の時間、具体的には対向域5を通過する間の限られた時間しか逆帯電又は接地されないようにすることで、埃やゴミ、回り込み高分子ファイバ2の静電付着自体を抑えられる。しかも、電極7は、帯電からの解放によっては逆極性電荷V1の印加を絶たれ、また接地からの解放によっては接地でのバックアップ電荷V1の外部からの供給が絶たれるので電荷はそれ以上高まらないし、残留電荷は、収集体3上の高分子ファイバ2、高分子ウエブ6の残留電荷との釣り合い残留もあるが、循環により高分子ファイバ2、高分子ウエブ6と対向しなくなった範囲では特に、静電付着物との釣り合い残留はあっても、大方の残留電荷は経時的に大気へ放電して減少していき、それ以上の静電付着自体を抑え、延いては、静電付着物の静電担持力をも低減させて循環する電極7からの自然落下をしやすくし、対向気流により吹き落とされやすくすることができ、全体に電極7への埃などの静電付着、および静電付着物による高分子ファイバ2の収集体3上への収集、堆積への静電反発、共に抑制し、高分子ファイバ2の電荷誘導による収集、堆積の効率及び均一化を高め、高分子ウエブ6の生産性、品質の向上が図れる。
以上の結果、本実施の形態によれば、高分子ファイバ生成源4からの帯電された高分子ファイバ2を、収集体3を介し高分子ファイバ生成源4に対向した電極7が接地ないしは逆帯電されて電荷誘導し、収集体3上に収集、堆積させ高分子ウエブ6を製造するのに、電極7は高分子ファイバ生成源4との対向域5を含む循環経路16にて循環経路方向に電気的に独立した配列状態で循環させながら、少なくとも対向域5を通過する間だけ接地又は逆帯電させることにより、対向域5を電極7が通過する毎に高分子ファイバ生成源4からの高分子ファイバ2に対して電荷誘導作用をなして収集体3上に収集、堆積させ高分子ウエブ6を製造することができ、電極7は対向域5外では逆帯電又は接地から解放されてよいので、高分子ウエブ製造時間中の一部の時間でしか逆帯電又は接地しなくてよく、埃やゴミ、回り込み高分子ファイバ2の静電付着自体を抑えられ、これら静電付着物が収集体3上に収集、堆積される高分子ファイバ2と同極性で反発し合い高分子ファイバ2の収集体3上への収集、堆積を邪魔したり乱したりするのを軽減できるのに併せ、逆帯電からの解放によっては逆極性電荷の印加を絶たれ、また接地からの解放によっては接地でのバックアップ電荷の外部からの供給が絶たれるので電荷はそれ以上高まらないし、残留電荷は、収集体3上の高分子ファイバ2、高分子ウエブ6の残留電荷との釣り合い残留もあるが、循環により高分子ファイバ2、高分子ウエブ6と対向しなくなった範囲では特に、静電付着物との釣り合い残留はあっても、大方の残留電荷は経時的に大気へ放電して減少していき、それ以上の静電付着自体を抑え、延いては、静電付着物の静電担持力をも低減させて循環する電極7から自然落下しやすく、対向気流により吹き落とされやすくすることができ、全体に電極7への埃などの静電付着、および静電付着物による高分子ファイバ2の収集体3上への収集、堆積への静電反発、共に抑制し、高分子ファイバ2の電荷誘導による収集、堆積の効率及び均一化を高め、高分子ウエブ6の生産性、品質の向上が図れる。
このような方法を実現するのに、図1〜図3の各例、図7、図8の各例に示す高分子ウエブ6の製造装置は、高分子ファイバ原料液1の孔9からの流出ないしは吐出と帯電とを図って高分子ファイバ2を生成する高分子ファイバ生成源4と、収集体3を介した高分子ファイバ生成源4との対向域を含む循環経路16にて、その循環経路方向に電気的に独立して循環駆動され、前記対向域5を繰り返し通過させられる複数の電極7と、これら電極7が少なくとも高分子ファイバ生成源4との対向域5を通過する間は高分子ファイバ2と逆極性に帯電させ又は接地することにより、前記生成される高分子ファイバ2を電荷誘導して、前記収集体3上に収集、堆積させる電荷誘導手段24と、を備え、高分子ウエブ2の収集体3上への収集、堆積によって高分子ウエブ6を製造するようにしてあり、既述の高分子ウエブの6製造方法を実現することができ自動的に安定して達成される。特に、図1〜図3に示す各例では、高分子ファイバ生成源4に電圧V2に帯電した高分子ファイバ2を生成するために電圧印加手段29を働かせてあり、印加電源29aからの電圧V2が孔9に集中するように工夫される。図7、図8に示す各例でも図示していないが基本的に同じ構成である。
ところで、電極7の残留電荷は対向域5外での帯電や接地からの解放によっても、自然には十分に減少しにくく、終始埃やごみの静電付着の原因になるし、対向域5が位置し、ないしは並んで高分子ファイバ2の収集体3への収集、堆積が行われる収集、堆積域11では回り込み高分子ファイバ2の静電付着の原因にもなるので、静電付着物が増量していき収集体3への高分子ファイバ2の電荷誘導作用に影響を増し、高分子ファイバ2の収集、堆積を不安定にさせるきらいがある。
そこで、これに対応するのに本実施の形態では、また、電極7が静電的に高分子ファイバ2の収集、堆積を不安定にするところを、電極7が前記対向域5外のほぼ一部からほぼ全範囲までの所定位置又は所定域にある間、安定化させる静電措置を採りながら、上記の高分子ウエブ6の製造を行う。ここに、静電措置は具体的には、前記収集、堆積を不安定にする電極7の残留電荷やそれにより高分子ファイバ2や高分子ウエブ6と同極の電荷を持って電極7に静電付着する静電付着物を減少させ、ないしは除去する措置であることに他ならない。これにより、対向域5外を通過している電極7には、逆帯電又は接地から解放するだけでなく、対向域5外のほぼ一部からほぼ全域までの範囲の所定位置または所定域において、電極7が静電付着物を伴い静電的に高分子ファイバ2の収集またはおよび堆積を不安定にさせるところを安定化する前記のような静電措置を採るので、静電措置を採った程度に応じて、電極7の静電付着物を伴う高分子ファイバ2の収集、堆積に対する静電作用を抑え、高分子ファイバ2の収集、堆積を安定化させられる。
詳しくは、電極7への埃やゴミ、回り込み高分子ファイバ2の付着は、それらが収集体3上に電荷誘導にて収集される高分子ファイバ2と同じ極性の電荷を有して、電荷誘導特性を低下させたり乱したりして、高分子ファイバ2の収集、堆積率を低下させ、また、高分子ファイバ2の収集、堆積を乱す原因になるところ、電極7に静電付着している埃やゴミ、回り込み高分子ファイバ2を、電極7高分子ファイバ生成源4との対向域5を外れたのを利用した高分子ファイバ2の収集、堆積に影響のない状態で除去して解消できる。
これを達成するのに図1〜図3の各例、図7、図8の各例に示す高分子ウエブ6の製造装置は、循環する電極7のうちの、対向域5外のほぼ一部からほぼ全域までの範囲の所定位置または所定域を通過する電極7に対し、電極7が高分子ファイバ2の収集またはおよび堆積を静電的に不安定にするのを安定化する静電措置手段26を働かせ、高分子ファイバ2の収集体3上への安定化を伴う収集、堆積によって高分子ウエブ6を製造するようにしてあり、高分子ウエブ6の製造上、電極7による高分子ファイバ2の収集、堆積に対する静電的な不安定化を自動的に改善することができる。
ここに、静電措置は、電極7への静電付着物の除去またはおよび除電が挙げられる。電極7への埃やゴミ、回り込み高分子ファイバ2の付着は、それらが収集体3上に電荷誘導にて収集される高分子ファイバ2と同じ極性の電荷を有して、電荷誘導特性を静電的に低下させたり乱したりして、高分子ファイバ2の収集、堆積率を低下させ、また、高分子ファイバ2の収集、堆積を乱す原因になるところ、電極7に静電付着している埃やゴミ、回り込み高分子ファイバ2を、電極7が高分子ファイバ生成源4との対向域5を外れたのを利用した高分子ファイバ2の収集、堆積に影響のない状態で除去することで解消できる。また、電極7は対向域5外で帯電や接地から解放されて、印加され、または接地にて生じていた電荷は自然放電によって低下はするものの電荷はなお残留して、対向域5外においても埃やゴミの付着を招いたり、収集体3が電極7の循環経路16から離れる際に静電吸着による抵抗で離れにくくしたりすることがあるところ、電極7を対向域5外のほぼ一部からほぼ全域までの範囲の所定位置又は所定域において、高分子ファイバ2の静電誘導による収集体3上への収集、堆積に全く影響しない状態で除電することにより解消できる。
これを実現するのに、図1〜図3の各例、図7、図8の各例に示す高分子ウエブ6の製造装置は、以上のような静電措置をする静電措置手段26を備えて、高分子ウエブ6の製造において電極7に対する静電措置を自動的に安定して達成する。
ここに、静電措置手段26は、図1〜図3の各例、図7、図8の各例に示す高分子ウエブ6の製造装置におけるように、電極7への静電付着物の除去を行う除去手段50またはおよび除電を行う除電手段51とすることができる。
このような静電付着物の除去手段50は、図1に示すようにノズル40からエア41を電極7に噴射するものとして実現する、図2、図3に示すようにブラシ42、43によって掻き取るようにしても行える。また、図3に示す例では固定のブラシ43を採用しているが、図2に示すように回転式のブラシ42とする方が積極的な掻き取り作用が得られ除去効果は高まる。特に、ブラシ42の電極7との接触側で見て、その回転方向を電極7の移動方向と逆向きにすると低速回転にて電極7との相対移動速度を大きくし、静電付着物の除去効果を高められる。ここで、ブラシ42、43を図示するように設置しておくと、収集体3やその上の高分子ファイバ2、高分子ウエブ6と対向していないことにより、電極7およびそれに付着している静電付着物の電荷を逃がしながら静電吸着の影響を軽減してより効果的に除去することができる。また、このブラシ42、43の設置は電極7を除電する除電手段51を兼ねることもできる。場合によっては洗浄液の噴射、乾燥処理も採用できるし、それらを複合して採用することもできる。
また、電極7は対向域5外で電荷誘導手段24による帯電や接地から解放されることで、印加され、または接地により生じていた電荷V1は自然放電によって低下はするものの電荷はなお残留して、対向域5外においても埃やゴミの付着を招いたり、収集体3が電極7の循環経路16から離れる際に静電吸着による抵抗で離れにくくするところ、前記除電手段51が、電極7を対向域5外のほぼ一部からほぼ全域までの範囲の所定位置又は所定域において、働くことにより、高分子ファイバ2の静電誘導による収集体3上への収集、堆積に全く影響しない状態で電極7を除電することにより解消できる。このような除電は、対向域5外の全域で行うほど除電効果は高まるが、図1、図2に示す各例、図7、図8に示す各例のように対向域5外の一部、つまり所定位置で行っても有効である。
図3に示す例では特に、除電手段51は、収集、堆積域11での対向域5が、電極7の循環経路方向に不連続であることを利用して、この不連続域を通過する電極7に対して働かせて除電を行うようにしている。これにより、対向域5が複数並ぶ収集、堆積域11であっても、対向域5が途切れる対向域5間の対向域5外を利用して、電極7を除電し、埃やゴミが静電付着するのを防止することができるし、特に、収集、堆積域11であることにより高分子ファイバ2の無駄な回り込み付着を回避させられる利点がある。
さらに、対向域5外の一部で除電を行う場合は、特に、図2、図3、図8に示す各例のように、電極7が収集、堆積域11を超えた位置と、この位置よりも下流で電極7から収集体3が離れる位置までの間で行うのが好適である。このようにすると、収集体3が離れていく位置に達する電極7は既に除電されていることになるので、収集体3が除電済みの電極7から、帯電している高分子ウエブ6との静電吸着なしに難なく離れていくことを保証することができる。
このような除電を行う除電手段51としては、図4に示すように交流電源27を採用し、電極7に対し接触子52を介して交流電圧V3を印加することにより、電極7の帯電電荷を中和して消去し除電することができる。また、除電手段51は接触子52を介して電極7を接地するものとしても、電極7の帯電電荷を逃がして除電することができる。しかし、それには、対向域5外でも、収集体3の高分子ファイバ、ウエブの担持域と対向する領域外であることが必要である。高分子ファイバ、ウエブ担持域と対向する領域であると、接地によって高分子ファイバ2、高分子ウエブ6の帯電電荷に対するバックアップ電荷を保持してしまう結果となるからである。
また、除電手段51は、電極7に電極7の帯電電荷と逆電極の電圧を印加することでも除電を達成することができ、それには、図4の交流電源27に代わる逆極性印加電源からの接触子52を介した電圧印加によることもできるが、図5に示すように非接触に電荷を与えられるコロナ放電源28や光電離により電荷を生成する光照射源などとするのが接触部、摺動部回避による耐久性向上の面で好適である。
ところで、収集体3は種々な循環方式、支持方式が考えられる中、図1〜図3の各例、図7、図8の各例に示す高分子ウエブ6の製造装置におけるように、少なくとも高分子ファイバ2の収集、堆積域11での電極7によるバックアップを伴い搬送し、高分子ウエブ6を連続に製造するようにする。このように、収集体3を少なくとも高分子ファイバ2の収集、堆積域11での電極7によるバックアップを伴い搬送することで、循環する電極7に収集体支持または搬送の機能を持たせられる上、収集、堆積域11での収集体3と電極7との間にギャップが生じないようにでき、高分子ファイバ2に対する電荷誘導効率を高められる。回転体30は搬送される収集体3に従動させても、回転駆動してもよい。回転駆動すれば収集体3に対して搬送作用を与えたり電極7を収集体3に同期移動させたりすることができる。もっとも、電極7は収集体3に対し同期移動する必要はない。収集体3と電極7との図6に示す速度v1、v2が異なって循環経路方向に相対移動する場合、電極7を図7、図8に示す各例のようにローラタイプとして自転できるように支持しておけば、収集体3と電極7とが相対移動によって転がり接触するようになり、互いが摺動し合うのを防止することができる。
電極7の収集体3の少なくとも収集、堆積域11での支持ないしは搬送を伴う循環方式としては特に限定されないものの、固定した環状の循環経路16とすれば、電極7の支持および循環駆動に便利となる。
特に、図1に示す例、図2に示す例、図3に示す例のように長円形態の循環経路16とすれば、駆動ローラ21と従動ローラ22とだけで支持および駆動することができるし、扁平空間にかさ低く設置できる。また、収集体3の収集、堆積域11に対し搬送方向に十分に長いバックアップ域12を直線形態で満足することができる。この直線形態は複数の高分子ファイバ生成源4を収集、堆積域11に設置するのに、一定の電荷誘導紡糸距離を設定しやすいし、各高分子ファイバ生成源4からの収集体3への収集、堆積を安定させやすい。この場合、各電極7は、駆動ローラ21、従動ローラ22に巻回され、循環駆動される可撓性のある図1〜図3に示す各例のような無端支持材23に循環経路方向に電気的に独立して支持すればよく、図4〜図6に示すように絶縁性のある樹脂シートを用いた無端支持材23として、その厚みよりも十分に大きな厚みの電極7を加熱や超音波振動を利用して埋め付けるようにしてあり、収集体3をバックアップする側の面は開放し、かつ収集体3と接面するのを邪魔しない開放形態であるように無端支持材23からの突出形態などとする。
また、循環する各電極7に逆帯電又は接地を図って、生成される高分子ファイバ2を収集体3の側に電荷誘導させる電荷誘導手段24を働かせるには、図1〜図3に示す各例、図7、図8に示す各例がそうであるように、また、図6に示すように、電極7が収集体3を支持し高分子ファイバ2の収集、堆積に供する収集、堆積域11の範囲の反収集体3側、つまり電極7が循環する循環経路16の内側に電荷誘導のための電圧V1の電圧印加手段25を設けて働かせるか、接地手段を設けて働かせることになる。これに対応して、電極7の反収集体3側にも無端支持材23から図4〜図6に示すように少なくとも露出する開放形態とし、図6に示すように電圧印加手段25側からの帯電(又は接地の)のための接触が、ばね25aなどで弾性支持した接触子25bを弾性的に押し付けることで、確実に図れるようにしている。図6に示す例は印加電源25cから電圧V1を印加して帯電させる場合であって、接触子25bは印加電源25cとばね25aで電気的に繋がった共通電極25dに個別に弾性的に支持されたものとしている。接地による場合は印加電源25cに代えて接地用の開閉手段などとすればよい。
図7に示す例、図8に示す例、図9に示す例、図10に示す例、図11に示す例、図12に示す例のように、図7、図8で代表して示した円形態の循環経路16とすれば、電極7をその支持部材31と共にその中心軸線まわりに回転できるように支持した回転体30とすればよく、簡単に設置し収集体3を収集、堆積域11でのバックアップができる。回転体30は搬送される収集体3に従動させても、回転駆動してもよい。回転駆動すれば収集体3に対して搬送作用を与えたり電極7を収集体3に同期移動させたりすることができる。もっとも、先に述べたように電極7は収集体3に対し同期移動する必要はない。
図7〜図12に示す各例では、ローラタイプの電極7を支持部材31に支持して、循環する電極7によって収集体3を収集、堆積域11およびその前後でバックアップし、高分子ファイバ生成源4から生成される高分子ファイバ2を、電荷誘導手段24による帯電又は接地を伴い回転体30の支持部材31は、図7、図8に示すように収集、堆積域11をその前後を含んでバックアップしながら、高分子ファイバ生成源4から生成される高分子ファイバ2を搬送される収集体3上に収集、堆積させる。
支持部材31は、図9、図10に示すように回転軸61を持った左右一対のリール枠31a、31b間に電極7を支持して一体化し、回転軸61を軸受して回転駆動するようにしてある。これによって、ロール部3aから繰り出した収集体3の収集、堆積域11とする折り返し部を電極7でバックアップして、高分子ファイバ生成源4からの高分子ファイバ2の収集、堆積域11における電荷誘導による収集、堆積に供するのに併せ、折り返し部を経た収集体3の高分子ウエブ6と共の巻き取りロール62による巻き取りに供するようにしている。図示例では、遊びローラ63を介して巻き取りローラ63に導き、高分子ウエブ6が上面となるように巻き取られるようにしている。しかし、どのように巻き取ってもよいし、繰り返し折り返しながら積層していくなど巻き取り以外の取り扱いをすることもできる。
図11に示す例では、回転軸61を持ったリール枠31aと溝リング31cとの間に電極7を支持し、溝リング31cは周囲3か所をローラ64により支持して、回転駆動できるようにし、溝リング31cの側が開放されるようにしている。これにより、図示しないが既述の電荷誘導手段24や除去手段50、除電手段51などを所定位置に固定支持するのに、前記開放部を通じ外部から容易に支持できる。
図12に示す例では、左右一対の溝リング31c、31dの間に電極7を支持し、各溝リング31c、31d共に3つのローラ64により支持して、回転駆動できるようにし、一方の溝リング31dに形成したギヤ31eを利用してモータ70に直結の駆動ギヤ71を噛み合わせ回転駆動するようにしてある。これによれば、支持部材31の左右両端が開放され、既述の電荷誘導手段24や除電手段51を外部から固定支持するのにさらに容易になる。
収集体3の幅が広い場合には、高分子ファイバ生成源4を収集体3の移動方向にほぼ直角に移動可能にし、周期的な移動動作を行わせることで幅広の収集体3に対しても、生成される高分子ファイバ2を均一な高分子ウエブ6に堆積させることができる。
最後に、高分子ファイバ生成源4は、既に知られる種々のものを採用することができる。図1〜図3の各例では、電圧印加手段29によって電圧V2を印加電源29aから電圧が印加され、孔9の部分に電荷が集中するようにした容器73に高分子ファイバ原料液1を供給して、ポンプなどによる供給圧、あるいは自然流化によって孔9から帯電を伴い吐出ないしは流出させて、静電爆発、静電延伸を伴いナノ単位の高分子ファイバ2を生成し、収集体3上に収集、堆積されるようにしている。
図9に示す例、図11に示す例の高分子ファイバ生成源4は、電圧V2を印加電源29aから印加されたノズル74に高分子ファイバ原料液1をポンプで供給して、孔9から帯電を伴い比較的広域に噴出させ、噴出圧、静電爆発、静電延伸などによりナノ単位の高分子ファイバ2を生成して収集体3上に電荷誘導により収集、堆積されるようにしてある。図9に示す例ではノズル74を1つ用いているだけであるが、図11に示す例では複数を収集体3の幅方向に配列してあり、広幅な収集体3上に高分子ファイバ2を収集、堆積させるのに有利であるし、各ノズル74からの高分子ファイバ生成域が収集体3上で重なることによって、単位面積当たりの高分子ファイバ2の収集、堆積量を増大させやすい。この意味からノズル74は収集体3の移動方向にも複数配列して高分子ファイバ2の単位面積当たりの収集、堆積量を高めることもできる。なお、ノズル74はガラス製のキャピラリに変更して、印加電源29aから電圧V2を印加されるステンレス線などの電極を収容し、供給される高分子ファイバ原料液1を供給圧にて噴射するようにしてもよく、これによると生成する高分子ファイバ2の帯電に有利となる。
図10に示す例では、図13に示すようにモータ80によって絶縁体である回転軸81を介し回転駆動されるドラム82を高分子ファイバ生成源4とし、回転軸81を通じ供給される高分子ファイバ原料液1を貯留しながら、その周面に図10に示すように印加電源29aからドラム82の表面導電層に印加された電圧V2が集中するように形成した多数のノズル83の孔9から、流出ないしは供給圧により吐出させて静電紡糸するのに、静電爆発、静電延伸に加え、ドラム82が回転駆動されることによる遠心力での機械的な延伸作用も得て、より長尺な高分子ファイバ2を多量に生成できるようにしている。従って、多孔質で高密度な高分子ウエブ6を生産するのに有効である。併せ、層厚を増大させるのにも有利である。もっとも、高分子ファイバ2はドラム82の周面まわりに飛翔するように生成されるので、電極7による電荷誘導で収集体3の側に向けにくい場合は、ドラム8の反収集体3側に高分子ファイバ2と同極性に帯電させた反射板を設置し、反射板側に生成されてくる高分子ファイバ2を静電反発によって収集体3の側に向け、電極7からの静電誘導作用を確実に受けて収集体3上に収集、堆積されるようにすることができる。ドラム82の軸線は電極7の回転軸線と平行になるようにしているが、交差する向きに設置することもできる。なお、図13に示す例では孔9はドラム82の表面に平坦に開口させただけの非ノズル形態としてある。
また、図13に示す例では、特に、ドラム82を回転軸81の軸受83での接地が、ドラム82の表面に設けた金属層82aを介し孔9に及ぶようにし、電極7に印加した印加電源25cからの印加電圧V2のもとに、静電紡糸による高分子ファイバ2の生成、および生成された高分子ファイバ2の電荷誘導による収集体3上への収集、堆積が行われるようにしている。なお、印加電源29aからの電圧V2の印加は開閉器85によってオン、オフできるようにしている。
図12に示す例では、図11の場合同様に、供給される高分子ファイバ原料液1を貯留しながら回転駆動されるドラム82が高分子ファイバ生成源4をなし、周面に多数設けた孔9から遠心力によって高分子ファイバ原料液1を吐出するのと、既述した印加電源29aからの帯電とによって多数の高分子ファイバ2を生成するようにしている。しかし、図11に示す例ではドラム82の回転軸線が電極7の回転軸線と平行であったのが、本例では、ドラム82の回転軸線が電極7の回転軸線と直行する関係としてある。これにより、ドラム82まわりに飛翔するように生成される高分子ファイバ2は、収集体3の側への電荷誘導方向に対してすべて直角に向く関係となり、収集体3の側に向くものや反対側に向くもの、それらの中間のものなど混在しない。このため、生成する高分子ファイバ2の全てをほぼ同等に収集体3の側に電荷誘導することができる。本例では、特に、生成される高分子ファイバ2と同極性に帯電した反射板185を設けて、収集体3の側への電荷誘導効率を高めるようにしてある。
図14に示す例では、立方体をなして供給される高分子ファイバ原料液1を貯留しながら、平坦な下面に表面に印加電源29aから印加された電圧V2が集中するように形成したノズル91の孔9から自然流出ないしは供給圧によって吐出させるタンク92が高分子ファイバ生成源4をなし、広い面積に配置した多数の孔9から高分子ファイバ2を同時に生成することができる。従って、図1〜図3に示すような収集体3の広い平坦面にて収集、堆積域11での高分子ファイバ2の収集、堆積に供するのに 好適である。
なお、実施の形態においては、収集体3は、誘電体として構成しているが、特にこれに限定するものではなく、高分子ファイバ2が表面に薄いシート状に堆積できるものであればよい。