JP4832855B2 - エアバッグ - Google Patents

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本発明は、自動車の衝突時に乗員と自動車の内装材との間に展開して乗員が受ける衝撃を緩和するエアバッグに関するものである。
近年、車両用安全装置としてエアバッグ装置が実用化されてきた。エアバッグ装置は、車両の衝突などの急激な減速を検知するセンサー、センサーからの信号を受けて高圧ガスを発生するインフレータ、インフレータからの高圧ガスにより展開して乗員の衝撃を緩和するエアバッグ、エアバッグシステムが正常に機能しているか否かを判断する診断回路より成る。
エアバッグは、衝突時に、乗員とインパネやハンドルとの間の空間に瞬時に膨らみ、乗員を受け止め、バッグ内のガスを排気することで、乗員への衝撃を吸収する。バッグからのガスの排気は、バッグ本体布に設けられた、排気孔部から行われ、排気孔は概ね円形形状を呈しており、その面積(ないしは直径)は、予め決められている。
人の体格(身長や体重)はほぼ正規分布に従うが、従来のエアバッグは、体格分布の中央(50%ile)の人を基準にして、エアバッグの容量や形状、そして、インフレータの出力や排気孔の面積(直径)が決められている。
近年のエアバッグは標準体格の人はもちろん、体格の大きい人を拘束する際には、標準体格の人の場合に比べ、エアバッグ内の圧力上昇が大きくなるように、インフレータの出力を標準体格の人の場合よりは高くすることによって、エアバッグ内圧をあげることで対応する。反対に、体格の小さい人(子供等)を拘束する際には、標準体格の人の場合に比べ、エアバッグ内の圧力上昇が小さくなるように、標準体格の人の場合よりインフレータの出力を低くすることによって、バッグ内圧を下げることで対応する。
しかしながら、体格の大きい人・体格の小さい人用に出力を使い分ける該デュアルインフレータの小型化には限界があり、インフレータの低出力化や小型化をする場合、排気孔が開いたままの場合、エアバッグが展開し乗員を拘束するために必要なバッグ内圧が得られなくなるおそれがある。また、体格の小さい人の運転位置は標準体格の人より前にあるため、標準体格の人を拘束する場合より速くバッグが展開する必要がある。このような問題も、インフレータ小型化を妨げている一因である。
そこで特許文献1に示されているように、前述の排気孔を弁装置等で塞ぎ、エアバッグの内圧が所定値以上に上昇した場合、該弁装置が作動して内部のガスをバッグ外に排気するようにしたものが知られている。しかしながらこの方法にしても乗員の体格や衝突時のスピードが異なる場合などにそれに応じて乗員が受ける反力を適切に緩和するように機能するものとは言えず、現在その様なエアバッグの開発が望まれている。
特開平08−244555号公報
本発明はこの要望に応えるものであり、人の体格に応じて有効面積を変化できる排気孔部構造をもつエアバッグを提供するものである。
本発明は、バッグ内圧の上昇により排気孔部分にかかる張力(テンション)の変化を入力とし、この入力をもとに有効な排気特性を変化させてバッグの内圧を一定にさせるという考えに基づいて完成されたものである。
すなわち本発明は、排気孔を備えたエアバッグであって、該排気孔が低荷重時と高荷重時で伸び特性が放物線状に変化する素材で覆われているエアバッグに関する。
前記低荷重時と高荷重時で伸び特性が変化する素材が、不織布とフィルムのラミネートされたものであることが好ましい。
前記低荷重時と高荷重時で伸び特性が変化する素材の伸び率が、100N荷重時では、0.5〜10%であり、かつ150N荷重時では20〜40%であることが好ましい。
本発明によれば、特別な装置を用いず簡単に人の体格に応じて有効面積を変化できる排気孔部構造をもつエアバッグを提供できる。
以下本発明について図面を用いてさらに詳しく説明するが、本発明は以下で説明することのみに限定されるものではない。
図1は本発明のエアバッグの一例を示す概略図である。図中参照符号1は排気孔を示し、参照符号2は補強布を示し、参照符号2a、3a、5aは縫製用の糸を示し、参照符号3はエアバッグ本体(以下、本体という)を示し、参照符号4はインフレータからの圧縮空気導入孔を示し、参照符号5はティザーベルトを示している。
排気孔部1が補強布とラミネートした2層構造の素材から構成された本体布(被覆部)2で覆われるように縫製する。
排気孔1を覆う本体布(被覆部)2の素材に求められる特性は体格の小さい人を拘束する場合(エアバッグ10の内圧を下げる場合)、排気孔1の周辺にかかる張力が小さいときには基布の伸びが少ないものが望ましい。エアバッグ10が体格の小さい乗員を受け止める場合は、標準体格の乗員を受け止める場合に比べ、エアバッグ10の内圧上昇は小さいので、排気孔1の近傍の補強布にかかる張力(テンション)は小さいため、該ラミネート布の伸びも小さいので、排気孔1より突出する断面積は小さい、従ってエアバッグ10内部からの排気Eも少ない(図2参照)。
反対に体格の大きい人を拘束する場合(エアバッグ10の内圧を上げる場合)には、標準体格の乗員を受け止める場合に比べ、エアバッグ10の内圧上昇は大きいので、排気孔1の近傍の補強布2にかかる張力(テンション)も大きくなるため、該ラミネート布の伸びも大きくなる。従って排気孔1より突出する断面積は大きくなり、エアバッグ10内部からの排気も多くなる(図3参照)。または排気孔1を覆っている補強布(被覆部)2の素材が破断して排気孔1が完全に解放されてもよい(図4参照)。
排気孔1を覆う補強布(被覆部)2の素材については、引張強度が小さい場合には伸びの低い素材で対応し、引張強度が大きい場合には、非常に高い伸びを有する素材で対応することができる。このような特性を持つ素材の好適な例としては、不織布とフィルムのラミネートされたものを挙げることが出来る。このような素材は図5に示すように放物線状(非線形(nonlinear))の特異的な伸び特性をもつ。
具体的には不織布としては、ナイロン6,6、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン4,6などのポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維などからなるものが挙げられる。なかでもポリアミド繊維またはポリエステル繊維からなる不織布が経済性や強度の点で好ましい。またその製造方法については、スパンボンドやニードルパンチからなるものが好ましい。また不織布の目付については、取扱性を考慮して、10〜100g/m2であることが好ましい。
またフィルムとしては、クロロプレンゴム、ハイパロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等のゴム類、またはウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂などを単独または併用したものが挙げられる。なかでも強度の点から、シリコーンゴムからなるフィルムが好ましい。またフィルムの厚みとしては、40〜100μmが好ましい。
本発明においてはこのような素材の伸び率が、100N荷重時では0.5〜10%であり、かつ150N荷重時では20〜40%であることが好ましく、さらには100N荷重時では0.5〜5%であり、かつ150N荷重時では20〜30%であることがより好ましい。このような物性を備えることであらゆる体格の人に対して対応可能なエアバッグとなる。
次に本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもその実施例に限定されるものではない。
以下の項目にしたがって実施例、比較例にて作製したエアバッグを評価した。
(1)2層構造体の伸び
JIS L 1096に準じて初期状態の引張強度100N時と150N時の試験片の伸びを測定した。
(2)バッグ展開速さ
作製したエアバッグ10を常法にて折りたたみ、実際のインフレータによる展開と同程度のガス充填能力を持つエアバッグ試験装置を使用して、エアバッグ内に窒素ガスを充填し、エアバッグの展開するときの時間を測定した。適切な展開が出来たものを○、多少時間がかかったものを△、時間がかかりすぎたものを×として評価した。
(3)エアバッグ排気特性
作製したエアバッグ10にガス供給部から空気を送風し、エアバッグ10の内圧が低圧時(20kPa)と高圧時(70kPa)に達した時のエアバッグ10内に流れる空気の流量を測定した。適量であるものを○、適正流量に満たないものを×として評価した。
実施例1
ナイロン66繊維470dtex/72fの糸を用い、経糸・緯糸の織り密度が共に46本/2.54cmになる平織物を製織した。該織物を精練し、熱セットした後に、片面に無溶剤型加熱硬化型シリコーンゴムコーティング材(JIS K 6249に準じた引張強さ 4.0MPa以上、伸び 130%以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)を塗布量25g/m2(乾燥後重量)になるように塗布した後に、熱処理を行うことでコーティング布帛を得た。
次にコーティング布帛を使用して図6に示す構造の縫製エアバッグ10を作製した。そして排気孔部1をポリエステルスパンボンド不織布(目付 70g/m2、ユニチカ株式会社製)に、加熱硬化型シリコーンゴム(JIS K 6249に準じた引張強さ 2.2MPa以上、伸び 950%以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)を用いて作製したフィルム(厚さ 50μm)をラミネートした2層構造の素材で封止して本発明のエアバッグ10を作製した。上記項目で評価した結果を表1に示す。
比較例1
実施例1にて使用した2層構造の素材を別のもの、ポリエステルスパンボンド不織布(目付 50g/m2、東洋紡績株式会社製)に、加熱硬化型シリコーンゴム(JIS K 6249に準じた引張強さ 5.9MPa以上、伸び 600%以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)を用いて作製したフィルム(厚さ 50μm)をラミネートしたものに替えた以外は実施例1と同様にして本発明のエアバッグを作製した。上記項目で評価した結果を表1に示す。
比較例2
実施例1にて排気孔部を塞がずそのままにしてエアバッグを作製した。上記項目で評価した結果を表1に示す。
比較例3
実施例1にて排気孔部を塞ぐ素材を不織布にフィルムをラミネートした2層構造の素材に替えて、本体2のコーティング布帛と同様な素材にした以外は実施例1と同様にしてエアバッグ10を作製した。上記項目で評価した結果を表1に示す。
Figure 0004832855
(a)は本発明のエアバッグの排気孔と、排気孔を覆う被覆部の構成を示す平面図であり、(b)は(a)の断面説明図である。 (a)は図1のエアバッグの使用状態(低内圧時)における排気孔と、排気孔を覆う被覆部の構成を示す平面図であり、(b)は(a)の断面説明図である。 (a)は図1のエアバッグの使用状態(高内圧時)における排気孔と、排気孔を覆う被覆部の構成を示す平面図であり、(b)は(a)の断面説明図である。 (a)は図1のエアバッグの使用状態(排気孔が完全に解放された状態)における排気孔と、排気孔を覆う被覆部の構成を示す平面図であり、(b)は(a)の断面説明図である。 本発明の被覆部の特性を示すグラフである。 実施例にかかわるエアバッグの概要を示す説明図である。
符号の説明
1 排気孔
2 補強布(被覆部)
2a 縫製用糸
3 本体
3a 縫製用糸
4 インフレータからの圧縮空気導入孔
5 ティザーベルト
5a 縫製用糸
10 エアバッグ
E 排気の流れ

Claims (3)

  1. エアバッグが体格の小さい乗員を受け止める場合は、標準体格の乗員を受け止める場合に比べ、エアバッグの内圧上昇が小さい、および/または、体格の大きい乗員を受け止める場合には、標準体格の乗員を受け止める場合に比べ、エアバッグの内圧上昇が大きいエアバッグにおいて、
    排気孔を備え、該排気孔が低荷重時と高荷重時で伸び特性が放物線状に変化する素材からなる被覆部で封止されていることを特徴とするエアバッグ。
  2. 前記低荷重時と高荷重時で伸び特性が変化する素材が、不織布とフィルムのラミネートされたものである請求項1記載のエアバッグ。
  3. 前記低荷重時と高荷重時で伸び特性が変化する素材の伸び率が100N荷重時では0.5〜10%であり、かつ150N荷重時では20〜40%である請求項1記載のエアバッグ。
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