上記特許文献1に開示されているような液体加熱装置では、貯留手段内に熱交換器を配置せねばならない分、貯留手段の容積が大きくなったり、貯留手段の高さが高くなってしまうという問題がある。そのため、従来技術の液体加熱装置は、装置構成が大型化してしまうという問題があった。
そこで、本発明者らは、上水の加熱用の熱交換器を貯留手段の外部に設け、当該貯留手段内の液体をポンプによって熱交換器に供給することにより、上水を熱交換加熱可能な構成の液体加熱装置を作製し、実験を行った。その結果、貯留手段の容量や高さを抑制できることが判明した。しかしその反面、本発明者らが試作した液体加熱装置では、貯留手段内の液体を圧送するポンプが故障し、作動できない状態となると上水を加熱できなくなってしまう。そのため、前記したような構成とする場合は、ポンプの異常を容易かつ的確に検知可能な構成とすることが望ましい。
かかる知見に基づき、本発明は、貯留手段内の液体の圧送用に設けられた圧送手段の異常を容易かつ的確に検知可能な液体加熱装置の提供を目的とした。
そこで、上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、筐体と制御手段とを有し、筐体内に液体を貯留可能な貯留手段と、当該貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能な加熱手段と、熱交換手段と、当該熱交換手段に前記貯留手段内に貯留されている液体を供給可能な一次流路と、上水が流通可能な二次流路と、前記貯留手段および熱交換手段の間で液体を圧送可能な圧送手段と、前記貯留手段内に貯留されている液体の貯留温度を検知可能な貯留温度検知手段と、熱交換手段から流出する上水の流出温度を検知可能な流出温度検知手段と、二次流路を介して熱交換手段に流入する上水の流入温度を検知可能な流入温度検知手段とを備えた加熱系が設けられており、制御手段により圧送手段が作動するように制御し、貯留手段から熱交換手段に液体を供給することにより、二次流路を介して熱交換手段に供給された上水を加熱して前記加熱系の外部に供給する上水加熱動作を実施可能なものであり、上水加熱動作を実施することにより、二次流路を介して供給される上水に熱交換手段において付与されると想定される理論上の熱エネルギー量と、熱交換手段において上水に付与された実際の熱エネルギー量との差が所定量以上であることを判定要件とし、当該判定要件を満足することを条件として、制御手段により圧送手段が停止状態で異常を起こしているものと判断されるものであり、圧送手段を作動させ、貯留手段から熱交換手段に液体を供給することにより、熱交換手段から流出する上水の流出温度が所定の設定温度となるように加熱可能なものであり、熱交換手段において加熱され二次流路を流れる上水と、外部から供給された上水とを流入させて混合可能な混合手段が設けられており、当該混合手段は、流出温度が前記設定温度未満であることを条件として、二次流路側に開状態となるものであり、下記(7)の判定要件を満足することを条件として、制御手段により、圧送手段が停止状態で異常を起こしているものと判断されることを特徴とする液体加熱装置である。
(7) 混合手段が二次流路側に開状態である。
上記したように、本発明の液体加熱装置は、圧送手段を作動させて貯留手段から熱交換手段に液体を送り込むことにより熱交換手段に熱エネルギーを供給し、上水を熱交換加熱する構成とされている。そのため、圧送手段が異常を来すと、貯留手段から熱交換手段に対する熱エネルギーの供給が途絶え、上水に付与される熱エネルギー量が、上水の加熱に必要となる理論上の熱エネルギー量に対して不足することとなる。
かかる知見に基づき、本発明の液体加熱装置では、上水加熱動作の際に熱交換手段において上水に付与されるであろう理論上の熱エネルギー量と、熱交換手段において上水に実際に付与された熱エネルギー量とを比較し、これらの差が所定量以上であることを条件として圧送手段の異常を検知する構成とされている。そのため、本発明の液体加熱装置は、圧送手段の異常を的確に検知することができる。
本発明の液体加熱装置は、上水を加熱するための熱交換手段が貯留手段から離間した位置に配置されているため、貯留手段の容量や高さを抑制することができる。従って、本発明によれば、装置構成がコンパクトな液体加熱装置を提供できる。
また、本発明の液体加熱装置は、貯留手段と熱交換手段との間で、貯留手段に貯留されている液体を循環させ、この液体との熱交換により上水を加熱する構成とされている。そのため、本発明の液体加熱装置によれば、上水を効率よく加熱して加熱系の外部に供給することができる。
また、本発明の液体加熱装置は、貯留手段に貯留されている液体を貯留手段と熱交換手段との間で循環させる構成であるため、熱交換手段において上水の加熱に供する液体は、貯留手段に貯留されている液体の一部である。そのため、本発明の液体加熱装置では、貯留手段に貯留されている液体の温度ムラ等に殆ど左右されることなく、加熱系の外部に供給される上水の温度を安定化することができる。
さらに、本発明の液体加熱装置では、熱交換手段に供給される液体が所定温度に到達していれば上水を所望の温度に加熱することができる。そのため、本発明の液体加熱装置は、貯留手段内の液体全体が所定の温度に到達するのを待つことなく、上水を所望の温度に加熱できる。従って、本発明の液体加熱装置は、上水の供給動作を開始してから加熱系の外部に供給される上水が所望の温度に到達するまでに要する時間(立ち上がり時間)が短い。
本発明の液体加熱装置で採用されている混合手段は、熱交換手段において加熱された上水と、外部から供給された上水とを混合可能な構成とされており、流出温度が前記設定温度未満であることを条件として、二次流路側に開状態となる構成とされている。そのため、混合手段が二次流路側に開状態である(要件(7))ことを条件として熱交換手段における上水の熱交換加熱がうまくいっていないものと想定され、圧送手段が異常を起こしている可能性が高い。本発明の液体加熱装置では、上記要件(7)を圧送手段の異常判定の一条件としているため、圧送手段の異常を精度よく検知することができる。
ここで、本発明の液体加熱装置は、加熱手段が貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能なものであるため、加熱手段を作動させて貯留手段内の液体を加熱すると、貯留手段内において液体が対流を起こし、貯留手段の上方側の液体が下方側の液体に比べて高温になる傾向にある。そのため、本発明の液体加熱装置において、上水の加熱用に設けられた熱交換手段が貯留手段と同等の高さ、あるいは、これよりも上方に配置されていると、貯留手段の上方側から一次流路等を介して熱交換手段に熱エネルギーが伝達される可能性がある。上水の供給停止時にこのような事態が発生すると、熱交換手段に滞留している上水が加熱されてしまい、次の上水の供給開始直後に予期せぬ高温の上水が加熱系の外部に供給(排出)されてしまう可能性がある。
そこで、かかる知見に基づき、本発明の液体加熱装置では、熱交換手段が貯留手段に対して下方に配置され、貯留手段から熱交換手段への伝熱を最小限に抑制している。そのため、本発明の液体加熱装置では、上水の供給停止時に熱交換手段に滞留している上水が必要以上に加熱されたり、次の上水の供給開始直後に高温の上水が供給されるといったような不具合が起こりにくい。
請求項2に記載の発明は、筐体と制御手段とを有し、筐体内に液体を貯留可能な貯留手段と、当該貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能な加熱手段と、熱交換手段と、当該熱交換手段に前記貯留手段内に貯留されている液体を供給可能な一次流路と、上水が流通可能な二次流路と、前記貯留手段および熱交換手段の間で液体を圧送可能な圧送手段と、前記貯留手段内に貯留されている液体の貯留温度を検知可能な貯留温度検知手段と、熱交換手段から流出する上水の流出温度を検知可能な流出温度検知手段と、二次流路を介して熱交換手段に流入する上水の流入温度を検知可能な流入温度検知手段とを備えた加熱系が設けられており、熱交換手段が、前記貯留手段に対して下方に離間した位置に配されており、制御手段により圧送手段が作動するように制御し、貯留手段から熱交換手段に液体を供給することにより、二次流路を介して熱交換手段に供給された上水を加熱して前記加熱系の外部に供給する上水加熱動作を実施可能なものであり、下記(1)〜(3)の判定要件を満足することを条件として、制御手段により、圧送手段が停止状態で異常を起こしているものと判断されることを特徴とする液体加熱装置である。
(1) 上水加熱動作を実施すべき状態である。
(2) 貯留温度が第1の所定温度以上である。
(3) 流出温度と流入温度との差が所定温度以下である。
さらに、圧送手段を作動させ、貯留手段から熱交換手段に液体を供給することにより、熱交換手段から流出する上水の流出温度が所定の設定温度となるように加熱可能なものであり、熱交換手段において加熱され二次流路を流れる上水と、外部から供給された上水とを流入させて混合可能な混合手段が設けられており、当該混合手段は、流出温度が前記設定温度未満であることを条件として、二次流路側に開状態となるものであり、下記(7)の判定要件を満足することを条件として、制御手段により、圧送手段が停止状態で異常を起こしているものと判断されることを特徴とする液体加熱装置である。
(7) 混合手段が二次流路側に開状態である。
本発明の液体加熱装置は、圧送手段を作動させることにより、液体を介して熱エネルギーを熱交換手段に供給する構成とされている。そのため、本発明の液体加熱装置は、貯留手段に貯留されている液体が、熱交換手段において上水を熱交換加熱できる程度に高温であれば、二次流路を介して熱交換手段から流出する上水の流出温度を、熱交換手段に流入する上水の流入温度よりも高温にすることが可能であるものと想定される。従って、本発明の液体加熱装置では、貯留温度が第1の所定温度以上である(要件(2))状況下で上水加熱動作を実施すべき状態(要件(1))になったにもかかわらず、圧送手段が正常に作動できないと、流出温度と流入温度との差が所定温度以下(要件(3))のままであるものと想定される。かかる知見に基づき、本発明の液体加熱装置は、上記要件(1)〜(3)を満足することを条件として圧送手段が異常であるか否かを判定する構成とされている。そのため、本発明によれば、圧送手段の異常を的確に検知することができる。
上記したように、本発明の液体加熱装置では、上水加熱動作の一連の動作に伴って検知される貯留温度や流出温度、流入温度に基づいて圧送手段の異常を検知することができ、圧送手段の異常検知のために圧送手段を特別なタイミングで作動させたり、特別な動作を実施する必要がない。そのため、本発明の液体加熱装置では、圧送手段の異常を容易かつスムーズに検出することができる。
本発明の液体加熱装置についても、上記請求項1に記載の液体加熱装置と同様に熱交換手段が貯留手段から離間した位置に配置されている。そのため、本発明の液体加熱装置は、貯留手段の容量や高さが小さい。
また、本発明の液体加熱装置は、加熱手段により貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能なものであり、加熱手段の作動に伴って液体が貯留手段内で対流を起こし、貯留手段の上方側の液体が下方側の液体に比べて高温になる傾向にある。かかる知見に基づき、本発明の液体加熱装置では、熱交換手段を貯留手段に対して下方に配置して、貯留手段から熱交換手段への伝熱を最小限に抑制している。そのため、本発明の液体加熱装置では、上水の供給停止時に熱交換手段に滞留している上水が必要以上に加熱されたり、次の上水の供給開始直後に高温の上水が供給されるといったような不具合が起こりにくい。
本発明の液体加熱装置は、圧送手段を作動させることにより、貯留手段と熱交換手段との間で貯留手段に貯留されている液体を循環させて熱交換手段に熱エネルギーを順次供給し、熱交換手段に供給される上水を熱交換加熱可能な構成とされている。そのため、本発明の液体加熱装置は、上水の加熱効率が高い。
本発明の液体加熱装置は、貯留手段に貯留されている液体を圧送手段で圧送して熱交換手段に供給する構成であるため、熱交換手段に供給される上水を貯留手段に貯留されている液体の温度ムラ等に殆ど左右されることなく加熱することができる。そのため、本発明の液体加熱装置によれば、熱交換手段で加熱され供給される上水の温度を安定化することができる。
本発明の液体加熱装置は、熱交換手段に供給される液体との熱交換により上水を加熱する構成であるため、仮に貯留手段に貯留されている液体全体が所定温度に到達していなくても、熱交換手段に供給される液体が所定温度に到達していれば上水を所望の温度に加熱することができる。そのため、本発明の液体加熱装置は、貯留手段内の液体全体が所定の温度に到達するのを待つことなく、上水を所望の温度に加熱して供給できる。従って、本発明の液体加熱装置は、加熱系の外部に供給される上水の温度を上水加熱動作の開始後、間もなく所望の温度に加熱して供給することができる。
上記請求項1又は2に記載の液体加熱装置は、圧送手段を作動させ、貯留手段から熱交換手段に液体を供給することにより、熱交換手段から流出する上水の流出温度が所定の設定温度となるように加熱可能なものであり、熱交換手段に対して流入する上水の流入温度と、二次流路を介して熱交換手段に流入する上水の流入量とに基づいて上水を設定温度に加熱可能なように加熱手段の出力が制御されるものであり、制御手段が、前記流入温度、流入量および設定温度に基づいて、上水を設定温度に加熱するのに要する理論上の熱エネルギー量を導出すると共に、熱交換手段から流出する上水の流出温度と、前記流入温度と、前記流入量とに基づいて上水を介して加熱系の外部に供給された実際の熱エネルギー量を導出し、下記(4)の判定要件を満足することを条件として圧送手段が停止状態で異常を起こしているものと判断することを特徴とするものであってもよい(請求項3)。
(4) 理論上の熱エネルギー量と、実際の熱エネルギー量との差が所定量以上である。
上記したように、本発明の液体加熱装置は、圧送手段が異常を来すと貯留手段から熱交換手段に対する熱エネルギーの供給が途絶え、上水に付与される熱エネルギー量が上水の加熱に必要となる理論上の熱エネルギー量に対して不足することとなる。本発明の液体加熱装置では、かかる知見に基づき、流入温度、流入量および設定温度に基づいて理論上の熱エネルギー量を導出すると共に、上水の流出温度と、前記流入温度と、前記流入量とに基づいて加熱系の外部に供給された実際の熱エネルギー量を導出し、これらの差が所定量以上であること(要件(4))を条件として圧送手段の異常を検知する構成とされている。そのため、本発明の液体加熱装置は、圧送手段の異常を的確に検知することができる。
ここで、上記したように、圧送手段が異常である場合は、熱交換手段に対する熱エネルギーの供給が滞るため、熱交換手段から出る上水の流出温度が設定温度よりも低くなったり、貯留手段に貯留されている液体の貯留温度に対して前記流出温度が大幅に低くなるものと想定される。従って、上記した本発明の液体加熱装置において、流出温度と設定温度との差や、貯留温度と流出温度との差を確認し、これを圧送手段の異常判定条件として採用することも可能である。
そこで、かかる知見に基づき、上記請求項1〜3のいずれかに記載の液体加熱装置は、圧送手段を作動させ、貯留手段から熱交換手段に液体を供給することにより、熱交換手段から流出する上水の流出温度が所定の設定温度となるように加熱可能なものであり、下記(5)及び/又は(6)の判定要件を満足することを条件として、制御手段により、圧送手段が停止状態で異常を起こしているものと判断されることを特徴とするものであってもよい(請求項4)。
(5) 流出温度が前記設定温度よりも低く、流出温度と設定温度との差が第2の所定温度以上である。
(6) 貯留温度と流出温度との差が、第3の所定温度以上である。
かかる構成によれば、圧送手段の異常をより一層的確に検知可能な液体加熱装置を提供することができる。
ここで、上記した請求項1〜4に記載の液体加熱装置では、上水加熱動作に伴い上水に付与される熱エネルギー量や、上水の温度変化等を捉えて圧送手段の異常を検知する構成とされている。そのため、熱交換手段に流入する上水の入水量が少ないと検知誤差が生じやすく、圧送手段の異常の検知精度が不安定になるおそれがある。
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項5に記載の発明は、下記(8)の判定要件を満足することを条件として、制御手段により、圧送手段が停止状態で異常を起こしているものと判断されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体加熱装置である。
(8) 二次流路を介して熱交換手段に流入する上水の入水量が所定量を超える。
かかる構成によれば、上水加熱動作に伴い上水に付与される熱エネルギー量や、上水の温度変化等を精度よく検知することができる。従って、本発明によれば、圧送手段の異常を精度よく検知することができる。
ここで、上記した請求項1〜5に記載の液体加熱装置では、様々な判定要件を満足することを条件として圧送手段の異常を検知する構成とされているが、当該検知中の条件等の外乱によって前記判定要件を突発的に満足し、圧送手段が異常であるものと誤検知されてしまう可能性がある。
そこで、かかる知見に基づき、請求項1〜5のいずれかに記載の液体加熱装置において、制御手段は、圧送手段が異常であるものと判断するための判定要件を所定時間にわたって満足することを条件として圧送手段が停止状態で異常を起こしているものと判断することを特徴とするものであってもよい。
かかる構成によれば、圧送手段の異常を誤検知する可能性を最小限に抑制することができる。
ここで、圧送手段が異常を来す場合の大半は停止状態から起動できない状態であるが、ごく希に圧送手段が停止すべき状態になっても作動状態のままになる異常を起こすことがある。上記請求項1〜5に記載の液体加熱装置において、圧送手段が作動状態のまま異常を起こすと、二次流路における上水の流れが停止しているにもかかわらず熱交換手段に液体を介して熱エネルギーが供給されることとなり、熱交換手段やこの近辺に存在している上水が予期せぬ高温に加熱されるおそれがある。そのため、上記請求項1〜5に記載の液体加熱装置は、圧送手段が停止状態で異常を来している場合だけでなく、作動状態のまま異常を来しているか否かについても検知可能な構成とすることが望ましい。
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項6に記載の発明は、制御手段が、上水加熱動作を停止すべき状態において、圧送手段が動作を停止するように制御するものであり、下記(a)及び(b)の判定要件を満足することを条件として、圧送手段が作動状態で異常を起こしているものと判断することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体加熱装置である。
(a) 上水加熱動作を停止すべき状態である。
(b) 熱交換手段から流出する上水の流出温度が、熱交換手段に流入する上水の流入温度よりも所定温度以上高い。
本発明の液体加熱装置において、上水加熱動作を停止すべき状態(要件(a))になると、本来は圧送手段が停止し、熱交換手段への液体(熱エネルギー)の供給が停止されるはずである。にもかかわらず、熱交換手段から流出する上水の流出温度が、熱交換手段に流入する上水の流入温度よりも所定温度以上高い(要件(b))場合は、本来であれば停止すべき状態にある圧送手段が停止せず作動したままである可能性が高い。
かかる知見に基づき、本発明の液体加熱装置では上記(a)および(b)の要件を満足することを条件として圧送手段が作動状態で異常を起こしているものと判断する構成としている。そのため、本発明の液体加熱装置によれば、圧送手段が作動状態で異常を起こしているか否かを的確に検知することができる。
また、上記請求項1〜6のいずれかに記載の液体加熱装置は、制御手段が、上水加熱動作を停止すべき状態において、圧送手段が動作を停止するように制御するものであり、下記(a)の判定要件に加えて、下記(c)及び/又は(d)の判定要件を満足することを条件として、圧送手段が作動状態で異常を起こしているものと判断することを特徴とするものであってもよい(請求項7)。
(a) 上水加熱動作を停止すべき状態である。
(c) 上水加熱動作を停止すべき状態になった後、熱交換手段から流出する上水の流出温度が上昇する。
(d) 上水加熱動作を停止すべき状態になった後、熱交換手段から流出する上水の流出温度が実質的に低下しない。
上記したように、上水加熱動作を停止すべき状態(要件(a))になると、本来であれば圧送手段が停止状態となり、熱交換手段に対する液体(熱エネルギー)の供給が停止するはずである。それにもかかわらず、上水加熱動作を停止すべき状態になった時点から後に熱交換手段から流出する上水の流出温度が上昇(要件(c))したり、熱交換手段から流出する上水の流出温度が実質的に低下しない(要件(d))場合は、圧送手段が停止せず動作し続けている可能性が高い。かかる知見に基づき、本発明の液体加熱装置では、上記(a)および(c)、(d)の要件を圧送手段が作動状態のまま異常を来しているものと判断するための判定要件としている。そのため、本発明によれば、圧送手段の異常を的確に把握することができる。
ここで、上記請求項6又は7に記載の液体加熱装置において、圧送手段が作動状態で異常を起こしているものと判断された場合は、上水加熱動作を実施すべきでない状況下であっても二次流路に流れる上水が加熱されてしまう状態にある。そのため、上記請求項7又は8に記載の液体加熱装置において、制御手段は、圧送手段が作動状態で異常を起こしているものと判断することを条件として、圧送手段が正常である場合よりも加熱手段の加熱能力を低下させる、あるいは、加熱手段を作動停止状態とすることが望ましい(請求項8)。
また同様に、上記請求項6〜8のいずれかに記載の液体加熱装置において、制御手段は、圧送手段が作動状態で異常を起こしているものと判断することを条件として、二次流路を流通可能な上水の流量を圧送手段が正常である場合よりも制限する、あるいは、二次流路における上水の流れを阻止することが望ましい(請求項9)。
上記請求項8や請求項9のような構成によれば、上水加熱動作を実施すべきでない状況下において、予期せぬ高温の上水が二次流路を介して加熱系の外部に供給(排出)されてしまうのを防止できる。
上記請求項1〜9のいずれかに記載の液体加熱装置は、圧送手段を停止させて貯留手段から熱交換手段への液体の供給を停止した状態において、二次流路を介して供給される上水を熱交換手段を通過させて前記加熱系の外部に供給する非加熱供給動作を実施可能なものであり、制御手段が、圧送手段が異常であるものと判断することを条件として圧送手段の作動を阻止し、非加熱供給動作を許容することを特徴とするものであってもよい(請求項10)。
かかる構成によれば、圧送手段が異常を来していても、非加熱供給動作を実施したり、貯留手段に貯留されている液体を上水の加熱以外の用途に使用することができる。
ここで、上記したように、貯留手段内に貯留されている液体を加熱すると、貯留手段の上方側に存在する液体が下方側に存在する液体に対して優先的に加熱される傾向にある。そのため、上記請求項1〜10のいずれかに記載の液体加熱装置において、貯留手段の上方側に存在する液体を下方側に存在する液体に対して優先的に熱交換手段に供給可能であることが望ましい(請求項11)。
かかる構成によれば、貯留手段内において高温に加熱された液体を優先的に熱交換手段に供給することができる。従って、本発明の液体加熱装置によれば、熱エネルギーを有効利用しつつ、上水の供給を開始してから所定温度まで加熱された上水が供給されるまでに要する時間(立ち上がり時間)をさらに短縮することができる。
ここで、上記請求項1〜11に記載の液体加熱装置は、熱交換手段を貯留手段の外部に配し、この熱交換手段を用いて上水を加熱するものであったが、さらに別の用途に使用する液体を加熱可能な構成とすることも可能である。この場合、上記請求項1〜11のいずれかに記載の液体加熱装置は、貯留手段の内部に、貯留手段内に貯留されている液体との熱交換により液体を加熱可能な液−液熱交換手段が設けられた構成とすることが可能である(請求項12)。
かかる構成によれば、上水の加熱に加えて、暖房装置等に代表される他の負荷端末に供給するための液体を加熱できる。従って、本発明によれば、給湯に代表されるような上水の供給だけでなく他用途にわたって使用可能な液体加熱装置を提供できる。
本発明によれば、貯留手段内の液体の圧送用に設けられた圧送手段の異常を容易かつ的確に検知可能な液体加熱装置を提供できる。
続いて、本発明の一実施形態にかかる液体加熱装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、1は本実施形態の液体加熱装置である。図1および図2に示すように、液体加熱装置1は、金属製の筐体Wの内部に本体部2と燃焼部3および消音器4に加えて、後述する上水系統X、暖房系統Yおよび風呂系統Zの構成部材を内蔵し、これらによって加熱系Hを形成した構成とされている。
本体部2は、大きく燃焼空間部5と貯留部6(貯留手段)とに分かれている。燃焼部3および燃焼空間部5は、貯留部6内に貯留される熱媒体を加熱する加熱手段7として機能する。本体部2は、全体形状が円筒形であり、2重構造となっている。本体部2の内部には、貯留部6が形成されている。より具体的には、本体部2は外筒8と内筒9とを有し、その内部に熱媒体を貯留できる構造とされている。また、特に本体部2の上半分には、上鏡板10と下鏡板11とによって囲まれた熱媒体室12が形成されている。
熱媒体室12には、複数の燃焼ガス通路13が形成されている。燃焼ガス通路13は、貯留部6の熱媒体室12を軸方向に貫通する貫通孔である。また、燃焼部3は、灯油等の液体燃料の燃焼を行うバーナを備えており、燃料噴射ノズル15が内蔵されている。また、燃焼部3は、送風機16を具備しており、本体部2の下方に位置する燃焼空間部5に接続されている。燃焼空間部5は、燃焼部3の燃焼室として機能する。
一方、本体部2の上方には、消音器4が設けられている。消音器4は、外観が円筒状または直方体状をしており、内部がラビリンス構造となっており、燃焼音を低減させるものである。なお、図1および図2において、消音器4のラビリンス構造は図示せず省略している。
燃焼部3の燃料噴射ノズル15から噴射された燃料は、燃焼空間部5内において燃焼し、高温の燃焼ガスと火炎とを発生する。燃焼ガスは、熱媒体室12内の燃焼ガス通路13を流れ、消音器4を通過した後、外部に排出される。熱媒体室12内の熱媒体は、燃焼ガス通路13を流れる高温の燃焼ガスにより加熱され、昇温する。
貯留部6には、熱媒体として不凍液を貯留することができる。貯留部6には、内部に貯留されている熱媒体の温度を測定するための温度センサ24(温度検知手段)が設けられている。温度センサ24はサーミスタにより構成されている。本実施形態において、温度センサ24は貯留部6内のいかなる場所に設けられてもよいが、安定した検知精度を得るため貯留部6の上方側に取り付けられることが望ましい。温度センサ24の検知温度に基づいて燃焼部3が駆動し、貯留部6内の熱媒体は沸騰しない程度の温度に維持される。さらに具体的には、常時は、貯留部6内の熱媒体が80℃以上に維持され、より好ましくは85℃以上の高温に維持される。
貯留部6には、上水系統Xを構成する上水一次側往き流路20(一次流路)および上水一次側戻り流路21(一次流路)と、暖房系統Yを構成する暖房往き流路22と、暖房戻り流路23とが接続されている。また、貯留部6の内部には、コイル状の熱交換器17(液−液熱交換手段)が内蔵されており、これに風呂系統Zを構成する風呂往き流路25および風呂戻り流路26が接続されている。
上水系統Xは、図1に示すように上水用熱交換器30(熱交換手段)を中心として構成されるものであり、これに上水一次往き流路20や上水一次戻り流路21をはじめとする流路を接続して構成されるものである。上水用熱交換器30は、いわゆるプレート型の熱交換器によって構成されており、一次側接続口30a,30bおよび二次側接続口30c,30dを有する。上水用熱交換器30は、一次側接続口30a,30b間、および、二次側接続口30c,30d間で連通しており、一次側接続口30a,30b間を流れる液体と、二次側接続口30c,30d間を流れる液体とを熱交換させることができる構成となっている。上水用熱交換器30は、内部に多数のフィンが設けられており、このフィンの数を調整することにより、熱交換効率を適宜調整することができる。
上水用熱交換器30は、図1では図示の都合で貯留部6に隣接する位置に記しているが、実際は図2に示すように筐体Wの内部であって、貯留部6から離間した位置に設けられている。さらに具体的には、上水用熱交換器30は、貯留部6を含む本体部2の下方に配置されている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6の上端側から上水一次側往き流路20や上水一次側戻り流路21、上水用熱交換器30等への伝熱が起こりにくい構成となっている。
貯留部6に接続されている上水一次側往き流路20および上水一次側戻り流路21は、それぞれ上水用熱交換器30の一次側接続口30a,30bに接続されている。また、上水一次側戻り流路21の中途には、上水加熱用ポンプ32(圧送手段)が設けられている。そのため、上水加熱用ポンプ32を作動させることにより、貯留部6内に貯留されている熱媒体を、貯留部6の上端側に接続された上水一次側往き流路20を介して上水用熱交換器30に供給し、貯留部6側に戻すことができる。すなわち、上水加熱用ポンプ32を作動させることにより、貯留部6と上水用熱交換器30との間で熱媒体の循環流を発生させ、熱媒体の持つ熱エネルギーを上水用熱交換器30に供給することができる。
上水用熱交換器30の二次側接続口30cには給水流路33(二次流路)が接続されており、二次側接続口30dには上水二次側往き流路34(二次流路)が接続されている。給水流路33は、外部の給水源から液体加熱装置1に湯水(上水)を供給するための流路であり、中途に水量センサ36、水温センサ37および給水用膨張タンク38が設けられている。また、水量センサ36よりも上流側には、逆止弁29が設けられている。そのため、万一、上水用熱交換器30の内部破壊によりその一次側(熱媒体側)と二次側(湯水側)とが連通しても、図示しない上水の上流側に熱媒体が逆流することがない。給水流路33は、中途で分岐流路40に分岐されている。分岐流路40は、後述する水量サーボ41(混合手段)に接続されている。
上水二次側往き流路34は、上水用熱交換器30において熱交換加熱された湯水が流れる流路であり、水量サーボ41に接続されている。上水二次側往き流路34の中途には、缶体サーミスタ39が設けられており、これにより上水用熱交換器30において加熱され、上水二次側往き流路34に存在する湯水の温度を検知することができる。
水量サーボ41は、3つの接続部41a,41b,41cを有し、接続部41a,41bから流入した湯水(液体)を混合して接続部41cから排出可能な構成とされている。水量サーボ41は、接続部41a,41bの開度、すなわち接続部41a,41bから流入可能な湯水の量を調整可能な構成とされており、これにより接続部41a,41bから流入する湯水の混合比を調整可能な構成とされている。
水量サーボ41の接続部41a,41bの開度は、供給すべき湯水の設定温度や、前記した分岐流路40を介して外部の給水源から供給される湯水の温度(流入温度)、供給すべき湯水の量に応じて調整される。水量サーボ41の接続部41aは、水量サーボ41に上水二次側往き流路34を介して供給される湯水の温度が、給湯運転や落とし込みのために接続部41cから排出する湯水を出湯設定温度Stに調整するには不十分である場合に全開となる。
水量サーボ41の接続部41bには、給水流路33から分岐された分岐流路40が接続されている。そのため、液体加熱装置1では、分岐流路40を介して供給される低温の湯水と、上水二次側往き流路34を介して供給される高温の湯水とを水量サーボ41で混合して接続部41cから排出可能な構成とされている。
水量サーボ41は、後述する給湯運転や落とし込み運転の待機中に、上水二次側往き流路34が接続された接続部41aが多少開いた状態とされている。すなわち、給湯運転の待機中、水量サーボ41は上水二次側往き流路34に対して開状態で維持されている。
水量サーボ41には、上水流路35が接続されている。上水流路35は、給湯用や浴槽60への落とし込み用に使用される上水を供給するための流路である。上水流路35は、水量サーボ41の接続部41cに接続されており、中途に水量調整弁43(流量調整手段)と出湯温度センサ45とを有する。上水流路35の末端には、給湯栓47に繋がる配管48を接続するための給湯接続口46が設けられている。
上水流路35は、出湯温度センサ45の取り付け位置よりも湯水の流れ方向下流側の位置で注湯バイパス流路50に分岐されている。注湯バイパス流路50は、後述する風呂戻り流路26に接続されている。注湯バイパス流路50は、浴槽60への落とし込み用の湯水を供給するための流路であり、中途に注湯電磁弁51と、注湯水量センサ52と、逆止弁53,54が設けられている。注湯水量センサ52は、注湯バイパス流路50を流れる水量を検知するものである。注湯電磁弁51は、後述する制御手段90に入力される浴槽60への落とし込み運転(湯張り運転、足し湯運転、足し水運転)のための制御信号に基づいて開閉される。また、逆止弁53,54は、浴槽60側から湯水が逆流するのを防止するために設けられている。
図1に示すように、暖房系統Yは、貯留部6に接続された暖房往き流路22と、暖房戻り流路23とを備えている。暖房往き流路22は貯留部6の頂部側に接続されており、暖房戻り流路23は貯留部6の底部側の位置に接続されている。暖房戻り流路23の中途には、暖房タンク65と循環ポンプ66とが設けられている。暖房往き流路22および暖房戻り流路23の末端には、暖房接続口67,68が設けられており、これらに液体加熱装置1の外部に設けられた負荷端末75に繋がる配管69,70を接続することにより、負荷端末75と液体加熱装置1との間で貯留部6内に貯留されている熱媒体が往き来可能な状態とすることができる。
暖房タンク65には、暖房系統Y内に存在する空気を外部に排出するためのエア抜き弁71が取り付けられている。また、暖房タンク65には、バイパス流路72が接続されている。バイパス流路72は、循環ポンプ66の保護を主目的として設けられた流路であり、暖房タンク65と貯留部6の上端側の部位とをバイパスするように取り付けられている。バイパス流路72は、暖房戻り流路23よりも流路断面積が小さく、流路抵抗が大きい。そのため、負荷端末75に液体を供給可能な状態で循環ポンプ66を作動させると、貯留部6から暖房往き流路22を介して吸い出された熱媒体が、配管69,70および負荷端末75を流れ、暖房戻り流路23を介して貯留部6に戻る。一方、負荷端末75に液体を供給不可能な状態で循環ポンプ66が作動すると、熱媒体が貯留部6からバイパス流路72を介して吸い出され、暖房戻り流路23を経て貯留部6に戻る。
風呂系統Zは、浴槽60内の湯水を加熱(追い焚き)したり、浴槽60内に湯水を落とし込むために使用されるものである。風呂系統Zは、図1に示すように、貯留部6内に配置された熱交換器17に風呂往き流路25および風呂戻り流路26を接続した構成とされている。
熱交換器17は、貯留部6内に配されており、貯留部6の底部側および頂部側に接続口17a,17bを有する。貯留部6の底部側に設けられた接続口17aには、風呂往き流路25が接続されており、頂部側に設けられた接続口17bには、風呂戻り流路26が接続されている。風呂往き流路25および風呂戻り流路26の端部には、それぞれ浴槽60に繋がる配管77,78を接続するための風呂接続口61,62が設けられている。また、風呂往き流路25および風呂戻り流路26は、バイパス流路63によってバイパスされている。
風呂戻り流路26の中途には、熱交換器17側から湯水の流れ方向上流側に向けて三方弁80、湯温センサ81、水流スイッチ82、循環ポンプ83および水位センサ84の順で設けられている。また、風呂戻り流路26の中途であって、循環ポンプ83よりも上流側の位置には、上記した注湯バイパス流路50が接続されている。三方弁80は、上記したバイパス流路63と風呂戻り流路26との接続部分に設けられており、必要に応じて開閉できる構成とされている。さらに具体的には、予め浴槽60内に張られている湯水を加熱(追い焚き)する場合は、三方弁80の熱交換器17側のポートと循環ポンプ83側のポートとが連通した状態とされる。これにより、熱交換器17と浴槽60との間で湯水の往き来が可能な状態になる。一方、浴槽60内に湯水を供給(落とし込み)する場合は、三方弁80の熱交換器17側のポートが閉止した状態とされる。これにより、上水用熱交換器30において加熱された湯水を、注湯バイパス流路50側から風呂往き流路25や風呂戻り流路26に流し、配管77,78を介して浴槽60に供給可能な状態になる。
液体加熱装置1は、制御手段90とリモートコントローラ91(以下、単にリモコン91と称す)とを備えている。制御手段90は、例えばCPUを中心として構成され、RAM、ROM、I/Oポート、および、アナログのセンサ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、あるいは、生成されたデジタル制御信号をアナログ制御信号に変換するD/A変換回路などを備えた構成とすることができる。
制御手段90は、温度センサ24や水量センサ36、缶体サーミスタ39等の検知手段の検知信号や、リモコン91等を介して入力される入力信号を参照し、燃焼部3や上水加熱用ポンプ32、循環ポンプ66,83等のポンプ類、水量サーボ41、水量調整弁43、注湯電磁弁51、三方弁80等の弁類をはじめとする各構成部材を動作させるものである。すなわち、制御手段90は、液体加熱装置1の動作全般を司るものである。制御手段90は、制御に用いる各種の判別基準値や制御プログラム等を予めROMに格納しており、CPUで上記した各検知手段の検知信号を随時参照し、制御プログラムに従って処理を行う。
続いて、本実施形態の液体加熱装置1の動作について説明する。液体加熱装置1は、給湯栓47に上水用熱交換器30において熱交換加熱された湯水を供給する給湯運転に加えて、外部から供給された湯水を熱交換加熱せずにそのまま給湯栓47に供給する給水運転、負荷端末75に貯留部6内に貯留されている熱媒体を介して熱エネルギーを供給する負荷運転や浴槽60に湯水を落とし込む落とし込み運転、浴槽60内の湯水を加熱する追い焚き運転から一又は複数の運転方法を選択して実施することができる。以下、液体加熱装置1の動作を各運転方法毎に説明する。
(給湯運転)
液体加熱装置1が給湯運転を実施する場合は、上水用熱交換器30において、外部の給水源から供給された湯水が貯留部6内に貯留されている高温の熱媒体との熱交換により加熱され、給湯栓47に向けて供給される。さらに具体的には、液体加熱装置1は、図示しない運転スイッチがオン状態とされ、給湯栓47が開栓されると、外部の給水源から給水流路33を介して低温の湯水が供給される。給水流路33の中途に設けられた水量センサ36が所定量以上の水流を検知すると、上水加熱用ポンプ32が作動を開始する。
上水加熱用ポンプ32が作動すると、貯留部6の頂部側に設けられた一次側接続口30aから吸い出された高温の熱媒体が上水一次側往き流路20を介して上水用熱交換器30に供給される。貯留部6から吸い出された高温の熱媒体は、上水用熱交換器30において熱エネルギーを放出した後、上水一次側戻り流路21を介して貯留部6に戻る。すなわち、上水加熱用ポンプ32が作動すると、貯留部6と上水用熱交換器30との間で貯留部6内に貯留されている熱媒体が循環する。
給水流路33を介して外部から供給された低温の湯水の一部は、上水用熱交換器30に供給され、残部は、分岐流路40を介して水量サーボ41に供給される。ここで、上水用熱交換器30に供給される湯水と、分岐流路40側に流れる湯水の流量比は、給湯栓47において必要とされる湯水の設定温度等に基づいて水量サーボ41により調整される。
給水流路33を介して上水用熱交換器30に供給された湯水は、上水一次側往き流路20を介して上水用熱交換器30に供給されている高温の熱媒体との熱交換により加熱される。上水用熱交換器30において加熱された高温の湯水は、上水二次側往き流路34を介して水量サーボ41に供給される。
水量サーボ41に供給された高温の湯水は、分岐流路40を介して供給された低温の湯水と混合されて所定温度に調整された後、上水流路35に流れ込む。上水流路35に流れ込んだ湯水は、給湯接続口46に接続された配管48を介して給湯栓47に供給され、給湯に使用される。
(給水運転)
給水運転は、液体加熱装置1の外部にある給水源から供給された湯水を上水用熱交換器30で熱交換加熱することなく、そのまま給湯栓47に供給する運転形態である。給水運転を実施する場合は、さらに具体的には、液体加熱装置1は、図示しない運転スイッチがオフ状態の場合は、給湯運転を行わない。すなわち、運転スイッチがオフ状態である場合は、上水加熱用ポンプ32が作動せず、貯留部6から上水用熱交換器30に熱媒体(熱エネルギー)が供給されない。そのため、この状態において給湯栓47が開栓されると、外部の給水源から給水流路33を介して供給された低温の湯水が上水用熱交換器30を素通りして給湯栓47に供給される。
本実施形態の液体加熱装置1は、上記した運転スイッチがオン状態であるか否かにかかわらず、負荷運転のように外部の給水源から供給された湯水(上水)の加熱を伴わない運転を実施できる構成とされている。また、液体加熱装置1は、仮に上水加熱用ポンプ32がオフ状態で故障しており、貯留部6から上水用熱交換器30に熱媒体(熱エネルギー)を供給不可能な状態において、湯水を加熱して供給する給湯動作を実施することは不可能であるが、給水動作は実施することができる。
(負荷運転)
液体加熱装置1が負荷運転で運転する場合、図示しない負荷運転用の運転スイッチがオン状態とされると、燃焼部3が燃焼運転を開始し、貯留部6内に貯留されている熱媒体が加熱される。また、暖房戻り流路23に設けられた循環ポンプ66が作動し、貯留部6内の熱媒体が暖房往き流路22、暖房戻り流路23および配管69,70で構成される循環流路内を循環する。これにより、熱媒体を介して熱エネルギーが負荷端末75に供給される。
(落とし込み運転)
液体加熱装置1は、浴槽60に湯水を落とし込む落とし込み運転を湯張りモード、足し湯モード、足し水モードからなる3つの動作モードで実施することができる。足し水モードは、上記した給水運転と同様に、外部から供給された湯水を加熱することなく浴槽60に供給するモードである。液体加熱装置1が足し水モードで落とし込み運転を実施する場合は、湯水を加熱する必要がないため、上水加熱用ポンプ32が作動しない。すなわち、足し水モードで動作する場合は、外部から供給された低温の湯水の一部が上水用熱交換器30を素通りして水量サーボ41に供給されると共に、外部から供給された低温の湯水の残部が分岐流路40を介して水量サーボ41に流入して合流し、上水流路35および注湯バイパス流路50を介して浴槽60に落とし込まれる。
液体加熱装置1が足し水モードで落とし込み運転を実施する場合は、上記した給水運転と同様に、仮に上水加熱用ポンプ32がオフ状態で故障しており、貯留部6から上水用熱交換器30に熱媒体(熱エネルギー)を供給不可能な状態においても実施することができる。
湯張りモードは、外部から供給された湯水を上水用熱交換器30において加熱して浴槽60に落とし込み、浴槽60に湯水を張るモードである。また、足し湯モードは、予めある程度の湯水が浴槽60に溜められている状況下で、浴槽60内に上水用熱交換器30において加熱された湯水を追加するモードである。
液体加熱装置1が湯張りモードあるいは足し湯モードで落とし込み運転で運転する場合は、給水源から供給された低温の湯水が上水用熱交換器30において加熱され、これが浴槽60に落とし込まれる。すなわち、湯張りモードあるいは足し湯モードで落とし込み運転が実施される場合は、外部の給水源から湯水が供給される。給水流路33の中途に設けられた水量センサ36が所定量以上の水量を検知すると、上水加熱用ポンプ32が作動し始める。
一方、液体加熱装置1が湯張りモードあるいは足し湯モードで落とし込み運転を実施する場合は、風呂戻り流路26の中途に設けられた三方弁80が熱交換器17側に閉止された状態とされると共に、上水流路35の分岐流路である注湯バイパス流路50に設けられた注湯電磁弁51が開かれる。これにより、上水用熱交換器30において加熱された湯水は、分岐流路40を介して供給された低温の湯水と水量サーボ41において混合された後、上水流路35および注湯バイパス流路50を経て、風呂戻り流路26に流入する。風呂戻り流路26に流入した湯水の一部は、そのまま配管78に流入し、浴槽60に落とし込まれる。また、風呂戻り流路26に流入した湯水の残部は、バイパス流路63を経て風呂往き流路25に流入し、配管77を介して浴槽60に落とし込まれる。
(追い焚き運転)
追い焚き運転は、貯留部6内に設けられたコイル式の熱交換器17と浴槽60との間で湯水の循環流を発生させ、貯留部6内に貯留されている高温の熱媒体との熱交換により、熱交換器17内を流れる湯水を加熱するモードである。さらに具体的には、液体加熱装置1が追い焚き運転で作動する場合は、上記した各運転で動作する場合と同様に燃焼部3が燃焼運転を実施し、貯留部6内の熱媒体が加熱される。また、追い焚き運転で運転を実施する場合は、風呂戻り流路26の中途に設けられた三方弁80の熱交換器17側のポートと循環ポンプ83側のポートとが連通した状態とされる。この状態で循環ポンプ83を作動させると、浴槽60内の湯水が配管78を介して吸い出されて風呂戻り流路26に流れ込み、熱交換器17に流入する。熱交換器17に流入した湯水は、貯留部6内の熱媒体との熱交換により加熱され、風呂往き流路25および配管77を介して浴槽60に戻される。これにより、浴槽60内の湯水が次第に加熱される。
ここで、上記したように、液体加熱装置1は、給湯運転で動作する場合や、湯張りモードや足し湯モードで落とし込み運転を実施する場合のように、加熱系Hの外部から供給された湯水(上水)を上水用熱交換器30で加熱して供給する動作をする際に、上水加熱用ポンプ32を作動させて貯留部6と上水用熱交換器30との間で熱媒体を循環させて上水用熱交換器30に熱エネルギーを供給し、上水を加熱する上水加熱動作を実施する構成とされている。そのため、上水加熱用ポンプ32が故障して作動できない状態になったり、上水加熱用ポンプ32が十分な出力を発揮できない状態になると、給湯運転や落とし込み運転に必要とされる温度の湯水を供給できなくなってしまう。そこで、本実施形態の液体加熱装置1では、給湯運転で動作する場合や、湯張りモードや足し湯モードで落とし込み運転を実施する場合のように、外部から供給された湯水(上水)の加熱を実施している際に、この加熱動作と平行して上水加熱用ポンプ32の異常を検知する異常検知動作を実施する構成とされている。
さらに具体的には、本実施形態の液体加熱装置1では、図示しない運転スイッチがオン状態である状況下で給湯栓47が開栓されたり、リモコン91等を介して湯張りモードや足し湯モードで落とし込み運転を実施する実施要求が出されて注湯電磁弁51が開いたりすると、給水流路33を介して外部の給水源から湯水が供給される。制御手段90は、運転スイッチがオン状態であると共に、水量センサ36により、給水流路33を介して供給される湯水の量が所定量以上になったことが検知されることを条件として、上水を加熱して供給すべき旨の要求(以下、上水加熱要求と称す)がオン状態となったものと判断し、上水加熱用ポンプ32への電力供給を開始する。
ここで、本実施形態の液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32が正常に作動していれば、貯留部6内の熱媒体が所定温度A(第1の所定温度)以上の条件下で、上水用熱交換器30において外部の給水源から供給された湯水が加熱され、上水用熱交換器30において加熱された湯水(上水)の温度(以下、必要に応じて流出温度Toと称す)が上水用熱交換器30に対して流入する湯水の温度(以下、必要に応じて流入温度Tiと称す)に対して少なくとも所定温度C以上高温になるものと想定される。すなわち、流出温度Toと流入温度Tiとの差が温度C未満である場合は、上水用熱交換器30における熱交換加熱がうまくいっておらず、上水加熱用ポンプ32が作動不良を起こしている可能性が高い。
また、本実施形態では、上水二次側往き流路34を介して水量サーボ41に流入する湯水の温度が、給湯や落とし込みに使用する湯水を所定の出湯設定温度Stに調整するために必要とされる温度よりも低温である場合に、水量サーボ41の接続部41aの開度が全開になる構成とされている。すなわち、本実施形態において、水量サーボ41の接続部41aの開度が全開である場合は、給湯栓47に供給する給湯用の湯水や落とし込み運転用に使用される湯水の温度を出湯設定温度Stとするには流出温度Toが低く、上水加熱用ポンプ32の作動不良により上水用熱交換器30における熱交換加熱がうまくいっていない可能性が高い。
ここで、上記した流出温度Toと流入温度Tiとの差に関する関係や、水量サーボ41の接続部41aの開度については、上水用熱交換器30に対する入水量Qが少ないとその誤差が大きくなるものと想定される。また、上記した流出温度Toと流入温度Tiとの差に関する関係や、水量サーボ41の接続部41aの開度については、上水加熱用ポンプ32が作動状態以外の何らかの理由で突発的に変化する可能性がある。しかし、上水用熱交換器30に対する入水量Qが所定量以上ある状況下で、流出温度Toと流入温度Tiとの差が温度C未満であり、水量サーボ41の接続部41aの開度が全開の状況が所定の時間D以上継続している場合は、上水加熱用ポンプ32が作動不良を起こしている蓋然性が極めて高い。そこで、本実施形態の液体加熱装置1では、図3の制御フローに示すように、上水加熱要求がオン状態であり、上水加熱用ポンプ32が作動すると想定される状況下において流出温度Toと流入温度Tiとの差や、水量サーボ41の接続部41aの開度等を監視することにより上水加熱用ポンプ32の異常を検知している。
さらに詳細には、本実施形態の液体加熱装置1では、下記(1)〜(6)の要件を満足することを条件として上水加熱用ポンプ32が異常であるものと判断する。
(1) 上水加熱要求がオン状態である。
(2) 貯留部6内の熱媒体の温度(検知温度Th)がA℃以上である。
(3) 水量サーボ41の接続部41aが全開状態である。
(4) 上水用熱交換器30に対する入水量Qが所定量B以上である。
(5) 上水用熱交換器30から流出する湯水の流出温度Toと、上水用熱交換器30に流入する湯水の流入温度Tiとの差が所定の温度C未満である。
(6) 上記(1)〜(5)の要件を所定時間D以上にわたって満足している。
以下、図3に示す上水加熱用ポンプ32の異常検知動作について、順を追って詳細に説明する。
制御手段90は、先ずステップ1−1において上水加熱要求がオン状態であるか否かを確認する。すなわち、制御手段90は、ステップ1−1において上記(1)の要件を満足しているか否かを確認する。ステップ1−1において上水加熱要求がオフ状態である場合は、湯水(上水)を加熱する必要がなく、上水加熱用ポンプ32は作動停止状態であるものと想定される。そのため、この場合は、流出温度Toと流入温度Tiとの差や、水量サーボ41の接続部41aの開度等を監視しても、上水加熱用ポンプ32の作動不良を確認することができない。そこで、上水加熱要求がオフ状態である場合は、上水加熱要求がオン状態になるのを待つ。
ステップ1−1において上水加熱要求がオン状態になったことが確認されると、制御フローがステップ1−2に進み、貯留部6に取り付けられた温度センサ24により、熱媒体の貯留温度(検知温度Th)が検知される。すなわち、ステップ1−2において、上記要件(2)を満足しているか否かが確認される。ここで、検知温度ThがA℃未満である場合は、貯留部6内の熱媒体の温度が低く、仮に後述する制御フローで流出温度Toと流入温度Tiとの差が小さい理由が上水加熱用ポンプ32の作動不良に起因しない可能性があるものと想定される。すなわち、検知温度ThがA℃未満である場合は、仮に後述する制御フローで流出温度Toと流入温度Tiとの差が温度C未満であっても、これが上水加熱用ポンプ32の作動不良に起因せず、熱媒体の温度が低いことに起因する可能性を否定できない。そのため、本実施形態では、検知温度ThがA℃未満である場合は、制御フローを進めず、検知温度ThがA℃以上になるのを待つ。
ステップ1−2において検知温度ThがA℃以上であることが検知されると、制御フローがステップ1−3に進められ、上記した要件(3)、すなわち水量サーボ41の接続部41aの開度が全開状態であるか否かが確認される。ここで、上記したように、水量サーボ41の接続部41aは、水量サーボ41に上水二次側往き流路34を介して供給される湯水の温度が、給湯運転や落とし込みのために供給する湯水を出湯設定温度Stに調整するには不十分である場合に全開となる。そのため、ステップ1−3において水量サーボ41の接続部41aの開度が全開である場合は、上水加熱用ポンプ32の作動不良に起因する湯水の加熱不良が起こっている可能性がある。そこで、ステップ1−3で水量サーボ41の接続部41aの開度が全開である場合は、制御フローがステップ1−4に進められる。
制御フローがステップ1−4に進むと、給水流路33を介して上水用熱交換器30に流入している湯水の入水量Qを水量センサ36の検出流量と、水量サーボ41における接続部41a,41bの開度比率とに基づいて導出し、これが所定量B以上であるか否かが確認される。すなわち、ステップ1−4では、上記した要件(4)について確認される。ここで、入水量Qが所定量B未満である場合は、水量サーボ41の接続部41aの開度や、後述するステップ1−5で確認される流出温度Toと流入温度Tiとの差に関する関係の誤差が大きくなり、その分だけ上水加熱用ポンプ32の作動不良の検知精度が低下する可能性がある。そこで、ステップ1−4で入水量Qが所定量B未満である場合は、制御フローをステップ1−5に進めず、ステップ1−1に戻す。一方、ステップ1−4で入水量Qが所定量B以上である場合は、水量サーボ41の接続部41aの開度が全開である理由が、上水加熱用ポンプ32の作動不良により貯留部6と上水用熱交換器30との間で熱媒体の循環が起こっていなかったり、不十分であることに起因する可能性が高い。そこで、制御手段90は、ステップ1−4で入水量Qが所定量B以上であることを条件として制御フローをステップ1−5に進める。
制御フローがステップ1−5に進むと、制御手段90は、上水用熱交換器30に流入する湯水の流入温度Tiと、上水用熱交換器30を通過して上水二次側往き流路34を流れる流出温度Toとの差が、上記した要件(5)を満足するか否かが確認される。ここで、流出温度Toが流入温度Tiよりも所定の温度C以上高い場合は、上水加熱用ポンプ32が正常に作動して貯留部6と上水用熱交換器30との間で熱媒体が循環している可能性が高く、ステップ1−3で水量サーボ41の接続部41aの開度が全開であった理由が上水加熱用ポンプ32の作動不良によるものでない可能性がある。そのため、ステップ1−5で流出温度Toが流入温度Tiよりも所定の温度C以上高い場合は制御フローがステップ1−1に戻され、引き続き上水加熱用ポンプ32の異常検知動作を実施する。
一方、ステップ1−5において流出温度Toと流入温度Tiとの差が温度C未満である場合は、流出温度Toと流入温度Tiとの温度差が殆どなく、上水用熱交換器30において湯水は殆ど加熱されていない。そのため、この場合は、上記した制御フローにおける検知結果も加味すると、上水加熱用ポンプ32が作動していなかったり、上水加熱用ポンプ32が圧送能力を十分発揮できていない可能性が高い。そこで、ステップ1−5において流出温度Toと流入温度Tiとの差が温度C未満であることを条件として制御フローをステップ1−6に進め、上記した要件(6)を満足するか、すなわちステップ1−1〜ステップ1−5において確認された要件(1)〜(5)の条件を所定時間D以上にわたって満足しているか否かが確認される。ここで、上記要件(6)を満足している場合は、上記した要件(1)〜(5)が突発的なものではなく、上水加熱用ポンプ32の作動不良に起因するものである可能性が極めて高い。そこで、ステップ1−6において要件(1)〜(5)の条件を所定時間D以上にわたって満足していることが確認されると制御フローがステップ1−7に進められ、制御手段90は、リモコン91等を介して上水加熱用ポンプ32が異常である旨を知らせる異常信号を発信する。
上記したように、本実施形態の液体加熱装置1では、貯留部6内の液体の温度(検知温度Th)や、入水量Qが所定の条件を満足している場合に、上水加熱動作に伴って理論上の熱エネルギー量が湯水に付与されれば、上水用熱交換器30から出る湯水の流出温度Toが少なくとも上水用熱交換器30に対する湯水の流入温度Tiよりも温度C以上高くなるであろうと想定し、流出温度Toと流入温度Tiとの差を検知することにより上水加熱用ポンプ32の異常を検知する構成とされている。すなわち、本実施形態では、上記(1)、(2)、(5)に示すように、上水加熱要求がオン状態であり、貯留部6内の熱媒体の温度が設定温度A以上であり、さらに流出温度Toと流入温度Tiとの差が温度C未満であることを条件として、上水加熱動作に伴って実際に湯水に付与された熱エネルギーが理論上の熱エネルギー量を下回っているものと判断し、上水加熱用ポンプ32がオフ状態で異常であるものと検知する構成とされている。そのため、液体加熱装置1によれば、上水加熱用ポンプ32が停止状態で異常を来しているか否かを的確に検知することができる。
本実施形態の液体加熱装置1では、上記した(1)、(2)、(5)の要件に加えて(3)、(4)、(6)の要件を満足することを条件として上水加熱用ポンプ32が停止状態で異常を来しているものと判断することとしている。すなわち、液体加熱装置1では、上水加熱用ポンプ32の異常検知において、(3)、(4)、(6)の要件を加味することにより検知精度を向上している。
さらに詳細には、上記実施形態では、上水用熱交換器30において加熱され水量サーボ41に流入する湯水の温度(流出温度To)が給湯用や落とし込み用として湯水を加熱設定温度Shに調整するには低温である場合に接続部41aの開度が全開となる性質を利用し、上記(3)のように接続部41aの開度に関する要件を上水加熱用ポンプ32の異常検知の一条件としている。また、液体加熱装置1は、上記(4)のように上水用熱交換器30に対する入水量Qが所定量B以上であることを上水加熱用ポンプ32の異常検知の一条件としている。さらに、上記(6)に示すように、(1)〜(5)の要件を所定時間Dにわたって満足していることも上水加熱用ポンプ32の異常検知の判定要件の一つとして採用し、突発的な外乱等による検知不良を排除している。そのため、本実施形態の液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32が停止状態で異常を起こしているか否かを的確に精度良く検知することができる。
本実施形態では、上水加熱用ポンプ32の異常検知動作において上記した要件(1)〜(6)の要件を満足するかを確認し、全ての要件を満足することを条件として上水加熱用ポンプ32が異常であると判断するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、異常検知動作を構成する要件(1)〜(6)の一部を省略したり、別の要件を付加して異常検知動作を実施する構成としてもよい。
さらに具体的には、上記(3)の水量サーボ41の接続部41aの開度に関する要件は、上水加熱用ポンプ32が作動不良を起こしている場合だけでなく、出湯設定温度Stが高い場合にも満足する可能性がある。また、上記(4)や(6)の要件は、(3)の水量サーボ41の接続部41aの開度に関する要件や、(5)の流出温度Toと流入温度Tiとの差に関する要件の判定精度を上げるための要件である。そのため、上記した上水加熱用ポンプ32の異常検知動作は、上記(1)〜(6)の要件から(3)に記した水量サーボ41の接続部41aの開度に関する要件や、(4)に記した入水量Qに関する要件、(6)に記した他の判定要件を満足している期間に関する要件から選択されるいずれかの要件あるいは全ての要件を省略した構成としてもよい。
また、上記実施形態に示した上水加熱用ポンプ32の異常検知動作は、下記(7)や(8)に示す要件を(1)〜(6)の要件に付加したり、(1)〜(6)の要件の一部を(7)や(8)に示す要件で置換した構成としてもよい。
(7) 流出温度Toが上水用熱交換器30から流出する湯水の設定温度(以下、加熱設定温度Shと称す)よりも低く、流出温度Toと加熱設定温度Shとの差(Sh−To)が所定温度E(第2の所定温度)以上である。
(8) 貯留部6に貯留されている熱媒体の温度(検知温度Th)と流出温度Toとの差(Th−To)が所定温度F(第3の所定温度)以上である。
さらに詳細に説明すると、上記(7)に示すように流出温度Toが加熱設定温度Shよりも低いだけでなく、その温度差(Sh−To)が所定温度E(第2の所定温度)以上である場合は、上水用熱交換器30における湯水(上水)の加熱がうまくいっておらず、上水加熱用ポンプ32が異常を来している可能性が高い。また、上記(8)に示す要件を満足する場合は、貯留部6に貯留されている熱媒体の温度(検知温度Th)と流出温度Toとの乖離が大きく、上水加熱用ポンプ32の異常により熱媒体が上水用熱交換器30にうまく圧送されていない蓋然性が高い。そのため、上水加熱用ポンプ32の異常検知動作において下記(7)や(8)に示す要件のいずれか一方あるいは双方を(1)〜(6)の要件に付加すれば、より一層正確に上水加熱用ポンプ32の異常を検知することができる。また、(1)〜(6)の要件の一部を(7)や(8)に示す要件で置換した構成としてもよい。かかる構成とすることによっても、(1)〜(6)の要件に基づく異常検知動作を実施する場合と同様に精度良く上水加熱用ポンプ32の異常を検知することができる。
上記実施形態では、上記(1)、(2)、(5)に記載の要件を少なくとも満足することを条件として上水加熱用ポンプ32が異常である旨を検知する構成であったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、例えば上水加熱要求がオン状態である場合に湯水を、上水用熱交換器30において加熱された湯水の流出温度Toが加熱設定温度Shとなるように加熱するのに要する理論上の熱エネルギー量Ptと、上水加熱要求に基づいて実際に湯水に付与された熱エネルギー量Paとを導出し、これらの差(Pt−Pa)が所定の範囲内にあるか否かで上水加熱用ポンプ32の異常を判断する構成としてもよい。すなわち、上記(1)の要件と、下記(9)の要件を満足することを条件として上水加熱用ポンプ32が異常であるものと判断する構成であってもよい。
(9) 湯水を加熱設定温度Shに加熱するのに要する理論上の熱エネルギー量Ptと、上水加熱要求に基づいて実際に湯水に付与された熱エネルギー量Paとの差(Pt−Pa)が所定量以上である。
上記した(1)と(9)の要件を満足することを上水加熱用ポンプ32の異常判定の条件とした場合についても、上記実施形態のようにして異常判定を行う場合と同様に上水加熱用ポンプ32の異常を精度良く検出することができる。上記(9)の要件を上水加熱用ポンプ32の異常判定の条件とする場合は、必ずしも上記(2)〜(8)の要件を満足する必要はないが、(2)〜(8)から選ばれる一又は複数の要件、あるいは、(2)〜(8)の全ての要件を異常判定の条件として加えてもよい。かかる構成によれば、上水加熱用ポンプ32の異常についての検知精度をより一層高くすることができる。
上記実施形態では、上水加熱要求がオン状態であるにもかかわらず上水加熱用ポンプ32がオフ状態のまま起動しない場合や、上水加熱用ポンプ32が何らかの理由で十分な圧送能力を発揮できない状態になっていることを検知する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。
さらに具体的には、上水加熱用ポンプ32は、オン状態とすべき状態であるにもかかわらず起動できないという形態の異常を来すことが多い。しかし、ごく希なケースであるが、例えば上水加熱用ポンプ32の駆動回路の接点(図示せず)が固着するなどして、上水加熱用ポンプ32をオフ状態としようと制御してもオン状態のまま維持されるといった不具合が起こる可能性もある。
ここで、上記したように、本実施形態の液体加熱装置1は、給湯用や落とし込み用として利用される湯水(上水)の加熱用として設けられた上水用熱交換器30が貯留部6の外部に配されており、上水加熱用ポンプ32を作動させることにより上水用熱交換器30に貯留部6から高温の熱媒体を送ることにより湯水を加熱可能な構成とされている。そのため、液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32が故障した場合は給湯用や落とし込み用の湯水を加熱できないが、貯留部6内の熱媒体を加熱することにより負荷運転や追い焚き運転を実施できる。
液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32が作動しない状況下であっても、給水運転や足し水モードでの落とし込み運転を実施することができる。ここで、上水加熱用ポンプ32が起動できない状態で故障している場合は、仮に給水運転や足し水モードでの落とし込み運転を実施しても、予期せぬ高温の湯水が給湯栓47から出たり、浴槽60内に落とし込まれることはない。しかし、万が一、上水加熱用ポンプ32がオン状態のまま故障し、オフ状態にすることができない形態の異常を来している場合は、給水運転や足し水モードでの落とし込み運転を実施すると、予期せぬ高温の湯水が給湯栓47から出たり、浴槽60内に落とし込まれてしまう可能性を否定できない。そこで、かかる事態が想定される場合、液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32が本来であればオフ状態であるべきであるのに、オン状態のままであることを検知可能な構成であってもよい。
さらに具体的には、液体加熱装置1は、上記したように上水加熱要求がオフ状態であると上水加熱用ポンプ32がオフ状態となるため、本来であれば上水用熱交換器30を通過して上水二次側往き流路34を流れる湯水の温度(流出温度To)が上水用熱交換器30の二次側に流入する湯水の温度(流入温度Ti)よりも高温にはならないはずである。しかし、上水加熱要求がオフ状態であるにもかかわらず上水加熱用ポンプ32がオン状態に維持されている場合は、流出温度Toが流入温度Tiよりも高温になるものと想定される。そのため、液体加熱装置1は、下記条件(a)および(b)の要件を満足することを条件として上水加熱用ポンプ32がオン状態のまま異常を来しているものと判断する構成としてもよい。
(a) 上水加熱要求がオフ状態である。
(b) 流出温度Toが流入温度Tiよりも高温である。
かかる構成によれば、上水加熱用ポンプ32がオフ状態のまま作動できないことを検出するだけでなく、上水加熱用ポンプ32がオン状態のまま異常な状態となったことも検知することができる。
上記した(b)は、流出温度Toが流入温度Tiよりも高温であることを上水加熱用ポンプ32の異常の判定要件としていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば流出温度Toが流入温度Tiに対して所定温度C以上高温であることを判定要件としてもよい。かかる構成によれば、缶体サーミスタ39の検知誤差などの外乱に起因する誤検知を防止することができる。
上記した例では、(a),(b)の要件を満足することを条件として上水加熱用ポンプ32がオン状態のまま異常な状態になったものと判断する構成であったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、上水加熱用ポンプ32がオン状態のまま異常となると、貯留部6側から熱媒体が順次上水用熱交換器30に供給されることとなり、上水加熱要求がオフ状態になっても流出温度Toが実質的に低下しなかったり、流出温度Toが上昇するものと想定される。そのため、液体加熱装置1は、例えば上水加熱用ポンプ32の異常判定の要件として、上記(a),(b)の要件に、下記(c)や(d)の要件のいずれか一方又は双方を加えたり、(b)の要件の代わりに下記(c)や(d)の要件のいずれか一方又は双方を採用した構成としてもよい。
(c) 流出温度Toが上水加熱要求がオフ状態となった時点よりも上昇する。
(d) 流出温度Toが上水加熱要求がオフ状態となった時点から低下しない。
かかる構成とした場合についても、上水加熱用ポンプ32がオン状態のまま異常な状態となったことを的確に検知することができる。
上記した(c)は、流出温度Toが上水加熱要求がオフ状態となった時点よりも上昇することを判定要件とするものであったが、例えば流出温度Toの上昇が所定温度以上であることを判定要件としてもよい。また、上記した(d)の要件は、流出温度Toが上水加熱要求がオフ状態となった時点から実質的に低下しない、すなわち上水加熱要求がオフ状態となった時点の流出温度Toに対して所定の温度範囲よりも低温にならないことを条件とするものであってもよい。すなわち、上記(c),(d)の要件は、上水加熱要求がオフ状態となった時点の流出温度Toを基準として所定の範囲を設定し、この範囲を超えて流出温度Toが上昇したり、所定の温度範囲を下回らないことを条件とするものであってもよい。かかる構成によれば、缶体サーミスタ39の検知誤差などの外乱に起因する誤検知を防止することができる。
上記したように図3に示す制御フローでは、上記(1)〜(6)の要件を満足することを条件として上水加熱用ポンプ32が異常であることを報知する構成であったが、上記(7)〜(9)や(a)〜(d)の要件に基づいて異常検知する場合についても同様に上水加熱用ポンプ32が異常であることを報知する構成とすることが望ましい。
また、液体加熱装置1は、給湯栓47を介して供給される給湯用の湯水や落とし込み運転において浴槽60に落とし込まれる湯水が予期せぬ高温状態になるといったような不具合の発生を防止すべく、上水加熱用ポンプ32が異常であるものと判定されることを条件として、所定の安全動作を実施して前記したような不具合を防止する構成としてもよい。前記した安全動作としては、例えば燃焼部3の出力を低下させるなどして貯留部6内の熱媒体の温度を低下させたり、水量サーボ41の接続部41aの開度を絞って上水二次側往き流路34を介して上水用熱交換器30側から水量サーボ41に流入する湯水の量を少量にする動作、水量調整弁43の開度を絞って上水流路35を流れる湯水の量を抑制する動作等を採用することができる。
ここで、液体加熱装置1において上水加熱用ポンプ32は、給湯運転や落とし込み運転が実施される際に作動する構成とされている。そのため、給湯運転や落とし込み運転が長期にわたって実施されない場合は、上水加熱用ポンプ32等に残存している熱媒体やこれに含まれている湯水の影響により上水加熱用ポンプ32内で錆が発生するなどして、上水加熱用ポンプ32がいわゆるロック状態になってしまい、次に上水加熱要求があった際に上水加熱用ポンプ32が正常に作動できなくなるおそれがある。そのため、かかる事態が想定される場合は、前記したロック状態になるのを回避すべく、上水加熱要求の有無にかかわらず所定のタイミングで上水加熱用ポンプ32を作動させ、錆等の発生を抑制することが望ましい。
そこで、かかる知見に基づき、液体加熱装置1は、例えば図4に示す制御フローに則り、上水加熱要求がオフ状態になってから所定期間が経過することを条件として所定時間にわたって上水加熱用ポンプ32を作動させる構成とすることも可能である。以下、図4に示す制御フローについて、順を追って説明する。
図4に示す制御フローでは、先ずステップ2−1において上水加熱用ポンプ32が停止中であるか否かが確認される。ここで、上水加熱用ポンプ32が動作中である場合は、上水加熱用ポンプ32が上記したロック状態になる可能性が極めて低い。そのため、この場合、制御手段90は、制御フローをステップ2−10に進める。制御フローがステップ2−10に進むと、後述するタイマのカウントがキャンセルされ、制御フローがステップ2−1に戻される。
一方、上記したステップ2−1において上水加熱用ポンプ32が停止中である場合は、制御フローがステップ2−2に進められ、制御手段90等に設けられたタイマ(図示せず)のカウントが開始される。このタイマは、カウント開始後、所定期間βだけ経過した時点でカウントアップ状態になるものである。さらに具体的には、本実施形態において、所定期間βは15日間に設定されている。
ステップ2−2においてタイマがカウントを開始すると、制御フローがステップ2−3に進められ、タイマがカウントアップ状態になっているか否かが確認される。すなわち、直近の上水加熱用ポンプ32が作動停止状態になったタイミングから、上水加熱用ポンプ32が動作停止状態である期間が所定期間β(15日間)に到達しているか否かが確認される。ここで、タイマのカウントが所定期間βに満たない間は、制御フローがステップ2−1に戻される。
一方、ステップ2−3でタイマのカウントが所定期間βに到達しており、カウントアップ状態になっている場合は、上水加熱用ポンプ32がいわゆるロック状態になっているおそれがある。ここで、上水加熱用ポンプ32が作動停止状態である場合は、上水加熱要求がない場合と、例えば水量サーボ41や水量調整弁43、注湯電磁弁51といった湯水(上水)の加熱供給に関する構成部材(以下、必要に応じて上水加熱部材と総称する)が故障して上水を加熱供給できない状態になっている場合とが考えられる。
ここで、上水加熱要求がないために上水加熱用ポンプ32が作動していない場合は、ロック状態になるのを回避する必要がある。しかし、湯水の加熱供給に関する構成部材の故障が原因で長期にわたって上水加熱用ポンプ32が作動していない場合は、上水加熱用ポンプ32がロック状態になるのを予防する必要がないものと想定される。
そこで、図4に示す制御フローでは、ステップ2−4において上水加熱部材が故障中であるか否かを確認する。そして、上水加熱部材が故障中である場合は、制御フローがステップ2−8に進められ、ロック防止運転が停止状態とされる。その後、ステップ2−10において上記したタイマのカウントがキャンセルされ、一連の制御フローが完了する。
一方、ステップ2−4において上水加熱部材が故障中でない場合は、制御フローがステップ2−5〜ステップ2−7に進められ、所定時間αにわたってロック防止運転が実施される。さらに具体的には、ステップ2−5〜ステップ2−7において、上水加熱用ポンプ32が作動し、所定時間αにわたって貯留部6と上水用熱交換器30との間で熱媒体が循環する。
上記したステップ2−5〜ステップ2−7において上水加熱用ポンプ32が作動している間に上水加熱要求がオン状態になると、液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32をオン状態に維持したまま制御フローを完了し、湯水の加熱供給を開始する(ステップ2−7)。一方、ステップ2−5〜ステップ2−7において上水加熱要求がオン状態になることなく所定時間αが経過すると、制御フローがステップ2−5からステップ2−9に移行し、ロック防止運転が終了される。すなわち、制御フローがステップ2−9に移行すると、上水加熱用ポンプ32が停止される。その後、制御フローがステップ2−10に進んで上記したタイマのカウントがキャンセルされ、一連の制御フローが完了する。
上記したように、図4に示す制御フローに則って液体加熱装置1の動作を制御すれば、上水加熱用ポンプ32がロック状態になり動作不良を起こすのを防止することができる。
上記したように、液体加熱装置1は、給湯運転や落とし込み運転に使用される湯水(上水)を加熱するための上水用熱交換器30が貯留部6から離間した位置に配置されている。そのため、液体加熱装置1は、従来技術の液体加熱装置に比べて貯留部6の容量が小さく高さが低い。従って、液体加熱装置1は、装置構成がコンパクトである。
液体加熱装置1は、貯留部6と上水用熱交換器30との間で、貯留部6に貯留されている熱媒体を循環させ、この熱媒体との熱交換により湯水を加熱する構成とされている。そのため、液体加熱装置1は、湯水の加熱効率が高い。
また、液体加熱装置1は、湯水の加熱のために上水用熱交換器30に供給される熱媒体は、貯留部6に貯留されている熱媒体の一部である。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6に貯留されている熱媒体が加熱の中途段階であり、対流等の影響で貯留部6内に存在する熱媒体に温度ムラ等があっても、これに殆ど左右されることなく湯水の供給温度を安定化することができる。従って、本実施形態の液体加熱装置1では、給湯運転時に給湯栓47を介して供給(排出)される湯水の温度や、落とし込み運転時に浴槽60に落とし込まれる湯水の温度が、各運転が開始してから出湯設定温度Stで安定するまでに要する期間が短い。
液体加熱装置1は、上水用熱交換器30に供給される熱媒体が所定温度に到達していれば上水を所望の温度に加熱することができる。ここで、本実施形態の液体加熱装置1では、加熱部3が貯留部6の下方から貯留部6内の熱媒体を加熱可能なものであるため、加熱部3を燃焼作動させて貯留部6内の熱媒体を加熱すると熱媒体が対流を起こし、貯留部6の上方側の熱媒体が下方側の熱媒体に比べて高温になる傾向にある。また、本実施形態の液体加熱装置1では、貯留部6の上方側から熱媒体を取り出して上水用熱交換器30に供給し、貯留部6の下方側に戻す構成とされている。そのため、液体加熱装置1には、貯留部6内に存在する熱媒体のうち高温のものが優先的に上水用熱交換器30に供給される。従って、液体加熱装置1は、上水加熱要求があってから湯水を出湯設定温度Stに加熱して供給できるまでに要する時間(立ち上がり時間)が短い。
また、本実施形態の液体加熱装置1では、上記したように対流等の影響で貯留部6の上部側に存在する熱媒体が下部側に存在するものよりも高温になり、給湯運転や落とし込み運転の停止時に上水用熱交換器30やこの近傍に滞留している湯水や熱媒体が過度に高温になるのを防止すべく、上水用熱交換器30が、貯留部6に対して下方に配置されている。そのため、液体加熱装置1は、給湯運転や落とし込み運転の開始直後に予期せぬ高温の湯水が供給される、いわゆる高温出湯が起こりにくい。
本実施形態の液体加熱装置1では、貯留部6や加熱手段7、上水用熱交換器30等に加えて上水系統X、暖房系統Yおよび風呂系統Zの構成部材や配管を収容した構成とされている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6と上水用熱交換器30との間における熱媒体の往来等に伴う放熱や、上水用熱交換器30における放熱に伴う熱エネルギーロスが少ない。
液体加熱装置1は、上水用熱交換器30としてプレート型の熱交換器を採用しているため、上水用熱交換器30をさほど大きくしなくても所望の熱交換効率を得ることができる。よって、液体加熱装置1は、筐体W内において上水用熱交換器30の設置に要するスペースが小さく、全体の装置構成がコンパクトである。
上記実施形態では、上水用熱交換器30として、いわゆるプレート型の熱交換器を採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種類の熱交換器を採用してもよい。
上記したように液体加熱装置1は、上水一次側戻り流路21の中途に上水加熱用ポンプ32を設け、これを作動させることにより上水用熱交換器30と貯留部6との間で熱媒体を循環させることができる構成となっている。そのため、液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32の動作を制御することにより、給湯用や落とし込み用に使用される上水の加熱状態を制御することができる。
液体加熱装置1は、水量サーボ41を有し、これに上水用熱交換器30において加熱された湯水と、外部から供給された低温の湯水とを供給して混合した後、上水流路35を介して給湯栓47に湯水を供給可能な構成とされている。また、液体加熱装置1は、上水流路35の中途に水量調整弁43が設けられている。そのため、本実施形態の液体加熱装置1は、上水一次側往き流路20や上水一次側戻り流路21、上水二次側往き流路34等の中途で放熱等が起こるなどしても、給湯用あるいは落とし込み用として供給される上水の温度を精度良く調整することができる。
また、液体加熱装置1は、水量サーボ41や水量調整弁43を設けた構成であるため、給湯運転中にリモコン91の操作により給湯の設定温度Stが急激に変更されたり、給湯栓47の操作により給湯流量が急激に変更されるなどして、湯水(上水)の供給条件が急激に変更された場合であっても安定的な出湯温度で給湯運転を実施することができる。
上記実施形態では、水量サーボ41や水量調整弁43を設けることにより、上水の供給温度を安定化させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、水量サーボ41や水量調整弁43のいずれか一方あるいは双方をもたない構成であってもよい。
上記したように、液体加熱装置1は、上水用熱交換器30を貯留部6の外部に配すると共に、貯留部6内の熱媒体を負荷端末75に供給したり、貯留部6内に配された熱交換器17において熱交換加熱することにより浴槽60内の湯水を追い焚き可能な構成とされている。そのため、液体加熱装置1では、貯留部6内に熱媒体を介して貯留されている熱エネルギーを負荷端末75の使用や浴槽60内の湯水の追い焚きに有効利用することができる。
また、本実施形態の液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32を作動させて貯留部6内の熱媒体を上水用熱交換器30に供給することにより、給湯や落とし込みに使用される湯水(上水)を熱交換加熱できる。また逆に、上水加熱用ポンプ32を停止状態として上水用熱交換器30への貯留部6内の熱媒体の供給を停止することにより、外部から供給された湯水を上水用熱交換器30に素通りさせ、非加熱状態で供給することができる。そのため、液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32を停止状態にすれば、負荷運転や追い焚き運転と、加熱系Hの外部から供給された湯水を非加熱状態で供給する給水運転や足し水モードでの落とし込み運転とを並行して実施することができる。また、液体加熱装置1は、故障等の理由で上水加熱用ポンプ32が作動できない状態においても、負荷運転や追い焚き運転と、給水運転や足し水モードでの落とし込み運転とを並行して実施することができる。
上記したように、液体加熱装置1は、上水加熱用ポンプ32を停止状態とすることにより、外部から供給された上水を非加熱状態で供給する(給水運転、足し水モードでの落とし込み運転)ことができる。そのため、液体加熱装置1は、例えば、いわゆる太陽熱温水器のような加熱装置によって加熱系Hの外部で予熱(加熱)された湯水を上水用熱交換器30に供給可能な構成とすれば、上水加熱用ポンプ32を作動させない状態であったり、上水加熱用ポンプ32が故障等で作動できない状態であっても加熱状態の湯水を給湯栓47や浴槽60に供給することができる。
上記した液体加熱装置1は、浴槽60内の湯水を追い焚きするために使用する熱交換器17を貯留部6の内部に配した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱交換器17を持たない構成であってもよい。かかる構成によれば、貯留部6をさらに小容量化したり、貯留部6の高さを低くすることができ、液体加熱装置1の小型化に資することができる。
また、液体加熱装置1は、追焚き用の熱交換器17としてコイル式の熱交換器を採用し、これを貯留部6内に配置した構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上水用熱交換器30と同様に貯留部6の外部に別途熱交換器を配し、これに貯留部6内の熱媒体を供給することによって浴槽60内の湯水を追い焚き可能な構成としてもよい。
なお、貯留部6の外部に追い焚き用の熱交換器を配置する構成とした場合についても、負荷端末75に熱エネルギーを供給するために必要な量の熱媒体を貯留部6に貯留して加熱可能な構成とする必要がある。そのため、貯留部6の容量が負荷端末75に供給する熱媒体の加熱に対して必要最小限の大きさである場合は、追い焚き用の熱交換器を貯留部6の外部に設けることによる、液体加熱装置1の装置構成のコンパクト化に対する寄与が小さいものと想定される。従って、液体加熱装置1は、上記したように貯留部6の容量を負荷端末75に供給する熱媒体の加熱に対して必要最小限の大きさとしつつ、追い焚き用の熱交換器17を貯留部6の内部に収容した構成とすることにより装置構成をコンパクト化することができる。
上記実施形態では、貯留部6の下方に加熱手段7を配し、貯留部6内に貯留されている熱媒体を貯留部6の下方側から加熱可能な構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば加熱手段7としていわゆる逆燃焼方式の燃焼形態をとるものを採用し、これを貯留部6の上方側に加熱手段7を配した構成としたり、加熱手段7を貯留部6の側方から貯留部6内の熱媒体を加熱可能な構成とすることも可能である。かかる構成とした場合についても、熱媒体が貯留部6内において対流を起こし、貯留部6の上方側に存在する熱媒体が下方側よりも高温になる可能性が高い。すなわち、加熱手段7を貯留部6の下方や上方、側方に配置することにより貯留部6が局所的に高温になると対流が起こり、熱媒体の温度分布が発生する可能性が高い。そのため、かかる構成の場合に、上記した液体加熱装置1と同様の構成を採用すれば、いわゆる出湯特性の改善や省エネルギーに資することができる。