JP4831083B2 - 物理量センサ - Google Patents

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Description

本発明は、物理量が加えられたときに物理量検出部が変位することに基づいて、加えられた物理量を検出する物理量センサに関するもので、特に加速度センサ、角速度センサ等に用いて好適である。
従来、特許文献1において、自己診断用の外部信号を入力することにより、センサ内部の検知部分を電気的に変位させ、その変位に基づくセンサ出力のオフセットを検知することで、検知部分の固着などによる故障が発生していないかを検出する自己診断機能を備えた物理量センサが提案されている。
特開平5−322925号公報
しかしながら、上記特許文献1では、実際の物理量が入力されていない状態においてセンサ内部の検知部分を変位させることを前提としているが、実際の物理量が入力されている状態でセンサ内部の検知部分を外部信号に基づいて変位させた場合、自己診断によるオフセットと重畳されてしまう。特に、物理量センサが車載用センサとして用いられる場合、このような状態が容易に発生する可能性がある。例えば、車両のIG(イグニッションスイッチ)オン時が自己診断タイミングとされる場合、そのタイミングで人が乗り降りして車両が揺れたり、エンジン始動と重なり、エンジンによる振動が発生する場合がある。さらに、車両走行中に電源瞬断やマイコンリセットにより、センサ値検出用マイコンが再起動する場合があるが、その場合にも自己診断機能を働かせることになり、車両の動きがそのままセンサに入力されてしまう。
このように、実際に物理量が入力されている状態で自己診断が行われると、故障が検出できなかったり、正常なのに故障と判断してしまうような誤判定が発生する可能性がある。具体的には、図7に示す自己診断時のタイミングチャートに示されるように、診断パルスが出力されるとセンサ出力がその分オフセットされた値となるが、入力物理量があるとセンサ出力にそれが重畳され、正確な自己診断が行えなくなるのである。
これを防止するために、従来、自己診断を実施する前後と実施中のセンサ出力を比較し、これらそれぞれのセンサ出力のバラツキが小さい場合にのみ自己診断の判定を行い、バラツキが大きい場合は、物理量入力中として、自己診断の判定はせずに正常判定としている。このような判定は、自己診断を実施する前後と実施中のセンサ出力のサンプリングをある程度の回数(おおむね20個ほど)それぞれ行わなければならない。このため、自己診断の判定を行うまでに時間が掛かるし、バラツキが大きければ自己診断が行えないこともある。
本発明は上記点に鑑みて、自己診断中に実際の物理量が入力されたとしても、的確に自己診断を行うことができる物理量センサを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、物理量の変化に応じて変位する物理量検出部(10)を有し、該物理量に応じたセンサ出力を発生させるセンサ部(10、20)と、センサ出力を入力し、センサ出力に基づいて物理量を求める制御部(30)と、を備え、制御部(30)からセンサ部(10、20)に対して自己診断用の診断パルスを出力することにより、物理量検出部(10)を電気的に変位させ、そのときのセンサ部(10、20)が発生させるセンサ出力が自己診断時の出力になっているかを判定することにより、センサ部(10、20)の故障を検出する自己診断機能を有する物理量センサであって、センサ部(10、20)が発生させるセンサ出力の微分値を求める微分手段(23d)が備えられ、制御部(30)は、診断パルスを出力したタイミングと微分手段(23d)が求めた微分値が自己診断用の閾値を超えるタイミングとが一致しているか否かに基づいて自己診断時であることを検出すると共に、該自己診断時の微分値を閾値と比較することによりセンサ部(10、20)の故障を検出することを特徴としている。
このように、診断パルスを出力したタイミングと自己診断用の出力が自己診断用の閾値を超えるタイミングとが一致しているか否かを判定することにより自己診断を行うようにしている。このため、自己診断中に実際の物理量が入力されたとしても、的確に自己診断を行うことができる加速度センサとすることが可能となる。
例えば、請求項2に記載したように、制御部(30)は、診断パルスを所定周期ごとに複数回繰り返し出力することにより、所定周期毎に繰り返される診断パルスの出力のタイミングと自己診断用の出力が自己診断用の閾値を超えるタイミングとが一致しているか否かを判定する。
また、請求項3に記載したように、制御部(30)は、診断パルスを所定周期ごとに複数回繰り返し出力したのち、診断パルスを所定期間を出力しないようにし、その後、再び診断パルスを所定周期ごとに複数回繰り返し出力することもできる。
このように診断パルスを出力すれば、自己診断を実施したときに車両が道路の中央線に等間隔に設置してある構造物の上を走行した場合などにおいても、それと区別した自己診断を行うことが可能となる。
同様に、請求項4に記載したように、制御部(30)は、診断パルスを異なる周期で複数回出力することもできる。
このように診断パルスを出力しても、自己診断を実施したときに車両が道路の中央線に等間隔に設置してある構造物の上を走行した場合などにおいても、それと区別した自己診断を行うことが可能となる。
請求項5に記載の発明では、微分手段は、制御部(30)のA/D入力に対して微分値を入力する微分回路(23d)であることを特徴としている。このように、制御部(30)のA/D入力に対して微分値を入力する微分回路(23d)にて微分手段を構成することができる。
この場合、請求項6に記載したように、制御部(30)にA/D入力を2つ備えておき、2つのA/D入力の一方にセンサ出力を入力し、他方に微分回路(23d)が出力する微分値を入力するような構成にできる。
さらに、このようにA/D入力を2つ備える場合、請求項7に記載したように、制御部(30)にて、2つのA/D入力のうちセンサ出力が入力される側のA/D変換の周期に比べて、2つのA/D入力のうち微分回路(23d)が出力する微分値が入力される側のA/D変換の周期を短くすると共に、2つのA/D入力のうちセンサ出力が入力される側のA/D変換のタイミングと異なるタイミングに診断パルスを出力することで、センサ出力に基づいて物理量を求めつつ、自己診断も同時に行うことが可能となる。
請求項8に記載の発明では、微分回路(23d)と制御部(30)のA/D入力の間に、A/D入力に対してマイナス値が入力されることを防止するダイオード(23e)を配置することを特徴としている。
このようなダイオード(23e)を備えることにより、制御部(30)のA/D入力に対してマイナス電位が入力されることを防止する入力保護を行うことが可能となる。
請求項9に記載の発明では、制御部(30)は、自己診断中には、自己診断中ではないときと比べてA/D入力におけるA/D変換の周期を短くすることを特徴としている。
このように、自己診断中にのみA/D入力におけるA/D変換の周期を短くするようにすることで、マイコンのA/D変換のための処理負荷を軽減することが可能となる。
請求項10に記載の発明では、微分手段は、制御部(30)内に備えられたデジタルフィルタにて微分処理を行うものであることを特徴としている。このように、制御部(30)内のデジタルフィルタによる微分処理を行う部分にて微分手段を構成することも可能である。
以上のような物理量センサは、自己診断機能を有する様々な構造のものであればどのようなものであっても構わない。例えば、請求項11に記載したように、物理量検出部(10)として、物理量の変化に応じて変位する可動電極(10)と、可動電極に対向して配置された固定電極(2a、2b)とを有すると共に、容量変化を検出するための信号を可動電極と固定電極との間に周期的に印加する信号印加手段(24)と、容量変化を検出するための信号が可動電極と固定電極との間に印加されているときに、可動電極と固定電極からなる容量の変化に応じた電圧を出力するC−V変換手段(21)と、C−V変換手段の出力電圧を信号処理してセンサ出力を発生する信号処理手段(23)と、を備え、物理量の変化に応じて可動電極(1a、1b)と固定電極(2a、2b)の間の容量値を変化させ、該容量値の変化に基づいて物理量を検出する容量型の物理量センサ、例えば加速度センサやヨーレートセンサ等に本発明を適用することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本発明の一実施形態にかかる物理量センサとして、半導体式の容量式加速度センサを例に挙げて説明する。図1は、容量式加速度センサの全体構成を示した図である。以下、この図に基づいて加速度センサの構成を説明する。
加速度センサは、可動電極1a、1b及び固定電極2a、2bを備えたセンサエレメント10と、可動電極1a、1bと固定電極2a、2bによる差動容量の変化に基づいて加速度を検出する検出回路20およびマイコン30とを有した構成とされる。
センサエレメント10は梁構造体を有する構造となっており、この梁構造体によって可動電極1a、1b及び固定電極2a、2bが構成されている。そして、対向配置された可動電極1a及び固定電極2aと可動電極1b及び固定電極2bとによって差動の容量を構成し、各固定電極2a、2bに対して互いに反転する所定電圧Vddで構成される信号(搬送波)PW1、PW2を周期的に印加することで、可動電極1a、1bの変位に応じた差動容量変化に基づく加速度検出が行われる。
検出回路20には、C−V変換回路(C−V変換手段)21、スイッチ回路22、信号処理回路(信号処理手段)23および制御信号発生回路(信号印加手段)24が備えられている。
C−V変換回路21は、可動電極1a、1bと固定電極2a、2bからなる差動容量の変化を電圧に変換するもので、オペアンプ21a、コンデンサ21b、スイッチ21cとを有した構成となっている。オペアンプ21aの反転入力端子は可動電極1a、1bに接続されており、反転入力端子と出力端子との間には、コンデンサ21b及びスイッチ21cが並列に接続されている。スイッチ21cは制御信号発生回路24からの信号S1によって駆動されるようになっており、オペアンプ21aの非反転入力端子にはスイッチ回路22を介して、固定電極2a、2bに印加された電圧Vdd(例えば5V)の半分の電圧Vdd/2(すなわち中点電圧であり、例えば2.5V)と、この中点電圧とは異なる電圧V1(例えば4V)のいずれかが入力される。
スイッチ回路22は、C−V変換回路21におけるオペアンプ21aの非反転入力端子に、図示しないそれぞれの電圧源からの電圧を入力するもので、スイッチ22aとスイッチ22bとから構成されている。これら各スイッチ22a、22bは、制御信号発生回路24からの信号Stに基づいて駆動され、一方が閉じている時には他方が開かれる。このスイッチ回路22により、オペアンプ21aに印加される電圧が調整されており、通常の加速度検出時にはオペアンプ21aに中間電位が印加され、自己診断時にはオペアンプ21aに中間電圧とは異なる電圧が印加されるように、スイッチ22a、22bのオンオフが調整される。
信号処理回路23は、サンプルホールド回路23aとSCF(スイッチトキャパシタフィルタ)回路23bおよび自己診断用回路23c等を備えた構成とされている。
サンプルホールド回路23aは、制御信号発生回路24からの信号S2に基づいて駆動され、C−V変換回路21の出力をサンプリングして一定期間保持する。SCF回路23bは、制御信号発生回路24からの信号F1に基づいて駆動され、サンプルホールド回路23aの出力電圧から所定の周波数帯域の成分のみを取り出してセンサ出力として出力する。
また、自己診断用回路23cは、センサ出力を自己診断用の信号に変換するものであり、微分回路23dとダイオード23eとを有して構成されている。
微分回路23dは、センサ出力を微分処理するものであり、この微分回路23dにより、センサ出力のオフセットのエッジのみを捉えた信号を得ることが可能となる。この微分回路23dは、例えばCR等により構成される一般的な回路にて構成される。
ダイオード23eは、マイコン30のA/D入力に対してマイナス電位が入力されることを防止するために入力保護用として備えられている。
制御信号発生回路24は、固定電極2a、2bへの電圧印加タイミングを示す信号(搬送波)PW1、PW2、スイッチ回路22のスイッチの切替えタイミングを示す信号St、スイッチ21cの切替えタイミングS1、サンプルホールド回路23aに対する制御信号S2、駆動クロック信号F1を出力する。
マイコン30は、制御部に相当するもので、センサ出力を受け取るA/D入力端子と、自己診断用の出力を受け取るA/D入力端子および自己診断を行う際に自己診断用の診断パルスを出力するI/O出力ポートを有している。マイコン30は、A/D入力端子を通じてセンサ出力や自己診断用の出力を受け取ると、所定周期でサンプリングを行い、サンプリングしたセンサ出力に基づいて加速度を演算したり、自己診断用の出力に基づいて加速度センサの故障を検出する。例えば、加速度センサが車載用センサとして用いられる場合、マイコン30は、IGオン時や車両走行中に電源瞬断もしくはマイコンリセットによる再起動時などに、自己診断機能を働かせるようになっている。
続いて、上記のように構成された加速度センサの作動について、通常の加速度検出時と自己診断時と分けて説明する。
〔通常の加速度検出時〕
図2は、通常の加速度検出時における可動電極1a、1bと固定電極2a、2bへの印加電圧の様子を示したものである。なお、図2中には示していないが、通常の加速度検出時には信号Stはローレベル(Low)となり、スイッチ22aがオン、スイッチ22bがオフされることで、オペアンプ21aの非反転入力端子に中点電圧Vdd/2(例えば、2.5V)が印加され、可動電極1a、1bが中点電圧とされる。
制御信号発生回路24から出力される信号PW1、PW2は互いに電圧レベルが反転した振幅V(本実施形態の場合は5V)を有する信号となっており、4つの期間t1〜t4でハイレベル(Hi)とローレベル(Low)が変化する一定振幅の矩形波信号となっている。
まず、第1の期間t1では、信号PW1、PW2に基づいて固定電極2aの電位がV、固定電極2bの電位が0にされると共に、制御信号発生回路24からの信号S1によりスイッチ21cが閉じられる。このため、オペアンプ21aの働きにより可動電極1a、1bがVdd/2の電位にバイアスされると共に、帰還容量となるコンデンサ21bの電極間に蓄えられた電荷が放電される。
このとき、仮に可動電極1aと固定電極2aとの間の容量C1と、可動電極1bと固定電極2bとの間の容量C2とが、C1>C2の関係となっている場合には、この関係と固定電極2a、2bに印加される電位の関係とから、可動電極1a、1bは負の電荷が多い状態になる。
次に、第2の期間t2では、信号PW1、PW2に基づいて固定電極2aの電位がV、固定電極2bの電位が0にされると共に、制御信号発生回路24からの信号S1によりスイッチ21cが開かれる。このため、可動電極1a、1bの状態に応じた電荷がコンデンサ21bに蓄えられる。そして、このときコンデンサ21bに蓄えられた電荷に応じた電圧値がC−V変換回路21から出力されると、信号S2に基づきサンプルホールド回路23aによってC−V変換回路21の出力電圧がサンプリングされる。
続いて、第3の期間t3では、信号PW1、PW2に基づいて固定電極2aの電位が0、固定電極2bの電位がVとなるように電位が入れ替えられると共に、制御信号発生回路24からの信号S1によりスイッチ21cが開かれたままにされる。
このとき、可動電極1a、1bの電荷の状態は信号PW1、PW2の反転により、第2の期間t2と逆になる。すなわち、上述したようにC1>C2の関係を満たす場合には、固定電極2a、2bへの印加電位の反転により、可動電極1a、1bは正の電荷が多い状態になる。
しかしながら、このとき、可動電極1a、1bとコンデンサ21bとの間が閉回路となっており、第1の期間t1の電荷量が保存されているため、可動電極1a、1bの電荷量のバランスから溢れ出した電荷がコンデンサ21bに移動して蓄えられる。そして、Q=CVの関係から、移動してきた電荷量に比例すると共にコンデンサ21bの容量Cに反比例した電圧値がC−V変換回路21から出力される。
さらに、第4の期間t4、すなわち信号PW1、PW2に基づいて固定電極2aの電位を0、固定電極2bの電位をVにしたのちC−V変換回路21の出力が十分に安定すると、信号S2に基づきサンプルホールド回路23aにて、C−V変換回路21の出力電圧がサンプリングされる。
そして、最終的に、第2の期間t2にサンプリングされた電圧値と第4の期間t4にサンプリングされた電圧値とがサンプルホールド回路23aで差動演算されたのち出力される。これにより、サンプルホールド回路23aでのサンプリング時に発生するTrのスイッチングノイズの温度特性やオペアンプの1/fノイズ、オペアンプのオフセット電圧と温度特性などがキャンセルされた出力が得られ、この出力に基づいて可動電極1a、1bの変位に応じた加速度検出が行われる。
〔自己診断時〕
図3は、自己診断時における診断パルスとセンサ出力および診断用の出力(センサ出力の微分値)を示したタイミングチャートである。
自己診断時には、制御信号発生回路24から出力される信号PW1、PW2は、通常の加速度検出時と同様の波形とされ、固定電極2a、2bに印加されるが、信号Stは診断パルスの入力に同期して通常の加速度検出時と異なる信号とされ、信号Stは診断パルス(ハイレベル信号)の入力に同期して通常の加速度検出時と異なる信号、例えばハイレベル(Hi)とされる。これにより、スイッチ22aがオフ、スイッチ22bがオンになり、オペアンプ21aの非反転入力端子に中点電圧Vdd/2とは異なる電圧V1(例えば、4V)が印加され、可動電極1a、1bが電圧V1とされる。
このように、オペアンプ21aの非反転入力端子に電圧V1が入力されることで、可動電極1aと固定電極2aとの間の電位差(1V)よりも可動電極1bと固定電極2bとの間の電位差(4V)の方が大きくなり、静電気力が増大するため、この静電気力によって可動電極1a、1bが強制的に中心点から移動させられる。
続いて、診断パルスの入力が終わると(ローレベル信号になると)、信号Stに基づいてスイッチ回路22によるスイッチ切替えを行い、通常の加速度検出時と同様に、オペアンプ21aの非反転入力端子に固定電極2a、2bの中点電圧Vdd/2が印加されるようにする。この後、上記した通常の加速度検出と同様の作動を行うことにより、可動電極1a、1bの変位量に応じたセンサ出力を得ることができる。
このような自己診断を行った場合、センサ出力は診断パルスと同様の波形となるが、自己診断中に加速度入力があると、図3に示したように、センサ出力が入力された加速度に伴って値が変動する。このため、センサ出力を自己診断用の閾値と比較しようとしても的確に比較できず、自己診断を行うことができない。
しかしながら、本実施形態では、センサ出力を微分回路23dにて微分した値(微分値)を自己診断用の出力として用いており、図3に示したようにセンサ出力の微分値は診断パルスが入力されたときに瞬間的にピーク値を取り、それ以外のときにはピーク値は取らない。したがって、センサ出力の微分値を自己診断用の閾値と比較することにより、自己診断中に加速度入力が有るか否かに関わらず、診断パルスが入力されたときのセンサ出力のオフセットのエッジ(つまりセンサ出力の立上り時のエッジ)を捉えることが可能となる。
そして、本実施形態では、図3に示すように所定周期毎に自己診断を行わせるための診断パルスを一定周期ごとに繰り返し出力させ、自己診断を一定周期ごとに繰り返し行わせるようにしている。このため、マイコン30にて、診断パルスを出力したタイミングと自己診断用の出力が自己診断用の閾値を超えるタイミングとが一致しているか否かを判定するようにすれば、加速度入力によりセンサ出力が乱れた場合にも的確に自己診断を行うことが可能となる。
以上説明したように、本実施形態によれば、診断パルスを出力したタイミングと自己診断用の出力が自己診断用の閾値を超えるタイミングとが一致しているか否かを判定することにより自己診断を行うようにしている。このため、自己診断中に実際の物理量が入力されたとしても、的確に自己診断を行うことができる加速度センサとすることが可能となる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の加速度センサは、第1実施形態に対して診断パルスを変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
上記実施形態では、診断パルスを所定周期毎に出力する場合について説明したが、自己診断を実施したときに車両が道路の中央線に等間隔に設置してある構造物である道路鋲(キャッツアイ)や道路に等間隔に配置された設置された凹凸などの上を走行したした場合、周期的に大きな加速度入力が生じるため、仮に加速度センサが故障していたとしても自己診断用の出力が閾値を超えてしまい、自己診断用の出力が正常なときの波形と似た形状となり、的確な自己診断が行えなくなる可能性がある。このため、本実施形態では、診断パルスの出力の仕方を第1実施形態に対して変更している。
図4は、本実施形態の自己診断時における診断パルスとセンサ出力およびセンサ出力の微分値を示したタイミングチャートである。この図に示すように、本実施形態では、診断パルスを周期的に複数回出力するものの、複数回診断パルスを出力するまでの間に一時的に診断パルスの出力を停止している。つまり、複数回診断パルスを出力したのち、一時的に診断パルスを出力する周期になっても診断パルスを出力しないようにし、その後、再び複数回診断パルスを出力するようにしている。
このようにすれば、センサ出力の微分値も診断パルスが出力されたときにだけピーク値を取ることから、センサ出力の微分値も診断パルスと同様、複数回周期的にピーク値となったのち、一時的にピーク値になることがなくなり、再び複数回周期的にピーク値になる。このため、診断パルスを出力したタイミングと自己診断用の出力が自己診断用の閾値を超えるタイミングとが一致しているか否かを判定すれば、第1実施形態と同様に的確な自己診断が行え、かつ、自己診断を実施したときに車両が道路の中央線に等間隔に設置してある構造物の上を走行した場合などにおいても、それと区別した自己診断を行うことが可能となる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の加速度センサも、第1実施形態に対して診断パルスを変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
本実施形態も、自己診断を実施したときに車両が道路の中央線に等間隔に設置してある構造物を走行した場合などでも的確な自己診断が行えるように、診断パルスの出力の仕方を第1実施形態に対して変更している。
図5は、本実施形態の自己診断時における診断パルスとセンサ出力およびセンサ出力の微分値を示したタイミングチャートである。この図に示すように、本実施形態では、診断パルスを複数回出力するものの、複数回診断パルスを周期的にではなく順に周期を変えて出力している。
このようにした場合にも、センサ出力の微分値も診断パルスが出力されたときにだけピーク値を取ることから、センサ出力の微分値も診断パルスと同様、複数回周期を変えてピーク値となる。このため、診断パルスを出力したタイミングと自己診断用の出力が自己診断用の閾値を超えるタイミングとが一致しているか否かを判定すれば、第1実施形態と同様に的確な自己診断が行え、かつ、自己診断を実施したときに車両が道路の中央線に等間隔に設置してある構造物を走行した場合などにおいても、それと区別した自己診断を行うことが可能となる。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の加速度センサは、第1実施形態に対して加速度検出を行いつつ自己診断も行うものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
本実施形態では、センサ出力が入力されるA/D入力でのA/D変換周期に対して自己診断用の出力が入力されるA/D入力でのA/D変換周期を短くしている。そして、マイコン30からセンサ出力が入力されるA/D入力でのA/D変換タイミング(サンプリング時)と異なるタイミングで診断パルスを出力させるようにしている。
図6は、上記のような診断パルスの発生させ方をしたときのタイミングチャートである。この図に示すように、診断パルスの出力に対応してセンサ出力が嵩上げされた値となる。このとき、センサ出力が嵩上げされるタイミングは、センサ出力が入力されるA/D入力でのA/D変換タイミング(サンプリング時)と異なるタイミングとなっているため、そのタイミングにはセンサ出力は入力されている加速度に応じた値となり、診断パルスが入力された時にだけセンサ出力が入力されている加速度に応じた値よりも大きな値となる。このため、通常の加速度検出を行いつつ、同時に自己診断を行うことも可能となる。
(他の実施形態)
上記実施形態では容量式物理量センサとして加速度センサを例に挙げて説明したが、それ以外のセンサ、例えば圧力センサやヨーレートセンサにも本発明を適用することが可能である。すなわち、本発明は、物理量センサにおいて物理量が加えられたときに変位する物理量検出部を自己診断時に電気的に強制的に変位させることができるような構造であればどのような物理量センサに対しても適用することが可能である。したがって、上記各実施形態では、容量型の加速度センサを例に挙げて説明したが、他のセンシング形式、例えばダイヤフラム型の物理量センサに対しても本発明を適用することができる。
本発明の第1実施形態にかかる容量式加速度センサの全体構成を示す図である。 通常の加速度検出時における可動電極1a、1bと固定電極2a、2bへの印加電圧の様子を示した図である。 自己診断時における診断パルスとセンサ出力および診断用の出力(センサ出力の微分値)を示したタイミングチャートである。 本発明の第2実施形態にかかる自己診断時における診断パルスとセンサ出力およびセンサ出力の微分値を示したタイミングチャートである。 本発明の第3実施形態にかかる自己診断時における診断パルスとセンサ出力およびセンサ出力の微分値を示したタイミングチャートである。 本発明の第4実施形態にかかる自己診断時における診断パルスとセンサ出力およびセンサ出力の微分値を示したタイミングチャートである。 従来の物理量センサによる自己診断時のタイミングチャートである。
符号の説明
1a、1b 可動電極
2a、2b 固定電極
10 センサエレメント
20 検出回路
21 C−V変換回路
21a オペアンプ
21b コンデンサ
21c スイッチ
22 スイッチ回路
23 信号処理回路
23a サンプルホールド回路
23b SCF回路
23c 自己診断用回路
23d 微分回路
23e ダイオード
24 制御信号発生回路
30 マイコン

Claims (11)

  1. 物理量の変化に応じて変位する物理量検出部(10)を有し、該物理量に応じたセンサ出力を発生させるセンサ部(10、20)と、
    前記センサ出力を入力し、前記センサ出力に基づいて前記物理量を求める制御部(30)と、を備え、
    前記制御部(30)から前記センサ部(10、20)に対して自己診断用の診断パルスを出力することにより、前記物理量検出部(10)を電気的に変位させ、そのときの前記センサ部(10、20)が発生させるセンサ出力に基づいて該センサ部(10、20)の故障を検出する自己診断機能を有する物理量センサであって、
    前記センサ部(10、20)が発生させる前記センサ出力の微分値を求める微分手段(23d)が備えられ、
    前記制御部(30)は、前記診断パルスを出力したタイミングと前記微分手段(23d)が求めた前記微分値が自己診断用の閾値を超えるタイミングとが一致しているか否かに基づいて前記自己診断時であることを検出すると共に、該自己診断時の前記微分値を閾値と比較することにより前記センサ部(10、20)の故障を検出することを特徴とする物理量センサ。
  2. 前記制御部(30)は、前記診断パルスを所定周期ごとに複数回繰り返し出力することを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ。
  3. 前記制御部(30)は、前記診断パルスを所定周期ごとに複数回繰り返し出力したのち、前記診断パルスを所定期間を出力しないようにし、その後、再び前記診断パルスを所定周期ごとに複数回繰り返し出力することを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ。
  4. 前記制御部(30)は、前記診断パルスを異なる周期で複数回出力することを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ。
  5. 前記微分手段は、前記制御部(30)のA/D入力に対して前記微分値を入力する微分回路(23d)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の物理量センサ。
  6. 前記制御部(30)にはA/D入力が2つ備えられており、該2つのA/D入力の一方に前記センサ出力が入力され、他方に前記微分回路(23d)が出力する前記微分値が入力されることを特徴とする請求項5に記載の物理量センサ。
  7. 前記制御部(30)は、前記2つのA/D入力のうち前記センサ出力が入力される側のA/D変換の周期に比べて、前記2つのA/D入力のうち前記微分回路(23d)が出力する前記微分値が入力される側のA/D変換の周期を短くすると共に、前記2つのA/D入力のうち前記センサ出力が入力される側のA/D変換のタイミングと異なるタイミングに前記診断パルスを出力し、前記センサ出力に基づいて前記物理量を求めつつ、前記自己診断も同時に行うことを特徴とする請求項6に記載の物理量センサ。
  8. 前記微分回路(23d)と前記制御部(30)のA/D入力の間に、前記A/D入力に対してマイナス値が入力されることを防止するダイオード(23e)が配置されていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の物理量センサ。
  9. 前記制御部(30)は、前記自己診断中には、前記自己診断中ではないときと比べて前記A/D入力におけるA/D変換の周期を短くすることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか1つに記載の物理量センサ。
  10. 前記微分手段は、前記制御部(30)内に備えられたデジタルフィルタにて微分処理を行うものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の物理量センサ。
  11. 前記物理量検出部(10)として、前記物理量の変化に応じて変位する可動電極(10)と、前記可動電極に対向して配置された固定電極(2a、2b)とを有すると共に、
    容量変化を検出するための信号を前記可動電極と前記固定電極との間に周期的に印加する信号印加手段(24)と、
    前記容量変化を検出するための信号が前記可動電極と前記固定電極との間に印加されているときに、前記可動電極と前記固定電極からなる容量の変化に応じた電圧を出力するC−V変換手段(21)と、
    前記C−V変換手段(21)の出力電圧を信号処理して前記センサ出力を発生する信号処理手段(23)と、を備え、
    前記物理量の変化に応じて前記可動電極(1a、1b)と前記固定電極(2a、2b)の間の容量値を変化させ、該容量値の変化に基づいて前記物理量を検出することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の物理量センサ。
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