JP4825365B2 - 軽量構造物用免震装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、木造建物や鉄骨造りあるいはプレハブ式建物等戸建て住宅用建物のような軽量構造物用免震装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、地震から建物を守るために、鋼板とゴム弾性体とを交互に積層した積層ゴム体を建築物と基礎との間に介装し、免震装置として使用することはよく知られている。ここで、免震性能は建築物の重量(鉛直荷重)とそれを支持する免震装置の水平ばねからなる固有振動数によって決定される。そして、建築物の鉛直荷重の大小にかかわらず、同一の地震入力に対して同等の免震性能を補償するべく免震装置には同一の水平変形性能が必要とされる。
【0003】
したがって、鉛直荷重が小さい(一般的に免震装置が支承する荷重は面圧として5〜30kgf/cm2)木造建物や鉄骨造りあるいはプレハブ式建物などの所謂戸建て住宅建物に用いる免震装置の積層ゴム体は、本来のばね特性を損うことなしに同程度の設計水平移動量を確保するように、必然的にその横断面積に比し丈高い構造となる。この丈高い構造の免震装置をそのまま戸建て住宅建物に適用した場合には鉛直荷重による座屈を生じ易い状態となり、この状態で大きな水平移動が生じた場合、実用上問題がある。
【0004】
このような問題を解決する方法として、免震装置の積層ゴム体のゴム弾性体に柔らかいゴム弾性体を使用することにより一応の解決は図れるが、柔らかいゴム弾性体の製造は難しいばかりでなく、仮に製造できたとしても、とくに側面積が大きい住宅建物にあっては強風により大きく揺れるという問題がある。
【0005】
他の解決方法としては、住宅建物側に固定した上沓の下面に摩擦材を固着するとともに、基礎側に上記摩擦材が水平面に沿って滑り移動可能に摺接する滑り面を有する下沓を固定してなる滑り型免震装置、あるいは住宅建物の下面と基礎上に設置された一対の受皿の凹曲面との間に鋼球などの球体を転動可能に介在させてなる転がり型免震装置が数多く提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した滑り型あるいは転がり型免震装置は、地震発生時に免震性能を発揮させることに主眼が置かれているため、滑り型免震装置においては水平面に沿う摩擦材と滑り面との間の摩擦係数をできるだけ小さくすること、また転がり型免震装置においては球体が転がり易いように球体と凹曲面との接触面積をその作動範囲にわたって一定の値に設定するなどして、地震発生時に住宅建物と基礎とが相対的に変位し易い構造に構成されている。したがって、通常時に住宅建物に風荷重、生活振動あるいは交通振動などの地震以外の水平変位が作用した場合には、住宅建物は揺れ易く、居住性が損われるという問題を生じる。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、通常時の風荷重、生活振動あるいは交通振動などによる水平変位に対してはトリガー機能の働きにより何ら作用せず、地震動に対してのみ優れた免震性能を発揮する軽量構造物用免震装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の態様の軽量構造物用免震装置は、基礎側に固定されるコンクリート製の下沓と、構造物側に固定され該下沓に摺動可能に支承される上沓とから成り、地震により基礎側に一定以上の水平力が作用したとき、下沓を上沓に対して水平方向に相対変位させることにより構造物への水平変位力の伝達を低減するように構成された軽量構造物用免震装置であって、下沓の上面と上沓の下面には、それぞれ潤滑性物質を含有するエポキシ樹脂の潤滑被膜が形成されており、該下沓と上沓とは該潤滑被膜を介して摺動することを特徴とする。
【0009】
斯かる第一の態様の軽量構造物用免震装置によれば、下沓の上面と上沓の下面にそれぞれ形成された潤滑被膜同士の摺動において、例えば面圧が5kgf/cm2、速度2m/minの摺動条件で、静摩擦係数が0.15以上で、動摩擦係数が0.13以下の値を示す。上記条件で静摩擦係数が0.15以上を示すことは、通常時に住宅建物に作用する風荷重、生活振動あるいは交通振動などの地震以外の水平変位に対しては該下沓の上面と上沓の下面との間に滑りを生じない、換言すれば地震以外の水平変位に対してはトリガー機能が働き、構造物(住宅建物)と基礎との相対変位は生じない。したがって、住宅建物は揺れ易く、居住性が損われるという従来の問題点を解決することができる。また、動摩擦係数が0.13以下を示すことは、地震動によって生じる水平変位に対して該下沓の上面と上沓の下面との間の滑りによって当該水平変位を逃がす、換言すれば免震機能を発揮し、構造物に破壊、破損等が生じるのを回避することができる。
【0010】
本発明の第二の態様の軽量構造物用免震装置では、上記の第一の態様の軽量構造物用免震装置において、下沓は鉄筋コンクリート又はプレストレストコンクリートからなる。
【0011】
第二の態様の軽量構造物用免震装置によれば、下沓は、軽量構造物の基礎をコンクリートで形成するさいに同時に形成することができ、鉄筋コンクリート又はプレストレストコンクリートとすることにより強度の高い下沓とすることができる。また、下沓をコンクリート製、とくに鉄筋コンクリート又はプレストレストコンクリートとすることによりその厚さを小さくすることができ、ひいては免震装置自体の丈高を低く抑えることができる。
【0012】
本発明の第三の態様の軽量構造物用免震装置では、上記の第一又は第二の態様の軽量構造物用免震装置において、上沓は鋼板又はガラス繊維織布強化エポキシ樹脂積層体からなる。
【0013】
第三の態様の軽量構造物用免震装置によれば、上沓の厚さを薄くできると共に、上記下沓との組合わせにおいては、免震装置自体の丈高を低く抑えることができる。
【0014】
本発明の第四の態様の軽量構造物用免震装置では、上記の第一又は第二の態様の軽量構造物用免震装置において、上沓は、構造物側に固定される取付板と該取付板に係合部を介して一体的に取付けられる滑り部材とからなり、本発明の第五の態様の軽量構造物用免震装置では、第四の態様の軽量構造物用免震装置において、係合部は、取付板の下面に形成された方形状又は円形状の凹部と滑り部材の上面に形成された方形状又は円形状の凹部と両凹部間に配された方形状又は円形状の係合駒からなる。
【0015】
第四及び第五の態様の軽量構造物用免震装置によれば、上沓には、下沓との水平方向の相対的な摺動のさい、該上沓に剪断力が作用するが、当該剪断力は該滑り部材と取付板とを係合する係合駒が負担するので、該上沓を構造物側に固定するボルト等の固定部材の本数を減らしたり、あるいはボルト径を小径とすることができる。また、保守点検等の場合において、上沓を交換する事態が生じた場合は、滑り部材だけを交換すればよく、交換作業等の手間が簡略化される。
【0016】
本発明の第六の態様の軽量構造物用免震装置では、上記の第一から第五のいずれかの態様の軽量構造物用免震装置において、上沓の上面と該上沓が固定される構造物との間には粘弾性体が介在されている。
【0017】
第六の態様の軽量構造物用免震装置によれば、車両等の走行によって生じる交通振動等の微小振動を吸収することができる。
【0018】
本発明の第七の態様の軽量構造物用免震装置では、上記の第一から第六のいずれかの態様の軽量構造物用免震装置において、潤滑被膜は、常温硬化型エポキシ樹脂100重量部、炭化フェノール樹脂20〜40重量部、ポリテトラフルオロエチレン樹脂45〜60重量部及び燐酸塩2〜3.5重量部からなる。
【0019】
この潤滑被膜の成分組成を具体的に説明すると、次のとおりである。常温硬化型エポキシ樹脂は、主剤と硬化剤とからなり、主剤はその粘度が25℃の温度で120〜1200mPa・sを示す液状のものが使用される。粘度が120mPa・s未満であると、後述する充填材を配合しても見掛けの粘度が低く、被膜を形成する際の作業性を悪化させ、また粘度が1200mPa・sを超えると、反対に充填材の配合により見掛けの粘度が高くなりすぎ、被膜を形成する際の作業性を悪化させる。常温硬化型エポキシ樹脂の具体例としては、レジナス化成社製の主剤OCR−EX001R(商品名)と硬化剤OCR−EX001C(商品名)を例示することができる。この主剤と硬化剤の配合割合は主剤100重量部に対し硬化剤30〜40重量部が好ましい範囲である。
【0020】
この常温硬化型エポキシ樹脂に配合される炭化フェノール樹脂は、フェノール樹脂粉末を不活性雰囲気中で550℃以上、就中800℃の温度を超える温度で熱処理して得られるもので、粉末の粒径としては100μm以下、就中1〜40μmのものが使用される。具体的には、鐘紡社製のベルパールC800、ベルパールC1000あるいはベルパールC2000(いずれも商品名)を例示することができる。この炭化フェノール樹脂は潤滑被膜の強度を高めると共に潤滑被膜の表面硬度を高めて該被膜の耐摩耗性を向上させる役割を果たす。そして、この炭化フェノール樹脂粉末の配合量は20〜40重量部が適当である。その配合量が20重量部未満では上記役割を十分発揮することができず、また40重量部を超えて配合すると、潤滑被膜の接着性に悪影響を及ぼすことになる。
【0021】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、PTFEと称呼する。)は、潤滑被膜に潤滑性及び低摩擦性を与えるものである。具体的には、三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7J」、「テフロンTLP−10」及び「テフロンTLP−10F−1」(いずれも商品名)、旭硝子フロロポリマーズ社製の「フルオンG163」、「フルオンL169」、「フルオンL170」及び「フルオンL171」(いずれも商品名)、ダイキン工業社製の「ポリフロンM15」、「ルブロンL−2」及び「ルブロンL−5」(いずれも商品名)、喜多村社製の「KTL−8N」(商品名)等を例示することができる。
【0022】
そして、PTFE粉末の配合量は45〜60重量部が適当である。その配合量が45重量部未満では被膜の潤滑性及び低摩擦性が十分ではなく、また60重量部を超えて配合すると、被膜の潤滑性及び低摩擦性を向上させる反面、潤滑被膜の接着性を阻害する要因となる。
【0023】
燐酸塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの金属の第三燐酸塩、第二燐酸塩、ピロ燐酸塩、亜燐酸塩、メタ燐酸塩及びこれらの混合物が挙げられ、中でも、第三燐酸塩、第二燐酸塩及びピロ燐酸塩が好ましいものである。
【0024】
具体的には、燐酸三リチウム、燐酸水素二リチウム、ピロ燐酸リチウム、燐酸三カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、燐酸三マグネシウム、燐酸水素マグネシウム、ピロ燐酸マグネシウム、燐酸三バリウム、燐酸水素バリウム、ピロ燐酸バリウムが好ましいものである。
【0025】
燐酸塩は、それ自体は何ら潤滑性を示さないが、前述したPTFEとともに配合されることにより、摺動の際、相手材表面へのPTFE被膜の形成を助長し、かつ該PTFEの相手材表面への保持性を高め、PTFE被膜の耐久性を高めるという役割を果たす。そして、燐酸塩の配合量は2〜3.5重量部が適当である。2重量部未満の配合量では相手材表面へのPTFE被膜の形成、該被膜の保持性、耐久性に効果が十分発揮されず、また3.5重量部を超えて配合すると、相手材表面へのPTFE被膜の形成量が多くなりすぎ、却って低摩擦性に悪影響を及ぼすことになる。
【0026】
常温硬化型エポキシ樹脂100重量部、炭化フェノール樹脂20〜40重量部、ポリテトラフルオロエチレン樹脂45〜60重量部及び燐酸塩2〜3.5重量部からなる潤滑被膜は、上沓及び下沓に次のようにして形成される。
【0027】
25℃の温度で120〜1200mPa・sを示す液状の常温硬化型エポキシ樹脂の主剤100重量部に対し硬化剤を30〜40重量部配合し、混合する。この主剤と硬化剤の混合物100重量部に対し、炭化フェノール樹脂粉末20〜40重量部、PTFE粉末45〜60重量部及び燐酸塩粉末2〜3.5重量部を配合し、混合して潤滑被膜組成物を形成する。この潤滑被膜組成物をスプレー、刷毛塗り等の手段で上沓及び下沓の表面に被覆し、この被膜を常温で1ないし3日間放置して乾燥、硬化させる。
【0028】
このように上沓及び下沓の表面に形成された潤滑被膜同士の摺動においては、前記したように、面圧が5kgf/cm2、速度2m/minの摺動条件で、静摩擦係数が0.15以上で、動摩擦係数が0.13以下の値を示す。上記条件で静摩擦係数が0.15以上の値を示すことは、通常時に住宅建物に作用する風荷重、生活振動あるいは交通振動などの地震以外の水平変位に対しては該下沓の上面と上沓の下面との間に滑りを生じない、換言すれば地震以外の水平変位に対してはトリガー機能が働き、構造物(住宅建物)と基礎との相対変位は生じない。したがって、住宅建物は揺れ易く、居住性が損われるという従来の問題点を解決することができる、という効果を奏することになる。また、動摩擦係数が0.13以下を示すことは、地震動によって生じる水平変位に対して該下沓の上面と上沓の下面との間の滑りによって当該水平変位を逃がす、換言すれば免震機能を発揮し、構造物に破壊、破損等が生じるのを回避することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい例を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【0030】
図1ないし図3において、軽量構造物用免震装置1は、基礎Bに固定されたコンクリート製の下沓2と、構造物M側に固定され該下沓2に摺動可能に支承された上沓3とからなる。
【0031】
この基礎Bに固定された下沓2はその平面形状が方形状をなすものであり、基礎Bをコンクリート打ちして形成するさいに、基礎Bと同時に一体的に形成するか、あるいは予めコンクリート製の下沓2を作製し、これを基礎Bと一体的に固定して形成する。
【0032】
上沓3はその平面形状が円形をなすものであり、該上沓3は鋼板又はガラス繊維織布強化エポキシ樹脂積層体からなる。この上沓3は、構造物M側にボルトあるいは接着剤により固定される。
【0033】
該下沓2の上面4及び上沓3の下面5には、常温硬化型エポキシ樹脂100重量部、炭化フェノール樹脂20〜40重量部、ポリテトラフルオロエチレン樹脂45〜60重量部及び燐酸塩2〜3.5重量部からなる潤滑被膜6が形成されている。
【0034】
表1及び表2は、潤滑被膜6の成分組成と該潤滑被膜6を具備した下沓2と上沓3の摺動特性について示したものである。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
上記表1及び表2中の潤滑被膜を形成する各成分の数値は、25℃の温度で1200mPa・sの粘度を示す常温硬化型エポキシ樹脂の主剤100重量部に対し、25℃の温度で114mPa・sの粘度を示す硬化剤34重量部を配合して形成した液状の常温硬化型エポキシ樹脂100重量部に対し、それぞれ炭化フェノール樹脂粉末、PTFE粉末及び燐酸塩粉末を重量部で配合したものである。表中の*印は、フェノール樹脂粉末を不活性雰囲気中で2000℃の温度で熱処理して得た炭化フェノール樹脂粉末を、また無印はフェノール樹脂粉末を不活性雰囲気中で800℃の温度で熱処理して得た炭化フェノール樹脂粉末を使用し、燐酸塩はピロ燐酸カルシウムを使用したものである。
【0038】
静摩擦係数及び動摩擦係数はつぎの条件で試験した結果を示すものである。
<試験条件>
荷 重 5kgf/cm2
滑り速度 2m/min
往復動試験 5サイクル
試験片 縦730mm、横400mm、厚さ50mmのコンクリート製の下沓の表面に上記成分組成の潤滑被膜を形成したもの。
相手材 直径300mm、厚さ20mmのガラス繊維織布強化エポキシ樹脂積層体からなる上沓の表面に上記成分組成の潤滑被膜を形成したもの。なお、表2中の比較例1の相手材は直径300mm、厚さ10mmのステンレス鋼板を使用した。
【0039】
上記試験結果から、潤滑被膜同士(実施例1ないし実施例6)の往復動試験においては、静摩擦係数が0.15以上であって、動摩擦係数が0.13以下の値を示した。一方、比較例においては、静摩擦係数が0.315、動摩擦係数が0.272の値を示した。この試験結果から、潤滑被膜同士の摺動においては、通常時に住宅建物に作用する風荷重、生活振動あるいは交通振動などの地震以外の水平変位に対しては該下沓の上面と上沓の下面との間に滑りを生じない、換言すれば地震以外の水平変位に対してはトリガー機能が働き、構造物(住宅建物)と基礎との相対変位は生じず、したがって、住宅建物は揺れ易く、居住性が損われるという問題点を解決することができる。
【0040】
また、動摩擦係数が0.13以下を示すことは、地震動によって生じる水平変位に対しては該下沓の上面と上沓の下面との間の滑りによって当該水平変位を逃がす、換言すれば免震機能を発揮し、構造物に破壊、損傷等が生じるのを回避することができるものである。これに対し比較例のものは、トリガー機能が働き、住宅建物は揺れ易く、居住性が損われるという問題点を解決することができるが、地震動によって生じる水平変位に対しても摺動面において滑りを生じにくく、免震機能を発揮するとは言い難いものである。
【0041】
図4及び図5は、上記態様の軽量構造物用免震装置1における上沓3の他の態様を示すものである。すなわち、上沓3を構造物M側に固定される平面形状が方形状をなす取付板7と該取付板7に係合部8を介して一体的に取付けられ、下面に潤滑被膜6を具備した平面形状が円形状をなす滑り部材9とで形成したものである。該係合部8は、取付板7の下面に形成された平面形状が方形状をなす凹部10と滑り部材9の上面に形成され、該凹部10と対応する平面形状が方形状をなす凹部11と両凹部10、11間に配された平面形状が方形状をなす係合駒12とで形成されている。
【0042】
このように上沓3を、取付板7と該取付板7に係合部8を介して一体的に取付けられる滑り部材9とで形成することにより、上沓3は、下沓2との水平方向の相対的な摺動の際、該上沓3に剪断力が作用するが、当該剪断力は該滑り部材9と取付板7とを係合する係合駒12が負担するので、該上沓3を構造物M側に固定するボルト等の固定部材の本数を減らしたり、あるいはボルト径を小径とすることができる。また、保守点検等の場合において、上沓3を交換する事態が生じた場合は滑り部材9だけを交換すればよく、交換作業等の手間が簡略化される。
【0043】
なお、該係合部8は、取付板7の下面に形成された平面形状が円形状をなす凹部10と滑り部材9の上面に形成され、該凹部10と対応する平面形状が円形状をなす凹部11と両凹部10、11間に配された平面形状が円形状をなす係合駒12とで形成してもよい。
【0044】
図6は、上記態様の軽量構造物用免震装置1における上沓3と構造物Mとの間に粘弾性体13を介在させたものである。上沓3と構造物Mとの間に粘弾性体13を介在させることにより、車両等の走行によって生じる交通振動等の微小振動を吸収することができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、通常時に住宅建物に作用する風荷重、生活振動あるいは交通振動などの地震以外の水平変位に対しては該下沓の上面と上沓の下面との間に滑りを生じない、換言すれば地震以外の水平変位に対してはトリガー機能が働き、構造物(住宅建物)と基礎との相対変位は生じず、したがって、住宅建物は揺れ易く、居住性が損われるという問題点を解決することができる。また、地震動によって生じる水平変位に対しては該下沓の上面と上沓の下面との間の滑りによって当該水平変位を逃がす、換言すれば免震機能を発揮し、構造物に破壊、損傷等が生じるのを回避することができる。さらに、上沓と構造物との間に粘弾性体を介在させたものでは、上記の効果に加えて、車両等の走行によって生じる交通振動等の微小振動を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一実施の形態による免震装置を適用した構造物の全体構成を示す概略図である。
【図2】免震装置を配置した基礎の平面図である。
【図3】免震装置の好ましい態様を示す断面図である。
【図4】免震装置の他の態様を示す断面図である。
【図5】図4の免震装置における係合部を示す断面図である。
【図6】免震装置の他の態様を示す断面図である。
【符号の説明】
1 免震装置
2 下沓
3 上沓
6 潤滑被膜
Claims (6)
- 基礎側に固定されるコンクリート製の下沓と、構造物側に固定され該下沓に摺動可能に支承される上沓とから成り、地震により基礎側に一定以上の水平力が作用したとき、下沓を上沓に対して水平方向に相対変位させることにより構造物への水平変位力の伝達を低減するように構成された軽量構造物用免震装置であって、該下沓の上面と上沓の下面には、それぞれ潤滑性物質を含有するエポキシ樹脂の潤滑被膜が形成されており、概潤滑被膜は、常温硬化型エポキシ樹脂100重量部、炭化フェノール樹脂20〜40重量部、ポリテトラフルオロエチレン樹脂45〜60重量部及び燐酸塩2〜3.5重量部からなり、該下沓と上沓とは該潤滑被膜を介して摺動することを特徴とする軽量構造物用免震装置。
- 下沓は、鉄筋コンクリート又はプレストレストコンクリートからなる請求項1に記載の軽量構造物用免震装置。
- 上沓は、鋼板又はガラス繊維織布強化エポキシ樹脂積層体からなる請求項1又は2に記載の軽量構造物用免震装置。
- 上沓は、構造物側に固定される取付板と該取付板に係合部を介して一体的に取付けられる滑り部材とからなる請求項1又は2に記載の軽量構造物用免震装置。
- 係合部は、取付板の下面に形成された方形状又は円形状の凹部と滑り部材の上面に形成された方形状又は円形状の凹部と両凹部間に配された方形状又は円形状の係合駒からなる請求項4に記載の軽量構造物用免震装置。
- 上沓の上面と該上沓が固定される構造物との間には、粘弾性体が介在されている請求項1から5のいずれか一項に記載の軽量構造物用免震装置。
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