JP4138475B2 - すべり部材及び該すべり部材の製造方法並びに該すべり部材を使用したすべり免震装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、すべり部材及びすべり部材の製造方法並びに該すべり部材を使用したすべり免震装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特公昭39−14852号公報
【特許文献2】
特開平11−182095号公報
【0003】
従来、綿布基材入りフェノール樹脂すべり部材を得るにあたり、黒鉛や二硫化モリブデン又は四ふっ化エチレン樹脂の粉末などをフェノール樹脂ワニスに分散含有させたものに綿布基材を浸漬して引上げ、適宜加温して溶剤を逸散してこれら固体潤滑剤が基材に付着含浸せしめられたプレプレグを得、これを成形材料として積層すべり部材とするなどの方法が用いられている。
【0004】
しかしながら、綿布基材の浸漬、引上げによりプレプレグを形成するに際しての作業性を保つべく、固体潤滑剤の混入割合を比較的低くおさえる必要があり、その結果前記公知の方法で得られた固体潤滑剤入りすべり部材では、あまり摩擦係数が低下され得ず、また必ずしも充分な耐摩耗性が得られない。
【0005】
加えて、仮に固体潤滑剤の混入割合を高め得たとしても、単なる浸漬によっては繊維基材の繊維組織間隙に樹脂と固体潤滑剤との混合物が充分には充填されず、また該混合物が基材に必ずしも充分には付着され得ず、このようなプレプレグを用いて積層成形すると、得られた成形物が層間剥離を起こす虞があり、その結果すべり部材の機械的強度が著しく低下する虞がある。
【0006】
このような問題を解決するべく、補強基材に予め合成樹脂ワニスを含浸せしめ、ついでこのワニス含浸基材に固体潤滑剤入りワニスを塗布するか、固体潤滑剤の水分散体を塗布するなどして該基材のほぼ表面にのみ固体潤滑剤を付着せしめるという方法がある(特許文献1所載)。しかしながら、ここに開示された方法においても、すべり部材の低摩擦性、耐摩耗性などが必ずしも充分ではない。
【0007】
とくに近年において、このようなすべり部材を建築、土木分野における建物や橋梁、高架道路を支持する弾性支承装置と併用して設置し、当該建物等に加わる地震力を減少させるべくすべり免震装置に適用した場合には、低摩擦性及び耐摩耗性の観点から到底使用に耐え難いという問題がある。
【0008】
このようなすべり部材をすべり免震装置に適用したものとして、不飽和ポリエステル樹脂に四ふっ化エチエン樹脂を添加した樹脂組成物をポリエチレンテレフタレートの織布に含浸してなる免震装置が提案されている(特許文献2所載)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この免震装置は、前記したすべり部材ではなし得なかった免震装置への適用を可能とするものであるが、やはりすべり免震装置としては低摩擦性の点で必ずしも満足のいくものではない。すなわち、すべり免震装置にあっては、摩擦係数の大小によって地震力によるすべり出しに大きく影響し、例えば摩擦係数が0.1程度の場合、地震力が0.1G(ガル)以上にならないとすべり免震装置はすべり出さず、免震装置の機能を阻害することになる。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低摩擦性を有し、大きな地震力から小さな地震力においても充分な免震機能を発揮させることができるすべり免震装置への適用を可能とするすべり部材及びすべり部材の製造方法並びにすべり部材を使用したすべり免震装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の態様のすべり部材は、有機繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方の繊維からなると共に繊維組織間隙に四ふっ化エチレン樹脂と熱硬化性合成樹脂とを混在させて充填してなる複数枚の織布を互いに重ね合わせて接合してなる表層材が繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体の表面に一体に接合されており、該表層材には少なくとも一つの凹部が形成されていると共に該表層材の表面には該織布の毛羽立ちが形成されており、該凹部には少なくとも常温硬化型エポキシ樹脂40〜55重量%と四ふっ化エチレン樹脂20〜35重量%と炭化水素系ワックス3〜10重量%とメラミンシアヌレート3〜10重量%と燐酸塩0.5〜3重量%とからなる潤滑組成物が充填されていると共に、該表層材の表面には毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層が形成されていることを特徴とする。
【0012】
第一の態様のすべり部材によれば、表層材には四ふっ化エチレン樹脂が分散含有されており、かつ表層材に形成された複数個の凹部には、少なくとも常温硬化型エポキシ樹脂40〜55重量%と四ふっ化エチレン樹脂20〜35重量%と炭化水素系ワックス3〜10重量%とメラミンシアヌレート3〜10重量%と燐酸塩0.5〜3重量%とからなる潤滑組成物が充填されていると共に表層材の表面には毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層が形成されているために、表層材の表面に形成された被覆層には織布の毛羽立ちが食い込んでそのすべり方向に関して表層材の表面との結合力が高められている結果、該被覆層に剥離等の不具合を生じることはない。万一、被覆層が摩耗しても、該表層材の凹部に充填された潤滑組成物が表層材の表面に繰り出される結果、長期にわたっての低摩擦性及び耐摩耗性が維持される。
【0013】
本発明の第二の態様のすべり部材は、第一の態様のすべり部材において、表層材は、有機繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方の繊維からなる織布25〜35重量%と熱硬化性合成樹脂30〜45重量%と四ふっ化エチレン樹脂25〜35重量%とを含んでいる。
【0014】
第二の態様のすべり部材によれば、織布を形成する繊維基材の繊維組織間隙に熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との混合物が充分に含浸されているので、表層材に形成された潤滑組成物の被覆層と相俟って低摩擦性及び耐摩耗性を長期にわたって維持することができる。そして、織布に含浸される熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との配合割合は、表層材としての摩擦摩耗特性の観点から決定され、熱硬化性合成樹脂の配合割合が30重量%未満では表層材としての接合強度が充分でなく、また45重量%を超えて配合すると同時に配合される四ふっ化エチレン樹脂の低摩擦性を損う虞がある。また四ふっ化エチレン樹脂は表層材に低摩擦性を付与するものであるが、配合割合が25重量%未満では表層材に充分な低摩擦性を付与し難く、また35重量%を超えて配合すると、熱硬化性合成樹脂の具有する接合性を低下させ、結果として表層材の剥離を惹起させる虞がある。
【0015】
本発明の第三の態様のすべり部材は、第一又は第二の態様のすべり部材において、有機繊維は、綿繊維及びアラミド繊維のうちの少なくとも一方の繊維を含んでおり、また本発明の第四の態様のすべり部材は、第一から第三のいずれかの態様のすべり部材において、無機繊維は、炭素繊維を含んでいる。
【0016】
これら有機繊維及び無機繊維は、表層材の骨格をなす織布を形成するものである。そして、織布の織物組織は特に限定されるものではなく、平織、斜文織、朱子織などいずれであってもよい。
【0017】
本発明の第五の態様のすべり部材は、第一から第四のいずれかの態様のすべり部材において、熱硬化性合成樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂のうちの少なくとも一つの樹脂を含んでいる。
【0018】
これら熱硬化性合成樹脂は、表層材を形成するにあたり、骨格をなす織布に含浸されてプレプレグを形成するものであり、とくに接合強度の高いエポキシ樹脂が好ましく使用される。
【0019】
本発明の第六の態様のすべり部材は、第一から第五のいずれかの態様のすべり部材において、凹部は、円柱状の凹部及び互いに直交する二つの矩形長溝からなる凹部のうちの少なくとも一方の凹部を含んでいる。
【0020】
表層材に形成される凹部は、主に潤滑組成物を保持するのものであり、とくに形状は限定されないが、加工性等の観点から円柱状の凹部又は互いに直交する二つの矩形長溝からなる凹部であることが好ましく、また、潤滑組成物を表層材の表面に万遍なく繰り出せる形状であれば一個でもよいが、複数個の凹部であるとこれを効果的になし得るので好ましい。
【0021】
本発明の第七の態様のすべり部材は、第一から第六のいずれかの態様のすべり部材において、潤滑組成物は、更に液状オイルを3〜10重量%含有している。
【0022】
液状オイルは、潤滑組成物からなる被覆層の低摩擦性、とくに静摩擦係数の大幅な低下に寄与するものであり、その配合量が3重量%未満では、被覆層の低摩擦性に寄与せず、また10重量%を超えて配合すると、潤滑組成物からなる被覆層の表層材表面への接合力を低下させる。したがって、液状オイルの配合量は3〜10重量%、好ましくは5〜7重量%である。斯かる液状オイルを含有した潤滑組成物の被覆層が形成されたすべり部材を用いたすべり免震装置においては、地震の大小に拘らずすべり出しがより速やかに行われる。
【0023】
本発明の第八の態様のすべり部材は、第一から第七のいずれかの態様のすべり部材において、炭化水素系ワックスは、炭素数がおおむね24以上のパラフィン系ワックス、炭素数がおおむね26以上のオレフィン系ワックス、炭素数がおおむね28以上のアルキルベンゼン及びマイクロクリスタリンワックスのうちの少なくとも一つからから選択されたものである。
【0024】
上記のいずれかの態様のすべり部材を製造するための本発明のすべり部材の製造方法は、有機繊維又は無機繊維からなる織布に四ふっ化エチレン樹脂を分散含有した熱硬化性合成樹脂ワニスをロール成形によって塗工して得たプレプレグを複数枚重ね合わせて表層材を形成する工程と、繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体を準備し、該表層材を基体の表面に載置すると共に、該表層材及び基体を加熱、加圧成形して該基体の表面に表層材を一体に接合する工程と、該表層材に少なくとも一つの凹部を形成すると共に該表層材の表面を研磨して該表層材の表面に織布の毛羽立ちを形成する工程と、凹部が形成された表層材の表面に、常温硬化型エポキシ樹脂40〜55重量%と四ふっ化エチレン樹脂20〜35重量%と炭化水素系ワックス3〜10重量%とメラミンシアヌレート3〜10重量%と燐酸塩0.5〜3重量%とからなる潤滑組成物を塗着する工程と、基体と表層材と塗着した潤滑組成物とを圧縮して、該表層材の凹部に該潤滑組成物を充填すると共に該表層材の表面に織布の毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層を形成する工程とを含んでいる。
【0025】
本発明の製造方法によれば、プレプレグを作製するにあたり、四ふっ化エチレン樹脂を分散含有した熱硬化性合成樹脂ワニスをロール成形にて織布に塗工することにより、織布を形成する繊維基材の繊維組織間隙に熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との混合物が充分に含浸される。また、表層材の表面の樹脂層を取除くべく研磨加工を施して該表層材の表面に織布の毛羽立ちを形成するので、該表層材の表面と潤滑組成物の被覆層との結合力を高めることができ、表層材と潤滑組成物の被覆層との間に剥離等を生じることがないすべり部材を製造できる。
【0026】
熱硬化性合成樹脂は、例えばその初期縮合物をメタノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの揮発性溶剤(使用する熱硬化性合成樹脂の種類によって種々の揮発性溶剤が用いられる)に溶かして得られるワニスの形態で適用される。ワニスは、固形分がおおむね30〜45重量%、ワニスの粘度はおおむね100〜700センチポアズ(cP)である。これに四ふっ化エチレン樹脂粉末を投入して撹拌混合すると、四ふっ化エチレン樹脂粉末の混入によって混合液の見掛けの粘度は上昇する。混合液の粘度は、該混合液中の四ふっ化エチレン樹脂粉末を均一な分散状態に保つ上では高いほうが好ましいが、あまり粘度が高すぎると織布を形成する繊維基材の繊維組織間隙への混合液の加圧充填の段階で混合液がロールに付着して作業性を悪くするばかりでなく、織布への塗着そのものが困難となる。また、混合液の粘度が低すぎると混入された四ふっ化エチレン樹脂粉末の均一な分散性を損うばかりでなく、混合液の加圧段階で該混合液は四ふっ化エチレン樹脂粉末を伴って織布の裏面に滲み出してしまう虞がある。したがって、混合液の粘度には留意しなければならないが、おおむね800〜5000cP、就中1000〜4000cPが好ましい。
【0027】
上部構造物と下部構造物との間に配設される本発明の第一の態様のすべり免震装置は、上部構造物と下部構造物のうちのいずれか一方の構造物に固定されるすべり板と、上部構造物と下部構造物のうちのいずれか他方の構造物に固定されると共に被覆層においてすべり板に摺動自在に接触する上記のいずれかの態様のすべり部材とを具備している。
【0028】
第一の態様のすべり免震装置によれば、上部構造物又は下部構造物に固定されたすべり部材の表層材には四ふっ化エチレン樹脂が分散含有されており、かつ表層材に形成された少なくとも一つの凹部には、少なくとも常温硬化型エポキシ樹脂40〜55重量%と四ふっ化エチレン樹脂20〜35重量%と炭化水素系ワックス3〜10重量%とメラミンシアヌレート3〜10重量%と燐酸塩0.5〜3重量%とからなる潤滑組成物が充填されていると共に表層材の表面には毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層が形成されており、この表層材の凹部及び表層材の表面に充填被覆された被覆層が下部構造物又は上部構造物に固定されたすべり板と摺動することにより、低摩擦性を発揮し、地震力の大小に拘らずすべり出しが速やかに行われるので、大きな地震力から小さな地震力においても充分な免震機能を発揮させることができる。
【0029】
本発明の第二の態様のすべり免震装置は、第一の態様のすべり免震装置において、すべり板は、その表面に四ふっ化エチレン樹脂を含有するポリアミドイミド樹脂の被覆層を具備しており、被覆層においてポリアミドイミド樹脂の被覆層を介してすべり板に摺動自在に接触するようになっている。
【0030】
第二の態様のすべり免震装置によれば、すべり板は、その表面に形成された四ふっ化エチレン樹脂を含有するポリアミドイミド樹脂の被覆層を介してすべり部材の表層材の凹部及び表面に充填被覆された潤滑組成物の被覆層と摺動することになるので、とくに高面圧時のこれらの間の摩擦係数が0.03前後の低摩擦性を発揮し、地震力の大小に拘らずすべり出しが速やかに行われることになる結果、大きな地震力から小さな地震力においても充分な免震機能を発揮させることができる。
【0031】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0032】
【発明の実施の形態】
図1から図3において、すべり部材1は、繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる四角柱の基体2と、該基体2の一方の面3に一体に接合された表層材4と、該表層材4に形成された複数個の凹部5と、該表層材4の凹部5に充填され、かつ表層材4の表面6に形成された毛羽立ち7を介して該表層材4の表面6に被覆された潤滑組成物からなる被覆層8とからなる。なお、すべり部材1は、図4に示すように円柱をなすものであってもよく、更に、凹部5は、図4に示すように互いに直交する二つの矩形長溝からなる一個の凹部であってもよい。
【0033】
図5に示すすべり部材1の基体2の製造装置において、アンコイラ9に巻かれた繊維織布からなる補強基材10は、送りローラ11によって熱硬化性合成樹脂ワニス13を貯えた容器14に送られ、容器14内に設けられた案内ローラ15及び16によって容器14内に貯えられた熱硬化性合成樹脂ワニス13内を通過せしめられることにより、該補強基材10の表面に該熱硬化性合成樹脂ワニス13が塗工される。ついで、熱硬化性合成樹脂ワニス13が塗工された補強基材10は送りローラ17によって圧縮ロール18及び19に送られ、該圧縮ロール18及び19によって補強基材10の表面に塗工された熱硬化性合成樹脂ワニス13が繊維組織間隙にまで含浸せしめられる。そして、熱硬化性合成樹脂ワニス13が含浸塗布された補強基材10に対して乾燥炉20内で溶剤を飛ばすと同時に樹脂の反応が進められ、これにより成形可能なプレプレグ(樹脂加工基材)21が作製される。このようにして得られたプレプレグ21を図6に示すように所望の寸法に切断してこれを複数枚重ね合わせて積層にしたのち、積層方向に圧縮成形して繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体2が作製される。
【0034】
基体2に用いられる繊維織布としては、綿布、ガラス繊維布、炭素繊維布などが好適である。また、熱硬化性合成樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが好適であり、これら熱硬化性合成樹脂の揮発性溶剤としては、メタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど使用する熱硬化性合成樹脂によって適宜選択される。そして、熱硬化性合成樹脂を揮発性溶剤に溶かして形成される熱硬化性合成樹脂ワニスの固形分は、おおむね30〜65重量%であり、樹脂ワニスの粘度は、おおむね800〜5000cP、就中1000〜4000cPが好ましい。
【0035】
表層材4は、前記基体2の製造方法で使用した図5に示す製造装置と同様の製造装置によって同様の製造方法によって作製される。すなわち、アンコイラ9に巻かれた有機繊維又は無機繊維からなる織布22は、送りローラ11によって四ふっ化エチレン樹脂粉末と熱硬化性合成樹脂ワニスとの混合液23を貯えた容器14に送られ、容器14内に設けられた案内ローラ15及び16によって容器14内に貯えられた混合液23内を通過せしめられることにより、該織布22の表面に該混合液23が塗工される。ついで、混合液23が塗工された織布22は送りローラ17によって圧縮ロール18及び19に送られ、該圧縮ロール18及び19によって織布22の表面に塗工された混合液23が繊維組織間隙にまで含浸せしめられる。そして、混合液23が含浸塗布された織布22に対して乾燥炉20内で溶剤を飛ばすと同時に樹脂の反応が進められ、これにより成形可能なプレプレグ(樹脂加工基材)24が作製される。このようにして得られたプレプレグ24を図6に示すように所望の寸法に切断し、これを複数枚重ね合わせて積層にしたのち、積層方向に圧縮成形して表層材4が作製される。
【0036】
表層材4に用いられる織布としては、綿繊維、アラミド繊維などの有機繊維からなる織布又は炭素繊維などの無機繊維からなる織布が好適である。とくに、有機繊維としてアラミド繊維を使用する場合は、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維が好ましい。そして、これら繊維からなる織布の織物組織は、特に限定されるものではなく、平織、斜文織、朱子織などいずれであってもよい。
【0037】
熱硬化性合成樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが好適であり、これら熱硬化性合成樹脂の揮発性溶剤としては、メタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど使用する熱硬化性合成樹脂によって適宜選択される。
【0038】
四ふっ化エチレン樹脂は、成形用又は固体潤滑用の粉末が使用されるが、上記熱硬化性合成樹脂との混合により、該熱硬化性合成樹脂への均一分散性の観点からは固体潤滑用の粉末が好ましく、その平均粒径はおおよそ1〜50μm、好ましくは1〜30μmである。このような四ふっ化エチレン樹脂の具体例としては、三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7J、TLP−10(いずれも商品名)」、旭硝子社製の「フルオンG163(商品名)」、ダイキン工業社製の「ポリフロンM15、ルブロンL5(いずれも商品名)」、喜多村社製の「KTL610、KTL350、KTL8N(いずれも商品名)」などが挙げられる。
【0039】
そして、表層材4を形成する織布と熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との割合は、織布25〜35重量%、熱硬化性合成樹脂30〜45重量%、四ふっ化エチレン樹脂25〜35重量%が好ましい範囲である。この割合において、織布に含浸塗着される熱硬化性合成樹脂と四ふっ化エチレン樹脂との配合割合は、表層材4としての摩擦摩耗特性の観点から決定される。熱硬化性合成樹脂の配合割合が30重量%未満では表層材4としての接合強度が充分でなく、また45重量%を超えて配合すると同時に配合される四ふっ化エチレン樹脂の低摩擦性を損う虞がある。また、四ふっ化エチレン樹脂は表層材に低摩擦性を付与するものであるが、配合割合が25重量%未満では表層材に充分な低摩擦性を付与し難く、また35重量%を超えて配合すると、熱硬化性合成樹脂の具有する接合性を低下させ、結果として表層材の剥離を惹起させる虞がある。
【0040】
表層材4は、前記基体2の一方の面3に接着剤により一体に接合してもよいが、前記基体2を形成するプレプレグ21を所望の寸法に切断し、これを複数枚重ね合わせた積層基材の一方の面に、表層材4を形成する四ふっ化エチレン樹脂粉末を分散含有したプレプレグ24の複数枚を重ね合わせて積層にし、積層方向に加熱、加圧成形して一体に接合させることが好ましい。
【0041】
このように基体2の一方の面3上に一体に接合された表層材4には、その積層方向(厚さ方向)に凹んだ複数個の凹部5が形成されると共に、該表層材4の表面を該表面に塗着した樹脂層を取除くべく、研磨加工すると共にこの研磨加工でもって該表層材4の表面に織布の毛羽立ち7を形成する。
【0042】
表層材4に形成される複数個の凹部5は、表層材4の表面の面積に占める凹部5の開口部の面積の総和が20〜30%の割合となるように形成される。この凹部5は、後述する潤滑組成物を充填保持するものであり、潤滑組成物の低摩擦性等の摩擦特性を良好に発揮させるためには、表層材4の表面の面積に占める凹部5の開口部の面積の総和が少なくとも20%必要とされる。しかしながら、表層材4の表面の面積に占める凹部5の開口部の面積の総和が30%を超えると表層材4の強度低下を来すことになる。
【0043】
凹部5は、ドリル等を用いた穴あけ加工でもって形成してもよいが、プレプレグ21及び24の両熱硬化性合成樹脂の硬化と共にプレス加工でもって形成してもよい。
【0044】
表層材4の表面の研磨加工による毛羽立ち7は、後述する潤滑組成物を表層材4の表面に被覆するさいに、毛羽立ち7が被覆層に食い込み、これにより表層材4の表面と潤滑組成物の被覆層8との結合力が高められる。
【0045】
表層材4に形成された複数個の凹部5及び表層材4の表面に充填被覆される潤滑組成物は、常温硬化型エポキシ樹脂40〜55重量%と四ふっ化エチレン樹脂20〜35重量%と炭化水素系ワックス3〜10重量%とメラミンシアヌレート3〜10重量%と燐酸塩0.5〜3重量%とを含んでいる。
【0046】
潤滑組成物において、常温硬化型エポキシ樹脂は、該潤滑組成物中の四ふっ化エチレン樹脂成分、炭化水素系ワックス成分及びメラミンシアヌレート成分同士を接合する接合剤の役割と潤滑組成物を表層材の凹部及び表面に接合させる接合剤の役割を担うものである。この常温硬化型エポキシ樹脂の配合量が40重量%未満では上記接合剤としての役割が充分発揮されず、また55重量%を超えて配合すると、該エポキシ樹脂の接合剤としての役割は高まる反面、被覆層としたときに被覆層の表面に露出する割合が多くなりすぎ、上記四ふっ化エチレン樹脂成分、炭化水素系ワックス成分及びメラミンシアヌレート成分の効果を失わせることになる。したがって、常温硬化型エポキシ樹脂の配合量は40〜55重量%、好ましくは45〜50重量%である。
【0047】
四ふっ化エチレン樹脂成分は、潤滑組成物からなる被覆層に低摩擦性を付与するものである。この四ふっ化エチレン樹脂成分の配合量が20重量%未満では、潤滑組成物からなる被覆層への低摩擦性の付与が充分でなく、また35重量%を超えて配合すると被覆層の表面に露出する割合が多くなり、被複層の耐摩耗性を低下させる。したがって、四ふっ化エチレン樹脂成分の配合量は20〜35重量%、好ましくは25〜30重量%である。そして、四ふっ化エチレン樹脂としては、前述した四ふっ化エチレン樹脂と同様、成形用又は固体潤滑用の粉末が使用される。
【0048】
炭化水素系ワックス成分は、潤滑組成物からなる被覆層に上記四ふっ化エチレン樹脂成分と共に低摩擦性に寄与する。配合量が3重量%未満では低摩擦性を充分発揮し得ず、また10重量%を超えて配合すると潤滑組成物からなる被覆層と表層材の表面との接合力を弱める結果となる。したがって、炭化水素系ワックス成分の配合量は3〜10重量%、好ましくは5〜7重量%である。そして、炭化水素系ワックスとしては、炭素数がおおむね24以上のパラフィン系ワックス、炭素数がおおむね26以上のオレフィン系ワックス、炭素数がおおむね28以上のアルキルベンゼン及びマイクロクリスタリンワックスから選択される。とくに、炭素数がおおむね24以上のパラフィン系ワックス、具体的には日興ファインプロダクツ社製の「ゴデスワックス(商品名)」を好ましいものとして挙げることができる。
【0049】
メラミンシアヌレート成分は、メラミンとシアヌル酸又はイソシアヌル酸との付加化合物で、6員環構造のメラミン分子とシアヌル酸(イソシアヌル酸)分子が水素結合により平面状に配列し、その平面が弱い結合力で層状に重なり合って劈開性を有するものである。このメラミンシアヌレート成分は、とくに潤滑組成物からなる被覆層の耐摩耗性及び耐荷重性を向上させる役割を果たす。配合量が3重量%未満では、潤滑組成物からなる被覆層の耐摩耗性及び耐荷重性の向上に寄与せず、また10重量%を超えて配合すると却って被覆層の耐摩耗性及び耐荷重性を損うことになる。したがって、メラミンシアヌレート成分の配合量は、3〜10重量%、好ましくは5〜7重量%である。
【0050】
燐酸塩成分は、それ自体では潤滑性を示さないが、潤滑組成物からなる被覆層と相手材との摺動において、相手材表面に被覆層の潤滑被膜の造膜性を助長する役割を果たす。配合量が0.5重量%未満では、上記役割が充分発揮されず、また3重量%を超えて配合すると相手材表面への潤滑被膜の移着が過多となって却って被覆層の耐摩耗性を低下させる。したがって、燐酸塩成分の配合量は0.5〜3重量%、好ましくは1.0〜2.0重量%である。そして、燐酸塩としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の第三燐酸塩、第二燐酸塩、ピロリン酸塩、亜燐酸塩又はメタリン酸塩が挙げられる。具体的には、燐酸三リチウム、燐酸水素二リチウム、ピロリン酸リチウム、燐酸三カルシウム、燐酸一水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、メタ燐酸リチウム、メタ燐酸マグネシウム、メタ燐酸カルシウムなどである。
【0051】
上記常温硬化型エポキシ樹脂40〜55重量%と四ふっ化エチレン樹脂20〜35重量%と炭化水素系ワックス3〜10重量%とメラミンシアヌレート3〜10重量%と燐酸塩0.5〜3重量%とからなる潤滑組成物に、さらに液状オイルを3〜10重量%の割合で配合することができる。この液状オイルは、潤滑組成物からなる被覆層の低摩擦性、とくに静摩擦係数の大幅な低下に寄与する。配合量が3重量%未満では、被覆層の低摩擦性に寄与せず、また10重量%を超えて配合すると、潤滑組成物からなる被覆層の表層材表面への接合力を低下させる。したがって、液状オイルの配合量は3〜10重量%、好ましくは5〜7重量%である。そして、液状オイルとしては、パラフィンオイルなどが好ましいものとして例示される。
【0052】
上述した成分組成からなる潤滑組成物は、次のようにして表層材4の表面に充填被覆される。基体2の一方の表面に一体に接合されかつ複数個の凹部5及び織布の毛羽立ち7が形成された表層材4の表面に潤滑組成物を塗着し、基体2と表層材4と該表層材4の凹部5を含む表面に塗着した潤滑組成物とを圧縮し所定時間放置することにより、接合剤としてのエポキシ樹脂が硬化して該表層材4の凹部5に該潤滑組成物が充填されると共に該表層材4の表面に織布の毛羽立ち7を介して該潤滑組成物の被覆層8が形成される。この被覆層8に織布の毛羽立ち7が食い込むことによって、該被覆層8と表層材4の表面との接合力が高められる。
【0053】
このようにして、繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体2と、該基体2の一方の面3に一体に接合された表層材4と、該表層材4に形成された複数個の凹部5と、該表層材4の凹部5に充填され、かつ表層材4の表面6に形成された毛羽立ち7を介して該表層材4の表面6に被覆された潤滑組成物からなる被覆層8とからなるすべり部材1が作製される。
【0054】
このすべり部材1を使用したすべり免震装置を図7に示す。図7において、建物、橋梁、高架道路等の上部構造物Gには、前記すべり部材1が固定されており、基礎等の下部構造物Bにはすべり板25が固定されており、該すべり板25の表面とすべり部材1の表層材4の表面6の凹部5及び該表層材4の表面6に織布の毛羽立ち7を介して充填被覆された潤滑組成物の被覆層8とが摺動面となっている。
【0055】
すべり板25としては、ステンレス鋼板(SUS403)又はステンレス鋼板とその一方の表面に被覆層26を有するすべり板が使用される。
【0056】
ステンレス鋼板の一方の表面に被覆層26を形成する方法について述べる。ポリアミドイミド樹脂粉末に対し25〜75重量%の四ふっ化エチレン樹脂粉末を配合して混合物を形成したのち、混合物を有機溶剤に溶かして固形分が30〜40重量%の溶液を作製する。ショットブラスト、脱脂など通常一般に行われている処理を施したステンレス鋼板に刷毛塗り、吹き付けなどの手段により塗膜を形成し、硬化処理を行って硬化塗膜を得る。塗膜形成後の硬化は、塗膜形成後、自然乾燥によるか、熱風乾燥炉で30分間程度予備乾燥を行って溶剤を逸散させた後、230℃で30分間程度加熱焼付して行う。このようにして得られる被覆層26はおおよそ20〜25μmの厚さである。
【0057】
被覆層26を有するすべり板25は、すべり部材1の表層材4の凹部5及び表層材4の表面6に充填被覆された被覆層8と被覆層26において摺動することになり、低摩擦性を発揮し、地震力の大小に拘らずすべり出しが速やかに行われるので、大きな地震力から小さな地震力においても充分な免震機能を発揮させることができる。
【0058】
【実施例】
つぎに本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何等限定されないのである。
【0059】
〔すべり板の作製〕
幅62mm、長さ178mmのステンレス鋼板(SUS304)を準備し、この鋼板の一方の表面をショットブラストにより粗面化すると共に脱脂処理を施した。四ふっ化エチレン樹脂粉末として、ダイキン工業社製の「ルブロンL5」を35重量%含有するポリアミドイミド樹脂粉末を有機溶剤に溶かして得た固形分が30重量%の溶液を、上記鋼板の粗面化した面に吹き付け手段により塗膜を形成し、熱風乾燥炉で30分間予備乾燥を行って溶剤を逸散させた後、230℃で30分間加熱焼付を行い、厚さ23μmの被覆層を形成し、これをすべり板とした。
【0060】
〔基体の作製〕
強化繊維布として平織綿布を準備し、該綿布を送りロールにて、樹脂固形分64.5重量%のフェノール樹脂ワニスを貯えた容器内を通過させて、該綿布の表面に樹脂ワニスを塗工し、圧縮ロールによって綿布の表面に塗工された樹脂ワニスを繊維組織間隙にまで含浸せしめたのち、乾燥炉内で溶剤を飛ばすと同時に樹脂の反応を進めプレプレグ(樹脂加工綿布)を得た。このプレプレグを直径60mmの円形状に切断し、これを5枚重ね合わせた。
【0061】
〔表層材の作製〕
織布として、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維(帝人社製の「テクノーラ(商品名)」)を平織したアラミド繊維織布を準備し、該アラミド繊維織布を送りロールにて、エポキシ樹脂と四ふっ化エチレン樹脂(ダイキン工業社製の「ルブロンL5(商品名)」)との混合樹脂ワニスを貯えた容器内を通過させて、該アラミド繊維織布の表面に混合樹脂ワニスを塗工し、圧縮ロールによってアラミド繊維織布の表面に塗工された混合樹脂ワニスを繊維組織間隙にまで含浸せしめたのち、乾燥炉内で溶剤を飛ばすと同時に樹脂の反応を進め、アラミド繊維織布30重量%とエポキシ樹脂39重量%と四ふっ化エチレン樹脂31重量%とからなるプレプレグ(樹脂加工アラミド繊維織布)を得た。このプレプレグを直径60mmの円形状に切断し、これを3枚重ね合わせた。
【0062】
前記5枚重ね合わせたプレプレグ(樹脂加工綿布)の上に、3枚重ね合わせたプレプレグ(樹脂加工アラミド繊維織布)を載せ、厚さ方向に成形圧力70kg/cm2、成形温度160℃、成形時間10分間の条件で圧縮成形し、基体と表層材とを一体に接合した積層体(基体の厚さ7.5mm、表層材の厚さ3mm)を得た。
【0063】
この積層体の表層材に直径8mm、深さ3mmの円形凹部を12個形成(表層材の表面の面積に占める凹部の開口部の面積の総和は21%)すると共に、表層材の表面に形成された樹脂層を研磨加工を施して取除き、該表層材の表面に研磨加工による毛羽立ちを形成した。
【0064】
〔潤滑組成物(1)の作製〕
常温硬化型エポキシ樹脂(常温硬化型二液性エポキシ樹脂:レジナス化成社製「レジナスボンド(商品名)」)40〜55重量%と、四ふっ化エチレン樹脂粉末として三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7J(商品名)」20〜35重量%と、炭化水素系ワックスとして日興ファインプロダクツ社製の「ゴデスワックス(商品名)」3〜10重量%と、メラミンシアヌレートとして三菱化学社製の「MCA(商品名)」3〜10重量%と、燐酸塩としてピロ燐酸カルシウム0.5〜3重量%とを混合して潤滑組成物(1)を作製した。
【0065】
〔潤滑組成物(2)の作製〕
常温硬化型エポキシ樹脂(常温硬化型の二液性エポキシ樹脂:レジナス化成社製「レジナスボンド(商品名)」)40〜55重量%と、四ふっ化エチレン樹脂粉末として三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7J(商品名)」20〜35重量%と、炭化水素系ワックスとして日興ファインプロダクツ社製の「ゴデスワックス(商品名)」3〜10重量%と、メラミンシアヌレートとして三菱化学社製の「MCA(商品名)」3〜10重量%と、燐酸塩としてピロ燐酸カルシウム0.5〜3重量%と、液状オイルとしてパラフィンオイル3〜10重量%とを混合して潤滑組成物(2)を作製した。
【0066】
実施例1〜3
上記積層体の表層材に潤滑組成物(1)を塗着した後、基体と表層材と該表層材の凹部を含む表面に塗着した潤滑組成物(1)とを圧縮し、室温に放置して潤滑組成物(1)中の常温硬化型エポキシ樹脂を硬化させ、該表層材の凹部に該潤滑組成物(1)を充填すると共に該表層材の表面に織布の毛羽立ちを介して該潤滑組成物(1)の被覆層を形成した。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例4〜6
上記積層体の表層材に潤滑組成物(2)を塗着した後、基体と表層材と該表層材の凹部を含む表面に塗着した潤滑組成物(2)とを圧縮し、室温に放置して潤滑組成物(2)中の常温硬化型エポキシ樹脂を硬化させ、該表層材の凹部に該潤滑組成物(2)を充填すると共に該表層材の表面に織布の毛羽立ちを介して該潤滑組成物(2)の被覆層を形成した。
【0069】
【表2】
【0070】
比較例
アラミド繊維織布30重量%とエポキシ樹脂39重量%と四ふっ化エチレン樹脂31重量%とからなるプレプレグ3枚を、平織綿布にフェノール樹脂ワニスを含浸塗工したプレプレグ5枚の上に載せ、これらを圧縮成形し、基体と表層材とを一体に接合した積層体をすべり部材とした。
【0071】
つぎに、上記実施例1〜6のすべり部材及び比較例からなるすべり部材について、下記に示す試験条件1及び試験条件2にて摩擦性能を試験した。
【0072】
<試験条件1>
面圧 14.7MPa
加振速度 1kine 20kine
相手材 上記すべり板を使用
試験方法 二軸試験機の台上に被覆層を上方にしてすべり板を固定し、該すべり板の被覆層にすべり部材の表層材を摺動自在に接触させると共に、該すべり部材に面圧が14.7MPaとなるように荷重を加え、すべり板側に図8に示す合成波を供給し、該合成波にて加振(振幅±65mm)を連続して5回行った。
【0073】
<試験条件2>
面圧 29.4MPa
加振速度 1kine 20kine
相手材 上記すべり板を使用
試験方法 二軸試験機の台上に被覆層を上方にしてすべり板を固定し、該すべり板の被覆層にすべり部材の表層材を摺動自在に接触させると共に、該すべり部材に面圧が29.4MPaとなるように荷重を加え、試験条件1と同様、すべり板側に図8に示す合成波を供給し、該合成波にて加振を連続して5回行った。
【0074】
上記試験条件1及び試験条件2で行った実施例1〜6及び比較例からなるすべり部材の加振速度1kine及び加振速度20kineでの摩擦係数を表3(試験条件1)及び表4(試験条件2)に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
以上の試験結果から、実施例1〜6のすべり部材とすべり板との組合わせにおいては、面圧14.7MPaで加振速度が1kine及び面圧29.4MPaで20kineの条件では、いずれの条件においても静摩擦係数が低く、動摩擦係数が0.05以下の低い値を示し、とくに面圧29.4MPaで加振速度1kine及び20kineの条件では、動摩擦係数が0.03前後という極めて低い値を示した。
【0078】
これらの結果をすべり免震装置に適用した場合、すべり部材とすべり板との組合わせにおける静摩擦係数が低い値を示し、動摩擦係数が0.05以下、とくに面圧29.4MPaの高面圧下においては動摩擦係数が0.03前後の値を示すことにより、すべり出しの加速度を小さく保ったまま免震周期の長周期化が可能となる。また、すべり免震装置の設計自由度を大幅に増大させることができる。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、大きな地震力から小さな地震力においても充分な免震機能を発揮させることができるすべり部材及びすべり部材の製造方法並びにすべり部材を使用したすべり免震装置を提供することができる。本発明のすべり部材を使用したすべり免震装置においては静摩擦係数が低い値を示し、動摩擦係数が0.05以下、とくに面圧29.4MPaの高面圧下においては動摩擦係数が0.03前後の値を示すことからすべり出しの加速度を小さく保ったまま免震周期の長周期化が可能となるなるばかりでなく、すべり免震装置の設計自由度を大幅に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のすべり部材の平面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】本発明のすべり部材の他の例の平面図である。
【図5】製造工程を示す説明図である。
【図6】プレプレグの積層状態を示す斜視図である。
【図7】すべり免震装置を示す説明図である。
【図8】試験に使用した合成波を示すグラフである。
【符号の説明】
1 すべり部材
2 基材
4 表層材
5 凹部
7 毛羽立ち
8 被覆層
25 すべり板
Claims (11)
- 有機繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方の繊維からなると共に繊維組織間隙に四ふっ化エチレン樹脂と熱硬化性合成樹脂とを混在させて充填してなる複数枚の織布を互いに重ね合わせて接合してなる表層材が繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体の表面に一体に接合されており、該表層材には少なくとも一つの凹部が形成されていると共に該表層材の表面には該織布の毛羽立ちが形成されており、該凹部には少なくとも常温硬化型エポキシ樹脂40〜55重量%と四ふっ化エチレン樹脂20〜35重量%と炭化水素系ワックス3〜10重量%とメラミンシアヌレート3〜10重量%と燐酸塩0.5〜3重量%とを含む潤滑組成物が充填されていると共に、該表層材の表面には毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層が形成されていることを特徴とするすべり部材。
- 表層材は、有機繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方の繊維からなる織布25〜35重量%と熱硬化性合成樹脂30〜45重量%と四ふっ化エチレン樹脂25〜35重量%とを含んでいる請求項1に記載のすべり部材。
- 有機繊維は、綿繊維及びアラミド繊維のうちの少なくとも一方を含んでいる請求項1又は2に記載のすべり部材。
- 無機繊維は炭素繊維を含んでいる請求項1から3のいずれか一項に記載のすべり部材。
- 熱硬化性合成樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂のうちの少なくとも一つの樹脂を含んでいる請求項1から4のいずれか一項に記載のすべり部材。
- 凹部は、円柱状の凹部又は互いに直交する二つの矩形長溝からなる凹部のうちの少なくとも一方の凹部を含んでいる請求項1から5のいずれか一項に記載のすべり部材。
- 潤滑組成物は、さらに液状オイルを3〜10重量%含有している請求項1から6のいずれか一項に記載のすべり部材。
- 炭化水素系ワックスは、炭素数がおおむね24以上のパラフィン系ワックス、炭素数がおおむね26以上のオレフィン系ワックス、炭素数がおおむね28以上のアルキルベンゼン及びマイクロクリスタリンワックスのうちの少なくとも一つから選択されたものである請求項1から7のいずれか一項に記載のすべり部材。
- 有機繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方の繊維からなる織布に四ふっ化エチレン樹脂を分散含有した熱硬化性合成樹脂ワニスをロール成形によって塗工して得たプレプレグを複数枚重ね合わせて表層材を形成する工程と、
繊維織布強化熱硬化性合成樹脂からなる基体を準備し、該表層材を基体の表面に載置すると共に、該表層材及び基体を加熱、加圧成形して該基体の表面に表層材を一体に接合する工程と、
該表層材に少なくとも一つの凹部を形成すると共に該表層材の表面を研磨して該表層材の表面に織布の毛羽立ちを形成する工程と、
凹部が形成された表層材の表面に、常温硬化型エポキシ樹脂40〜55重量%と四ふっ化エチレン樹脂20〜35重量%と炭化水素系ワックス3〜10重量%とメラミンシアヌレート3〜10重量%と燐酸塩0.5〜3重量%とからなる潤滑組成物を塗着する工程と、
基体と表層材と塗着した潤滑組成物とを圧縮して、該表層材の凹部に該潤滑組成物を充填すると共に該表層材の表面に織布の毛羽立ちを介して該潤滑組成物の被覆層を形成する工程と、
を含む請求項1から8のいずれか一項に記載のすべり部材の製造方法。 - 上部構造物と下部構造物との間に配設されるすべり免震装置であって、上部構造物と下部構造物のうちのいずれか一方の構造物に固定されるすべり板と、上部構造物と下部構造物のうちのいずれか他方の構造物に固定されると共に被覆層においてすべり板に摺動自在に接触する請求項1から8に記載のすべり部材とを具備したすべり免震装置。
- すべり板は、その表面に四ふっ化エチレン樹脂を含有するポリアミドイミド樹脂の被覆層を具備しており、被覆層においてポリアミドイミド樹脂の被覆層を介してすべり板に摺動自在に接触するようになっている請求項10に記載のすべり免震装置。
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