JP4823596B2 - セメント焼成設備における排ガスの処理方法及び処理装置 - Google Patents
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図2は、従来の塩素バイパス装置を付設したセメント製造設備を示す模式図であり、図において、1はセメント原料貯蔵庫、2はセメント原料を乾燥粉砕する原料ミル、3はセメント原料粉を分離するためのサイクロン、4はサスペンションプレヒータ、5は仮焼炉、6はセメントキルン、7はセメントキルン6の窯尻部、8はセメントキルン6内に燃料を噴出させるバーナー部、9はクリンカクーラ、10、11は電気集塵機、12、13は排気煙突、14は吸引ファン(IDF)、15は冷却ファン、16は吸引ファンである。
また、31は塩素バイパス装置であり、セメントキルン6から排出される排ガスの一部を抽気するプローブ(抽気手段)32と、冷却チャンバ33と、バッグフィルタ34と、冷却チャンバ33及びバッグフィルタ34からのダスト(塵埃)を貯留するダストサイロ35と、冷却ファン36、37と、吸引ファン38とにより構成されている。
このセメントキルン6内で存在する気体状態のSOxは、サスペンションプレヒータ4にてセメントの粉末原料と反応することによってほぼ完全に脱硫される。したがって、セメント焼成設備から排出される排ガスには、数ppmのSOxが存在するのみである。
また、塩素バイパス装置の排ガスの戻し先として、クリンカクーラの空気取り入れ口やバーナー部の空気取り入れ口の他に、仮焼炉、NSPキルンの仮焼炉に接続されている燃焼空気用ダクト、SPキルンのライジングダクトのいずれかに導入する方法も提案されている(特許文献2)。
これらの排ガスの処理方法においては、戻される排ガスは、燃焼用空気としてセメント焼成系で使用されるため、この排ガスに含まれるSOxはサスペンションプレヒータを通過する間に脱硫される。したがって、セメント原料焼成系から排出される排出ガス中のSOxは、数ppm以下に保持される。
例えば、塩素バイパス装置31の排ガスには、セメントキルン6の窯尻部7から抽気した燃焼ガスの他に多量の冷却空気が混合している。この排ガスを仮焼炉5もしくは仮焼炉5に接続される燃焼用空気ダクト24に導入して処理を行う場合は、排ガスに含まれる空気は仮焼炉5の燃料の燃焼用空気として利用されるが、燃焼ガスは何等利用されることはない。
また、仮焼炉に接続される燃焼用空気ダクト24内の燃焼用空気は、クリンカクーラ9で800〜900℃まで加熱されたものであるが、塩素バイパス装置31の排ガスの温度は100〜150℃と燃焼用空気ダクト24内の燃焼用空気と比較して低温である。したがって、仮焼炉に導入される燃焼用空気の一部を塩素バイパス装置31の排ガスに置き換えると、エネルギー利用効率が極端に劣ることとなる。
また、塩素バイパス装置の排ガスをバーナー部の空気取り入れ口へ戻す場合では、エネルギー利用効率は大きく劣らないが、塩素バイパス装置の全ての排ガスを戻すことができない。また、塩素バイパス装置の排ガスをクリンカクーラの空気取り入れ口へ戻す場合では、長距離のガス処理経路が必要になり、設備が大掛かりになる等の問題点があった。
(1) セメントキルン6の窯尻部7から抽気された高温ガスが冷却ファン36からの冷却空気により急激に冷却されることにより、塩素バイパス装置31内が脱硫反応速度が遅い温度領域となり、したがって、十分な脱硫が行われない。
(2) 塩素バイパス装置31での処理ガス中に含まれるダスト濃度が、サスペンションプレヒータ4内の粉末原料の濃度と比較して1/20〜1/100と極端に少なく、したがって、十分な脱硫が行われない。
(3) 塩素バイパス装置31内における抽気ガスの滞留時間が、サスペンションプレヒータ4と比較して短時間であり、したがって、十分な脱硫反応時間が得られない。
このように、従来では、塩素バイパス装置31内での脱硫率(脱硫反応率)が、サスペンションプレヒータ4内で生じる脱硫反応に比較して極端に小さいという問題点があり、セメント焼成設備の操業における悪影響が大きくても、塩素バイパス装置31の排ガス処理が必要であった。このため、塩素バイパス装置31の排ガスを処理するにあたって、セメント製造設備の操業に与える影響が小さく、しかも大掛かりな設備を必要としない簡便な方法で処理できる技術が求められていた。
また、塵埃捕集工程にて捕集された少なくとも一部の塵埃を脱硫物質として循環使用することにより、塵埃捕集工程から系外に排出される塵埃が増加する虞がなくなる。これにより、多量の塵埃を処理する必要がなくなり、しかも、塵埃の処理が容易となる。
この処理方法では、石灰石、生石灰、消石灰、セメント原料、仮焼されたセメント原料、前記塵埃捕集工程にて捕集された塵埃等の石灰系の粉末状物質を使用することにより、SOxの脱硫率を高めることが可能となる。しかも、脱硫した後に捕集した塵埃を水洗等を行うことにより、容易にセメントに石膏原料として添加処理することが可能となる。
この処理方法では、捕集される塵埃の60%以上を粉末状の脱硫物質として添加することにより、従来の無添加の場合と比較して、塵埃濃度を3倍以上とすることとなり、必要な脱硫率を得ることが可能となる。
また、塵埃捕集手段にて捕集された少なくとも一部の塵埃を脱硫物質の一部として循環使用することにより、塵埃捕集手段から系外に排出される塵埃が増加する虞がなくなる。これにより、多量の塵埃を処理する必要がなくなり、しかも、塵埃の処理が容易となる。
なお、本形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
循環ルートAは、冷却チャンバ44及びバッグフィルタ45により捕集されたダストを分取する循環ダスト分取ダンパ51、ダストを貯留するダストサイロ52、ダストサイロ52から所定量のダストを供給する循環ダスト供給装置53、循環ダストを後述する空気輸送装置に供給する循環ダスト供給ライン54、冷却ファン55を用いて循環ダストを空気輸送する循環ダスト空気輸送装置56、循環ダストおよび冷却空気を空気輸送する循環ダストおよび冷却空気供給ライン57を経由するルートである。
また、循環ルートBは、循環ダスト分取ダンパ51、分取されたダストを空気輸送装置56に供給する循環ダスト供給ライン58、循環ダスト空気輸送装置56、循環ダストおよび冷却空気供給ライン57を経由するルートである。
なお、ダストサイロ52に一時貯留されたダストの一部は系外に排出される。
例えば、冷却チャンバ44にて冷却された後の排ガス中のダスト濃度を150g/Nm3以上とすることが好ましい。
すなわち、セメントキルン6の排ガスの一部を抽気した抽気ガスに含まれるダスト量の3倍量以上のダスト量を循環させることが好ましい。このことは、冷却チャンバ44及びバッグフィルタ45により捕集されるダストの60%以上を循環使用することによって達成することができる。
この塩素および脱硫した後の硫酸塩は、バッグフィルタ45で採取されたダストにより多く含まれている。そこで、バッグフィルタ45で採取されたダストは、排ガスの処理装置41から系外に取り出して別途処理を行い、専ら冷却チャンバ44で採取され塩素および脱硫した後の硫酸塩の濃度が比較的薄いダストを循環使用することとしても良い。
したがって、このためには、処理装置41内でのSOxの脱硫反応が少ない要因を取り除くことが必要であり、この対応を行うことで処理装置41での脱硫が高まる。
また、セメント製造設備の操業(セメントクリンカの焼成)に与える影響は、処理装置41の排ガスをサスペンションプレヒータ排ガスに戻すことによって、セメントキルン6から高温ガスを抽気することによる影響のみに留められる。したがって、燃焼用空気として仮焼炉に導入する従来の方法と比較して、その影響は約1/10に軽減される。
しかも大掛かりな設備を必要としない簡便な方法であるから、セメント焼成設備の排ガスから塩素化合物を容易かつ効率的に除去することができる。
ここでは、比較例として、図1に示す処理装置41を使用して、セメントキルン6の窯尻部から抽気し、この排ガスに含まれるダストを捕集分離した後のバッグフィルタ45の排ガス中に残存するSOx濃度および捕集したダストの成分について調査し、セメントキルン6にて発生したSOxや塩素等の揮発成分が処理装置41でどのように捕集されるかの確認をおこなった。
次いで、実施例として、図1に示す処理装置41にてダストを循環使用し、この処理装置41内のガス経路における排ガス中のダスト濃度を変化させることにより、排ガス中に存在するSOxとダストとの脱硫反応を進めることによって減少するSOx量を調査した。
「処理装置41にてダストの循環を行わない場合」
図1の処理装置41においては、セメントキルン6からSOx濃度が約10000ppmの排ガスを約2%抽気し、冷却空気によって冷却されつつある排ガスに混入しているダストによって、この排ガスに含まれるSOxの一部が脱硫される。このセメント焼成設備における最下段サイクロンの出口原料中のSO3濃度は1.0〜1.6%であり、最大3.0%である。
この処理装置41の排ガス中のSOx濃度は1000ppm近辺であった。また、この処理装置41での窯尻部におけるガス抽気量に対する冷却空気吹き込み量は約5倍であった。
採取したダストは、セメント原料の主要成分とキルン内で揮発する成分がダスト表面に凝集付着したものである。冷却チャンバ及びバッグフィルタそれぞれにおいて捕集したダストの成分、及び冷却チャンバ及びバッグフィルタそれぞれにおいて捕集したダストと集合した場合の成分を表1に示す。
「処理装置41にてダストの循環を行った場合」
図1の処理装置41を用い、冷却チャンバ44およびバッグフィルタ45にて分離捕集されダストサイロ52に投入貯留されたダストを、循環ダスト添加装置46にてプローブ43に送風する冷却空気に混入させて循環した。
実施例1〜4それぞれにおける設定した濃度倍率、装置内でのダスト濃度、装置の排ガス中のSOx濃度を表2に示す。なお、ダスト濃度は、冷却チャンバの入口部におけるものである。また、設定した濃度倍率(循環するダスト量)は、予め算出した冷却ファン55の負荷と輸送量との関係式から冷却ファン55の負荷を求め、循環ダスト供給装置53にて所定の流量になるように制御した(循環方法A)。
図1の処理装置41を用い、冷却チャンバ44およびバッグフィルタ45にて分離捕集されたダストを、循環ダスト分取ダンパ51にて直接分取した後、循環ダスト供給ライン58を経由して循環ダスト空気輸送装置56に供給し、プローブ43に送風する冷却空気に混入させて循環した。
なお、循環するダスト量は、実施例1〜4に示す方法にて、循環ダスト分取ダンパ51によって所定の流量になるように制御した(循環方法B)。
実施例5における設定した濃度倍率、装置内でのダスト濃度、装置の排ガス中のSOx濃度を表2に示す。なお、表2中、濃度倍率は抽気した排ガス中のダスト量に対しての倍率であり、ダスト濃度は冷却チャンバの入口部における濃度である。
また、捕集されたダストの成分を表3に示す。
また、実施例5は、実施例3において捕集したダストの循環回数を多くした場合に相当するが、循環回数が少なく単にダスト濃度を高めた実施例3と比較して脱硫率は若干低下するものの、十分な脱硫が行われており、塩素バイパス装置の排ガスをサスペンションプレヒータの排ガスに合流して処理することができることが分かった。
41 排ガスの処理装置
42 プレヒータライジングダクト
43 プローブ
44 冷却チャンバ
45 バッグフィルタ
46 循環ダスト添加装置
47 冷却ファン
48 吸引ファン
51 循環ダスト分取ダンパ
52 ダストサイロ
53 循環ダスト供給装置
54 循環ダスト供給ライン
55 冷却ファン
56 循環ダスト空気輸送装置
57 循環ダストおよび冷却空気供給ライン
58 循環ダスト供給ライン
A、B 循環ルート
Claims (4)
- セメントキルンから排出される排ガスの一部を抽気し、この抽気された排ガスから塩素化合物を除去するセメント焼成設備における排ガスの処理方法であって、
前記セメントキルンから排出される排ガスの一部を抽気する抽気工程と、
この抽気された排ガスを前記塩素化合物の融点以下に冷却する冷却工程と、
この冷却した排ガス中に残存する塵埃を捕集する塵埃捕集工程と、
前記抽気された排ガスに粉末状の脱硫物質を添加する際に、前記塵埃捕集工程にて捕集された少なくとも一部の塵埃から分取した塵埃の一部を脱硫物質として循環使用する脱硫物質添加工程と、
を備え、
前記脱硫物質添加工程は、前記塵埃捕集工程にて捕集された少なくとも一部の塵埃から分取した塵埃の一部を、一時貯留した後、所定量の塵埃を前記抽気工程に供給する循環ルートAと、前記分取した塵埃の他の一部を前記抽気工程に供給する循環ルートBとを有する
ことを特徴とするセメント焼成設備における排ガスの処理方法。 - 前記脱硫物質は、石灰石、生石灰、消石灰、セメント原料、仮焼されたセメント原料、前記塵埃捕集工程にて捕集された塵埃の群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1記載のセメント焼成設備における排ガスの処理方法。
- 前記脱硫物質の添加量は、前記塵埃捕集工程にて捕集される塵埃100重量部に対して60重量部以上であることを特徴とする請求項1または2記載のセメント焼成設備における排ガスの処理方法。
- セメントキルンから排出される排ガスの一部を抽気し、この抽気された排ガスから塩素化合物を除去するセメント焼成設備における排ガスの処理装置であって、
前記セメントキルンから排出される排ガスの一部を抽気する抽気手段と、
この抽気された排ガスを前記塩素化合物の融点以下に冷却する冷却手段と、
この冷却した排ガス中に残存する塵埃を捕集する塵埃捕集手段と、
前記抽気された排ガスに粉末状の脱硫物質を添加する際に、前記塵埃捕集手段にて捕集された少なくとも一部の塵埃から分取した塵埃の一部を脱硫物質として循環使用する脱硫物質添加手段と、
を備え、
前記脱硫物質添加手段は、前記塵埃捕集手段にて捕集された少なくとも一部の塵埃から分取した塵埃の一部を、一時貯留した後、所定量の塵埃を前記抽気手段に供給する循環ルートAと、前記分取した塵埃の他の一部を前記抽気手段に供給する循環ルートBとを備えている
ことを特徴とするセメント焼成設備における排ガスの処理装置。
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