JP4822510B2 - 軟質被削材料の乾式切削用サーキュラーソーおよび加工法 - Google Patents

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Description

本発明は、サーキュラーソーに関し、特に軟質被削材料用のサーキュラーソーに関するものである。
軟質被削材料の加工用工具としては以下のものが知られている。
半焼成セラミックス、グリーンセラミックスの切断用工具で、外周縁に切断刃を有する円盤状の形状をを有し、かつ中心側から外周縁に向かって切削水を供給するための溝が形成されたダイシングブレードが知られている。ダイシングブレードの内部から切削水が供給される構造を有するため、ダイシングブレードの切断刃が確実に切削水により冷却される。厚みの厚いワークを切断する場合であっても、切断刃及び切断部分に確実に切削水が供給され、切削水により切削屑も円滑に切断部分から排出されるというものである。
(例えば、特許文献1参照)
また別の軟質被削材料の加工用工具としては以下のものが知られている。
グリーンセラミックスの積層体に溝を形成するのに回転するスライサーにより機械加工することが知られている。
(例えば、特許文献2参照)
更に別の軟質被削材料の加工用工具としては以下のものが知られている。
合成樹脂、高分子材料、グリーンセラミックスなどの軟質被削材料を高精度に切削加工するために工作物表面に冷媒を供給して工作物表面を脆化させるとともに、超音波振動を付与した工具によって材料表面を切削加工することが知られている。
(例えば、特許文献3参照)
また更に別の軟質被削材料の加工用工具としては以下のものが知られている。
超砥粒をメタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド、ニッケルメッキで結合した超砥粒ホイールの外周部を鋸刃状に形成したものを用いてグリーンセラミックスを切削加工することが知られている。
(例えば、特許文献4参照)
特開平7−24725号公報 特開平11−34343号公報 特開平2−172601号公報 特開平4−179505号公報
しかしながら、特に、半焼成セラミックス、グリーンセラミックス等を乾式加工しなければならない場合には、公知の工具や加工法を用いても、軟質の切りくずが切れ刃に付着して加工面を引っ掻いたり、むしったりして、加工面を粗くする問題があった。更に、大量の切りくずが付着して加工の継続が困難になり、加工を中断して切れ刃をクリーニングしなければならない問題があった。本発明の解決しようとする課題は、半焼成セラミックス、グリーンセラミックス等の軟質被削材料を能率良く、乾式加工することができるサーキュラーソーを提供することである。
本発明のサーキュラーソーは、円錐状の工具本体の外周に、高硬度焼結体チップから成る切れ刃が複数設けられた、半焼成セラミックスまたはグリーンセラミックスの乾式切削加工に用いるサーキュラーソーで、切れ刃のラジアル方向すくい角が、5〜10度、かつ、外周第一逃げ角が15度で、かつ、刃物角が65〜70度であることを特徴とする。
ここで、ラジアル方向すくい角は、負角(0度未満)では軟質被削材料を押す力(背分力)が増加し、加工面にむしれをひきおこし易い。更に、すくい面を軟質被削材料の切りくずが擦過する抵抗の増大によりすくい面に切りくずが付着、溶着、圧着する現象が顕著となる。また、20度を超えると、刃物角を60度以上とする必要性から第一逃げ角を10度以上に設定することが出来なくなる。以上の理由により、ラジアル方向すくい角は、0.5〜20度に数値限定した。ラジアル方向すくい角は、0.5〜18度であることがより好ましく、0.5〜15度であることが最も好ましい。
そして、軟質被削材料の切削加工では刃先、特に外周逃げ面へ被削材料の付着、溶着、堆積が著しい。この度合いは、外周第一逃げ角の大きさとの相関が大きく、外周第一逃げ角が10〜25度において、その度合いは大きく低減できるのでこのように数値限定した。外周第一逃げ角は10〜23度であることがより好ましく、10〜20度であることが最も好ましい。
さらに、刃物角を60度以上とした理由は、刃先の欠損、欠けを誘発しない変位点が60度であり、60度未満では切削加工において刃先損傷を引き起こし満足のいく加工面品位(面粗さ、うねり)を得ることができないからである。刃物角は65度以上であることがより好ましく、70度以上であることが最も好ましい。
詳しくは、本発明のサーキュラーソーは、工具本体には、切削点近傍に冷却エアーまたは、圧搾エアーを供給するためのエアー供給孔が設けられていることを特徴とする。
ここで、エアー供給孔は、切りくずによって塞がれることがないように、切りくずが擦過しない部位を選択して、工具本体に適宜設けることが好ましい。
さらに詳しくは、本発明のサーキュラーソーは、切れ刃の近傍には、切りくずの付着や溶着を防止するための、DLCまたはフッ素樹脂によるコーティングが施されていることを特徴とする。
ここで、DLC(Diamond Like Carbon)は公知の方法を用いてコーティングを実施する。DLCのコーティング方法としては、固体黒鉛を原料とするイオンプレーティング法、炭化水素系ガスを原料とする高周波プラズマCVD法、炭化水素系ガスをイオン化して基板に照射するイオン化蒸着法などがある。一般的に低圧、低温(室温〜600K)で成膜可能なので工具本体に熱歪み等の悪影響を及ぼさない特長がある。さらに、DLCは硬度が高く、摩擦係数が小さく、はっ水性が良いなど、物理的特性に優れている。以上の理由により、DLCをサーキュラーソーの切れ刃の近傍にコーティングすると、切りくずの付着や溶着を防止するのに極めて有効である。
そしてフッ素樹脂は、卓越した耐薬品性、耐熱性および表面特性を有する特異な高分子材料で、その特性を活かして過酷な条件下で使用し得る工業材料として幅広い分野で利用されている。フッ素樹脂の中でポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂またはポリビニリデンフルオライド樹脂のいずれかを用いるのが好ましい。これら3種類のフッ素樹脂はいずれでも本発明に適用可能である。
しかしながら、切りくずに高速度で接触するため、高い耐熱性と摺動性が要求される。これらの物性については、上記の3種類のフッ素樹脂の中でポリテトラフルオロエチレン樹脂が特に優れているので、本発明に最適である。ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、耐熱性に関しては有機材料の中で最高の部類に属し、連続使用温度は約260℃と極めて高い。また、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の表面の性質は非常に特異で、卓越したはっ水性、非粘着性を示すので、その摩擦係数は小さく、優れた摺動性を示すものである。以上の理由により、フッ素樹脂をサーキュラーソーの切れ刃の近傍にコーティングすると、切りくずの付着や溶着を防止するのに極めて有効である。
さらに詳しくは、本発明のサーキュラーソーは、切れ刃は、4箇所以上に設けられ、かつ、2箇所以上の切れ刃が切削することにより、所望する最終形状が得られるように、2つ以上の異なった刃型形状からなることを特徴とする。
切れ刃一箇所当たりの除去量を少なくすることにより、切れ刃に切りくずの付着や溶着を防止するのに有効であるので、2箇所以上の切れ刃が切削することにより、所望する最終形状が得られるように刃型形状を設定することが好ましい。
さらに詳しくは、本発明のサーキュラーソーは、高硬度焼結体チップは、ダイヤモンド焼結体またはCBN焼結体であることを特徴とする。
ここで、高硬度焼結体チップはダイヤモンドを主成分とするダイヤモンド焼結体(PCD)または、CBNを主成分とするCBN焼結体(PCBN)を用いることが出来る。特に、ダイヤモンド焼結体は、耐摩耗性が超硬合金の数十倍以上ときわめて優れていることから、本発明に最も適している。
さらに詳しくは、本発明のサーキュラーソーを用いて乾式切削加工する軟質被削材料は、樹脂、ゴム、半焼成セラミックス、グリーンセラミックス、のいずれかひとつであることを特徴とする。
ここでは、セラミックスの原料粉末と結合材を混合し成形したセラミックス成形体のことをグリーンセラミックス(グリーン成形体または、生成形体とも呼ばれる)と呼ぶ。そして、このグリーンセラミックスを焼成温度より低い温度で仮焼したものを半焼成セラミックスと呼ぶ。セラミックスの材質は、各種のセラミックス材料からなるものに適用可能であり、特に材質には限定されない。同様に樹脂、ゴムについても各種材料に適用可能であり、特に材質には限定されない。
本発明のサーキュラーソーを用いることにより、軟質被削材料を高能率に乾式切削加工することができる。
発明を実施するための最良の形態については、図を参照しながら説明する。
図1は本発明のサーキュラーソーの平面図を示す。高硬度焼結体チップ2にはダイヤモンド焼結体を用い、鋼製の台金3にロウ付けしたものである。
図2は、図1の刃先部分の拡大図を示す。ラジアル方向すくい角αが0.5〜20度、かつ、外周第一逃げ角βが10〜25度であるように設定する。さらに、両者の角度関係は刃物角によって制約を受け、刃物角γを60度以上に設定することが必要条件で有る。なお、チップポケット4は、切りくずの排出をスムーズに行うため、可能な限り大容量に設計することが好ましい。
図3は、切削点近傍に冷却エアーまたは、圧搾エアーを供給するためのエアー供給孔5を設けた一例を示す。ここでは、最も切りくずが付着したり、堆積し易い、すくい面にエアーが供給されるように設定されたものである。エアー供給孔は、切りくずによって塞がれることがないように、切りくずが擦過しない部位を選択して、複数箇所に設けることが好ましい。
図4は、切れ刃の近傍に、切りくずの付着、溶着および堆積を防止するための、DLCまたはフッ素樹脂によるコーティングを施す一例を示す。コーティングは、基板全体に施すことが好ましい。
以下のような本発明の実施例1のサーキュラーソーを製作して、その効果を実験により確認した。
ダイヤモンド焼結体チップを16チップ取り付けた直径60mm、切断幅3mm、ラジアル方向すくい角αを1度、外周第一逃げ角βを10度、刃物角γを79度にしたサーキュラーソーを製作して、アルミナ系のグリーンセラミックスを乾式切削加工を行った。使用した加工機はマシニングセンタ、回転数は1000/min、送り速度は100mm/min、切り込み深さは0.5mm、圧搾エアーを供給しながら乾式切削加工を行った。
その実験結果は、すくい面と逃げ面には切りくずの付着は無く、刃先損傷も無く、被削材料の表面性状も良好であり、満足できる結果が得られた。
さらに、ラジアル方向すくい角α、外周第一逃げ角β、刃物角γをそれぞれ変更した、本発明の実施例2と3、および比較例1と2のサーキュラーソーを製作し、実施例1と同じ切削条件でそれぞれ実験を行った結果を表1に示す。
Figure 0004822510
表1から明らかなように、本発明のサーキュラーソーは、すくい面および逃げ面に切りくずが付着せず、しかも刃先損傷が無いので、良好な被削材料の表面性状が得られる。従って、本発明のサーキュラーソーは、アルミナ系のグリーンセラミックスなどの軟質被削材料を高能率に乾式切削加工することが出来る。さらに実施例1〜3について、切削点近傍に冷却エアーまたは、圧搾エアーを供給するためのエアー供給孔を設てけることにより、切りくずの付着や溶着を防止する能力が高めることができる。または、DLCまたはフッ素樹脂によるコーティングを施すことにより、切りくずの付着や溶着を防止する能力が高めることができる。言うまでもなく、これらを併用することが最も付着や溶着を防止する能力が高くなるので、最も好ましい。
本発明の実施例の平面図を示す。 本発明の実施例のチップ部分拡大図を示す。 本発明の別の実施例のエアー供給孔を示す。 本発明のさらに別の実施例のコーティングの形態を示す。
符号の説明
1:サーキュラーソー
2:高硬度焼結体チップ
3:基板
4:チップポケット
5:エアー供給孔
6:コーティング部位
α:ラジアル方向すくい角
β:外周第一逃げ角
γ:刃物角

Claims (6)

  1. 円盤状の工具本体の外周に、高硬度焼結体チップから成る切れ刃が複数設けられた、半焼成セラミックスまたはグリーンセラミックスの乾式切削加工に用いるサーキュラーソーであって、
    前記切れ刃のラジアル方向すくい角が5〜10度、かつ、外周第一逃げ角が15度、かつ、刃物角が65〜70度であることを特徴とする、サーキュラーソー。
  2. 前記工具本体には、切削点近傍に冷却エアーまたは、圧搾エアーを供給するためのエアー供給孔が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のサーキュラーソー。
  3. 前記切れ刃の近傍には、切りくずの付着や溶着を防止するための、DLCまたはフッ素樹脂によるコーティングが施されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のサーキュラーソー。
  4. 前記切れ刃は、4箇所以上に設けられ、かつ、2箇所以上の切れ刃が切削することにより、所望する最終形状が得られるように、2つ以上の異なった刃型形状からなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のサーキュラーソー。
  5. 前記高硬度焼結体チップは、ダイヤモンド焼結体またはCBN焼結体であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のサーキュラーソー。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載のサーキュラーソーを用いて、半焼成セラミックスまたはグリーンセラミックスを乾式切削加工する、切削加工法。
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