JP2008229836A - 炭化珪素単結晶からなる切削工具 - Google Patents

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彰子 冨田
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Abstract

【課題】
本発明は、高硬度で耐摩耗性に優れ、高温でも化学的に安定で工具寿命が長く、鋼材等の高硬度の工作物の超精密加工が可能な程度に鋭利な切刃を有する切削工具を提供することを課題としている。
【解決手段】
旋削加工又は中ぐり加工又は平削り加工等に使用される各種バイト、もしくはフライス加工に使用されるエンドミル又はフライスカッタ、もしくは穴加工に使用されるドリル、リーマー等の穴あけ工具、もしくはチップ交換式切削工具等の切刃部の一部又は全体が、炭化珪素の単結晶で構成される。
【選択図】 図12

Description

本発明は、炭化珪素(以下、単に「SiC」ということもある。)の単結晶が使用されて、すくい面等の切刃の構成面が特定の結晶面に限定されることによって、高硬度で、化学的に安定であり、工作物の仕上面を高精度に切削できる切削工具に関するものである。
近年、パソコンやネットワークが普及し、情報通信機器等の機能の高速・高精細化が要求されるに伴い、光学レンズや電子部品、精密機械部品を成形する金型においても、高精度な切削加工面を転写できること、複雑な形状に加工できること等の高度な加工技術が求められている。
従来、金型を作成するには、多種類の工作機械(切削加工・放電加工・研削加工等)を使用して、多工程による分割型(割型)で設計・製作されることが一般的であった。この金型作成方法では、多大な時間とコストを要していた。しかし、近年、主軸の回転数及び送りの高速化を実現した高速加工機の開発、コンピュータによるNC(数値制御)加工技術の向上、工具材料の開発やコーテッド工具のコーティング技術の向上等によって、切削加工機及び切削工具は著しく高性能化し、焼入れ鋼等の高硬度被削材(工作物)の直彫り加工が可能となった。最近の金型加工では、従来の放電加工から直彫り加工に移行し、加工工数及びコストが削減され、生産のリードタイムの短縮化が図られている。
ボールエンドミル等の前記金型加工で多用される切削工具の工具材料としては、高速度工具鋼(ハイス)、超硬合金及びサーメット等の母材表面を炭窒化チタン、チタン窒化アルミニウム等のセラミックコーティングで被覆されたコーテッド工具が挙げられる。しかし、ハイスでは硬度が小さく高速切削に適さず、超硬合金では、工作物が鋼材の場合には、超硬合金の構成成分である炭化タングステン、炭化チタン等の炭素が鋼材に含まれる炭素成分と親和性を示し、磨耗が大きい。また、前記コーテッド工具は、加工時に強い衝撃や熱サイクルが加わると母材と被覆材との密着性が低下するため工具寿命は非常に短く、加工途中で工具交換をして交換前後で誤差を生じるため、加工後の金型の精度が不良となる等の問題があった。
そこで、新たに立方晶窒化ホウ素(cBN)焼結体を工具材料とする切削工具の開発が行われた。例えば、cBN焼結体からなるボールエンドミルは、前記コーテッド工具よりも工具寿命は延びて、高硬度の鋼材も切削可能となった。しかし、cBN焼結体は多結晶であるために、高硬度で耐摩耗性はあるが、靭性が低いので非常に脆く、切込み深さを大きくできない。このため、前工程で精度不良や取残し量が僅かでも発生していると、切削加工工程で前記ボールエンドミルは容易に欠損して扱いづらかった。
また、金型加工において、成形品の表面粗さを極力小さくするために、切削加工面の面粗度、即ち仕上面精度を高める必要がある。例えばプリンタ等の精密機器に搭載されている光学系の走査レンズは、高精度な自由曲面のプラスチックレンズであり、射出成形される。当該走査レンズ用の金型を加工する場合には、円筒面や非球面のような複雑な形状に切削すると同時に、切削加工面を鏡面にまで達成する必要がある。特許文献1では、金型を鏡面加工するために単結晶ダイヤモンドバイトを使用している。単結晶ダイヤモンドは、原子間距離の小さい緻密なダイヤモンド構造を有するため、単結晶ダイヤモンドを切削工具として用いれば、切刃は非常に鋭利となって、切削加工面の超精密加工が可能である。しかし、単結晶ダイヤモンド工具は工作物が非鉄金属であれば殆ど問題ないが、鋼材等、工作物が鉄を含有する場合には、単結晶ダイヤモンド工具の磨耗が非常に大きい。当該工具の磨耗の理由としては、通常の切削温度である700ないし1100℃の高温下において(1)工作物の切削で生じた新生面との接触によるダイヤモンドの黒鉛化、(2)雰囲気酸素で酸化した工作物によるダイヤモンドの酸化、(3)切れ刃近傍における工作物との炭化物形成が考えられている。従って、切削工具の磨耗が大きいだけでなく、工作物の切削面にも変質等の悪影響を与える可能性があるため、単結晶ダイヤモンドを切削工具として、鋼材等の金型の鏡面加工を行うのは不適である。
以上のように、高硬度、高靭性で耐摩耗性、耐欠損性に優れ、高温でも工作物によらず化学的に安定で、高硬度の鋼材からなる金型等の高精度の超精密切削加工を可能にする工具が強く求められているにもかかわらず、今まで無かった。
特開2001−79854号公報
本発明は、高硬度で耐摩耗性に優れ、高温でも化学的に安定で工具寿命が長く、鋼材等の高硬度の工作物の超精密加工が可能な程度に鋭利な切刃を有する切削工具を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、旋削加工又は中ぐり加工又は平削り加工等に使用される各種バイト、もしくはフライス加工に使用されるエンドミル又はフライスカッタ、もしくは穴加工に使用されるドリル、リーマ等の穴あけ工具、もしくはチップ交換式切削工具等の工作機械を用いて工作物を切削加工するために使用される切削工具において、当該切削工具の切刃部の一部又は全体が炭化珪素の単結晶であることを特徴としている。
工作機械を用いて切削加工を行う際には、加工形態に応じて用いられる切削機械及び切削工具が異なる。また、工作物の材質、加工する部分の形状や加工面積によっても多種の切削工具が使い分けられている。工作物の材質を選ばず、工作物の多様な加工部分をあらゆる加工形態で切削加工できるためには、優れた特性を持つ切削工具材料の存在が大きな鍵になる。
炭化珪素(SiC)は、第3周期14族の珪素(Si)原子及び14族第2周期の炭素(C)原子からなる二元化合物であり、Si(又はC)原子のまわりに最近接の4個のC(又はSi)原子がそれぞれsp3 混成軌道で共有結合した正四面体構造を基本構造としている。当該基本構造は、Si原子がC原子よりも原子半径が大きいために原子間距離は若干異なるが、ダイヤモンド単結晶の基本構造において、C原子の正四面体構造の中心に位置するC原子をSi原子に置き換えた構造と同じである。このため、SiC単結晶はダイヤモンド単結晶に近い高硬度の性質を持つ。2万気圧の高圧条件下で耐えられる程度に強靭でもある。また、Si原子とC原子は、ダイヤモンド単結晶のC原子同士の原子間距離に近い距離で緻密に配列されている。更に、高温条件下で化学的に不活性であり、1600℃付近までは空気雰囲気中で安定であるので、切削温度範囲(700ないし1100℃)内では他元素と殆ど反応しない。約800℃付近で雰囲気空気中で酸化するが、二酸化珪素(SiO2 )の保護膜によりSiC表面が完全に覆われるので、それ以上の酸化が抑制される。
SiC単結晶の上記の特性を切削工具に適用する方法としては、超硬合金等の別の材質の母材で切削工具を成形し、当該切削工具の表面にSiC分子を化学的或いは物理的に蒸着させて、薄いSiC単結晶膜を切削工具に積層させる方法がある。しかし、当該方法によって得られたSiC単結晶膜でコーティングされた切削工具を実際に使用すると、母材からSiC単結晶膜が剥離して容易に刃先が損傷するばかりか、薄膜ではSiC単結晶の特性が十分に発揮されず、望ましい切削工具は得られていなかった。
請求項1の発明によれば、SiC単結晶を切削工具の切刃部の一部又は全体に用いることによって、SiC単結晶の特性が十分に発揮されるので、以下の効果が期待できる。即ち、(1)高硬度で耐摩耗性に優れる。(2)高圧に耐えられる。(3)切削温度条件下でも化学的に安定で工作物と反応しないので、工作物の種類を選ばない。特に、ダイヤモンド単結晶工具では磨耗の大きい鋼材に対しても切削可能である。(4)断続切削では切刃が繰り返し加熱・冷却されるが、熱的衝撃による疲労破壊やサーマルクラックが生じにくく耐熱衝撃性に優れる。(5)Si原子とC原子との原子間距離が小さく、緻密に配列されているため、切刃の稜線は滑らかで刃先は非常に鋭利になるので、切削加工後の研削加工を省略できる程度にまで工作物を高精度に切削できる。(6)切刃が鋭利であるため、工作物を切削しても切削抵抗が低いため発熱しにくく、切削温度を低減できるので耐熱性の低い工作物でも切削できる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記切削工具の切刃部は、本体の切刃装着部位に炭化珪素単結晶が接着又は固定されて形成されていることを特徴としている。
SiC単結晶の高硬度、化学的安定性、高精度の特性は、切削工具の切刃部で発揮されれば足りるため、切削工具が比較的大きい場合、本体部もSiC単結晶で成形すると、SiC単結晶は硬く、高価であるので、前記切削工具を成形するのに膨大な時間と費用がかかってしまう。請求項2の発明によれば、切刃部のみをSiC単結晶で成形し、当該切刃部を別の材料で成形された本体の切刃装着部位に接着又は、ねじ等で機械的に固定させることによって、時間や費用を抑えながらSiC単結晶の特性が発揮された切刃部を有する切削工具を作成できる。請求項2の発明では、ろう付けバイトやチップ交換式切削工具のように、元々切刃部(チップ)と本体であるシャンクが分離されている切削工具に限らない。ソリッドバイト、ドリル、或いはエンドミルのように、刃部、首部、シャンク部等の各部全体が、本来は同一材料で一体成形されるような切削工具でも良い。この場合は、一体成形された切削工具の切刃部周辺を所定の形状に切り取り、当該切取り部分を切刃装着部位として、対応した形状のSiC単結晶を代わりに装着することによって、切刃部のみをSiC単結晶にした切削工具が得られる。また、チップ交換式バイトやフライス等のチップ交換式工具で用いられるチップにおいては、超硬合金等の基台の上面に平板状のSiC単結晶が接着されて当該SiC単結晶板の稜線が切刃となっているもの、又は、超硬合金等で形成されたチップにおいて、すくい面側のチップのコーナ部のみに、対応する形状に加工されたSiC単結晶が装着されているものでもよい。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記切削工具の切刃部は、全体が炭化珪素単結晶によって一体成形されていることを特徴としている。
請求項3の発明によれば、工具全体をSiC単結晶で構成することにより、切刃部が本体部と一体成形されるので、微細な型彫りを行うボールエンドミル等の小さい切削工具の場合には特に、切刃部と本体を個々に成形して接着により一体化させるよりも製作しやすく、切刃部と本体との接合部が存在しないので切刃部の強度も維持される。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明において、前記切削工具の切刃部を構成する複数面のうち一つは、六方晶の炭化珪素単結晶における{0001}面、又は当該{0001}面に対して所定オフ角度で傾斜したオフ面であり、残りの面の一つは、{1−100}面、又は当該{1−100}面に対して所定オフ角度で傾斜したオフ面であることを特徴としている。
SiC単結晶には、多様な結晶多形(ポリタイプ)が存在するが、半導体デバイス分野で利用され、量産が可能である六方晶のSiC単結晶を使用する。一般的に、単結晶には異方性があるため、用いる結晶面(結晶方向)によって性質が異なる。一方、切削工具の切刃は隣り合う面同士の稜線であるため、2面以上の複数面から構成される。例えば、バイトの切刃はすくい面、横(主)逃げ面、及び前(副)逃げ面の3面から構成される。切刃の性質や仕上面の精度は当該各構成面で決まる。請求項4の発明によれば、六方晶のSiC単結晶を使用し、当該SiC単結晶の各結晶面において、切刃を構成する複数面のうちの一つに{0001}ジャスト面又はそのオフ面、残りの面のうちの一つに{1−100}ジャスト面又はそのオフ面を用いる。これにより、前記ジャスト面を用いた場合には、原子ステップの数が最少で高さも極めて小さくなるので、工作物の平坦性の向上や、当該工作物と切刃との化学反応の抑制を期待できる。また、ジャスト面には劈開性があるので、貝殻状には割れにくく、切削時に原子層が剥離しても再び同じジャスト面が現れるので、多結晶体の工具材料からなる切刃よりも有利である。また、切刃の構成面にオフ面を用いた場合には、当該オフ面下近傍に存在して前記オフ面に加わる力 (負荷) を受ける原子数が増して原子結合密度が増すので、前記オフ面の前記負荷に対する強度も増す。従って、切刃の構成面を前記ジャスト面又はそのオフ面に特定し、結晶構造を考慮した切刃を成形することによって、結晶構造的に切刃として優れた特性を具備する切削工具が得られる。
請求項5の発明は、請求項4に記載の発明において、前記切刃部の構成面のうち、すくい面が六方晶の炭化珪素単結晶の{0001}面、又は当該{0001}面のオフ面であることを特徴としている。
請求項5の発明によれば、強度等、上記の「切刃としての適性」を最も発揮する{0001}ジャスト面又はそのオフ面を、切刃の構成面の中で切削加工時に最も大きな負荷がかかり、切刃として重要な役割を果たすすくい面に充てることによって、より優れた切刃を有する切削工具が得られる。
請求項6の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明において、前記切削工具の切刃部を構成する複数面のうち一つは、立方晶の炭化珪素単結晶における{100}面、又は当該{100}面に対して所定オフ角度で傾斜したオフ面であり、残りの面の一つは、{111}面、又は当該{111}面に対して所定オフ角度で傾斜したオフ面であることを特徴としている。
請求項6は、立方晶の炭化珪素単結晶を選択し、しかもSiC単結晶の{100}ジャスト面、又はそのオフ面と、{111}ジャスト面、又はそのオフ面とで切削工具の切刃部の複数面のうち2面を構成したものであって、結晶面を特定することによる切削工具としての利点は、請求項3に記載の立方晶のSiC単結晶において切削工具の切刃部として特定の結晶面を選択した場合とほぼ同様である。
また、請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記切刃部の構成面のうちすくい面が、立方晶の炭化珪素単結晶の{100}面、又は当該{100}面のオフ面であることを特徴としている。
請求項7の発明は、立方晶のSiC単結晶において、{100}ジャスト面又はそのオフ面を、切刃部のすくい面としたものであって、この結晶面の配置が切刃として優れている理由は、請求項5の六方晶のSiC単結晶の場合とほぼ同様である。
本発明によれば、SiC単結晶を用いることによって、高硬度で、高温でも化学的に安定であり工作物との反応による磨耗が殆ど無く、工作物の仕上面を鏡面にまで高精度に切削可能な切刃を具備した切削工具が得られる。
以下、最良の実施形態を挙げて本願発明について更に詳細に説明する。まず、切削工具が具備すべき特性とSiC単結晶の工具材料としての適性を説明する。次に、SiC単結晶の結晶面(ジャスト面)及び当該結晶面を傾斜させたオフ面について説明し、切削工具の切刃の構成面として上記結晶面を用いた効果について説明する。また、SiC単結晶を切刃として用いた切削工具を例示する。
工作機械に用いられる切削工具が具備すべき特性(条件)について説明する。切削加工では、工作物又は切削工具を数m/minないし数百m/minの周速で回転させて、工作物を送りながら切削していくため、当該切削工具の刃先先端は高温高圧となる。このため、切削工具は、高温高圧条件下で工作物を高精度で滞りなく切削加工するために以下の特性を具備する必要がある。即ち、高硬度で耐摩耗性が高いこと、高靭性で耐欠損性が高いこと、断続切削では切刃が繰り返し加熱・冷却されるので、耐熱衝撃性に優れていること、高圧に耐えられること、高温条件下で化学的に安定であること等が挙げられる。これらの特性は、切削工具を構成する工具材料の特性に他ならない。上記の諸特性をより多く具備する工具材料が優れた工具材料であり、優れた工具材料を用いた切削工具は、工作物の材質を問わず高精度な加工が可能で、工具寿命の長い優れた切削工具であると言える。従来の工具材料には、高速度工具鋼(ハイス)、超硬合金、サーメット、コーテッド品、セラミックス、cBN焼結体、ダイヤモンド(単結晶、焼結体)等があるが、各材料にはそれぞれ長所と短所があり、上記の諸特性を全て具備するものはないので、通常、切削加工の際は作業目的に応じて工具材料を選択しなければならない。
次に、SiC単結晶について説明する。SiCは、第3周期14族のSi原子及び第2周期14族のC原子からなる二元化合物であり、各原子のまわりに異なる4個の最近接原子がそれぞれsp3 混成軌道で共有結合した正四面体構造を基本構造として、Si原子とC原子の電気陰性度の差により約12%のイオン性を有する共有結合結晶である。Si原子とC原子との結合長(原子間距離)は0.189nmである。基本構造のSiCの正四面体を配列する方法は六方最密充填構造と立方晶系構造の2通りあるが、六方最密充填構造に配列した場合には、c軸方向([ 0001] 方向)に対して積層構造(層の繰返し周期)の異なるものが多数存在するので、SiCには多様な結晶多形(ポリタイプ)が存在する。各ポリタイプは、基本構造であるSiCの正四面体の配列の向きと層の繰返し周期が異なるだけなので、隣り合うSi原子とC原子の原子間距離は多形によらず、密度も全てのポリタイプで同じである。SiC単結晶のポリタイプのうち、発生確率が高いのは、3C−SiC,4H−SiC,6H−SiC,15R−SiCである。特に、六方晶の4H−SiC及び6H−SiCは、パワーデバイスや青色発光素子等の窒化ガリウム基板として多く使用されていて、量産が可能である。また、3C−SiCはSiを基板に用いて、厚さ300μmで100mmの直径を有する基板が作製できる。このため、本発明では、六方晶及び立方晶のSiC単結晶の単結晶を用いる。
次に、SiC単結晶の切削工具材料としての適性について、ダイヤモンド単結晶と比較して説明する。ダイヤモンド単結晶は、第2周期14族の炭素(C)原子から構成される共有結合結晶で、1個のC原子のまわりに最近接の4個のC原子がそれぞれsp3 混成軌道で共有結合した正四面体の基本構造から構成された立方晶系のダイヤモンド構造となっている。即ち、SiC単結晶の基本構造は、ダイヤモンド単結晶の基本構造の正四面体の中心のC原子をSi原子に置き換えただけである。また、ダイヤモンド単結晶のC原子同士の結合長(原子間距離)は0.154nmであるので、SiC単結晶のSi原子とC原子の原子間距離との差はわずか0.035nmである。SiC単結晶とダイヤモンド単結晶の基本構造が酷似するため、SiC単結晶はダイヤモンド単結晶と類似の性質を有する。一方、ダイヤモンド単結晶とは異なる性質も有する。SiC単結晶における工具材料として適した特性について、以下に挙げる。
まず、硬度では、ダイヤモンド単結晶が修正モース硬度で最高値15、SiC単結晶では13であり、SiC単結晶は非常に高硬度である。次に、仕上面精度については、ダイヤモンド単結晶はC原子の原子間距離が小さくC原子が緻密に配列されているため、ダイヤモンド単結晶を切断し、その稜線を微視的に見ると、原子ステップとテラスの階段構造になっており、当該原子ステップ高さは非常に小さい。従って、ダイヤモンド単結晶の切削工具は、その稜線が非常に滑らかな鋭い切刃によって、鏡面加工のような高精度の超精密切削加工が可能である。一方、SiC単結晶のSi原子とC原子の原子間距離も非常に小さく、SiC単結晶の各原子は、非常に小さい原子間距離で緻密に配列されている。SiC単結晶を切削すると、原子ステップは非常に小さく、例えば、六方晶の<0001>方向の原子ステップ高さは約0.25nmであるので、金属加工においては十分に滑らかな稜線であると言える。従って、SiC単結晶を切刃として用いれば、極めて鋭利な刃先を有する切刃となって、ダイヤモンド単結晶と同様に高精度な超精密切削加工が可能となる。また、SiC単結晶工具の切刃が非常に鋭利であるために工作物の切削抵抗が軽減されて、切削工具と工作物との摩擦による発熱が抑えられ、切削温度の上昇が抑制される。
化学的安定性においては、SiC単結晶工具はダイヤモンド単結晶や超硬合金等からなる従来の切削工具よりも優れている。ダイヤモンド単結晶は700℃程度で酸化したり、切削温度条件下では切りくず面と仕上面は熱活性化する新生面であるために、接触により黒鉛化したり、切刃と工作物との界面近傍で工作物と炭化物を形成する等、切削温度範囲(700ないし1100℃)では化学的に不安定で、工作物や雰囲気酸素と反応してしまう。特に、鋼材等の高硬度の金属を切削する場合には、非鉄金属よりも切削温度が高くなるだけでなく、鋼材の炭素との親和性によって、ダイヤモンド単結晶工具の磨耗が著しい。また、超硬合金の切削工具では、工作物が鋼材の場合には、超硬合金の構成成分である炭化タングステン、炭化チタン等の炭素が鋼材と親和性を示すので、切刃の磨耗が非常に大きい。しかし、SiC単結晶は高圧高温条件下でも化学的に不活性である。即ち、2万気圧程度の高圧に耐えられるほど強靭であり、また、1600℃付近までは空気雰囲気中でも化学的に安定であり、切削温度範囲内では他元素と殆ど反応しない。また、約800℃以上で雰囲気空気中でSiC単結晶は酸化するが、酸化によりSiO2 が生成する。当該SiO2 は緻密な保護膜となってSiC表面を完全に覆うので、それ以上の酸化が抑制されるため、SiC単結晶は耐酸化性に優れている。更に、SiC単結晶は、490[W/(m・K)]の比較的大きい熱伝導率を有し、かつ5.1×10-6[K-1]の金属より低い熱膨張率を有するので、熱衝撃に高い耐性がある。このため、断続切削では切刃が繰り返し加熱・冷却されて、熱衝撃による疲労破壊やサーマルクラックが生じ易くなるが、SiC単結晶は耐熱衝撃性を有するので、工具の損傷は発生しにくい。以上より、SiC単結晶は、硬度、化学的安定性、耐熱衝撃性、及び仕上面精度等、切削工具材料として要求される諸特性を十分に具備しており、優れた切削工具材料であるといえる。
次に、六方晶のSiC単結晶における結晶面と異方性について説明する。上記のように、SiC単結晶は切削工具とするのに適した材料であるが、一般的に、単結晶には異方性があり、当該単結晶の機械的、物理的、化学的、電磁気的、熱的等の性質は、結晶方向に大きく依存する。異方性は各結晶面内の原子の配列と面間距離(面間隔)に起因する。従って、同一の単結晶でも結晶面(結晶方向)によって性質が異なるので、工具材料の材質のみならず結晶構造も考慮して、特定の結晶面から切刃を構成すれば、より優れた特性を具備した切刃を作ることが可能となる。そこで、出願人は切刃部を特定の結晶面から構成することに着眼した。
次に、図1ないし図3を用いてSiC単結晶の結晶面におけるジャスト面とオフ面、及び切削工具の切刃の構成面として上記結晶面を用いた効果について説明する。図1 (a) は、六方格子Hにおける各結晶面、及びその一面である(0001)面を[ 11−20] 方向に沿って所定のオフ角度θ1 で傾斜させたオフ面M1 を示した図であり、同 (b) は、六方格子Hにおける(1−100)面を [0001] 方向に沿って所定のオフ角度θ2 で傾斜させたオフ面N1 を示した図である。図2は、正方形のチップGを用いたスローアウェイバイト10(以下、単に「バイト10」と言う。)における切刃Eの構成面を示した図である。図3(a),(b)はそれぞれ、スローアウェイバイト20(以下、単に「バイト20」と言う。)を用いて負又は正のすくい角ψ1 ,ψ2 で被加工物W0 を旋削している状態を示すチップG1 ,G2 の断面図である。なお、図2の符号11はシャンク、12は敷き金であり、図3の符号F1 ,F2 はそれぞれチップG1 ,G2 のすくい面である。まず、切刃Eの構成面について説明する。切削工具の切刃Eは隣り合う面同士の稜線であるため、少なくとも2面以上の複数面から構成される。例えば、図2に示されるように、バイト10のチップGにおける切刃Eは、すくい面F、横(主)逃げ面Saから構成される横(主)切刃Ea(E)、及び、前記すくい面Fと前(副)逃げ面Sbから構成される前(副)切刃Eb(E)からなる。また、すくい面F、横(主)逃げ面Sa、及び前(副)逃げ面Sbの3面からはコーナ(ノーズ)Ec(E)が構成される。切削工具の良し悪しは切刃Eの性能で決まるので、切刃Eの構成面にSiC単結晶のどの結晶面を充てるかは重要な問題である。切刃Eの性能とは強度と被加工物W0 の仕上面精度が主に挙げられる。「強度」には、切削時に切刃Eが受ける力に耐え得る強さや、切削時に切刃Eが工作物の材質と化学反応しない不活性性がある。図3(a),(b)に示すように、旋削を行って切込み深さT0 でバイト20のチップG1 ,G2 が送られれば、被加工物W0 に対して切削力Q1 ,Q2 が働き、その反作用として、前記チップG1 ,G2 の切刃E1 ,E2 (図3においてはコーナEc1 ,Ec2 )には、切削力Q1 ,Q2 とは方向と大きさが同じで向きが反対の切削抵抗P1 ,P2 を受ける。また、当該切刃E1 ,E2 にはそれぞれ当該切削抵抗P1 ,P2 の互いに直角の3方向の3分力(主分力、背分力、送り分力)が作用する。従って、優れた性能を持つ切刃Eとは、切削加工時に高圧高温条件下(約2万気圧、700ないし1100℃)に晒されながら切削抵抗P1 ,P2 を長時間受け続けても、欠損や損傷を生じない切刃である。また、上記の高圧高温条件下でも、被加工物W0 と容易に化学反応を起こして切削加工面に悪影響を及ぼしたり、切刃自身が磨耗して短時間で切削不可能にならないような化学的に安定な切刃でもある。更に、被加工物W0 の仕上面を研削加工無しで鏡面にまで切削加工する場合のために、極めて鋭利な切刃であれば望ましい。以上のような性能を持つ切刃Eを作るために、出願人は、六方晶SiC単結晶の結晶面のうち{0001}ジャスト面、{1−100}ジャスト面、或いは各面のオフ面から切刃Eを構成することにした。
次に、図1を用いて、六方晶SiC単結晶の{0001}ジャスト面及び{1−100}ジャスト面及び各面のオフ面について説明する。本発明で用いる六方晶のSiC単結晶のうち、ここでは6H−SiCを一例として説明する。6H−SiCは、SiCの基本構造である正四面体を六方最密充填構造で配列させて、積層方向であるc軸([0001])方向の一周期中に6層のSi−C単位層が含まれる結晶構造を有するSiC単結晶である。ここで、{0001}面とは、六方格子の上面である(0001)面又は底面(000−1)面のどちらか一方の指数面を指す。{1−100}面とは、六方格子の6側面である(1−100)面、(10−10)面、(−1100)面、(−1010)面、(01−10)面、(0−110)面のうちの一つの指数面を指す。また、上記の各指数面をジャスト面といい、各ジャスト面を所定方向に沿って所定のオフ角度で傾斜させた結晶面をオフ面という。更に、<0001>方向は[0001]方向、又は[000−1]方向を指し、<11−20>方向とは、[11−20]方向、又は[1−210]方向、又は[−2110]方向を指す。以下、{0001}及び{1−100}のジャスト面、オフ面をそれぞれM0 ,M1 、及びN0 ,N1 とする。
切削工具の切刃を構成する複数面のうちの一つを、{0001}ジャスト面M0 又はオフ面M1 とし、残りの面のうちの一つを、当該ジャスト面M0 と垂直な面方位で隣り合う{1−100}ジャスト面N0 、又はそのオフ面N1 とする理由を以下に示す。まず、ジャスト面M0 ,N0 では結晶面指数が最低であることから、当該ジャスト面M0 ,N0 における原子ステップ高さは、Si原子とその周りで最も近い位置にあるSi原子との2原子間の高さであるため、原子ステップ高さを極めて小さくすることが出来る。6H−SiCの当該原子ステップ高さは約0.25nmである。このため、ジャスト面M0 ,N0 を用いて切刃Eを構成すれば、切刃Eの稜線は0.25nmの原子ステップ高さの段差を有する極めて滑らかな稜線となり、非常に鋭利な刃先が得られる。理想的なジャスト面M0 ,N0 ではない結晶面でも、当該結晶面からなる切刃Eの稜線は金属加工においては十分に滑らかであるといえるので、被加工物を高精度に切削可能である。また、ジャスト面M0 ,N0 はSi原子とC原子との結合により形成されている面であるため、前記原子ステップ数は最少となる。原子ステップには未結合手を持つ原子が多く存在するため、前記原子ステップが少なければ未結合手を持ち容易に化学反応する原子が少ない。従って、最少の原子ステップからなるジャスト面M0 ,N0 上では化学反応が生じる確率が低く、ジャスト面M0 ,N0 から構成される切刃Eは化学的に安定である。更に、上記の通り、ジャスト面M0 ,N0 はSi原子とC原子とが結合し合って形成している面であるので劈開性があり、原子層単位で剥離が生じる。このため、切削加工時に切刃Eに大きな衝撃がかかった場合に、切刃Eの構成面がジャスト面M0 ,N0 であれば原子層での剥離は起こっても、貝殻状に割れる可能性は非常に低い。また、切刃Eが原子層単位で剥離しても再び同じ指数面のジャスト面M0 ,N0 が現れるので、切削加工を中断させることなく、引き続き同じ結晶面で被加工物の切削を行うことが可能であり、結晶粒単位で磨耗していく多結晶体の工具材料からなる切削工具に比べて非常に有利である。
次に、切刃Eの構成面として各オフ面M1 ,N1 を用いた場合について図4を用いて説明する。図4(a),(b)は、六方格子Hの(0001)ジャスト面M0 及びオフ面M1 において、ジャスト面M0 の単位面積A及び当該ジャスト面M0 から垂直方向の微小厚さΔDとから構成される体積Vの格子空間L0 と、前記オフ面M1 の単位面積A及び当該オフ面M1 から垂直方向の微小厚さΔDとから構成される体積Vの格子空間L1 をそれぞれ模式的に示した図である。単結晶の結晶面が当該結晶面に加えられた負荷(圧力)に耐え得るだけの強度を有する「強い」面であるためには、前記結晶面に加えられた力が前記結晶面を構成する原子に分散されて、個々の原子にかかる負荷が小さくなることが必要である。ここで、図4に示すように、圧力が加えられる結晶面を(0001)ジャスト面M0 又はオフ面M1 とし、各面M0 ,M1 における格子空間L0 ,L1 を考えると、当該格子空間L0 ,L1 が、体積V中に存在している原子数が最も多く、最大の原子結合密度になるような空間であれば、前記結晶面に加えられた圧力を最大原子結合密度で受けることになる。原子結合密度が大きければ、格子空間L内に存在する共有結合という「骨組み」も多くなるため、圧力が加えられても、当該「骨組み」によって補強されている原子同士は前記圧力を分散させて支え合うことができる。このため、より大きな原子結合密度を有する格子空間Lを構成する結晶面は高強度の面といえる。ここで、前記ジャスト面M0 の格子空間L0 よりも前記オフ面M1 の格子空間L1 の方が、内部に有する原子数が多く、原子結合密度が大きい。従って、ジャスト面M0 ,N0 よりもオフ面M1 ,N1 (図1参照)の方に「強度」が得られることになるので、切削工具の切刃Eを構成する面としてオフ面M1 ,N1 を用いると、強度の面で効果が期待できる。従って、最高強度の面となるオフ面をそれぞれM10,N10(いずれも図示せず)とすれば、当該オフ面M10,N10は、各オフ面M1 ,N1 からの微小厚さΔDに対して、最も原子数が多くなる結晶方位を有する面といえる。傾斜させる方向については、{1−100}面においては、<0001>方向に沿って傾斜させたオフ面N1 を用いればよい。一方、{0001}面の傾斜させる方向については、<11−20>方向又は<1−100>方向の単純な結晶方位指数の方向に限らず、a軸を中心にc軸から所定角度だけ回転させた方向に沿って傾斜させたオフ面M1 を用いても良い。オフ角度θ1 ,θ2 の大きさについては、オフ角度θ1 ,θ2 がある角度よりも小さい場合には、オフ面M1 ,N1 はジャスト面M0 ,N0 と同一視できる。また、一定の方向に沿って、オフ角度θ1 ,θ2 を大きくしていくと、より高強度のオフ面M1 ,N1 が得られていくが、最高強度のオフ面M10,N10が得られるオフ角度θ10,θ20(いずれも図示せず)を境にして、再びオフ面M1 ,N1 の強度が低下していく。即ち、オフ角度θ1 ,θ2 を調節して、適当な強度を有するオフ面M1 ,N1 を採用すればよいので、オフ角度θ1 ,θ2 の大きさは問わない。例えば、8°以内のオフ角度θ1 で傾斜した{0001}オフ面M1 の特性は、ジャスト面M0 と同一視できると同時に、前記8°以内のオフ角度θ1 であれば、出願人の有する研磨技術によりジャスト面M0 を正確に出すことも可能である。
上記のように、結晶面からの微小厚さΔDに対して原子数が多くなる結晶方位を有する面が高強度の面になること、劈開のし易さ、結晶面同士の位置関係等を考慮すると、六方格子Hの結晶面のうち{0001}面及び{1−100}面が切刃の構成面として適当である。また、当該両結晶面を比較すると、{0001}面の方が高強度であるといえる。切刃Eを構成する複数面のうち、切削加工時に切削抵抗によって最も負荷がかかるのはすくい面Fであるため、当該すくい面Fに{0001}面を充てることで、より一層高強度の切刃Eを形成することが可能となる。また、ジャスト面M0 よりも前記原子結合密度が大きくなるように傾斜させたオフ面M1 をすくい面Fに用いれば、更に高強度が期待できる。
以上より、オフ角度θ1 ,θ2 の大きさや傾斜させる方向によって、結晶面の特性を調節できるので、切削工具を作成する際には、切刃Eの用途や形状、加工し易さ等を考慮しつつ、それらの条件との兼ね合いで、ジャスト面M0 ,N0 、又は所定方向に沿って所定オフ角度θ1 ,θ2 で傾斜させたオフ面M1 ,N1 を選択し、選択した結晶面を切刃Eの構成面に充てることによって、SiC単結晶の工具材料としての優れた特性が最大限に発揮された切刃Eが得られる。また、従来では被加工物W0 の材質等によって制限されていた切削方法や加工形態の幅が広がる。例えば、図3(b)に示されるように、バイト20で被加工物W0 を旋削加工する場合に、正のすくい角ψ2 の場合には、バイト20の切れ味が良く、切削抵抗P2 が減少するものの、シャンク21の先端のチップG2 が取付けられている部分は支持されていないので切刃E2 の刃先強度が低く、旋盤の剛性が低い場合や被加工物W0 が軟質で削りやすい場合のみの使用に限られていた。このため、図3(a)に示されるように、被加工物W0 が硬い場合や断続切削等の衝撃力が大きいときには、切削抵抗P1 が増加するがシャンク21で支持されて刃先強度が確保される負のすくい角ψ1 のチップG1 を使用していた。しかし、本発明の切削工具は、すくい面Fをはじめとする切刃Eの各構成面が非常に高強度の結晶面で構成されているので、被加工物W0 が硬質材料の場合でも、負のすくい角ψ1 での切削に限定されることなく、正のすくい角ψ2 でも切削可能となって、切削方法の選択肢の幅が広がる。また、従来では、被加工物W0 の仕上面を鏡面加工のように高精度に加工するためには、切削加工の後に研削加工を実施する。特に、ダイヤモンド単結晶工具で切削不可能な被加工物W0 である場合には前記研削加工は不可欠である。しかし、SiC単結晶からなる切削工具を用いれば、切削加工のみで研削加工後の仕上面よりも高精度な仕上面を得られる。このため、研削加工が難しい狭小部分や複雑形状部分においても、高精度な仕上面に加工できる。また、加工時間の短縮や加工費用の削減等の効果も期待できる。
上記の優れた特性を有するSiC単結晶を切刃部に使用した切削工具を用いると、鋼材、窒化チタン、酸化チタン、炭素繊維複合材料、窒化珪素やアルミナ系セラミックス等の高硬度の工作物や、アルミニウム合金やチタン合金等の耐熱性の低い工作物の切削加工、又は、高硬度の鋼材からなる金型の狭小部分や複雑形状部分の超精密加工等、従来では困難であった加工が可能となる。
次に、図5ないし図10を用いてSiC単結晶を使用した切削工具を例示する。図5(a),(b)はそれぞれSiC単結晶からなる切刃部31を装着した正面フライスカッタ30の正面図及び側面図である。図6(a)は平板状のSiC単結晶からなる切刃部41がボデー部43の先端に固定されて、フラットドリルに類似のドリル40の正面図であり、同(b)は、当該切刃部41の側面図である。図7(a),(b)はそれぞれ刃部54の先端部分がSiC単結晶からなる切刃部51となっているリーマ50の正面図及び側面図である。図8(a)は、SiC単結晶の切刃部61がすくい面部分に装着された二枚刃のエンドミル60を示した正面図であり、同(b)は、従来の二枚刃のエンドミル60’の正面図である。図9(a)は、超硬合金等からなる基台72のコーナ(ノーズ)部にSiC単結晶の切刃部71が接着された正三角形状のスローアウェイチップ70の外観図であり、同(b)は、超硬合金等からなる基台82の上面に全面にわたって平板状のSiC単結晶の切刃部81が接着された正三角形状のスローアウェイチップ80の外観図である。図10は、全体が一体成形された小型のボールエンドミル90がホルダ91に取り付けられた状態を示す図である。
〔正面フライスカッタ30〕
まず、切刃部の一部にSiC単結晶が使用される切削工具としては、例えば、図5に示されるように、皿(円柱)状の外周側面と端面に数個の切刃部31を有する正面フライスカッタ30がある。当該正面フライスカッタ30は、所定形状に加工されたチップ状のSiC単結晶が切刃部31として本体部33の所定位置(切刃装着部位)に直接接着されたものでも良いし、後述のSiC単結晶のスローアウェイチップが切刃部31として楔止めやねじ止め等で前記切刃装着部位に固定されたものでも良い。当該切刃部31の形状は、従来のチップの形状と同じでよい。例えば、図5では各コーナ部が球面状に面取りされた略長方形のチップとなっていて、すくい面F3 及び当該すくい面F3 と直交する逃げ面S3 は、それぞれSiC単結晶の{0001}面及び{1−100}面で構成されている。上記の通り、ジャスト面M0 ,N0 でもオフ面M1 ,N1 でも良い。なお、図5の符号32はシャンク部である。
〔ドリル40〕
次に、図6に示されるように、SiC単結晶の切刃部41を有するフラットドリルに類似のドリル40がある。当該ドリル40は超硬合金等でシャンク部42(図6では図示せず)及びボデー部43が一体成形され、当該ボデー部43の先端部分には平板状のSiC単結晶の切刃部41を差し込めるようにスリットが形成されている。前記切刃部41は略ホームベース形状の平板であって、図6(a)に示されるように、長方形の平板の一端側のみを更に薄く切削した後に、当該一端側の二つの角を切り落として切刃E4 としたものである。成形前の長方形の前記平板として、上面が{0001}ジャスト面M0 、短手方向の端面が{1−100}ジャスト面N0 又はオフ面N1 に特定されるように切り出されたものを用いれば、前記ドリル40のすくい面F4 は{0001}オフ面M1 、逃げ面S4 は{1−100}ジャスト面N0 又はオフ面N1 になる。切刃部41はボデー部43先端の前記スリットに差し込まれて固定される。このため、当該ドリル40は、丸棒の先端が平たく尖った形状のフラットドリルに類似の機能を果たすことが可能である。
〔リーマ50〕
また、図7に示されるように、刃部54の先端部分がSiC単結晶からなる切刃部51となっているリーマ50がある。従来のリーマは、超硬合金等で刃部54とシャンク部52が一体成形され、前記刃部54の外周部に縦方向に形成された複数の溝の各縁部を切刃としているが、図7に示されたリーマ50の場合には、従来のリーマの刃部54に形成されている複数の切刃部のみが略中間部から先端まで切り取られて、当該切取り部分に対応する形状に加工されたSiC単結晶の切刃部51が代わりに装着されており、被加工物を切削する刃部54の先端部がSiC単結晶の切刃部51に置き換わって切刃E5 を形成している。当該切刃部51において、すくい面F5 は{0001}ジャスト面M0 又はそのオフ面M1 とする。逃げ面S5 は、当該逃げ面S5 と前記すくい面F5 とのなす角度に応じて、すくい面F5 の結晶面に対応させながら逃げ面S5 を{1−100}ジャスト面N0 又はそのオフ面N1 に決めれば良い。
〔エンドミル60〕
更に、切刃部のすくい面部分にSiC単結晶が装着された複数刃のエンドミルがある。図8(a),(b)にはそれぞれ二枚刃の本発明のエンドミル60、及び従来の二枚刃のエンドミル60’を示す。当該エンドミル60は、従来のエンドミル60’と同様に、超硬合金等で切刃部61’は、首部やシャンク部(いずれも図示せず)と共に一体成形されたものである。しかし、異なる点は、切刃部61’が、すくい面F6 ’を含むように所定形状に切り取られ、その代わりに当該切取り部分の形状に合わせて加工されたSiC単結晶の切刃部61が装着されて、被加工物を切削する切刃部61’がSiC単結晶の切刃部61に置き換わっている点である。前記切刃部61のすくい面F6 及び逃げ面S6 は、SiC単結晶の結晶面と対応させるために、曲面ではなく平らであることが望ましい。当該すくい面F6 及び逃げ面S6 のなす角度によって、オフ角度θ1 ,θ2 を調節して切刃部61の構成面と前記結晶面を対応させればよい。
〔スローアウェイチップ70,80〕
図9に示されるように、一部分がSiC単結晶に置き換わったチップ交換式工具におけるスローアウェイチップ(以下、単に「チップ」と言う。)がある。当該チップとしては、例えば、図9(a)に示されるチップ70は、超硬合金等の従来から使用される工具材料で正三角形や正方形等の形状に成形された基台72において、当該基台72の上面側のコーナ部分のみが薄片状に切除されて、その代わりに当該切除部分に対応するように加工された薄片状のSiC単結晶の切刃部71が接着されている。また、図9(b)に示されるチップ80は、前記基台72と同様にして成形された基台82の上面に、当該上面と同一形状に加工された平板状のSiC単結晶の切刃部81が接着されたものである。上記の各チップ70,80は、SiC単結晶の切刃部71,81を有し、コーナ部周辺のすくい面F7 ,F8 及び逃げ面S7 ,S8 がSiC単結晶に置き換わったものとなっている。なお、チップ70,80の中央の取付け穴の有無は問わない。また、上記の各切削工具において、所定の形状に加工されたSiC単結晶の切刃部を本体部又は刃部の一部に接着する場合には、銀ロウ等の接着材料を用いればよい。一方、チップ交換式工具におけるチップとしては、上記のように別材料の基台を用いるのではなく、全体がSiC単結晶のみで成形されたものでも良い。当該チップは、切刃部全体がSiC単結晶である切削工具の一例である。
〔小型のボールエンドミル90〕
また、微細加工又は狭小部分の加工等で用いられる小型のボールエンドミルやドリル等の切削工具の場合には、当該切削工具自体が小さいので、SiC単結晶を切り出して、切削工具全体を一体成形するのが好ましい。その理由は、一体成形された切削工具は、各々別々に成形された切刃部と本体部とを接着等により一体化させた切削工具に比べて製作し易く、切刃部と本体との接合部分がないので、切刃部の強度も確保されるからである。図10に示される小型のボールエンドミル90は、SiC単結晶で一体成形されている。当該ボールエンドミル90は、従来の小型のボールエンドミルと同様に、ホルダ91等の保持器具に保持された状態で、立形フライス盤等の工作機械に取り付けられて用いられる。前記ボールエンドミル90は、SiC単結晶からなる細い丸棒(円柱)の一端側に二枚刃が形成された形状で、当該二枚刃のすくい面F9 はいずれも当該丸棒の軸方向に平行でかつ軸心を通る平面上に形成されている。このため、ボールエンドミル90の軸方向に直交する方向を、SiC単結晶の<0001>方向に一致させてSiC単結晶を切削し、前記ボールエンドミル90を成形すれば、前記すくい面F9 を{0001}面にすることができる。しかし、一体成形により切削工具を製作する際は、切刃部を特定の結晶面で構成させることは難しいので、厳密な結晶面の特定をしなくても、負荷の最も大きいすくい面として容易に劈開する結晶方位を避けることによって、十分に高硬度で優れた特性を発揮する切削工具が得られる。
また、立方晶のSiC単結晶においても、図11(a),(b)にそれぞれ示されるような(100)ジャスト面Y0 、又は当該(100)ジャスト面Y0 に対して所定角度オフしたオフ面と、(111)面U0 、及び当該(111)面U0 に対して所定角度オフしたオフ面とで、切削工具の切刃部を構成する複数面のうちの2面を構成すると、六方晶のSiC単結晶について詳細に既述したのとほぼ同一の結晶構造理論によって、切刃としての強度を高めることができる。特に、「切刃」としての特性を最も発揮し易い(100)ジャスト面Y0 又は当該(100)ジャスト面Y0 に対して所定角度オフしたオフ面を切刃のすくい角として選択することが望ましい。
上記のことを図12及び図13に模式的に示してある。図12には、立方格子の(100)ジャスト面Y0 及び(111)面U0 を含んで構成される格子空間L00が模式的に示され、図13には、立方格子の(100)ジャスト面Y0 のオフ面Y1 及び(111)面U0 を含んで構成される格子空間L01が模式的に示されている。なお、図13において、θ0 は、(100)ジャスト面Y0 に対するオフ面Y1 のオフ角度を示す。
SiC単結晶からなる切削工具の仕上面精度(加工面の面粗度)について評価し、従来の超硬合金からなる切削工具と比較した。以下に評価方法及び結果を示す。SiC単結晶(6H−SiC)を、結晶面に考慮しながらダイヤモンドホイールを用いて切り出し、正面フライスカッタ30’に装着するためのチップ31’を製作した。当該チップ31’は、一辺が13.5mmの正方形で、厚さが4mmの平板状のチップであり、正方形の四隅を僅かに切り取った形状を有する。当該チップ31’の切刃を構成する結晶面は、すくい面F3 ’は(0001)面を[11−20]方向に沿って8°傾斜させたオフ面であり、横(主)逃げ面は(1−100)面のジャスト面、前(副)逃げ面は(11−20)面のジャスト面である。被加工物W1 は、ウッディホルム社製スウェーデン鋼の「STAVAX(硬度HRC52)」の角材を用いた。フライス盤(牧野ライス製作所製「立形マシニングセンタV56」)を使用し、正面フライスカッタ30’(日立ツール株式会社製簡易カッタβ45「KB080R−32」)の本体部33’に周方向に等間隔をおいて前記チップ31’を3枚装着して前記被加工物W1 の正面フライス加工を行った。図14は、当該正面フライス加工を実施している状態を示す図である。図14の符号Bは正面フライスカッタ30’の回転方向であり、符号Xは被加工物W1 の送り方向である。当該正面フライス加工条件は、周速は50[m/min]、送り速度は100[mm/min]、加工時間は3〔min〕であった。加工終了後に、前記被加工物W1 の加工面の面粗度を、表面粗さ形状測定機(東京精密株式会社製「Surfcom130A」)にて測定した。その結果を図15(a)に示す。
比較例として、超硬合金からなるスローアウェイチップ(日立ツール株式会社製フライス切削用インサート「SNNF13T3TN」)を使用し、当該スローアウェイチップを上記と同一の正面フライスカッタ30’に3枚装着し、上記と同一のフライス盤を使用して、上記と同一の被加工物W1 の正面フライス加工を行った。当該正面フライス加工条件は、回転数は50[m/min]、送り速度は100[mm/min]、加工時間は3〔min〕であった。また、加工終了後に、被加工物W1 の加工面の面粗度を上記と同様に測定した。その結果を図15(b)に示す。
図15(a),(b)はそれぞれ、SiC単結晶及び超硬合金のチップを用いて正面フライス加工を上記の条件で実施した場合の被加工物W1 の加工面の面粗度の測定結果であり、前記加工面の10mmの範囲における面粗度を示したものである。ここで、10mmの範囲における粗さ曲線の最大山高さと最大谷深さの差を「最大高さ粗さ」とすれば、図15(b)に示されるように、超硬合金のチップを用いた場合の被加工物W1 の加工面の「最大高さ粗さ」は、10μmに達した。一方、図15(a)に示されるように、SiC単結晶のチップ31’を用いた場合の被加工物W1 の加工面の「最大高さ粗さ」は、1.6μm程度に留まることが分かった。加工面の測定場所を変えて複数箇所で表面粗さを測定しても、前記「最大高さ粗さ」は同様の数値を示した。この結果、SiC単結晶のチップ31’を用いて加工を行うと、超硬合金の通常のチップを用いた場合よりも被加工物W1 の加工面は遥かに高精度になることがわかった。また、通常、被加工物W1 の加工面を高精度加工するためには、切削加工の後に研削加工を実施するが、当該研削加工を実施しても、加工面の面粗度は平均3ないし4μmである。本測定の結果によれば、SiC単結晶のチップ31’を用いた切削加工のみで、研削加工後の加工面よりも高精度な加工面を得られることが分かった。
図16〜図19に示されるように、SiC単結晶(6H−SiC)を、切削面を考慮しながらダイヤモンドホイールを用いて切り出して、SiCチップ101を製作し、旋盤用バイトホルダー103の先端の超硬チップ102の先端切刃部に前記SiCチップ101を接着して、旋盤用バイト100を形成している。図16は、先端部にSiCチップ101を接着した超硬チップ102の斜視図であり、図17(a)は、被加工物W2 を回転させて、SiCチップ101が接着された旋盤用バイト100を用いて、被加工物W2 の斜面部W2aで加工している状態の斜視図であり、図17(b)は、切屑104の拡大断面図であり、図18は、同様の状態を下方から見た図であり、図19は、旋削状況を示すための図であって、図18のSicチップ101の先端部の拡大図である。当該SiCチップ101は、(底辺×高さ×厚さ)が(4×5×2mm)の二等辺三角形状をなしていて、先端の切刃E6 は、半径1mmの円弧状(ノーズ状)に形成されて、母材である超硬チップ102の先端刃先部に接着される。当該SiCチップ101の切刃E6 を構成するすくい面F10は(0001)ジャスト面のオフ面である。被加工物W2 は、クロムモリブデン鋼(SCM420H)で成形された動力伝達用プーリーであって、その斜面部W2a の旋削加工を行った。被加工物W2 の旋削面である斜面部W2aには浸炭焼入れされて、58〜62HRCの硬度を有して、厚さ0.4mmの焼入れ層が形成されている。旋盤加工の条件としては、被加工物W2 の回転速度(周速)は120[m/min]であり、被加工物W2 の斜面に沿ったバイト100の送り量(K)は、被加工物W2 の1回転に対して0.08[mm]であり、切込み深さ(T1) は0.2[mm]で、森精機株式会社製のNC旋盤を使用した。
旋削結果は、旋削面は鏡面に仕上がる程度に良好であった。切屑104は、図17に示されるように、細断されることなく細く繋がっていて、しかも熱変形のない状態であって、切屑104の断面の大きさは(幅×厚さ)=(0.6×0.06mm)であった。切屑104の幅が0.6mmであることは、SiCチップ101の先端の切刃の半径(R)〔=1mm〕と切込み深さ(0.2mm)に対応していて、切屑104の厚み(Z)が0.06mmであることは1回転当たりの送り量(K)に対応していることから、切屑104の断面積は、SiCチップ101の切刃E6 が被加工物に0.2mmだけ切り込んでいる位置から0.08mmだけ移動した位置までの面積とほぼ同じであることが分かる。一方、旋削面に関しては、加工面の「最大高さ粗さ」は、1.5μm程度であり、しかも旋削直後の加工面は殆ど熱がない状態であった。加工時に発熱が殆どないことは、加工負荷が少ないことを意味し、切屑104の塑性変形も殆ど無くて加工がスムーズに行われたことを示す。なお、図17〜図19において、Jは、旋盤用バイト100の送り方向を示し、105は、SiCチップ101の円弧状の切刃E6 の中心を示す。
クロムモリブデン鋼(SCM420H)で成形された動力伝達用プーリーは、硬度が高いために、従来は旋削加工では旋削が不可能な領域であったため、セラミック砥石を使用した研削加工により仕上加工が行われていて、非常に長い加工時間と特別の研削設備環境を必要としていたが、本発明に係るSiCチップの使用により、旋削加工が可能となって、加工精度を確保したうえで、加工時間の短縮が図られる。
(a) は、六方格子Hにおける各結晶面、及びその一面である(0001)ジャスト面M0 を[ 11−20] 方向に沿って所定のオフ角度θ1 で傾斜させたオフ面M1 を示した図であり、 (b)は、(1−100)ジャスト面N0 を [0001] 方向に沿って所定のオフ角度θ2 で傾斜させたオフ面N1 を示した図である。 正方形のチップGを用いたスローアウェイバイト10における切刃Eの構成面を示した図である。 (a),(b)はそれぞれ、スローアウェイバイト20を用いて負又は正のすくい角ψ1 ,ψ2 で被加工物W0 を旋削している状態を示すチップG1 ,G2 の断面図である。 (a)は、六方格子Hの(0001)ジャスト面M0 及びオフ面M1 において、ジャスト面M0 の単位面積A及び当該ジャスト面M0 から鉛直方向の微小厚さΔDとから構成される体積Vの格子空間L0 を模式的に示した図であり、(b)は、前記オフ面M1 の単位面積A及び当該オフ面M1 から垂直方向の微小厚さΔDとから構成される体積Vの格子空間L1 を模式的に示した図である。 (a),(b)はそれぞれSiC単結晶からなる切刃部31を装着した正面フライスカッタ30の正面図及び側面図である。 (a),(b)は、それぞれ平板状のSiC単結晶からなる切刃部41がボデー部43の先端に固定されたフラットドリルに類似のドリル40の正面図、及び側面図である。 (a),(b)はそれぞれ刃部54の先端部分がSiC単結晶からなる切刃部51となっているリーマ50の正面図及び側面図である。 (a)は、SiC単結晶の切刃部61がすくい面部分に装着された二枚刃のエンドミル60を示した正面図であり、(b)は、従来の二枚刃のエンドミル60’の正面図である。 (a)は、超硬合金等からなる基台72のコーナ部にSiC単結晶の切刃部71が接着された正三角形状のスローアウェイチップ70の外観図であり、(b)は、超硬合金等からなる基台82の上面に全面にわたって平板状のSiC単結晶の切刃部81が接着された正三角形状のスローアウェイチップ80の外観図である。 全体が一体成形された小型のボールエンドミル90がホルダ91に取り付けられた状態を示す図である。 (a),(b)は、それぞれ立方晶の(100)ジャスト面、及び(111)面を示す図である。 立方格子の(100)ジャスト面Y0 及び(111)面U0 を含んで構成される格子空間L00を模式的に示す図である。 立方格子の(100)ジャスト面Y0 のオフ面Y1 及び(111)面U0 を含んで構成される格子空間L01を模式的に示す図である。 正面フライスカッタ30’にSiC単結晶又は超硬合金のチップを用いて正面フライス加工を実施している状態を示す図である。 (a),(b)はそれぞれ、SiC単結晶及び超硬合金のチップを用いて正面フライス加工を実施した場合の被加工物W1 の加工面の面粗度の測定結果である。 先端部にSiCチップ101を接着した超硬チップ102の斜視図である。 (a)は、被加工物W2 を回転させて、SiCチップ101が接着された旋盤用バイト100を用いて、被加工物W2 の斜面部W2aで加工している状態の斜視図であり、(b)は、切屑104の拡大断面図である。 同様の状態を下方から見た図である。 旋削状況を示すための図であって、図18のSicチップ101の先端部の拡大図である。 SiC単結晶のチップを用いて、被加工物W2 である動力伝達用プーリーの斜面部を旋削加工した加工面の面粗度の測定結果である。
符号の説明
E :切刃
F :すくい面
H :六方格子
0 :{0001}ジャスト面
1 :{0001}オフ面
0 :{1−100}ジャスト面
1 :{1−100}オフ面
1,P2 :切削抵抗
3 〜S8 :逃げ面
Sa:横(主)逃げ面
Sb:前(副)逃げ面
0,W1,W2 :被加工物
0 :{100}ジャスト面
1 :{100}オフ面
θ0 ,θ1 ,θ2 :オフ角度
31,41,51,61,71,81:SiC単結晶からなる切刃部

Claims (7)

  1. 旋削加工又は中ぐり加工又は平削り加工等に使用される各種バイト、もしくはフライス加工に使用されるエンドミル又はフライスカッタ、もしくは穴加工に使用されるドリル、リーマー等の穴あけ工具、もしくはチップ交換式切削工具等の工作機械を用いて工作物を切削加工するために使用される切削工具において、
    当該切削工具の切刃部の一部又は全体が炭化珪素の単結晶であることを特徴とする炭化珪素単結晶からなる切削工具。
  2. 前記切削工具の切刃部は、本体の切刃装着部位に炭化珪素単結晶が接着又は固定されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素単結晶からなる切削工具。
  3. 前記切削工具の切刃部は、全体が炭化珪素単結晶によって一体成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化珪素単結晶からなる切削工具。
  4. 前記切削工具の切刃部を構成する複数面のうち一つは、六方晶の炭化珪素単結晶における{0001}面、又は当該{0001}面に対して所定オフ角度で傾斜したオフ面であり、残りの面の一つは、{1−100}面、又は当該{1−100}面に対して所定オフ角度で傾斜したオフ面であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の炭化珪素単結晶からなる切削工具。
  5. 前記切刃部の構成面のうちすくい面が、六方晶の炭化珪素単結晶の{0001}面、又は当該{0001}面のオフ面であることを特徴とする請求項4に記載の炭化珪素単結晶からなる切削工具。
  6. 前記切削工具の切刃部を構成する複数面のうち一つは、立方晶の炭化珪素単結晶における{100}面、又は当該{100}面に対して所定オフ角度で傾斜したオフ面であり、残りの面の一つは、{111}面、又は当該{111}面に対して所定オフ角度で傾斜したオフ面であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の炭化珪素単結晶からなる切削工具。
  7. 前記切刃部の構成面のうちすくい面が、立方晶の炭化珪素単結晶の{100}面、又は当該{100}面のオフ面であることを特徴とする請求項6に記載の炭化珪素単結晶からなる切削工具。
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