JP4822175B2 - 対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置 - Google Patents

対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置 Download PDF

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Description

本発明は、対物レンズ、光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置に関し、特に異なる波長の光源を用いて異なる光情報記録媒体に対して適切に情報の記録及び/又は再生を行える光ピックアップ装置及び光情報記録再生装置、並びにそれに用いる対物レンズに関する。
近年、波長400nm程度の青紫色半導体レーザを用いて、情報の記録及び/又は再生(以下、記録及び/又は再生を、記録/再生、或いは、記録再生ともいう)を行える高密度光ディスクシステムの研究・開発が急速に進んでいる。一例として、NA0.85、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるBlu−ray Disc(以下、BDという)では、DVD(NA0.6、光源波長650nm、記憶容量4、7GB)と同じ大きさである直径12cmの光ディスクに対して、1層あたり23〜27GBの情報の記録が可能であり、又、NA0.65、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるHD DVD(High Definition DVD:以下、HDという)では、直径12cmの光ディスクに対して、1層あたり15〜20GBの情報の記録が可能である。尚、BDでは、光ディスクの傾き(スキュー)に起因して発生するコマ収差が増大するため、DVDにおける場合よりも保護層を薄く設計し(DVDの0.6mmに対して、0.1mm)、スキューによるコマ収差量を低減している。以下、本明細書では、このような光ディスクを「高密度光ディスク」と呼ぶ。
ところで、かかるタイプの高密度光ディスクに対して適切に情報の記録/再生ができると言うだけでは、光ディスクプレーヤ/レコーダの製品としての価値は十分なものとはいえない。現在において、多種多様な情報を記録したDVDが販売されている現実をふまえると、高密度光ディスクに対して情報の記録/再生ができるだけでは足らず、例えばユーザが所有しているDVDに対しても同様に適切に情報の記録/再生ができるようにすることが、高密度光ディスク用の光ディスクプレーヤ/レコーダとしての商品価値を高めることに通じるのである。このような背景から、高密度光ディスク用の光ディスクプレーヤ/レコーダに搭載される光ピックアップ装置は、高密度光ディスクとDVDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できる性能を有することが望まれる。
高密度光ディスクとDVDの何れに対しても互換性を維持しながら適切に情報を記録/再生できるようにする方法として、高密度光ディスク用の光学系とDVD用の光学系とを情報を記録/再生する光ディスクの記録密度に応じて選択的に切り替える方法が考えられるが、複数の光学系が必要となるので、小型化に不利であり、またコストが増大する。
従って、光ピックアップ装置の構成を簡素化し、低コスト化を図るためには、互換性を有する光ピックアップ装置においても、高密度光ディスク用の光学系とDVD用の光学系とを共通化して、光ピックアップ装置を構成する光学部品点数を極力減らすのが好ましい。そして、光ディスクに対向して配置される対物レンズを共通化し、更にこの対物レンズを単レンズ構成とすることが光ピックアップ装置の構成の簡素化、低コスト化に最も有利となる。尚、情報の記録/再生を行う際に使用される光束の波長が互いに異なる複数種類の光ディスクに対して共通な対物レンズとして、球面収差の波長依存性を有する回折構造をその表面に形成し、かかる回折構造の波長依存性を利用して、記録/再生波長や、光ディスクの保護層厚さの違いによる球面収差を補正する対物レンズが知られている。
ここで、特許文献1には、高密度光ディスクとDVDに対して互換可能に情報の記録及び/又は再生を行える単レンズ構成の対物レンズが開示されている。
ここで、特許文献1に開示された対物レンズは、青紫色レーザ光束に対して2次回折光を発生させ、DVD用の赤色レーザ光束に対して1次回折光を発生させるような回折構造を有し、かかる回折構造の回折作用により高密度光ディスクとDVDの保護層厚さの違いによる球面収差を補正するものである。
特開2004−79146号公報
しかし、この対物レンズは、単レンズ構成であるので、低コストで生産が可能であるものの、以下に述べるような2つの課題を有している。
課題の1つは、回折構造により発生する球面収差の波長依存性が大きいことである。このような場合、発振波長が設計波長からずれたレーザ光源が使用できず、レーザ光源の選別が必要となるため光ピックアップ装置の製造コストが増大する。回折光の回折角は、「回折次数×波長/回折ピッチ」で表される。回折作用を利用して使用波長(以下、使用波長を、記録/再生波長ともいう)が互いに異なる光情報記録媒体(以下、光情報記録媒体を、光ディスクともいう)間の互換を実現するためには、使用波長間の回折角に所定の差を持たせる必要がある。上述した「レーザ光源の選別問題」は、高密度光ディスクとDVDの使用波長間で「回折次数×波長」の値が殆ど同じ回折構造を利用していることに起因している。特許文献1に開示された対物レンズにおいて、青紫色レーザ光束と赤色レーザ光束との「回折次数×波長」の比は810/655=1.24と1に近いため(但し、波長の単位をnmとした)、高密度光情報記録媒体とDVDの保護層厚さの違いによる球面収差を補正するために必要な回折角の差を得るためには、回折ピッチを小さくしなければならない。そのため、回折構造の球面収差の波長依存性が大きくなり、上述したような、「レーザ光源の選別問題」が顕在化する。
もう1つの課題は、傾斜が大きな光学面上に回折構造を形成しているため、段差部分の光束のけられや、回折構造の輪帯形状角部などの微細な構造の転写不良による透過率低下が起こり、十分な光利用効率が得られないことである。対物レンズの開口数が大きくなるほど、光学面の傾斜は大きくなるため、開口数0.85の対物レンズを使用するBDでは、かかる透過率の低下がより顕著となる。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、異なる波長の光束を用いて、複数種類の光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に適用可能な対物レンズであって、球面収差の波長依存性が小さい対物レンズ、この対物レンズを使用した光ピックアップ装置、及び、この光ピックアップ装置を搭載した光情報記録再生装置を提供することである。本発明の更なる目的は、異なる種類の光情報記録媒体に対して良好に情報の記録及び/又は再生を行える対物レンズであって、球面収差の波長依存性が小さく、高い透過率を有する単レンズ構成の対物レンズ、この対物レンズを使用した光ピックアップ装置、及び、この光ピックアップ装置を搭載した光情報記録再生装置を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明に係るに記載の対物レンズは、光ピックアップ装置に用いられる対物レンズであって、パワーを有するレンズの一面に、所定の特性を持つ第1光路差付与構造と第2光路差付与構造とを重畳させた重畳構造を有する。
異なる波長の光束を用いて、複数種類の光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に適用可能な対物レンズであって、球面収差の波長依存性が小さい対物レンズ、この対物レンズを使用した光ピックアップ装置、及び、この光ピックアップ装置を搭載した光情報記録再生装置を提供することができる。
また、異なる種類の光情報記録媒体に対して良好に情報の記録及び/又は再生を行える対物レンズであって、球面収差の波長依存性が小さく、高い透過率を有する単レンズ構成の対物レンズ、この対物レンズを使用した光ピックアップ装置、及び、この光ピックアップ装置を搭載した光情報記録再生装置を提供することができる。
対物レンズの縦球面収差図の概略図である。 対物レンズの縦球面収差図の概略図である。 対物レンズの縦球面収差図の概略図である。 光源側の光学面に回折構造と位相構造とを形成した対物レンズOBJの例にかかる断面図である。 光源側の光学面に回折構造と位相構造とを形成した対物レンズOBJの別例にかかる断面図である。 本実施の形態の光ピックアップ装置の構成を概略的に示す図である。
以下本発明の好ましい形態を説明する。
第1の構成の対物レンズは、第1波長λ1の第1光束を出射する第1光源と、第2波長λ2(λ1<λ2)の第2光束を出射する第2光源と、対物レンズを含む集光光学系と、光検出器とを少なくとも有し、厚さt1の保護層を有する第1光情報記録媒体に対して、前記第1光束を用いて情報の再生及び/又は記録を行い、厚さt2(t1<t2)の保護層を有する第2光情報記録媒体に対して、前記第2光束を用いて情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられる対物レンズであって、
パワーを有する前記対物レンズの一面に、入射される光束の波長をより長い波長とした場合には球面収差が補正不足方向に変化する第1光路差付与構造と、第2光路差付与構造とを重畳させた重畳構造を有し、
前記対物レンズの前記一面は、光軸を含む中央領域と前記中央領域を囲む周辺領域とを有し、前記重畳構造は前記中央領域に形成され、
前記第1光路差付与構造は、前記第1光束の入射に対して回折効率が最大となる回折次数と、前記第2光束の入射に対して回折効率が最大となる回折次数とが、同一次数となる回折構造であり、
前記同一次数は1であり、
前記対物レンズは樹脂レンズであって、
以下の(2)式、及び(3)式を満たす。
380nm<λ1<420nm (2)
630nm<λ2<680nm (3)
第2の構成の対物レンズは、第1の構成に記載の対物レンズにおいて、前記対物レンズの前記一面には、前記重畳構造が形成された部分と、前記重畳構造が形成されていない部分とを有する。
の構成の対物レンズは、第1又は第2の構成に記載の対物レンズにおいて、前記対物レンズの前記一面は、光ピックアップ装置に搭載された際に光源側に配置される面である。
の構成の対物レンズは、第1乃至第の構成の何れかに記載の対物レンズにおいて、前記対物レンズの前記一面は、凸面である。
の構成の対物レンズは、第1乃至第の構成の何れかに記載の対物レンズにおいて、前記対物レンズの他方の面は、非球面である。
の構成の対物レンズは、第1乃至第の構成の何れかに記載の対物レンズにおいて、前記対物レンズは、単レンズである。
第7の構成の対物レンズは、第1乃至第の構成の何れかに記載の対物レンズにおいて、前記回折構造のブレーズ化波長λBが以下の(1)式を満たす。
λ1<λB<λ2 (1)
の構成の対物レンズは、第1乃至第7のいずれかの構成に記載の対物レンズにおいて、前記第1光情報記録媒体に対して情報の再生又は記録を行う際の、前記対物レンズの開口数をNA1とし、前記第2光情報記録媒体に対して情報の再生又は記録を行う際の、前記対物レンズの開口数をNA2としたとき、前記開口数NA2内に相当する領域内に前記重畳構造を備え、前記回折構造のブレーズ化波長λB、前記開口数NA1、及び前記開口数NA2が以下の(4)式、及び(5)式を満たす。
1.15×λ1<λB<0.85×λ2 (4)
NA2/NA1<0.8 (5)
なお、ここでいう「位相構造」とは、光軸方向の段差を複数有し、入射光束に対してその段差間で光路差を付加する構造の総称である。この段差により入射光束に付加される光路差は、入射光束の波長の整数倍であっても良いし、入射光束の波長の非整数倍であっても良い。また、本明細書において、「光路差付与構造」とは、上述の位相構造、及び回折構造を含む位相差付与構造を含むものとする。
本発明の対物レンズを想起するに至る考え方を、分かり易く説明するために、以下に具体的な一例を挙げながら説明するが、本発明はこの具体例に限定されるものではない。図1〜3は、対物レンズの縦球面収差図の概略図である。図1〜3に示す、近軸像点位置を原点とする球面収差において、近軸像点よりも手前側で光軸と交わる場合(図で原点より左側、すなわち対物レンズに近い側)を「補正不足」、近軸像点よりも遠い位置で光軸と交わる場合(図で原点より右側、すなわち対物レンズに遠い側)を「補正過剰」とする。ここでは、第1の光情報記録媒体としてBD、第2の光情報記録媒体としてDVDを例にとり説明する。縦軸の瞳座標E2はDVDの開口数に相当し、E1はBDの開口数に相当する。
まず、BDとDVDの保護層厚さの差に起因して生じる球面収差、及び/又は使用する光束の波長の差に起因して生じる球面収差を補正するために回折構造のみを、前記対物レンズの光学面における中央領域(瞳座標0〜E2の範囲)に形成した場合を考える。図1は、かかる場合の縦球面収差図である。
図1の実線で示すように、波長λ1の光束が通過した場合、球面収差の値は光軸からの位置に関わらずゼロであるとする。中央領域に形成した回折構造はBDとDVDの保護層厚さの差に起因する球面収差を補正するための構造であるので、入射光束の波長が長くなった場合に球面収差が補正不足方向に変化し、入射光束の波長が短くなった場合に球面収差が補正過剰方向に変化するような特性を有する。従って、波長λ1がΔλ(Δλ>0)だけ長くなった場合には、図1において点線で示したように、中央領域では球面収差は補正不足方向に変化し、波長λ1がΔλ(Δλ>0)だけ短くなった場合には、図1において一点鎖線で示したように、中央領域では球面収差は補正過剰方向に変化する。しかし、図1に示す例では、周辺領域である瞳座標E2〜E1の範囲においては、回折構造が存在しないので、球面収差の波長依存性は小さく、球面収差はほぼ一定である。このように、波長が変化した場合に、球面収差カーブが不連続になると、5次以上の高次成分の球面収差が発生することになるため問題となる。光ピックアップ装置において光源として使用される半導体レーザは、製造誤差により数nm程度の波長誤差を個体間で持つ。かかる波長誤差により発生する3次球面収差成分は、コリメートレンズの光軸方向の位置調整により補正できるものの、高次球面収差は、コリメートレンズの光軸方向の位置調整だけでは補正出来ない。そのため、図1に示したような球面収差の波長依存性を有する対物レンズでは、設計波長からずれた半導体レーザが使用できないため、半導体レーザの選別が必要となり量産として成立しない虞がある。
上述のような課題に対して、本発明における対物レンズの一態様では、図2に示すような球面収差の波長依存性を有する位相構造を形成した。図2は、対物レンズの光学面に、所定の位相構造のみを形成した場合の縦球面収差図である。この位相構造は、入射光束の波長が長くなった場合に球面収差が補正過剰方向に変化し、入射光束の波長が短くなった場合に球面収差が補正不足方向に変化し、前述した回折構造とは逆の波長依存性を有する。
図1に示す回折構造の特性に合わせて、図2に示す位相構造の特性を決めることで、回折構造の球面収差の波長依存性をうち消すようにできできる。また更に、図3に示す縦球面収差図のように、λ1−Δλの光束が通過した場合でもλ1+Δλの光束が通過した場合でも、球面収差カーブが連続となるようにした場合には、高次球面収差の発生を小さくできる。
このとき、位相構造により付加される光路差を、BDの設計波長(λ1)とDVDの設計波長(λ2)のそれぞれに対して同じ位相差となる位相構造の段差量に決定することによって、位相構造を形成した場合でも、回折構造によるλ1とλ2の集光特性を変化させず、回折構造の球面収差の波長依存性(ここでは、λ1やλ2から数nmの範囲で入射光束の波長が変化した際の球面収差変化を指す)を補正することが可能となる。尚、「同量の光路差」とは、λ1とλ2に対して位相構造により付加される光路差が以下の2つの式を満たすものとする。
a×0.9×λ1 ≦ L1 ≦ a×1.1×λ1
b×0.9×λ2 ≦ L2 ≦ b×1.1×λ2
ここで、L1、L2はそれぞれ、位相構造の一つの段差によって生じる波長λ1、λ2での光路差である。また、aは任意の整数を表し、bはaよりも小さい任意の正の整数を表す。
尚、aとbの組み合わせは、(a、b)=(5、3)、(10、6)であることが好ましい。
ここで、本態様の対物レンズでは、回折効率が最大となる回折次数が、前記第1光束及び前記第2光束の何れに対しても同一次数となるように、回折構造の段差量を決定しているため、大きなピッチでの球面収差補正(記録/再生波長や、保護層厚さの違いによる球面収差の補正)が可能である。従って、回折構造の球面収差の波長依存性が大きくなりすぎないため、それを補正するための位相構造のピッチが小さくなりすぎない。そのため、回折構造や位相構造の形状誤差による透過率低下を抑制できる。
さらに、本態様の対物レンズでは、比較的傾斜が小さい中央領域に微細な段差を有する回折構造や位相構造を形成しているため、段差部分の光束のけられや、微細構造の転写不良による透過率低下が抑制でき、十分な光利用効率を得ることが可能である。
尚、回折構造と位相構造とは、異なる光学面に形成しても上述の効果が得られるが、この場合、形状誤差による透過率低下が起こる可能性のある光学面が2つとなってしまう。本態様の対物レンズのように、回折構造と位相構造とを同一の光学面上に重畳して形成することで、形状誤差による透過率低下を抑制できるという利点がある。
図4は、光源側の光学面に回折構造と位相構造とを形成した対物レンズOBJの例にかかる断面図であるが、理解しやすいように回折構造DSと位相構造PSとは誇張して描いている。中央領域CRは、そこを通過した第1光束及び第2光束がそれぞれ共に、それぞれ対応する光情報記録媒体の記録又は再生に共通して利用される領域に対応し、周辺領域PRは、そこを通過した第1光束のみが、対応する光情報記録媒体の記録又は再生の際に利用される領域に対応する。図4において、実線で示す光軸Xを中心とした断面がブレーズ状の回折構造DSは、位相構造PSと重畳させているため、局所的に軸線方向に変位した構成となっている。図4に示す例では、回折構造DSが正の向きのブレーズ構造のみからなるために、位相構造PSにおける光軸方向の段差及びその延長線とブレーズの頂点を通る線とを結ぶと、位相構造PSの形状を示す包絡線(図4で示す点線)が描かれる。尚、回折構造DSとして、負の向きのブレーズ構造を混在させてもよい。
の構成の光ピックアップ装置は、光源と、第1乃至第の構成の何れかに記載の対物レンズと、光検出器とを備えた。
10の構成の光情報記録再生装置は、第の構成に記載の光ピックアップ装置を搭載した。
また、本明細書において、「対物レンズ」とは、光ピックアップ装置において光情報記録媒体に対向する位置に配置され、光源から射出された光束を、光情報記録媒体(光ディスクともいう)の情報記録面上に集光する機能を有する光学系であって、光ピックアップ装置に搭載された際には、アクチュエータにより少なくとも光軸方向に変位可能される光学系を指す。「対物レンズ」は単レンズであっても良いし、複数のレンズから構成されていても良く、また他の光学素子を含んでいても良い。
また、対物レンズをガラスレンズとする場合は、ガラス転移点Tgが400℃以下であるガラス材料を使用すると、比較的低温での成形が可能となるので、金型の寿命を延ばすことが出来る。このようなガラス転移点Tgが低いガラス材料としては、例えば(株)住田光学ガラス製のK−PG325や、K−PG375(共に製品名)がある。
ところで、ガラスレンズは一般的に樹脂レンズよりも比重が大きいため、対物レンズをガラスレンズとすると、重量が大きくなり対物レンズを駆動するアクチュエータに負担がかかる。そのため、対物レンズをガラスレンズとする場合には、比重が小さいガラス材料を使用するのが好ましい。具体的には、比重が3.0以下であるのが好ましく、2.8以下であるのがより好ましい。
また、対物レンズを樹脂レンズとする場合は、環状オレフィン系の樹脂材料を使用するのが好ましく、環状オレフィン系の中でも、波長405nmに対する温度25℃での屈折率が1.54乃至1.60の範囲内であって、−5℃から70℃の温度範囲内での温度変化に伴う波長405nmに対する屈折率変化率dN/dT(℃−1)が−10×10−5乃至−8×10−5の範囲内である樹脂材料を使用するのがより好ましい。
或いは、本発明の対物レンズに適した樹脂材料として、上記環状オレフィン系以外にも「アサーマル樹脂」がある。アサーマル樹脂とは、母材となる樹脂の温度変化に伴う屈折率変化率とは、逆符号の屈折率変化率を有する直径が30nm以下の粒子を分散させた樹脂材料である。一般に、透明な樹脂材料に微粉末を混合させると、光の散乱が生じ、透過率が低下するため、光学材料として使用することは困難であったが、微粉末を透過光束の波長より小さい大きさにすることにより、散乱が事実上発生しないようにできることがわかってきた。
さて樹脂材料は、温度が上昇することにより、屈折率が低下してしまうが、無機粒子は温度が上昇すると屈折率が上昇する。そこでこれらの性質をあわせて打ち消しあうように作用させることにより、屈折率変化が生じないようにすることも知られている。本発明の対物レンズの材料として、母材となる樹脂に30ナノメートル以下、好ましくは20ナノメートル以下、さらに好ましくは10〜15ナノメートルの無機粒子を分散させた材料を利用することで、屈折率の温度依存性が無いか、あるいはきわめて低い対物レンズを提供できる。
たとえば、アクリル樹脂に、酸化ニオブ(Nb2O5)の微粒子を分散させている。
母材となる樹脂は、体積比で80、酸化ニオブは20程度の割合であり、これらを均一に混合する。微粒子は凝集しやすいという問題があるが、粒子表面に電荷を与えて分散させる等の技術により、必要な分散状態を生じさせることが出来る。
後述するように、母材となる樹脂と粒子との混合・分散は、対物レンズの射出成形時にインラインで行うことが好ましい。いいかえると、混合・分散した後は、対物レンズに成形される迄、冷却・固化されないことが好ましい。
なお、この体積比率は、屈折率の温度に対する変化の割合をコントロールするために、適宜増減できるし、複数種類のナノサイズ無機粒子をブレンドして分散させることも可能である。
比率では、上記の例では80:20、すなわち4:1であるが、90:10(9:1)から60:40(3:2)までの間で適宜調整可能である。9:1よりも少ないと温度変化抑制の効果が小さくなり、逆に3:2を越えると樹脂の成形性に問題が生じるために好ましくない。
微粒子は無機物であることが好ましく、さらに酸化物であることが好ましい。そして酸化状態が飽和していて、それ以上酸化しない酸化物であることが好ましい。
無機物であることは、高分子有機化合物である母材となる樹脂との反応を低く抑えられるために好ましく、また酸化物であることによって、使用に伴う劣化を防ぐことが出来る。特に高温化や、レーザ光を照射されるという過酷な条件において、酸化が促進されやすくなるが、このような無機酸化物の微粒子であれば、酸化による劣化を防ぐことが出来る。
また、その他の要因による樹脂の酸化を防止するために、酸化防止剤を添加することも勿論可能である。
ちなみに、母材となる樹脂は、特開2004−144951号公報、特開2004−144954号公報、特開2004−144953号公報等に記載されているような樹脂を適宜好ましく採用することができる。
尚、以上の説明では、好ましい具体的な態様として、回折構造と位相構造とを重畳させた重畳構造を光学面に形成したレンズの例を挙げて説明したが、それぞれ同様な機能を有する光路差付与構造を重畳させた重畳構造とすることができる。より具体的には、入射される光束の波長をより長い波長とした場合には球面収差が補正不足方向に変化する第1光路差付与構造と、入射される光束の波長をより長い波長とした場合には球面収差が補正過剰方向に変化する第2光路差付与構造といった、異なる少なくとも2つの光路差付与構造を、パワーを有するレンズの一面に重畳させた重畳構造とすることで、球面収差の波長依存性が小さい対物レンズを得ることが可能となる。
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。図6は、異なる光情報記録媒体(光ディスクともいう)であるBDとDVDに対して適切に情報の記録/再生を行える本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、光情報記録再生装置に搭載できる。ここでは、第1光情報記録媒体をBDとし、第2光情報記録媒体をDVDとする。
第1の光ピックアップ装置PU1は、第1波長408nmの第1光束を射出する第1光源としての青紫色半導体レーザLD1とBDの情報記録面RL1からの反射光束を受光する第1の光検出器PD1とが一体化された第1のモジュールMD1、第2波長658nmの第2光束を出射する第2光源としての赤色半導体レーザLD2と第2の光ディスクOD2の情報記録面RL2からの反射光束を受光する第2の光検出器PD2とが一体化された第2のモジュールMD2、ダイクロイックプリズムPS、コリメートレンズCL、絞りST、対物レンズOBJ、フォーカシング/トラッキング用の2軸アクチュエータAC等から概略構成される。尚、対物レンズOBJは、光源側の光学面が、光軸を含む中央領域と、その周辺の周辺領域とに分かれており、中央領域には、回折構造及び位相構造が形成されている。
青紫色半導体レーザLD1から射出された第1波長408nmの発散光束は、ダイクロイックプリズムPSを透過し、コリメートレンズCLにより平行光束とされた後、図示しない1/4波長板により直線偏光から円偏光に変換され、絞りSTによりその光束径が規制され、対物レンズOBJによって厚さ0.0875mmの保護層PL1を介して、BDの情報記録面RL1上に形成されるスポットとなる。
情報記録面RL1上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJ、絞りSTを透過した後、図示しない1/4波長板により円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCLにより収斂光束とされ、ダイクロイックプリズムPSを透過した後、第1の光検出器PD1の受光面上に収束する。そして、第1の光検出器PD1の出力信号を用いて、2軸アクチュエータACにより対物レンズOBJをフォーカシングやトラッキングさせることで、BDに記録された情報を読みとることができる。
また赤色半導体レーザLD2から射出された第2波長658nmの発散光束は、偏光ダイクロイックプリズムPSにより反射され、コリメートレンズCLにより平行光束とされた後、図示しない1/4波長板により直線偏光から円偏光に変換され、対物レンズOBJに入射する。対物レンズOBJの中央領域を通過した第2波長658nmの光束は、厚さ0.6mmの保護層PL2を介して、DVDの情報記録面RL2上に形成されるスポットとなる。
情報記録面RL2上で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズOBJ、絞りSTを透過した後、図示しない1/4波長板により円偏光から直線偏光に変換され、コリメートレンズCLにより収斂光束とされ、ダイクロイックプリズムPSにより反射された後、第2の光検出器PD2の受光面上に収束する。そして、第2の光検出器PD2の出力信号を用いて、2軸アクチュエータACにより対物光学素子OBJをフォーカシングやトラッキングさせることで、DVDに記録された情報を読みとることができる。
尚、対物レンズOBJの周辺領域は、微細な段差構造が形成されない非球面であるので、周辺領域を通過した第2波長658nmの光束は、DVDの情報記録面RL2上で、スポット形成に寄与しないフレア成分となる。これにより、DVDの開口数に対応した開口制限が自動的に行われる。
以下、本実施の形態に好適な実施例について説明する。尚、これ以降(表のレンズデータ含む)において、10のべき乗数(例えば、2.5×10−3)を、E(例えば、2.5E−3)を用いて表すものとする。また、実施例の表中、範囲hは、光軸からの距離を表し、単位はmm、曲率半径(R,Ri)の単位もmmである。
対物光学系の光学面は、それぞれ式(8)に、表に示す係数を代入した数式で規定される、光軸の周りに軸対称な非球面に形成されている。
z=(h2/R)/[1+√{1−(Κ+1)(h/R)2}]+A0+A4h4+A6h6+A8h8+A10h10+A12h12+A14h14+A16h16+A18h18+A20h20
・・・(8)
但し、
z:非球面形状(非球面の面頂点に接する平面から光軸に沿った方向の距離)
h:光軸からの距離
R:曲率半径
Κ:コーニック係数
A0:非球面のオフセット量
A4,A6,A8,A10,A12,A14,A16,A18,A20:非球面係数
また、回折構造により各波長の光束に対して与えられる光路差は、式(9)の光路差関数に、表に示す係数を代入した数式で規定される。
φ=dor×λ/λB×(C2h2+C4h4+C6h6+C8h8+C10h10+C12h12+C14h14+C16h16+C18h18+C20h20)
・・・(9)
但し、
φ:光路差関数
λ:回折構造に入射する光束の波長
λB:ブレーズ化波長
dor:光ディスクに対する記録/再生に使用する回折光の回折次数
h:光軸からの距離
C2,C4,C6,C8,C10,C12,C14,C16,C18,C20:回折面係数
(実施例1)
実施例1のレンズデータ(設計波長、焦点距離、像側の開口数、倍率を含む)を表1と表2に示す。実施例1は、図6に示す光ピックアップ装置に好適なガラス製(OHARA製 S−BSM14)の対物レンズである。光源側の光学面は、光軸から近い順に、光軸を含む第2−1面と、その周辺に形成された、第2−2面、第2−3面、第2−4面、第2−5面、そして第2−6面の6領域で構成されている。第2−1から第2−5面までの領域が中央領域に相当し、第2−6面が周辺領域に相当する。第2−1面から第2−5面にはブレーズ化波長λB:490nmの回折構造が形成され、その回折次数はBD:1次、DVD:1次であり、その回折効率はBD:85%、DVD:79%となっている。また、第2−6面は非球面形状である。
Figure 0004822175
Figure 0004822175
第2−1面から第2−5面には位相構造が重畳されており、第2−1面を透過するλ1の光束に対して、第2−2面では5×λ1(nm)の光路差が付与されるので、位相差に換算して2π×5(rad)だけ位相が遅れることになる。また、第2−3面、第2−4面、及び第2−5面では、第2−1面を透過するλ1の光束に対して、それぞれ10×λ1(nm)、5×λ1(nm)、0×λ1(nm)の光路差が付与されるので、位相差に換算してそれぞれ2π×10(rad)、2π×5(rad)、2π×0(rad)だけ位相が遅れることとなる。また、第2−1面を透過するλ2の光束に対して、第2−2面、第2−3面、第2−4面、及び第2−5面では、それぞれ3×λ2(nm)、6×λ2(nm)、3×λ2(nm)、0×λ2(nm)の光路差が付与されるので、位相差に換算してそれぞれ2π×3(rad)、2π×6(rad)、2π×3(rad)、2π×0(rad)だけ位相が遅れることになる。すなわち、位相構造の1つの段差によりそれぞれの波長の光束に対して付加される光路差は、第1波長λ1に対しては2040nm、第2波長λ2に対しては1974nmであり、何れの波長の光束に対しても略同量の光路差が付加される。尚、本実施例においては、中央領域内で、ブレーズ構造の向きが光軸から離れるに従って負の向きから正の向きへと一度入れ替わるようになっている(図5参照)。
一方、光ディスク側光学面(第3面)は、非球面形状である。かかる実施例1の対物レンズにおいては、第1波長λ1が+5nm波長変化した際の球面収差の変化量は3次成分:0.029λ1RMS、高次成分:0.010λ1RMSであり、第2面の回折構造に位相構造を重畳させないと場合の変化量(3次成分:0.009λ1RMS、高次成分:0.029λRMS)に対して、高次成分が低減されている。尚、ここでは「高次成分」を、5次成分と7次成分の2乗和の平方根としている。
(実施例2)
実施例2は、図6に示す光ピックアップ装置に好適な樹脂製の対物レンズのものである。実施例2のレンズデータ(設計波長、焦点距離、像側の開口数、倍率を含む)を表3と表4に示す。光源側の光学面は、光軸から近い順に、光軸を含む第2−1面と、その周辺に形成された、第2−2面、第2−3面、第2−4面、第2−5面、そして第2−6面の6領域で構成されている。第2−1から第2−5面までの領域が中央領域に相当し、第2−6面が周辺領域に相当する。第2−1面から第2−5面にはブレーズ化波長λB:490nmの回折構造が形成され、その回折次数はBD:1次、DVD:1次であり、その回折効率はBD:85%、DVD:78%となっている。また、第2−6面は非球面形状である。
Figure 0004822175
Figure 0004822175
第2−1面から第2−5面には位相構造が重畳されており、第2−1面を透過するλ1の光束に対して、第2−2面では5×λ1(nm)の光路差が付与されるので、位相差に換算して2π×5(rad)だけ位相が遅れることになる。また、第2−3面、第2−4面、及び第2−5面では、第2−1面を透過するλ1の光束に対して、それぞれ10×λ1(nm)、5×λ1(nm)、0×λ1(nm)の光路差が付与されるので、位相差に換算してそれぞれ2π×10(rad)、2π×5(rad)、2π×0(rad)だけ位相が遅れることとなる。また、第2−1面を透過するλ2の光束に対して、第2−2面、第2−3面、第2−4面、及び第2−5面では、それぞれ3×λ2(nm)、6×λ2(nm)、3×λ2(nm)、0×λ2(nm)の光路差が付与されるので、位相差に換算してそれぞれ2π×3(rad)、2π×6(rad)、2π×3(rad)、2π×0(rad)だけ位相が遅れることになる。すなわち、位相構造の1つの段差によりそれぞれの波長の光束に対して付加される光路差は、第1波長λ1に対しては2040nm、第2波長λ2に対しては1974nmであり、何れの波長の光束に対しても略同量の光路差が付加される。尚、本実施例においては、中央領域内で、ブレーズ構造の向きが光軸から離れるに従って負の向きから正の向きへと一度入れ替わるようになっている(図5参照)。
一方、光ディスク側光学面(第3面)は、非球面形状である。かかる実施例2の対物レンズにおいては、第1波長λ1が+5nm波長変化した際の球面収差の変化量は3次成分:0.035λ1RMS、高次成分:0.014λ1RMSであり、第2面の回折構造に位相構造を重畳させないと場合の変化量(3次成分:0.020λ1RMS、高次成分:0.032λRMS)に対して、高次成分が低減されている。尚、ここでは「高次成分」を、5次成分と7次成分の2乗和の平方根としている。
(実施例3)
実施例3は、図6に示す光ピックアップ装置に好適なガラス製(OHARA製 S−BSM14)の対物レンズのものである。実施例3のレンズデータ(設計波長、焦点距離、像側の開口数、倍率を含む)を表5と表6に示す。光源側の光学面は、光軸から近い順に、光軸を含む第2−1面と、その周辺に形成された、第2−2面、第2−3面、第2−4面、第2−5面、そして第2−6面の6領域で構成されている。第2−1から第2−5面までの領域が中央領域に相当し、第2−6面が周辺領域に相当する。第2−1面から第2−5面にはブレーズ化波長λB:490nmの回折構造が形成され、その回折次数はBD:1次、DVD:1次であり、その回折効率はBD:85%、DVD:79%となっている。また、第2−6面は非球面形状である。
Figure 0004822175
Figure 0004822175
第2−1面から第2−5面には位相構造が重畳されており、第2−1面を透過するλ1の光束に対して、第2−2面では−5×λ1(nm)の光路差が付与されるので、位相差に換算して2π×5(rad)だけ位相が進むことになる。また、第2−3面、第2−4面、及び第2−5面では、第2−1面を透過するλ1の光束に対して、それぞれ−10×λ1(nm)、−15×λ1(nm)、−20×λ1(nm)の光路差が付与されるので、位相差に換算してそれぞれ2π×10(rad)、2π×15(rad)、2π×20(rad)だけ位相が進むこととなる。また、第2−1面を透過するλ2の光束に対して、第2−2面、第2−3面、第2−4面、及び第2−5面では、それぞれ−3×λ2(nm)、−6×λ2(nm)、−9×λ2(nm)、−12×λ2(nm)の光路差が付与されるので、位相差に換算してそれぞれ2π×3(rad)、2π×6(rad)、2π×9(rad)、2π×12(rad)だけ位相が進むことになる。すなわち、位相構造の1つの段差によりそれぞれの波長の光束に対して付加される光路差は、第1波長λ1に対しては2040nm、第2波長λ2に対しては1974nmであり、何れの波長の光束に対しても略同量の光路差が付加される。尚、本実施例においては、中央領域内で、ブレーズ構造の向きは正で一定である(図4参照)。
一方、光ディスク側光学面(第3面)は、非球面形状である。かかる実施例3の対物レンズにおいては、第1波長λ1が+5nm波長変化した際の球面収差の変化量は3次成分:0.006λ1RMS、高次成分:0.014λ1RMSであり、第2面の回折構造に位相構造を重畳させないと場合の変化量(3次成分:0.085λ1RMS、高次成分:0.042λRMS)に対して、高次成分が低減されている。尚、ここでは「高次成分」を、5次成分と7次成分の2乗和の平方根としている。
尚、実施例1から実施例3の対物レンズにおいて、第1波長λ1の回折効率の有効径内面積加重平均値を計算すると、90.7%となり、記録/再生の高速化が求められるBDに対して高い光利用効率が得られる。
また、実施例1から実施例3の対物レンズにおいては、回折構造のブレーズ化波長λBを490nmとしたが、これに限らず、ブレーズ化波長λBを変えることで、第1波長λ1と第2波長λ2の回折効率のバランスを適宜変更することが可能である。
更に、以上の実施例では、第1光路差付与構造を回折構造とし、第2光路差付与構造を位相構造とした幾つかの例を例示したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。好ましい他の例としては、第1波長λ1の光束に対して回折効率が最大となる回折次数が3次回折光であって、且つ第2波長λ2の光束に対して回折効率が最大となる回折次数が2次回折光となる回折構造を、第1光路差付与構造とし、第1波長λ1の光束に対してはλ1のほぼ5倍の光路差を付与するものであって、且つ第2波長λ1の光束に対してはλ2のほぼ3倍の光路差を付与する位相構造を、第2光路差付与構造として、それら第1及び第2光路差付与構造を重畳した重畳構造を用いることが挙げられる。
また、第1波長λ1の光束に対してはλ1のほぼ5倍の光路差を付与するものであって、且つ第2波長λ2の光束に対してはλ2のほぼ3倍の光路差を付与する位相構造を、第1光路差付与構造とし、第1波長λ1の光束に対して回折効率が最大となる回折次数が2次回折光であって、且つ第2波長λ2の光束に対して回折効率が最大となる回折次数が1次回折光となる回折構造を、前記第2光路差付与構造として、それら第1及び第2光路差付与構造を重畳した重畳構造を用いることも、好ましい例として挙げられる。
更にまた、本発明は、BDだけではなく、HDを含む他の高密度光ディスク用の対物レンズに対して適用することも可能であり、上述した効果と同様の効果が得られる。
本発明によれば、異なる波長の光束を用いて、複数種類の光情報記録媒体に対して情報の記録及び/又は再生を行う光ピックアップ装置に適用可能な対物レンズであって、球面収差の波長依存性が小さい対物レンズ、この対物レンズを使用した光ピックアップ装置、及び、この光ピックアップ装置を搭載した光情報記録再生装置を提供することができる。また、異なる種類の光情報記録媒体に対して良好に情報の記録及び/又は再生を行える対物レンズであって、球面収差の波長依存性が小さく、高い透過率を有する単レンズ構成の対物レンズ、この対物レンズを使用した光ピックアップ装置、及び、この光ピックアップ装置を搭載した光情報記録再生装置を提供することができる。
CL コリメートレンズ
CR 中央領域
DS 回折構造
LD1 青紫色半導体レーザ
LD2 赤色半導体レーザ
MD1,MD2 モジュール
PD1,PD2 光検出器
PL1,PL2 保護層
PU1 光ピックアップ装置
RL1,RL2 情報記録面

Claims (10)

  1. 第1波長λ1の第1光束を出射する第1光源と、第2波長λ2(λ1<λ2)の第2光束を出射する第2光源と、対物レンズを含む集光光学系と、光検出器とを少なくとも有し、厚さt1の保護層を有する第1光情報記録媒体に対して、前記第1光束を用いて情報の再生及び/又は記録を行い、厚さt2(t1<t2)の保護層を有する第2光情報記録媒体に対して、前記第2光束を用いて情報の再生及び/又は記録を行う光ピックアップ装置に用いられる対物レンズであって、
    パワーを有する前記対物レンズの一面に、入射される光束の波長をより長い波長とした場合には球面収差が補正不足方向に変化する第1光路差付与構造と、第2光路差付与構造とを重畳させた重畳構造を有し、
    前記対物レンズの前記一面は、光軸を含む中央領域と前記中央領域を囲む周辺領域とを有し、前記重畳構造は前記中央領域に形成され、
    前記第1光路差付与構造は、前記第1光束の入射に対して回折効率が最大となる回折次数と、前記第2光束の入射に対して回折効率が最大となる回折次数とが、同一次数となる回折構造であり、
    前記同一次数は1であり、
    前記対物レンズは樹脂レンズであって、
    以下の(2)式、及び(3)式を満たすことを特徴とする対物レンズ。
    380nm<λ1<420nm (2)
    630nm<λ2<680nm (3)
  2. 前記対物レンズの前記一面には、前記重畳構造が形成された部分と、前記重畳構造が形成されていない部分とを有することを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ。
  3. 前記対物レンズの前記一面は、光ピックアップ装置に搭載された際に光源側に配置される面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の対物レンズ。
  4. 前記対物レンズの前記一面は、凸面であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の対物レンズ。
  5. 前記対物レンズの他方の面は、非球面であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の対物レンズ。
  6. 前記対物レンズは、単レンズであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の対物レンズ。
  7. 前記回折構造のブレーズ化波長λBが以下の(1)式を満たすことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の対物レンズ。
    λ1<λB<λ2(1)
  8. 前記第1光情報記録媒体に対して情報の再生又は記録を行う際の、前記対物レンズの開口数をNA1とし、前記第2光情報記録媒体に対して情報の再生又は記録を行う際の、前記対物レンズの開口数をNA2としたとき、前記開口数NA2内に相当する領域内に前記重畳構造を備え、前記回折構造のブレーズ化波長λB、前記開口数NA1、及び前記開口数NA2が以下の(4)式、及び(5)式を満たすことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の対物レンズ。
    1.15×λ1<λB<0.85×λ2 (4)
    NA2/NA1<0.8 (5)
  9. 光源と、請求項1乃至8の何れか一項に記載の対物レンズと、光検出器とを備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
  10. 請求項9に記載の光ピックアップ装置を搭載したことを特徴とする光情報記録再生装置。
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