JP4821143B2 - ポリブタジエンの製造方法及びそれを用いたゴム変性スチレン系樹脂組成物 - Google Patents

ポリブタジエンの製造方法及びそれを用いたゴム変性スチレン系樹脂組成物 Download PDF

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本発明は、高シス-高ビニルポリブタジエン、その製造方法及び該高シス-高ビニルポリブタジエンを用いたゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
スチレンモノマーにポリブタジエンを添加してラジカル重合して得られる共重合体は、ポリスチレンの持つ優れた特性に加えて耐衝撃も改良された耐衝撃性ポリスチレン系樹脂として広く知られている。この耐衝撃性ポリスチレン系樹脂を製造するために用いられるゴム変性剤としては、一般にはアルキルリチウムを触媒として1,3−ブタジエンを重合して得られるシス−1,4構造が30〜35%、ビニル構造が10〜20%であり、トランス−1,4構造が50〜60%である低シスポリブタジエン(以下、低シスBR)とコバルト、チタン或いはニッケル系触媒により1,3−ブタジエンを重合して得られるシス−1,4構造が90〜98%、ビニル構造が1〜5%であり、トランス−1,4構造が1〜5%である高シスポリブタジエン(以下、高シスBR)がある。
一方、本出願人により、例えば、特開平10−139835号公報(特許文献1)、特開平10−152535号公報(特許文献2)、特開平10−218949号公報(特許文献3)、特開平10−273574号公報(特許文献4)などには、ゴム変性剤として、シス−1,4構造が65〜95%であり、1,2構造が30〜4%であるメタロセン触媒で製造された高シス−高ビニルBR(以下、HC−HVBR)を用いた耐衝撃性ポリスチレン樹脂が報告されている。
高シスBRの特徴はガラス転移温度(通常−95〜−110℃)が低いため低温特性に優れるものの、低ビニル構造含有量に起因するためにスチレンモノマーとの反応性(グラフト率)が低く、高シスBRを用いて得られる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂は、アイゾット衝撃性に優れるがゴム粒子の小粒径化(光沢性)・面耐衝撃性(デュポン衝撃性)の点で十分満足できるものではない。他方、低シスBRはガラス転移温度(通常−75〜−95℃)が高く、高ビニル構造含有量に起因するためスチレンモノマーとの反応性(グラフト率)が高く、低シスBRを用いて得られる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂はゴム粒子の小粒径化・面耐衝撃性が優れるものの、アイゾット衝撃性・低温特性の点で十分満足できるものではない。
一方、高シス−高ビニルBR(以下、HC−HVBR)を耐衝撃性ポリスチレン用ゴムに使用することによって、高シスBRの特性を保持し、且つ低シスBRの特性を保持したBRの開発が強く望まれている。高ビニル構造に起因するスチレンモノマーとの反応性は低シスBRと同等であり、このHC−HVBRを用いて得られる耐衝撃性ポリスチレン系樹脂は、光沢性と面衝撃性が優れると共に高シス−1,4構造含有率に由来するガラス転移温度の低さからアイゾット耐衝撃性、低温特性も優れるという従来の高シスBRと低シスBRの特性を併せ持つゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂が得られることが開示されている。
しかしながら、一般的にポリブタジエンは熱や酸素・光等に不安定で、ポリブタジエン自体もしくはそれを用いた耐衝撃性ポリスチレン系樹脂はゲル化・変色等により品質低下が起こり易く、安定化のために酸化防止剤が使用されていることも古くから知られている。また最近では、環境問題などからBHT(ブチルハイドロキシトルエン)やTNPP(トリスノニルフェニルフォスファイト)等の従来タイプとは異なる酸化防止剤の要望がより強くなって来た。
特開平10−139835号公報 特開平10−152535号公報 特開平10−218949号公報 特開平10−273574号公報
本発明は、HC−HVBRの重合において、重合停止時もしくは停止後に硫黄結合を1個以上含有するフェノール系酸化防止剤を添加することにより、熱や酸素・光等により安定で、且つ品質低下が起こり難いHC−HVBRの製造及び本HC−HVBRを用いることによる優れたスチレンモノマーとの反応性、耐衝撃性、光沢性能、引張強度及び引張伸び性能、低温特性などの諸物性を向上・維持し、且つ同時にバランス良く改良したゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂の提供し、更には環境問題を改善することを目的とする。
本発明は、(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、および(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルモキサンからなる触媒を用いた重合により製造され、シス-1,4構造が65〜95%、かつ、ビニル構造が30〜4%である高シス-高ビニルポリブタジエンであって、硫黄結合を1個以上含有する硫黄含有フェノール系酸化防止剤を含有することを特徴とする高シス-高ビニルポリブタジエンに関する。
本発明は、該硫黄含有フェノール系酸化防止剤を0.01重量%〜0.5重量%含有することを特徴とする高シス-高ビニルポリブタジエンに関する。
本発明は、該硫黄含有フェノール系酸化防止剤が2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-オルト-クレゾールであることを特徴とする高シス-高ビニルポリブタジエンに関する。
本発明は、高シス-高ビニルポリブタジエンの製造において、重合停止時もしくは停止後に該硫黄含有フェノール系酸化防止剤を添加することを特徴とする高シス-高ビニルポリブタジエンの製造方法に関する。
本発明は、ゴム状重合体成分として高シス-高ビニルポリブタジエンを用いることを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
本発明は、該ゴム状重合体成分が1重量%〜30重量%含まれることを特徴とゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
本発明は、該硫黄含有フェノール系酸化防止剤が0.001重量%〜0.15重量%含まれることを特徴とする該ゴム変性スチレン系樹脂組成物に関する。
本発明により、熱や酸素・光等により安定で、且つ品質低下が起こり難いHC−HVBRの製造が可能となり、更に本HC−HVBRを用いることによりスチレンモノマーとの反応性、耐衝撃性、光沢性能、引張強度及び引張伸び性能、低温特性などの諸物性をバランス良く向上・維持し、且つ同時に環境問題を改善したゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂が提供出来る。
本発明の高シス-高ビニルポリブタジエンについて説明する。高シス−高ビニルポリブタジエンゴム(HC−HVBR)は、好ましくは、ミクロ構造中のシス−1,4−構造ユニット含有率が65〜95モル%、特に好ましくは70〜90モル%、及び好ましくは1,2−構造ユニット含有率が4〜30モル%であり、特に好ましくは5〜25モル%、より好ましくは7〜15モル%である。また、トランス−1,4−構造ユニット含有率が5モル%以下が好ましく、0.5〜4.0モル%が特に好ましい。
また、HC−HVBRの25℃における5%スチレン溶液粘度(St−cp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)の関係式が下式(I)を満足する範囲にあることが好ましい。
2≦St−cp/ML1+4≦7...(I)
特に好ましくは、 2≦St−cp/ML1+4≦ 6 を満足する。
また、HC−HVBRのスチレン溶液粘度(St−cp)は、20〜500が好ましく、30〜300が特に好ましい。
本発明のHC−HVBRのム−ニ−粘度(ML1+4)は、10〜200が好ましく、25〜100が特に好ましい。
HC−HVBRの分子量は、トルエン中30℃で測定した固有粘度[η]として、0.1〜10が好ましく、0.1〜3が特に好ましい。
また、HC−HVBRの分子量は、ポリスチレン換算の分子量として下記の範囲のものが好ましい。
数平均分子量(Mn):0.2×105〜10×105、より好ましくは0.5×105〜5×105
重量平均分子量(Mw):0.5×105〜20×105、より好ましくは1×105〜10×105
また、本発明のHC−HVBRの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.6〜3である。
上記のHC−HVBRは、例えば、
(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、及び(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルミノキサンから得られる触媒を用いて、ブタジエンを重合させて製造できる。
あるいは、(A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、
(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物、
(C)周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物、及び、
(D)水
から得られる触媒を用いたブタジエンを重合させて製造できる。
(A)成分の遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、周期律表第4〜8族遷移金属化合物のメタロセン型錯体が挙げられる。
例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期律表第4族遷移金属のメタロセン型錯体(例えば、CpTiCl3など)、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの周期律表第5族遷移金属のメタロセン型錯体、クロムなどの第6族遷移金属メタロセン型錯体、コバルト、ニッケルなどの第8族遷移金属のメタロセン型錯体が挙げられる。
中でも、周期律表第5族遷移金属のメタロセン型錯体が好適に用いられる。
上記の周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、
(1) RM・La、すなわち、シクロアルカジエニル基の配位子を有する酸化数+1の周期律表第5族遷移金属化合物
(2) Rn MX2-n ・La、すなわち、少なくとも1個のシクロアルカジエニル基の配位子を有する酸化数+2の周期律表第5族遷移金属化合物
(3) Rn MX3-n ・La
(4) RMX3 ・La
(5) RM(O)X2 ・La
(6) Rn MX3-n (NR' )
などの一般式で表される化合物が挙げられる(式中、nは1又は2、aは0,1又は2である)。
中でも、RM・La、Rn MX2-n ・La、R2 M・La、RMX3 ・La 、RM(O)X2 ・La などが好ましく挙げられる。
Mは、周期律表第5族遷移金属化合物が好ましい。
(A)周期律表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、中でも、Mがバナジウムであるバナジウム化合物が好ましい。例えば、RV・La、RVX・La、R2 M・La、RMX2 ・La 、RMX3 ・La 、RM(O)X2 ・La などが好ましく挙げられる。特に、RV・La、RMX3 ・Laが好ましい。
RMX3 ・Laで示される具体的な化合物としては、以下のものが挙げられる
シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドが挙げられる。
RM(O)X2 で表される具体的な化合物としては、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、メチルシクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、ベンジルシクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)オキソバナジウムジクロライドなどが挙げられる。
(B)成分として、非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物を構成する非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレ−ト、テトラ(フルオロフェニル)ボレ−トなどが挙げられる。
一方、カチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。
また、(B)成分として、アルモキサンを用いてもよい。アルモキサンとしては、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(−Al(R')O−) n で示される鎖状アルミノキサン、あるいは環状アルミノキサンが挙げられる。(R' は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/ 又はアルコキシ基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である)。R' として、はメチル、エチル、プロピル、イソブチル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。
(A)成分及び(B)成分に、さらに(C)成分として周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物を組合せて共役ジエンの重合を行ってもよい。(C)成分の添加により重合活性が増大する効果がある。周期律表第1〜3族元素の有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物などが挙げられる。
上記の触媒各成分の組合せとして、(A)成分としてシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl3)などのRMX3、あるいは、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド(CpV(O)Cl2)などのRM(O)X2、(B)成分としてトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、(C)成分としてトリエチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムの組合せが好ましく用いられる。
また、(B)成分としてイオン性化合物を用いる場合は、(C)成分として上記のアルモキサンを組み合わせて使用してもよい。
触媒成分の添加順序は、特に、制限はない。
また、本発明においては、触媒系として 更に、(D)成分として水を添加することが好ましい。(C)成分の有機アルミニウム化合物と(D)成分の水とのモル比(C)/(D)は、好ましくは0.66〜5であり、より好ましくは0.7〜1.5である。
また重合時に、必要に応じて水素を共存させることができる。
ここで重合すべきブタジエンモノマ−とは、全量であっても一部であってもよい。モノマ−の一部の場合は、上記の接触混合物を残部のモノマ−あるいは残部のモノマ−溶液と混合することができる。
重合方法は、特に制限はなく、溶液重合、又は、1,3−ブタジエンそのものを重合溶媒として用いる塊状重合などを適用できる。トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒や、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。
また、低分子量HC−HVBR成分と高分子量HC−HVBR成分との混合物を用いてもよい。
本発明においての分子量を調節する方法としては、上記の触媒を用いて、水素などの連鎖移動剤の存在下に共役ジエン化合物を重合させることが挙げられる。
高シス-高ビニルポリブタジエンの製造において、重合反応が所定の重合率を達成した後、遷移金属触媒を添加し、反応させることによってポリマー鎖を変性することができる。
遷移金属触媒における遷移金属化合物としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、バナジウム化合物、クロム化合物、マンガン化合物、鉄化合物、ルテニウム化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、パラジウム化合物、銅化合物、銀化合物、亜鉛化合物などが挙げられる。中でも、コバルト化合物が特に好ましい。
本発明の遷移金属触媒は、遷移金属化合物、有機アルミニウム、および水からなる系であることが好ましい。
所定時間重合を行った後、アルコ−ルなどの停止剤を注入して重合を停止した後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。
本発明においては、上記の高シス-高ビニルポリブタジエンの製造において、重合停止時もしくは停止後に該硫黄含有フェノール系酸化防止剤を添加することが好ましい。
該硫黄含有フェノール系酸化防止剤としては、分子内にチオエーテル構造を1個以上有するフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
具体的には、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−オルト−クレゾールなどが挙げられる。
中でも、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−オルト−クレゾールが好ましい。
得られた高シス-高ビニルポリブタジエンは、硫黄含有フェノール系酸化防止剤を0.01重量%〜0.5重量%含有することが好ましい。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物中には、上記の高シス-高ビニルポリブタジエン1〜30重量%、好ましくは、5〜20重量%含まれる。上記の範囲より少ないと、この発明の効果は得られないし、ゴム状ポリマーの含有率が増大すると共に樹脂の耐衝撃性は向上するが、上記の範囲より多いと、スチレン溶液の高粘度化によりゴム粒子径の制御が困難となり、この発明の効果は発現できず工業的な利用価値を失う。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造法としては、ゴム状ポリマーの存在下にスチレン系モノマーの重合を行う方法が採用され、塊状重合法や塊状懸濁重合法が経済的に有利な方法である。スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンのようなアルキル置換スチレン、クロルスチレンのようなハロゲン置換スチレンなど、従来ゴム変性スチレン系樹脂組成物製造用として知られているスチレン系モノマーの1種又は2種以上の混合物が用いられる。これらのなかで好ましいのはスチレンである。
製造時に必要に応じて上記ゴム状ポリマーの他に、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン、エチレン−酢酸ビニル、アクリル系ゴムなどを上記ゴム状ポリマーに対して50重量%以内併用することができる。又、これらの方法によって製造された樹脂をブレンドしてよい。更に、これらの方法によって製造されたゴム変性スチレン系樹脂組成物を含まないポリスチレン系樹脂を混合して製造してもよい。上記の塊状重合法として1例を挙げて説明すると、スチレンモノマー(99〜75重量%)にゴム状ポリマー(1〜25重量%)を溶解させ、場合によっては溶剤、分子量調節剤、重合開始剤などを添加して、10〜40%のスチレンモノマー転化率までゴム状ポリマーを分散した粒子に転化させる。このゴム粒子が生成するまではゴム相が連続相を形成している。更に重合を継続してゴム粒子として分散相になる相の転換(粒子化工程)を経て50〜99%の転化率まで重合してゴム変性スチレン系樹脂組成物が製造される。
この発明で言うゴム状ポリマーの分散粒子(ゴム粒子)は、樹脂中に分散された粒子で、ゴム状ポリマーとポリスチレン系樹脂よりなり、ポリスチレン系樹脂はゴム状ポリマーにグラフト結合したり、或いはグラフト結合せずに吸蔵されている。この発明で言うゴム状ポリマーの分散粒子の径として0.5〜7.0μmの範囲、好ましくは1.0〜3.0μmの範囲の範囲のものが好適に製造できる。
本発明おいて、グラフト率として、150〜350の範囲のものが好適に製造でき。
バッチ式でも連続的製造方法でもよく特に限定されない。
この発明において上記のスチレン系モノマーとゴム状ポリマーとを主体とする原料溶液は完全混合型反応器において重合されるが、完全混合型反応器としては、原料溶液が反応器において均一な混合状態を維持するものであればよく、好ましいものとしてはヘリカルリボン、ダブルヘリカルリボン、アンカーなどの型の攪拌翼が挙げられる。ヘリカルリボンタイプの攪拌翼にはドラフトチューブを取り付けて、反応器内の上下循環を一層強化することが好ましい。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物は、硫黄含有フェノール系酸化防止剤が0.001重量%〜0.15重量%含まれることが好ましい。
更に、この発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物には、製造時や製造後に適宜必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤、滑剤、着色剤、各種充填剤及び各種の可塑剤、高級脂肪酸、有機ポリシロキサン、シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤や発泡剤などの公知添加剤を添加してもよい。この発明のゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物は、公知の各種成形品に用いることはできるが、難燃性、耐衝撃強度、引張強度に優れるために電気・工業用途分野で使用される射出成形に好適である。
例えばカラーテレビ、ラジカセ、ワープロ、タイプライター、ファクシミリ、VTRカセット、電話器などのハウジングの家電・工業用及び包装材料・食品容器等に用いられるフィルム・シート用途などの広範な用途に用いることができる。又、高シス−高ビニルポリブタジエンは自動車タイヤ用途やゴルフボール・靴底などの非タイヤ用途にも使用できる。
ミクロ構造:赤外吸収スペクトル分析法によって、Hampton法より求めたシス−1,4構造;740cm-1,ビニル構造;911cm-1,トランス−1,4構造;967cm-1の分子吸光係数からミクロ構造を算出した。
ムーニー(ML)粘度は、JIS−K−6300に規定されている測定方法に従って測定した。
トルエン溶液粘度(T−cp)は、ポリマー2.28gをトルエン50mlに溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS Z8809)を用い、キャノンフェンスケ粘度計No.400を使用して、25℃で測定した。
St−cpは、5gのゴム状ポリマーを95gのスチレンモノマーに溶解した時の25℃における溶液粘度を測定し、センチポイズ(cp)で示した。
ゴム粒子径:ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物をジメチルフォルムアミドに溶解させ、樹脂中のマトリックスを形成するポリスチレン部分のみを溶解させ、その溶液の一部を日科機製のコールターカウンター装置、TA−2型を使って溶媒ジメチルフォルムアミドと分散剤チオシアン酸アンモニウムからなる電解液に分散させて、得られた体積平均粒子径をゴム粒子径とした。
グラフト率:1gのゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂をメチルエチルケトン/アセトン=1/1(重量比)の混合液50ミリリットルに加えて1時間、激しく攪拌し、溶解・膨潤させる。次に遠心分離機にて不溶解分を沈降させた後、デカンテーションで上澄液を捨てる。このようにして得られたメチルエチルケトン/アセトン不溶解分を50℃で減圧乾燥して、デシケーター中で冷却後、秤量してメチルエチルケトン/アセトン不溶解分(MEK/AC−insol.g)を求めて、ゴム状ポリマー含有率から算出したゴム状ポリマー量(Rg)から、グラフト率を算出した。グラフト率=[MEK/AC−insol.(g)−R(g)]×100/R(g)
膨潤度:トルエン50ミリリットルにゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂1gを1時間、激しく攪拌し、溶解・膨潤させる。次に遠心分離機にて不溶解分を沈降させた後、デカンテーションで上澄液を捨てる。沈降した部分の重量(膨潤した未乾燥重量)を測定した後、100℃で真空乾燥しデシケーター中で冷却後、秤量して、膨潤時/乾燥時の重量比で示した。
アイゾット(Izod)衝撃強度:JIS K7110(ノッチ付)に従って測定した。
デュポン(Dupont)衝撃強度:デュポン式落錘試験機による50%破壊エネルギーで示した。
引張特性:JIS K7113に従って降伏点強度、破断点強度、伸びを測定した。
光沢:JIS Z8742(入射角60°)に準拠して光沢を測定した。
酸化誘導期:島津製作所製DSC−50を用いて、サンプル量10mgにて表-1に示す各高シス−高ビニルポリブタジエンの150℃、空気雰囲気下での酸化に伴う発熱ピークより酸化誘導期(分)を測定した。
黄色度(YI):JIS K7103−1977に準拠してYIを測定した。数値が低い程
黄色の着色が低い(ポリマーの変色や劣化が少ない)と判断される。
(実施例1)(高シス−高ビニルポリブタジエンの製造)
内容量1.7Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、シクロヘキサン260ml、ブタジエン140mlを仕込んで攪拌する。次いで、水5μlを添加して30分間攪拌を続けた。20℃、1気圧換算で110mlの水素を積算マスフロメーターで計量して注入し、次いで、トリエチルアルミニウム(TEA)1mol/Lのトルエン溶液0.36mlを添加して3分間攪拌後、シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド(CpVCl3 )5mmol/Lのトルエン溶液0.5ml、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3 CB(C654 )2.5mmol/Lのトルエン溶液1.5mlの順に加え、重合温度40℃で30分間重合を行った。さらに、水を300mg/L含むトルエン4.8ml、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)1mol/Lのトルエン溶液0.1ml、オクチル酸コバルト(Co(Oct))5mmol/Lのトルエン溶液0.5mlを加えて40℃で30分間反応させた。
反応後、生成ポリマーに対し0.1重量%含有させるように(a)2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−オルト−クレゾールを溶解させたエタノール溶液を注入して反応を停止させた後、溶媒を蒸発させ乾燥した。乾燥後、生成ポリマーの酸化誘導期を測定して耐熱・劣化安定性を評価した。表1に重合及び酸化誘導期の結果を示した。
(実施例2及び3)反応後の生成ポリマーに対する(a)2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−オルト−クレゾールの添加量を0.07重量%(実施例2)、もしくは0.15重量%(実施例3)に変量した以外は実施例1と同じ。
(比較例1)反応後の生成ポリマーに対し、(b)オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ビドロキシフェニル)プロピオネートを0.1重量%及び(c)トリスノニルフェニルフォスファイト(TNPP)を 0.2重量%添加した以外は実施例1と同じ。
(比較例2)反応後の生成ポリマーに対し、(b)オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ビドロキシフェニル)プロピオネートを0.3重量%添加した以外は実施例1と同じ。
(比較例3)反応後の生成ポリマーに対し、(b)オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ビドロキシフェニル)プロピオネートを0.1重量%添加した以外は実施例1と同じ。
〔実施例4〜6〕
攪拌機付1.5リットルのオートクレーブを窒素ガスで置換し、スチレン465gと表1に示す実施例1〜3で製造したHC−HVBRの各35g(ゴム7重量部)を加えて溶解した。次いでn−ドデシルメルカプタン0.15gを加えて、135℃で表4に示した条件で攪拌しながらスチレンの転化率が30%になるまで1時間半予備重合した。次に、この予備重合液に0.5wt%ポリビニルアルコール水溶液500ミリリットルを注入し、ベンゾイルパーオキサイド1.0g(0.2重量部)及びジクミルパーオキサイド1.0g(0.2重量部)を加えて100℃で2時間、125℃で3時間、140℃で2時間攪拌下に連続的に重合した。室温に冷却して重合反応混合物からビーズ状のポリマーをろ過し、水洗・乾燥した。これを押出機でペレット化して耐衝撃性スチレン系樹脂450gを得た。得られたゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂組成物をそれぞれ射出成形して物性測定用試験片を作成して物性を測定した。結果を表2に示した。

(比較例4〜6)
表1に示す比較例1〜3で製造したHC−HVBRを使用した以外は実施例4と同様の方法でゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂組成物を作製、それぞれ射出成形して物性測定用試験片を作成して物性を測定した。結果を表2に示した。
Figure 0004821143
表1より、実施例1〜3は酸化防止効果が大幅に改善され、比較例1〜3に対して高温(150℃)での酸化誘導期が非常に長く、少量添加で耐熱・耐劣化安定性が向上している。
Figure 0004821143
表2より、実施例4〜6はゴム変性耐衝撃性スチレン系樹脂組成物の諸物性及び酸化防止効果が比較例4〜6に対して大幅に改善されている。

Claims (3)

  1. (A)遷移金属化合物のメタロセン型錯体、および(B)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルモキサンからなる触媒を用いた重合により製造され、シス−1,4構造が65〜95%、かつ、ビニル構造が30〜4%であ2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−オルト−クレゾール、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]および2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンから選ばれる少なくとも1つの硫黄含有フェノール系酸化防止剤を0.01重量%〜0.5重量%含有する高シス−高ビニルポリブタジエン組成物をゴム状重合体成分として1重量%〜30重量%含有することを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物
  2. 該硫黄含有フェノール系酸化防止剤がゴム変性スチレン系樹脂組成物に0.001重量%〜0.15重量%含まれることを特徴とする請求項記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物。
  3. 請求項1に記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物において、高シス−高ビニルポリブタジエン組成物の製造、重合停止時もしくは停止後に該硫黄含有フェノール系酸化防止剤を添加することを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
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