JP4819250B2 - バッチ式食品凍結装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バッチ式食品凍結装置に関し、詳しくは、液化窒素を冷媒として使用し、食品の凍結をバッチ式で行う装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は、液化窒素を冷媒として使用する従来のバッチ式食品凍結装置の一例を示す概略断面図である。このバッチ式食品凍結装置は、凍結対象物を格納する断熱容器11と、該断熱容器11内に複数の凍結対象物をその周囲に空間を設けて配置する手段であるトレイ12及びラック13と、断熱容器11内に冷媒の液化窒素を導入する液化窒素導入管14と、断熱容器11内の低温窒素ガスを攪拌するファン15と、余剰の窒素ガスを排出する排気口16と、液化窒素導入管14の液化窒素導入弁17を開閉して液化窒素導入量を制御する温度制御器18及び温度センサ19とを備えている。
【0003】
このバッチ式食品凍結装置を使用して食品を凍結する際には、凍結対象物である食品を載置したトレイ12をラック13に積層し、断熱容器11内に入れて扉11aを密閉した後、弁14aを開いて断熱容器11内に液化窒素の導入を開始するとともにファン15の運転を開始する。液化窒素導入管14から導入された液化窒素は、ファン15の翼に当てることによって蒸発が促進され、液化窒素の蒸発によって発生した低温窒素ガスは、ファン15によって断熱容器11内に拡散されるとともに、その攪拌作用によって断熱容器11内の温度分布を均一化するようにしている。液化窒素の蒸発によって断熱容器11内の圧力が上昇すると排気口16から窒素ガスの一部が放出される。また、断熱容器11内への液化窒素の導入量は、温度センサ19で測定した温度に基づいて温度制御器18が液化窒素導入弁17を開閉することによって制御される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、断熱容器11内に設けたファン15によって低温窒素ガスを攪拌する方式では、断熱容器11内の全体に低温窒素ガスを回しているだけであり、凍結対象物である食品の表面におけるガス流速は、精々1〜2m/秒程度であって冷却効率が低く、また、断熱容器11内における温度ムラも生じ易く、例えば、断熱容器11内で15℃の温度分布が生じることもあった。
【0005】
すなわち、従来のバッチ式食品凍結装置では、断熱容器内の低温窒素ガスをファンで攪拌してはいるものの、断熱容器の内部全体に均一に低温窒素ガスを循環させて行き渡らせることが困難であり、凍結対象物の表面におけるガス速度が遅く、有効な熱伝達が行われていないという問題があった。また、断熱容器内のガスの攪拌が不十分であり、断熱容器内における温度ムラが生じ易いという問題があった。さらに、断熱容器の容量が大きくなると、容器内の温度ムラは更に顕著なものとなり大きな問題となる。
【0006】
そこで本発明は、凍結対象物と低温窒素ガスとの熱伝達を向上させることによって、凍結時間の短縮、凍結原単位の低減及び凍結ムラの解消を図れるバッチ式食品凍結装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のバッチ式食品凍結装置は、複数の凍結対象物を周囲に空間を設けて配置した状態で載置する複数のトレイを積層したラックを格納する断熱容器と、断熱容器内に冷媒の液化窒素を噴射する液化窒素ノズルと、断熱容器内の低温窒素ガスを吸入して前記断熱容器内を循環させる送風機とを備えたバッチ式食品凍結装置において、前記断熱容器内にガス通路を区画形成するガス導入板を設け、該ガス導入板に、前記ガス通路内に前記送風機によって供給された前記低温窒素ガスを前記各トレイ上の凍結対象物に向けて吹付けるための複数のガス吹出し口を形成するとともに、複数の前記液化窒素ノズルを、各液化窒素ノズルから噴射した液化窒素が、前記各ガス吹出し口から吹き出して各トレイ上の凍結対象物に向かう前記低温窒素ガスに同伴され、その過程で蒸発するように各吹き出し口に対応して配置したことを特徴とし、特に、前記ガス吹出し口から吹出す低温窒素ガスの速度を、前記凍結対象物の表面上で6〜10m/秒に設定したことを特徴としている。
【0008】
また、前記ガス通路は、少なくとも前記ガス導入板部分が、前記トレイの形状、サイズに応じた形状のガス吹出し口を有するガス導入板と交換可能に形成されていることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は、本発明のバッチ式食品凍結装置の一形態例を示すもので、図1は縦断面図、図2は横断面図である。このバッチ式食品凍結装置は、扉21aを有する断熱容器21と、該断熱容器21内に複数の凍結対象物22をその周囲に空間を設けて配置する手段であるトレイ23及びラック24と、断熱容器21内に冷媒の液化窒素を導入する液化窒素導入管25及び該導入管25から導入された液化窒素を噴射する複数の液化窒素ノズル26と、断熱容器21内の低温窒素ガスを循環させる遠心式の送風機27と、該送風機27によって循環する低温窒素ガスをガイドするために該断熱容器21内に区画形成されたガス通路28と、該ガス通路28を形成するガス導入板29に設けられて送風機27から該通路内に供給された低温窒素ガスを前記凍結対象物22に向けて吹付けるための複数のガス吹出し口30と、断熱容器21内の余剰の窒素ガスを排出する排気口31とを有している。なお、液化窒素導入管25には、従来と同様に、温度センサで測定した温度に基づいて温度制御器により開閉制御される液化窒素導入弁が設けられている。
【0010】
前記ガス吹出し口30は、ガス導入板29に適当な間隔で孔やスリットを設けるようにしてもよいが、各トレイ23上に配置された凍結対象物22に満遍なく低温窒素ガスを吹付けるため、各トレイ23の形状やサイズ、設置枚数、上下間隔、凍結対象物22の形状や個数、配置状態等に応じた位置に適当な形状で設けることが好ましい。したがって、断熱容器21内におけるガス導入板29を交換可能に形成しておき、凍結対象物22、トレイ23及びラック24の条件に応じて所定位置に所定形状のガス吹出し口30を設けた複数のガス導入板29を用意して条件に応じて交換することが望ましい。
【0011】
また、前記液化窒素ノズル26は、各吹出し口30の近傍にそれぞれ配置されており、液化窒素ノズル26から噴射した液化窒素が、ガス吹出し口30から吹出して凍結対象物22に向かう低温窒素ガスに同伴され、その過程で蒸発するように形成している。これにより、各吹出し口30から吹出して凍結対象物22に吹付ける低温窒素ガスを液化窒素によって効果的に冷却することができ、より低温のガスを凍結対象物22に吹付けることができる。液化窒素ノズル26の設置位置や噴出方向、噴出状態等は、前記吹出し口30に対応させて変更することが可能である。さらに、吹出し口30の形状は任意であり、円形や角形の孔を一列又は複数列に並べでもよく、長方形、長円形のスリットを横方向又は縦方向に並べてもよく、異なる形状、大きさのものを組み合わせるようにしてもよい。
【0012】
各トレイ23の上下間隔は、凍結対象物22をトレイ23上に載置した状態で、その周囲に低温窒素ガスが十分に行き渡るような空間を確保できるように設定されており、凍結対象物22のサイズや形状により、トレイ22とラック24のサイズがそれぞれ設定されている。なお、凍結対象物22をその周囲に空間を設けて断熱容器21内に配置する手段は、上述のようなトレイ23とラック24とを使用することにより、各種凍結対象物22を所定の状態に容易に配置することができるが、これらの組み合わせに限らず、凍結対象物22の性状や形状に応じて任意の手段を使用することができる。
【0013】
また、断熱容器21内に一枚のガス導入板29を挿入して該ガス導入板29と容器壁面との間にガス通路28を形成しているが、周囲が閉塞され、少なくとも一面に上述のようなガス導入板29を有する箱形のガス通路を断熱容器21内に設置するようにしてもよい。このガス通路28の大きさや形状は、断熱容器21の容量や送風機27の容量に応じて設定すればよい。
【0014】
このように形成したバッチ式食品凍結装置を使用して凍結対象物22を凍結させる際には、まず、凍結対象物22をトレイ23に所定の配置状態で載置し、複数枚のトレイ23をラック24に所定の上下間隔で積層した後、このラック24を一つの単位として断熱容器21内に格納する。
【0015】
次に、扉21aを閉じて断熱容器21を密閉状態にした後、液化窒素導入管25から液化窒素の導入を開始するとともに、送風機27を作動させて断熱容器21内のガス循環を行い、断熱容器21内の冷却を開始する。断熱容器21内のガスは、図1に矢印で示すように、送風機27の中央部に吸い込まれてその外周側から吹出し、ガス導入板29の最上端のガス流通口32を通ってガス通路28に流入する。低温窒素ガスは、ガス通路28によりガイドされて流下しながらガス導入板29に設けられた各吹出し口30を通り、液化窒素ノズル26から噴射した液化窒素を同伴してトレイ23の側方からトレイ上に高速で吹出し、トレイ23上に載置されている凍結対象物22を冷却する。
【0016】
このとき、凍結対象物22を載せたトレイ23上を通過するガスの流れを安定した状態とし、かつ、所定の流速を得るようにするため、前記ラック24には、断熱容器21の前後(図2において上下方向)に隔壁33等をそれぞれ設け、各吹出し口30から吹出した低温窒素ガスの全量がトレイ23上を通過するようにし、また、低温窒素ガスが供給されるガス通路28やトレイ23を通過したガスが流れるガス戻り通路34は、循環するガスに流れ抵抗を与えずに、送風機27から遠い位置にある下段のトレイにも十分な量のガスが流れるように十分に広いスペースを設けるようにしている。
【0017】
凍結対象物22を冷却してトレイ23の端部からガス戻り通路34に流出した窒素ガスは、該通路34を上昇して再び送風機27に吸い込まれ、再びガス通路28へと循環する。また、余剰の窒素ガスは、断熱容器21内の圧力に応じて排気口31から排出される。
【0018】
前記吹出し口30から吹出す低温窒素ガスの流速は、送風機27の能力と各吹出し口30の形状及び総開口面積とを選定することによって調節することが可能である。凍結対象物22に吹付ける低温窒素ガスの流速は、凍結対象物22の形状等によっても異なるが、凍結対象物22の表面上で6〜10m/秒の範囲になるように設定することが好ましい。このガス流速が遅すぎると凍結対象物22への熱伝達効率が低下して凍結時間が長くかかり、液化窒素の消費量も増大することになる。一方、ガス流速を早くしすぎると、凍結対象物22の形状や流量によっては、吹付けられたガスによって凍結対象物22が倒れたり、吹き飛んだりするおそれがある。
【0019】
このように形成することにより、ガス吹出し口30から吹出す低温窒素ガスを液化窒素ノズル26から噴射する液化窒素により冷却することができるので、より低温の窒素ガスを凍結対象物22に吹付けることができる。さらに、送風機27の容量やガス吹出し口30の開口面積を適当に設定することにより、凍結対象物22の表面におけるガス流速を6〜10m/秒に高めることができるので、凍結対象物22と低温窒素ガスとの熱伝達を大幅に向上させることができ、液化窒素消費量の低減等の凍結処理の効率向上や所要時間の短縮が図れる。また、断熱容器21内に循環流を形成したことにより、温度ムラを小さくすることができる。
【0020】
図3は、本発明のバッチ式食品凍結装置の他の形態例を示す縦断面図である。なお、前記第1形態例に記載したバッチ式食品凍結装置の構成要素と同一の構成要素には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
本形態例に示すバッチ式食品凍結装置は、断熱容器21の両側にガス導入板29を設置してガス通路28をそれぞれ形成するとともに、天井部中央に配設した送風機27から両ガス通路28に低温窒素ガスをそれぞれ供給循環するように形成したものである。したがって、2個のラック24を両側のガス導入板29に接するようにして配置することにより、送風機27から両ガス通路28に供給された低温窒素ガスは、液化窒素ノズル26から噴射した液化窒素を同伴して前記同様に凍結対象物22に吹付けられ、トレイ23を通過した低温窒素ガスは、両ラック24間に形成されたガス戻り通路34から送風機27に吸い込まれて循環する。このように、断熱容器21の容量やラック24の大きさに応じて2個のラックの凍結処理を同時に行えるように形成することにより、大量の凍結対象物の凍結処理を一度に行うことができる。
【0022】
【実施例】
第1形態例に記載した構造のバッチ式食品凍結装置を使用してブロック状のすり身を凍結処理した。断熱容器は、一辺が1500mmの立方体であって、壁面から250mmの位置にガス導入板を設置してガス通路を形成した。使用したラックは、幅800mm、奥行き800mm、高さ800mmであって、このラックに、幅750mm、奥行き750mmのトレイを80mm間隔で10段配置した。各トレイ上には、直径100mmのすり身を10mm間隔で9個載置した。また、ガス導入板には、各トレイ上面からの高さが40mmの位置に、100mm×15mmのスリットからなるガス吹出し口を水平方向に6箇所設け、各ガス吹出し口から吹出す低温窒素ガスの流速が10m/秒になるようにした。さらに、各ガス吹出し口のトレイ側に液化窒素ノズルを設置し、供給圧力0.5〜0.7MPaで液化窒素を噴出させた。なお、液化窒素は、温度センサで測定した庫内温度が設定温度以上のときに液化窒素導入弁を開いて供給するように制御した。
【0023】
そして、凍結処理開始前の品温が10℃、処理後の品温を−15℃として凍結処理を行った。また、比較として、図4に示した従来構造のバッチ式食品凍結装置を使用して同じ個数のすり身を凍結処理した。断熱容器内の設定温度を表1に示すように設定し、凍結処理が完了するまでの時間を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のバッチ式食品凍結装置によれば、断熱容器内に低温窒素ガスの循環流を形成してガス導入板の吹出し口から凍結対象物に向けて低温窒素ガスを吹出すように形成するとともに、各吹出し口の近傍に液化窒素ノズルを配置したので、低温窒素ガスと液化窒素とが相俟って凍結対象物を効率よく冷却することができる。また、循環流によって温度ムラの発生も抑制できる。特に、低温窒素ガスの速度を凍結対象物の表面上で6〜10m/秒にすることにより、低温窒素ガスと凍結対象物との熱伝達効果が大幅に改善されて凍結効率が向上し、凍結時間の短縮、凍結原単位の低減及び凍結ムラの解消が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のバッチ式食品凍結装置の一形態例を示す縦断面図である。
【図2】 同じく横断面図である。
【図3】 本発明のバッチ式食品凍結装置の他の形態例を示す縦断面図である。
【図4】 従来のバッチ式食品凍結装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
21…断熱容器、22…凍結対象物、23…トレイ、24…ラック、25…液化窒素導入管、26…液化窒素ノズル、27…送風機、28…ガス通路、29…ガス導入板、30…ガス吹出し口、31…排気口、32…ガス流通口、33…隔壁、34…ガス戻り通路
Claims (3)
- 複数の凍結対象物を周囲に空間を設けて配置した状態で載置する複数のトレイを積層したラックを格納する断熱容器と、断熱容器内に冷媒の液化窒素を噴射する液化窒素ノズルと、断熱容器内の低温窒素ガスを吸入して前記断熱容器内を循環させる送風機とを備えたバッチ式食品凍結装置において、前記断熱容器内にガス通路を区画形成するガス導入板を設け、該ガス導入板に、前記ガス通路内に前記送風機によって供給された前記低温窒素ガスを前記各トレイ上の凍結対象物に向けて吹付けるための複数のガス吹出し口を形成するとともに、複数の前記液化窒素ノズルを、各液化窒素ノズルから噴射した液化窒素が、前記各ガス吹出し口から吹き出して各トレイ上の凍結対象物に向かう前記低温窒素ガスに同伴され、その過程で蒸発するように各吹き出し口に対応して配置したことを特徴とするバッチ式食品凍結装置。
- 前記ガス通路は、少なくとも前記ガス導入板部分が、前記トレイの形状、サイズに応じた形状のガス吹出し口を有するガス導入板と交換可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載のバッチ式食品凍結装置。
- 前記ガス吹出し口から吹出す低温窒素ガスの速度が、前記凍結対象物の表面上で6〜10m/秒であることを特徴とする請求項1又は2記載のバッチ式食品凍結装置。
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