JP4816448B2 - 自己流動性水硬性組成物 - Google Patents
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Description
経時における流動性の低下を防止することができ、良好な作業性、乾燥による収縮性を低減させる低収縮性、短時間での速硬性を維持し、強度を早期に発現できる強度発現性、更に付着強度と長期安定性に優れた超速硬セメント組成物について、特許文献1に、速硬材としてカルシウムフロロアルミネート系クリンカーとポルトランドセメント及びアルミナセメント混合物、無水石膏、消石灰、凝結調整剤、硫酸カリウム及び炭酸リチウムを含む超速硬セメント組成物が開示されている。
また、特許文献2には、0℃以下の低温度においても良好な強度発現を示す水硬性セメント組成物として、ポルトランドセメント、CaO−Al2O3系化合物及び無水石膏からなる水硬性成分と、アルカリ金属炭酸塩、硫酸塩、アルミン酸塩及び塩化物からなる群より選ばれた1種以上の無機塩を含有する低温硬化用セメント組成物が開示されている。
低熱セメント硬化体の長期強度を低下させることなく短期強度発現性を向上させることを目的として、特許文献3には高ビーライトセメントに対して、25℃の水に対し、1.0g/100g以上の溶解度を有する1種以上の硫酸塩(例えば硫酸カリウム、硫酸マグネシウムなど)からなる硬化促進剤を、高ビーライトセメント重量の0.3〜4.0%の添加量で含有させてなる低熱セメント組成物が開示されている。
本発明の第三は、本発明の自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタルを硬化させて得られる硬化体である。
1)水硬性成分が、アルミナセメント20〜80質量%、ポルトランドセメント10〜55質量%及び石膏5〜50質量%からなる水硬性成分であること。
2)水硬性成分100質量部に対し、硫酸カリウムが0.02〜1.0質量部であること。
3)水硬性組成物は、凝結遅延剤を含み、さらに流動化剤、増粘剤、消泡剤から選ばれる成分を少なくとも1種以上含むこと。
4)水硬性組成物は、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ及びシリカヒュームから選ばれる無機成分を少なくとも1種以上含むこと。
凝結促進剤は硫酸カリウムとリチウム塩とを含み、細骨材は微粒骨材を含むこと
を特徴とする自己流動性水硬性組成物に関する。
水硬性成分は、
好ましくは、
アルミナセメント20〜80質量部、ポルトランドセメント10〜55質量部及び石膏5〜50質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、
さらに好ましくは、
アルミナセメント26〜70質量部、ポルトランドセメント15〜50質量部及び石膏8〜40質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、
より好ましくは、
アルミナセメント33〜60質量部、ポルトランドセメント22〜45質量部及び石膏10〜35質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、
特に好ましくは、
アルミナセメント40〜50質量部、ポルトランドセメント29〜40質量部及び石膏15〜30質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、
を用いることにより、急硬性を有し、低収縮性又は低膨張性で硬化中の体積変化が少ない硬化体を得られやすいために好ましい。
石膏は、自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタルが硬化した後の寸法安定性を保持する成分として機能するものである。
自己流動性水硬性組成物において、無機成分の添加量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜350質量部、より好ましくは30〜200質量部、さらに好ましくは50〜150質量部、特に好ましくは70〜130質量部とするのが好ましい。
高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206に規定されるブレーン比表面積3000cm2/g以上のものを好適に用いることができる。
本発明では凝結促進剤として、硫酸カリウムとリチウム塩とを併せて使用することにより、モルタルの硬化を急速に促進し、表面性状に影響を及ぼすわずかばかりの材料分離が進行する前にモルタル組織を硬化させることができ、さらにこの効果は微粒骨材を用いることによって高められた未硬化のモルタル自体の材料分離抵抗性と相まって、卓越した硬化体表面仕上りを得ることができる。
硫酸カリウムの使用量が、0.1質量部未満では硬化促進効果が不十分なため、施工したモルタル表面の水引きに時間を要し、モルタル硬化体の表面硬度についても早期に高い値を得ることが困難なため好ましくない。また、1.0質量部を超えて過剰に添加した場合、良好な硬化体表面が得られなくなることがあるため好ましくない。
リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウムなどの無機リチウム塩や、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機酸有機リチウム塩などのリチウム塩を用いることが出来る。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.02〜0.3質量部、特に好ましくは0.04〜0.2質量部の範囲で用いることによって、水硬性組成物の可使時間を確保したのち好適な速硬性が得られることから好ましい。
特にリチウム塩を用いる場合、リチウム塩の粒径は50μm以下、さらに30μm以下、特に10μm以下が好ましく、粒径が上記範囲より大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなるために好ましくなく、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
モルタル流動性を向上させるとともに、モルタル内部の保水性を高めて材料分離抵抗性を向上させ、また、モルタル表面の水浮き(ブリージング)を抑制するために微粒骨材を適量含む細骨材を使用することが好ましい。
細骨材が、150μm以上〜850μm未満の粒子を、80質量%より少なく含む場合、特に好適な流動性を得るための必要な水量もしくは流動化剤の添加量が増加する傾向が強くなるため好ましくなく、30μm以上〜150μm未満の粒子を、3質量%より少なく含む場合には、モルタルの保水性が充分に得られず、充分な材料分離抵抗性を付与することが難しくなり、モルタルの硬化までの水浮きを抑制する効果が小さくなり、硬化体表面の仕上り状態が不良になることがあることから好ましくない。
また本発明で用いる細骨材は、好ましくは粒径が1180μm以上の粒子を含まないこと、さらに好ましくは850μm以上の粒子を含まないこと、特に好ましくは600μm以上の粒子を含まないことが、良好なモルタルの流動特性及び材料分離特性が得られることから、更に平滑で優れた表面仕上り性を安定して得られることから好ましい。
特に細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂、砕砂などの砂類、廃FCC触媒、石英粉末、アルミナクリンカーなどが好ましく用いることが出来る。
細骨材の粒径は、JIS Z 8801に規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
水硬性成分であるアルミナセメントの発現強度は、水/セメント比の影響を大きく受けることから、減水効果を有する流動化剤を使用して水/水硬性成分比を小さくすることが特に好ましい。
流動化剤としては、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤が、その種類を問わず使用でき、特にポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤が好ましい。
流動化剤は、使用する水硬性成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、水硬性成分100質量部に対して好ましくは0.01〜2.0質量部、さらに好ましくは0.02〜1.0質量部、特に好ましくは0.05〜0.3質量部を配合することができる。添加量が余り少ないと好適な効果(優れた流動性と高い硬化体強度)を発現せず、また添加量が多すぎても添加量に見合った効果は期待できず単に不経済であるだけでなく、場合によっては粘稠性も大きくなり所要の流動性を得るための混練水量が増大して強度性状が悪化する場合が考えられる。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、自己流動性水硬性組成物100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部、より好ましくは0.05〜0.7質量部、特に0.1〜0.5質量部含むことが好ましい。増粘剤の添加量が多くなると、モルタル粘度が増加して流動性の低下を招く恐れがあるために上記の好ましい範囲で用いることが好ましい。
増粘剤及び消泡剤を併用して用いることは、水硬性成分や細骨材などの骨材分離の抑制、気泡発生の抑制、硬化体表面の改善に好ましい効果を与え、水硬性組成物の硬化物の特性を向上させる上で好ましい。
オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸などの脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等の芳香族オキシ酸等を挙げることができる。
オキシカルボン酸の塩としては、例えばオキシカルボン酸のアルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩など)などを挙げることができる。
特に重炭酸ナトリウムや酒石酸一ナトリウムは、凝結遅延効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
好ましくは0.01〜2質量部であり、より好ましくは0.1〜1.6質量部、さらに好ましくは0.2〜1.4質量部、特に好ましくは0.4〜1.2質量部の範囲で用いることにより好適な流動性が得られる可使時間(ハンドリングタイム)を確保できることから好ましい。
消泡剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して、
好ましくは0.001〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1.5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、特に0.05〜0.5質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、上記範囲内が、好適な消泡効果が認められるために好ましい。
水の添加量は、自己流動性水硬性組成物100質量部に対し、好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは14〜34質量部、より好ましくは18〜30質量部、特に好ましくは22〜28質量部の範囲で添加して用いることが好ましい。
評価に用いるモルタルは、自己流動性水硬性組成物と水とを混練して調製した混練直後のモルタルを用いる。
・フロー値:
JASS 15M−103に記載の方法に準拠して測定する。
・セルフレベリング性:
図1に示すSL測定器を使用し、幅30mm×高さ30mm×長さ750mmのレールに、先端より長さ150mmのところに堰板を設け、混練直後のスラリーを所定量満たして成形する。成形直後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL0とし、堰板より200mm流れる時間を測定し、その測定時間をSL流動速度(L0)(秒/200mm)とする。
評価条件は、温度30℃、湿度65%の環境下で行う。
・水引き :調製したスラリーを、13cm×19cmの樹脂製の型枠へ厚さ10mmで流し込み、その後硬化が進行し、表面を軽く触れても、スラリーが付着しなくなるまでの時間とする。
・表面硬度:
スラリー打設後からの所定の経過時間において、硬化した表面の硬度をスプリング式硬度計タイプD型((株)上島製作所製)を用いて、任意の3〜5カ所の表面硬度を測定し、そのスプリング式硬度計タイプD型のゲージの読み取り値について平均値をその時間の表面硬度とする。
・モルタル表面状態
モルタル硬化体表面の仕上り状態は、調製したスラリーを、13cm×19cmの樹脂製の型枠へ厚さ10mmで流し込み、24時間後に評価した。表面粉化は目視観察により評価した。なし肌は硬化体表面の微細な凹凸が発生した状態であり、手で触れることにより評価した。ゆず肌は幅1〜2mmの小さな凸が発生した状態であり、目視観察により評価した。表面仕上りの評価基準は、実施工時を想定して以下の通りとした。
5:優れる、4:良好、3:問題ない、2:やや不良、1:不良。
1)水硬性成分
・アルミナセメント(フォンジュ、ラファージュアルミネート社製、ブレーン比表面積3100cm2/g)。
・ポルトランドセメント(早強セメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4500cm2/g)。
・石膏:II型無水石膏(セントラル硝子社製、ブレーン比表面積3460cm2/g)。
2)無機成分
・高炉スラグ微粉末(リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4400cm2/g)。
3)細骨材
・珪砂:6号珪砂(東海サンド社製)。6号珪砂の粒度構成を表3及び表4に示す。
・微粒珪砂:N70(瓢屋製)。微粒骨材の粒度構成を表4に示す。
4)混合砂a〜c
・表4に示す珪砂と微粒珪砂とを混合して混合砂a〜c調製した。混合砂a〜cの粒度構成を表3に示す。
5)凝結遅延剤:
・重炭酸Na:重炭酸ナトリウム(東ソー社製)。
・酒石酸Na:L−酒石酸ニナトリウム(扶桑化学工業社製)。
6)凝結促進剤:
・硫酸K:硫酸カリウム(上野製薬社製)
・炭酸Li:炭酸リチウム(本荘ケミカル社製)。
7)混和剤
・流動化剤:ポリカルボン酸系流動化剤(花王社製)。
・増粘剤:ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤(マーポローズMX−30000、松本油脂社製)。
・消泡剤:ポリエーテル系消泡剤(サンノプコ社製)。
表1に示す水硬性成分、無機成分、細骨材、凝結促進剤、流動化剤、増粘剤、消泡剤及び凝結遅延剤(総量:1.5kg)を、ケミスタラーを用いて混練して水硬性組成物を調整し、さらに水390gを加えて3分間混練して、モルタルを得た。水硬性組成物及びスラリーの調整は、温度30℃、湿度65%の雰囲気下で行った。
2)凝結促進剤として炭酸リチウムと硫酸カリウムとを併用し、微粒骨材を配合していない細骨材を用いた比較例2の場合、比較例1と比較して硬化体表面の粉化は改善されるものの、なし肌の発生を抑制することは出来ていない。
3)細骨材として、珪砂に微粒骨材を所定量配合した混合砂bを使用し、凝結促進剤として炭酸リチウムのみを使用した比較例3では、水引きまでの時間は若干短縮されるものの、硬化体表面状態については比較例1と同程度の仕上りで十分な改善は見られない。
また、細骨材として混合砂cを使用し、凝結促進剤として硫酸カリウムのみを使用した比較例4の場合、水引きまでの時間が大きく短縮されるものの、硬化体表面硬度については2時間後においても全く不充分(2時間後の表面硬度=9)であった。さらに、硬化体表面の仕上り状態は、なし肌の発生を全く抑制できなかった。
4)実施例1〜4に示すように、細骨材として、珪砂に微粒骨材を配合した混合砂を使用し、凝結促進剤として炭酸リチウムと硫酸カリウムとを併せて用いた場合、水引きまでの時間はいずれも30分〜40分であり、硬化体表面硬度についても1時間後に20以上の硬度が得られ、さらに硬化体の表面状態についても表面粉化は発生せず、なし肌も大幅に改善されていた。特に、実施例3及び4では、スラリー調製から1時間後の硬化体表面硬度が50以上と高く、速やかな施工性を確保する上で好ましい性状を示し、実施例3においては、硬化体表面状態になし肌現象が殆ど見られなかった。
Claims (3)
- アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分と、凝結促進剤と、細骨材とを含む水硬性組成物であり、凝結促進剤は硫酸カリウムとリチウム塩とを併せて使用し、
細骨材は細骨材100質量%中に30μm以上〜150μm未満の微粒分を3〜20質量%含み、150μm以上〜850μm未満の粒子を97〜80質量%含み、
水硬性成分が、アルミナセメント40〜50質量部、ポルトランドセメント29〜40質量部及び石膏15〜30質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である)からなる水硬性成分であり、
水硬性成分100質量部に対し、硫酸カリウムを0.02〜0.7質量部、リチウム塩を0.01〜0.3質量部含み、
リチウム塩は、炭酸リチウムであり、
水硬性成分100質量部に対し、細骨材を150〜250質量部含み、
さらに高炉スラグ微粉末を含み、且つ水硬性成分100質量部に対し、高炉スラグ微粉末を70〜130質量部含み、
さらに流動化剤、増粘剤、凝結遅延剤、消泡剤を含み、
水硬性成分100質量部に対し、流動化剤を0.05〜0.3質量部、増粘剤を0.1〜0.5質量部、凝結遅延剤を0.4〜1.2質量部、消泡剤を0.05〜0.5質量部含む
ことを特徴とする自己流動性水硬性組成物。 - 請求項1に記載の自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタル。
- 請求項1に記載の自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタルを硬化させて得られる硬化体。
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