(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の構成図である。図1中、10は本発明の第1実施形態が測定対象とする強誘電体薄膜試料であり、FeRAMに搭載される強誘電体薄膜セルを試料化したものである。強誘電体薄膜試料10において、11は強誘電体薄膜、12は強誘電体薄膜11の上部に設けられた上部電極、13は強誘電体薄膜11の下部に設けられた下部電極である。
本発明の第1実施形態は、電圧源14と、プローブ15と、電流電圧変換器16と、参照信号源17と、遅延線18、19、20と、差引回路をなす差動増幅器21と、ヒステリシス特性表示装置22を備えている。なお、本発明の第1実施形態では、電圧源14の電圧出力端子23に接続された電圧線24の分岐点25および電圧源14の接地端子26に接続された電圧線27の分岐点28から強誘電体薄膜試料10側を見た系を測定系と呼ぶ。
電圧源14は、少なくとも直流電圧および三角波電圧を発生可能とされたものであり、例えば、関数発生器や任意波形発生器等を使用することができる。プローブ15は、電圧源14が出力する電圧を強誘電体薄膜試料10の上部電極12に印加するためのものである。
電流電圧変換器16は、電圧源14とプローブ15との間に接続され、強誘電体薄膜試料10に流れる電流を読み取り、読み取った電流を読み取った電流に比例した電圧に変換し、この電圧を測定信号として出力するものである。読み取った電流の電圧変換には、変換抵抗を使用する方法や、演算増幅器を用いた電流/電圧変換回路等を使用する方法がある。
参照信号源17は、電流電圧変換器16が出力する測定信号に含まれる強誘電体薄膜試料10の漏洩電流、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分を参照信号として発生するものであり、等価回路29と電流電圧変換器30を有している。
等価回路29は、強誘電体薄膜試料10の上部電極12と下部電極13との間の漏洩抵抗や、参照信号源17の配線の寄生容量では相殺できない測定系の寄生容量や、強誘電体薄膜試料10の静電容量を回路素子で構成するものであり、人手による駆動により抵抗値の制御を可能とされた可変抵抗31と、人手による駆動により容量値の制御を可能とされた可変容量32を備えている。
等価回路29としては、厳密には、配線系の抵抗や自己誘導を考慮しなければならず、これらを考慮した回路とすることもできるが、最適化された測定系では、両者共にほぼゼロとみなすことができるため、本発明の第1実施形態では、可変抵抗31と可変容量32を並列接続して等価回路29としている。
可変抵抗31は、強誘電体薄膜試料10の上部電極12と下部電極13との間の漏洩抵抗を表すものである。漏洩抵抗は、強誘電体薄膜試料10の材質、状態、面積によって大きく異なるため、可変抵抗31の抵抗値は、実際の漏洩電流に合わせることができるものとする必要がある。
可変容量32は、強誘電体薄膜試料10の上部電極12と下部電極13との間の静電容量、プローブ15付近の寄生容量および参照信号源17の配線では相殺できない測定系の配線の寄生容量を全て足し合わせた測定系全体の寄生容量を表す。一般に、測定系全体の寄生容量は、pFから数十pF程度であるので、可変容量32として、この範囲を調整できるものを使用する。可変容量32としては、容量の電圧依存あるいは周波数依存が無い空気可変容量などが最適である。
なお、漏洩抵抗が非常に大きい場合や、測定周波数が十分に高い場合には、同一量の電荷が短時間に移動するため、強誘電体薄膜試料10の分極反転による電流値が、測定周波数が低い場合よりも大きくなるので、漏洩電流(純粋な抵抗成分による電流は測定周波数に依存しない)の影響を無視できる場合もある。この場合には、可変抵抗31を省略して等価回路29を可変容量32のみで構成することも可能である。
電流電圧変換器30は、等価回路29に流れる電流を読み取り、読み取った電流を読み取った電流に比例した電圧に変換し、この電圧を参照信号として出力するものであり、測定系の電流電圧変換器16と同一構成を有するものである。
遅延線18は、電流電圧変換器16の測定信号出力端子33を差動増幅器21の非反転入力端子に接続するものである。遅延線19は、電流電圧変換器30の参照信号入力端子34を差動増幅器21の反転入力端子に接続するものである。なお、本発明の第1実施形態では、遅延線18、19を調整して、差動増幅器21に入力する測定信号と参照信号のタイミングを合わせておく必要がある。
遅延線20は、電圧源14が出力する電圧信号をヒステリシス特性表示装置22に供給するためのものであり、電圧源14が出力する電圧信号と差動増幅器21の出力信号のタイミングを合わせるように調整しておく必要がある。これら遅延線18〜20は、一旦調整すれば、強誘電体薄膜試料10を変更しても、再調整する必要は無い。
差動増幅器21は、遅延線18を介して与えられる電流電圧変換器16が出力する測定信号から、遅延線19を介して与えられる参照信号源17が出力する参照信号を差し引くものであり、差動増幅器21の出力信号は、「(測定信号)−(参照信号)」となる。
ヒステリシス特性表示装置22は、差動増幅器21の出力信号および電圧源14が出力する電圧を入力し、強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性曲線を生成して表示するものであり、差動増幅器21の出力信号を記録する記録部35や、記録部35に記録された差動増幅器21の出力信号を積分して強誘電体薄膜試料10に蓄積されて分極量を演算する積分部36や、電圧源14が出力する電圧と積分部36の出力を入力して分極−電荷ヒステリシス特性を表示する表示部37を備えている。このヒステリシス特性表示装置22としては、例えば、ディシタル・オシロスコープ等を使用することができる。
図2は本発明の第1実施形態の調整方法を示すフローチャートである。すなわち、本発明の第1実施形態の調整を行う場合には、まず、電圧源14から適当な直流電圧(例えば、分極−電界ヒステリシス特性を測定する場合に使用する三角波電圧の最大電圧)を出力し、差動増幅器21の出力信号がゼロとなるように可変抵抗31の抵抗値を調整する(ステップP1)。
ここで、電圧源14から直流電圧を出力しても、強誘電体薄膜試料10の分極反転による電流や、強誘電体薄膜試料10自体の静電容量による電流や、測定系の寄生容量による電流は流れないので、もし、電圧源14から適当な直流電圧を出力した場合に、電流が流れるならば、それは、強誘電体薄膜試料10の上部電極12と下部電極13との間の漏洩電流である。
そこで、電圧源14から適当な直流電圧を出力した場合において、電流が流れる場合には、差動増幅器21において、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分を差し引いて、差動増幅器21の出力信号がゼロとなるように可変抵抗31の抵抗値を調整する。
すなわち、等価回路29に強誘電体薄膜試料10の漏洩電流と同一電流値の電流を流すようにする。このようにすると、強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性測定時の差動増幅器21の出力信号は、電流電圧変換器16が出力する測定信号から強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分を除去したものとなる。
次に、電圧源14から強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性の測定に使用する三角波電圧を出力し、差動増幅器21の出力信号から測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分が除去されるように可変容量32の容量値を調整する(ステップP2)。すなわち、等価回路29に測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による電流と同一電流値の電流を流すようにする。
このようにすると、強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性測定時の差動増幅器21の出力信号は、電流電圧変換器16が出力する測定信号から測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分を除去したものとなる。なお、正弦波電圧を使用することも可能ではあるが、電流電圧変換器16が出力する測定信号に含まれる分極反転による信号成分と測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分を区別しづらいという難点がある。
図3は電圧源14から三角波電圧を出力した場合に測定系に流れる電流および差動増幅器21の出力信号を示す波形図であり、(A)は電圧源14が出力する三角波電圧、(B)は強誘電体薄膜試料10の分極反転電流、(C)は測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による電流、(D)は強誘電体薄膜試料10の漏洩電流、(E)は電流電圧変換器16に流れる電流、(F)は差動増幅器21の出力信号を示している。
すなわち、電圧源14から図3(A)に示すような三角波電圧を発生すると、これが強誘電体薄膜試料10の分極を反転させるのに十分な大きさであれば、電流電圧変換器16に流れる電流波形は、図3(E)に示すような電流波形、すなわち、図3(B)に示すような強誘電体薄膜試料10の分極反転電流と、図3(C)に示すような測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による電流と、図3(D)に示すような強誘電体薄膜試料10の漏洩電流とが重畳されたものとなる。
しかしながら、既に、ステップP1において、電流電圧変換器16が出力する測定信号から強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分が差し引かれて差動増幅器21の出力信号がゼロとなるように可変抵抗31の抵抗値が調整されているので、差動増幅器21の出力には、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分は現れない。すなわち、電圧源14から図3(A)に示すような三角波電圧を発生すると、差動増幅器21の出力信号は、図3(F)に示すような波形となる。
図4は可変容量32の容量値の調整方法を説明するための波形図であり、(A)は電圧源14が出力する三角波電圧、(B)は可変容量32の容量値調整前の差動増幅器21の出力信号、(C)は可変容量32に流れる電流、(D)は可変容量32の容量値調整後の差動増幅器21の出力信号を示している。
ここで、電流電圧変換器16が出力する測定信号に含まれる測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分は、基本的には強誘電体薄膜試料10に印加した電圧を微分したものであるから、図4(A)に示すように、電圧源14から三角波電圧を出力させた場合、可変容量32に流れる電流は、図4(C)に示すように、三角波電圧が増加から減少に転じる時点T1および減少から増加に転じる時点T2で流れる方向が反転し、差動増幅器21の出力信号は、図4(B)に示すように、この時点T1、T2で急峻に変化することになる。
これに対して、強誘電体薄膜試料10の分極反転電流は、図3(B)に示すように、時点T1、T2で滑らかに変化し、特に、減少しはじめた部分では、ほぼゼロに近い値となる。したがって、差動増幅器21の出力信号のこの部分に注目して、差動増幅器21の出力信号の段差(図4(B)に符号X1で示す部分)が解消されるように可変容量32の容量値を調整すれば、図4(D)に示すように、測定信号から測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分を差し引き、強誘電体薄膜試料10の分極反転電流による信号のみを測定信号として得ることができる。
以上の調整により、強誘電体薄膜試料10の分極反転電流のみを測定する条件が定まったことになるので、これ以降は、強誘電体薄膜試料10について、通常の分極−電界ヒステリシス特性測定と同様の測定を行うことにより、1度の測定で所望のデータを得ることができる。
本発明の第1実施形態においては、強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性測定時には、電圧源14から三角波電圧を出力させる。このようにすると、電流電圧変換器16は、強誘電体薄膜試料10に流れる電流を読み取り、読み取った電流を読み取った電流に比例した電圧に変換し、この電圧を測定信号として出力する。
また、参照信号源17は、電圧源14が出力する三角波電圧を受けて、電流電圧変換器16が出力する測定信号に含まれる強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分とを重畳した信号を参照信号として出力する。
そして、差動増幅器21は、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、参照信号源17が出力する参照信号を差し引く。この結果、差動増幅器21の出力信号は、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分とを含まない、強誘電体薄膜試料10の分極反転電流のみを反映した測定信号となる。
図5は本発明の第1実施形態の効果を示す図であり、電圧源14が出力する三角波電圧と、差動増幅器21の出力信号と、ヒステリシス特性表示装置22に表示されるヒステリシス特性曲線の関係を示している。
(A)は電圧源14が出力する三角波電圧、(B)〜(D)は差動増幅器21の出力信号を示しており、(B)は強誘電体薄膜試料10の分極反転と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量と、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分を含む場合、(C)は強誘電体薄膜試料10の分極反転電流と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分を含む場合、(D)は強誘電体薄膜試料10の分極反転電流による信号成分のみの場合である。
また、(E)〜(G)はヒステリシス特性表示装置22に表示されるヒステリシス特性曲線であり、(E)は差動増幅器21の出力信号が、(B)に示すように、強誘電体薄膜試料10の分極反転と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量と、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分を含む場合、(F)は差動増幅器21の出力信号が、(C)に示すように、強誘電体薄膜試料10の分極反転電流と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分を含む場合、(G)は差動増幅器21の出力信号が、(D)に示すように、強誘電体薄膜試料10の分極反転電流による信号成分のみの場合である。
以上のように、本発明の第1実施形態によれば、強誘電体薄膜試料10の分極量を高精度に測定し、ヒステリシス特性表示装置22に強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性曲線を高精度に表示することができ、強誘電体薄膜試料10の分極特性評価を高精度に行うことができる。
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態の構成図である。本発明の第2実施形態は、図1に示す本発明の第1実施形態が備える参照信号源17の代わりに、参照信号源17とは構成の異なる参照信号源40を設け、その他については、図1に示す本発明の第1実施形態と同様に構成したものである。
参照信号源40は、図1に示す参照信号源17が備える電流電圧変換器30のほかに、等価回路41を有している。等価回路41は、抵抗値を電子的に自動調整可能とされた能動素子(トランジスタ等)からなる可変抵抗42と、容量値を電子的に自動調整可能とされた能動素子(可変容量ダイオード等)からなる可変容量43を並列接続して構成されている。なお、可変抵抗42として機械的に抵抗値を自動調整可能とされた可変抵抗を使用し、可変容量43として機械的に容量値を自動調整可能とされた可変容量を使用することもできる。
可変抵抗42は、強誘電体薄膜試料10の上部電極12と下部電極13との間の漏洩抵抗を表すものである。漏洩抵抗は、強誘電体薄膜試料10の材質、状態、面積によって大きく異なるため、可変抵抗42の抵抗値は、実際の漏洩電流に合わせることができるものとする必要がある。
可変容量43は、強誘電体薄膜試料10の上部電極12と下部電極13との間の静電容量、プローブ15付近の寄生容量および参照信号源40の配線では相殺できない測定系の配線の寄生容量を全て足し合わせた測定系全体の寄生容量を表す。
参照信号源40は、さらに、切り替えスイッチ44と、絶対値回路45と、積分器46と、積分制御回路47と、可変抵抗駆動回路48と、可変容量駆動回路49とを有している。
切り替えスイッチ44は、差動増幅器21の出力信号を可変抵抗駆動回路48又は絶対値回路45に供給するためのものであり、可変抵抗42の抵抗値を調整する場合には、可動接点44Aを固定接点44Bに接続し、可変容量43の容量値を制御する場合には、可動接点44Aを固定接点44Cに接続する。
絶対値回路45は、差動増幅器21の出力信号を絶対値化するものである。積分器46は、絶対値回路45が出力する絶対値信号を積分制御回路47が指示する時間だけ積分するものである。積分制御回路47は、電圧源14が出力する同期信号を入力して積分器46に対して積分時間を指示する積分制御信号を与えるものである。
可変抵抗駆動回路48は、差動増幅器21の出力信号がゼロとなるように可変抵抗42を駆動して可変抵抗42の抵抗値を制御するものである。可変容量駆動回路49は、積分器46の出力を入力し、積分器46の出力が最小となるように可変容量43を駆動して可変容量43の容量値を制御するものである。
図7は積分器46の構成例を示す回路図である。図7中、55は入力端子、56は積分回路、57はサンプルアンドホールド回路、58は出力端子である。積分回路56において、59は抵抗、60は差動増幅器、61は容量、62は積分リセットスイッチであり、サンプルアンドホールド回路57において、63はホールドスイッチ、64は容量、65は差動増幅器である。
積分リセットスイッチ62は、積分制御回路47が出力する積分制御信号により動作が制御されるものであり、積分制御信号=Hレベルの間(積分時間)だけオープンとなり、積分回路56を積分動作状態とし、積分制御信号=Lレベルの間(リセット時間)はクローズとなり、積分回路56をリセット状態とする。
ホールドスイッチ63は、積分制御信号により動作が制御されるものであり、積分制御信号のHレベルからLレベルへの立ち下がりでオープンとなり、サンプルアンドホールド回路57をデータホールド動作状態とし、積分制御信号のLレベルからHレベルへの立ち上がりでクローズとなり、サンプルアンドホールド回路57をデータサンプル動作状態とする。
すなわち、本発明の第2実施形態では、積分時間の間、積分器46は、絶対値回路45の出力を積分し、積分時間が終了すると、サンプルアンドホールド回路57は、積分回路56の出力をホールドすると共に、積分回路56はリセットされ、リセット時間の間に、可変容量駆動回路49は、サンプルアンドホールド回路57の出力(積分器46の出力)を入力して可変容量43の容量値を調整する。
図8は積分制御回路47の動作を説明するためのタイミングチャートである。(A)は電圧源14が出力する三角波電圧、(B)は電圧源14が出力する同期信号、(C)は電圧源14が出力する同期信号を2逓倍した逓倍同期信号、(D)は電圧源14が出力する三角波電圧のゼルクロスを検出してなるゼロクロス検出信号、(E)はゼロクロス検出信号を遅延してなる遅延ゼロクロス検出信号、(F)は積分制御信号を示している。同期信号は、その立ち上がり時点が、三角波電圧が減少から増加に転じる時点T2を示すものとされている。
積分制御回路47では、(C)に示すように、電圧源14が出力する同期信号を2逓倍した逓倍同期信号が生成される。この逓倍同期信号は、その立ち上がり時点が、三角波電圧が増加から減少に転じる時点T1または減少から増加に転じる時点T2を示すものとされる。
また、(D)に示すように、電圧源14が出力する三角波電圧のゼロクロスを検出してなるゼロクロス検出信号が生成され、さらに、(E)に示すように、このゼロクロス検出信号を遅延して遅延ゼロクロス検出信号が生成される。ゼロクロス検出信号は、その立ち上がり時点が、三角波電圧のゼロクロスを示すものとされ、遅延ゼロクロス検出信号は、その立ち上がり時点が積分時間の終了時を示すものとされる。
そして、(F)に示すように、逓倍同期信号と遅延ゼロクロス検出信号から積分制御信号が生成される。この積分制御信号は、その立ち上がりが逓倍同期信号の立ち上がりに同期し、その立ち下がりが遅延ゼロクロス検出信号の立ち上がりに同期したものとされる。
図9は本発明の第2実施形態の調整方法を示すフローチャートである。本発明の第2実施形態を調整する場合には、まず、切り替えスイッチ44の可動接点44Aを固定接点44Bに接続する(ステップQ1)。次に、電圧源14から適当な直流電圧を出力する(ステップQ2)。このようにすると、可変抵抗駆動回路48により、差動増幅器21の出力信号がゼロとなるように可変抵抗42の抵抗値が自動調整される(ステップQ3)。
次に、切り替えスイッチ44の可動接点44Aを固定接点44Cに接続する(ステップQ4)。そして、電圧源14から強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性の測定に使用する三角波電圧を出力する(ステップQ5)。このようにすると、可変容量駆動回路49により、積分器46の出力が最小となるように可変容量43の容量値が自動調整される(ステップQ6)。
図10および図11は積分器46の出力を利用した可変容量43の容量値の調整の有効性を説明するための波形図であり、図10は電圧源14から三角波電圧を出力した場合の差動増幅器21の出力信号中の可変容量43による信号成分と、積分器46の入力信号中の可変容量43による信号成分との関係を示している。
(A)は電圧源14が出力する三角波電圧、(B)は差動増幅器21の出力信号中の可変容量43による信号成分を示しており、(B−1)は可変容量43の容量値が小さい場合、(B−2)は可変容量43の容量値が適当な場合、(B−3)は可変容量43の容量値が大きい場合である。(C)は積分器46の入力信号中の可変容量43による信号成分を示しており、(C−1)は可変容量43の容量値が小さい場合、(C−2)は可変容量43の容量値が適当な場合、(C−3)は可変容量43の容量値が大きい場合である。
ここで、電流電圧変換器16が出力する測定信号中の測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分は、強誘電体薄膜試料10への印加電圧が三角波の場合、基本的には矩形波となり、したがって、これらは、可変容量43の容量値を調整することにより、参照信号で打ち消すことができ、この場合には、積分器46の出力はゼロとなる。
図11は可変抵抗42の抵抗値を自動調整した後に、電圧源14から三角波電圧を出力した場合の差動増幅器21の出力信号と、積分器46の入力信号との関係を示している。(A)は電圧源14が出力する三角波電圧、(B)は差動増幅器21の出力信号を示しており、(B−1)は可変容量43の容量値が小さい場合、(B−2)は可変容量43の容量値が適当な場合、(B−3)は可変容量43の容量値が大きい場合である。(C)は積分器46の入力信号を示しており、(C−1)は可変容量43の容量値が小さい場合、(C−2)は可変容量43の容量値が適当な場合、(C−3)は可変容量43の容量値が大きい場合である。
ここで、差動増幅器21の出力信号は、強誘電体薄膜試料10の分極による信号成分と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分が重畳されたものとなるが、強誘電体薄膜試料10の分極反転の仕方によって差動増幅器21の出力信号の絶対値の積分が最小となる参照信号の大きさが変わってしまう。しかし、三角波電圧が正負の最大からゼロまでおよびゼロから反対極性の電圧での分極反転の閾値未満の低い電圧までの領域では、実際上、分極反転による信号成分は無視することができる。
したがって、この領域において、差動増幅器21の出力信号の絶対値の積分値が最小になるように参照信号の大きさ、すなわち、可変容量43の大きさを調整することにより、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分を打ち消すことが可能となる。
ここで、S/N比を考慮すると、積分器46における絶対値回路45の出力信号の積分範囲は、なるべく広くとる方が望ましいので、図11(C)に示すように、三角波電圧がプラスあるいはマイナスの最大値から反対極性における分極反転の閾値直前までとすることが好適である。可変容量駆動回路49は、この積分器46の出力、すなわち、図11(C)の斜線部分の面積が最小となるように可変容量を調整する。
本発明の第2実施形態においては、調整後の強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性測定時には、電圧源14から三角波電圧を出力させる。このようにすると、電流電圧変換器16は、強誘電体薄膜試料10に流れる電流を読み取り、読み取った電流を読み取った電流に比例した電圧に変換し、この電圧を測定信号として出力する。
また、参照信号源40は、電圧源14が出力する三角波電圧を受けて、電流電圧変換器16が出力する測定信号に含まれる強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分とを重畳した信号を参照信号として出力する。
そして、差動増幅器21は、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、参照信号源40が出力する参照信号を差し引く。この結果、差動増幅器21の出力信号は、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分とを含まない、強誘電体薄膜試料10の分極反転電流のみを反映した測定信号となる。
したがって、本発明の第2実施形態によれば、強誘電体薄膜試料10の分極量を高精度に測定し、ヒステリシス特性表示装置22に強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性曲線を高精度に表示することができ、強誘電体薄膜試料10の分極特性評価を高精度に行うことができる。なお、可変容量駆動回路49および積分制御回路47の機能はコンピュータにより達成するようにしても良く、また、積分器46の機能もコンピュータにより達成するようにしても良い。
(第3実施形態)
図12は本発明の第3実施形態の構成図である。本発明の第3実施形態は、図6に示す本発明の第2実施形態が備える参照信号源40の代わりに、参照信号源40と構成の異なる参照信号源70を設け、その他については、図6に示す本発明の第2実施形態と同様に構成したものである。
参照信号源70は、図6に示す参照信号源40が備える切り替えスイッチ44と、絶対値回路45と、積分器46と、積分制御回路47のほかに、固定抵抗71と、固定容量72と、電流電圧変換器73、74と、可変利得増幅器75、76と、利得調整回路77、78と、加算器79を備えている。
電流電圧変換器73は、電圧源14と固定抵抗71との間に接続され、固定抵抗71に流れる電流を読み取って、この読み取った電流を電圧に変換してなる参照信号を出力するものであり、図1に示す電流電圧変換器16と同様に構成されている。
電流電圧変換器74は、電圧源14と固定容量72との間に接続され、固定容量72に流れる電流を読み取って、この読み取った電流を電圧に変換してなる参照信号を出力するものであり、図1に示す電流電圧変換器16と同様に構成されている。
可変利得増幅器75は、利得調整回路77により利得を制御されるものであり、電流電圧変換器73が出力する測定信号を増幅するものである。可変利得増幅器76は、利得調整回路78により利得を制御されるものであり、電流電圧変換器74が出力する測定信号を増幅するものである。
利得調整回路77は、切り替えスイッチ44を介して差動増幅器21の出力信号を入力し、差動増幅器21の出力信号がゼロとなるように可変利得増幅器75の利得を調整するものである。利得調整回路78は、積分器46の出力を入力し、積分器46の出力が最小となるように可変利得増幅器76の利得を調整するものである。
加算器79は、可変利得増幅器75が出力する参照信号と、可変利得増幅器76が出力する参照信号とを加算し、この加算した参照信号を参照信号源70が出力する参照信号として出力するものであり、その出力端子は、差動増幅器21の反転入力端子に接続されている。
ここで、図6に示す参照信号源40は、可変抵抗42の抵抗値を調整することにより、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分を差し引くための参照信号成分を生成し、可変容量43の容量値を調整することにより、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分を差し引くための参照信号成分を生成するというものである。
これに対して、参照信号源70は、可変利得増幅器75の利得を調整することにより、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分を差し引くための参照信号成分を生成し、可変利得増幅器76の利得を調整することにより、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分を差し引くための参照信号成分を生成するというものである。
図13は本発明の第3実施形態の調整方法を示すフローチャートである。本発明の第3実施形態を調整する場合には、まず、切り替えスイッチ44の可動接点44Aを固定接点44Bに接続する(ステップN1)。そして、電圧源14から適当な直流電圧を出力する(ステップN2)。このようにすると、利得調整回路77により、差動増幅器21の出力信号がゼロとなるように可変利得増幅器75の利得が自動調整される(ステップN3)。
次に、切り替えスイッチ44の可動接点44Aを固定接点44Cに接続する(ステップN4)。そして、電圧源14から強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性の測定に使用する三角波電圧を出力する(ステップN5)。このようにすると、利得調整回路78により、積分器46の出力が最小となるように可変利得増幅器76の利得が自動調整される(ステップN6)。
本発明の第3実施形態においては、調整後の強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性測定時には、電圧源14から三角波電圧を出力させる。このようにすると、電流電圧変換器16は、強誘電体薄膜試料10に流れる電流を読み取り、読み取った電流を読み取った電流に比例した電圧に変換し、この電圧を測定信号として出力する。
また、参照信号源70は、電圧源14が出力する三角波電圧を受けて、電流電圧変換器16が出力する測定信号に含まれる強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分とを重畳した信号を参照信号として出力する。
そして、差動増幅器21は、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、参照信号源70が出力する参照信号を差し引く。この結果、差動増幅器21の出力信号は、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分とを含まない、強誘電体薄膜試料10の分極反転電流のみを反映した測定信号となる。
したがって、本発明の第3実施形態によれば、強誘電体薄膜試料10の分極量を高精度に測定し、ヒステリシス特性表示装置22に強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性曲線を高精度に表示することができ、強誘電体薄膜試料10の分極特性評価を高精度に行うことができる。
(第4実施形態)
図14は本発明の第4実施形態の構成図である。本発明の第4実施形態は、図1に示す本発明の第1実施形態と同様に、電圧源14と、プローブ15と、電流電圧変換器16を備えるほかに、A/Dコンバータ85、86と、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)87と、電流モニタ88と、ヒステリシス特性表示手段89を備えている。
A/Dコンバータ85は、電流電圧変換器16が出力する測定信号をデジタル化してDSP87に与えるものである。A/Dコンバータ86は、電圧源14が出力する電圧をデジタル化してDSP87に与えるものである。DSP87は、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分との除去をデジタル的に行うものである。
図15はDSP87が備える手段を示す回路図である。図15中、91、92は入力用のバッファ、93〜95は出力用のバッファ、96は差動増幅器、97は可変利得増幅器、98は利得調整器、99は微分器、100は可変利得増幅器、101は利得調整器、102は加算器、103は絶対値発生器、104は積分器、105はタイミング抽出器、106は積分タイミング発生器、107は積分器、108は積分タイミング発生器、109はモード切替・全体制御部である。なお、手段96〜108の一部又は全部の機能は、DSP87の演算部をハードウエア資源、プログラムをソフトウエア資源として達成することができる。
ここで、差動増幅器96は図12に示す差動増幅器21に相当し、可変利得増幅器97は図12に示す可変利得増幅器75に相当し、利得調整器98は図12に示す利得調整回路77に相当し、可変利得増幅器100は図12に示す可変利得増幅器76に相当し、利得調整器101は図12に示す利得調整回路78に相当し、加算器102は図12に示す加算器79に相当し、絶対値発生器103は図12に示す絶対値回路45に相当し、積分器104は図12に示す積分器46に相当し、タイミング抽出器105および積分タイミング発生器106は図12に示す積分制御回路47に相当する。
すなわち、本発明の第4実施形態は、図12に示す本発明の第3実施形態が備える参照信号源70がアナログ的に行う処理をDSP87でデジタル的に行うとするものであり、電流電圧変換器16が出力する測定信号は、A/Dコンバータ85でデジタル化されてDSP87内のバッファ91に書き込まれる。
また、電圧源14が出力した電圧は、強誘電体薄膜試料10に印加されると共に、A/Dコンバータ86でデジタル化されてDSP87内のバッファ92に書き込まれる。バッファ91、92には、いわゆるピンポンバッファを使用し、A/Dコンバータ85、86からのデータの書き込みと並行して、既に書き込まれたデータの処理を行うことができるようにする。
バッファ93、94、95にもピンポンバッファを使用し、書き込んだデータは一定時間ごとにそれぞれ電流データ、電荷データ、印加電圧データとして出力することができるようにする。これらの数値出力データは、D/Aコンバータを通して電圧データへと変換してオシロスコープ等で表示させても良いし、数値データのままパーソナルコンピュータ等による表示・記録を行なっても良い。
本発明の第4実施形態においては、モード設定信号により、本発明の第4実施形態を漏洩抵抗測定モード、寄生容量測定モードおよびヒステリシス測定モードの順に設定する。以下、これらのモード時の動作について説明する。
<1.漏洩抵抗測定モード時の動作>
漏洩抵抗測定モード時には、以下のステップS1〜S8の動作を順に実行する。
(S1)可変利得増幅器100の利得を0に初期化する。これは、利得調整器101が出力する乗算の係数を0にすることにより行う。
(S2)電圧源14から適当な直流電圧を出力する。例えば、強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性測定に使用する三角波電圧の最大電圧とする。
(S3)バッファ91、バッファ92からデータを取り出す。
(S4)利得調整器98は、バッファ91からのデータ値が0の場合には、漏洩電流は流れていないので、漏洩抵抗を無限大(DSP87で扱える最大の数値)にする。これに対して、バッファ91からのデータ値が0でなかった場合には、漏洩電流が流れているので、バッファ92からのデータ値をバッファ91からのデータ値で除し、これを漏洩抵抗にする。利得調整器98は、漏洩抵抗の値を可変利得増幅器97の増幅率(乗数)とする。
(S5)可変利得増幅器97は、バッファ92からのデータ値に漏洩抵抗の値を乗じてキャンセルすべき漏洩電流値を計算する。
(S6)加算器102は、可変利得増幅器97の計算結果に可変利得増幅器100の計算結果を加える。ただし、漏洩抵抗測定モードでは、可変利得増幅器100の乗数は0なので、可変利得増幅器97の計算結果のままになる。
(S7)差動増幅器96は、バッファ91のデータ値から加算器102の計算結果を減ずる。
(S8)差動増幅器96の計算結果を漏洩電流データとしてバッファ93に書き込む。また、バッファ92のデータ値を印加電圧データとしてそのままバッファ95に書き込む。これら印加電圧データおよび漏洩電流データから、漏洩電流が元々0であった、もしくはキャンセルにより0になったことが確認される。
<2.寄生容量測定モード時の動作>
漏洩抵抗測定モードの次に設定する寄生容量測定モード時には、次のステップU1〜U18の動作を順に実行する。なお、寄生容量設定モードは、漏洩抵抗測定モードで可変利得増幅器97の乗数が設定され、漏洩電流がキャンセルされていることを前提とする。
(U1)初めに,可変利得増幅器100の倍率を適当な値に設定する。これは、測定系の寄生容量と強誘電体薄膜試料の静電容量との合計値であるので、試料の誘電率や寸法から見積もることができる。強誘電体薄膜試料10がマイクロメートル程度の微細なものになると、測定系の配線の寄生容量の影響が圧倒的に大きくなるが、その場合、典型的には数pFである。
(U2)電圧源14から三角波電圧を出力する。
(U3)タイミング抽出器105は、測定開始のタイミングを見つける。すなわち、バッファ92から印加電圧データを取り出して調べ、この印加電圧データが負から正になるタイミングを見つける。このタイミングがt=0となり、次のt=0までの時間を周期Tとする。
(U4)微分器99は、t=0からt=Tまでの印加電圧データの各印加電圧データについて、1つ前の印加電圧データとの差分を求めることにより印加電圧データの微分データを得る。
(U5)タイミング抽出器105は、微分データから印加電圧が最小値、最大値をとるタイミング(印加電圧が減少から増加に転ずる時点、増加から減少に転ずる時点)を見つける。このタイミングをそれぞれtmin、tmaxとする。
(U6)バッファ92のデータ取り出し点を最初のt=0に戻す。微分データ取り出し点をt=0に設定する。
(U7)バッファ92から印加電圧データを取り出す。
(U8)可変利得増幅器97は、バッファ92から取り出した印加電圧データ値に漏洩抵抗の値を乗じてキャンセルすべき漏洩電流値を計算する。
(U9)可変利得増幅器100は、測定系の寄生容量と強誘電体薄膜試料10との静電容量の合計値をステップU4で求めた微分データ値に乗じて寄生容量信号データを求める。
(U10)加算器102は、可変利得増幅器97の計算結果に可変利得増幅器100の計算結果を加える。
(U11)バッファ91から測定電流データを取り出す。
(U12)差動増幅器96は、バッファ91のデータ値から加算器102の計算結果を減ずる。
(U13)差動増幅器96の計算結果を電流データとしてバッファ93に書き込む。バッファ92のデータ値を印加電圧データとしてそのままバッファ95に書き込む。
(U14)積分器107は、1周期の測定終了(t=T)でなければ、差動増幅器96の計算結果を積分器107に加える。t=Tなら、その時点での積分器107の値を積分器107の積分結果とし、積分器107の値を0に戻す。
(U15)バッファ94に積分器107の積分結果を書き込む。
(U16)絶対値発生器103は、差動増幅器96の計算結果の絶対値を計算する。
(U17)積分器104は、「t>tmaxかつt<T/2」ならば、絶対値発生器103の計算結果を積分器104に加える。「t≧T/2かつt<tmin」ならば、その時点での積分器104の値を積分器104の積分結果とし、積分器104の値を0にする。あわせて積分器104による積分完了フラグを立てる。
また、「t>tminかつt<T」ならば、絶対値発生器103の計算結果を積分器104に加える。「t>T2かつt<tmax」ならば、その時点での積分器104の値を積分器104の積分結果とし、積分器104の値を0にする。あわせて積分器104による積分完了フラグを立てる。
(U18)利得調整器101は、積分器104による積分完了フラグが立っていれば、積分器104の積分結果を寄生容量キャンセル完了判定閾値と比較する。閾値よりも小さければ寄生容量測定完了。小さくなければ、今回の積分器104の積分結果と、前回の積分器104の積分結果とを比較する。積分結果が小さくなっていれば、可変利得増幅器100を前回の調整方向(増幅率(乗数)を大きくする又は小さくする)と同じ方向に調整する。大きくなっていれば、逆の方向に調整する。積分器104による積分完了フラグを下ろす。
<3.ヒステリシス測定モード時の動作>
寄生容量測定モードの次に設定するヒステリシス測定モード時には、以下のステップW1〜W14の動作を順に実行する。なお、ヒステリシス測定モードは、漏洩抵抗測定モードで可変利得増幅器97の乗数が設定され、漏洩電流がキャンセルされていること、および、寄生容量測定モードで可変利得増幅器100の乗数が設定され、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による電流がキャンセルされていることを前提とする。
(W1)電圧源14から三角波電圧を出力する。
(W2)タイミング抽出器105は、測定開始のタイミングを見つける。すなわち、バッファ92から印加電圧データを取り出して調べ、この印加電圧データが負から正になるタイミングを見つける。このタイミングがt=0となり、次のt=0までの時間を周期Tとする。
(W3)微分器99は、t=0からt=Tまでの印加電圧データの各印加電圧データについて、1つ前の印加電圧データとの差分を求めることにより印加電圧データの微分データを得る。
(W4)タイミング抽出器105は、微分データから印加電圧の最小値、最大値をとるタイミング(印加電圧が減少から増加に転ずる時点、増加から減少に転ずる時点)を見つける。このタイミングをそれぞれtmin、tmaxとする。
(W5)バッファ92のデータ取り出し点を最初のt=0に戻す。微分データ取り出し点をt=0に設定する。
(W6)バッファ92から印加電圧データを取り出す。
(W7)可変利得増幅器97は、バッファ92から取り出した印加電圧データ値に漏洩抵抗の値を乗じてキャンセルすべき漏洩電流値を計算する。
(W8)可変利得増幅器100は、測定系の寄生容量と強誘電体薄膜試料10の静電容量との合計値をステップW3で求めた微分データ値に乗じて寄生容量信号データを求める。
(W9)加算器102は、可変利得増幅器97の計算結果に可変利得増幅器100の計算結果を加える。
(W10)バッファ91から測定電流データを取り出す。
(W11)差動増幅器96は、バッファ91のデータ値から加算器102の計算結果を減ずる。
(W12)差動増幅器96の計算結果を電流データとしてバッファ93に書き込む。バッファ92のデータ値を印加電圧データとしてそのままバッファ95に書き込む。
(W13)積分器107は、1周期の測定終了(t=T)でなければ、差動増幅器96の計算結果を積分器107に加える。t=Tなら、その時点での積分器107の値を積分器107の積分結果とし、積分器107の値を0に戻す。
(W14)バッファ94に積分器107の積分結果を書き込む。
以上のように、本発明の第4実施形態においては、ヒステリシス測定モード時には、電圧源14から三角波電圧を出力させるが、このようにすると、A/Dコンバータ85は、電流電圧変換器16が出力する測定信号をデジタル化してDSP87に与え、A/Dコンバータ86は、電圧源17が出力する電圧をデジタル化してDSP87に与える。そして、DSP87は、電流電圧変換器16が出力する測定信号から、強誘電体薄膜試料10の漏洩電流による信号成分と、測定系の寄生容量および強誘電体薄膜試料10の静電容量による信号成分との除去をデジタル的に行う。
したがって、本発明の第4実施形態によれば、強誘電体薄膜試料10の分極量を高精度に測定し、ヒステリシス特性表示手段89に強誘電体薄膜試料10の分極−電界ヒステリシス特性曲線を高精度に表示することができ、強誘電体薄膜試料10の分極特性評価を高精度に行うことができ、しかも、装置の構成が単純になり、温度や外来ノイズ等の影響を受けにくいという効果を得ることができる。
1…カンチレバーベース、2…カンチレバー、3…探針、4…強誘電体薄膜試料、5…試料台、10…強誘電体薄膜試料、11…強誘電体薄膜、12…上部電極、13…下部電極、14…電圧源、15…プローブ、16…電流電圧変換器、17…参照信号源、18〜20…遅延線、21…差動増幅器、22…ヒステリシス特性表示装置、23…電圧出力端子、24…電圧線、25…分岐点、26…接地端子、27…電圧線、28…分岐点、29…等価回路、30…電流電圧変換器、31…可変抵抗、32…可変容量、33…測定信号出力端子、34…参照信号出力端子、35…記録部、36…積分部、37…表示部、40…参照信号源、41…等価回路、42…可変抵抗、43…可変容量、44…切り替えスイッチ、45…絶対値回路、46…積分器、47…積分制御回路、48…可変抵抗駆動回路、49…可変容量駆動回路、55…入力端子、56…積分回路、57…サンプルアンドホールド回路、58…出力端子、59…抵抗、60…差動増幅器、61…容量、62…積分リセットスイッチ、63…ホールドスイッチ、64…容量、65…差動増幅器、70…参照信号源、71…固定抵抗、72…固定容量、73、74…電流電圧変換器、75、76…可変利得増幅器、77、78…利得調整回路、79…加算器、85、86…A/Dコンバータ、87…DSP、88…電流モニタ、89…ヒステリシス特性表示手段、91〜95…バッファ、96…差動増幅器、97…可変利得増幅器、98…利得調整器、99…微分器、100…可変利得増幅器、101…利得調整器、102…加算器、103…絶対値発生器、104…積分器、105…タイミング抽出器、106…積分タイミング発生器、107…積分器、108…積分タイミング発生器、109…モード切替・全体制御部