しかしながら、像担持体内部から冷却する技術では、装置の構造が複雑になるとともに装置のコストが嵩む割には内部からの冷却であるため像担持体表面の冷却効率が悪い。また、両面出力の中止等を行う技術や、片面にトナー像を定着した用紙を一旦待機させる技術では、画像形成の生産性が極端に落ちてしまうといった不都合が生じる。
本発明は、電子写真方式を用いて形成されたトナー像を加熱して記録媒体に定着させる画像形成装置に関する。
本発明は上記事情に鑑み、画像形成の生産性の低下を抑えて簡単かつ低コストに像担持体表面を冷却する工夫がなされた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
上記目的を解決する本発明の画像形成装置は、静電潜像を表面に担持する像担持体のその表面に担持された静電潜像をトナーが収容された現像装置を用いてその現像装置に収容されたトナーにより現像することでその像担持体表面にトナー像を形成し、そのトナー像を、シート状の記録媒体に転写する転写領域でその記録媒体に転写し、記録媒体に転写されたトナー像を加熱することでそのトナー像をその記録媒体に定着しその記録媒体上に定着トナー像からなる画像を形成する画像形成装置において、
上記像担持体表面の温度が所定温度まで上昇していることを検知する温度検知部と、
上記温度検知部の検知結果を受けて上記転写領域へ吸熱シートを送り込むシート搬送装置とを備えたことを特徴とする。
ここにいう吸熱シートとは、含有水分量が1%以下であるものをいう。
本発明の画像形成装置によれば、上記転写領域において記録媒体が接する被接触体表面の熱が吸熱シートによって吸熱され、その被接触体表面の温度が低下する。この結果、上記像担持体表面が冷却される。すなわち、トナー像を記録媒体に定着する際の熱によって上記像担持体表面の温度が上昇しても、あるいは両面出力時における片面へのトナー像定着の際に加熱された記録媒体に起因して上記像担持体表面の温度が上昇してもその像担持体表面が冷却され、上記現像装置に収容されたトナーの温度上昇が事前に抑えられる。また、吸熱シートを上記転写領域へ送り込むだけで良いため、装置が複雑化することはなく低コストで上記像担持体表面を冷却することができる。さらに、吸熱シートを上記転写領域へ送り込むタイミングを調整することで画像形成の生産性低下が抑えられる。
ここで、上記像担持体は、回転することでその像担持体表面が上記転写領域を通過するものであってもよい。すなわち、記録媒体への直接転写方式を採用した画像形成装置であってもよく、このような直接転写方式を採用した画像形成装置であれば、両面出力時において加熱された記録媒体によって上記像担持体表面の温度が上昇しても、その像担持体表面が効率よく冷却される。
また、本発明の画像形成装置において、上記像担持体表面に形成されたトナー像の転写を受け上記転写領域で記録媒体に接する中間転写体を備えたものであってもよい。すなわち、両面出力時において加熱された記録媒体の熱は、中間転写体を介して上記像担持体表面に伝わり、その表面の温度が上昇するが、中間転写体の熱が吸熱シートによって吸熱されるため、像担持体表面も冷却されることになる。
さらに、上記温度検知部は、連続した両面出力の回数や時間から上記像担持体表面の温度が所定温度まで上昇していることを検知するものであってもよいが、上記像担持体表面の温度を検出する温度センサを備え、その温度センサの検出結果に基づいてその像担持体表面の温度が所定温度まで上昇していることを検知するものであることが好ましい。
上記温度検知部が、上記温度センサを備えることで、上記像担持体表面の温度上昇を正確に検知することができるばかりか、画像形成の生産性低下をより抑えることができる。
また、上記温度検知部は、上記像担持体表面の温度がトナーのガラス転移点温度よりも10℃低い温度まで上昇していることを検知するものである態様であることがより好ましい。
上記像担持体表面の温度がトナーのガラス転移点温度よりも10℃低い温度未満であれば、上記現像装置に収容されているトナーは、形成画像の濃度低下が問題になるほど加熱されることはなく、したがって、上記態様によれば、形成画像の生産性を高いレベルに維持したまま形成画像の濃度低下の問題発生が防止される。
また、本発明の画像形成装置において、上記シート搬送装置が、上記転写領域を経由して循環する搬送経路を備え、該搬送経路に沿って上記吸熱シートを搬送するものであることが好ましい。
こうすることで吸熱シートの再利用が行われ、コストが抑えられるばかりか環境面でも好ましい。
さらに、上記搬送経路が、記録媒体に転写されたトナー像を加熱することでそのトナー像をその記録媒体に定着する定着領域を避けた経路であることがより好ましい。
上記定着領域を避けることで吸熱シートの吸熱能力が大幅に低下することが防止され、吸熱シートを短時間のうちに再利用しても、上記像担持体表面の熱が、再利用した吸熱シートによって十分に吸熱される。
また、本発明の画像形成装置において、上記シート搬送装置が、上記記録媒体を上記吸熱シートとして用いるものであることが好ましく、さらには、
上記シート搬送装置が、上記記録媒体を収容するシート収容部と、そのシート収容部から上記転写領域を経由してそのシート収容部へ戻るシート収容循環経路とを備えたものであることがより好ましい。
本発明の画像形成装置によれば、上記吸熱シートを専用のシートとしてもよいが、上記記録媒体と兼用させることで、装置が複雑化することや装置のコストが上昇することが大幅に抑えられる。また、上記シート搬送装置が、上記吸熱シートとして上記記録媒体を、トナー像が不存在の上記転写領域に送り込むものであれば、吸熱シートとして用いられて上記シート収容部に戻ってきた記録媒体を本来の記録媒体として利用することができる。
また、本発明の画像形成装置において、上記シート搬送装置が、
上記記録媒体を収容するシート収容部と、
上記シート収容部から上記転写領域へ向かう送込経路と、
上記転写領域から上記シート収容部を避けて上記転写領域へ戻る転写循環経路と、
上記シート収容部に収容された記録媒体を上記吸熱シートとして上記送込経路に沿って上記転写領域へ送り込み、その転写領域へその吸熱シートとして送り込んだ記録媒体を、上記転写循環経路の、上記転写領域を避けた途中箇所に待機させ、吸熱シートとして記録媒体をその転写領域へ次に送り込む際にはその転写循環経路の途中箇所に待機させた記録媒体をその転写循環経路に沿ってその転写領域へ送り込むシート搬送制御部とを備えたものであってもよい。
こうすることで、吸熱シートとして一度利用した記録媒体を再び吸熱シートとして利用することができる。また、吸熱シートとして一度利用した記録媒体を転写循環経路の途中箇所に待機させることで、その記録媒体が、シート収容部に収容されている他の記録媒体に接触して他の記録媒体の温度が上昇してしまうことが防止される。その結果、シート収容部に収容されている他の記録媒体を吸熱シートとしてではなく本来の記録媒体として使用した際に上記像担持体表面の温度が高まってしまうことが防がれる。
また、本発明の画像形成装置において、上記シート搬送装置が、
シート状の記録媒体を収容し、上記転写領域へつながる第1シート収容部と、
上記第1シート収容部に収容された記録媒体よりも吸熱容量が大きなシート状物を収容し、上記転写領域へつながる第2シート収容部と、
上記温度検知部の検知結果を受けて上記転写領域へ上記第2シート収容部に収容されたシート状物を上記吸熱シートとして送り込むシート搬送制御部とを備えたものであってもよい。
例えば、上記第1シート収容部には普通紙を収容し、上記第2シート収容部には厚紙を収容することで、記録媒体がその転写領域で接する被接触体表面の熱が吸熱シートによってより効率よく吸熱され、さらに、上記第2シート収容部に複数枚の厚紙を収容しておけば、その厚紙を記録媒体として使用することもできる。
なお、厚紙に代えて、上記第1シート収容部に収容された普通紙よりも熱伝導率が高いコート紙や、あるいは接触面積が広いシート状物等を用いてもよい。
また、本発明の画像形成装置において、上記シート搬送装置が、上記転写領域へ送り込んだ吸熱シートを冷却する冷却手段を備え、その冷却手段で冷却された吸熱シートを上記温度
検知部の検知結果を受けてその転写領域へ再度送り込むものであることがより好ましい。
上記冷却手段によって、上記転写領域へ一度送り込まれた吸熱シートの吸熱能力が短時間のうちに回復し、より効率的な上記像担持体表面の冷却がなされる。
本発明の画像形成装置によれば、画像形成の生産性の低下を抑えて簡単かつ低コストに像担持体表面を冷却することができる。
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成を示す図である。
図1に示す画像形成装置1は、電子写真方式を採用したモノクロの両面出力プリンタである。この画像形成装置1は、回転軸10aを中心にして時計回りに回転するドラム状の感光体10を備え、この感光体10の周囲には、帯電器20、現像装置30、転写ロール40、およびクリーニングブレード50が備えられている。また、画像形成装置1は、装置全体の制御を司る本体制御部90も備えている。
図1に示す感光体10は、時計回りに回転するドラム状の積層型電子写真感光体である。すなわち、この感光体10は、円筒上の導電性支持体の上に、電荷発生層と電荷輸送層と保護層をこの記載順に積層してなるものである。保護層は、この感光体10の最表層になる層であって、電荷輸送機能を有する構造単位を持ち、かつ架橋構造を有する樹脂を含有した高強度表面層である。なお、電荷発生物質の蒸着膜等による単層型電子写真感光体を用いてもよい。
帯電器20は、感光体10の表面101に接触した状態で回転する帯電ロール21を備えた接触帯電方式の帯電器である。帯電ロール21には、直流電圧、あるいは直流電圧に交流電圧を重畳させた帯電バイアスが印加される。この帯電ロール21は、感光体10に接触して回転する半導電性のものであり、感光体10との接触部近傍の微小空隙で放電を発生させることにより感光体10を帯電させる。感光体10は、この帯電ロール21によって帯電される。なお、帯電ロール21は単層構造のものであってもよいし多層構造のものであってもよく、さらに導電性のものであってもよい。また、帯電ロール21に代えてブレード状の帯電部材、ベルト状の帯電部材、ブラシ状の帯電部材、磁気ブラシ状の帯電部材などが適応可能である。帯電ロール21やブレード状の帯電部材については感光体10に対し、接触状態に限らずある程度の空隙(100μm以下)を有した近接状態として配置しても構わない。なお、非接触帯電方式のコロトロン帯電器を用いてもよい。
現像装置30は、現像剤収容体31と、現像ロール32と層規制部材33を有する。現像剤収容体31には小粒径でほぼ球形のトナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤が収容されている。現像剤収容体31に収容されたトナーのトナー母粒子表面には、転写性を向上させる転写助剤粒子や帯電を制御する帯電制御剤粒子等の外添剤粒子が付着している。また、この現像剤収容体31には、回転自在な2つの撹拌オーガ311が配備されている。これらの撹拌オーガ311が回転することによって、現像剤収容体31内では現像剤が撹拌されてトナーと磁性キャリアは互いに異なる極性に摩擦帯電され、トナーが磁性キャリアの周面に静電的に付着する。現像ロール32は、感光体表面101に対向した状態で回転する現像スリーブ321を有する。この現像スリーブ321は、表面に現像剤を担持するものであり、現像スリーブ321と感光体表面101とが対向する領域が現像領域になる。現像スリーブ321の内側には、回転する現像スリーブ321に対して固定された状態でマグネットロール(不図示)が配備されている。マグネットロールは、トナーが付着した磁性キャリアを現像スリーブ321に吸着させるためのピックアップ磁極や、現像剤を現像領域で穂立ちさせる磁極や、現像領域通過後の現像剤を現像スリーブ321上から剥がすためのピックオフ磁極等を有する。ピックアップ磁極によって現像スリーブ321に吸着された現像剤は、現像スリーブ321上で層規制部材33によって層状にならされ、現像スリーブ321が回転することで現像領域まで搬送される。現像スリーブ321には直流電圧に交流電圧を重畳させた現像バイアスが印加されている。現像スリーブ321は、現像領域では感光体表面101に近接しており、現像スリーブ321の表面に担持されたトナーは、その現像領域において、現像バイアスの作用によって現像スリーブ321から感光体表面101へ移行する。なお、図1に示す現像ロール32を備えた現像装置に代えて、感光体表面101にブラシを用いてトナーを付着させる公知の現像装置を用いてもよい。
図1に示す画像形成装置1において画像形成が行われる際には、まず、感光体表面101にトナー像を形成するトナー像形成サイクルが実行される。このトナー像形成サイクルでは、感光体10の表面101が、帯電器20によって一様に帯電された後、画像情報に基づくレーザ光Lが照射され、感光体表面101に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置30に収容されたトナーにより現像され、感光体表面101にはトナー像が形成され、トナー像形成サイクルが終了する。
転写ロール40は、バネ41により感光体表面101に向けて押し付けられている。この転写ロール40は、導電性あるいは半導電性の回転可能な単層の発泡ロールである。図1に示す画像形成装置1では、感光体10と転写ロール40によって挟み込まれた領域が転写領域Sになる。
また、図1に示す画像形成装置1は、両面出力に対応したシート搬送装置60も備えている。このシート搬送装置60は、用紙を積載した状態で収容する給紙トレイ61と、その給紙トレイ61から転写領域Sへ向かう送込経路620とを有する。したがって、給紙トレイ61は、送込経路620を介して転写領域Sへつながっており、この給紙トレイ61に収容された用紙Pは転写領域Sへ送り込まれる。転写ロール40には、トナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加されており、感光体表面101に形成されたトナー像は、転写領域Sにおいて感光体表面101から用紙Pへ転写バイアスの作用により転写される。なお、転写バイアスは、直流電圧であってもよいし直流電圧に交流電圧を重畳させたものであってもよい。
図1に示すクリーニングブレード50は、転写領域Sよりも感光体回転方向下流側であって帯電ロール21よりも感光体回転方向上流側の位置に配備された、ゴム材料からなる板状部材である。感光体10の、転写領域Sを通過した表面101には、転写領域Sにおいて用紙Pの表面へ移行することができなかった残留トナー等の異物が残留している。クリーニングブレード50は、先端の縁が感光体表面に圧接されており、感光体が回転することでその表面101から残留トナー等の異物を掻き取り、感光体表面101はクリーニングされる。
さらに、図1に示す画像形成装置1は、転写領域Sよりも用紙搬送方向下流側に定着器70を備えている。この定着器70は、加熱源としてのハロゲンランプ711が内蔵された定着ロール71と、定着ロール71に対向するように設けられた圧力ロール72とを備えている。互いに対向する定着ロール71と圧力ロール72の間であるニップ領域Nには、転写領域Sを通過した記録用紙Pが搬送されてくる。記録用紙P上のトナー像を構成するトナーは、定着ロール71のハロゲンランプ711により溶融され圧力ロール72からの圧力を受けて記録用紙Pに定着し、定着トナー像からなる画像が形成される。
また、両面出力に対応したシート搬送装置60には、転写領域Sから定着器70を避けるとともに給紙トレイ61も避けて転写領域Sへ戻る転写循環経路630が設けられている。この転写循環経路630の、転写領域Sよりも下流側には、不図示のソレノイドによって駆動する第1ガイド板631が配備されており、転写領域Sよりも上流側には、同じく不図示のソレノイドによって駆動する第2ガイド板632が配備されている。また、シート搬送装置60は、転写循環経路630の、第1ガイド板631が配備された位置から定着器70のニップ領域Nへつながる定着経路640と、転写循環経路630の、第2ガイド板632が配備された位置から給紙トレイ61につながる戻し経路650も有する。さらに、シート搬送装置60は、それぞれのソレノイドをオン/オフすることで第1ガイド板631の姿勢や第2ガイド板632の姿勢を変化させるシート搬送制御部67も有する。シート搬送制御部67は、第1ガイド板631の姿勢を循環姿勢と定着姿勢との間で姿勢変化させる。第1ガイド板631の姿勢が循環姿勢であると、転写領域Sを通過して転写循環経路630に沿って搬送されてきた用紙Pは、そのまま転写循環経路630に沿って搬送される。一方、第1ガイド板631の姿勢が定着姿勢であると、転写領域Sを通過して転写循環経路630に沿って搬送されてきた用紙Pは、転写循環経路630から分岐して定着経路640に沿って搬送される。また、シート搬送制御部67は、第2ガイド板632の姿勢を循環姿勢と戻し姿勢との間で姿勢変化させる。転写循環経路630に沿って搬送されてきた用紙Pは、第2ガイド板632の姿勢が、循環姿勢であるとそのまま転写循環経路630に沿って搬送され、戻し姿勢であると転写循環経路630から分岐して戻し経路650に沿って搬送される。図1には、循環姿勢の第1ガイド板631と、戻し姿勢の第2ガイド板632がそれぞれ示されている。また、シート搬送装置60には、定着器70のニップ領域Nを通過した用紙Pを、転写循環経路630の、第1ガイド板631が配備された位置よりも下流側に戻す両面経路660も設けられている。なお、各経路には、用紙Pをニップして搬送する1対の搬送ローラが設けられており、図1では、転写循環経路630や戻し経路650や両面経路660それぞれに配備された1対の搬送ローラ633,634,651,661が示されている。
図1に示す画像形成装置1における片面出力の際には、シート搬送制御部67が第1ガイド板631の姿勢を定着姿勢にする。給紙トレイ61から引き出された用紙Pは、送込経路620を通って転写領域Sに送り込まれ、感光体表面101から用紙Pのおもて面にトナー像が転写される。おもて面にトナー像の転写を受けた用紙Pは、第1ガイド板631まで搬送され、定着姿勢の第1ガイド板631によって定着経路640に入り定着器70のニップ領域Nへ送り込まれ、おもて面に定着トナー像からなる画像が形成された用紙Pが出力される。
一方、両面出力の際には、シート搬送制御部67が第1ガイド板631を定着姿勢にするとともに第2ガイド板632を循環姿勢にする。給紙トレイ61から引き出された用紙Pは、片面出力と同じようにして定着器70のニップ領域Nに送り込まれ、用紙Pのおもて面に定着トナー像からなる画像が形成される。おもて面に画像形成が行われた用紙Pは、両面経路660を通って転写循環経路630に戻り、第2ガイド板632まで搬送される。循環姿勢の第2ガイド板632に到達した用紙Pはその第2ガイド板632によって転写循環経路630から外れることなく再び転写領域Sへ送り込まれる。転写領域Sに再び送り込まれた用紙Pは、裏面を感光体表面101に向けた状態で転写領域Sを通過し、感光体表面101から用紙Pの裏面にトナー像が転写される。裏面にトナー像の転写を受けた用紙Pは、おもて面にトナー像の転写を受けたときと同じようにして定着器70のニップ領域Nへ送り込まれ、用紙Pの裏面に定着トナー像からなる画像が形成される。こうして用紙両面に画像形成が行われた用紙Pが出力されるが、用紙Pのおもて面にトナー像の定着がなされる際、用紙Pは、定着ロール71に内蔵されたハロゲンランプ711からの熱によって加熱され、用紙Pの温度が高いまま用紙裏面への転写が行われる。このため、感光体表面101が加熱された用紙Pに接し、感光体表面101の温度が上昇してしまう傾向にある。また、感光体表面101は、定着ロール71に内蔵されたハロゲンランプ711の輻射熱によっても加熱されてしまうことがある。感光体表面101の温度が上昇したまま次のトナー像形成サイクルが実施されると、現像領域において、感光体表面101に近接する現像スリーブ321が感光体表面101の熱によって加熱されてしまう。また、現像スリーブ321に担持されているキャリアも加熱され、さらには、現像に用いられなかったトナーも加熱される。この結果、現像装置30の現像剤収容体31に収容されているトナーの温度が、加熱された現像スリーブ321によって上昇してしまう。また、ピックオフ磁極によって現像スリーブ321上から剥がされたキャリアやトナーが、現像剤収容体31に収容されているトナーに混ざることでも、現像剤収容体31に収容されているトナーの温度上昇につながる。現像剤収容体31に収容されているトナーの温度が上昇すると、トナー母粒子表面が柔らかくなりトナー母粒子どうしがくっついて凝集等によりトナーが劣化てしまうばかりか、外添剤粒子が撹拌オーガ311による攪拌作用によってトナー母粒子に埋没してしまったり、トナーが高帯電化してしまい、形成画像の濃度低下が引き起こされる。
図1に示す画像形成装置1では、感光体表面101の温度を検出する温度センサ11が現像領域の近傍に配置されている。本体制御部90は、その温度センサ11の検出結果に基づいて、感光体表面101の温度が、現像剤収容体31に収容されたトナーのガラス転移点温度よりも10℃低い温度(以下、この温度を閾値温度と称する)まで上昇していることを検知する。したがって、温度センサ11と本体制御部90を併せたものが本発明にいう温度検知部の一例に相当する。本体制御部90は、感光体表面101の温度が閾値温度まで上昇していることを検知すると、トナー像形成サイクルの実施を一旦中止する。また、シート搬送制御部67は、本体制御部90の検知結果を受けて、第1ガイド板631の姿勢を循環姿勢にするとともに第2ガイド板632の姿勢を戻し姿勢にする。続いて、シート搬送制御部67は、給紙トレイ61に収容されている用紙Pを送込経路620に沿ってトナー像が不存在の転写領域Sへ送り込み、閾値温度まで上昇した感光体表面101に用紙Pを接触させる。こうすることで、感光体表面101の熱が用紙Pに吸熱され、感光体表面101が冷却される。この結果、現像剤収容体31に収容されているトナーが問題を生じるほど高温になることが事前に防止され、形成画像の濃度低下が抑えられる。転写領域Sを通過した用紙Pは、第1ガイド板631まで搬送され、循環姿勢の第1ガイド板631によって転写循環経路630から外れることなく転写循環経路630に沿って第2ガイド板632まで搬送される。したがって、転写領域Sを通過した用紙Pは、定着器70のニップ領域Nに送り込まれることはなく、用紙Pの吸熱能力が大幅に低下することが防止される。戻し姿勢の第2ガイド板632に到達した用紙Pはその第2ガイド板632によって戻し経路650に入り、給紙トレイ61に再び収容される。すなわち、図1に示す画像形成装置1では、用紙を積載した状態で収容する給紙トレイ61の一番上の用紙Pを吸熱シートとして用い、この吸熱シートとして一旦用いた用紙Pを給紙トレイ61の一番上に戻す。図1に示す給紙トレイ61には、積載された用紙の一番上の用紙Pに風を送る冷却ファン611が配備されている。シート搬送制御部67は、吸熱シートとして一旦用いた用紙Pが給紙トレイ61の一番上に戻されると、その冷却ファン611を回転させ、戻ってきた用紙Pを冷却する。給紙トレイ61の一番上に戻された用紙Pは、感光体表面101の熱を吸熱したことにより温度上昇しており、その下の接触する用紙Pを加熱してしまうが、このように冷却ファン611を設けておくとことで、一番上に戻された用紙Pを冷却する冷却効率が高められ、給紙トレイ61に収容された用紙Pを、積載された一番上の用紙Pから順に記録用紙として即座に使用しても、感光体表面の温度が給紙トレイ61に収容されていた用紙Pと接することで再び上昇してしまうことが防がれる。また、一度吸熱シートして用いられた用紙Pの吸熱能力が、冷却ファン611による冷却によって短時間のうちに回復し、この用紙Pを短時間のうちに再び吸熱シートとして利用する場合でも、前回この用紙Pを利用したときの吸熱能力と同等の吸熱能力が得られる。なお、冷却ファン611に代えて他の冷却手段を配備してもよい。
また、吸熱シートとして用紙Pが転写領域Sを通過する速度を、記録用紙として用紙Pが転写領域Sを通過する速度よりも遅くすることで用紙Pによる感光体表面101の冷却効果を高めることができる。
以上説明したように、図1に示す画像形成装置によれば、吸熱シートとして用紙Pを転写領域Sへ送り込むだけで良いため、装置が複雑化することはなく低コストで感光体表面101を冷却することができる。
続いて、図1に示す画像形成装置1の変形例について、重複する説明は省略し、図1に示す画像形成装置の構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明する。上述の説明の如く、転写領域Sに用紙Pを吸熱シートとして送り込む際には、トナー像形成サイクルの実施を一旦中止するため、どうしても形成画像の生産性が低下してしまう。これまで説明した図1に示す画像形成装置1では、本体制御部90は、感光体表面101の温度を検出する温度センサ11の検出結果に基づいて感光体表面101の温度が閾値温度まで上昇していることを検知する。感光体表面101の温度が閾値温度未満であれば、現像剤収容体31に収容されたトナーは、形成画像の濃度低下が問題になるほど加熱されることはない。したがって、図1に示す画像形成装置1によれば、形成画像の生産性を高いレベルに維持したまま形成画像の濃度低下の問題発生が防止されるが、ここで説明する変形例の画像形成装置では、図1に示す温度センサ11を省略し、さらなるコストダウンを図っている。ここでは、温度センサ11を省略した代わりに、本体制御部90には、連続した両面出力が何回続くと感光体表面101の温度が閾値温度まで上昇するかを実験によって求めたデータを記憶させている。こうすることで、本体制御部90は、連続した両面出力の回数をカウントし、そのカウント結果と上記データとを比較することで、温度センサ11の検出結果に基づくよりは不正確ではあるが、感光体表面101の温度が閾値温度まで上昇したかを検知することができる。なお、連続した両面出力の回数に代えて連続した両面出力の時間を用いても良い。
続いて、本発明の画像形成装置の第2実施形態および第3実施形態について説明する。第2実施形態の画像形成装置も第3実施形態の画像形成装置も、図1に示す画像形成装置と同じく、電子写真方式を採用したモノクロの両面出力プリンタである。以下、これまでの説明と重複する説明は省略し、図1に示す画像形成装置の構成要素の名称と同じ名称の構成要素にはこれまで用いた符号と同じ符号を付して説明する。まず、図2を用いて第2実施形態の画像形成装置について説明する。
図2は、第2実施形態である画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2に示す画像形成装置1は、図1に示す画像形成装置に配備されたシート搬送装置とは異なるシート搬送装置60を備えている。この図2に示すシート搬送装置60も、両面出力に対応したものであるが、図1に示すシート搬送装置に設けられていた戻し経路650や第2ガイド板632が省略されている。すなわち、図2に示す画像形成装置1においても、片面出力や両面出力の際には、給紙トレイ61に収容された用紙Pが、図1に示す画像形成装置における片面出力や両面出力と同じように搬送されるが、用紙Pを吸熱シートとして転写領域Sへ送り込んだ後の態様が図1に示す画像形成装置における態様とは異なる。第2実施形態においても、トナー像が不存在の転写領域Sを通過し感光体表面101の熱を吸熱した用紙Pは、循環姿勢の第1ガイド板631によって転写循環経路630から外れることなく転写循環経路630に沿って搬送される。シート搬送制御部67は、この用紙Pが第1ガイド板631を超えると、転写循環経路630の途中箇所にその用紙Pを待機させる。すなわち、シート搬送制御部67は、その用紙Pを、転写循環経路630の、転写領域Sを避けた途中箇所に、本体制御部90から感光体表面101の温度が閾値温度まで再度上昇したという次の検知結果を受けるまで待機させる。図2には、転写循環経路630の途中箇所に待機している用紙Pが2点鎖線で示されている。この態様によれば、吸熱シートとして一旦用いられた用紙Pが転写循環経路630の途中箇所に待機している間であっても、給紙トレイ61に収容されている用紙Pを記録用紙として送込経路620に沿って転写領域Sへ送り込むことができる。また、シート搬送制御部67は、転写循環経路630の途中箇所に待機させた用紙Pを、次の検知結果を受けて転写循環経路630に沿って転写領域Sへ送り込む。
以上説明した第2実施形態の画像形成装置によれば、吸熱シートとして一度利用した用紙Pを再び吸熱シートとして利用することができる。また、吸熱シートとして一度利用した用紙Pを転写循環経路630の途中箇所に待機させることで、その用紙Pが、給紙トレイ61に収容されている他の用紙Pに接触して他の用紙Pの温度が上昇してしまうことが防止される。その結果、給紙トレイ61に収容されている他の用紙Pを吸熱シートとしてではなく本来の記録媒体として使用した際に感光体表面101の温度が高まってしまうことが防がれる。
なお、この第2実施形態では吸熱シートとして一旦用いられた用紙Pが給紙トレイ61に戻ることがないため、図2に示す給紙トレイ61からは冷却ファン611(図1参照)が取り除かれているが、代わりに、転写循環経路630の途中箇所に待機している用紙Pに風を送る冷却ファンを設けてもよい。
次に、図3を用いて第3実施形態の画像形成装置について説明する。
図3は、第3実施形態である画像形成装置の概略構成を示す図である。
図3に示す画像形成装置1も、図1に示す画像形成装置に配備されたシート搬送装置とは異なるシート搬送装置60を備えている。この図3に示すシート搬送装置60も、両面出力に対応したものであるが、図1に示すシート搬送装置の構成に加えて、第2給紙トレイ68と連絡経路690とを有する。この第3実施形態におけるシート搬送装置60の給紙トレイ(以下、第2給紙トレイ68との区別のため第1給紙トレイと称する)61には普通紙Pnが積載された状態で収容されている。また、第2給紙トレイ68には、第1給紙トレイ61に収容された普通紙Pnよりも厚い厚紙Ptが積載された状態で収容されている。第2給紙トレイ68に収容された厚紙Ptは、第1給紙トレイ61に収容された普通紙Pnよりも吸熱容量が大きなシート状物である。第2給紙トレイ68に収容するシート状物としては、この他に、第1給紙トレイ61に収容された普通紙Pnよりも熱伝導率が高いコート紙や、あるいは接触面積が広いシート状物等があげられるが、吸熱シートとして利用できるシート状物は、含有水分量が1%以下であり、形状は、画像形成装置に適用することができる範囲(例えば、シート搬送装置60によって搬送することができる等の範囲)に限られる。連絡経路690は、転写循環経路630の、第2ガイド板632が配備された位置と第2給紙トレイ68をつなぐ経路である。図3には、連絡経路690の途中に、厚紙Ptをニップして搬送する1対の搬送ローラ691が示されている。また、この第3実施形態におけるシート搬送制御部67は、第2ガイド板632の姿勢を、循環姿勢と戻し姿勢との間で姿勢変化させる他、連絡姿勢にも姿勢変化させる。すなわち、第3実施形態における第2ガイド板632は、循環姿勢と戻し姿勢と連絡変化との3段階に姿勢変化する。第2ガイド板632の姿勢が連絡姿勢にあると、転写循環経路630に沿って搬送されてきた用紙Pは、転写循環経路630から分岐して連絡経路690に沿って搬送されたり、あるいは第2給紙トレイ68に収容されている厚紙Ptは、連絡経路690から転写循環経路630に入り込む。第2ガイド板632が連絡姿勢にあるときには、第2給紙トレイ68は転写領域Sへつながるトレイになる。
図3に示す画像形成装置1においても、片面出力や両面出力の際には、第1給紙トレイ61に収容された普通紙Pnが、図1に示す画像形成装置における片面出力や両面出力と同じように搬送される。また、必要に応じて、シート搬送制御部67が第2ガイド板632の姿勢を連絡姿勢にすることで、第2給紙トレイ68に収容された厚紙Ptが連絡経路690から転写循環経路630に入り、転写領域Sへ送り込まれることで、感光体表面101から厚紙Ptにトナー像が転写される。
一方、図3に示す画像形成装置1においては、吸熱シートを転写領域Sへ送り込む際には、シート搬送制御部67が、感光体表面101の温度が閾値温度まで上昇しているという本体制御部90からの検知結果を受けて、第1ガイド板631の姿勢を循環姿勢にするとともに第2ガイド板632の姿勢を連絡姿勢にする。続いて、シート搬送制御部67は、第2給紙トレイ68に収容されている厚紙Ptを、連絡経路690を介して転写循環経路630に入れ、転写領域Sへ送り込む。こうすることで、厚紙Ptが閾値温度まで上昇した感光体表面101に接触し、感光体表面101の熱が吸熱容量が大きな厚紙Ptに吸熱され、感光体表面101が効果的に冷却される。この結果、この第3実施形態でも、現像剤収容体31に収容されているトナーが問題を生じるほど高温になることが事前に防止される。転写領域Sを通過した厚紙Ptは、第1ガイド板631によって転写循環経路630から外れることなく転写循環経路630に沿って第2ガイド板632まで搬送される。連絡姿勢の第2ガイド板632に到達した厚紙Ptはその第2ガイド板632によって連絡経路690に入り、第2給紙トレイ68に再び収容される。すなわち、図3に示す画像形成装置1では、第2給紙トレイ68に収容された厚紙Ptを吸熱シートとして用い、この吸熱シートとして一旦用いた厚紙Ptを第2給紙トレイ68に戻す。
図3に示す第1給紙トレイ61からは冷却ファン611(図1参照)が取り除かれ、代わりに、第2給紙トレイ68に収容された厚紙Ptに風を送る冷却ファン681が設けられている。このため、一度吸熱シートして用いられた厚紙Ptを、記録用紙として即座に使用しても感光体表面の温度が高まってしまったり、あるいは短時間のうちに再び吸熱シートとして使用しても感光体表面が冷却しきれないといったことが防止される。
なお、これまで説明してきた画像形成装置1は、いずれも記録媒体への直接転写方式を採用したものであったが、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体を用いた中間転写方式を採用したものであってもよい。中間転写方式を採用した画像形成装置では、両面出力時において加熱された用紙Pの熱は、感光体表面に形成されたトナー像の転写を受ける中間転写体を介して感光体表面に伝わり、感光体表面の温度が上昇するが、中間転写体が用紙Pに接する二次転写領域へ吸熱シートを送り込むことで、中間転写体の熱が吸熱シートによって吸熱されるため、感光体表面も冷却される。
(実施例)
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
試験機として、図1に示す画像形成装置の構成の、電子写真方式を採用したモノクロの両面出力プリンタを用いた。すなわち、ここで用いた画像形成装置は、加熱源が内蔵された定着ロール71を有する定着器70を備えたものである。また、この画像形成装置は、給紙トレイ61に収容された用紙を吸熱シートとして用い、吸熱シートとして一旦用いた用紙を給紙トレイ61に戻すものであり、図1に示す第2ガイド板632や戻し経路650を有する。しかしながら、図1に示す第1ガイド板631は定着姿勢に常時固定されており、転写領域Sを通過した吸熱シートは、両面出力の場合と同じように定着器70のニップ領域N(定着領域)を通過して加熱された後、両面経路660を通って転写循環経路に戻り、給紙トレイ61に再び収容される。また、上述した、図1に示す画像形成装置の変形例と同じく、感光体表面101の温度を検出する温度センサ11を省略し、代わりに、本体制御部90が、連続した両面出力の回数をカウントすることで感光体表面101の温度が所定温度まで上昇したことを検知する。ここでは、本体制御部90は、ワンジョブの中で連続した両面出力が5回続くことで感光体表面101の温度が所定温度まで上昇したことを検知する。さらに、給紙トレイ61から冷却ファン611を取り外し、一度吸熱シートとして用いた用紙を冷却することは行わなかった。また、給紙トレイには、坪量が70g/m3である富士ゼロックス社製C2用紙(以下、C2用紙と称する)を収容し、このC2用紙を吸熱シートとしても記録用紙としても使用した。
表1に、ここで用いた画像形成装置の特徴的構成を示す。
なお、現像装置の現像剤収容体は、ガラス転移点温度が50℃のトナーを含む現像剤を収容したものである。この現像剤収容体に収容されたトナー粒子は、平均粒径が6.4μmであり、形状係数値(SF)が132であるほぼ球形の重合湿式トナー粒子である。また、トナー母粒子表面には、転写助剤粒子や帯電制御剤粒子等の外添剤粒子(平均粒径;40nm〜50nm)が付着している。さらに、転写ロール40には、外形18mmの半導電性発泡ロール体を用いた。
試験では、用紙の両面それぞれに、複数のソリッドパッチ(黒い部分)を有する画像比率1%〜4%の混合チャートを、連続して5000枚にわたって出力するという走行試験の実施中に、5枚出力するたびに転写領域SへC2用紙を1回送り込んだ。この走行試験における5000枚にわたる出力のうち、100枚ごとに、用紙の両面について複数のソリッドパッチそれぞれの濃度をX−rite社製X−rite404を用いて3回測定して平均を取り、さらにそれらの平均値をソリッドパッチ数で平均して1枚分の画像濃度(単位はSAD)を求め、得られた50回分の画像濃度の平均をとることで、最終的な画像濃度を算出した。評価結果を表1に示すが、この表1では、1.42以上を◎、1.39以上1.42未満を○+、1.37以上1.39未満を○、1.20以上1.37未満を△、1.2未満を×として表す。この実施例1では○の評価であった。
また、画像形成出力回数(プリント枚数)を1分間隔で1分ごと測定し、片面出力時に換算し、吸熱シートを転写領域Sへ送り込まずに片面出力を続けた場合を100%とした場合の画像形成生産性を算出した。評価結果を表1に示すが、この表1では、95%を超える生産性を◎、90%を超えるが95%以下である生産性を○、90%以下の生産性を×として表す。この実施例1では△の評価であった。
(実施例2)
図1に示す第1ガイド板631を定着姿勢と循環姿勢との間で姿勢変化可能とし、転写領域SへC2用紙を送り込む際には、第1ガイド板631を循環姿勢にして、転写領域Sを通過したC2シートを、第1ガイド板631を越えた後も転写循環経路に沿って搬送するようにした以外は、実施例1で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。すなわち、ここでは、転写領域Sを通過した吸熱シートは、定着器70のニップ領域N(定着領域)を通過せずに給紙トレイに戻される。ここで用いた画像形成装置の特徴的構成とともに結果を表1に示す。実施例2における連続両面出力画像濃度の評価は○+であり、画像形成生産性の評価は△であった。
(実施例3)
図1に示すように現像領域の近傍に感光体表面101の温度を検出する温度センサ11を配置し、本体制御部90を、その温度センサ11の検出結果に基づいて、感光体表面101の温度が、現像剤収容体31に収容されたトナーのガラス転移点温度(50℃)よりも10℃低い温度(40℃)まで上昇していることを検知するものに代えた以外は、実施例2で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用いた。すなわち、ここで用いた画像形成装置は、連続した両面出力の回数をカウントすることに代えて、温度センサ11で実際に検出した感光体表面の温度によって、感光体表面が40℃まで上昇したことを検知するものである。ここでの試験では、実施例1と同様な走行試験の実施中に、本体制御部90が感光体表面101の温度が40℃まで上昇したことを検知するたびに転写領域SへC2用紙を1回送り込み、実施例1と同様にして評価を行った。この画像形成装置の特徴的構成とともに評価結果を表1に示す。この実施例における連続両面出力画像濃度の評価は○+であり、画像形成生産性の評価は○であった。
(実施例4)
シート搬送装置を、図2に示すシート搬送装置に代えた以外は、実施例3で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例3と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。すなわち、ここでは、戻し経路650や第2ガイド板632が取り外され、転写領域Sを通過しさらに循環姿勢の第1ガイド板631も通過したC2用紙を、転写循環経路630の、転写領域Sを避けた途中箇所に待機させる。ここで用いた画像形成装置の特徴的構成とともに評価結果を表1に示す。実施例4におけるそれぞれの評価は、実施例3におけるそれぞれの評価と同じであった。
(実施例5)
シート搬送装置を、図3に示すシート搬送装置の構成に似たものに代えた以外は、実施例3で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用いた。すなわち、ここで用いたシート搬送装置は、実施例3におけるシート搬送装置の構成に加えて、冷却ファン681を取り外した第2給紙トレイ68と連絡経路690を有するものである(図3参照)。第2給紙トレイ68には、坪量が256g/m3である富士ゼロックス社製ミラーコートプラチナ(以下、コート用紙と称する)を収容し、このコート用紙を吸熱シートとして使用し、吸熱シートとして一旦用いたコート用紙を第2給紙トレイ68に戻す。一方、第1給紙トレイ61にはC2用紙を収容し、ここでの試験では、実施例1と同様な走行試験では第1給紙トレイ61収容されたC2用紙に画像形成を行い、その走行試験の実施中に、本体制御部90が感光体表面101の温度が40℃まで上昇したことを検知するたびに転写領域Sへ第2給紙トレイ68からコート用紙を1回送り込み、実施例1と同様にして評価を行った。この実施例5で用いた画像形成装置の特徴的構成とともに評価結果を表1に示す。この実施例におけるそれぞれの評価はいずれも◎であった。
(実施例6)
図1に示すように、C2用紙を収容した給紙トレイ61に冷却ファンを取り付けた以外は、実施例3で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例3と同様な試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。すなわち、ここでは、図1に示す画像形成装置の構成と同じ構成である両面出力プリンタを用い、一度吸熱シートとして使用したC2用紙を冷却してから記録用紙として使用した。ここで用いた画像形成装置の特徴的構成とともに評価結果を表1に示す。実施例6におけるそれぞれの評価は、実施例5におけるそれぞれの評価と同じくいずれも◎であった。
(実施例7)
本体制御部90を、感光体表面101の温度を検出する温度センサ11の検出結果に基づいて、感光体表面101の温度が、現像剤収容体31に収容されたトナーのガラス転移点温度(50℃)よりも8℃低い温度(42℃)まで上昇していることを検知するものに代えた以外は、実施例3で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用いた。すなわち、ここで用いた画像形成装置は、実施例3で用いた画像形成装置に比べ、感光体表面の温度がより高温になるまで転写領域SへのC2用紙の送り込みを控えるものである。この実施例7における試験では、実施例1と同様な走行試験の実施中に、本体制御部90が感光体表面101の温度が42℃まで上昇したことを検知するたびに転写領域SへC2用紙を1回送り込み、実施例1と同様にして評価を行った。実施例7で用いた画像形成装置の特徴的構成とともに評価結果を表1に示す。この実施例における連続両面出力画像濃度の評価は△であり、画像形成生産性の評価は○であった。
(比較例)
吸熱シートを転写領域Sへ送り込まないようにした以外は、実施例1で用いた画像形成装置の構成と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な走行試験を行い、実施例1と同様にして評価を行った。この比較例における連続両面出力画像濃度の評価は×であり、画像形成生産性の評価は◎であった。
連続両面出力画像濃度は1.20以上であることを合格とし、画像形成生産性は、90%を超える生産性を合格にすると、吸熱シートを転写領域Sへ送り込んだ実施例1〜7においては、連続両面出力画像濃度の評価も、画像形成生産性の評価も合格レベルにある。一方、吸熱シートを転写領域Sへ送り込まなかった比較例においては、連続両面出力画像濃度の評価が不合格である。この不合格は、感光体表面の温度が上昇し、現像装置に収容されているトナーが、形成画像の濃度低下が問題になるほど加熱されてしまったことによるものと考える。この結果から、吸熱シートを転写領域Sへ送り込むことにより、画像形成の生産性の低下を抑えて感光体表面を冷却することができることが確認された。
続いて、各実施例を詳細に分析する。まず、感光体表面の温度を検出する温度センサを取り除き連続した両面出力の回数に基づいて検知を行う実施例1および2の生産性の評価結果と、その温度センサで実際に検出した感光体表面の温度に基づいて検知を行うその他の実施例の生産性の評価結果とを比較することにより、感光体表面の温度が所定温度まで上昇したことを検知するには、連続した両面出力の回数に基づくよりも、温度センサで実際に検出した感光体表面の温度に基づく方が、生産性の低下が抑えられることがわかる。
また、吸熱シートとして用いたC2用紙が定着領域を通過する実施例1における画像濃度の評価結果と、非通過の実施例2における画像濃度の評価結果とを比較すると、実施例2の方が良好な結果である。これは、実施例2では定着領域を通過させなかったことにより吸熱シートとして用いられたC2用紙が定着領域で加熱されず、そのC2用紙が給紙トレイに戻った際に給紙トレイ内で接触する他のC2用紙の温度上昇が抑えられ、C2用紙を記録用紙として使用した際に感光体表面の温度が高まってしまうことが実施例1よりも抑制されたことによるものと考える。
さらに、C2用紙を吸熱シートとして用いた実施例3における画像濃度の評価結果と、コート用紙を吸熱シートとして用いた実施例5における画像濃度の評価結果とを比較すると、実施例5における画像濃度の評価結果の方が良好であるが、これは、C2用紙に比べて坪量が大きなコート用紙の方が、C2用紙よりも吸熱能力に優れていたことによるものと考える。また、吸熱シートとして使用したコート用紙を、記録用紙であるC2用紙が収容された給紙トレイとは別の給紙トレイに戻すことにより、吸熱シートとして使用したコート用紙によるC2用紙の温度上昇が防がれたことも実施例5において良好な評価結果が得られた大きな要因であると考える。この考え方は、吸熱シートとして使用されたC2用紙を冷却した実施例6にも当てはまる考え方である。すなわち、実施例6では、吸熱シートとしてC2用紙を用いても、コート用紙を吸熱シートとして用いた実施例5と同等の画像濃度の評価結果が得られているが、これは、吸熱シートとして使用されたC2用紙が冷却されることにより、そのC2用紙が給紙トレイ内で接触する他のC2用紙の温度上昇が大幅に抑えられ、C2用紙を記録用紙として使用した際に感光体表面の温度が高まってしまうことが防止されたことによるものと考える。これらのことをまとめると、実施例5および6においては、感光体表面の温度上昇が他の実施例よりも抑えられたことになり、その結果、トナー像形成サイクルを中止して転写領域へ吸熱シートを送り込む頻度が減少し、生産性の評価結果も最も良好な結果になったと考える。
また、感光体表面温度が40℃になったことの検知を受けて転写領域へ吸熱シートを送り込む実施例3とその温度が42℃になったことの検知を受けて転写領域へ吸熱シートを送り込む実施例7とを比較すると、画像濃度の面では実施例3の方が優れている。この比較から、感光体表面の温度が、トナーのガラス転移点温度よりも10℃低い温度まで上昇したタイミングで転写領域へ吸熱シートを送り込むことが、形成画像の濃度低下を抑えるには有効であるといえる。