JP4815605B2 - クロマトグラフィ用カラム充填剤及びクロマトグラフィ用カラム - Google Patents

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Description

本発明は、温度応答性クロマトグラフィに好適なクロマトグラフィ用カラム充填剤及びクロマトグラフィ用カラムに関する。
物質を分離精製する方法の1つとして、クロマトグラフィが知られている。クロマトグラフィでは、固定相又は担体とよばれる物質の表面又は内部を移動相とよばれる物質が通過することで分離される。この分離は、物質の大きさ、吸着力、電荷、質量、疎水性等の種々の要因に基づいて生じる。固定相には一般に固体が用いられる。そして、移動相に溶解した物質と固定相の表面との相互作用の程度は、移動相を構成する液体の種類及び複数の液体の混合比等によって調節される。また、固定相の表面を疎水性、親水性又はイオン性(アニオン性、カチオン性)にしたり、特定の親和性基を導入したりすることによって、表面の性質を変化させて、移動相に溶け込んでいる分離対象物質との親和性の違いを利用することもある。
クロマトグラフィの1つとして、温度応答性高分子を固定相として用いたもの(温度応答性クロマトグラフィ)がある。温度やpH等の環境変化を自ら認識し応答する高分子は刺激応答性高分子とよばれ、これを固体表面に修飾することにより、環境応答性を付与した高機能表面を備えた物質を得ることが可能である。例えば、ある種のポリ(N置換アクリルアミド)、ポリ(N置換メタクリルアミド)又はメチルセルロース等の高分子水溶液は、下限臨界溶液温度(LCST:lower critical solution temperature)以上の温度に加熱すると白濁し、それ以下の温度に冷却すると再び溶解して透明に戻るという可逆的な相分離挙動を示すことが知られている。また、このような相分離現象は、コイル−グロビュール転移とよばれる高分子鎖の収縮現象を伴うことが報告されている。即ち、LCST以下ではアミド基と水との強い相互作用により、高分子鎖は溶解してランダムコイル状のコンフォメーションをとるが、水温の上昇によりアミド基と水との水素結合が不安定になるため脱水和が起こり、高分子鎖が収縮してグロビュール状になるのである。更に、疎水性相互作用により高分子が会合し、相分離が起こる。
このような物質の中でも、PNIPAAm(N−イソプロピルアクリルアミド)は、外部からの温度刺激に応答し鋭敏で可逆的な変化を起こすため、温度応答性高分子として広く用いられている。PNIPAAmは、水中において、水素結合性部位をもっているため、低温側では水分子が高分子鎖の周りに強く付着し水に溶解する。しかし、温度を上げると、水と相分離し不溶性となり沈殿する。したがって、PNIPAAmは、高分子の相転移温度より低温では伸展して水和するが、高温では収縮して脱水和する。このように、外部からの温度刺激に応答し鋭敏で可逆的な変化を起こす。具体的には、32℃以上の温度に加熱すると白濁し、それ以下の温度に冷却すると再び溶解して透明に戻る。
このような溶解−沈殿変化を引き起こす温度(LCST)は、高分子の共重合組成によって調整することができ、しかも、狭い温度範囲で制御することができる。LCSTは、高分子鎖の分子構造に強く依存するため、疎水性モノマーとNIPAAmとを共重合させ、疎水性共重合体とすることによって低温側にシフトし、親水性モノマーとNIPAAmとを共重合させ、親水性高分子とすることによって高温側にシフトする。即ち、共重合において導入するNIPAAmモノマー、疎水性物質及び親水性物質のバランスを調整することで、合成する共重合体の性質を制御することが可能なのである。例えば、5モル%程度の疎水性物質であるメタクリル酸ブチル(BMA)とNIPAAmとを共重合させると、得られる共重合体のLCSTは21℃付近へと低温側にシフトする。そして、このような機能性高分子を固体表面に修飾すると、温度刺激により表面の性質が高分子の相転移温度より低温側では親水性に、高温側では疎水性に可逆的に変化する高機能表面の物質を得ることができる。
そして、温度応答性クロマトグラフィでは、このような表面が親水性−疎水性の変化を呈する固体が高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の充填剤として使用されている。この温度応答性クロマトグラフィによれば、外部刺激により試料(分離相)との相互作用を変化させて分離を制御することができる。したがって、水のみの移動相でも温度によって分離選択性の制御が可能であるため、様々な分離を行うことが可能である。つまり、それ以前の分配クロマトグラフィでは、有機溶媒等を使用する必要があったが、温度応答性クロマトグラフィによれば、このような物質を使用する必要がなくなるのである。
しかしながら、従来の温度応答性クロマトグラフィでは、移動相自体の温度を制御する必要がある。このため、温度制御に時間がかかってしまうという問題がある。
特開2005−60244号公報 特開2005−82538号公報 特開2000−212144号公報
本発明は、迅速に固定相の性質の制御を行うことができるクロマトグラフィ用カラム充填剤及びクロマトグラフィ用カラムを提供することを目的とする。
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
本発明に係るクロマトグラフィ用カラム充填剤は、磁性微粒子と、前記磁性微粒子を取り囲む温度応答性高分子層と、を有することを特徴とする。
本発明に係るクロマトグラフィ用カラムは、カラム筒と、前記カラム筒に充填されたカラム充填剤と、を有し、前記カラム充填剤は、磁性微粒子と、前記磁性微粒子を取り囲む温度応答性高分子層と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、磁性微粒子に対する磁場の印加の有無に応じて温度応答性高分子層の表面の特性が変化するため、磁場の制御のみで固定相の性質を制御することができる。
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るクロマトグラフィ用カラムを示す模式図である。
本実施形態に係るクロマトグラフィ用カラム10では、ガラス等からなるカラム筒12内にカラム充填剤1が充填されている。カラム充填剤1の粒径は、数μm〜数十μm程度である。また、カラム筒12の周囲には、コイル11が巻かれている。カラム充填剤1には、少なくとも磁性微粒子とその周囲に形成された温度応答性高分子層とが設けられている。例えば、図2Aに示すように、球状の磁性微粒子2が温度応答性高分子層3により覆われて構成されたカラム充填剤1aがカラム充填剤1として用いられる。また、図2Bに示すように、1又は2以上の磁性微粒子2がシリカ系物質4に覆われ、このシリカ系物質4が温度応答性高分子層3に覆われて構成されたカラム充填剤1bがカラム充填剤1として用いられてもよい。更に、図2Cに示すように、1又は2以上の磁性微粒子2及び1又は2以上のシリカ系粒子5が温度応答性高分子層3により覆われて構成されたカラム充填剤1cがカラム充填剤1として用いられてもよい。
図2Aに示す例では、酸化鉄等からなる磁性微粒子2に、敏感な温度応答性を発現するアクリルアミド誘導体等からなる温度応答性高分子(水和グラフト構造体)層3が共有結合によって固定化されている。
ここで、上述のようなカラム充填剤1aを生成する方法について説明する。
磁性微粒子2としては、例えば、ヘマタイト、マグヘマイト又はマグネタイト等の酸化鉄化合物の微粒子を用いることができ、また、これらの酸化鉄化合物中の鉄原子がマンガン、Co等の原子と置き換えられた化合物も用いることができる。
温度応答性高分子層3を構成する温度応答性高分子としては、例えば、下記一般式(I)(化1)で表されるアクリルアミド誘導体を含む重合体又は共重合体を用いることができる。このような温度応答性高分子は、例えば特許文献3に開示されている。
Figure 0004815605
但し、一般式(I)中、
1は、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐したアルキル基を表し、
2は、炭素数1〜4の直鎖又は分岐したアルキル基を表し、
3は、炭素数1〜6のメチレン基を表し、
Xは、水素原子、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基又は−COOR4(R4は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基又は置換ベンジル基を表す。)を表し、
Yは、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基又は−COOR4(R4は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基又は置換ベンジル基を表す。)を表す。但し、R2及びR3は一体となって環を形成してもよい。
なお、一般式(I)を構成するR1及びR2の炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐したアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基及びt−ブチル基を挙げることができ、更に、これらの他に、n−ペンチル基、n−ヘキシル基も挙げることができる。
また、R3の炭素数1〜6のメチレン基の例としては、モノメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基を挙げることができるが、モノメチレン基を用いることが好ましい。
また、一般式を構成するXのハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
また、R4の置換ベンジル基の例としては、ジフェニル基、トリフェニルメチル基が挙げられる。
なお、一般式(I)において、R2及びR3が一体となって環を形成する場合、好ましい環の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
また、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体又は共重合体の重合度は、繰り返し単位の数が2以上であればよく、10〜500であることが好ましい。
そして、磁性微粒子2に上述の温度応答性高分子層3を固定化する際には、先ず、磁性微粒子2に対して下記のような前処理を施しておくことが好ましい。即ち、磁性微粒子2と下記一般式(II)(化2)で表される化合物とを反応させることにより、シランカップリング試薬を用いて官能基を導入した後、上記一般式(I)で表させるアクリルアミド誘導体を含む重合体又は共重合体と反応させることが好ましい。このような前処理を行った場合には、図2Bに示すように、カラム充填剤1b又は1cが得られる。
Figure 0004815605
但し、一般式(II)中、
5は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐したアルキル基を表し、
X´は、アミノ基、アルキル置換アミノ基、カルボキシル基、−COOR6(R6は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐したアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、ベンジル基又は置換ベンジル基を表す。)、水酸基、エポキシ基又はハロゲン原子を表し、
Y´は、ハロゲン原子又はアルコキシ基を表す。
また、磁性微粒子2と一般式(II)で表される化合物との反応性を高めるためには、磁性微粒子2に対してガラス化処理を施すことが有効である。このようなガラス化処理は、例えば、水中で珪酸ナトリウムと塩酸、硫酸又は過酸化水素等とを反応させた後、乾燥させればよい。
なお、一般式(II)を構成するX´のアルキル置換アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、トリメチルアミノ基、ジメチルエチルアミノ基、トリエチルアミノ基等を挙げることができる。
また、Y´のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができる。また、Yのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基を挙げることができる。
なお、一般式(II)で表される化合物と磁性微粒子2との反応に用いられる溶媒は、反応に関与しないものであれば特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、酢酸、アセトン、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を用いることができる。また、互いに混和する溶媒であれば、これらのうちから選択された2種以上の混合物を用いてもよい。反応は、0℃以上100℃以下で行うことが望ましい。
そして、一般式(I)で表される重合体又は共重合体を磁性微粒子2に共有結合により固定化させる反応においては、一般式(I)中のX又はYと、磁性微粒子2に予め反応させる一般式(II)中のX´とを反応させればよい。
例えば、容易に反応を進行させるためには、一般式(I)中のX又はYがカルボキシル基の場合は、一般式(II)中のX´は水酸基又はアミノ基であることが好ましい。また、一般式(I)中のX又はYが水酸基又はアミノ基の場合は、一般式(II)中のX´はカルボキシル基であることが好ましい。この場合、特に、一般式(I)中のX若しくはY又は一般式(II)中のXがカルボキシル基であれば、コハク酸イミド基、p−ニトロフェニルエステル基等へ変化すると、反応が極めて容易に進行する。また、このような変化が生じない場合でも、縮合剤を用いることにより、反応を促進することができる。縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N´−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド、ベンゾトリアゾール−1−イル−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン化物、ジフェニルホスホリルアジドを挙げることができる。これらの縮合剤は、単独で用いることもでき、また、N−ヒドロキシスクシンイミド又は1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等と組み合わせて用いることもできる。
また、一般式(I)で表されるアクリルアミド誘導体を含む重合体又は共重合体を磁性微粒子2に共有結合により固定化させる反応は、反応に関与しない溶媒中で行うことが好ましい。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、酢酸、アセトン、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。また、互いに混和する溶媒であれば、これらのうちから選択された2種以上の混合物を用いてもよい。反応は、0℃以上100℃以下で行うことが望ましい。
一般式(I)で表されるアクリルアミド誘導体を含む重合体又は共重合体を磁性微粒子2に共有結合により固定化させる反応を円滑に進行させるためには、塩基性条件で行うことが好ましく、このような塩基性条件を作り出すためには、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、N,N−ジメチルピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を用いることが好ましい。
このような方法により得られるカラム充填剤1の粒径は、例えば数μm〜数十μm程度である。
なお、一般式(II)で表される化合物と磁性微粒子2との反応は、X線光電子分光装置及び赤外分光測定装置を用いて確認することができる。また、一般式(II)と反応させた磁性微粒子2と一般式(I)で表されるアクリルアミド誘導体を含む重合体又は共重合体との反応は透過型電子顕微鏡を用いて確認することができる。
次に、上述のように構成されたカラム充填剤1を備えたクロマトグラフィ用カラム10を使用したクロマトグラフィについて説明する。このクロマトグラフィでは、コイル11に交流電流を供給しながら、クロマトグラフィ用カラム10内に移動相を流す。
交流電流がコイル11に供給されると、カラム10内に交流磁場が発生する。この結果、磁性微粒子2が発熱する。また、温度応答性高分子層3を構成する温度応答性高分子は、水中で、特定の温度より低温になると溶解し、高温になると不溶化を起こす。即ち、低温側で親水性、高温側で疎水性となる。従って、交流磁場の有無に応じてカラム充填剤1の性質が変化する。例えば、交流電流を供給せずに2種類の物質を含む移動相をカラム10内に流すと、温度応答性高分子が親水性を示し、図3Aに示すように、2種類の物質がほぼ同時に溶出される。一方、交流電流を供給しながら2種類の物質を含む移動相をカラム10内に流すと、温度応答性高分子が疎水性を示し、図3Bに示すように、疎水性度が高い物質が遅く溶出される。なお、温度応答性高分子が親水性を示す場合の方が、2種類の物質の排出タイミングがずれやすいときには、交流電流を供給しなければよい。
このように、本実施形態によれば、交流電流(交流磁場)のオン/オフの切り替えのみで温度応答性高分子層3の特性を変化させて、移動相中の物質を分離することができる。つまり、従来のようにカラム全体の温度を調整せずとも、物質の分離を行うことができる。
更に、物質の分離中に交流電流(交流磁場)のオン/オフを切り替えることで、溶出に要する時間を短縮することも可能である。図4の(a)に示すように、交流磁場を印加しない場合には、不要物及び目的物がほぼ同時に溶出されてしまう。一方、交流磁場を印加した場合には、図4の(b)に示すように、目的物が不要物から遅れて溶出されるため、これらが分離される。但し、不要物の溶出が終了してから目的物の溶出が開始されるまでに長時間要することもある。このような場合、図4の(c)に示すように、不要物の溶出が終了するまでは、交流磁場の印加を継続しておき、不要物の溶出が終了した後に交流磁場の印加を終了すればよい。このような磁場の制御を行うことにより、目的物が早期に溶出され、分離に要する時間が短縮される。つまり、本実施形態によれば、固定相の表面の特性を短時間で変化させることが可能であるため、目的物を早急に回収することができる。なお、従来の温度応答性クロマトグラフィでは、温度制御の際には外部からカラム全体の温度を変化させる必要があるため、例えば、移動相全体の温度を変化させる必要があるため、短時間で固定相の表面の特性を変化させることは非常に困難である。
なお、シリカ系物質4又はシリカ系粒子5は磁性微粒子2と温度応答性高分子層3とを化学的に結合する結合剤として機能するが、他の物質又は粒子を用いてもよい。例えば、シリカ系以外のセラミックス又はヒドロキシアパタイト等を用いてもよい。また、磁性を示さない金属化合物を用いてもよい。更に、有機物を用いることも可能である。
以下、本発明者らが実際に行った試験の内容及び結果について詳細に説明する。
(第1の試験)
第1の試験では、磁性微粒子2の着磁の有無と特性の変化との関係について調査した。具体的には、着磁していない3.0gのカラム充填剤1及び10mlの水を試験管に入れ、撹拌によりカラム充填剤1を水中に分散させた。次に、カラム充填剤1に対し1000W、300kHzの交流磁場を印加し、水温を経時的に測定した。なお、初期の水温は15.0℃とした。また、同様の測定を、固定磁場型の着磁装置を用いて着磁させたカラム充填剤1についても行った。これらの結果を図5に示す。
図5に示すように、着磁の有無にかかわらず、交流磁場の印加直後から水温が上昇し、20分間経過した時には、35.0℃程度まで上昇した。この試験の結果から、磁性微粒子2が着磁していても、着磁していなくても、十分な効果が得られるといえる。
(第2の試験)
第2の試験では、3種類のステロイド(ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン及びテストステロン)を移動相に含ませた場合の溶出挙動について調査した。ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン及びテストステロンの疎水性度を比較すると、テストステロンの疎水性度が最も高く、ヒドロコルチゾンの疎水性度が最も低い。図6Aに、ヒドロコルチゾンを用いた場合の結果を示し、図6Bに、デキサメタゾンを用いた場合の結果を示し、図6Cに、テストステロンを用いた場合の結果を示す。なお、図6A〜図6C中の実線は交流磁場を印加しないときの溶出量の変化を示し、破線は交流磁場を印加したときの溶出量の変化を示している。
図6A〜図6Cに示すように、いずれのステロイドにおいても、交流磁場を印加したときに、印加しないときよりも溶出が遅れた。この傾向は、疎水性度が高くなるほど顕著になった。つまり、テストステロンにおいて溶出の遅れが最も顕著であった。この試験の結果から、交流電流の印加により、カラム充填剤1の表面が確実に疎水性になったといえる。
(第3の試験)
第3の試験は、従来の温度応答性クロマトグラフィに関する。具体的には、従来の充填剤が充填されたカラムを用いて、3種類のステロイド(ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン及びテストステロン)を含む移動相における溶出挙動について調査した。従来の充填剤としては、シリカ系微粒子の表面に温度応答性高分子層が結合して構成されたものを用いた。つまり、磁性微粒子を含まないものを用いた。そして、移動相の温度を20℃にした場合の溶出量の変化及び50℃にした場合の溶出量の変化を測定した。図7Aに、20℃の場合の結果を示し、図7Bに、50℃の場合の結果を示す。なお、図7A及び図7B中のAは、ヒドロコルチゾンの溶出ピークを示し、Bは、デキサメタゾンの溶出ピークを示し、Cは、テストステロンの溶出ピークを示している。
図7A及び図7Bに示すように、50℃の場合に20℃の場合よりも各ステロイドの溶出ピークが出現するタイミングが遅くなった。このことは、温度の上昇により従来のカラム充填剤の表面も疎水性になったことを示している。
(第4の試験)
第4の試験は、微粒子の調整に関する。具体的には、先ず、12.0gの塩化鉄(II)4水塩、及び24.0gの塩化鉄(III)を50mlの蒸留水に溶解させ、75℃に保った。次に、表1に記載の条件でシリカゲルを投入した後、撹拌しながら100mlの塩化アンモニウム水溶液(濃度:28質量%)をゆっくり加えた。
Figure 0004815605
そして、75℃で更に30分間、撹拌した。続いて、室温まで冷却した後、ろ過及び減圧乾燥を行った。更に、80℃に保ったオーブンに入れて乾燥した。この結果、上記表1に示す質量のシリカ磁性複合微粒子が回収された。いずれの参考例においても、高収率で複合微粒子が調整されたといえる。
次に、参考例1、2又は3の条件で調整した7.5gのシリカ磁性複合微粒子を75mlの酢酸水溶液(濃度:1質量%)に加え、更に、2.5mlの3−アミノプロピルトリメトキシシランを加えた。次いで、室温下で12時間反応させた後、ろ過及び減圧乾燥を行った。この結果、表2に示す質量のアミノ基が導入された微粒子が回収された。
Figure 0004815605
いずれのシリカ磁性複合微粒子を用いた場合にも、高収率でアミノ基が導入されたといえる。
また、参考例3の条件で調整した7.5gのシリカ磁性複合微粒子、及び2.5mlの3エポキシプロピルメトキシシランを75mlのトルエンに加え、室温下で12時間反応させた後、ろ過及び減圧乾燥を行った。この結果、6.8gのエポキシ基が導入された微粒子が回収された。つまり、シランカップリング剤の種類を変えても、高収率で回収することができるといえる。
また、温度応答性共重合体であるイソプロピルアクリルアミド−2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド共重合体(10mol%のカルボキシル基を含む)を表3に記載の量だけ秤量し、これを10mlの蒸留水に溶解させた。そして、これを50ccサンプル管に入れた。また、参考例8のアミノ基が導入されたシリカ磁性複合微粒子(アミノ化シリカ磁性複合微粒子)を表3に記載の量だけ秤量し、上記の50ccサンプル管に入れた。更に、縮合剤であるN−エチル−N´−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドをポリマーのカルボキシル基に対して0.5倍当量秤量し、これを3.5mlの4℃の蒸留水に溶解させ、この結果得られた液を上記のサンプル管に加えた。
Figure 0004815605
そして、上記のサンプル管中の溶液を4℃に保ちながら12時間反応させ、更に、室温で12時間反応させた。続いて、ろ過を行うことにより得られた微粒子を十分に冷水で洗浄した。この結果、表3に示す質量の温度応答性高分子が固定化されたシリカ磁性複合微粒子が回収された。いずれの例でも、高収率で温度応答性高分子が固定化されたシリカ磁性複合微粒子が回収されたといえる。
また、上記の500gのエポキシ基が導入されたシリカ磁性複合微粒子(エポキシ化シリカ磁性複合微粒子)を500g秤量し、これと表4に記載の100mgのイソプロピルアクリルアミド−2−アミノイソプロピルアクリルアミド共重合体(温度応答性共重合体)とを表4に記載の量の蒸留水に加え、24時間撹拌した。
Figure 0004815605
そして、ろ過を行うことにより得られた微粒子を十分に冷水で洗浄し、減圧乾燥した。この結果、表4に示す質量の温度応答性高分子が固定化されたシリカ磁性複合微粒子が回収された。いずれの例でも、高収率で温度応答性高分子が固定化されたシリカ磁性複合微粒子が回収されたといえる。
なお、特許文献1及び2には、磁性微粒子を用いたたんぱく質の分離方法が記載されているが、この磁性微粒子の粒径はクロマトグラフィに使用するには小さすぎる。また、特許文献1及び2には、クロマトグラフィに関する記載はない。
本発明の実施形態に係るクロマトグラフィ用カラムを示す模式図である。 カラム充填剤の例を示す断面図である。 カラム充填剤の他の例を示す断面図である。 カラム充填剤の更に他の例を示す断面図である。 交流電流(交流磁場)を印加しない場合の溶出挙動を示すグラフである。 交流電流(交流磁場)を印加している場合の溶出挙動を示すグラフである。 実施形態に係るクロマトグラフィ用カラムを用いたクロマトグラフィの例を示す図である。 第1の試験の結果を示すグラフである。 第2の試験におけるヒドロコルチゾンの溶出挙動を示すグラフである。 第2の試験におけるデキサメタゾンの溶出挙動を示すグラフである。 第2の試験におけるテストステロンの溶出挙動を示すグラフである。 第3の試験における20℃での溶出挙動を示すグラフである。 第3の試験における50℃での溶出挙動を示すグラフである。
符号の説明
1、1a、1b、1c:カラム充填剤
2:磁性微粒子
3:温度応答性高分子層
4:シリカ系物質
5:シリカ系粒子
10:カラム
11:コイル
12:カラム筒

Claims (4)

  1. 磁性微粒子と、
    前記磁性微粒子を取り囲む温度応答性高分子層と、
    を有することを特徴とするクロマトグラフィ用カラム充填剤。
  2. 前記磁性微粒子と前記温度応答性高分子層とを化学的に結合する結合剤を有することを特徴とする請求項1に記載のクロマトグラフィ用カラム充填剤。
  3. カラム筒と、
    前記カラム筒に充填されたカラム充填剤と、
    を有し、
    前記カラム充填剤は、
    磁性微粒子と、
    前記磁性微粒子を取り囲む温度応答性高分子層と、
    を有することを特徴とするクロマトグラフィ用カラム。
  4. 前記カラム充填剤は、前記磁性微粒子と前記温度応答性高分子層とを化学的に結合する結合剤を有することを特徴とする請求項3に記載のクロマトグラフィ用カラム。
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