JP4814727B2 - 索道の脱索防止装置 - Google Patents

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本発明は、高架した索条に握索機を用いて搬器を懸垂して運行を行う固定循環式索道や自動循環式索道において、線路中の支柱等で索条を支承する受索輪から索条が脱索するのを防止するための脱索防止装置に関するものである。
一条の索条を二箇所の停留場間に無端状に高架し、この索条に搬器を懸垂して運行を行う単線式の索道は、スキーリフトやゴンドラリフトとして主に傾斜地の輸送設備として広く用いられている。このような索道においては、停留場間の線路中に支柱を立設し、この支柱に複数の受索輪で構成された索受け装置を備え索条を移動可能に支承する。また、搬器には握索機を備え、この握索機が索条を強固に掴むことにより、索条の移動とともに搬器が牽引されて移動する。
上記したように、索道において索条は線路中で受索輪に支承されているが、索条に風圧や搬器の揺動などによって外力が作用した場合に、受索輪から索条から外れる現象が引き起こされることがあり、この現象を脱索と称している。脱索を生じた場合に索道の運行を続行するのは危険であるため、従来より脱索を検知する装置や脱索自体を防止する装置が種々提案されており、また、実用に供されているものもある。
脱索自体を防止する脱索防止装置としては、複数の受索輪からなる索受け装置の端部に受索輪と対向するように脱索防止輪を設け、この脱索防止輪にばね力を作用させて索条を受索輪と脱索防止輪とで挟み込むようにしたものが多く用いられている。特許文献1には、同様の装置において、脱索防止輪と受索輪の外周に凹設した溝どうしの底面間の距離を索条の直径と略同一として索条が通過する空間を形成し、かつ、この溝の左右に位置する外周縁どうしが互いに嵌合するようにして、握索機の通過時以外は索条が脱索しない構造が開示されている。
特開昭62−15162号公報
しかしながら、上記特許文献1は、脱索防止輪と受索輪の外周縁で索条の左右方向の移動を規制する構造であるため、この外周縁の間で索条は移動方向に対して左右に振れる可能性があり、索条が脱索防止輪及び受索輪の中心から外れて左右どちらかに片寄っているときに搬器が通過すると、握索機が脱索防止輪及び受索輪の外周縁と干渉してしまうという問題がある。また、握索機が受索輪上を円滑に通過するためには、握索機の構造上、受索輪の溝はごく浅く形成されるのが通常であり、特許文献1に示された如く深い溝を形成された受索輪を採用することは適当ではない。
本発明の課題は、このような事情に鑑みてなされたものであって、索受け装置上における脱索を効果的に防止するとともに、索受け装置上の索条の位置を正規の位置に保持することができる索道の脱索防止装置を提供することにある
本発明の索道の脱索防止装置は、複数の受索輪で索条を支承する索受け装置又は圧索受け装置に備え、前記索条を挟んで前記受索輪に対向する位置に脱索防止輪を設け、該脱索防止輪で前記索条を押圧して脱索を防止する脱索防止装置であって、前記受索輪及び前記脱索防止輪は、前記索条を支承するライナーと、該ライナーの両側面に設けられて前記ライナーの外径より大きな外径を有するフランジとを備え、前記索条の下方から当接する前記受索輪又は前記脱索防止輪の前記ライナーの外周面は、溝が形成されていない又は浅溝が形成された状態とし、前記索条の上方から当接する前記脱索防止輪又は前記受索輪の前記ライナーの外周面には、前記索条の直径と略同一の深さの溝を有するとともに、該溝の底面を前記索条とほぼ同一径の円弧で形成し、前記脱索防止輪の幅を前記受索輪の幅よりも小さく形成し、前記脱索防止輪及び前記受索輪が前記索条に当接したときに、前記脱索防止輪の双方の前記フランジが前記受索輪の前記フランジ同士の間に入って、側面視で前記脱索防止輪の前記フランジと前記受索輪の前記フランジが重なり合う状態となって、前記脱索防止輪及び前記受索輪が前記索条の側面を完全に遮蔽することを特徴としている。
本発明では、受索輪及び脱索防止輪は、索条を支承するライナーと、該ライナーの両側面に設けられて前記ライナーの外径より大きな外径を有するフランジとを備え、前記索条の下方から当接する前記受索輪又は前記脱索防止輪の前記ライナーの外周面は、溝が形成されていない又は浅溝が形成された状態とし、前記索条の上方から当接する前記脱索防止輪又は前記受索輪の前記ライナーの外周面には前記索条の直径と略同一の深さの溝を有するとともに、溝の底面を前記索条とほぼ同一径の円弧で形成し、前記脱索防止輪の幅を前記受索輪の幅よりも小さく形成している。このように構成することで索条の側面は、脱索防止輪と受索輪で完全に遮蔽されるので索条の脱索を防止することができるとともに、索条が溝の底面と係合することにより索条を正規の位置に保持することができる。
また、この脱索防止装置を握索機が通過する際は、索条の下方から当接する脱索防止輪又は受索輪の外周面に形成した溝は、通常一般的に採用されている浅い溝であるか、あるいは溝を設けていないので、握索機の握子部の下部が円滑に通過できる
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1及び図2において、索道線路中の支柱等に備えた索受け装置10は、複数の受索輪11とビーム12,13等からなっており、ビーム12,13等を順次組み合わせることにより各受索輪11に作用する荷重が均等になるようバランスさせた従来公知のものである。この索受け装置10においては、索条14の下部に受索輪11が当接して回動し、索条14を長手方向に移動可能に誘導及び支承している。この索受け装置10の端部には、脱索防止装置20を備えている。
脱索防止装置20は、索条14を挟んで受索輪11と対向する位置に脱索防止輪21を備え、この脱索防止輪21が索条14の上方から圧接するようにしたものであり、以下のように構成される。まず、L字状のフレーム22は、端部の受索輪11,11の中間の位置で索受け装置10のビーム13の下部に固定されており、固定位置から索道線路の内側方向に延出した後上方に突出した形状をしている。このフレーム22の上部には、筒状の中空部材26、26を連結部材25で連結して一体とした摺動ケース23が固着されている。この摺動ケース23の中空部材26には摺動ロッド24が摺動可能に挿通され、各摺動ロッド24の下端部は連結プレート27が固着されて連結されるとともに、各上端部には摺動ビーム28が固着されて連結されている。そして、前記連結部材25と連結プレート27の間にはバネ30が装着されており、摺動ロッド24ないし摺動ビーム28は上下方向に摺動可能に支持されるとともに、摺動方向にバネ30のバネ力が作用するようになされている。
つぎに、前記摺動ビーム28の中央部には、受索輪11の側に延出してビームピン29が固着され、このビームピン29の先端部には2輪ビーム31が揺動可能に軸支されている。2輪ビーム31は、一対の板状の部材を一定間隔で平行に配置し、この板状部材を中央部で連結した構造であり、中央部においては前記したようにビームピン29に軸支されるとともに、両端部では板状部材の間で脱索防止輪21、21を回転可能に軸支している。そして、この脱索防止輪21は、受索輪11上の索条14に上方から当接し、前記バネ30のバネ力の作用により索条14を下方に押圧している。
図3は、受索輪11と脱索防止輪21が索条14に上下から当接した状態を示す拡大正面図である。受索輪11の中央部、即ち索条14を支承する部分には、合成ゴム等で成形されたライナー40を備え、このライナー40の左右両側面には、ライナー40の外径よりも若干大きな外径の金属製フランジ41を固定しており、ライナー40及びフランジ41は一体に回転する。ライナー40の外周面中央部には、索条14と係合するように索条14の直径とほぼ同一径の円弧で溝42が形成されている。この溝42は、後記する握索機が通過するのに際して、握索機の握子部との接触を最小限とするために浅く形成されてている。
一方、索条14の上方から当接する脱索防止輪21は、前記受索輪11と同様の構造であるが、受索輪11に比して外径及び幅方向を小さく構成したものであって、ライナー43の外周面中央部に形成された溝45が索条14の上面に係合する。この溝45は、索条14の直径と略同一の深さを有する深溝であって、索条14と接する底面部は索条14の直径とほぼ同一径の円弧で形成され、外周に向けては溝幅が徐々に広がるテーパ状となっている。そして、このライナー43の両側面には、受索輪11と同様にライナー43の外径よりも大きな外径の金属製フランジ44が固定されており、このフランジ44の外周部は、受索輪11のライナー40の外周に近接する位置にある。さらに、脱索防止輪21のフランジ44の外側方向には受索輪11のフランジ41が位置しており、側面視ではフランジ44とフランジ41は重なり合う状態となっている。このように、脱索防止輪21が索条14に圧接する位置において索条14の側面が、受索輪11と脱索防止輪21で完全に遮蔽される位置関係となるように、脱索防止輪21の溝45の深さは定められている。
以上のように構成したことにより、搬器が通過していない状態においては、上記したように索条14の側面が受索輪11と脱索防止輪21で完全に覆われているので、索条14に横方向の外力が作用しても左右方向の動きが抑止され、索条14の脱索が防止される。また、索条14は、脱索防止輪21に作用するバネ力により上下の脱索防止輪21及び受索輪11間で相互に挟まれており、上下の溝42、45に索条14が押圧されて係合することにより、索条14は正規の位置に良好に保持される。
つぎに、上記の如く構成された索受け装置10及び脱索防止装置20と、搬器に備えた握索機の関係を説明する。図4において、搬器の上部に備えた握索機50は、握子部51により索条14を強固に握索し、索条14と共に移動する。この握子部51には、握子部51の上部を覆い、且つ、進行方向前後に延出してタング部材52を備えている。タング部材52の上面は、側面視においては図4に示すように、中央部分が握子部51の上部と平行して握子部51の幅よりやや広い位置まで延び、この終端位置から両先端部にむけては緩やかに下方へ傾斜した形状であり、正面視においては図5に示すように、索条14の直径とほぼ同一径の半円形状に形成され、また、下面は索条14の上面の一部を覆うように当接している。
このように構成した握索機50は、以下のようにして脱索防止装置20を通過する。握索機50が索受け装置10に進入すると、握索機50に備えたタング部材52の先端が脱索防止輪21に当接し、タング部材52の上面と脱索防止輪21の溝45の底面が係合する。この後、握索機50の進行にともなって脱索防止輪21はタング部材52上面の傾斜部に沿って転動し、この傾斜により脱索防止輪21と受索輪11は緩やかに引き離される。このようにして握索機50は脱索防止輪21と受索輪11との間に円滑に導入される。
次いで図5に示すように、握索機50の握子部51が脱索防止輪21と受索輪11との間を通過する位置に到達すると、脱索防止輪21と受索輪11が最大に離隔する状態となる。このときに脱索防止輪21は、握子部51との間にタング部材52が介在することにより、握子部上部51aと脱索防止輪21のフランジ44が接触しない位置にまで押し上げられている。また、受索輪11のライナー40に形成された溝42は浅く形成されているので、握子部51とライナー40との接触は最小限の接触に留まり、また、受索輪11のフランジ41と握子部下部51bとが接触することもない。したがって、握子部51が脱索防止輪21と受索輪11との間を通過する際にも、握索機50は脱索防止輪21あるいは受索輪11と無用に干渉することなく円滑に進行することが可能である。
さらに握索機50が進行して握索機50が脱索防止輪21から離脱するときには、上記の進入の場合とは逆の動作、即ち脱索防止輪21は、握索機50のタング部材52の傾斜部に沿って緩やかに下降した後、再び索条14に係合する。
このように握索機50が脱索防止装置20を通過するのに際しては、一連の動作が円滑に行われるものであるが、加えて、握索機50に備えたタング部材52は、上面を索条14の直径とほぼ同一径の半円形状に形成しているので、脱索防止輪21に同様の円弧で形成された溝45の底面と的確に係合し、脱索防止装置20のバネ30の作用と相まって握索機50は左右に変位することなく正規の位置を保持して通過する。
以上の説明では、索条14を下方から支承する索受け装置10に脱索防止装置20を設けた構成の説明を行ったが、次に索条14を上方から支承する圧索受け装置に脱索防止装置20を設ける構成を説明する。
図6において、圧索受け装置60は前記索受け装置10と同様の構造であり、複数の受索輪11aが索条14の上面に当接して支承する。この圧索受け装置60の端部に脱索防止装置20を備えている。脱索防止装置20は、前記した索受け装置10に設けられる場合構成と同一であり、索条14の下方から脱索防止輪21が索条14を押圧するようにしている。ただし、この場合には脱索防止輪21aのライナー43aには、索条14と係合する溝は形成されておらず外周面は平坦である。いっぽう、受索輪11aのライナー40aには、前記索受け装置10の場合に備えた脱索防止輪21の溝45の形状と同様の溝42aが形成されている。すなわち、溝42aは索条14と接する底面部が索条14の直径とほぼ同一径の円弧で形成され、外周に向けては溝幅が徐々に広がるテーパ状となっている深溝として形成されている。
このように、圧索受け装置60に脱索防止装置20を適用する場合には、全体的な構成を索受け装置10の場合の上下を対称にして構成したものであるが、索条14と係合する溝は、いずれも上方側が深溝で係合するようにしたものである。そして、このように構成した圧索受け装置60の場合においても、前記索受け装置10の場合と同様の動作ないし効果を生じるものであって、索条の脱索を良好に防止することができ、また、握索機50の通過時においても円滑に通過することができるものである。
脱索防止装置の正面図 図1におけるA−A矢視図 受索輪と脱索防止輪の拡大正面図 握索機と脱索防止装置との関係を示す正面図 握索機と脱索防止装置との関係を示す側面図 脱索防止装置を圧索受け装置に適用したときの正面図
符号の説明
10 索受け装置
11、11a 受索輪
12、13 ビーム
20 脱索防止装置
21、21a 脱索防止輪
22 フレーム
23 摺動ケース
24 摺動ロッド
25 連結部材
26 中空部材
27 連結プレート
28 摺動ビーム
29 ビームピン
30 バネ
31 2輪ビーム
40、40a ライナー
41 フランジ
42、42a 溝
43、43a ライナー
44 フランジ
45 溝
50 握索機
51 握子部
51a 握子部上部
51b 握子部下部
52 タング部材
60 圧索受け装置

Claims (1)

  1. 複数の受索輪で索条を支承する索受け装置又は圧索受け装置に備え、前記索条を挟んで前記受索輪に対向する位置に脱索防止輪を設け、該脱索防止輪で前記索条を押圧して脱索を防止する脱索防止装置であって、
    前記受索輪及び前記脱索防止輪は、前記索条を支承するライナーと、該ライナーの両側面に設けられて前記ライナーの外径より大きな外径を有するフランジとを備え、
    前記索条の下方から当接する前記受索輪又は前記脱索防止輪の前記ライナーの外周面は、溝が形成されていない又は浅溝が形成された状態とし、
    前記索条の上方から当接する前記脱索防止輪又は前記受索輪の前記ライナーの外周面には、前記索条の直径と略同一の深さの溝を有するとともに、該溝の底面を前記索条とほぼ同一径の円弧で形成し、
    前記脱索防止輪の幅を前記受索輪の幅よりも小さく形成し、
    前記脱索防止輪及び前記受索輪が前記索条に当接したときに、前記脱索防止輪の双方の前記フランジが前記受索輪の前記フランジ同士の間に入って、側面視で前記脱索防止輪の前記フランジと前記受索輪の前記フランジが重なり合う状態となって、前記脱索防止輪及び前記受索輪が前記索条の側面を完全に遮蔽することを特徴とする索道の脱索防止装置。
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