JP4812347B2 - 抗菌性ペプチド - Google Patents

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Description

本発明は新規な抗菌性ペプチドに関し、詳しくは、モルモット由来の抗菌性ポリペプチドの部分ペプチド及びその一部アミノ酸残基を置換した抗菌性ペプチドに関する。また本発明は、前記抗菌性ペプチドを有効成分とする抗菌剤及び細胞に対するリポ多糖の結合阻害剤並びに細菌感染症治療剤やエンドトキシンショック抑制剤などの医薬に関する。
まず、本明細書中で用いた略号について説明する。
CAP11:11kDaの塩基性抗菌ポリペプチド(cationic antibacterial polypeptide of 11kDa)
E.coli:大腸菌(Escherichia coli)
FCS:ウシ胎仔血清(fetal calf serum)
HPLC:高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography)
LPS:リポ多糖(lipopolysaccharide)。エンドトキシン(endotoxin)ともいう。
MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)
MSSA:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-sensitive Staphylococcus aureus)
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
S.aur:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
CAP11はモルモットの好中球から見いだされた抗菌性ポリペプチドであり、アミノ酸43個からなるペプチドがシステインジスルフィド結合(S−S結合)で繋がったホモダイマーであることが知られている(非特許文献1)。そしてCAP11は、グラム陽性菌、陰性菌に対して強い殺菌作用を示すだけでなく、グラム陰性菌LPSの生物活性を中和することが知られている(非特許文献2及び3)。
ヨモギダ、S.(Yomogida, S.)ら,1996年,Archives of Biochemistry and Biophysics,第328巻, p.219−226 ナガオカ、I.(Nagaoka, I)ら,2000年,Inflammation Research,第49巻,p73−79 ナガオカ、I.(Nagaoka, I)ら,2001年,Journal of Immunology,第167巻,p3329−3338
このようなCAP11の作用をより小さいサイズのペプチドで発揮させることができれば、より簡便、迅速かつ安価に抗菌剤や医薬等を製造することができ、また、製品の品質管理等も容易になる。
そこで本発明は、CAP11をベースにした新規なペプチドを提供するとともに、そのペプチドを有効成分とする抗菌剤及び細胞に対するLPSの結合阻害剤並びに細菌感染症治療剤やエンドトキシンショック抑制剤などの医薬を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、CAP11の特定の部分ペプチドが、特に高い抗菌活性や細胞に対するLPSの結合阻害作用を示すことを見出し、さらにこの部分ペプチド中の特定位置のアミノ酸残基を他の特定のアミノ酸残基に置換すると、これらの活性がさらに高まることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記のアミノ酸配列(配列番号1)からなるペプチド(以下、「本発明ペプチド」という。)を提供する。
X01 X02 X03 X03 X04 X02 X03 X03 X05 X04 X03 X04 X02 X01 X03 X02 X05 X03
(X01は塩基性アミノ酸残基又は非荷電極性アミノ酸残基を、X02は非極性アミノ酸残基を、X03は塩基性アミノ酸残基を、X04は非極性アミノ酸残基又は塩基性アミノ酸残基を、X05は非極性アミノ酸残基又は非荷電極性アミノ酸残基をそれぞれ示す。)
なかでも、塩基性アミノ酸がLys又はArgであり、非荷電極性アミノ酸がThr、Gly又はGlnであり、かつ、非極性アミノ酸がLeu、Ile又はPheであるものが好ましい。また、X04及びX05が、いずれも非極性アミノ酸残基であるものが好ましい。
本発明ペプチドのなかでも、下記のアミノ酸配列(配列番号2)からなるペプチドがより好ましい。
X06 Leu Arg Lys X07 Phe Arg Lys X08 X09 Lys X09 Ile X10 Lys Leu X11 Arg
(X06はGly又はLysを、X07はLys又はLeuを、X08はThr又はLeuを、X09はArg又はLeuを、X10はGln又はArgを、X11はGly又はLeuをそれぞれ示す。)
その中でも、下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドが好ましい。
(a)
Gly Leu Arg Lys Lys Phe Arg Lys Thr Arg Lys Arg Ile Gln Lys Leu Gly Arg (配列番号3)
(b)
Gly Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Gln Lys Leu Leu Arg (配列番号4)
(c)
Lys Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Arg Lys Leu Leu Arg (配列番号5)
また本発明は、塩基性アミノ酸残基及び「非極性アミノ酸残基及び/又は非荷電極性アミノ酸残基」からなり、α−へリックス構造を形成し、当該α−へリックス構造をヘリカルホイール表示したときに塩基性アミノ酸残基のクラスターと「非極性アミノ酸残基及び/又は非荷電極性アミノ酸残基」のクラスターとから構成され、かつ、当該ヘリカルホイール表示において当該両クラスターが実質的に左右対称となるようなアミノ酸配列を有することを特徴とするペプチド(このペプチドも、以下「本発明ペプチド」という。)をも提供する。この本発明ペプチドは18アミノ酸残基から構成されることが好ましい。またこの本発明ペプチドにおける「当該両クラスターが実質的に左右対称となる」は、「当該塩基性アミノ酸残基のクラスターが当該ペプチドを構成する全アミノ酸残基数の45%〜55%の数の塩基性アミノ酸残基によって構成される」ものであることが好ましい。
また本発明は、本発明ペプチドを有効成分とする抗菌剤(以下、「本発明抗菌剤」という。)を提供する。
また本発明は、本発明ペプチドを有効成分とする細胞に対するLPSの結合阻害剤(以下、「本発明阻害剤」という。)を提供する。
また本発明は、本発明ペプチドを有効成分とする医薬(以下、「本発明医薬」という。)を提供する。また本発明は、本発明医薬として、細菌感染症治療剤及びエンドトキシンショック抑制剤を提供する。
本発明ペプチドは、モルモット由来の抗菌性ポリペプチド(CAP11)の特定の部分ペプチド、及び当該部分ペプチドの特定位置のアミノ酸残基を他の特定のアミノ酸残基に置換したペプチドであり、高い抗菌活性や細胞に対するLPSの結合阻害作用を示すことから極めて有用である。本発明ペプチドは、CAP11に比してサイズが非常に小さいことから、製造を簡便、迅速かつ安価に行うことができ、また製品の品質管理等を容易にすることができることから、極めて有用である。
また本発明ペプチドは高い薬理活性を有するので、本発明ペプチドを有効成分とする本発明抗菌剤、本発明阻害剤、本発明医薬等の中の有効成分量を減ずることができ、これによってより安全かつ安価な製品を提供することができることから、極めて有用である。
以下、本発明を発明の実施の形態により詳説する。
<1>本発明ペプチド
本発明ペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号1)からなるペプチドである。
X01 X02 X03 X03 X04 X02 X03 X03 X05 X04 X03 X04 X02 X01 X03 X02 X05 X03
(X01は塩基性アミノ酸残基又は非荷電極性アミノ酸残基を、X02は非極性アミノ酸残基を、X03は塩基性アミノ酸残基を、X04は非極性アミノ酸残基又は塩基性アミノ酸残基を、X05は非極性アミノ酸残基又は非荷電極性アミノ酸残基をそれぞれ示す。)
また、本発明における「塩基性アミノ酸」には、Lys(リジン)、Arg(アルギニン)及びHis(ヒスチジン)が包含される。また、本発明における「非荷電極性アミノ酸」には、Gly(グリシン)、Gln(グルタミン)、Asn(アスパラギン)、Ser(セリン)、Thr(トレオニン)及びTyr(チロシン)が包含される。また、本発明における「非極性アミノ酸」には、Leu(ロイシン)、Ile(イソロイシン)、Phe(フェニルアラニン)、Ala(アラニン)、Val(バリン)、Pro(プロリン)、Met(メチオニン)、Trp(トリプトファン)及びCys(システイン)が包含される。
なかでも、塩基性アミノ酸がLys又はArg、非荷電極性アミノ酸がThr、Gly又はGln、かつ、非極性アミノ酸残基がLeu、Ile又はPheであるものが好ましい。
また、X04及びX05は、いずれも非極性アミノ酸残基であるものが好ましい。
なお、配列番号1のアミノ酸配列で示される本発明ペプチド中には、X01〜X05がいずれも複数存在するが、それぞれのアミノ酸は必ずしも同一である必要はない。例えば、N末端から1番目に存在する「X01」と、N末端から14番目に存在する「X01」は同一のアミノ酸であっても異なるアミノ酸であってもよい。「X02」〜「X05」についても同様である。
本発明ペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号2)からなるものがより好ましい。
X06 Leu Arg Lys X07 Phe Arg Lys X08 X09 Lys X09 Ile X10 Lys Leu X11 Arg
(X06はGly又はLysを、X07はLys又はLeuを、X08はThr又はLeuを、X09はArg又はLeuを、X10はGln又はArgを、X11はGly又はLeuをそれぞれ示す。)
配列番号2のアミノ酸配列で示される本発明ペプチド中にはX09が複数存在するが、それぞれのアミノ酸が必ずしも同一である必要はない点は前記と同様である。すなわち、N末端から10番目と12番目に存在する「X09」は、一方がArgで他方がLeuであってもよい。
本発明ペプチドは、下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるものが好ましい。
(a)
Gly Leu Arg Lys Lys Phe Arg Lys Thr Arg Lys Arg Ile Gln Lys Leu Gly Arg (配列番号3)
(b)
Gly Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Gln Lys Leu Leu Arg (配列番号4)
(c)
Lys Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Arg Lys Leu Leu Arg (配列番号5)
なかでも上記(b)及び(c)のペプチドが好ましく、特に上記(c)のペプチドが好ましい。以下これら(a)〜(c)のペプチドを、それぞれ本発明ペプチド(a)、(b)及び(c)ともいう。
本発明ペプチドは、そのアミノ酸配列が本発明により開示されたので、その配列に基づいてペプチドの公知の化学合成法(例えば液相合成法や固相合成法等;泉屋信夫、加藤哲夫、青柳東彦、脇 道典、「ペプチド合成の基礎と実験」1985、丸善(株)参照)により製造することができる。例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるペプチドを固相合成法で製造する場合、アミノ酸配列の18位がArg(アルギニン)残基のときは、α-アミノ基(Nα)-保護-アルギニンのカルボキシル基を直接、あるいは場合によりスペーサーを介して、クロロメチル基あるいはオキシメチル基を有する不溶性樹脂に結合させた後、Nα-保護基を除去し、アミノ酸配列の17位から1位までの各保護アミノ酸(Nα-及び側鎖官能基保護アミノ酸を、単に「保護アミノ酸」と略称する)を固相合成法に従って順次結合し、次いで不溶性樹脂およびアミノ酸のNα-及び側鎖官能基の保護基を脱離させて、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるペプチドを得ることができる。
本発明ペプチドを合成する場合に使用される前記のクロロメチル基あるいはオキシメチル基を有する不溶性樹脂及びスペーサー、場合により保護アミノ酸を該不溶性樹脂に結合した保護アミノ酸樹脂等は、公知の方法で調製でき、各種のものが市販されている。
該不溶性樹脂としては、C末端の保護アミノ酸のカルボキシル基と直接、或いは場合によりスペーサーを介して、結合可能であり、かつ、その後脱離可能なものであれば如何なるものでもよい。かかる不溶性樹脂としては、例えば、Boc(t-ブチルオキシカルボニル)ストラテジーの場合は、クロロメチル樹脂(クロロメチル化スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、オキシメチル樹脂あるいはスペーサーを導入した4−オキシメチル−Pam(フェニルアセタミドメチル)−樹脂が、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)ストラテジーの場合は、オキシメチルフェノキシメチル樹脂(Wang)樹脂及びこれらの誘導体等が好ましい。
保護アミノ酸とは、官能基を公知の方法により保護基で保護したアミノ酸であり、各種の保護アミノ酸が市販されている。
本発明ペプチドを合成する場合の保護基の一例を以下に示す。
まず、アミノ酸のα−アミノ基の保護基はBoc(t-ブチルオキシカルボニル)又はFmoc (9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)である。Arg(アルギニン)のグアニジノ基の保護基は、Tos(トシル)、NO2(ニトロ)、Mtr(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル)又はPmc(2, 2, 5, 7, 8- ペンタメチルクロマン−6−スルホニル)である。Lys(リジン)のε−アミノ基の保護基は、Z(ベンジルオキシカルボニル)、Cl・Z(2−クロロベンジルオキシカルボニル)、Boc、Npys(3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)である。His(ヒスチジン)のイミダゾリル基の保護基は、Tos、Z、Pac(フェナシル)、Bom(ベンジルオキシメチル)、Dnp(ジニトロフェニル)又はTrt(トリチル)である。Cys(システイン)のメルカプト基の保護基としてはBzl (ベンジル)、MBzl (4−メトキシベンジル)、4−MeBzl(4−メチルベンジル)、Acm(アセタミドメチル)、Trt、Npys、t-Bu (t-ブチル)、t-BuS(t-ブチルチオ)が挙げられるが、MBzl、4−MeBzl、Trt、Acm、Npysが好ましい。Tyr(チロシン)の水酸基の保護基は、Bzl、Cl2・Bzl(2, 6−ジクロロベンジル)、t-Buであるか、あるいは保護しなくてもよい。Trp(トリプトファン)のインドール基の保護基はCHO(フォルミル)であるか、あるいは保護しなくてもよい。Met(メチオニン)のチオメチル基の保護基は、メチルスルホキシドであるか、あるいは保護しなくてもよい。Ser(セリン)およびThr(トレオニン)の水酸基の保護基は、Bzl又はt−Buである。Asn(アスパラギン)およびGln(グルタミン)のカルバミド基の保護基は、TrtまたはXan(キサンチル)である。
各保護基は、ペプチドの合成条件に応じ適当なものをそれ自体公知の中から選択することが好ましい。
保護アミノ酸の結合は、通常の縮合法、例えば、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)法、DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)法[Tartar,A.ら;J.Org.Chem.,44、5000(1979)]、活性エステル法、混合あるいは対称酸無水物法、カルボニルジイミダゾール法、DCC−HONSu(N-ヒドロキシスクシンイミド)法[Weygand, F.ら、Z.Naturforsch.,B,21,426(1966)]、DCC- HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)法[Koenig,W.ら;Chem.Ber.,103 、788 、2024、2034(1970)]、ジフエニルホスホリルアジド法、BOP試薬(ベンゾトリアゾリル−N−ヒドロキシトリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロリン化物塩)を用いるBOP−HOBt法(Hudson, D., J.Org.Chem.,53, 617(1988))、HBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート)−HOBt法(Knorr,R.ら, Tetrahedron Lett., 30, 1927 (1989))、TBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレイト)−HOBt法(Knorr, R. ら, Tetrahedron Lett., 30, 1927 (1989))等によって行うことができる。
これらの縮合反応は、通常、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)等の有機溶媒又はそれらの混合溶媒中で行なわれる。
α-アミノ基の保護基の脱離試薬としては、トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン、HCl /ジオキサン、ピペリジン/DMF又はピペリジン/NMP等が用いられ、該保護基の種類により適宜選択する。
また、合成の各段階における縮合反応の進行の程度はE.カイサーらの方法[Anal. Biochem., 34, 595(1970) ](ニンヒドリン反応法)によって検査される。
以上のようにして、所望のアミノ酸配列を有する保護ペプチド樹脂を得ることができる。
保護ペプチド樹脂は、フッ化水素、TFMSA(トリフルオロメタンスルホン酸)[Academic Press 発行、E. Gross編集、Yajima,Hら; "The Peptides"5、65(1983)]、TMSOTf(トリメチルシリルトリフラート)[Fujii,N.ら; J. Chem.Soc., Chem. Commun., 274 (1987)]、TMSBr(トリメチルシリルブロミド)[Fujii,N.ら; Chem. Pharm. Bull.,35、3880 (1987)]、またはトリフルオロ酢酸などで処理することにより、該樹脂および保護基を同時に脱離させることができる。上記の脱離試薬は、用いたストラテジー(Boc又はFmoc)、樹脂および保護基の種類により適宜選択する。これら一連の方法によって本発明ペプチドを製造することができる。
また本発明ペプチドのアミノ酸配列に対応するポリヌクレオチド(DNAあるいはRNA)を製造し、当該ポリヌクレオチドを用いた遺伝子工学的手法により製造することもできる。
製造した本発明ペプチドは、タンパク質化学の分野において一般に知られているタンパク質の単離、精製方法によって精製することができる。具体的には、例えば抽出、再結晶、硫酸アンモニウム(硫安)や硫酸ナトリウム等による塩析、遠心分離、透析、限外濾過法、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過法、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法、向流分配等や、これらの組合せ等の処理操作が挙げられるが、逆相高速液体クロマトグラフィーによる方法が最も効果的である。
製造された本発明ペプチドは、例えば塩酸やメタンスルホン酸等の酸で加水分解して公知の方法でアミノ酸組成を調べることができ、これによって本発明ペプチドが正しく製造されたか否かを推定することができる。
より厳密には、製造されたペプチドのアミノ酸配列を、公知のアミノ酸配列決定法(例えばエドマン分解法等)により決定し、本発明ペプチドが正しく製造されたか否かを確認することができる。
なお、本発明ペプチドには塩の形態も包含される。後述するように、本発明ペプチドは医薬用途として特に有用であることから、本発明ペプチドの塩は、薬学的に許容される塩であることが好ましい。
本発明ペプチドは、酸付加により塩を形成しうる。このような塩としては、例えば無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸など)または有機カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸など)、グルクロン酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、アスコルビン酸等の酸性糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸塩類、アルギン酸等の酸性多糖、または有機スルホン酸(メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸など)等が例示される。これらの塩のうち、薬学的に許容される塩が好ましい。
また本発明ペプチドは、塩基性物質との塩を形成しうる。このような塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、又はジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩等の有機塩基との塩のうち、薬学的に許容される塩が例示される。
本発明ペプチドは、後述する実施例の記載から明らかなように、高い抗菌活性及び細胞に対するLPSの結合阻害活性を示すことから、以下に詳述するような本発明抗菌剤、本発明阻害剤、本発明医薬等の有効成分として用いることができる。
CAP11はα−ヘリックス構造を有しており、このα−ヘリックス構造を軸方向に投影して見ると(CAP11のN末端から第1番目〜第18番目のアミノ酸配列(前記のペプチド(a))のヘリカルホイール表示を図2中の「1−18」に示す。黒色の丸は非極性アミノ酸を、灰色の丸は非荷電極性アミノ酸を、白色の丸は塩基性アミノ酸をそれぞれ示す)、塩基性アミノ酸残基の多い部分と非極性アミノ酸残基や非荷電極性アミノ酸残基が比較的多い部分とが認められる。
本発明ペプチドは、α−ヘリックス構造を軸方向に投影したヘリカルホイールにおける塩基性部分と、非極性や非荷電極性部分とのバランス(対称性)を考慮してアミノ酸配列を設計し、抗菌活性、細胞に対するLPS結合阻害活性を高めることに成功したものである。
したがって本発明ペプチドの別の態様として、塩基性アミノ酸残基及び「非極性アミノ酸残基及び/又は非荷電極性アミノ酸残基」からなり、α−へリックス構造を形成し、当該α−へリックス構造をヘリカルホイール表示したときに塩基性アミノ酸残基のクラスターと「非極性アミノ酸残基及び/又は非荷電極性アミノ酸残基」のクラスターとから構成され、かつ、当該ヘリカルホイール表示において当該両クラスターが実質的に左右対称となるようなアミノ酸配列を有することを特徴とするペプチドを挙げることができる。
ここで「塩基性アミノ酸残基」、「非極性アミノ酸残基」及び「非荷電極性アミノ酸残基」の説明については、前記と同様である。
またここで「ヘリカルホイール表示」とは、前記の通り、α−ヘリックス構造を軸方向に投影することによって当該α−へリックスを構成するアミノ酸残基の配置を示すことを意味する。
またここで「塩基性アミノ酸残基のクラスター」とは、ヘリカルホイール表示において塩基性アミノ酸残基が多く集合している部分(群をなしている部分)を意味する。
またここで「『非極性アミノ酸残基及び/又は非荷電極性アミノ酸残基』のクラスター」とは、同様にヘリカルホイール表示において「非極性アミノ酸残基及び/又は非荷電極性アミノ酸残基」が多く集合している部分(群をなしている部分)を意味する。例えば、図2中の「1−18」、「1−18m」及び「1−18m2」においては、いずれも便宜的にヘリカルホイールを横断する直線を示してあるが、当該直線の左側の部分はいずれも「塩基性アミノ酸残基のクラスター」であり、当該直線の右側の部分はいずれも「『非極性アミノ酸残基及び/又は非荷電極性アミノ酸残基』のクラスター」である。
また「当該ヘリカルホイール表示において当該両クラスターが実質的に左右対称」とは、当該ヘリカルホイール表示において「塩基性アミノ酸残基のクラスター」と「『非極性アミノ酸残基及び/又は非荷電極性アミノ酸残基』のクラスター」とが完全に左右対称のもの(例えば、図2中の「1−18m2」のようなもの)は勿論、完全に左右対称ではないが左右対称に近いもの(例えば、図2中の「1−18m」のようなもの)をも含む趣旨である。
この「当該両クラスターが実質的に左右対称」とは、例えば、塩基性アミノ酸残基のクラスターが当該ペプチドを構成する全アミノ酸残基数の45%〜55%の数の塩基性アミノ酸残基によって構成されるものであることが好ましく、塩基性アミノ酸残基のクラスターが当該ペプチドを構成する全アミノ酸残基数の49%〜51%の数の塩基性アミノ酸残基によって構成されるものであることがより好ましく、塩基性アミノ酸残基のクラスターが当該ペプチドを構成する全アミノ酸残基数の50%の数の塩基性アミノ酸残基によって構成されるもの(すなわち、完全に左右対称のもの)が特に好ましい。
このように前記両クラスターが実質的に左右対称となるようなアミノ酸配列は、ヘリカルホイール表示上において決定することができる。例えば、図2中の「1−18」、「1−18m」及び「1−18m2」においては、いずれもペプチドのN末端第1番目のアミノ酸残基を一番上に配置し、そのアミノ酸残基から第2番目のアミノ酸残基へ、当該第2番目のアミノ酸残基から第3番目のアミノ酸残基へ、以下同様にアミノ酸配列の順番に従ってアミノ酸残基間を結ぶ直線を表示してある。このような、α−へリックス構造におけるアミノ酸残基の位置関係(配列規則)を利用することにより、ヘリカルホイール表示において前記両クラスターが実質的に左右対称である場合のアミノ酸配列を選択することができる。このようなアミノ酸配列としては種々のものを例示することができる。例えば図2中の「1−18m2」を示すヘリカルホイールおいては、一番上にあるLysを出発点(N末端第1番目)とするペプチドは勿論、例えば一番上にあるLysの右側に隣接しているLeuを出発点(N末端第1番目)とするペプチドや、一番上にあるLysの左側に隣接しているLysを出発点(N末端第1番目)とするペプチドなど、出発点(N末端第1番目)の違いによって18種類のアミノ酸配列が存在することになる。図2中の「1−18m」を示すヘリカルホイールについても同様である。
これらのペプチドは、いずれもヘリカルホイール表示において前記両クラスターが実質的に左右対称となる点で共通しているものである。この本発明ペプチドは18アミノ酸残基から構成されることが好ましい。このようなペプチドも、前記の方法で製造することができる。
したがって、本発明ペプチドにはヘリカルホイールにおける塩基性部分と、非極性や非荷電極性部分とが図2の如きバランス(対称性)を有しているペプチド(例えば、本明細書に具体的にアミノ酸配列が開示されている本発明ペプチドの逆のアミノ酸配列を有するペプチド、D−アミノ酸を含むペプチド、及び通常タンパク質を構成しないアミノ酸(例えばβ−アラニン、γ−アミノ酪酸、ホモシステイン、オルニチン、5−ヒドロキシトリプトファン、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン、トリヨードチロニン、チロキシン等)を含むペプチド)等も包含される。最も好ましいのは、本明細書に開示されているアミノ酸配列で、L−アミノ酸から構成され、かつ、通常タンパク質を構成するアミノ酸で構成されているものである。
また、本発明ペプチドを修飾したペプチドも本発明ペプチドに包含される。このようなペプチドとしては、例えばα−アミノ基やα−カルボキシル基を修飾したペプチドや、側鎖官能基を修飾したペプチド等が挙げられる。
<2>本発明抗菌剤
本発明抗菌剤は、本発明ペプチドを有効成分とする抗菌剤である。本発明抗菌剤は、種々のグラム陽性菌、グラム陰性菌及び真菌に対し強力な抗菌作用を有する。
本発明抗菌剤は少なくとも本発明ペプチドが含有されていればよい。例えば本発明抗菌剤は、本発明ペプチドのみから構成されていてもよく、また本発明ペプチドおよび適宜の担体からなる組成物の形態であってもよい。
本発明抗菌剤は、医薬に使用することができるほか、食品の細菌汚染防止や防腐を目的として食品に添加するなど、従来の抗菌剤に代えて、または、従来の抗菌剤と併用して使用することができる。
また、本発明抗菌剤を適当な素材の表面に付着させたり、あるいは適当な素材と混合することにより、抗菌性素材を製造することができる。このような抗菌性素材は、ビーズ、フィルム、プレート、モノフィラメント、不織布、スポンジ、織物、編物、短繊維、チューブ、中空糸等の種々の形状で使用できる。具体的には、抗菌性医用複合材料として人工臓器、カテーテル、手術用縫合糸、透析膜等に用いることができ、また衛生用品、抗菌フィルター等にも利用することができる。
なお本発明抗菌剤に用いる本発明ペプチドのうち、下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドは、後述の実施例において具体的にその抗菌活性が示されているように抗菌活性が高いことから好ましいものである。
(a)
Gly Leu Arg Lys Lys Phe Arg Lys Thr Arg Lys Arg Ile Gln Lys Leu Gly Arg (配列番号3)
(b)
Gly Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Gln Lys Leu Leu Arg (配列番号4)
(c)
Lys Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Arg Lys Leu Leu Arg (配列番号5)
なかでも上記(b)及び(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましく、特に上記(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましい。
<3>本発明阻害剤
本発明阻害剤は、本発明ペプチドを有効成分とする細胞に対するLPSの結合阻害剤である。本発明阻害剤は、細胞、なかでも血球系の細胞(特に、マクロファージ)に対するLPSの結合を強力に阻害する。
本発明阻害剤は少なくとも本発明ペプチドが含有されていればよい。例えば本発明阻害剤は、本発明ペプチドのみから構成されていてもよく、また本発明ペプチドおよび適宜の担体からなる組成物の形態であってもよい。
本発明阻害剤は、医薬に使用することができるほか、実験用試薬等としても使用することができる。
なお本発明阻害剤に用いる本発明ペプチドのうち、下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドは、後述の実施例において具体的に示されているように、細胞に対するLPSの結合阻害活性が高いことから好ましいものである。
(a)
Gly Leu Arg Lys Lys Phe Arg Lys Thr Arg Lys Arg Ile Gln Lys Leu Gly Arg (配列番号3)
(b)
Gly Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Gln Lys Leu Leu Arg (配列番号4)
(c)
Lys Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Arg Lys Leu Leu Arg (配列番号5)
なかでも上記(b)及び(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましく、特に上記(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましい。
<4>本発明医薬
本発明医薬は、本発明ペプチドを有効成分とする医薬である。
本発明医薬は、上述のような高い抗菌活性、細胞に対するLPSの結合阻害活性などの本発明ペプチドの活性に基づき、種々の医薬用途に使用できる。
本発明医薬は少なくとも本発明ペプチドが含有されていればよい。例えば本発明医薬は、本発明ペプチドのみから構成されていてもよく、また本発明ペプチドおよび医薬担体からなる組成物の形態であってもよい。用いることができる医薬担体も特に限定されず、医薬分野で用いることができる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤等を用いることができる。
本発明医薬は、処置の目的に応じて、注射(皮下、皮内、静脈内、腹腔内等)、点眼、点入、経皮、経口、吸入等、適宜投与方法を選択することができる。
また投与方法に応じて注射剤(溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解用固形剤等)、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、リポ化剤、軟膏剤、ゲル剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤、点眼剤、眼軟膏剤、座剤、ペッサリー等の剤形を適宜選択し、製剤化することができる。
本発明医薬の投与量は、投与の目的(予防、維持(悪化防止)、軽減(症状の改善)または治療)、疾患の種類、患者の症状、性別、年令、投与方法等によって個別に設定されるべきものであり特に限定されない。
以下、代表的な医薬について説明する。
<4−1>抗菌薬
本抗菌薬は、本発明抗菌剤を含む医薬(以下、「本発明抗菌薬」という。)であり、本発明ペプチドを有効成分とする。
本発明抗菌剤は、上述のようにグラム陽性菌、グラム陰性菌及び真菌に対し強力な抗菌作用を有する。従って、本発明抗菌薬は、種々のグラム陽性菌、グラム陰性菌及び真菌に対して適用できる。適用対象となる細菌は特に限定されないが、グラム陰性菌としては大腸菌等が好ましく、グラム陽性菌としては黄色ブドウ球菌等が好ましく、真菌としてはカンジダ(例えば、Candida albicans等)等が好ましい。
また本発明抗菌薬は、多剤耐性グラム陽性菌(例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、バンコマイシン耐性腸球菌等)や多剤耐性グラム陰性菌(多剤耐性のヘリコバクター、赤痢菌、サルモネラ菌等)に対しても用いることができる。
本発明抗菌薬は、大腸菌や、黄色ブドウ球菌、特に「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」や「メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)」及びカンジダ(Candida albicans)に対して強い抗菌活性を示すことから、これらの細菌を適用対象とすることが好ましい。
本発明抗菌薬は、本発明ペプチドのみから構成されていてもよく、また本発明ペプチドおよび医薬担体からなる組成物の形態であってもよい。用いることができる医薬担体も特に限定されず、医薬分野で用いることができる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤等を用いることができる。またリゾチームや抗生物質等、他の抗菌薬と併用してもよい。
本発明抗菌薬は、例えば生体外部の微生物感染部の処置、あるいは生体内部の微生物感染の処置等に用いることができ、処置の目的に応じて、注射(皮下、皮内、静脈内、腹腔内等)、点眼、点入、経皮、経口、吸入等、適宜投与方法を選択することができる。
また投与方法に応じて注射剤(溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解用固形剤等)、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、リポ化剤、軟膏剤、ゲル剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散剤、点眼剤、眼軟膏剤、座剤、ペッサリー等の剤形を適宜選択し、製剤化することができる。
本発明抗菌薬の投与量は、細菌の種類、感染の状況、患者の症状、性別、年令、投与方法等によって個別に設定されるべきものであり特に限定されないが、成人1人1回あたり概ね、本発明ペプチドとして0.003〜3(mg/kg体重)程度を投与することができる。
なお本発明抗菌薬に用いる本発明ペプチドのうち、下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドは、後述の実施例において具体的にその抗菌活性が示されているように抗菌活性が高いことから好ましいものである。
(a)
Gly Leu Arg Lys Lys Phe Arg Lys Thr Arg Lys Arg Ile Gln Lys Leu Gly Arg (配列番号3)
(b)
Gly Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Gln Lys Leu Leu Arg (配列番号4)
(c)
Lys Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Arg Lys Leu Leu Arg (配列番号5)
なかでも上記(b)及び(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましく、特に上記(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましい。
<4−2>細菌感染症治療剤
本治療剤は、本発明ペプチドを有効成分とする細菌感染症治療剤(以下、「本発明細菌感染症治療剤」という。)である。
本発明細菌感染症治療剤は、その有効成分である本発明ペプチドがグラム陽性菌、グラム陰性菌及び真菌に対し強力な抗菌作用を有することから、グラム陽性菌、グラム陰性菌及び真菌に起因する細菌感染症に対して適用できる。細菌感染症の原因となる細菌は特に限定されないが、グラム陰性菌感染症としては大腸菌等に起因する細菌感染症が好ましく、グラム陽性菌感染症としては黄色ブドウ球菌等に起因する細菌感染症が好ましく、真菌感染症(真菌症)としてはカンジダ(例えば、Candida albicans等)等に起因する感染症が好ましい。
また本発明細菌感染症治療剤は、多剤耐性グラム陽性菌(例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、バンコマイシン耐性腸球菌等)や多剤耐性グラム陰性菌(多剤耐性のヘリコバクター、赤痢菌、サルモネラ菌等)に起因する細菌感染症に対しても用いることができる。
本発明細菌感染症治療剤は、大腸菌に起因する細菌感染症や、黄色ブドウ球菌、特に「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」や「メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)」及びカンジダ(Candida albicans)に起因する細菌感染症を適用対象とすることが好ましい。
本発明細菌感染症治療剤は少なくとも本発明ペプチドが含有されていればよい。例えば本発明細菌感染症治療剤は、本発明ペプチドのみから構成されていてもよく、また本発明ペプチドおよび医薬担体からなる組成物の形態であってもよい。本発明細菌感染症治療剤は、前述の本発明抗菌薬と同様に適宜投与方法を選択することができるが、注射(皮下、皮内、静脈内、腹腔内等)が好ましい。
また投与方法に応じて、前述の本発明抗菌薬と同様に適宜剤形を選択することができるが、注射剤(溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解用固形剤等)として製剤化することが好ましい。
本発明細菌感染症治療剤の投与量は、細菌の種類、感染の状況、患者の症状、性別、年令、投与方法等によって個別に設定されるべきものであり特に限定されないが、成人1人1回あたり概ね、本発明ペプチドとして0.003〜3(mg/kg体重)程度を投与することができる。
なお本発明細菌感染症治療剤に用いる本発明ペプチドのうち、下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドは、後述の実施例において具体的にその抗菌活性が示されているように抗菌活性が高いことから好ましいものである。
(a)
Gly Leu Arg Lys Lys Phe Arg Lys Thr Arg Lys Arg Ile Gln Lys Leu Gly Arg (配列番号3)
(b)
Gly Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Gln Lys Leu Leu Arg (配列番号4)
(c)
Lys Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Arg Lys Leu Leu Arg (配列番号5)
なかでも上記(b)及び(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましく、特に上記(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましい。
<4−3>エンドトキシンショック抑制剤
本抑制剤は、本発明ペプチドを有効成分とするエンドトキシンショック抑制剤(以下、「本発明抑制剤」という。)である。
本発明抑制剤は、敗血症に伴うエンドトキシンショック、グラム陰性菌感染症に伴うエンドトキシンショック等に対して優れた抑制効果を有し、このようなエンドトキシンショックによる致死抑制効果も有する。
本発明エンドトキシンショック抑制剤は少なくとも本発明ペプチドが含有されていればよい。例えば本発明エンドトキシンショック抑制剤は、本発明ペプチドのみから構成されていてもよく、また本発明ペプチドおよび医薬担体からなる組成物の形態であってもよい。用いることができる医薬担体、投与方法、剤形、投与量等は、前述の本発明細菌感染症治療剤と同様である。
なお、本発明エンドトキシンショック抑制剤として好ましい本発明ペプチドは、下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドである。
(a)
Gly Leu Arg Lys Lys Phe Arg Lys Thr Arg Lys Arg Ile Gln Lys Leu Gly Arg (配列番号3)
(b)
Gly Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Gln Lys Leu Leu Arg (配列番号4)
(c)
Lys Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Arg Lys Leu Leu Arg (配列番号5)
なかでも上記(b)及び(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましく、特に上記(c)のペプチドを有効成分とすることが好ましい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
<1>CAP11等の調製
順天堂大学医学部中央機器分析室に委託して、図1中の一番上のアミノ酸配列(配列番号6)で示されるCAP11の単量体(アミノ酸43個からなり、システインジスルフィド結合(S−S結合)を有しないもの)を、固相合成法(Fmoc/PyBop(benzotriazole-1-yl-oxy-tris-pyrrolidino-phosphonium hexafluorophosphate)法)により製造した。以下、このモノマーを「monomer」又は「1-43(monomer)」と表記する。
インタクトなCAP11(二量体)は、monomerを0.5Mグアニジン塩酸塩を含有するトリス緩衝液に溶解し、これに400μMの酸化型グルタチオンを添加して2〜3日間室温で静置して酸化誘導を行い二量体化することにより製造した。これをカプセルパックC18カラム(資生堂ファインケミカル社製)を用いた逆相HPLCに付し、水とアセトニトリルによる直線濃度勾配によって溶出、精製し、SDS−PAGEで分子量が約11kDaであることを確認してから用いた。この方法で調製されたCAP11(二量体)は、図1中の一番上のアミノ酸配列(配列番号6)で示される通り、アミノ酸43個からなるペプチドがS−S結合で繋がったホモダイマーである。以下、この二量体を「dimer」と表記する。
また、7Mグアニジン塩酸塩を含有するトリス緩衝液とジチオスレイトールを用いた変性還元条件下において、monomerに4−ビニルピリジンを添加して、monomer中のシステイン残基の修飾を行うことによって、ピリジルエチル化された(pyridylethylated)monomerを製造した。以下、このピリジルエチル化されたmonomerを、「Pe-monomer」と表記する。
また、monomerのN末端から第1番目〜第18番目のアミノ酸配列(配列番号3)で示されるペプチド、第16番目〜第33番目のアミノ酸配列(配列番号7)で示されるペプチド及び第9番目〜第26番目のアミノ酸配列(配列番号8)で示されるペプチドを、順天堂大学医学部中央機器分析室に委託して、固相合成法(Fmoc/PyBop(benzotriazole-1-yl-oxy-tris-pyrrolidino-phosphonium hexafluorophosphate)法)により製造した。以下、これらのペプチドをそれぞれ「1-18」(又は「CAP11(1-18)」)、「16-33」(又は「CAP11(16-33)」)及び「9-26」(又は「CAP11(9-26)」)と表記する。「1-18」は、本発明ペプチド(a)に対応する。
製造されたこれらのペプチドはいずれも白色の凍結乾燥体であった。
製造されたこれらのペプチドについて、Finnigan(Thermo Electron Corporation)TSQ700を用いたエレクトロスプレーイオン化(ESI)−質量分析(MS)を行った結果、いずれもアミノ酸配列から求めた理論値とよく一致することが示された。またこの結果から算出されたペプチドの純度は、いずれも97%以上であった。
また、製造されたこれらのペプチドをHPLC(逆相クロマトグラフィー)に付して溶出パターンを調べた結果、いずれも単一のピークが認められた。
なおクロマトグラフィーの条件は下記の通りである。
・カラム :Cosmosil C18 (内径4.6mm x 250mm)(ナカライテスク株式会社製)
・溶離液 :(A)0.1%トリフルオロ酢酸水溶液
(B)70%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液
・濃度勾配:溶離液(B)10%から100%までの直線濃度勾配(45分間)
・流速 :1mL/分
<2>薬効薬理試験
<2−1>抗菌(殺菌)活性の測定
E.coli、S.aur、MSSA及びMRSAの各細菌を、37℃で Muller-Hinton培地(DIFCO社製)を用いて一晩振盪培養した後、遠心して沈降した菌体をフェノールレッド非含有RPMI1640培地で洗浄した。分光光度計を用いた650nmの吸光度の測定によって、E.coliは 1x108 CFU/ml、黄色ブドウ球菌各株(S.aur、MSSA及びMRSA)は 2x108 CFU/mlになるように菌体濃度を調整した。
96穴のプレートを用いて、100 μlの菌体懸濁液(1x106CFU/ml)、被験物質 10μl、RPMI1640培地 70μl及びアラマーブルー(AlamarBlue)試薬(BIOSOURCE社製)20μlを混和した。アラマーブルーを混和すると、生菌存在下では桃色の蛍光色を呈するが、死菌では青色のまま変化しない。
37℃恒温の条件下で6時間インキュベートした後、波長560 nmと波長595 nmにおける吸光度の差を測定した。コントロール用対照実験(サンプルに細菌懸濁液を含まない(バックグラウンド用)、もしくは抗菌ペプチド非添加(最大の吸収変化))で得られた結果と比較して、抗菌(殺菌)活性を測定した。
<2−2>細胞に対するLPSの結合阻害活性の測定
FCSを10%含有するRPMI1640培地を用いて培養したRAW246.7細胞(マクロファージ
の細胞株)を回収し、同培地で5x105/mlとなるように希釈して、その希釈液500μlを用いた。これに被験物質を5μl添加して、37 ℃で10分間振盪した後、Alexa488で標識したLPS(終濃度100 ng/ml)を添加して37 ℃で15分間振盪した。その後、細胞を3 mlのPBSで2回洗浄し、300μlのPBSに再度懸濁した。Alexa488で標識したLPSの結合を、FACSを用いて測定し、コントロール用対照実験(標識LPS非添加(バックグラウンド用)及び抗菌ペプチド非添加(LPS最大結合量測定用))で得られた結果と比較して、RAW246.7細胞に対するLPSの結合の阻害の程度を解析した。
被験物質としてdimer、monomer及びPe-monomerを用いた結果を図4に示す。図4の左の図は抗菌活性(横軸:被験物質の濃度、縦軸:波長560 nmと波長595 nmにおける吸光度の差)を、右の図は細胞に対するLPSの結合阻害活性(横軸:被験物質の濃度、縦軸:阻害率)をそれぞれ示す。
その結果、dimer、monomer及びPe-monomerのいずれもが抗菌活性及び細胞に対するLPSの結合阻害活性を示した。抗菌活性はグラム陰性菌と陽性菌のいずれに対しても認められた。また、抗菌活性についてはmonomerに比してdimer及びPe-monomerの方が若干高かった。細胞に対するLPSの結合阻害活性についてはほとんど差がなかった。
被験物質としてmonomer、1-18、16-33及び9-26を用いた結果を図5に示す。図5の左の図は抗菌活性(横軸:被験物質の濃度、縦軸:波長560 nmと波長595 nmにおける吸光度の差)を、右の図は細胞に対するLPSの結合阻害活性(横軸:被験物質の濃度、縦軸:阻害率)をそれぞれ示す。
その結果、monomer、1-18、16-33及び9-26のいずれもが抗菌活性及び細胞に対するLPSの結合阻害活性を示した。抗菌活性はグラム陰性菌と陽性菌のいずれに対しても認められた。また、monomerの部分ペプチド(1-18、16-33及び9-26)のなかでは、1-18が最も強い抗菌活性及び細胞に対するLPSの結合阻害活性を示した。
<3>CAP11(1-18)をベースにしたペプチド(本発明ペプチド)の調製
CAP11(1-18)におけるα−ヘリックス構造を軸方向に投影したヘリカルホイール表示を図2中の「1−18」に示す。図2中、黒色の丸は非極性アミノ酸を、灰色の丸は非荷電極性アミノ酸を、白色の丸は塩基性アミノ酸をそれぞれ示す。
このヘリカルホイールにおいて、塩基性部分と、非極性や非荷電極性部分とが実質的に左右対称となるように一部のアミノ酸を他のアミノ酸に置換した設計を図2中の「1−18m」及び「1−18m2」に示す。また、図2中の「1−18m」及び「1−18m2」の設計に従って規定されるペプチドのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号4及び5に示す。また、これらの配列の比較を図3に示す。図3中の下線部分が置換されたアミノ酸である。
配列番号4及び5のアミノ酸配列で示されるペプチドを、順天堂大学医学部中央機器分析室に委託して、固相合成法(Fmoc/PyBop(benzotriazole-1-yl-oxy-tris-pyrrolidino-phosphonium hexafluorophosphate)法)により製造した。以下、これらのペプチドをそれぞれ「1-18m」及び「1-18m2」と表記する。「1-18m」は本発明ペプチド(b)に、「1-18m2」は本発明ペプチド(c)にそれぞれ対応する。
製造されたこれらのペプチドはいずれも白色の凍結乾燥体であった。
製造されたこれらのペプチドについて、Finnigan(Thermo Electron Corporation)TSQ700を用いたエレクトロスプレーイオン化(ESI)−質量分析(MS)を行った結果、いずれもアミノ酸配列から求めた理論値とよく一致することが示された。またこの結果から算出されたペプチドの純度は、いずれも97%以上であった。
また、製造されたこれらのペプチドをHPLC(逆相クロマトグラフィー)に付して溶出パターンを調べた結果、いずれも単一のピークが認められた。
なおクロマトグラフィーの条件は下記の通りである。
・カラム :Cosmosil C18 (内径4.6mm x 250mm)(ナカライテスク株式会社製)
・溶離液 :(A)0.1%トリフルオロ酢酸水溶液
(B)70%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液
・濃度勾配:溶離液(B)10%から100%までの直線濃度勾配(45分間)
・流速 :1mL/分
<4>薬効薬理試験
<4−1>抗菌(殺菌)活性の測定
被験物質として1-18、1-18m及び1-18m2を用い、吸光度測定において波長550nmと波長590 nmにおける差をとった以外は前記<2−1>と同様の方法で、E.coli、S.aur、MSSA及びMRSAのそれぞれについて抗菌活性を測定した。結果を図6に示す。図6中では1-18の結果を「CAP11」と表示してある。また図6中の黒丸はE.coliに対する結果を、白丸はS.aurに対する結果を、黒四角はMSSAに対する結果を、白四角はMRSAに対する結果をそれぞれ示す。また横軸は被験物質の濃度を、縦軸は波長550 nmと波長590 nmにおける吸光度の差をそれぞれ示す。
その結果、1-18、1-18m及び1-18m2のいずれもが、グラム陰性菌(E.coli)及びグラム陽性菌(S.aur、MSSA及びMRSA)の全てに対して抗菌(殺菌)作用を示した。その作用は、1-18m2が最も高く、1-18mが次いで高く、1-18が次いで高かった。
<4−2>細胞に対するLPSの結合阻害活性の測定
これらの被験物質について、前記<2−2>と同様の方法で、細胞に対するLPSの結合阻害活性を測定した。結果を図7に示す。図7中、白丸は1-18を用いた結果を、黒丸は1-18mを用いた結果を、黒四角は1-18m2を用いた結果をそれぞれ示す。また横軸は被験物質の濃度を、縦軸は細胞へのLPSの結合率をそれぞれ示す。
その結果、1-18、1-18m及び1-18m2のいずれもが、細胞に対するLPSの結合阻害作用を示した。その作用は、1-18m2が最も高く、1-18mが次いで高く、1-18が次いで高かった。
グラム陰性菌感染による敗血症性ショックでは、菌体から遊離されたLPSが単球・マクロファージに作用して、サイトカインや一酸化窒素(NO)などの産生を介して、エンドトキシンショックの病態を誘導する。一方、好中球がLPSによって刺激されると、アポトーシスが抑制され、活性化された好中球が敗血症性ショックにおける組織障害を引き起こす。本発明ペプチドは、敗血症性ショックにおいて殺菌作用を示すだけでなく、LPSの好中球への結合を阻害することによって好中球のアポトーシスを誘導することが示唆される。また本発明ペプチドは、LPSの単球への結合を阻害することによって、IL−1β、TNF−α、IL−8などのサイトカインの生成を阻害して、好中球のアポトーシスを誘導することが示唆される。このようにして、本発明ペプチドは、グラム陰性菌感染に伴うエンドトキシンショックや組織障害を軽減することが示唆される。
また、本発明ペプチドがLPSに結合する性質を利用して、例えば不溶性担体に固着された本発明ペプチドからなるエンドトキシン除去剤等も提供することができる。
<4−3>真菌に対する抗菌(殺菌)活性の測定
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans;CA53133株)を、サブロー寒天培地(Sabouraud dextrose agar)中で生育させた。形成されたコロニーを回収し、RPMI1640液体培地(Sigma社)(血清及びフェノールレッド非含有)に懸濁させ、分光光度計を用いた550nmの吸光度の測定によって0.5〜2.5x10 CFU/mlとなるように菌体濃度を調整した。
96穴のプレートを用いて、20μlの菌体懸濁液(0.5〜2.5x10CFU/ml)、被験物質(CAP11、1-18又は1-18m2) 10μl、RPMI1640液体培地 150μl及びアラマーブルー(AlamarBlue)試薬(BIOSOURCE社製)20μlを混和した。35℃恒温の条件下で14時間インキュベートした後、波長550 nmと波長595 nmにおける吸光度の差を測定した。当該値が低ければ低いほど、抗菌(殺菌)の度合いが高いことを意味する。
結果を図8に示す。図8中、黒丸はCAP11を用いた結果を、白四角は1-18を用いた結果を、白三角は1-18m2を用いた結果をそれぞれ示す。また横軸は被験物質の濃度を、縦軸は波長550 nmと波長595 nmにおける吸光度の差をそれぞれ示す。
その結果、CAP11、1-18及び1-18m2のいずれもが、真菌(Candida albicans)に対して抗菌(殺菌)作用を示した。その作用は、1-18m2が最も高かった。
<5>製剤例
以下に本発明抗菌薬、本発明細菌感染症治療剤及び本発明抑制剤の製剤例を示すが、これらはあくまで例示であり、本発明各剤の剤形がこれらに限定されるものではない。
(1)本発明抗菌薬(軟膏剤)
本発明ペプチド(c) 10mg
モノステアリン酸ソルビタン 7mg
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 7mg
パルミチン酸イソプロピル 37mg
ワセリン 37mg
流動パラフィン 37mg
セタノール 50mg
グリセリン 70mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記成分に精製水を加えて、1gのクリームとした。
(2)本発明抗菌薬(錠剤)
本発明ペプチド(b) 100mg
乳糖 670mg
バレイショデンプン 150mg
結晶セルロース 60mg
軽質無水ケイ酸 50mg
上記成分を混合し、ヒドロキシプロピルセルロースを30mgをメタノールに溶解した溶液(ヒドロキシプロピルセルロース10重量%)を加えて混練したのち造粒した。これを径0.8mmのスクリーンで押し出して顆粒状にし、乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム15mgを加え200mgづつ打錠して錠剤を得た。
(3)本発明細菌感染症治療剤(カプセル剤)
本発明ペプチド(a) 100mg
乳糖 80mg
上記成分を均一に混合し、硬カプセルに充填してカプセル剤を得た。
(4)本発明細菌感染症治療剤(注射剤)
本発明ペプチド(c) 30mg
上記成分を5%マンニトール水溶液2mLに溶解し、これを無菌濾過した後、アンプルに入れて密封した。
(5)本発明エンドトキシンショック抑制剤(用時溶解用注射剤)
(A)本発明ペプチド(c)(凍結乾燥体)30mg(アンプルに封入した)
(B)無菌濾過したPBS 2mL(アンプルに封入した)
上記(A)および(B)を1セットとして、用時溶解用注射剤を製造した。使用時には(A)を(B)で溶解して用いることができる。
本発明ペプチドは、本発明抗菌剤、本発明阻害剤、本発明医薬等の有効成分として利用することができる。本発明抗菌剤はグラム陰性菌、グラム陽性菌及び真菌のいずれに対しても有効な抗菌剤として、本発明阻害剤は細胞に対するLPSの結合を阻害する薬剤として、本発明医薬は抗菌薬、細菌感染症治療剤、エンドトキシンショック抑制剤等の医薬として利用することができる。
CAP11及びその部分ペプチドを示す図である。 1-18(本発明ペプチド(a))、1-18m(本発明ペプチド(b))及び1-18m2(本発明ペプチド(c))のヘリカルホイールを示す図である。 本発明ペプチドのアミノ酸配列の比較を示す図である。 dimer、monomer及びPe-monomerの抗菌活性とLPS結合阻害活性を示す図である。 monomer、1-18、16-33及び9-26の抗菌活性とLPS結合阻害活性を示す図である。 1-18、1-18m及び1-18m2の抗菌活性を示す図である。 1-18、1-18m及び1-18m2のLPS結合阻害活性を示す図である。 CAP11、1-18及び1-18m2の真菌に対する抗菌活性を示す図である。

Claims (7)

  1. 下記(a)〜(c)のいずれかのアミノ酸配列からなるプチド。
    (a)
    Gly Leu Arg Lys Lys Phe Arg Lys Thr Arg Lys Arg Ile Gln Lys Leu Gly Arg (配列番号3)
    (b)
    Gly Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Gln Lys Leu Leu Arg (配列番号4)
    (c)
    Lys Leu Arg Lys Leu Phe Arg Lys Leu Leu Lys Leu Ile Arg Lys Leu Leu Arg (配列番号5)
  2. アミノ酸配列が(c)であることを特徴とする請求項1に記載のペプチド。
  3. 請求項1又は2に記載のペプチドを有効成分とする抗菌剤。
  4. 請求項1又は2に記載のペプチドを有効成分とする、細胞に対するリポ多糖の結合阻害剤。
  5. 請求項1又は2に記載のペプチドを有効成分とする医薬。
  6. 請求項1又は2に記載のペプチドを有効成分とする細菌感染症治療剤。
  7. 請求項1又は2に記載のペプチドを有効成分とするエンドトキシンショック抑制剤。
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