以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1〜図7を参照して本発明の第1実施形態に係るマンホールの浮上防止構造および浮上防止方法について説明する。図1は、本実施形態の浮上防止構造を有するマンホールの縦側面図であり、マンホールの周囲の地面Grを所定深さだけ掘り起こして、マンホールの直壁部を露出させた状態を示している。なお、図1および他の図2〜図7は模式図であり、各構成の部材の寸法を厳密に示したものではない。
図1に示すように、マンホール1は有底の筒状体であり、下水管などの管渠2が底側に接続される。マンホール1は、管渠2の会合や方向転換をするために設置される他、作業員が管渠2などの保守管理作業をするためにも利用される。マンホール1は、上端の頂部に形成される出入口9と、作業空間を確保するための所定の広さを有する円筒形状の直壁部10と、出入口9および直壁部10の間に配置されて、マンホール1の内径を上方から下方に向かって拡張する斜壁部11とからなる。
出入口9は、斜壁部11の上端が開口することで形成されており、この出入口9には蓋12が設置されている。また、特に図示しないが、マンホール1の内壁には作業員が昇降するためのはしご体が設けられている。
このようなマンホール1の外周部に、マンホール1の浮き上がりを防止すべく、張出体20と浮上抑制体30とが設けられる。
張出体20は、直壁部10に取り付けられる環状バンド21と、環状バンド21の周面から径方向外側に突出する複数の張出突出部22とを備えている。
環状バンド21は、図2に示すように、円弧状に湾曲した帯板21aを複数連結して環状に形成される。各帯板21aには、両端が折り曲げられることで連結部21b,21bが形成されているとともに、周方向中央の位置に設けられて径方向外側に突出する突出部21cが形成されている。各連結部21bにはボルト23を通す通孔(図示略)が設けられている。
隣り合う帯板21a,21aの対向する連結部21b,21b同士をそれぞれボルト23およびナット24により締結すると、帯板21aが直列に連結されて環状バンド21となる。また、環状バンド21は、ボルト23およびナット24の緊締力により、マンホール1の直壁部10に締付け固定される。なお、連結部21bも突出部21cと同様に径方向外側に突出しており、これら連結部21bおよび突出部21cから張出突出部22が構成される。
一対の連結部21b,21bと突出部21cとは、周方向に所定の間隔をおいて交互に配置されている。ここでは60度おきに、三つの一対の連結部21b,21bと三つの突出部21cとが交互に配置されている。すなわち、環状バンド21には60度おきに張出突出部22が設けられている。なお、環状バンド21における各張出突出部22の周方向の位置は等間隔でなくてもよい。
帯板21aは、ステンレスや、亜鉛メッキを施した鉄板などにより形成されるとよい。また、本実施形態では、三枚の帯板21aを連結して環状バンド21を形成しているが、一枚又は二枚の帯板21aにより環状バンド21を形成するように構成してもよく、四枚以上の帯板21aを連結して環状バンド21を形成するようにしてもよい。また、本実施形態では、張出突出部22は全部で六個が形成されるようになっているが、張出突出部22の数はこれに限定されない。
例えば、三枚の帯板21aで環状バンド21を構成する場合、各帯板21aに二つ以上の突出部21cを形成して、張出突出部22の総数を六個以上としてもよいし、また例えば、二枚の帯板21aで環状バンド21を構成する場合、各帯板21aに一つの突出部21cを形成して、張出突出部22の総数を六個未満としてもよい。また例えば、一枚の帯板21aで環状バンド21を構成する場合、張出突出部22の総数を任意に設定するとよい。
浮上抑制体30は、マンホール1や張出体20とは別体であり、図1,図3および図4に示すように、フレーム31と重錘部材(重量物)35とを備えて構成されている。
フレーム31は鉄製であり、内枠部32と外枠部33と受部34とを有している。内枠部32と外枠部33と受部34とは一体化して形成されている。
内枠部32は、マンホール1と接触しないようにマンホール1の径よりも大きい径であり、尚且つ、張出体20の最外径(張出突出部22の先端を結んで仮想的に描かれる円の径)よりも小さい径の環状に形成されている。また、所定の高さを有するように形成されている。さらに、内枠部32の周面には、外枠部33に直面する所定の範囲を避けて、周方向に適宜の間隔を空けて複数の開口部32aが形成されている。内枠部32の外枠部33に直面する所定の範囲とは、ここでは外枠部33に接触する接触部分であり、平面状に形成されている。この接触部分で内枠部32と外枠部33とが連結される。
開口部32aはここでは矩形状に形成されているとともに、上記所定の範囲を避けて周方向に60度おきに6カ所に設けられている。内枠部32における開口部32aの周方向の位置と張出体20における張出突出部22の周方向の位置とは一致しており、各開口部32aに張出突出部22が挿通されて、内枠部32と張出体20とが係合するようになっている。したがって、張出体20における張出突出部22の配置位置や個数が変更されれば、開口部32aの位置もそれに合わせて変更される。
外枠部33は、上面視で矩形状に形成され、その中心部に内枠部32が配置されている。詳しくは、外枠部33は、長辺をなす一対の側壁と短辺をなす一対の側壁とを有し、底面および上面を欠いた上面視で矩形状の箱型に形成されている。外枠部33の短辺の長さは内枠部32の直径にほぼ等しくなるように設計され、外枠部33の長辺の中央部と内枠部32の外周面の一部とが接した状態で、内枠部32の径方向外側に外枠部33が配置されている。本実施形態では、上述のように、外枠部33に接する内枠部32の接触部分を平面的に形成して接触面積(連結面積)を確保している。内枠部32は溶接により外枠部33に固定されて連結されていることが好ましい。また、外枠部33も内枠部32と同様に所定の高さを有するように形成されており、好ましくは、外枠部33の高さは内枠部32の高さに一致させるとよい。
受部34は、外枠部33の下端から内側に向かって延びるフランジ状に形成されている。受部34は、例えば、所定幅の長板部材を外枠部32の下端に溶接したり、あるいは外枠部33の下端を内側に折り曲げたりすることによって形成される。この受部34に重錘部材35が載置され、受部34は重錘部材35を支持する機能を果たす。さらに、本実施形態の内枠部32の開口部32aには、径方向外側に向かって延びる屋根部32bが設けられている。この屋根部32bも受部34と同様に、重錘部材35を支持する受部としての機能を果たす。
重錘部材35は、コンクリート製の重量物であり、フレーム31の形状に合わせて予め成型されている。詳しくは、内枠部32と外枠部33とが囲繞するスペース内に収納可能な形状に予め成型されている。そして、受部34に支持された状態でフレーム31内に配設される。
重錘部材35は、充分な重量と強度を有する厚さに形成され、且つ、その上面を受圧面35aとする。浮上抑制体30は、この受圧面35aが地面に露出しない深さに配置される。受圧面35aは、上載される土砂(埋め戻し土)によって充分な荷重を受けるとともに、マンホール1の浮き上がりを抑制可能な流体抵抗を受ける。そのために、受圧面35aは、相応の上面投影面積を持つように形成する。この上面投影面積は例えば約2.0m2乃至4.0m2となることが好ましい。
また、重錘部材35は、浮上抑制体30が充分な重量と強度を有するように、少なくとも20cm乃至30cm程度の厚さに形成されるとともに、重錘部材35を含む浮上抑制体30の全体の質量が1000kg以上2000kg未満となることが好ましい。
重錘部材35には、内枠部32の形状に沿って、弧状の部分が形成されている。この弧状の部分の径は、内枠部32の径よりも大きく、且つ、張出体20の最外径よりも小さくなるように形成されている。
また、重錘部材35の下面側の張出突出部22に対応する位置には、凹状の収容部35bが形成されている。図5に示すように、収容部35bの高さは、張出突出部22の高さよりも十分に大きく形成されている。本実施形態の張出体20および浮上抑制体30がマンホール1の外周に設置された場合、定常時は収容部35b内に挿入された張出突出部22は重錘部材35に接触せず、一方、地震等の異常時には収容部35bの天井面と張出突出部22の上面とが屋根部32bを挟んで当接して、重錘部材35の重量が張出体20に作用し、マンホール1の浮き上がりが抑制される。
なお、重錘部材35は、地下水や液状化した地盤により生じる浮力に対抗しうる単位体積重量を有する材質であればよく、材質は前述のコンクリートに限定されない。本実施形態のコンクリートの単位体積重量は23.0kN/m3とする。
また、特に図示しないが、前述の収容部35bおよび開口部32aに替えて、重錘部材35の弧状の部分の下部に弧状の収容用段部を形成するとともに、内枠部32の下部に弧状の収容用開口部を形成してもよい。このように各重錘部材35の下面側に弧状の段差を形成することで、浮上抑制体30と張出突出部22とが、上下方向に加えて周方向にも係合可能となる。
また、本実施形態では重錘部材35の受圧面35aは平らに形成しているが、凹凸を形成したり、円弧の中心側に向かって低く傾斜して形成したりしてもよい。また、重錘部材35の下面側を収容部35b等のない単純な平面とし、張出突出部22の上面と係合させることも可能である。また、本実施形態では、内枠部32と外枠部33とに囲繞されたスペースが二つに分断されていることに対応して、その分断されたスペースの形状に合致するように二個の重錘部材35を成型するようにしているが、図6に示すように、各重錘部材35をさらに複数個に分割した構成としてもよい(図6には二個の重錘部材35のうちの一つのみを図示している)。この場合、複数の分割片35kを並べて上記スペースに収容する。各分割片35kの形状は例えば短冊状であれば持ち運びしやすく、また保管の面でも有利である。なお、図6においては、一の重錘部材35を六個に分割しているが、分割数はこれに限定されるものではない。また、分割片35kの形状も短冊状に限定されるものではない。
次に、図1および図5を用いて本実施形態の浮上防止構造の詳細について説明する。図5は、本実施形態の浮上防止構造の要部拡大断面図である。
浮上抑制体30は、直壁部10に固定した張出体20の張出突出部22の上方を少なくとも覆うようにして、地盤を固めて形成した支持部S1上に配置される。張出突出部22の上面と浮上抑制体30の下面(ここでは、重錘部材35の収容部35bに挿入された内枠部32の屋根部32bの下面)との間には、隙間G1が形成されるようにする。この隙間G1により、定常時は、浮上抑制体30や上方の埋め戻し土の荷重が張出体20に作用しないようになっている。
また、浮上抑制体30を張出体20の上方を覆うように支持部S1上に配置したときに、マンホール1と浮上抑制体30の内枠部32との間に径方向の隙間G2が空くともに、マンホール1に固定した張出体20の張出突出部22と浮上抑制体30の重錘部材35の収容部35bの奥側面との間に径方向の隙間G3が空くように設定されている。
隙間G2,G3は、地震時の振動(横揺れ)によるマンホール1の慣性力が増加することを抑制する。隙間G2には、ゴムやスポンジやウレタンなどの弾性材料により形成されたパッキン材50が取り付けられる。このパッキン材50によって、隙間G2から埋め戻し土が侵入することを防止できるとともに、地震時の揺れにより浮上抑制体30とマンホール1が直接衝突して破損することを防止することができる。
なお、特に図示しないが、隙間G1に空隙維持部材が挿入されるようにしてもよい。つまり、張出体20における張出突出部22の上面を覆うように空隙維持部材を設置するようにしてもよい。空隙維持部材は、弾性材料によって例えば断面コ字状に形成され、その凹部に張出突出部22を収容するように固定される。
空隙維持部材は弾性変形可能となっており、隙間G1に挿入された状態であっても浮上抑制体30や張出体20に不必要な外力が発生しない。一方で、マンホール1が浮上しようとして上下方向の外力が加わると空隙維持部材は完全に収縮して、隙間G1が詰められ、浮上抑制体30と張出体20とが実質的に接触して、マンホール1の浮上を確実に抑制する。この際、空隙維持部材が浮上抑制体30と張出体20の接触時の衝撃を吸収できるので、マンホール1に対して衝撃が加わることを抑制することができる。また、空隙維持部材の存在によって、浮上抑制体30の損傷も低減することができる。さらに、隙間G1に土砂が流入しようとしても、空隙維持部材によって排除されて、上記パッキン材50と空隙維持部材の双方を活用することで、一層確実に、隙間G1〜G3に対する土砂の流入を防止することが可能となる。
次に、本実施形態の浮上防止構造の施工手順(浮上防止方法)を、直壁部10の外径が約105cmのマンホール(例えば1号マンホール)に適用した場合について、図1を参照して説明する。施工は、掘削工程→張出体設置工程→浮上抑制体設置工程→埋戻工程の順に進められる。
まず、設置されているマンホール1の周囲の地面Grを掘り起こして、マンホール1の直壁部10を露出させる(掘削工程)。マンホール1の周囲などを掘り起こす場合、一般的には方形の坑を掘削する。ここでは、マンホール1の周囲に、浮上抑制体30の大きさよりも大きい長方形の坑を掘削する。この坑の掘り起こす深さは120cm程度までとする。これにより、坑ではマンホール1の直壁部10が露出する。
直壁部10が露出したら、掘り起こした坑の底面である地盤を平らにならし、充分に締め固めて支持部S1を形成する。その後、張出体20を支持部S1上に載置してマンホール1に固定する。具体的には、支持部S1上において、帯板21aを連結して環状バンド21を形成し、ボルト23およびナット24により直壁部10に締付固定する。このとき、張出突出体22はマンホール1から半径方向外側に5cm乃至15cmほど拡張しており、このような張出突出体22が後から設置する浮上抑制体30に干渉しないように、現場の状況に応じて正確に位置決めしておく(張出体設置工程)。
なお、特に図示しないが、張出体20を直壁部10に取り付ける際に、環状バンド21と直壁部10との間にゴム板などの弾性部材(図示略)を挟むようにして取り付けてもよい。弾性部材を介することで、簡便な方法により、環状バンド21を確実に締付固定して、マンホール1とのずれを防止することができる。
張出体20を設置した後、さらに支持部S1上に浮上抑制体30を設置する。具体的には、まずフレーム31を、マンホール1および張出体20に直接接触しないように隙間G2を空けて支持部S1上に設置し、次いでフレーム31内に重錘部材35を設置し、浮上抑制体30を形成する。このとき、図7に示すように壁等の埋設障害物60がマンホール1に近接している状況であれば、フレーム31の直線的な任意の壁面を埋設障害物60に接近させてフレーム31を設置するとよい。特に埋設障害物60が障害壁であれば、障害壁とフレーム31の直線的な任意の壁面とが平行になるようにフレーム31を設置するとよい(浮上抑制体設置工程)。
例えば、マンホール1の直壁部10の外径が約105cmの1号マンホールの場合、浮上抑制体30の受圧面35aが少なくとも地面より80cm程度の深さになるように配置する。また、浮上抑制体30とマンホール1および張出体20との間に数cmの隙間G1〜G3が空くようにする。この際、充分に締め固めた支持部S1により、浮上抑制体30が沈下するのを防止するとともに、浮上抑制体30の高さ位置(深さ位置)を規定することができる。重錘部材35の下面側に凹凸を形成しておくと、締め固めた土砂又は砕石からなる支持部S1とかみ合って、浮上抑制体30の設置時の安定性が向上する。
最後に、埋め戻し土や下層路盤、上層路盤などを、それぞれ充分に締め固めながら順に埋め戻す(埋戻工程)。埋め戻し作業の際には、浮上抑制体30と直壁部10との間の環状の隙間G2にパッキン材50を挿入する。これにより、埋め戻し土などが隙間G2に侵入しないようにする。
また、特に図示しないが、隙間G2等への土砂流入防止構造として、浮上抑制体30の上にシート状の土砂保持具を設けてもよい。土砂保持具は、不織布等の布体や繊維網等の網体などのシート状体により形成する。この土砂保持具により、埋め戻し土の隙間G1〜G3への流入を防止することが可能になる。
なお、張出突出部22に対して空隙維持部材を設置する場合には、張出体設置工程と浮上抑制体設置工程との間に、張出突出部22に対して空隙維持部材を設置する空隙維持部形成工程を実施するとよい。この工程では、空隙維持部材は断面コ字形状となっているので、張出突出部22の上面に簡単に嵌め込むことができる。
上述のように構成された本実施形態のマンホールの浮上防止構造および浮上防止方法によれば、次のような効果を奏することができる。
図7に示すように、マンホール1に近接して壁等の埋設障害物60があったとしても、浮上抑制体30は、内枠部32と外枠部33とを連結したフレーム31内に別体の重錘部材35を充填する構成であるので、内枠部32と外枠部33とが接触して連結する接触連結部分において、従来とは異なって、マンホール1に施工した際にマンホール1の大きさから大きく外れて突出することのない部分を確保することができ、この接触連結部分を障害埋設部60に接近させるようにして浮上抑制体30を配設することができる。特に、フレーム31の外枠部33の内枠部32との接触連結部分は直線的に形成されているので、例えば埋設障害物60が障害壁である場合、接触連結部分を含む外枠部33の壁面を障害壁に対して平行となるように配置し、浮上抑制体30をマンホール1の外周を覆うように設置することが可能となる。したがって、現場作業員がマンホール1の周囲の状況に合わせて浮上抑制体30の設置状態を決めることが可能となるので、適応性を向上させ、浮上抑制体30の設置可能場所を増大させながら、地震等の異常時のマンホール1の浮き上がりを防止することができる。
このとき、浮上抑制体30の重量と、浮上抑制体30の受圧面35aに上載される土砂の荷重などの力により、マンホール1の浮き上がりを防止することができる。
また、受圧面32に上載した土砂が液状化して上載土砂による荷重が減少し、浮上抑制体30が浮き上がろうとしても、所定の上面投影面積を有する重錘部材35の受圧面35aが流体抵抗を受けて浮き上がりを防止することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態のマンホールの浮上防止構造および浮上防止方法について、図8および図9を用いて説明する。本実施形態は、浮上抑制体のフレームを可動式に構成する点で第1実施形態と異なっている。第1実施形態と同様の構成(例えば、張出体20の構成)については説明を適宜に省略する。
図8に示すように、本実施形態の浮上抑制体130のフレーム131は第1実施形態のフレーム31と同様に鉄製であり、内枠部132と外枠部133と受部(図示略)とを有している。フレーム131は、内枠部132と外枠部133とが相対的に移動するように構成されている点で第1実施形態と異なっている。本実施形態の受部の構成は第1実施形態の受部34の構成と同様である。
内枠部132は、マンホール1と接触しないようにマンホール1の径よりも大きい径であり、尚且つ、張出体20の最外径よりも小さい径の環状に形成されている。また、所定の高さを有するように形成されている。さらに、内枠部132の周面には、張出体20の張出突出部22に対向する位置に開口部(図示略)が形成されている。各開口部は例えば矩形状に形成されており、各開口部に張出体20の張出突出部22が挿通されて、内枠部132と張出体20とが係合する。
外枠部133は上面視で矩形状に形成され、その中心部に内枠部132が配置されている。また、外枠部133の短辺の長さは、内枠部132の直径よりもわずかに大きくなるように設計されている。
本実施形態の特徴として、内枠部132における、外枠部133の長辺をなす壁面に対向する部分132dは平面状に形成され、この平面状の部分(平壁面部)132dの上縁にガイド部材137が取り付けられている。平壁面部132dは、外枠部133に密接していてもよいし、わずかに隙間を空け、ほぼ接触した当接状態としてもよい。
図9に示すように、ガイド部材137は断面L字状の部材で形成され、内枠部132の平壁面部132dとともにコ字状のガイド部を構成している。このコ字状のガイド部を外枠部133の長辺をなす壁面の上縁133uに嵌めた状態で、ガイド部材137が上縁133uに沿って外枠部133の長辺方向に案内され、内枠部132と外枠部133とが相対的に移動可能となっている。
なお、ここでは平壁面部132dとガイド部材137と外枠部133の上縁133uとからガイド構造を形成しているが、ガイド構造はこれに限定されるものではなく、内枠部132と外枠部133とが相対的に移動する構造であればどのような構造であってもよい。例えば、外枠部133の長辺をなす壁面に、長辺の長さ方向に延びる長尺状のガイド部材(例えば、レールや溝)を設け、一方、内枠部132の外周壁には、上記ガイド部材に嵌合する被ガイド部材(例えば、凸部)を設け、内枠部132の被ガイド部材が外枠部133のガイド部材に案内されて移動することで、内枠部132と外枠部133の相対位置が変化するようにしてもよい。ガイド構造は、内枠部132と外枠部133とを連結する機能を果たしている。
外枠部133も内枠部132と同様に所定の高さを有するように形成されており、好ましくは、外枠部133の高さは内枠部132の高さに一致させるとよい。
受部は、第1実施形態の受部34と同様に外枠部133の下端から内側に向かって延びるフランジ状に形成され、外枠部133と一体化している。また、内枠部に形成された開口部に屋根部を設け、この屋根部も受部として機能させる。
さらに、本実施形態では、重錘部材135を複数個に分割された分割片で構成する(図6に示す重錘部材35の構成を参照)。
本実施形態の浮上防止構造の施工手順(浮上防止方法)を、直壁部10の外径が約105cmのマンホール(例えば1号マンホール)に適用した場合について説明する。施工は、掘削工程→張出体設置工程→浮上抑制体設置工程→埋戻工程の順に進められる。
まず、設置されているマンホール1の周囲の地面Grを掘り起こして、マンホール1の直壁部10を露出させる(掘削工程)。直壁部10が露出したら、掘り起こした坑の底面である地盤を平らにならし、充分に締め固めて支持部S1を形成する。その後、張出体20を支持部S1上に載置してマンホール1の直壁部10に固定する(張出体設置工程)。
張出体2をマンホール1に固定した後、さらに支持部S1上に浮上抑制体130を設置する(浮上抑制体設置工程)。具体的には、まずフレーム131を、内枠部132がマンホール1および張出体20に直接接触しないように隙間G2を空けて支持部S1上に設置する。次いで、マンホール1の周囲の状況(例えば、壁等の埋設障害物60の形状・位置)に応じて、ガイド構造を利用して外枠部133を内枠部132に対して移動させ、内枠部132に対する外枠部133の位置を決定する。次いで、フレーム131内に重錘部材135の分割片を順次設置して、浮上抑制体130を形成する。このとき、重錘部材135は分割片で構成されているので、内枠部132と外枠部133とに囲繞されるスペースの大きさが変形しても、そのスペース内に重錘部材135をぴったりと充填することが可能となっている。
最後に、埋め戻し土や下層路盤、上層路盤などを、それぞれ充分に締め固めながら順に埋め戻す(埋戻工程)。埋め戻し作業の際には、浮上抑制体130と直壁部10との間の弧状の隙間G2にパッキン材50を挿入する。これにより、埋め戻し土などが隙間G2に侵入しないようにする。
また、特に図示しないが、隙間G2等への土砂流入防止構造として、浮上抑制体130の上にシート状の土砂保持具を設けてもよい。さらに、張出突出部22に対して空隙維持部材を設置する場合には、張出体設置工程と浮上抑制体設置工程との間に、張出突出部22に対して空隙維持部材を設置する空隙維持部形成工程を実施するとよい。
上述のように構成された本実施形態のマンホールの浮上防止構造および浮上防止方法によれば、次のような効果を奏することができる。
フレーム131の内枠部132と外枠部133とが相対的に移動可能に構成されているので、現場作業員が現場のマンホール1の周囲の状況に合わせてフレーム131の形状を変形させることができ、適応性に非常に優れているという利点がある。また、重錘部材135が分割されているので、変形したフレーム131の形状に良好に追従することができるという利点がある。さらに、変形したフレーム131の形状に合わせて様々な形状の重錘部材135を用意しておく必要がなく、コストを抑制できるという利点がある。
なお、本実施形態において、重錘部材135を分割片で構成しなくてもよい。例えば、フレーム131の形状を定めた後に、現場でコンクリートを打って、フレーム131の形状に合致する重錘部材135を作製することが可能である。この場合でも、様々な形状の重錘部材135を用意しておく必要がなく、コストを抑制できるという利点がある。
(第3実施形態)
第3実施形態のマンホールの浮上防止構造および浮上防止方法について、図10を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して浮上抑制体の重錘部材の構成が異なっている。第1実施形態と同様の構成(例えば、張出体20の構成やフレーム231の構成)については説明を適宜に省略する。
本実施形態の浮上抑制体230は、フレーム231と重錘部材(重量物)235とを備えて構成されている。フレーム231は第1実施形態のフレーム31と同様に鉄製であるとともに同様の構成であり、内枠部(図示略)と外枠部233と受部234とを有している。内枠部と外枠部233と受部234とは一体化して形成されている。
重錘部材235は、鉄板等の板部材236を備えて構成されている。板部材236は受部234に支持される。本実施形態では、第1実施形態のようにコンクリート製の重錘部材を備えず、板部材236に上載される土砂(埋め戻し土)237と板部材236とが重錘部材として機能する。
上述のように構成された本実施形態のマンホールの浮上防止構造および浮上防止方法によれば、次のような効果を奏することができる。
重錘部材235として板部材236を備えれば、板部材236に上載される土砂を重錘部材として利用することができるので、コンクリート製の重錘部材を用意する必要がなく、コストを抑えることができるという利点がある。
なお、受部234に板部材236を支持する構成ではなく、フレーム231にフランジ状の受部234を設けずに、フレーム231の底面全面を覆う底板を新たに設ける構成としてもよい。この場合にも、底板を土砂237の重量を受ける受部として機能させて、底板に上載される土砂(埋め戻し土)237を重錘部材として機能させることができる。
また、板部材236を金網等の網状部材に変えても良い。この場合には、土砂(埋め戻し土)237を重錘部材235として利用するときは、土砂を布袋に詰めて土嚢とするとよい。
ただし、本実施形態およびその変形例において、重錘部材235として第1実施形態と同様にコンクリート製のブロックを利用するようにしてもよい。
以上、本発明の各実施形態のマンホールの浮上防止構造および浮上防止方法について説明したが、本発明のマンホールの浮上防止構造および浮上防止方法は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。
例えば、第1実施形態において、コンクリート製の重錘部材35に弧状部分を形成したが、図11に示すように、上面視で単純な矩形状に形成してもよい。重錘部材35が弧状部分を備えていれば、張出体20の各張出突出部22の上方を重錘部材35が覆うことができるので、マンホール1に浮力が生じた場合、それを抑制する力の作用点が多いという利点がある。しかしながら、各張出突出部22は内枠部32の開口部32aに挿入されて内枠部32と係合しているので、各張出突出部22は内枠部32から浮力を抑制されるため、単純な矩形状に形成していても十分である。重錘部材35が単純な矩形状であれば、コンクリート製の重錘部材35の製造が容易になるという利点がある。また、図6に示すように重錘部材35を複数の分割片35kで構成する場合、全てを同一形状に揃えることが可能となるので、製造や保管の点で非常に優れているとい利点がある。
また、例えば第1実施形態において、浮上抑制体30のフレーム31を矩形状に形成したが、図12(a)〜(e)に示すように様々な形状に形成してもよい。つまり、少なくとも、フレームの互いに連結する内枠部と外枠部とがマンホール1の輪郭形状から大きく外れて突出しない部分を確保する形状に設定されていればよく、さらには、外枠部と内枠部との接触連結部分を含む一部分が直線的に形成されていればより好ましく、図12(a)に示すようにフレーム31′の外枠部33′を十字形状に形成したり、図12(b)に示すようにL字形状に形成したり、図12(c)に示すようにT字形状に形成したり、図12(d)に示すように直線と曲線とを組み合わせたD字形状に形成したり、図12(e)に示すように曲線のみからなる楕円形状に形成したりしてもよい。フレームと重錘部材とを別体に形成するので、フレームの形状の設計自由度が高く、重錘部材もフレーム内に収納されるかたちをとるので、重錘部材にも制限が少なく、マンホール1の周囲の状況に合わせてフレームの形状を決定することで、壁等の埋設障害物60がマンホール1に近接している状況であっても、埋設障害物60に対してフレーム31′の例えば接触連結部分を接近させることで、浮上抑制体を設置することができる。
また、例えば第2実施形態において、図13に示すように、内枠部132′を2分割して、分割片132k′のそれぞれが個別に移動するようにしても良い。このようにすれば、マンホール1の径の大きさが想定よりも多少異なっている場合も許容して浮上抑制体130′を設置することができる。
また、上記実施形態や各変形例で説明した構成を適宜に組み合わせてもよい。例えば、図12(a)〜(e)に示す様々な形状で構成されたフレームに対して、第2実施形態における内枠部と外枠部とが相対移動可能なガイド構造を適用してもよい。