以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物は、248nm以下の波長で使用することが可能であるが、好ましくは、193nmのArFレーザ光で使用されるものとして説明する。
本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物は、下記一般式(1)と(2)で表される繰り返し単位を有するシロキサンポリマー成分を含有することを特徴とする。
[式(1)と(2)の中で、Phはフェニル基を表す。Arはナフチル基、アントラセン基、またはフェナントレン基を表す。R
1、R
2は、それぞれ独立して水素原子または1価の有機基を示す。また、複数のR
1同士、及びR
2同士が異なっていてもよい。a、bはそれぞれ0、1、または2である。]
前記シロキサンポリマー成分は、フェニル基を有する式(1)の繰り返し単位と、ナフチル基、アントラセン基、またはフェナントレン基を有する式(2)の繰り返し単位を含有するため、反射防止膜としての機能を有し、且つレジストとの良好なマッチング特性を得ることができる。
より詳しくは、フェニル基、ナフチル基、アントラセン基、フェナントレン基を有することで、レジスト下層膜としたときに酸素系プラズマに対するエッチング耐性を向上させることができる。さらに、フェニル基を有することで、ArFレーザの193nmの波長に対する光吸収を良好にすることができる。また、ナフチル基、アントラセン基、フェナントレン基を有することで、レジストとの良好なマッチングを得ることができる。これらの中でも、シロキサンポリマー成分のSi含有率を最も高くできるナフチル基が好ましい。Si含有率が高いというのは、レジスト下層膜の無機性が高まるということであり、有機膜に対するエッチング選択性を大きくできるので好ましい。
シロキサンポリマー成分全体に対して、式(1)の繰り返し単位の割合は、0.45〜86モル%の範囲であり、式(2)の繰り返し単位の割合は、3.6〜55モル%の範囲である。各構成単位がこの範囲内であると、十分な反射防止機能を有し、且つ、垂直性の高い良好なパターンを形成できるレジスト下層膜組成物が得られる。
好ましくは、式(1)の繰り返し単位の割合が1〜73モル%の範囲であり、式(2)の繰り返し単位の割合が9〜50モル%の範囲である。さらに好ましくは、式(1)の繰り返し単位の割合が2〜64モル%の範囲であり、式(2)の繰り返し単位の割合が13〜40モル%の範囲である。
式(1)において、a、bの値が0であると、ラダー骨格を形成でき、レジスト下層膜の硬化性を高められるので好ましい。また、シロキサンポリマー成分のSi含有率を高く維持でき、レジスト下層膜の無機性を高め、有機膜に対するエッチング選択性を大きくできるので好ましい。R1、R2が水素原子である場合も、Si含有率を高く維持できるので好ましい。またSi−H結合は架橋サイトとして機能し、膜の硬化性を向上させることができると考えられる。
R1、R2が1価の有機基である場合、本発明の効果が得られるのであれば、特に限定されないが、PhとArが嵩高い官能基であるので、たとえば、炭素数1〜5の直鎖・分岐状アルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルコキシ基のような立体的に小さな置換基が好ましい。これらのうち、R1、R2がヒドロキシル基を含む場合、前記式(1)、(2)で表される繰り返し単位全体のうちそれぞれ40モル%以下とすると、レジスト下層膜形成用組成物のゲル化を防ぐことができるので好ましい。また、前記シロキサンポリマー成分全体に対しても、ヒドロキシル基を有する繰り返し単位を40モル%以下とすることが、同様の理由から好ましい。
また、1価の有機基として、例えば、架橋可能な1価の有機基も挙げることができる。架橋可能な1価の有機基としては、エポキシ基やオキセタニル基を含有した有機基が挙げられる。架橋基があると、下層膜の硬化性を高めることができるので好ましい。
また、前記シロキサンポリマー成分は、さらに下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
[式(3)中、Meはメチル基を表す。R
3は独立して、水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、架橋可能な1価の有機基、または,ヒドロキシル基、ポリエーテル基、カルボニル基、エステル基、ラクトン基、アミド基、エーテル基、及びニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する1価の有機基を表す。また、複数のR
3同士が異なっていてもよい。cは0、1、または2である。]
メチル基は、水素原子の次にSi含有率を高く維持できる有機基なので好ましい。また、Si−H結合からなる樹脂はアルカリ現像液に溶けやすい性質をもつが、Si−Me結合からなる樹脂はアルカリ現像液に溶けにくい性質をもつ。よって、前記シロキサンポリマー成分が前記式(3)を含むと、レジスト膜をアルカリ現像する際、レジスト下層膜の耐アルカリ現像液性を向上させることができるので好ましい。十分な耐アルカリ現像液性をもつことにより、レジスト層の現像時にレジスト下層膜が損傷するのを防ぐことができ、エッチング後に得られる基板上のパターン形状を良好(矩形)にすることができる。
式(3)において、cは0であると、ラダー骨格を形成でき、レジスト下層膜の硬化性を高められるので好ましい。また、シロキサンポリマー成分のSi含有率を高く維持でき、レジスト下層膜の無機性を高め、有機膜に対するエッチング選択性を大きくできるので好ましい。R3が水素原子である場合も、Si含有率を高く維持できるので好ましい。またSi−H結合は架橋サイトとして機能し、膜の硬化性を向上させることができると考えられる。R3のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖・分岐状アルキル基であると好ましい。R3が水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基であると、構成単位間の合成上のバランスがとりやすくなるので好ましい。R3が架橋可能な1価の有機基であると、下層膜の硬化性を高めることができるので好ましい。架橋可能な1価の有機基としては、エポキシ基やオキセタニル基を含有した有機基が挙げられる。
また、R3がヒドロキシル基、ポリエーテル基、カルボニル基、エステル基、ラクトン基、アミド基、エーテル基、及びニトリル基よりなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する1価の有機基であると、レジストパターン形状の垂直性を高められるので好ましい。R3がヒドロキシル基を含む場合、前記式(3)で表される繰り返し単位全体のうち、R3がヒドロキシル基である繰り返し単位の割合を40モル%以下とすると、レジスト下層膜形成用組成物のゲル化を防ぐことができるので好ましい。
式(3)の繰り返し単位は、全シロキサンポリマー成分に対し、7.2〜91.5モル%の範囲になることが、上述のSi含有率の点と耐アルカリ現像液性の点から、好ましい。
また、前記シロキサンポリマー成分は、さらに下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
[式(4)中、R
3は上述の通りである。また、複数のR
3同士が異なっていてもよい。dは0、1、または2である。]
水素原子を含む繰り返し単位は、シロキサンポリマー成分中のSi含有率を高く維持でき、レジスト下層膜の無機性を高められ、有機膜に対するエッチング選択性を大きくできるので好ましい。また、Si−H結合は架橋サイトとして機能し、膜の硬化性を向上させることができると考えられる。
式(4)において、dが0であると、ラダー骨格を形成でき、レジスト下層膜の硬化性を高められるので好ましい。また、Si含有率を高く維持できるので好ましい。R3は上述の通りであり、R3がヒドロキシル基を含む場合、前記式(4)で表される繰り返し単位全体のうち、R3がヒドロキシル基である繰り返し単位の割合を40モル%以下とすると、レジスト下層膜組成物のゲル化を防ぐことができるので好ましい。
式(4)の繰り返し単位は、全シロキサンポリマー成分に対し、0.45〜86モル%の範囲になることが、上述のSi含有率の点から好ましい。
また、前記シロキサンポリマー成分は、さらに下記一般式(5)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
[式(5)中、R
3は上述の通りである。Rは、エステル基及びポリエーテル基から選択される少なくとも1つの官能基を有する1価の有機基を表す。また、複数のR
3同士が異なっていてもよい。eは0、1、または2である。]
Rを含む繰り返し単位を有することで、本発明に係るレジスト下層膜がレジスト膜との密着性を高めることができるので好ましい。Rは、エステル基およびポリエーテル基から選択される。エステル基は、少なくとも1つのエステル基を含有する有機基である。ポリエーテル基は下記式(6)のような構造である。
[式(6)中、aは2〜12、bは2〜6、cは2〜200であり、R’は水素原子、アルキル基、またはその他の有機基である。]
エステル基としては、たとえば、下記式(7)、(8)のようなものが好ましい。
ポリエーテル基としては、たとえば、下記式(9)〜(11)のようなものが好ましい。
式(5)において、eが0であると、ラダー骨格を形成でき、レジスト下層膜の硬化性を高められるので好ましい。また、シロキサンポリマー成分のSi含有率を高く維持でき、レジスト下層膜の無機性を高め、有機膜に対するエッチング選択性を大きくできるので好ましい。R3は上述の通りであり、R3がヒドロキシル基を含む場合、前記式(5)で表される繰り返し単位全体のうち、R3がヒドロキシル基である繰り返し単位の割合を40モル%以下とすると、レジスト下層膜組成物のゲル化を防ぐことができるので好ましい。
式(5)の繰り返し単位は、全シロキサンポリマーに対し、0.09〜86モル%の範囲になることが、上述の密着性向上の点から好ましい。
前記シロキサンポリマー成分中のシロキサンポリマーの質量平均分子量としては、300〜400,000の範囲であることが好ましい。上記範囲のシロキサンポリマーを用いることで、レジスト下層膜形成用組成物の成膜性、塗布性を向上させることができる。より好ましくは、500〜100,000である。
また、前記シロキサンポリマー成分は、前記式(1)で表される繰り返し単位を有するシロキサンポリマーAと、前記式(2)で表される繰り返し単位を有するシロキサンポリマーBと、を含有する混合物であることが好ましい。
前記シロキサンポリマーA、Bの混合物とすることで、本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物は、248nm以下の短波長露光に対する十分な反射防止機能と、レジスト膜との良好なマッチング特性とを有するレジスト下層膜を形成でき、且つ、前記シロキサンポリマー成分の調整をより簡便にできるので好ましい。
<シロキサンポリマーA>
シロキサンポリマーAは、前記式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする。前記式(1)の繰り返し単位の割合が、シロキサンポリマーA全体に対し、5〜95モル%の範囲になると、光吸収の機能を良好にし、レジスト下層膜としたときの酸素系プラズマに対するエッチング耐性を向上させることができるので好ましい。10〜50モル%の範囲になると、他の繰り返し単位とのバランスをとることもできるので、さらに好ましい。
また、前記シロキサンポリマーAは、さらに前記式(3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。前記式(3)の繰り返し単位は、シロキサンポリマーA全体に対し、5〜95モル%の範囲になることが、上述のSi含有率の点と耐アルカリ現像液性の点から、好ましい。10〜70モル%の範囲になると、他の繰り返し単位とのバランスをとることもできるので、さらに好ましい。
また、前記シロキサンポリマーAは、さらに前記式(4)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。前記式(4)の繰り返し単位は、シロキサンポリマーA全体に対し、5〜95モル%の範囲になることが、上述のSi含有率の点から好ましい。10〜70モル%の範囲になると、他の繰り返し単位とのバランスをとることもできるので、さらに好ましい。
また、前記シロキサンポリマーAは、さらに前記式(5)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。前記式(5)の繰り返し単位は、シロキサンポリマーA全体に対し、1〜95モル%の範囲になることが、上述の密着性向上の点から好ましい。5〜20モル%の範囲になると、他の繰り返し単位とのバランスをとることもできるので、さらに好ましい。
前記シロキサンポリマーAは、下記一般式(12)で表される繰り返し単位からなることが好ましい。
[式(12)中、Ph、Me、R、R
1、R
3は、上述の通りである。複数のR
1同士、R
3同士が異なっていてもよい。a、c、d、eは0、1、または2である。]
シロキサンポリマーA全体に対し、m、s、t、u(単位;モル%)の範囲はそれぞれ、mが5〜95、sが5〜95、tが5〜95、uが1〜95、m+s+t+u=100である。好ましい範囲は、それぞれ、mが10〜50、sが10〜70、tが10〜70、uが5〜20、m+s+t+u=100である。
シロキサンポリマーAとしては、たとえば、式(12)のa、c、d、eが0であり、m、s、t、uがそれぞれ、m=10〜25、s=15〜30、t=25〜55、u=5〜20であり、Rが式(7)で表される置換基であるものが挙げられる。または、式(12)のa、d、e、fと、m、s、t、uが上記の通りであり、Rが式(10)で表される置換基であるものが挙げられる。これらの構成から成るシロキサンポリマーAは、上述の反射防止機能、エッチング耐性、Si含有率、耐アルカリ現像液性、密着性の向上という効果に特に優れるので好ましい。
前記シロキサンポリマーAは、質量平均分子量が500〜400,000であることが好ましい。シロキサンポリマーAの質量平均分子量を上記範囲内とすることにより、レジスト下層膜形成用組成物の成膜性、塗布性を向上させることができる。より好ましくは、500〜100,000であり、さらに好ましくは、700〜10,000である。
シロキサンポリマーAは、式(1)〜(12)で表される繰り返し単位を誘導し得る各モノマーを加水分解して縮重合させることにより得られる。加水分解反応時における水の量は、モノマー1モルあたり0.2モル〜10モルであることが好ましい。各モノマーとしては、各繰り返し単位を誘導し得るアルコキシシラン類またはクロロシラン類が好適に用いられる。また、縮重合の際には、金属キレート化合物や有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基等の従来公知の触媒を適宜添加してもよい。
上記金属キレート化合物としては、テトラアルコキシチタン、トリアルコキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム等が挙げられる。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、スルホン酸、メチルスルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。有機塩基としては、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。無機塩基としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
シロキサンポリマーの繰り返し単位に、前述の架橋可能な1価の有機基を含む場合は、重合時に架橋反応が進行しないように、また、アルカリや金属の不純物を混入しないようにアンモニア、有機アミン類等の塩基性触媒を用いることが好ましい。なかでも、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを用いることが好ましい。また、架橋可能な1価の有機基として、エポキシ基やオキセタニル基が含まれている場合、それらを開環させないようにするには、系をpH7以上の雰囲気にすることが好ましい。これらの触媒は、1種或いは2種以上を併用することができる。
反応操作としては、まず、各モノマーを有機溶媒に溶解させ、水を添加し加水分解反応を開始させる。触媒は水に添加していても、有機溶媒中に添加しておいても良い。
反応時に用いる有機溶媒としては、水に難溶あるいは不溶のものが好ましい。具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びこれらの混合物等が好ましい。
次いで、触媒の中和反応を行い、有機溶媒層を分別して脱水する。水分の残存は、残存したシラノールの縮合反応を進行させてしまうためである。硫酸マグネシウム等の塩やモレキュラーシーブによる吸着法や、溶媒を除去しながらの共沸脱水法等、公知の脱水法が用いられる。
次いで、上記の水に難溶または不溶の有機溶媒を添加し、有機溶媒層を分別、水洗して加水分解縮合に使用した触媒を除去する。このとき、必要に応じて中和してもよい。最後に、分液した有機溶媒層を脱水することにより、シロキサンポリマーAが得られる。
<シロキサンポリマーB>
シロキサンポリマーBは、前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする。前記式(2)の繰り返し単位は、シロキサンポリマーB全体に対し、40〜60モル%の範囲になることが、上述の、レジスト下層膜としたときの酸素系プラズマに対するエッチング耐性の向上と、レジストとの良好なマッチングを得られるため好ましい。45〜55モル%の範囲であると、さらに好ましい。
また、前記シロキサンポリマーBは、さらに前記式(3)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。前記式(3)の繰り返し単位は、シロキサンポリマーB全体に対して30〜60モル%の範囲になることが、上述のSi含有率の点と耐アルカリ現像液性の点から、好ましい。45〜55モル%の範囲になると、さらに好ましい。
また、前記シロキサンポリマーBが、前記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位からなることが、シロキサンポリマーBを合成する際の簡便性の点から好ましい。前記シロキサンポリマーB全体に対して、式(2)、(3)の繰り返し単位の割合は、両方ともそれぞれ40〜60モル%の範囲であると、上述の、エッチング耐性、レジストとの良好なマッチング、Si含有率の維持、耐アルカリ現像液性の向上の点からも、好ましい。45〜55モル%の範囲であると、さらに好ましい。
シロキサンポリマーBは、シロキサンポリマーAと同様に、上記式(2)、(3)で表される繰り返し単位を誘導し得る各モノマーを加水分解させて重縮合することにより得られる。具体的な製造方法は上述の通りである。
シロキサンポリマーBの質量平均分子量は、300〜8,000であることが好ましい。シロキサンポリマーBの質量平均分子量を上記範囲内とすることにより、シロキサンポリマーAとの相溶性を良好にし、より緻密化したレジスト下層膜を形成できる。より好ましくは、500〜1,500である。
シロキサンポリマーBの含有量は、シロキサンポリマーA100質量部に対して、10質量部〜1,000質量部である。シロキサンポリマーBの含有量を、上記範囲内とすることにより、十分な反射防止機能を有し、且つレジスト膜との良好なマッチング特性を有するレジスト下層膜を形成できる。好ましくは、30質量部〜500質量部であり、さらに好ましくは、50質量部〜200質量部である。
<溶剤>
本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物は、溶剤を含有していてもよい。溶剤の種類は特に限定されず、従来公知の溶剤を用いることができる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等のアルコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコールのモノエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル(EL)等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロアルキルケトン、メチルイソアミルケトン等のケトン類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル(PGDM)、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のアルコールの水酸基を全てアルキルエーテル化させたアルコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のグリコールエーテルエステル類等が挙げられる。
上記溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶剤の使用量としては、シロキサンポリマー成分の質量の1〜100倍量が好ましい。溶剤の合計使用量をこの範囲内とすることにより、レジスト下層膜形成用組成物の塗布性を向上させることができる。より好ましくは、2〜20倍量である。
<架橋剤>
本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物は、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤を含有させることにより、レジスト下層膜の成膜性をより向上させることができる。架橋剤の種類としては特に限定されず、従来公知の架橋剤を用いることができる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物等が挙げられる。また、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、トリアクリルホルマール、グリオキザールや多価アルコールのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル等を用いることもできる。さらには、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリルのアミノ基の少なくとも2つがメチロール基または低級アルコキシメチル基で置換された、2個以上の反応性基を有する化合物等を用いることができる。
メラミンのアミノ基の少なくとも2つがメチロール基または低級アルコキシメチル基で置換された化合物としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1個〜6個がメトキシメチル化された化合物及びその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1個〜5個がアシロキシメチル化された化合物またはその混合物等が挙げられる。
尿素のアミノ基の少なくとも2つがメチロール基または低級アルコキシメチル基で置換された化合物としては、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメトキシエチルウレア、テトラメチロールウレアの1個〜4個のメチロール基がメトキシメチル基化された化合物またはその混合物等が挙げられる。
ベンゾグアナミンのアミノ基の少なくとも2つがメチロール基または低級アルコキシメチル基で置換された化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1個〜4個のメチロール基がメトキシメチル化された化合物またはその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1個〜4個のメチロール基がアシロキシメチル化された化合物またはその混合物等が挙げられる。
グリコールウリルのアミノ基の少なくとも2つがメチロール基または低級アルコキシメチル基で置換された化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1個〜4個がメトキシメチル基化された化合物またはその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1個〜4個がアシロキシメチル化された化合物またはその混合物が挙げられる。
上記架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤の使用量としては、シロキサンポリマー成分100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部が好ましい。より好ましくは、0.5質量部〜40質量部である。
<酸発生剤>
本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物は、酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤の種類としては特に限定されず、従来公知の酸発生剤を用いることができる。具体的には、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、ビススルホン誘導体、β−ケトスルホン誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体等を用いることができる。
オニウム塩としては、トリフロオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラフェニルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、エチレンビス[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート]、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等が挙げられる。また、好ましくは下記構造式のものが挙げられる。
ジアゾメタン誘導体としては、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
グリオキシム誘導体としては、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等が挙げられる。
ビススルホン誘導体としては、ビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、ビスベンゼンスルホニルメタン等が挙げられる。
β−ケトスルホン誘導体としては、2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等が挙げられる。
ジスルホン誘導体としては、ジフェニルジスルホン誘導体、ジシクロヘキシルジスルホン誘導体等のジスルホン誘導体等が挙げられる。
ニトロベンジルスルホネート誘導体としては、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート誘導体等が挙げられる。
スルホン酸エステル誘導体としては、1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等のスルホン酸エステル誘導体等が挙げられる。
N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体としては、N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−オクタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−クロロエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドp−トルエンスルホン酸エステル等が挙げられる。
上記酸発生剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。酸発生剤の使用量としては、シロキサンポリマー成分100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部が好ましい。酸発生剤の合計使用量をこの範囲内とすることにより、垂直性のよいレジストパターンを形成できる。より好ましくは、0.5質量部〜40質量部である。
<第4級アンモニウム化合物>
本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物は、さらに、第4級アンモニウム化合物を含有すると好ましい。第4級アンモニウム化合物を配合すると、レジスト下層膜上に形成するレジスト層の膜減りを防ぐことができ、形成されるレジストパターンの形状も良好になるので好ましい。第4級アンモニウム化合物としては、具体的には、下記の一般式(13)で示される第4級アンモニウム化合物であることが好ましい。
[式(13)中、Ra〜Rdは、それぞれ独立して炭化水素基であり、X
−はカウンターアニオンである。]
Ra〜Rdの「炭化水素基」としては、直鎖状、分岐状、あるいは環状の飽和又は不飽和の炭化水素基が挙げられる。なお、これらは置換基を有していてもよい。直鎖、分岐状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、メチレン基、エチル基、エチレン基、プロピル基、プロピレン基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、イソプロピレン基、第二ブチル基、第三ブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、第三オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
環状の炭化水素基としては、環状アルキル基又はアリール基が挙げられる。環状アルキル基としては、シクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、トリル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基等が挙げられる。
また、上記置換基としては、例えば、OH基、炭素数1〜3のアルコキシ基等が挙げられる。
中でも、Ra〜Rdの総炭素数が、10以上であるものが好ましい。上記のように総炭素数を10以上とすることにより、レジスト下層膜上に形成されたレジストパターンの裾引きを低減するとともに、パターン形状を改善することができる。また、Ra〜Rdの少なくとも1つが炭素数8以上の炭化水素基であることが好ましい。これにより、レジスト下層膜上に形成されたレジストパターンの裾引きをより一層低減することができる。また、上記Ra〜Rdの総炭素数は、25以下であるものが好ましい。これにより、裾引きをより一層低減することができる。
カウンターアニオンのX−としては、OH−、Cl−、Br−、F−、アルキルカルボン酸アニオン、アリールカルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオン等であることが好ましい。
また、第4級アンモニウム化合物の添加量は、シロキサンポリマー成分100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であると、レジスト下層膜上に形成するレジスト層の膜減りを防ぐことができ、形成されるレジストパターンの形状も良好になるので好ましい。0.1質量部〜5質量部であることがより好ましく、0.1質量部〜3質量部であることが最も好ましい。
<有機酸>
本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物は、さらに、有機酸を含有することが好ましい。この有機酸を添加することによって、第4級アンモニウム化合物の添加によるレジスト下層膜形成用組成物の経時劣化を防止することができる。
有機酸としては、有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸等が挙げられる。前記有機カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの脂肪族モノカルボン酸類;オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸類;乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のオキシカルボン酸類;安息香酸、マンデル酸、サリチル酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸類が、挙げられる。これらの有機酸としては、マロン酸が特に好ましい。
また、有機酸の添加量は、シロキサンポリマー成分100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であることが好ましい。添加量を0.01質量部以上にすることにより、レジスト下層膜形成用組成物の経時安定性をより向上させることができる。また、添加量を10質量部以下にすることにより、前記第4級アンモニウム成分に対する阻害を抑制することができる。
また、この有機酸成分と前記第4級アンモニウム化合物との質量比は、100:20〜100:60の範囲であることが好ましく、100:30〜100:50の範囲であることがより好ましい。この質量比の範囲にすることにより、レジスト下層膜上に形成されたレジストパターンの裾引きを低減し、パターン形状を改善するとともに、レジスト下層膜用組成物の経時安定性をより一層向上させることができる。
本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物は、シロキサンポリマー成分に、上記の溶剤、架橋剤、酸発生剤、第4級アンモニウム化合物、有機酸等を必要に応じて混合することにより得られる。得られたレジスト下層膜形成用組成物は、フィルター等で濾過することが好ましい。
<レジスト下層膜>
本発明に係るレジスト下層膜は、上記レジスト下層膜形成用組成物を用いて形成される。具体的には、基板等の被加工物上(好ましくは、基板上に形成された有機系ボトムレイヤー上)に、スピンコーターやスリットノズルコーター等を用いて上記レジスト下層膜形成用組成物を塗布した後、加熱乾燥することにより得られる。加熱は、一段階の加熱法または多段階の加熱法が採用される。多段階の加熱法としては、例えば、100℃〜120℃下で60秒〜120秒間加熱した後、200℃〜250℃下で60秒〜120秒間加熱することが好ましい。このようにして形成された本発明に係るレジスト下層膜の厚さは、好ましくは15nm〜200nmである。
本発明に係るレジスト下層膜は、3層レジストプロセスのような多層レジストプロセスの中間層として用いられるのが好ましい。本発明に係るレジスト下層膜を用いたパターン形成方法の一例について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1(a)に示すように、従来公知の有機系ボトムレイヤー形成用組成物をスピンコート法等により基板20上に塗布し、所定の温度でベークして有機系ボトムレイヤー26を形成する。次いで、この有機系ボトムレイヤー26上に、本発明に係るレジスト下層膜形成用組成物をスピンコート法等により塗布し、所定の温度でベークしてレジスト下層膜22を形成する。次いで、従来公知のレジスト組成物を上記と同様にスピンコート法等により塗布し、所定の温度でプリベークを行い(好ましくは、150℃〜300℃下で30秒〜300秒)、レジスト膜24(好ましくは、膜厚が100nm〜300nm)を形成する。
次いで、図1(b)に示されるように、露光、現像により所定のパターンが形成される。パターン形成されたレジスト膜24をマスクとして、レジスト下層膜22のエッチングを行い、レジストパターンをレジスト下層膜22に転写したのが図1(c)である。このときのエッチングガスとしては、CF系(CF4等)、Cl系(CCl4等)、SF系(SF6等)等が挙げられる。さらに、レジスト膜24及びレジスト下層膜22をマスクとして、有機系ボトムレイヤー26のエッチングを行い、レジストパターンを有機系ボトムレイヤー26に転写したのが図1(d)である。このときのエッチングガスとしては、O2系(O2/N2等)が挙げられる。なお、エッチングの際には、レジスト膜24も同時にエッチング除去されてもよい。最後に、レジスト下層膜22と有機系ボトムレイヤー26をマスクとして、基板20にパターンを転写したのが図1(e)である。このときのエッチングガスとしては、CF系(CF4等)、CHF系(CHF3等)、Cl系(CCl4等)、SF系(SF6等)等が挙げられる。なお、エッチングの際には、レジスト下層膜22も同時にエッチング除去されてもよい。
有機系ボトムレイヤー26は、基板20をエッチングするときのマスクとして作用するので、エッチング耐性が高いことが望ましい。また、上層のレジスト下層膜22とミキシングしないことが求められるため、スピンコート等で塗布した後に熱あるいは酸によって架橋することが望ましい。具体的には、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、カトールジシクロペンタジエンノボラック、アモルファスカーボン、ポリヒドロキシスチレン、(メタ)アクリレート、ポリイミド、ポリスルフォン等の樹脂を用いることが好ましい。
また、レジスト膜24の形成に用いるレジスト組成物としては、例えば、ベース樹脂と有機溶媒と酸発生剤との混合物のような従来公知のものを用いることができる。ベース樹脂としては、ポリヒドロキシスチレン及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメタクリル酸及びその誘導体、ヒドロキシスチレンとアクリル酸とメタクリル酸とそれらの誘導体から選択される共重合体、シクロオレフィン及びその誘導体とマレイミドとアクリル酸及びその誘導体から選択される3種以上の共重合体、ポリノルボルネン、及びメタセシス開環重合体よりなる群から選択される1種以上の高分子重合体が挙げられる。なお、ここでいう誘導体は、アクリル酸誘導体にはアクリル酸エステル等、メタクリル酸誘導体にはメタクリル酸エステル等、ヒドロキシスチレン誘導体にはアルコキシスチレン等が含まれるように、主要な骨格が誘導後に残存しているものを意味する。
また、KrFエキシマレーザ用のレジスト組成物としては、ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレン、スチレンのいずれか1種と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミドNカルボン酸エステルのいずれか1種との共重合体が挙げられる。また、ArFエキシマレーザ用のレジスト組成物としては、アクリル酸エステル系、メタクリル酸エステル系、ノルボルネンと無水マレイン酸との交互共重合系、テトラシクロドデセンと無水マレイン酸との交互共重合系、ポリノルボルネン系、開環重合によるメタセシス重合系が挙げられるが、これらの重合系ポリマーに限定されることはない。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
[シロキサンポリマーA]
本実施例では、下記式(14)に表されるような繰り返し単位を有するシロキサンポリマーを用いた。
[式(14)中、Rは、−(CH
2)
2−OC(O)Meであり、Meはメチル基を示す。カッコの外にある数字の単位はモル%である。]
具体的には、シロキサンポリマーAは、次のような手順に従って合成した。120gのPGMEAに、フェニルトリクロロシランを13.2g(0.0625モル)、トリクロロシランを10.2g(0.075モル)、メチルトリクロロシランを14.9g(0.1モル)、アセトキシエチルトリクロロシランを2.8g(0.0125モル)、添加して混合したものを窒素化で反応させた。反応後、その溶液に、200gのPGMEAと10g(0.555モル)の水の混合溶液を1時間かけて加えた。さらに20℃で1時間、攪拌させた。樹脂溶液は、40℃に設定したロータリーエバポレータで約10wt%に濃縮させた。約40gのエタノールをその樹脂溶液に加えた。再び、その溶液を約20wt%に揮散させた。さらに反応容器を換え、PGMEAを加えて10wt%に希釈した。その溶液を、0.2ミクロンのPTFEフィルターでろ過した。以上の工程により、シロキサンポリマーAを得た。このシロキサンポリマーAの分子量をGPCにより求めたところ、ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は9,700であった。
[シロキサンポリマーB]
本実施例では、シロキサンポリマーBとして、下記式(15)で表されるシロキサンポリマーを用いた。
[式(8)中、Meはメチル基を示す。カッコの外にある数字の単位はモル%である。]
具体的には、シロキサンポリマーBは、以下のような手順に従って合成した。1L4つ口フラスコに、水97.1g(5.39モル)と35%塩酸水溶液9.1gを仕込み、1−ナフチルトリメトキシシラン108.5g(0.437モル)とメチルトリメトキシシラン59.5g(0.437モル)のトルエン252.2g溶液を反応温度10〜20℃で滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成後に、反応溶液をGC分析することにより原料がすべて無くなっていることを確認した。次に静置後分液を行い、油層を回収した。次いで5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄し、最後にトルエン油層を回収した。その得られた油層をエバポレーターで溶媒を除去し、白色粉末である1−ナフチルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体を117.2g得た。GPC分析の結果、Mwは1,000、分散度(Mw/Mn:ポリスチレン換算)1.2であった。また、得られたシロキサンポリマーBのスペクトルデータを下記に示す。
赤外線吸収スペクトル(IR)データ:3055、1504cm−1(ナフタレン)、1026−1111cm−1(Si−O)(島津製IR Prestige−21)。
核磁気共鳴スペクトル(NMR)データ:0.182ppm(bs)、7.021−8.252ppm(b)(1H−NMR溶媒:CDCl3、日本電子製400MHz NMR測定器)。
[レジスト下層膜形成用組成物の調製]
シロキサンポリマーAを50質量部、シロキサンポリマーBを50質量部、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテートを0.3質量部、マロン酸を0.75質量部混合し、溶剤のPGMEA/EL=6/4を、シロキサンポリマーAとシロキサンポリマーBとを合わせたポリマー固形分濃度が2.5質量%となるように調整して加えた。
本実施例のレジスト下層膜形成用組成物における固形分中のSi濃度は、29.4質量%であった(配合から算出)。この値は形成されるレジスト下層膜中のSi濃度と同等とみなすことができる。なお、このレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成したレジスト下層膜の193nmにおける屈折率(n値)は1.50、消衰係数(k値)は0.15、248nmにおける屈折率(n値)は1.66、消衰係数(k値)は0.034であった。
[有機系ボトムレイヤー形成用組成物の調整]
有機系ボトムレイヤー形成用組成物としては、ボトムレイヤーA、ボトムレイヤーBの2種を用いた。ボトムレイヤーAとしては、下記式(16)で表されるポリマー(Mw:6,000)を100質量部、三和ケミカルのバインダー「ニカラックMX270」(商品名)を20質量部、日本サイテックの添加剤「キャタリスト602」(商品名)を1質量部、大日本インキ化学社製の界面活性剤「メガファックXR104」(商品名)を0.05質量部混合し、溶剤のPGMEA/EL=6/4を、固形分濃度が14.3質量%となるように調製して加えたものを用いた。
ボトムレイヤーBとしては、下記式(17)で表されるポリマー(Mw:8,700)を100質量部、三和ケミカルのバインダー「ニカラックMX270」(商品名)を20質量部、日本サイテックの添加剤「キャタリスト602」(商品名)を1質量部、大日本インキ化学社製の界面活性剤「メガファックXR104」(商品名)を0.05質量部混合し、溶剤のPGMEA/EL=6/4を、固形分濃度が12.5質量%となるように調製して加えたものを用いた。
[パターン形成]
シリコンウェハ上に慣用のレジストコーターを用いて、有機系ボトムレイヤー形成用組成物を塗布し、250℃下で90秒間の加熱処理を行うことにより、有機系ボトムレイヤーを形成した。ボトムレイヤーAの場合は、膜厚300nmであり、ボトムレイヤーBの場合は膜厚250nmであった。
次いで、これらの有機系ボトムレイヤー上に、上記レジスト下層膜形成用組成物を塗布し、250℃下で90秒間の加熱処理を行うことにより、レジスト下層膜を形成した。ボトムレイヤーA上に形成されたレジスト下層膜は厚さ60nmであり、ボトムレイヤーB上に形成されたレジスト下層膜は厚さ50nmであった。さらに、これらのレジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト膜を形成し、ArFエキシマレーザによる露光、現像を行った。ここでは、現像により形成されたレジストパターンの形状について評価した。
なお、レジスト組成物としては、レジストA、レジストB、レジストCの3種類を用いて、それぞれパターン形成を行った。有機系ボトムレイヤーがボトムレイヤーAである場合に対し、レジストAを用いたパターン形成を実施例1−1、レジストBを用いたパターン形成を実施例1−2、レジストCを用いたパターン形成を実施例1−3とした。また、ボトムレイヤーBに対し、レジストCを用いたパターン形成を実施例1−4とした。
(実施例1−1) レジストAとしては、下記式(18)で表される繰り返し単位を有するポリマーI(Mw:7,000)を50質量部、下記式(19)で表される繰り返し単位を有するポリマーII(Mw:10,000)を50質量部、下記式(20)で表される酸発生剤を4.0質量部、下記式(21)で表される酸発生剤を1.0質量部、下記式(22)で表される酸発生剤を4.0質量部、クエンチャーのトリ−n−オクチルアミンを1.0質量部、添加剤のγ−ブチロラクトンを10質量部、同じく添加剤のサリチル酸を0.39質量部混合し、溶剤のPGMEA/EL=6/4を、固形分濃度が5.6質量%となるように調製して加えたものを用いた。また、このレジストAを塗布して、膜厚が130nmのレジスト膜を形成し、120nmのラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。
(実施例1−2) レジストBとしては、下記式(23)で表される繰り返し単位を有するポリマーIII(Mw:7,000)を100質量部、上記式(21)で表される酸発生剤を8.0質量部、クエンチャーのトリ−n−ペンチルアミンを1.2質量部、大日本インキ化学社製の界面活性剤「メガファックXR104」(商品名)を0.10質量部、添加剤のγ−ブチロラクトンを10質量部、同じく添加剤のサリチル酸を1.32質量部混合し、溶剤のPGMEA/EL=6/4を、ポリマー固形分濃度が5.0質量%となるように調製して加えたものを用いた。また、このレジストBを塗布して、膜厚が100nmのレジスト膜を形成し、50nmのL/Sパターンを形成した。
(実施例1−3) レジストCとしては、下記式(24)で表される繰り返し単位を有するポリマーIV(Mw:10,000)を100質量部、上記式(20)で表される酸発生剤を13.0質量部、クエンチャーのトリ−n−ペンチルアミンを0.54質量部、大日本インキ化学社製の界面活性剤「メガファックXR104」(商品名)を0.10質量部、添加剤のγ−ブチロラクトンを10質量部、同じく添加剤のサリチル酸を1.32質量部混合し、溶剤のPGMEA/EL=6/4を、ポリマー固形分濃度が6.3質量%となるように調製して加えたものを用いた。また、このレジストCを塗布して、膜厚が160nmのレジスト膜を形成し、120nmのL/Sパターンを形成した。
(実施例1−4)
上述のレジストCを塗布して、膜厚が120nmのレジスト膜を形成し、90nmのL/Sパターンを形成した。
<実施例2>
[シロキサンポリマーA]
本実施例では、実施例1と同様のシロキサンポリマーを用いた。
[シロキサンポリマーB]
本実施例では、シロキサンポリマーBとして、下記式(25)で表されるシロキサンポリマーを用いた。
[式(25)中、Meはメチル基を示す。カッコの外にある数字の単位はモル%である。ノルボルナン骨格をもつ構成単位について、Si−との結合位置は、2位と3位にあるものが混在している。]
具体的には、上記シロキサンポリマーBは、以下のような手順に従って合成した。1L4つ口フラスコに、水97.1g(5.39モル)と35%塩酸水溶液9.1gを仕込み、1−ナフチルトリメトキシシラン108.5g(0.437モル)と、メチルトリメトキシシラン35.7g(0.262モル)と、5−メトキシカルボニルノルボルナン−2(または3)−イルトリメトキシシラン50.3g(0.175モル)のトルエン252.2g溶液を反応温度10〜20℃で滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成後に、反応溶液をGC分析することにより原料がすべて無くなっていることを確認した。次に静置後分液を行い、油層を回収した。次いで5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄し、最後にトルエン油層を回収した。その得られた油層をエバポレーターで溶媒を除去し、白色粉末である1−ナフチルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン・5−メトキシカルボニルノルボルナン−2(または3)−イルシルセスキオキサン共重合体を152.4g得た。GPC分析の結果、Mwは900、分散度(Mw/Mn:ポリスチレン換算)1.1であった。得られたシロキサンポリマーBのスペクトルデータを下記に示す。
赤外線吸収スペクトル(IR)データ:3057、1589cm−1(ナフタレン)、1703−1726cm−1(−CO−)、991−1151cm−1(Si−O)(島津製IR Prestige−21)。
核磁気共鳴スペクトル(NMR)データ:0.070−0.332ppm(b)、1.042−1.431ppm(b)、2.122−2.501(b)、3.370−3.643(b)、7.062−8.281ppm(b)(1H−NMR溶媒:CDCl3、日本電子製400MHzNMR測定器)。
[レジスト下層膜形成用組成物の調製]
シロキサンポリマーAを50質量部、シロキサンポリマーBを50質量部、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテートを0.3質量部、マロン酸を0.75質量部混合し、溶剤のPGMEA/EL=6:4を、シロキサンポリマーAとシロキサンポリマーBとを合わせた固形分濃度が2.5質量%になるように調整して加えた。
本実施例のレジスト下層膜形成用組成物における固形分中のSi濃度は、27.3質量%であった(配合から算出)。この値は形成されるレジスト下層膜中のSi濃度と同等とみなすことができる。このレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成したレジスト下層膜の193nmにおける屈折率(n値)は1.55、消衰係数(k値)は0.15、248nmにおける屈折率(n値)は1.66、消衰係数(k値)は0.034であった。
[パターン形成]
有機系ボトムレイヤーにはボトムレイヤーAを用いた。レジスト下層膜の膜厚を50nmとした以外は、実施例1と同様の処理を施し、パターン形成を行った。レジストAを用いたパターン形成を実施例2−1、レジストBを用いたパターン形成を実施例2−2、レジストCを用いたパターン形成を実施例2−3とした。実施例2−1から2−3のそれぞれのレジスト膜厚やL/Sパターンの寸法は実施例1−1から1−3のそれぞれの場合と同様である。
<実施例3>
[シロキサンポリマーA]
本実施例では、実施例1と同様のシロキサンポリマーを用いた。
[シロキサンポリマーB]
本実施例では、実施例1と同様のシロキサンポリマーを用いた。
[レジスト下層膜形成用組成物の調製]
シロキサンポリマーAを100質量部、シロキサンポリマーBを100質量部、下記式(26)で表される酸発生剤を3質量部、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムアセテートを3質量部、マロン酸を7.5質量部混合し、溶剤のPGMEA/EL=6:4を、シロキサンポリマーAとシロキサンポリマーBとを合わせた固形分濃度が2.5質量%になるように調整して加えた。
本実施例のレジスト下層膜形成用組成物における固形分中のSi濃度は、30.0質量%であった(配合から算出)。この値は形成されるレジスト下層膜中のSi濃度と同等とみなすことができる。このレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成したレジスト下層膜の193nmにおける屈折率(n値)は1.50、消衰係数(k値)は0.15、248nmにおける屈折率(n値)は1.66、消衰係数(k値)は0.034であった。
[パターン形成]
有機系ボトムレイヤーには、ボトムレイヤーAを用いた。レジスト下層膜の膜厚を50nmとした以外は、実施例1と同様の処理を施し、パターン形成を行った。レジストAを用いたパターン形成を実施例3−1、レジストBを用いたパターン形成を実施例3−2、レジストCを用いたパターン形成を実施例3−3とした。実施例3−1から3−3のそれぞれのレジスト膜厚やL/Sパターンの寸法は実施例1−1から1−3のそれぞれの場合と同様である。
<比較例1>
シロキサンポリマーBを用いずに、上記式(14)で表されるシロキサンポリマーAのみを用いた以外は、実施例1と同様にしてレジスト下層膜形成用組成物を調製した。本比較例のレジスト下層膜組成物における固形分中のSi濃度は、35質量%であった(配合から算出)。この値は形成されるレジスト下層膜中のSi濃度と同等とみなすことができる。なお、このレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成したレジスト下層膜の193nmにおける屈折率(n値)は1.72、消衰係数(k値)は0.332、248nmにおける屈折率(n値)は1.56、消衰係数(k値)は0.0008であった。また、有機系ボトムレイヤーにはボトムレイヤーAを用い、実施例1と同様にしてパターン形成を行った。レジストAを用いたパターン形成を比較例1−1、レジストBを用いたパターン形成を比較例1−2、レジストCを用いたパターン形成を比較例1−3とした。比較例1−1から1−3のそれぞれのレジスト膜厚やL/Sパターンの寸法は実施例1−1から1−3のそれぞれの場合と同様である。
<パターン評価>
実施例及び比較例で形成されたパターンの形状について評価を行った。評価は、パターンの状態を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて拡大観察することにより行った。その結果、比較例はすべて、レジストパターンがすそ引きの形状となっていたが、実施例ではいずれのレジストパターンも、レジスト下層膜の面に対し高い垂直性を有した矩形状のパターンとなっており、すそ引きやアンダーカットの形状はみられなかった。以上より、本実施例では、レジストの組成に関わらず、レジスト下層膜とレジスト膜との良好なマッチング特性が得られることが確認された。
<エッチング評価>
ボトムレイヤーBに対し、レジストCを用いた実施例1−4については、L/Sパターンの形成後、エッチング評価も行った。エッチング装置はTelius(東京エレクトロン製)を使用した。エッチング条件を表1に示す。
まず、パターン形成されたレジストCをマスクとして、レジスト下層膜のエッチングを行い、次に、レジストCとレジスト下層膜をマスクとして、ボトムレイヤーBのエッチングを行った。続いて、このとき、マスクとして残っていたレジストCも除去された。続いて、レジスト下層膜とボトムレイヤーBをマスクとして、基板(SiO2)のエッチングを行い、同時にマスクとして残っていたレジスト下層膜も除去した。以上の工程によって、L/Sパターンの転写された基板が得られた。このとき、基板に転写されたL/Sパターン寸法における、レジスト層のL/Sパターン寸法(90nm)からの変化幅は1.7nm以下であった。また、最後に、残ったボトムレイヤーBは混合比80/20のO2/N2アッシングガスにより除去した。
なお、比較例については、形成されたパターンがすそ引き形状であり、正確なパターン転写ができないことは明らかなので、ここでは評価していない。
本発明に係るレジスト下層膜を形成することによって、すそ引き形状でなく、矩形のレジストパターンを得ることができ、レジストパターンの寸法を各エッチングの工程で順次正確に下層に転写させることができた。つまり、より正確なパターン寸法で形成された基板を得ることができた。