JP4807958B2 - ポリアミド樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
通常高重合度のポリアミド樹脂は、先ず溶融重合で中重合度の樹脂のペレットを製造し、次にこれを長時間不活性ガス気流中、あるいは減圧下で加熱して高重合度化する固相重合によって製造する(例えば特許文献1参照)。長時間で複雑な製造工程を要し、製造コストが高いにもかかわらず、固相重合が実施されているのは、融点以下で重合するために熱分解反応が起こりにくく、着色しにくいので、高重合度で高品質の樹脂を製造できるためである。
ポリアミド樹脂の重縮合反応は、基本的には下記式1のアミド化平衡反応に基づくため、重縮合反応を効果的に進行させるには重合装置において副生する水分を速やかに除去する必要がある。
[式1]
−NH2 + −COOH → −CONH− + H2O
上記のような回転駆動部分によって重縮合反応を促進させる装置を用いる以外に、重合反応器の上部から重合中間体を重力落下させながら薄膜を形成させて効果的に水分を除去し、重合する方法も提案されている。
このように従来の溶融重合技術では、固相重合技術を代替することの出来る、高品質で高重合度のポリアミド樹脂を工業的に安定して、生産性良く製造することはできなかった。
我々はさらに検討をすすめ、重合器の液滞留部にポリマーを長時間滞留させることなく抜き出す方法と組み合わせることによって、高品質で高重合度のポリアミド樹脂を均一な品質で、工業的規模で安定に製造出来ることを見出し、本発明をなすに至った。
(1)ポリアミド樹脂重合中間体を溶融状態にて原料供給口から重合器に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、重合器内に設置された支持体の表面に沿わせて落下させながら、
該重合中間体の結晶融点−10℃以上、結晶融点+60℃以下の温度にて、重合圧力が10,000Pa〜100,000Paの減圧下にて重合させる方法であって、上記ポリアミド樹脂重合中間体の分子量が相対粘度にして1.5〜3.0であり、下記(A)および(B)の条件を満たすことを特徴とする、ポリアミド樹脂の製造方法。
(A)該支持体に沿って落下するポリアミド樹脂の表面積S1と該支持体とポリアミド樹脂が接触している面積S2が、S1/S2>1の関係を満たす。
(B)重合されたポリアミド樹脂の該重合器の底部での滞留時間が、1〜5分の範囲内である。
(2)該重合器の底部に滞留しているポリアミド樹脂を排出するに際し、該重合器の内壁面と接している上端の線を線Lとし、線L以下の該重合器の容積Uと底部に滞留しているポリマーの容積Vの比(V/U)を、0.00001〜0.95の範囲に制御することを特徴とする、(1)に記載のポリアミド樹脂の製造方法、
(3)(1)〜(2)のいずれかに記載の製造方法により製造されたポリアミド樹脂、
(4)(1)〜(2)のいずれかに記載の製造方法により製造された相対粘度が、2.5〜6.0のポリアミド樹脂、
(5)(3)または(4)に記載のポリアミド樹脂から製造された成形体。
(A)重合方法の原理:
本発明の重合方法は、ポリアミド樹脂重合中間体を溶融状態にて原料供給口から重合器に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて重力落下させながら減圧下にて重合する方法である。
後述するように重合器の構造や、重合方法が適切な条件を満たすことで、支持体に沿って落下する重合中間体が多量の泡を含んだ状態となり、重合の進行に伴ってポリマーが泡玉(塊)状の構造となって重合器の下方に向かって転がり落ちる挙動を示す。
本発明ではポリアミド樹脂が多量の泡を含んでいるために、高重合度化しても支持体上及び重合器の底部での流動性が良く、これらの箇所で長期滞留しないため色相の悪化やゲルの生成が起こりにくい。また、高重合化されたポリアミド樹脂を重合器から抜き出す際にも、高せん断力が発生しにくく液温上昇や分子鎖の切断による品質低下も少ない。
さらにオリゴマーや熱分解物などの不純物の含有量も少ない、高品質のポリアミド樹脂を製造出来る利点もある。
本発明で用いられるポリアミド樹脂重合中間体とは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合中間体であれば特に限定されない。より具体的には、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体を製造するために用いられている周知の原料、例えば、重合可能なアミノ酸、重合可能なラクタム、あるいは重合可能なジアミンとジカルボン酸との塩あるいは混合物、及びこれら重合可能なオリゴマーを原料とし得られる重合中間体であり、製品のポリアミド樹脂に比べ重合度が低いポリアミド樹脂である。該重合中間体にはオリゴマーやモノマーも含んでいてもよい。該重合中間体の製造方法は、例えば、従来公知の縦型攪拌重合器、1軸又は2軸の攪拌翼を有した横型攪拌反応器、棚段を有する自然流下式の薄膜重合器、傾斜した平面を自然流下する薄膜重合器、濡壁塔等の装置、ニーダー、溶融混練機等、あるいはこれらの装置を組み合わせて所望の重合度まで予備重合されたものである。また重合形態はバッチ式であっても連続式のいずれを用いてもかまわない。
重合可能なラクタムとしては、例えばブチルラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタムなどをより具体的に挙げることができる。本発明では、これらの重合可能なラクタムを1種を用いても良いし、2種類以上組み合わせて用いても良い。
またこれら全ての重合中間体について、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールを予め共重合させたものも含まれる。
上記の重合中間体の具体的な製造方法に関しては、例えば、“Polymer Synthesis,vol.1,second edition”、1992(米国 Academic Press,Inc.社発行)を参照することが出来る。
本発明の重合器は、上記の重合中間体を溶融状態にて重合器に供給して、多孔板の孔から吐出させた後、支持体に沿わせて落下させながら減圧下にて溶融重縮合を行うことを特徴とする装置である。
(C−1)多孔板:
多孔板とは、複数の貫通孔がある板状体である。多孔板を用いることによって重合中間体の偏流を抑制するとともに重合器内での局所滞留を防止出来、高品質で均質なポリアミド樹脂を製造出来る。
多孔板の孔は、通常、円状、長円状、三角形状、スリット状、多角形状、星形状などの形状から選ばれる。孔の断面積は、通常、0.01〜100cm2であり、好ましくは0.05〜10cm2であり、特に好ましくは0.1〜5cm2の範囲である。また、孔に接続するノズル等を備えることも含む。
多孔板の孔の数に特に制限はなく、反応温度や圧力などの条件、触媒の量、重合させる分子量の範囲等によっても異なるが、通常ポリマーを例えば100kg/hr製造する際、10〜105個、より好ましくは50〜104個、さらに好ましくは102〜103個の孔が必要である。
このような多孔板を通じて重合中間体を吐出させる方法としては、液ヘッドまたは自重で落下させる方法、またはポンプなどを使って加圧して押し出す方法等が挙げられるが、落下する重合中間体量の変動を抑えるためにギアポンプなどの計量能のあるポンプを用いて押し出すことが好ましい。
尚、多孔板より上流側の流路にはフィルターを設けることが好ましい。フィルターにより、多孔板の孔を閉塞する異物を除去出来る。フィルターの種類は、多孔板の孔径以上の異物を除去出来且つ、重合中間体の通過によって破損しないよう適宜選定する。
多孔板の孔から吐出された重合中間体は、支持体に沿って落下する。このとき、該支持体に沿って落下するポリアミド樹脂の表面積をS1、該支持体とポリアミド樹脂が接触している面積をS2とすると、S1/S2>1の関係を満たす条件で重合させる必要がある。
ここで、S1:落下するポリアミド樹脂の表面積とは、支持体の表面に沿って落下するポリアミド樹脂が、気相と接触している面の平均表面積のことであり、例えばワイヤー状の支持体表面に沿ってポリアミド樹脂を落下させた場合には、ワイヤーを包み込んで円筒状あるいは円錐台状に流下するポリアミド樹脂の、ワイヤーを中心とした平均半径から、幾何学的に算出される。上記「ポリアミド樹脂の、ワイヤーを中心とする平均半径」については、重合器に設置されたのぞき窓から測定する方法や、重合器内部に滞留する樹脂重量と支持体の形状から計算する方法などによって求めることが出来る。
「格子状(金網状)」とは前記したワイヤー状の材料を格子状に組み合わせた材料を表すものである。組み合わせるワイヤーは直線状の場合も曲率している場合も含み、組み合わせる角度は任意に選ぶことができる。格子状(金網状)の材料を面に対して垂直方向より投影した際の、材料と空間との面積比は特に制限はないが、通常1:0.5〜1:5000の範囲であり、好ましくは1:1〜1:3000の範囲であり、特に好ましくは1:5〜1:1000の範囲である。面積比は水平方向には等しいことが好ましく、鉛直方向には等しいか、あるいは下部ほど空間の比率が大きくなることが好ましい。
「ポリマーの落下方向に凹凸が付いたワイヤー状」とは、ワイヤーに丸断面や多角形断面の棒状物を直角に取り付けたものや、ワイヤーに円盤状物あるいは円筒状物を取り付けたものなどである。凹凸の段差は5mm以上のものが好ましい。具体的な例としては、直径がワイヤー径より5mm以上大きく100mm以下で、厚みが1〜50mmの円盤の中心をワイヤーが貫通し、該円盤の間隔が1〜500mmである円盤付きワイヤー等が挙げられる。
支持体は形状によって単数設ける場合と複数設ける場合とを適宜選択できる。「ワイヤー状」や「チェーン状」の場合は通常1〜105個であり、好ましくは3〜104個である。「格子状」、「2次元に連なったチェーン状」、「薄板状」、「多孔板状」の場合は通常1〜104個であり、好ましくは2〜103個である。「3次元に連なったチェーン状」、「立体格子状」の場合は単数とするか、分割して複数とするかは、装置の大きさや、設置スペース等を考慮して適宜選択できる。
支持体の材質に特に制限はないが、通常、ステンレススチール、カーボンスチール、ハステロイ、チタン等の中から選ばれる。また、ワイヤーは、メッキ、ライニング、不働態処理、酸洗浄等必要に応じて種々の表面処理がなされている場合も含む。
本発明において、通常、1つの支持体に対して多孔板の孔1個以上から重合中間体が供給されるが、孔の数は支持体の形状に応じて適宜選択することもできる。また、1個の孔を通過した重合中間体を複数の支持体に沿って落下させることも可能である。
支持体の位置は重合中間体が支持体に沿って落下できる位置であれば特に制限はなく、支持体の多孔板への取り付け方は、多孔板の孔を貫通して設置される場合と貫通せず多孔板の孔の下部に設置される場合を適宜選択できる。
孔を通過した重合中間体を支持体に沿わせて落下させる高さは、好ましくは0.5〜50mの範囲であり、さらに好ましくは1〜20mの範囲であり、より好ましくは2〜10mの範囲である。
排出口は、重合器の底部に設けられ、ギアポンプおよび/又はスクリュー型ポンプ等の重合したポリアミド樹脂を重合器外に排出する装置が設置されている。重合器の底部に落下した樹脂を長期滞留させずに、順次流下する樹脂によって置換しながら抜き出すには、重合器の底部が斜面になっていることが好ましく、重合器の底部の斜面と鉛直線とのなす角が0〜85°の範囲であることがより好ましい。
また重合器の底部は異物の生成を抑制するためには滑らかであることが好ましく、より好ましくはJIS B0601に規定された十点平均の表面粗さが500μm以下である。
排出口及び、これに設置された排出装置の数は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。生産性の大きな大型の重合器の場合2つ以上設置することがより好ましい。排出口及び、これに設置された排出装置の数には特に制限はなく、重合器の規模によっても異なるが、通常1〜100の範囲が好ましい。
重合温度は、支持体を覆っている重合器壁面に配したヒーター又は熱媒ジャケットの温度を制御したり、支持体内部にヒーター又は熱媒を入れ、これらの温度を制御したりすることで適切に設定できる。
(C−5)減圧装置:
重合器の減圧度は、重合器の任意の箇所に設置したベント口を真空ラインに接続し、減圧度を制御することで適切に設定できる。ベント口からは重合副生物や、重合時の熱分解により発生する不純物や、重合速度を増大させる目的で必要に応じて重合器内に少量導入した不活性ガスが排出される。
(C−6)不活性ガス供給装置:
重合速度を増大させる目的で重合器内に不活性ガスを直接導入する場合には、重合器の任意の箇所に設置した導入口から供給出来る。不活性ガス導入口の位置は多孔板より遠く、ポリアミド樹脂の抜出口の近くとすることが望ましい。また、ベント口から離れていることも望ましい。
本発明者らは、前記した重合中間体を、前記の重合器を用いて、後述する重合温度、減圧度の範囲で重合させることで、驚くべきことに、支持体に沿って落下するポリアミド樹脂が多量の泡を含んだ状態になって、「ポリマーの表面積が拡大する」とともに「支持体上をポリマーが泡玉状になって転がり落ちる」現象を見出した。またこれに伴い重合速度の飛躍的な増大と、重合されたポリアミド樹脂の色相の改善を確認した。本発明ではポリアミド樹脂が高重合度化しても、多量の泡を含んだ状態で重合されるために支持体上及び重合器の底部での流動性が良く、これらの箇所で長期滞留しないために色相が改善されたものと考えられる。重合時にゲル生成が起こりにくいのも同じ理由によると考えられる。しかも高重合化されたポリアミド樹脂を重合器から抜き出す際にも、高せん断力が発生しにくく液温上昇や分子鎖の切断による製品の品質低下が少ない。
重合温度はポリアミド樹脂重合中間体の融点−10℃以上、融点+60℃以下とすることが好ましい。融点−10℃以上とすることで、反応物の固化や、反応時間が長くなることを防ぎ、融点+60℃以下にすることで、熱分解を抑え優れた色調のポリアミド樹脂を製造できる。温度は融点−5℃以上、融点+40℃以下がより好ましく、融点−3℃以上、融点+30℃以下がさらに好ましく、融点−2℃以上、融点+20℃以下が特に好ましく、融点−1℃以上、融点+10℃以下が最も好ましい。
このように比較的低い重合温度の方が本発明において好ましい理由は、ポリアミド樹脂が重合時に多量の泡を含んだ状態になりやすく、重合速度を飛躍的に高めることが可能になるためである。
ここで融点とは、Perkin Elmer社製Pyris 1 DSC(入力補償型示差熱量計)を用いて、下記の条件にて測定した時の、結晶の融解に由来する吸熱ピークのピーク温度である。ピーク温度は、付属の解析ソフトを用いて決定した。
測定温度 : 0〜320℃
昇温速度 : 10℃/分
本発明の溶融重合反応は、重合時のポリアミド樹脂を多量の泡を含んだ状態にするためにも、減圧下にて行う必要がある。減圧度は、ポリアミド樹脂や副生成物やオリゴマー等の昇華状態や反応速度に応じて適宜調節する。減圧度は100000Pa以下が好ましく、80000Pa以下がより好ましく、50000Pa以下がさらに好ましく、20000Pa以下が特に好ましい。下限は特に制限させるものではないが、重合器内を減圧とするための設備の規模などから考え0.1Pa以上とすることが好ましい。
また、減圧下で、重合反応に悪影響を及ぼさない不活性なガスを重合器内に少量導入して、重合副生物や重合時の熱分解により発生した不純物等をこれらのガスに随伴させて除去するのも好ましい方法である。
本発明で導入する不活性ガスの量は、極めて少量でよく、重合反応器より抜き出すポリアミド樹脂1g当たり0.05〜100mgとすることが好ましい。不活性ガスの量は抜き出すポリアミド樹脂1g当たり0.05mg以上とすることで樹脂の発泡が十分となって重合度を高める効果が高くなる。一方100mg以下とすることで減圧度を高くすることが容易になる。不活性ガスの量は抜き出すポリアミド樹脂1g当たり0.1〜50mgとすることがより好ましく、0.2〜10mgとすることが特に好ましい。
重合時にポリアミド樹脂を支持体に沿わせて落下させるのに要する時間と、重合器の底部での滞留時間の合計が重合時間であり、30秒〜100時間の範囲が好ましく、1分〜10時間の範囲がより好ましく、5分〜5時間の範囲がさらに好ましく、20分〜3時間の範囲が特に好ましい。
特に本発明では、液滞留部にポリマーを長時間滞留させることなしに高重合度のポリアミド樹脂を製造することが可能であり、重合器の底部での長時間の滞留による製品の重合度のばらつきや、ゲル化物の生成や、色相の悪化などの品質低下及び、高重合度化されたポリアミド樹脂を重合器から抜き出す際の高せん断力の発生を抑制するためには、重合されたポリアミド樹脂の、重合器の底部での滞留時間を10秒〜1時間の範囲とすることが好ましい。重合器の底部での滞留時間は20秒〜40分間の範囲であることがより好ましく、30秒〜20分間の範囲であることがさらに好ましく、40秒〜10分間の範囲であることが特に好ましく、1分〜5分間の範囲であることが最も好ましい。
本発明では、重合中間体から重合したポリアミド樹脂をワンパスで重合器から全て抜き出す方法、重合したポリアミド樹脂の一部を循環させて再び重合器に導入する方法等が挙げられるが、ワンパスで全て抜き出す方法がより好ましい。循環させる場合には、重合器底部や循環ライン等での熱分解を抑えるために、これらの場所での滞留時間を短くし、温度を下げることが好ましい。
本発明の重合器の重合能力は、ワイヤー状の支持体の場合、重合器内に設置した本数に比例して増大する特徴があり、スケールアップの設計が容易である特長を有する。
ワイヤー状の支持体の場合、1本の支持体当たりの重合中間体流量は、好ましくは10−2〜102リットル/hrであり、この範囲とすることによって充分な生産能力が確保出来るとともに重合速度も飛躍的に高めることが出来る。より好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。
格子状(金網状)など、ワイヤーを組み合わせた支持体の場合には、支持体を構成する垂直方向のワイヤー構造1本当たり、好ましくは10−2〜102リットル/hrであり、より好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。
薄板状等の、ワイヤーを組み合わせた構造ではない支持体の場合には、支持体に重合中間体を供給する多孔板の孔1個当たり、好ましくは10−2〜102リットル/hrであり、より好ましくは、0.1〜50リットル/hrの範囲である。
前記のように本発明では、重合器の底部での長時間の滞留による製品の品質低下及び、高重合度のポリアミド樹脂を重合器から抜き出す際の高せん断力の発生を抑制する目的で重合されたポリアミド樹脂の、重合器の底部での滞留時間を10秒〜1時間の範囲とすることが好ましいが、さらに、該重合器の底部に落下して滞留しているポリアミド樹脂が、該重合器の内壁面と接している上端の線を線Lとし、線L以下の該重合器の容積をU、底部に滞留しているポリマーの容積をVとしたときの容積の比(V/U)を0.00001〜0.95の範囲となるように排出することによって、重合器の底部でのポリアミド樹脂流がピストン流れとなり、上記目的を一層達成出来るので好ましい。V及びUの値については、重合器に設置されたのぞき窓から測定する方法や、重合器の底部に滞留する樹脂重量から計算する方法などによって求めることが出来、(V/U)の値は、ポリアミド樹脂の排出速度及び重合器の底部の形状によって調整することが出来る。
排出されたポリアミド樹脂は、一旦、ペレットとした後、再溶融して成形に用いることも出来るし、溶融状態のままで成形機や紡糸機に移送し成形する方法によって、一段と高品質の成形品を低コストで製造することも出来る。
本発明は、上記した重合器の多孔板から供給する方法以外にも、重合器と成形機の間に一軸または二軸の混錬機やスタティックミキサー等を設置して必要に応じて、安定剤や核剤、顔料等の添加剤を樹脂に添加する場合も含む。
本発明の製造方法により得られるポリアミド樹脂の相対粘度は、生産性及び品質の観点から、好ましくは2.5〜6.0であり、より好ましくは2.7〜5.7であり、更に好ましくは2.8〜5.5である。上記範囲を外れた場合には、ポリアミド樹脂を成形し目的の用途に活用しようとした場合に、成形しにくかったり、得られる製品の品質が低下する等の不具合が発生しやすい傾向にある。
本発明では、必要に応じて各種の添加剤、例えば重合触媒、重合抑制剤、熱安定剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤、不純物の捕捉剤、艶消しなどを共重合または混合する場合も含む。これらの添加剤は任意の段階で添加することができる。
図1以下に本発明の方法を達成する好ましい組み合わせの態様を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1においてポリアミド樹脂重合中間体は、移送ポンプ1を介して原料供給口2より重合器に供給され、多孔板3を通って重合器内部に導入され支持体5に沿って落下する。重合器内部は所定の減圧度にコントロールされており、副生した水等や、必要に応じて不活性ガス供給口6より導入した窒素等の不活性ガスなどは減圧排気口7より排出される。重合されたポリアミド樹脂は、排出ポンプ8により排出され、排出口9から抜き出された後、水等の冷媒と速やかに接触させて冷却した後、ペレット状にカットされる。
移送ポンプ、重合器本体、排出ポンプ、樹脂の移送配管などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。
本発明の方法は、重合器1基で行う事も可能であるが、2基以上で行ってもかまわない。また、1基の重合基を竪型または横型に仕切って、多段の重合器とする事も可能である。
横型攪拌重合器としては、スクリュータイプ、独立翼タイプ、一軸タイプ、二軸タイプ等、例えば「反応工学研究会研究レポート:リアクティブプロセッシングPart2」(高分子学会;1992)第4章記載の重合器などが挙げられる。
また、撹拌槽型重合器としては、例えば化学装置便覧(化学工学協会編;1989年)11章等に記載された撹拌槽のいずれも使用する事ができる。槽の形状に特に制限はなく、通常、縦型や横型の円筒型が用いられる。また、撹拌翼の形状にも特に制限はなく、パドル型、アンカー型、タービン型、スクリュー型、リボン型、ダブル翼型等が用いられる。
移送ポンプ、不活性ガス吸収装置本体、重合器本体、排出ポンプ、樹脂の移送配管などはヒーター又はジャケットにより加熱され、かつ保温されている。
なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した
(1)相対粘度
JIS−K6810に準じて実施した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド樹脂1g)/(98%硫酸100ml)の割合)を作成し、25℃の温度条件下で測定した。
(2)結晶融点
結晶融点はPerkin Elmer社製Pyris 1 DSC(入力補償型示差熱量計)を用いて、下記の条件にて測定し、結晶の融解に由来する吸熱ピークのピーク値を結晶融点とした。ピーク値は、付属の解析ソフトを用いて決定した。
測定温度 : 0〜320℃
昇温速度 : 10℃/分
(3)白色度
日本電色工業(株)製 ND−100DPを用い、下記式により得られたポリアミド樹脂ペレットの白色度を求めた。
W=100−[(100−L)2+a2+b2]1/2
(L、a、bは、R.S.Hunterにより提案された色相の尺度で、それぞれ明るさ、赤色度、黄色度を示す。)
図1に示す装置を用いて、相対粘度が2.9、結晶融点が260℃のナイロン66樹脂の重合中間体を、移送ポンプ1により原料供給口2より重合器10に供給し、270℃の溶融状態にて多孔板3の孔より各孔当たり10g/分の量にて吐出させた後、吐出温度と同じ雰囲気温度にて支持体の沿わせて落下させながら40000Paの減圧度にて重合させ、排出ポンプ8によって排出口9より抜き出しペレタイズして、48時間連続運転してナイロン66樹脂ペレットを製造した。
多孔板は厚み50mmであり、直径1mmの孔が30mm間隔で直線状に4個配列されたものを用いた。支持体は直径2mm、長さ8mのワイヤーを各孔の直近に1本ずつ取り付けて垂直に垂らし、該ワイヤーと直行するように直径2mm、長さ150mmのワイヤーを50mm間隔で取り付けた格子状のものを用いた。支持体の材質はステンレススチールを用いた。
重合中は多孔板より吐出した重合中間体の激しい発泡、及びこれによる口金面や壁面等の汚染は極めて少なかった。落下する樹脂は多量の泡を含んでおり、支持体の縦方向のワイヤーを包み込みつつ、泡玉状になって支持体を転げ落ちる挙動が観察された。このときのぞき窓から落下する樹脂をビデオ撮影し、3分間隔の静止画像5枚から縦方向のワイヤーを中 心とする樹脂流れの平均半径を計算したところ1.35cmであり、これからS1=27130cm2と計算された。一方、支持体の全表面積(S2)が5357cm2であることから、S1/S2の値は5.1と計算された。
高い重合度、良好な白色度を有する高品質なナイロン66樹脂ペレットが安定して製造出来た。結果を表1に示す。
なお、実験終了後に重合器の底部を観察したが、清浄でありゲル等の異物の付着は認められなかった。
重合器の底部に多量のナイロン66樹脂を滞留させた以外は、実施例1と同様にして48時間連続運転してナイロン66樹脂ペレットを製造した。このとき排出ポンプ8の電流値が実施例1に比べ50%以上、上昇したうえ、電流値の変動幅も増大した。
また、製造されたペレットのRVと白色度が低下したうえ、特性値の変動も見られた。結果を表1に示す。
なお、実験終了後に重合器の底部を観察すると周辺部に少量のゲル状物が付着していた。
実施例1の多孔板に比べて孔数が2倍の8個であって、その配列が30mm間隔で直線状に4個配列させた列が100mm間隔で平行に2列並んだものであって、実施例1と同じ格子状の支持体が2枚、100mm間隔で平行に設置された以外、実施例1と同じ重合器を用いた。そして表1に示した、種々の重合中間体、種々の重合条件で実施した以外、実施例1と同じ操作によって、48時間連続運転してナイロン66樹脂ペレットを製造した。
実施例2〜4では(V/L)値が0.50以下であった。このとき排出ポンプ8の電流値の変動幅は実施例1と比較して小さくなった。実施例2〜4の全てについて、高い重合度、良好な白色度を有する高品質なナイロン66樹脂ペレットが安定して製造出来た。結果を表1に示す。
実施例2〜4と同じ重合器を用い、表1に示した条件でナイロン6樹脂の重合中間体を重合した以外、実施例1と同じ操作によって、48時間連続運転してナイロン6樹脂ペレットを製造した。
高い重合度、良好な白色度を有する高品質なナイロン6樹脂ペレットが安定して製造出来た。結果を表1に示す。
表1に示した条件で実施した以外、実施例5と同じ操作によって、48時間連続運転してナイロン6樹脂ペレットを製造した。
比較例2では、重合温度が高温すぎるためにペレットのRVと白色度が低下したうえ、特性値の変動も見られた。また実験終了後に重合器の底部を観察すると周辺部にゲル状物が付着していた。
比較例3では、重合温度が低すぎるために重合器内に導入された重合中間体が固化してしまい、実施することが出来なかった。
2.原料供給口
3.多孔板
4.のぞき窓
5.支持体及び落下樹脂
6.不活性ガス供給口
7.減圧排気口
8.排出ポンプ
9.排出口
10.重合器
N1.移送ポンプ
N2.原料供給口
N3.多孔板
N5.支持体及び落下ポリマー
N6.不活性ガス導入口
N7.減圧排気口
N8.排出・移送ポンプ
N10.不活性ガス吸収装置
Claims (2)
- ポリアミド樹脂重合中間体を溶融状態にて原料供給口から重合器に供給し、多孔板の孔から吐出させた後、重合器内に設置された支持体の表面に沿わせて落下させながら、該重合中間体の結晶融点−10℃以上、結晶融点+60℃以下の温度にて、重合圧力が10,000Pa〜100,000Paの減圧下にて重合させる方法であって、上記ポリアミド樹脂重合中間体の分子量が相対粘度にして1.5〜3.0であり、下記(A)および(B)の条件を満たすことを特徴とする、ポリアミド樹脂の製造方法。
(A)該支持体に沿って落下するポリアミド樹脂の表面積S1と該支持体とポリアミド樹脂が接触している面積S2が、S1/S2>1の関係を満たす。
(B)重合されたポリアミド樹脂の該重合器の底部での滞留時間が、1〜5分の範囲内である。 - 該重合器の底部に滞留しているポリアミド樹脂を排出するに際し、該重合器の内壁面と接している上端の線を線Lとし、線L以下の該重合器の容積Uと底部に滞留しているポリマーの容積Vの比(V/U)を0.00001〜0.95の範囲に制御することを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
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