JP4804409B2 - ポリマーセメント組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた曲げ強度や圧縮強度を有するポリマーセメント組成物に関するものである。
ポリマーセメントは、ポリマーの添加によって機械的物性、耐薬品性、硬化収縮等を改質したセメントであり、補修材、防食材、防水材、化粧仕上げ材等、建築・土木の各分野に利用されている。前記ポリマーとしては、樹脂エマルジョン、水溶性樹脂、再乳化樹脂粉末等が用いられている。さらに、前記樹脂エマルジョンとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂エマルジョン等が使用されているが、性能にはそれぞれ一長一短があるため、用途に応じて使い分けされている。
ポリマーセメントの性能は、ポリマーとして何を選択するかというだけではなく、セメントとポリマーの比率をどのようにするかということにも影響を受ける。例えば、曲げ強度を向上させたい場合、ポリマーの比率を高くすれば曲げ強度が向上するが、ポリマーが過剰になるとセメントの水和反応を阻害してしまい、逆に強度が低下することとなる。従って、単にポリマーの比率を高くしても強度の向上には限界があり、コンクリートパイルや高層建築用柱等のように高い強度が求められる用途においては、少ない添加量でも十分な強度を発現できるポリマーが求められている。特許文献1には耐薬品性等に優れ、施工性にもすぐれるポリマーセメントモルタル組成物が開示されているが、曲げ強度や圧縮強度については従来のポリマーセメントと別段変わりないものであった。
特許第3470240号公報
本発明の課題は、従来知られたポリマーでは成し得なかった優れた曲げ強度や圧縮強度を有するポリマーセメント組成物を提供するものである。
前記課題を解決するため、本発明者らは酢酸ビニル樹脂エマルジョンに着目した。酢酸ビニル樹脂エマルジョンは耐アルカリ性に劣るため、アルカリ条件下で使用されるポリマーセメント用途には不向きと考えられたが、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、特定の酢酸ビニル樹脂エマルジョンを用いた場合に従来知られたポリマーセメントよりも曲げ強度や圧縮強度が優れることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させた。
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン及びアクリル樹脂エマルジョンの存在下において、酢酸ビニルを含有する単量体を重合して得られる酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを含有することを特徴とするポリマーセメント組成物である。
本発明のポリマーセメント組成物は、優れた曲げ強度や圧縮強度を有するため、補修材、防食材、防水材、化粧仕上げ材等の他、コンクリートパイルや高層建築用柱等のように高い強度が求められる用途に好適である。
本発明のポリマーセメント組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン及びアクリル樹脂エマルジョンの存在下において、酢酸ビニルを含有する単量体を重合して得られる酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを含有することを特徴とする。エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンは、PVA(ポリビニルアルコール)や必要に応じて界面活性剤等の存在下、エチレン及び酢酸ビニルを含む単量体を重合することにより得られる樹脂エマルジョンである。アクリル樹脂エマルジョンは、界面活性剤の存在下でアクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類、これらの共重合可能な単量体等を重合することにより得られる樹脂エマルジョンである。これらの存在下において酢酸ビニル等を重合する際、さらにPVAを添加することが好ましく、必要により界面活性剤等を併用しても良い。
酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの全固形分に対して、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンやアクリル樹脂エマルジョンの固形分をそれぞれ3〜40重量%とすることが好ましく、5〜20重量%とすることがより好ましい。この範囲内であれば、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン重合時の安定性及び得られるポリマーセメント組成物の強度を両立できる。
本発明のポリマーセメント組成物は、前記酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの他、通常のポリマーセメントに用いられる各種配合材料を用いることができる。セメントは用途に応じて各種セメントを使用でき、硅砂、石膏等の各種骨材や、消泡剤、ケイ酸ソーダ等の硬化促進剤、メチルセルロース等の増粘剤等を配合することができる。
以下、実施例、比較例に基づき本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの合成
攪拌装置、温度計、還流管、温度調整装置を備えた反応容器に水42重量部を加え、PVAとしてB−05(電気化学工業株式会社製、重合度500、ケン化度86〜88モル%、商品名)4重量部を分散させて80℃に加熱し、1時間攪拌することによりPVAを溶解させた。PVA溶液にエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンとして#90(電気化学工業株式会社製、固形分55%、商品名)10重量部、アクリル樹脂エマルジョンとしてC−70(ガンツ化成株式会社製、固形分55%、Tg−30℃、商品名)8重量部を加え、80℃に保ちながら水5重量部に溶解させた酒石酸0.1重量部及び過酸化水素水(35重量%)0.05重量部を添加し、その後3時間かけて酢酸ビニル30重量部及び過酸化水素水(35重量%)0.2重量部を滴下し、滴下終了後にさらに80℃で1時間攪拌し、冷却した後にSN−デフォーマー398(サンノプコ株式会社製、商品名)1重量部を添加することにより、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンA(固形分45%)を得た。
前記酢酸ビニル系樹脂エマルジョンAの合成において、#90を使用せず、C−70を18重量部とした他は前記合成方法従い、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンB(固形分45%)を得た。
前記酢酸ビニル系樹脂エマルジョンAの合成において、C−70を使用せず、#90を18重量部とした他は前記合成方法従い、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンC(固形分45%)を得た。
実施例1
普通ポルトランドセメント450重量部、JIS R5261の10.2に規定する標準砂1350重量部、酢酸ビニル樹脂エマルジョンA 100重量部を混合し、さらにJIS A1171の6.1に規定するフロー値が170±5となるように水を添加して、実施例1のポリマーセメント組成物を得た。
比較例1
実施例1において、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンA100重量部をエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン(固形分45%、市販品)100重量部とした他は実施例1と同様に行い、比較例1のポリマーセメント組成物を得た。
実施例1において、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンA100重量部を酢酸ビニル系樹脂エマルジョンB100重量部とした他は実施例1と同様に行い、比較例2のポリマーセメント組成物を得た。
実施例1において、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンA100重量部を酢酸ビニル系樹脂エマルジョンC100重量部とした他は実施例1と同様に行い、比較例3のポリマーセメント組成物を得た。
各ポリマーセメント組成物について、JIS A1171の7.2に準拠して曲げ強さ及び圧縮強さ試験を行った。また、JIS A1171の7.3に準拠して接着強さを試験を行い、表1にまとめた。
Figure 0004804409
実施例1のポリマーセメント組成物は、比較例の各ポリマーセメント組成物よりも曲げ強さ、圧縮強さともに優れていた。一方、比較例2、3の各ポリマー組成物は、従来知られた比較例1のポリマーセメント組成物と比較して、曲げ強さ、圧縮強さともにほとんど差が見られず、接着強度は大幅に劣っていた。

Claims (1)

  1. エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン及びアクリル樹脂エマルジョンの存在下において、酢酸ビニルを含有する単量体を重合して得られる酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを含有することを特徴とするポリマーセメント組成物。
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