JP4802138B2 - プラスチックレンズの染色方法及び染色装置 - Google Patents

プラスチックレンズの染色方法及び染色装置 Download PDF

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Description

本発明はプラスチックレンズを染色する方法及び染色装置に関する。
従来、プラスチックレンズ等の透明樹脂を染色する方法として、レンズを染色液の中に所定時間浸漬してレンズを染色する方法(浸染法)が知られている。この方法は従来から用いられているものであるが、作業環境が良くないこと、高屈折率のレンズには染色を行うことが困難であることが問題となっていた。そこで本出願人はインクジェットプリンタを用いて、昇華性染料を含有する染色用インクを紙等の基体上に塗布(出力)させ、これを真空中でレンズと非接触に置き、昇華性染料をレンズ側に飛ばして染色を行う方法(以下 気相転写染色方法と記す)による染色方法を提案した。(例えば、特許文献1参照)
特開2001−59950号公報
この気相転写染色法においては、プリンタにて染料を基体上に塗布しておき、この基体の染料塗布面とレンズとを真空中にて非接触に対向させた状態で染料を昇華させてレンズ側に染料を蒸着させ、その後レンズを加熱することにより染料を定着させて染色を完了する。このような気相転写染色法では高屈折率のレンズを染色することが可能である。しかしながら、一方で高屈折率の材料は加熱により黄変しやすいという問題がある。特にこのような高屈折率材料からなるレンズを用いて濃度勾配を有するグラデーション染色を行う場合、レンズ上で染料が蒸着していない無色透明の領域(無蒸着領域)を持つため、このような黄変の問題は全面染色より大きくなる。
上記従来技術の問題点に鑑み、気相転写染色方法において、加熱によるレンズの黄変を抑制し、好適に染色を行うことのできるプラスチックレンズの染色方法及び染色装置を提供することを技術課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 昇華性染料を溶解又は微粒子分散させた染色用用材を電子計算機にて設定した色データに基づいて基体上に塗布し染色用基体を得る第1ステップと、該第1ステップにて得られた前記染色用基体の塗布面をプラスチックレンズと略真空中にて非接触に対向させた状態にて設置し,前記染色用基体を加熱することにより前記昇華性染料を昇華させ前記プラスチックレンズに対して蒸着させる第2ステップと、を有し、前記染色用基体に対向するレンズ表面の一部領域を染色し、他の領域を染色しないプラスチックレンズの染色方法において、
前記第2ステップにより前記昇華性染料が蒸着している領域には所期する温度となるように赤外線を照射して加熱して昇華性染料を定着させ、昇華性染料が蒸着していない領域には赤外線による温度上昇を制限し、前記昇華性染料をプラスチックレンズに定着させる第3ステップを有することを特徴とする。
(2) (1)のプラスチックレンズの染色方法において、前記第3ステップは前記昇華性染料が蒸着したプラスチックレンズと前記赤外線を照射する加熱手段との間に前記昇華性染料が蒸着していない領域をカバーする遮蔽手段を配置することにより前記昇華性染料が蒸着していない領域に前記赤外線が照射されるのを抑制することを特徴とする。
(3) 所定の濃度勾配を有する染料蒸着領域と染料が蒸着していない領域を持つプラスチックレンズの蒸着面に対して一方向から赤外線を照射して加熱するための加熱手段と、該加熱手段と前記プラスチックレンズとの間に置かれ,前記染料が蒸着していない領域をカバーする遮蔽手段とを有し、前記染料が蒸着していない領域に対する前記赤外線の照射を抑制した状態で前記プラスチックレンズの蒸着面を赤外線の照射により加熱することにより染料をプラスチックレンズに定着させることを特徴とする。
本発明によれば、気相転写染色方法において、加熱によるレンズの黄変を抑制し、好適に染色を行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参考にしつつ説明する。図1は本実施形態のプラスチックレンズ染色を行うためのシステムを示した染色システム概略図である。
100はプラスチックレンズ染色用基体作成装置であり、モニタ101、パーソナルコンピュータ(以下、PCと略す)102、出力手段となるプリンタ103等から構成される。なお、本実施形態ではインクジェットプリンタを使用している。104はキーボード、マウス等のPCを操作するための操作部である。PC102は、種々の演算処理を行うCPUを有する制御部や、ハードディスク等を備える。制御部は、インクジェットプリンタ103から染色用基体1を出力させるための制御を行う。また、ハードディスク内には、プラスチックレンズを染色するための染色用基体を作成するための染色用基体作成ソフトのプログラムや、プラスチックレンズの各種基材情報、基体に塗布するための染色用インクの色データ等が記憶されている。
図1に示す染色用基体1は、インクジェットプリンタ103に使用可能な紙等の媒体に所定の形状にて染色用インクが塗布(出力)されたものである。なお、染色用基体1の熱の吸収効率を上げるために、裏面(印刷を行わない面)の全域が黒色となっているものが使用される。このような片面が黒色の紙は、一般に市販されているものを使用することや、両面が白色の紙の片面を黒く塗ることにより使用することができる。
また、インクジェットプリンタ103に用いられる染色用インク(用材)は、少なくとも赤、青、黄、の計3色が用いられる。染色用インク中に含有される染料は昇華性を有しつつ、昇華時の熱に耐えうる染料を使用する必要がある。さらにプラスチックレンズへ染料が蒸着したあと、発色作業を行い染料をプラスチックレンズへ定着させたときに染色がムラのない状態にてプラスチックレンズに行われている必要がある。これらの点を考慮した場合、染料としてはキノフタロン系昇華性染料またはアントラキノン系昇華性染料が好適に用いられ、染色用インク中に微粒子分散または溶解している。
図1に示す20は真空気相転写機である。真空気層転写機20の正面には、プラスチックレンズ10や前述した染色用基体1等を出し入れするための図示無き開閉扉が設けられている。真空気相転写機20内部の上部には、染色用基体1を熱して染料を昇華させるための熱源としての加熱ランプ21が設置される。本実施形態で使用される加熱ランプ21はハロゲンランプを使用しているが、染色用基体1と非接触にて加熱が可能なものであればこれに限るものではない。また、真空気相転写機の床部には、染色用治具200が置かれ、この染色用治具200にプラスチックレンズ10や染色用基体1を取り付ける。また、22はロータリーポンプであり、真空気相転写機20内をほぼ真空にさせるために使用する。23はリークバルブであり、このバルブを開くことで、ほぼ真空になった真空気相転写機20内に外気を入れ、大気圧に戻すものである。
図2は染色用治具200の構成を示した図である。
13は染色用基体1を載せるための円筒の形状を有する基体支持台であり、その内側にレンズ支持台11が収まるように置かれる。12はレンズ支持台11の上に置かれる円筒形のレンズ台であり、プラスチックレンズ10が下に落ちないようレンズを支えるレンズ支持部12aを備える形状となっている。レンズ台12をレンズ支持台11上に載せた後、プラスチックレンズ10の凸面側の周縁をレンズ支持部12aに載せることにより、プラスチックレンズ10を所定の高さ位置で保持させることができる。14は基体押さえであり、基体支持台13の上部に載せられた染色用基体1を基体押さえ14と基体支持台13とで挟み込むことにより、染色用基体1が動かないようにしっかりと固定保持する。このとき染色用基体1のインク塗布面2は、レンズ10側(下側)に向けてレンズ10の染色予定面(本実施形態では凹面側)に対して非接触にて対向している。また、気相転写染色方法にてプラスチックレンズ10を染色するにあたっては、染色用基体1とプラスチックレンズ10との間が極端に狭いと染料の分散が十分に行われず、レンズ表面の染色がむらとなって蒸着する傾向がある。従って、プラスチックレンズ10の染色面側の幾何中心から染色用基体1までの距離は最低5mm程度離しておくことが好ましい。また、反対にプラスチックレンズ10の染色面と染色用基体1との間が離れすぎると、プラスチックレンズ10への染色濃度が薄くなってしまい、所望する染色濃度が得られ難くなる。また、気層中で染料の粒子が均一に分散されず、反対に互いに集結するため、プラスチックレンズ10の染色面にてむらになって蒸着する傾向がある。このような点から、プラスチックレンズ10の染色面側の幾何中心から染色用基体1までの距離は5〜30mmが好ましく、さらに好ましくは5〜20mmである。
なお、使用されるプラスチックレンズ10の材質は、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体(CR−39))、ポリウレタン系樹脂、アリル系樹脂(例えば、アリルジグリコールカーボネート及びその共重合体、ジアリルフタレート及びその共重合体)、フマル酸系樹脂(例えば、ベンジルフマレート共重合体)、スチレン系樹脂、ポリメチルアクリレート系樹脂、繊維系樹脂(例えば、セルロースプロピオネート)、さらにはチオウレタン系やチオエポキシ系等の高屈折率の材料や、その他従来より染色性に劣るとされた高屈折率材料等を用いることができる。
また、図1に示す30はオーブンであり、内部に赤外線を放射し、プラスチックレンズ10を加熱するための加熱部31が設置されている。なお、本実施形態では加熱部31として放射面がセラミックプレートからなるIRヒーターを用いており、一方向に向けて赤外線を照射するようになっている。真空気相転写機20にて昇華性染料がついたプラスチックレンズ10を所定温度で加熱し、染料を定着、発色させるために用いられる。
図3はオーブン30の詳細を示した図である。加熱部31は図示無き上下駆動機構により、上下方向に移動可能となっており、加熱時にはレンズ台12に当接する高さに置かれる。32は遮蔽部であり、耐熱性を持ち少なくともプラスチックレンズの直径を超えるだけの幅を有する板状の部材からなる。なお、本実施形態では薄いアルミ板を用いている。また、遮蔽部32はレンズ台12に載せられたプラスチックレンズ10と加熱部31との間にて、遮蔽部32の底面がレンズ台12の上面と同じ高さとしつつ、レンズ台12水平方向に移動可能にオーブン30内に取り付けられている。この遮蔽部32によって、プラスチックレンズ10の一部の領域を遮蔽する(カバーする)ことにより、その領域に向う赤外線を遮蔽することができる。なお、遮蔽部32はプラスチックレンズ10に向う赤外線を完全に遮蔽する必要は無く、加熱部31による加熱の際に、遮蔽部32により遮蔽した部分のプラスチックレンズ10の材質が黄変するだけの温度に達していなければよい。また、プラスチックレンズ10の表面を全面染色する場合には、この遮蔽部32は必要なく、プラスチックレンズ10の上方から取り除かれる。遮蔽部32は、レンズ表面を所定の濃度勾配を有する染色領域と染色されない無色透明な領域とを有するグラデーション染色を行う場合において、無色透明な領域を加熱により黄変させない目的で使用される。また、本実施形態では遮蔽部32をオーブン30内に取り付けるものとしているが、これに限るものではなく、オーブン30から独立して取り出し可能な部材であってもよい。
以上のような構成を備える染色システムを用いて、気相転写染色方法によりプラスチックレンズを染色する方法を以下に説明する。ここではグラデーション染色を行う場合について説明する。
PC102を操作して図示せぬ染色用基体作成ソフトを起動させ、モニタ101に染色用基体作成画面を表示して操作部104を用いてグラデーション用のデータを設定しておき、インクジェットプリンタ103から図4に示すようなグラデーション用の染色用基体1を出力する。図示するように出力された染色用基体1は、濃い色濃度からなる昇華性染料の塗布領域2aと同色にて薄い色濃度からなる昇華性染料の塗布領域2bからなる着色層2と、昇華性染料が塗布されていない無着色層3とからなる印刷領域を持つ。なお、図4中の円形状の輪郭は、全面染色を行う際の印刷領域を模式的に示したものであり、染色するレンズの径と同じか、レンズ径よりも大きな領域を持つ。また、グラデーション染色の場合には略半円形上の着色層2のみが印刷されることとなる。
なお、図4では2段階の濃度勾配を有するように着色層2を形成するものとしているが、これに限るものではなく、プラスチックレンズに所望するグラデーション染色を行うことのできる着色層の出力形態であればよい。例えば、濃度勾配が連続的に変化するような着色層であってもよいし、段階的(3段階以上)に濃度勾配が変化するような着色層でもよい。
このようにして得られた染色用基体1とプラスチックレンズ10とを前述した真空気相転写機20内に設置してプラスチックレンズ10に昇華性染料をつける。染色用治具200を用いてプラスチックレンズ10、染色用基体1を非接触に対向させた状態でセットした後、真空気相転写機20を密閉してロータリーポンプ22を用いて真空状態にする。このときの真空状態とは0.1kPa〜5kPa付近まで減圧した状態をいう。0.1kPaを下回っても差し支えないが、高性能排気装置を必要とする。また、装置内の気圧が高ければ高い程、染料を昇華させるのに必要な温度が高くなるため、圧力の上限は5kPa、さらに好ましくは0.1kPa〜3kPaである。
真空気相転写機20が所定の真空度に達したら、ハロゲンランプ21を点灯させ、染色用基体1を上方から非接触にて加熱する。染色用基体1上での加熱温度は染料の変質やレンズの変形が生じない中で、できるだけ高い温度になるようにすることが好ましい。ハロゲンランプ21の点灯により染色用基体1が加熱されるため、図4に示す着色層2より染料が昇華、蒸散し、プラスチックレンズ10の凹面側に蒸着する。この際、プラスチックレンズ10と染色用基体1とは所定距離だけ離れているため、着色層2の濃淡領域がうまく混ざり境界がぼけてプラスチックレンズ10に染料が蒸着する。ハロゲンランプ21の点灯による染色用基体1への加熱時間は、着色層2上の染料が殆ど昇華、蒸散するまで行えばよい。
加熱が終了したら、ハロゲンランプ21の点灯を止めるとともにリークバルブ23を開いて常圧に戻し、真空気相転写機20の扉を開けプラスチックレンズ1をレンズ台12に載せた状態で取り出す。プラスチックレンズ1には昇華した染料が蒸着しているが、このままでは取れやすいので、図3に示すオーブン30に入れ、常圧下にて加熱し定着(発色)させる。
オーブン30にレンズ台12を置いた後、図5(a)に示すように遮蔽部32をプラスチックレンズ10上の昇華性染料が蒸着していない領域を上方からカバーするように位置させた後、図3に示すように加熱部31をレンズ台12を下げ、遮蔽部32を挟んだ状態でレンズ台12に当接させる。なお、遮蔽部32は薄い板であるため実質的に加熱部31はプラスチックレンズ10の蒸着面の上方を塞ぎ蓋の役目を果たす。このように蒸着面の上方を塞ぐことによって、加熱時における昇華性染料の再昇華の影響を抑制し、所望する色濃度の染色を得ることができる。
レンズの設置作業終了後、加熱部31を所定温度に加熱させ、赤外線をプラスチックレンズに向けて照射させる。加熱温度はプラスチックレンズ10の耐熱温度以下で、できるだけ高温に設定された温度にて行う。例えば、加熱温度はレンズ上で70〜200℃、加熱時間は10分〜3時間程である。このような工程を経て、プラスチックレンズ10の凹面側に蒸着した染料が定着し、プラスチックレンズ10が染色されることとなる。この際、図5(b)に示すように、プラスチックレンズ10上の染料の蒸着領域2′には赤外線が直接照射され、蒸着されていない領域は遮蔽部32により赤外線の照射から保護されることとなる。その結果、赤外線が当たる蒸着領域2′では、染料の定着に必要な加熱温度となる一方、染料が蒸着していないレンズ上の領域は、加熱温度が低く抑えられ、黄変することなく無色透明な状態を維持することが可能となる。なお、蒸着領域2′は加熱温度によって黄変しやすくなるが、染色されているため目立つことはない。また、蒸着面に対する一方向からの加熱により、プラスチックレンズ全体を加熱する場合よりも黄変する程度が軽減する。
なお、本実施形態ではプラスチックレンズの凹面側に染料を蒸着させ染色を行うものとしているが、これに限るものではなく、レンズの凸面側に染色を行うこともできる。
さらに本実施形態では、加熱部としてIRヒータを用いるものとしているが、これに限るものではなく、加熱手段として赤外域の波長のレーザ光を照射するレーザ光源と、レーザ光源から出射したレーザ光を走査する手段とを用いてプラスチックレンズの蒸着面(蒸着領域)に向けて赤外線を走査させることによりプラスチックレンズの蒸着面を加熱させることもできる。
次に、本実施形態を用いた場合におけるレンズの黄変抑制の程度を示す実施例、及び比較例を以下に示す。
<実施例1>
プラスチックレンズとして直径75mm、屈折率1.74のレンズ、「HIE-1」(三井化学株式会社製)を用いた。図6に示すように、染色用基体1の印刷領域の印刷条件を直径94mmの円形とし、昇華性染料の塗布領域2aを印刷領域の端から直径に対して42mmまで、塗布領域2bを塗布領域2aから10mmまでの範囲とした。塗布領域2aの印刷処方を赤:430ドット(プリンタの最大出力100%が1024ドットとなる),黄:150ドット,青:734ドットからなる濃いグレー色とし、塗布領域2bの印刷処方を赤:213ドット,黄:75ドット,青:367ドットからなる薄いグレー色として、図1に示すインクジェットプリンタ103を用いて昇華性染料を含有するインクを印刷用紙に塗布し、染色用基体1を得た。この染色用基体1及びプラスチックレンズ10を図2に示す真空蒸着機20内に染色用治具200を用いて取り付け、真空度1.0kPa、染色用基体1上の温度、約230℃の条件にて昇華性染料をプラスチックレンズに蒸着させた。
蒸着後、プラスチックレンズ10を図3に示すオーブン30に入れ、プラスチックレンズ10上の染料が蒸着していない無色透明領域(以下、クリア領域と記す)をアルミ板からなる遮蔽部32にてカバーした状態で加熱部31(セラミックプレートヒーター)をレンズ台10に当接させるように位置した後、加熱部の設定温度240℃にて20分加熱し、染料をプラスチックレンズ10に定着させ、染色を完了させた。
染色後のプラスチックレンズにはグレー色のグラデーション染色が得られており、クリア領域は目視にて黄変は認められなかった。また、レンズクリア領域の黄変度(YI値)を測色器(製品名DOT−3 株式会社村上色彩技術研究所製)により測定した。測定の結果、YI値は2.42であった。なお、比較のために同じ材質からなる未染色(未加工)のプラスチックレンズのYI値を測定した。未染色レンズのYI値は2.21であった。
<実施例2>
オーブン30による定着工程時に遮蔽部を使用せずに加熱した以外は、全て実施例1と同じ条件で行った。染色後のプラスチックレンズにはグレー色のグラデーション染色が得られており、クリア領域は目視にて僅かに黄変が認められる程度であった。また、レンズクリア領域のYI値は2.88であった。
<比較例1>
定着工程時にレンズのクリア領域をアルミ板からなる遮蔽部にて遮蔽し、レンズ全体を加熱するオーブン(送風定温恒温器 DKN612 ヤマト科学株式会社製)を用いて加熱条件160℃(オーブン設定温度) 加熱時間90分としたこと以外は、全て実施例1と同じ条件で行った。染色後のプラスチックレンズにはグレー色のグラデーション染色が得られていたが、クリア領域は明らかに黄変が認められた。また、レンズクリア領域のYI値は3.54であった。
<比較例2>
定着工程時にレンズのクリア領域を遮蔽しない状態で、比較例1と同じレンズ全体を加熱するオーブンを用いて加熱条件160℃(オーブン設定温度) 加熱時間90分としたこと以外は、全て実施例1と同じ条件で行った。染色後のプラスチックレンズにはグレー色のグラデーション染色が得られていたが、クリア領域は明らかに黄変が認められた。また、レンズクリア領域のYI値は3.62であった。
染色システムの構成を示した模式図である。 染色用治具の概略構成を示した図である。 オーブンの概略構成を示した図である。 インクジェットプリンタにより作成された染色用基体の例を示した図である。 遮蔽部を用いて加熱を行う際の概略構成を上方及び側方から示した図である。 実施例及び比較例で使用した染色用基体の作成条件を示した図である。
符号の説明
1 染色用基体
2 着色層
10 プラスチックレンズ
20 真空気相転写機
30 オーブン
31 加熱部
32 遮蔽部

Claims (3)

  1. 昇華性染料を溶解又は微粒子分散させた染色用用材を電子計算機にて設定した色データに基づいて基体上に塗布し染色用基体を得る第1ステップと、該第1ステップにて得られた前記染色用基体の塗布面をプラスチックレンズと略真空中にて非接触に対向させた状態にて設置し,前記染色用基体を加熱することにより前記昇華性染料を昇華させ前記プラスチックレンズに対して蒸着させる第2ステップと、を有し、前記染色用基体に対向するレンズ表面の一部領域を染色し、他の領域を染色しないプラスチックレンズの染色方法において、
    前記第2ステップにより前記昇華性染料が蒸着している領域には所期する温度となるように赤外線を照射して加熱して昇華性染料を定着させ、昇華性染料が蒸着していない領域には赤外線による温度上昇を制限し、前記昇華性染料をプラスチックレンズに定着させる第3ステップを有することを特徴とするプラスチックレンズの染色方法。
  2. 請求項1のプラスチックレンズの染色方法において、前記第3ステップは前記昇華性染料が蒸着したプラスチックレンズと前記赤外線を照射する加熱手段との間に前記昇華性染料が蒸着していない領域をカバーする遮蔽手段を配置することにより前記昇華性染料が蒸着していない領域に前記赤外線が照射されるのを抑制することを特徴とするプラスチックレンズの染色方法。
  3. 所定の濃度勾配を有する染料蒸着領域と染料が蒸着していない領域を持つプラスチックレンズの蒸着面に対して一方向から赤外線を照射して加熱するための加熱手段と、該加熱手段と前記プラスチックレンズとの間に置かれ,前記染料が蒸着していない領域をカバーする遮蔽手段とを有し、前記染料が蒸着していない領域に対する前記赤外線の照射を抑制した状態で前記プラスチックレンズの蒸着面を赤外線の照射により加熱することにより染料をプラスチックレンズに定着させることを特徴とする染色装置。
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