JP4801309B2 - 皮膚への塗布物質を塗被した擦過面付きアプリケータ - Google Patents

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Description

【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、特に角質層を崩壊させ、その下の表皮層に物質を投与することによる皮膚内への物質の局所投与に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
皮膚を通して身体に物質を投与することは、一般的には侵襲性であり、皮内(ID)、筋内(IM)又は皮下(SC)注入又は注射を容易にするために針や注射器が必要である。これらの方法は、被検者にとって痛みを伴うものであり、熟練者の技能を必要とし、出血を生じる場合が多い。最近、皮膚の外側バリヤとして働く角質層、即ち、厚さ約10〜20μmの角質化された細胞でできた薄い外側層を崩壊させ又は擦過し、露出した表皮に所望の物質を投与する器具を用いることによりこれらの欠点を解決する試みが行われている。この場合、物質は、表皮を通って血管及びリンパ管のある真皮に拡散することができ、それにより体全体にわたって吸収されて投与されるようになる。ワクチンの局所投与の場合、表皮それ自体は、抗原を提供する細胞が多いので薬剤投与に特に望ましいターゲットである。比較すると、真皮に含まれる抗原提供細胞の数はこれよりも少ない。角質層及び表皮中には神経又は血管が無く、したがってこの方法は、抗原に反応できる皮膚層への接近を与えながら本質的に痛みが無く且つ出血を生じないという利点を有している。
【0003】
従来技術の報告によれば、物質を身体に投与する目的で角質層を崩壊させる種々の器具及び方法が存在する。例えば、角質層の切断は、カーソン(Carson)氏等に付与された米国特許第5,679,647号明細書に教示されているような穿刺によって達成できる。この米国特許は、例えばツベルクリン皮膚試験やアレルギー検査に用いられる器具に見受けられる小径の尖叉にポリヌクレオチドを塗被し、かかる尖叉を用いて物質を皮膚内へ投与できることを教示している。かかる方法では、皮膚を尖叉で穿刺する必要があり、その結果、塗被状態の物質の皮内注入が行われることになる。これは、小径の極小突起の表面に塗被された物質が穿刺ではなく皮膚表面全体にわたる横方向の擦過により一層効果的に投与されることが思いがけず発見された本発明とは対照的である。米国特許第5,003,987号明細書、米国特許第5,879,326号明細書及び米国特許第3,964,482号明細書は、擦過により角質層を切断することを教示しているが、この手法によって有効且つ効果的な投与を達成するための局所塗布法の最適化の仕方については殆ど知られていない。かかる最適化は、局所核酸投与、特に核酸を主成分とするワクチンの局所投与や遺伝子治療にとって特に関心の高いものである。この点に関し、局所投薬のための最も一般的に提案されている方法は、ワクチンの塗布前に皮膚を擦過することである。しかしながら、予想外のこととして、核酸やペプチド、又はポリペプチド例えばアレルゲンの投与が、物質を擦過すると同時に投与した場合に一層効率的であって効果があるということが判明した。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明は、物質、特に核酸、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド又はポリペプチドを局所投与する最適化された方法を提供する。核酸は、遺伝子発現を促進させ、これらが角質層の擦過と同時に投与されると、発現されたタンパク質に対する免疫反応を促進させるということが発見された。同様に、擦過と同時に投与されたアレルゲンは、従来のアレルゲン検査方法よりも活発な免疫反応を生じさせる。
【0005】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本明細書で用いる「擦過」という用語は、例えば引っ掻くこと又は擦ることによる皮膚の外側層の崩壊を意味し、その結果、崩壊した角質層の領域が生じる。これは、角質層を貫通して別個独立の穴を生じさせ、穴相互間に崩壊しなかった角質層の領域が生じる「穿刺」とは対照的である。本発明の方法によれば、物質、例えば核酸を主成分とするワクチンやペプチド、例えばポリペプチドを予め擦過した皮膚に塗布するのではなく擦過と同時に皮膚に塗布する。すなわち、物質を、予め擦過した皮膚に受動的に塗布するのではなく、皮膚に擦り込む。この方法の結果として、擦過後塗布法と比較して投与結果及び応答性が向上する。物質を任意の薬学的に許容できる形態で皮膚中へ投与するのがよいが、液体又はゲル調合物が好ましい。一実施形態では、物質を皮膚に塗布し、次に、擦過器具を物質の付着した皮膚上で往復して動かし又は擦る。所望の結果を得るための最小限度の擦過を利用することが好ましい。選択された物質にとって擦過の適当な度合いの判定は、当業者により適宜実施される。別の実施形態では、物質を塗布に先立って投与器具の擦過表面に乾燥した形態で塗布してもよい。この実施形態では、元に戻す液体(以下、「戻し液」ともいう)を、投与部位のところで皮膚に塗布し、物質を塗被した擦過器具を戻し液の部位のところで皮膚に適用する。次にこれを皮膚上で往復して動かし、又は擦って物質が皮膚の表面上で戻し液中に溶解するようになり、そして擦過と同時に投与されるようになる。変形例として、戻し液を擦過器具内に収容し、器具を擦過のために皮膚に適用したときに放出されて物質を溶解するようにしてもよい。また、核酸製剤をゲルの形態で擦過器具上に塗被してもよいことが判明している。ただし、遺伝子発現の向上が、本発明の他の幾つかの実施形態の場合と同じほど顕著ではない。
【0006】
擦過による角質層の崩壊のための当該技術分野で知られている任意の器具を本発明の方法に用いることができる。かかる器具としては、例えば、短い顕微針又は極小突起のアレイを備えた超小型電子機械(MEMS)装置、サンドペーパー状の器具、スクレーパ等が挙げられる。擦過器具が器具からの流体を収容したり放出するリザーバを備えていない場合、物質を含有した液体又は戻し液を擦過に先立って、例えば別個のディスペンサ又はポンプから別々に皮膚に塗布する必要がある。しかしながら、リザーバは、擦過器具の一体部分であるのがよい。代表的には、リザーバは、顕微針又は極小突起を通るチャネルを介して、又はかかる顕微針又は極小突起相互間でリザーバから出るチャネル、或いは多孔質材料を通して器具の擦過表面と流体連通状態にある。この実施形態では、物質又は戻し液は、擦過器具のリザーバ内に収容され、擦過に先だって、又は擦過と同時に皮膚表面に小出しされる。擦過器具は、物質又は戻し液の投与速度を制御し、又は物質又は戻し液の投与量を制御する手段を更に有するのがよい。
【0007】
本発明の方法に用いられる核酸は、RNA又はDNAであるのがよい。これら核酸は、局所投薬及び細胞による摂取及び圧出に適した任意の物理的形態であってよい。これは、ウイルス性ベクター又はリポソーム内に含まれ、又は当該技術分野で知られているように自由ポリヌクレオチド、例えばプラスミドとして投与することができる。核酸は代表的には、核酸と適合性のある薬学的に許容できる調合物、例えば流体又はゲルの状態に調合されることになる。アレルゲン組成の調合を含む本発明で用いられる薬学的に許容できるペプチド及びポリペプチドの調合も又、当該技術分野において周知である。
【0008】
最小限度の擦過(皮膚上で1回という少ないパス)という皮膚細胞への核酸の投与結果の向上をもたらすのに十分であることが判明している。核酸の投与及び圧出量は、皮膚上の擦過のパスの回数の増大につれて増加し続ける。6回以上の擦過パスにより、本発明者の実験装置では、核酸投与結果において最高の改善が見られた。皮膚上の全ての擦過パスは同一方向であってもよいが、方向を擦過中変えることが好ましい。核酸ワクチンの投与に今日最も普通に用いられているプロトコルは、投与量が少ない場合、通常追加の反応エンハンサを伴うIM注入方式である。本発明の方法を用いて投与されるべき核酸ワクチンの適当な投与量の判定は、当業者が適宜行う選択事項である。しかしながら、核酸ワクチンの投与が遺伝子発現のレベルや免疫反応の刺激で立証されるようにたとえ反応エンハンサを用いなくてもIM投与よりも効率が高いということが本発明の利点である。
【0009】
また、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及びポリペプチド、特にアレルゲンを本発明の方法に従って局所投与できる。アレルゲンは従来、ツベルクリン尖叉試験と類似した器具を用いる皮内穿刺によって皮膚中に投与される。しかしながら、予想外のこととして、擦過と投与を同時に行うことによりアレルギー反応の向上を得ることができるということが判明した。これにより、一層感度の高い検査が得られ、本発明の方法を用いて従来のアレルギー検査に対する僅かな又は感じ取れないほど小さな反応を容易に検出できるという利点が得られる。
【0010】
実験例1
ソリッド顕微針アレイを用いるプラスミドDNAの投与
ホタルのルシフェラーゼを暗号化したプラスミドDNA(35μg)を、麻酔をかけたBALB/cマウスに標準の30g針及び1cc注射器をもちいてIM注入又はID注入法により投与し、又は200μmシリコン顕微針アレイを用いて局所投薬した。2つのプロトコルを顕微針アレイを用いてDNA投与のため用いた。
1)擦過と投与の同時実施(ABRdel):マウスの尾側背を電気式クリッパを用いて剃毛し、次に10番の小刀を用いて残りの毛を除去した。次に、DNA溶液を皮膚表面上の1cm2 の部位に塗布し、顕微針アレイをこの溶液と接触状態に配置し、そして皮膚表面全体にわたり交互の方向で横方向に6回動かした(各方向において3回づつ)。DNA溶液を自然乾燥させ、皮膚部位を皮膚生検材料が回復するまで露出した状態にした。
2) 予備擦過(preABR):上述のように剃毛を行った後、1cm2 の部位の予備擦過を、マイクロアレイを皮膚表面全体にわたり交互の方向で6回横方向に動かすことによって行った(2つの方向の各々について3回のパス)。次に、DNA溶液を擦過した皮膚表面上に広げ、上述したように空気乾燥させた。毛の小胞又は剃毛手技の結果として得られたニックを通る考えられるDNA投与の対照例として、動物を上述したように剃毛したが、マイクロアレイの擦過を行わなかった(noABR)。DNA溶液を1cm2 の剃毛皮膚部位に局所的に塗布し、自然乾燥させた。
【0011】
全てのグループにおいて、組織サンプルをDNA投与後24時間で集めた。組織ホモジネートをルミネセンスアッセイを用いてルシフェラーゼ活性について分析した。全てのサンプルを標準BCAタンパク質アッセイによって定められているように全タンパク質含有量について標準化した。データを全タンパク質の1mg当たりのRLU(Relative Light Units:相対光単位)として表し、結果を図1に示した。各記号は、1匹のマウスの応答性を表している。2つの別々の実験から得られた累積データが示されている(各グループについてn=6)。ABRdelに続いて達成されたルシフェラーゼ遺伝子発現のレベルは、その程度が針を利用したIM及びID注入と類似しており、擦過した又は擦過しなかった皮膚への局所投与の場合よりも著しく大きかった(p=0.02)。
【0012】
実験例2
投与結果と擦過パスの回数との相関関係
ルシフェラーゼプラスミドDNA(35μg)を実験例1に記載しているようにABRdelによって投与したが、皮膚表面全体にわたる器具の横方向パスの回数を変えた(12回、10回、6回、4回及び2回)。加うるに、DNA溶液を剃毛したが、擦過しない皮膚の表面上に付着させた後、顕微針アレイを繰り返し皮膚に押し付けて(6回)穿刺の度合いが中程度の投与をシミュレートした。擦過を行わない場合(noABR)のDNA溶液の局所塗布が、毛の小胞又はニックを通る考えられるDNA投与の対照例として行った。皮膚生検材料(1cm2 )を塗布後24時間で集め、そして実験例1に記載しているようにルシフェラーゼ活性について分析した。
【0013】
結果が図2に示されている。各記号は、1匹のマウスの応答性を表しており、n=5の“x12”及び“x6”の場合を除き、全てのグループについてn=3であった。皮膚表面全体にわたる顕微針アレイのパスの回数の増大につれて遺伝子発現のレベルの増大が見られた。皮膚発現の平均レベルは、6回以上の擦過によって処理したグループ中のnoABR対照例の1,000倍〜2,800倍であった。皮膚の表面全体にわたる器具の4回、2回又は1回のパスに続く平均応答性は、それぞれバックグラウンドの約300倍、200倍及び30倍であった。「穿刺」グループの遺伝子発現の平均レベルは、バックグラウンドの2倍に過ぎず、noABR対照例と大差なかった。
【0014】
これら対照例の示すところによれば、擦過プロセスは、皮膚内へのDNAの局所投与の重要な要素である。遺伝子発現のレベルの増大は、擦過器具の擦過パスの回数の増加によって得られた。ただし、遺伝子発現は、1回のパスの後でも観察された。加うるに、皮膚を横方向に擦り又は擦過すると、顕微針アレイを横方向擦過を行わないで繰り返し皮膚に押し付ける方法と比較して、核酸投与結果及び遺伝子発現が著しく向上した。
【0015】
実験例3
核酸ワクチンの調合
ルシフェラーゼプラスミド(35μg)をID注入又は同時擦過及び投与により液体調合物(「ABRdel液体」)として実験例1に記載しているように皮膚表面全体にわたり顕微針器具の6回のパスで投与した。加うるに、DNAを粉末の状態に凍結乾燥させ、顕微針アレイの表面上に塗被し、そして同時擦過及び投与法により粉末として直接投与し(「ABRdel粉末」)、又は塗布時にPBS緩衝剤の状態で元に戻したの際に投与した(「ABRdel粉末/戻し」)。元への戻しを達成するのに、粉末を塗被したアレイを直接皮膚の表面上のPBSの液滴と直接接触させ、次に擦過と投与を同時に行った。顕微針アレイも又0.5%アガロースゲル中に溶解させたDNAを塗被し、上述したように同時擦過及び投与によって投薬した(「ABRdelゲル」)。擦過を行わない液体調合物(noABR)の局所塗布を対照例として行った。皮膚生検材料(1cm2 )を塗布後24時間で集め、実験例1に記載しているように分析した。
【0016】
結果は図3に示されている。各記号は、1匹のマウスの応答性を表している。2つの別々の実験から得られた累積データが示されており、各グループについてn=6である。皮膚のルシフェラーゼ発現の類似したレベル(noABRの約20倍〜30倍)が、ID注入法、ABRdel液体及びABRdel粉末/戻しグループについて観察された。元への戻しを行わないで、ゲル又は粉末を塗被されたDNAの直接的な投与を行った場合、結果的に遺伝子発現が統計的にnoABR対照例を上回ったものは無かったが、直接的なゲルを利用した投与に続く応答性は、対照例の平均応答性の約2倍〜10倍高かった。これらの結果の示すところによれば、同時擦過及び投与時にワクチンの乾燥形態の元への戻しは、液体ワクチン調合物の擦過と投与の同時実施と同等な結果をもたらす。これは、本発明の方法の商業的用途にとって利点がある。というのは、液体で充填したリザーバを備える擦過器具をワクチンを擦過によって塗布しているときにワクチンの元への戻しのためにこれにワクチン粉末を予め塗被できるからである。
【0017】
実験例4
プラスミドDNAの局所投与に対する抗体反応
B型肝炎の表面抗原(HbsAg)を暗号化したプラスミドDNAを、実験例1のABRdelプロトコルに従って、麻酔をかけたBALB/cマウスに標準の30g針及び1cc注射器をもちいてIM注入又はID注入法により投与し、又は200μmシリコンソリッド顕微針アレイを用いて局所投薬した。マウスに、1回の投与量当たり100μgの全部で3回の免疫処置を行った。漿液サンプルを各免疫処置後HbsAg(総Ig)に2〜3週間まで抗体の有無についてELISAによって分析した。DNAを、ニック又は毛の小胞を介する考えられる投与のために対照例として剃毛したが、擦過していない(noABR)に局所塗布した。データは、バックグラウンドの少なくとも3倍の吸収値を生じさせる漿液サンプルの最も高い希釈度として定義される抗HbsAg滴定量を表している(実験を受けたことのない免疫の無いマウスから得られた漿液)。
【0018】
1グループ当たり全部で10匹のマウスを分析した。平均滴定量が、図4中にバーとして示されており、個々のマウスの反応性は、白抜きの記号として示されている。結果の示すところによれば、ABRdelプロトコルは、生体内で(in vivo )強い漿液抗体反応を導いている。かかる反応の大きさは、IM(DNAを主成分とするワクチン投与について現在の標準)及びID注入により得られた大きさよりも著しく大きかった(免疫処置2,3の実施後p<0.05)。加うるに、ABRdelに続く反応性は、標準の針を利用した注入方式の何れかの実施後に観察された反応性よりもばらつきがかなり小さいものであった。3回の免疫処置後における平均滴定量は、IM注入に続く820及びID注入による4,800と比較して、ABRdelグループについて12,160であった。注目すべきこととして、ABRdel方式は、2回の免疫処置後の最も効率の高い投与方式であり、即ち、IM方式による40%(4/10)及びID注入法による50%(5/10)と比較して、100%(10/10)の動物を2回の免疫処置後にセロコンバージョンを行ったABRdelを介して処理した。擦過を行わないでプラスミドDNAを局所的に投与された動物のうち、検出可能な抗体反応を生じたものはゼロであった。さらに抗体アイソタイプの特性決定を行うと、ABRdelが標準の針利用IM及びID注入と類似した混合反応(IgG1とIgG2aの両方から成る)を引き起こすことがあることが分かった。これらの結果は、抗体反応がIgG2aが無く、もっぱらIgG1から成る遺伝子ガンを用いる上述の内皮ワクチン摂取とは対照的である(これについては、例えば、McCluskie, MJ et al., Molecular Medicine 5:287, 1999参照)。
【0019】
実験例5
アレルゲンの局所投与
ヒスタミンジヒドロクロリド(Histamine dihydrochloride )(2.5mg)を、実験例1で説明したように、200μmシリコンソリッド顕微針アレイを用いて擦過と投与の同時実施方式により、麻酔をかけた豚の皮膚に投薬した(ABRdel;皮膚表面全体にわたり器具の4回のパス)。ヒスタミンを液体又は凍結乾燥粉末として調合し、これをマイクロアレイの表面に塗被し、そして塗布時に皮膚上に直接水で元に戻した。比較のために、ヒスタミン溶液を皮膚の表面上に液滴として置き、その直後に尖叉器具をこの溶液と接触させて皮膚を穿刺するのに用いた。この尖叉器具は、アレルゲン検査で用いられる市販の器具に類似した長さが1mmの7本の金属製34g針から成っていた。ヒスタミンの作用効果ではなく、器具に起因した皮膚反応をモニタするため、その隣の皮膚の部位をマイクロアレイ又は尖叉状穿刺器具を用いてヒスタミンが無い状態で処理した。追加の対照例としては、擦過又は穿刺を行わないでヒスタミンを局所的に処理した皮膚部位が挙げられる。皮膚部位を、発赤、腫脹及び膨疹潮紅の症状を含む直後の炎症反応の有無についてモニタした。
【0020】
活発な炎症反応が、ソリッド顕微針アレイを介してヒスタミンで処理された皮膚部位のところで観察された。重度の紅斑及び腫脹(最高2mmの組織の隆起)が、ヒスタミンで処理された皮膚の領域全体にわたって観察され、ヒスタミンが無い状態で器具によって処理された部位は、腫脹が完全に無い状態で擦過の経路に沿って軽度の発赤を示しているに過ぎなかった。同様な強さの反応が、液体と元に戻された粉末ヒスタミン調合物の両方で観察された。尖叉状穿刺器具を用いてヒスタミン溶液で処理された皮膚部位も又、重度の紅斑及び腫脹を示した。ただし、この反応は、尖叉の接触箇所及びそのすぐ周りの領域に局所化されていた。擦過又は穿刺を行わないでヒスタミン溶液で局所的に処理された皮膚部位は、炎症が無く、通常の処理されていない皮膚とは区別できないように見えた。
【0021】
ヒスタミンジヒドロクロリドは、当該技術分野においてペプチド及びポリペプチドアレルゲンの評価のためのモデルシステムとして用いられている。これらの結果の示すところによれば、擦過と投与の同時実施の規定のプロトコルを、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であるアレルゲンの局所投与のために効果的に用いることができ、又これらの結果により、ペプチド又はポリペプチドアレルゲンの投与について類似した結果が得られることが予想される。皮膚穿刺と比較した微小擦過によるアレルゲン投与の利点としては、物質が皮膚の広い表面領域に分布されることが挙げられ、かくして、尖叉状器具による穿刺を用いて達成される局所分布と比較して、反応遺伝子部位が増加する。分布領域の増大と免疫−刺激性の高い表皮組織の良好な標的化との組合せにより現行の穿刺を利用した皮膚穿刺検査方法と比較してアレルゲン検査の感度を増大させることができる。加うるに、毛細血管床及び末梢神経網の上の浅い表皮組織を標的化することにより、本発明の投与は、現行の検査方法よりも侵襲性が低く且つ安全であることが見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実験例1で試験された種々の核酸投与プロトコルで得られた遺伝子発現のレベルを示す図である。
【図2】 実験例2に記載されているように、擦過の回数を変化させることにより得られた遺伝子発現のレベルを示す図である。
【図3】 実験例3に記載されているように核酸の調合物及び投与プロトコルを変えることにより得られた遺伝子発現のレベルを示す図である。
【図4】 実験例4に記載されているようにプラスミドDNAの局所投与を行った後の抗体反応を示す図である。

Claims (7)

  1. 乾燥した形態の物質塗被た擦過面と、擦過面と流体連通状態にある前記乾燥した形態の物質を溶解させる液体を収容したリザーバとを有することを特徴とする皮膚への物質の投与器具。
  2. 擦過面は、顕微針アレイであることを特徴とする請求項1記載の器具。
  3. 物質は、顕微針に塗被されていることを特徴とする請求項2記載の器具。
  4. リザーバは、擦過面に設けられた突起を貫通したチャネルを介して擦過面と連通していることを特徴とする請求項記載の器具。
  5. リザーバは、擦過面に設けられた突起相互間のチャネルを介して擦過面と連通していることを特徴とする請求項記載の器具。
  6. リザーバは、リザーバと擦過面との間に設けられた多孔質材料により擦過面と連通していることを特徴とする請求項記載の器具。
  7. 物質は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド又はポリペプチドであることを特徴とする請求項1記載の器具。
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