JP4800924B2 - 癌および慢性ウイルス感染の治療処置のための粘液腫症ウイルスの使用 - Google Patents

癌および慢性ウイルス感染の治療処置のための粘液腫症ウイルスの使用 Download PDF

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Description

(発明の分野)
本発明は、一般に、粘液腫症ウイルス(Myxoma virus)の治療的使用に関する。
(発明の背景)
種々のタイプの癌を処置するために用いられる現在の処置は、癌細胞を毒するか、または殺傷することによって作用する傾向にある。不幸なことに、癌細胞に毒性である処置は、健常細胞に同様に毒性である傾向がある。さらに、腫瘍の不均質性質は、癌の効率的な処置がうまく行われないままである主要な理由の1つである。化学療法および放射線療法のような現在の主流の治療は、毒性の狭い治療ウインドウ内で用いられる傾向にある。これらのタイプの治療は、変動するタイプの腫瘍細胞、およびこれらの処置が投与され得る限られたウインドウに起因して限られた利用可能性を有する鈍いツールであると考えられる。
現在開発されている現代の抗癌治療は、健常細胞にはより少ない毒性であり、それによって健常細胞を影響されずに残すより大きな可能性と同時に、腫瘍細胞を選択的に標的にすることを試みている。
腫瘍崩壊性ウイルス治療は、腫瘍細胞と正常細胞との間の細胞の差異を利用することを目的とする1つのアプローチである。この治療は、抗癌薬剤として、複製能力のある、腫瘍選択的ウイルスベクターを用いる。この腫瘍崩壊性ウイルスは、感染のために癌細胞を特異的に標的にするか、または健常細胞に対して癌細胞中の効率的な複製のためにより適しているかのいずれかである。これらの複製能力のある腫瘍崩壊性ウイルスは、不均質腫瘍集団を標的する選択的かつ高度に能力のある、天然に存在するか、または遺伝子的に操作されるかのいずれかである。この複製する選択的な腫瘍崩壊性ウイルスは、正常細胞では効率的に複製しないので、患者に対する毒性は、特に、放射線または化学療法のような伝統的な治療に比較して低い。
種々のウイルス株の腫瘍崩壊性活性について、多くの研究が報告されており、最も有望な腫瘍崩壊ウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1(「HSV1」)、レオウイルス、ワクシニアウイルス、水疱性口内炎ウイルス(「VSV」)またはポリオウイルスの天然に存在するか、または遺伝子的に改変されたバージョンである。抗癌剤として現在調査中の改変された腫瘍崩壊性ウイルスは、HSV、アデノウイルス、ニューカッスル病ウイルス(「NDV」)、レオウイルスおよびワクシニアウイルス、麻疹、VSVおよびポリオウイルスを含む。種々の腫瘍崩壊性ウイルスは、フェーズIおよびフェーズII臨床試験にあり、いくつかは、持続した効目を示している。しかし、どのウイルスが、持続する複製、特異性および潜在的な崩壊活性の腫瘍崩壊性目的を最良に満たすのかは未知である。腫瘍崩壊性ウイルスベクターの完全に効率的な候補は、短い生活環を有し、成熟ビリオンを迅速に形成し、細胞から細胞に効率的に拡散し、そして挿入の容易な大きなゲノムを有するものであろう。その上、証拠は、初期の先天的免疫応答を阻害すること、およびTh1応答の進展を遅延することが、腫瘍崩壊性治療の効目にとって重要であることを示唆している。ヒトウイルスが、抗レベルの抗体、および腫瘍崩壊ウイルスの発育のためと考えられる、多くのウイルスについて正常集団で観察されるT細胞応答によって測定されるように高度の免疫原性であることは明りょうである。
臨床作業は、現在の腫瘍崩壊性ウイルスが実際に安全であるが、完全に臨床的に有効である単一治療として十分な能力はないことを示している。腫瘍細胞の不十分または非効率的な感染が通常観察され、現在の動きは、候補ウイルスを、それらがそれらの有効性を増加するために治療導入遺伝子を発現するよう遺伝子的に操作することによって武装することである。上記で述べた腫瘍崩壊性ウイルスの大部分はまた、その他の一般的な腫瘍崩壊性治療と組み合わせて試験されている。
アデノウイルスは容易に遺伝子的に操作され得、そして周知の関連するウイルスタンパク質機能をもつ。さらに、それは、かなり温和な疾患をともなう。ONYX−015ヒトアデノウイルス(Onyx Phamaceuticals Inc.)は、臨床使用に最適化されている最も広範に試験された腫瘍崩壊性ウイルスの1つである。それは、p53−陰性腫瘍で優先的に複製すると考えられ、そして頭部および頸部癌患者との臨床試験で能力を示す。しかし、報告は、ONYX−15が、処置された患者の14%で客観的な臨床応答を生成したのみであったことを示す(Nemunaitis J、Khuri F、Ganly I、Arseneau J、Posner M、Vokes E、Kuhn J、McGarty T、Landers S、Blackburn A、Romel L、Randlev B、Kaye S、Kirn D、J.Clin.Oncol.2001年1月 15;19(2):289−98)。
WO96/03997およびWO097/26904は、腫瘍細胞成長を阻害し、そしてニューロン細胞に特異的である変異体腫瘍崩壊HSVを記載している。さらなる利点は、このHSVが容易に遺伝子的に改変され得、そして任意の所望されないウイルス複製を遮断する薬物が存在することである。しかし、このような共通のヒト病原体の適用は限定されている。なぜなら、一般的集団は、このウイルスに曝されており、そしてこのウイルスに対する免疫応答を獲得している可能性が高いからであり、これは、このウイルスの溶解効果を減じ得る。HSVはまた、重篤な副作用または潜在的に致死的な疾患を引き起こし得る。
III型レオウイルスは、比較的温和な疾患をともない、そしてそのウイルス遺伝子機能は、かなり良く理解されている。III型レオウイルスは、変異体ras発癌遺伝子を発現する細胞中で増大した複製性質を示し、そしてPKR−/−細胞中で優先的に成長する癌治療物として現在Oncolytic Biotechによって開発されている(Strong J.E.およびP.W.Lee,.J.Virology、1966.70:612−616)。しかし、レオウイルスは、遺伝子的に操作することが困難であり、そしてそのウイルス複製は、容易に遮断することは出来ない。
VSVは、比較的温和な疾患をともない、そしてまた周知のウイルス遺伝子機能を有している。WO99/04026は、種々の障害の広範な処置の発現のための遺伝子治療におけるベクターとしてVSVの使用を開示している。しかし、VSVは、それが、遺伝子的に操作することが困難であり、そしてそのウイルス複製を完全に遮断することが出来ないという点で上レオウイルスと同じ問題に苦しんでいる。
ワクシニアウイルスおよびパピロウイルスは、当該技術分野で記載されるその他の候補腫瘍崩壊性ウイルスであるが、重篤または潜在的に致死的である疾患をともなっている。
米国特許第4,806,347号は、ヒト腫瘍細胞に対するγインターフェロンおよびIFNγのフラグメントの使用を開示している。WO99/18799は、哺乳動物で疾患を処置する方法を開示し、そこでは、疾患細胞は、インターフェロン媒介抗ウイルス応答に欠陥を有し、この哺乳動物に、治療的に有効な量のインターフェロン感受性の複製コンピテントクローン性ウイルスを投与する工程を包含する。それは、VSV粒子が腫瘍細胞に対して毒性活性を有しているが、VSVによって正常細胞における細胞毒性の緩和がインターフェロンの存在下で起こることを詳細に記載している。WO99/18799はまた、NDV誘導感受性が、インターフェロン処置腫瘍細胞で観察されたが、正常細胞にインターフェロンを添加することは、これらの細胞をNDVに耐性にすることを開示している。この方法は、細胞をインターフェロン感受性ウイルスで感染することにより、細胞をインターフェロン感受性にすることを目的とする。
(発明の要旨)
1つの局面では、本発明は、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を阻害するための方法を提供し、この細胞に、有効量の粘液腫症ウイルスを投与する工程を包含する。
1つの局面では、本発明は、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態を処置するための方法を提供し、その必要のある患者に、有効量の粘液腫症ウイルスを投与する工程を包含する。
本発明はさらに、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を阻害するための、および欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を阻害するための医薬の製造における、有効量の粘液腫症ウイルスの使用を提供する。
本発明はさらに、疾患状態が欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられ、そして患者におけるこのような疾患状態を処置するための医薬の製造における、患者における疾患状態を処置するための有効量の粘液腫症ウイルスの使用を提供する。
別の局面では、本発明は、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態を阻害する使用のため、および欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態を処置する使用のための、粘液腫症ウイルスおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。
別の局面では、本発明は、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態を阻害するため、および欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態を処置するための、粘液腫症ウイルスおよび指示書を含むキットを提供する。
本発明はさらに、患者中の欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を検出するための方法を提供し、この患者に検出可能なマーカーを発現するように改変された粘液腫症ウイルスを投与する工程;このウイルスを上記患者中の欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞に感染させる工程;およびこの患者において検出可能なマーカーを発現する細胞を検出する工程を包含する。
本発明はさらに、サンプル中の欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を検出するための方法を提供し、この細胞を培養する工程、培養された細胞を粘液腫症ウイルスに曝す工程;および粘液腫症ウイルスによる細胞の感染度を決定する工程を包含する。
本発明は、ウサギ粘液腫症ウイルスが、インターフェロンに非応答性であるものを含む、欠損した先天的抗ウイルス応答を有するヒト腫瘍細胞を含む細胞を選択的に感染し得るという予期せぬ発見に基づく。この文脈で用いられる用語「先天的」は、非抗原特異的免疫応答を記載する。粘液腫症ウイルスは、正常ヒト細胞では効率的に複製しないので、このウイルスは、従って、例えば、癌のための腫瘍崩壊性処置のような、インターフェロンに非応答性である細胞を含む、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞によって特徴付けられる種々の障害および状態のための処置として用いられ得る。このウイルスはまた、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を識別するため、およびこれら細胞をインビボで造影するために用いられ得る。
本発明のその他の局面および特徴は、添付の図面と組み合わせ、本発明の詳細な実施形態の以下の説明を検討する際に当業者に明らかになる。しかし、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているけれども、例示によってのみ与えられることが理解されるべきである。なぜなら、本発明の思想および範囲内で、種々の変更および改変が、この詳細な説明から当業者に明らかになるからである。
図面において、これらは、本発明の実施形態を例のみによって示す。
(詳細な説明)
本発明者らは、通常、ウサギに感染するウイルスである粘液腫症ウイルスが、例えば、インターフェロンに非応答性である細胞である、欠損した先天的抗ウイルス応答を有するヒト細胞を含む細胞に選択的に感染し、かつそれを殺傷し得ることを発見した。粘液腫症ウイルスは、その一方、正常ヒト細胞では効率的に複製しない。多くの疾患または症状、例えば癌は、インターフェロンに応答性でない細胞を含む、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられるので、粘液腫症ウイルスを用いて、正常な健常細胞に対しては低毒性で、癌を含むこのような疾患および症状を処置し得る。粘液腫症ウイルスはまた、慢性的に感染された細胞、従って、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を処置するために用いられ得る。例えば、多くのウイルスは、細胞の抗ウイルス、インターフェロン応答を阻害するよう機能する遺伝子産物をコードする。粘液腫症ウイルスは、これらの細胞を選択的に感染し得る。
粘液腫症ウイルス(「MV」)は、ウサギにおける粘液腫症の原因因子である。MVは、最も大きいDNAウイルスであるPoxviridae科のLeporipoxvirus属に属する。MVは、その自然の宿主である米国におけるSylvilagusウサギ中で良性疾患を誘導する。しかし、ヨーロッパウサギでは、全身的そして特に粘膜領域で見出される損傷によって特徴付けられる、致死的な疾患を引き起こす病原性かつ宿主特異的なポックスウイルスである(Cameron C、Hota−Mitchell S、Chen L、Barrett J、Cao JX、Macaulay C、Willer D、Evans D、McFadden G.Virology 1999、264(2):298−318;Kerr P & McFadden G.Viral Immunology 2002、15(2):229−246)。
MVは、感染細胞の細胞質で複製する163kbの二本鎖DNAゲノムをもつ大きなウイルスである(B.N.Fields、D.M.Knipe、P.M.Howley編、ウイルス学 Lippincott Raven Press、New York、第2版、1996)。MVは、宿主の免疫および炎症応答の下方制御、ならびにウイルス感染細胞のアポトーシスの阻害に関連している種々の細胞結合タンパク質および分泌タンパク質をコードすることが知られている。MVは、すべてのヒト体細胞によって取り込まれ得る。しかし、正常ウサギ体細胞中以外では、細胞が正常な先天的抗ウイルス応答を有するとき、このウイルスは、細胞を再現可能に感染することができず、このウイルスは複製および細胞死を引き起こすことができないことを意味する。
インターフェロン(「IFN」)は、種々の刺激に応答して分泌されるサイトカインのファミリーである。インターフェロンは、細胞表面レセプターに結合し、抗ウイルス応答および成長阻害および/またはアポトーシスシグナルの誘導を含む多くの細胞応答に至るシグナル伝達カスケードを活性化する。インターフェロンは、I型またはII型のいずれかとして分類される。I型インターフェロンは、すべてがモノマーであるIFN−α、−β、−τ、および−ωを含み;唯一のII型IFNであるIFN−γはダイマーである。IFN−αの12の異なる亜型は、14の遺伝子によって産生されるが、その他のIFNのすべては単一遺伝子性である(Arduiniら、1999)。IFNは、癌遺伝子発現の調節を経由して直接的抗腫瘍活性を奏する。成長を刺激する癌遺伝子の過剰発現または腫瘍サプレッサー癌遺伝子の損失は、悪性の形質転換に至り得る。癌の発生に関連するいくつかの癌遺伝子は、p53、Rb、PC、NF1、WT1、DCCである。
粘液腫症ウイルス、ならびにレオウイルスおよびVSVのようなその他の腫瘍崩壊性ウイルスは、細胞内で複製し得るために、正常な健常細胞中に存在する抗ウイルス防壁をバイパスする必要がある。MVおよびその他の腫瘍崩壊性ウイルスはインターフェロン産生を誘導し、そして一般に、IFN経路の抗ウイルス効果に感受性である。このIFN抗ウイルス応答によって誘導され、そして主にウイルス増殖に影響する関連タンパク質は、PKR、OAS合成酵素およびRnase Lヌクレアーゼを含む。PKRはeIF2αを活性化し、翻訳の阻害およびアポトーシスの誘導に至る。IFN応答経路の概略的表示は図1に示される。正常細胞では、MVは、PKRおよびeIF2αによって直接影響される。
抗ウイルス応答経路は、しばしば、癌細胞では破壊される。例えば、IFNに対する減少または欠損した応答は、形質転換および腫瘍進化のプロセスの間にしばしば生じる遺伝子欠陥である。80%を超える腫瘍細胞株は、インターフェロンに応答しないか、インターフェロンに対する損傷した応答を示す(Stojdlら、Cancer Cell(2003)4:263−275およびそれに引用された参考文献;Wongら、J Biol Chem.(1997)272(45):28779−85;Sunら、Blood.(1998)91(2):570−6;Matinら、Cancer Res.(2001)61(5):2261−6;Balachandranら、Cancer Cell(2004)5)(1):51−65)。本発明者らは、驚くべきことに、MVが、ヒト腫瘍細胞を含む癌細胞を感染かつ殺傷し得ることを発見し、そして任意の特定の理論によって制限されることなく、MVは、これら細胞を、これらが欠損した先天的抗ウイルス応答を有するので感染し得ると考えられる。
証拠は、初期の先天的免疫応答を阻害すること、およびTh1応答の進展を示すことが、腫瘍崩壊治療の効目のために重要であることを示唆する。粘液腫症ウイルスは病原性ウイルスではあるが、それは宿主特異的であり、そして非常に狭い宿主範囲を有し;それはヒトまたはマウスに感染しない。任意の特定の理論に制限されることなく、粘液腫症ウイルスは非ヒトウイルスであるので、それは、ヒトで現に存在する免疫認識に遭遇しないのであろう。従って、その腫瘍崩壊性ウイルスとしての能力が損なわれるのはより少なく、そして粘液腫症ウイルスは、ネイティブのヒトウイルスより許容性腫瘍細胞のより能力のある感染を提供し、それによって、癌の有効な腫瘍崩壊性処置を提供し得る。
従って、1つの実施形態では、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を阻害するための方法が提供され、この細胞に有効量の粘液腫症ウイルスを投与する工程を包含する。1つの実施形態では、この細胞は、インターフェロンに非応答性である。
特定の実施形態では、上記細胞は癌細胞である。1つの実施形態では、上記細胞は、ヒト固形腫瘍細胞を含むヒト癌細胞である。
別の実施形態では、上記細胞は、ウイルスで慢性的に感染されている。
本明細書で用いられる用語「欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞」は、ウイルスに曝されたとき、またはウイルスによって侵入されたとき、抗ウイルス防御機構を誘導しない細胞をいい、この機構には、ウイルス複製の阻害、インターフェロンの産生、インターフェロン応答経路の誘導、およびアポトーシスが含まれ、これらは、インターフェロンによって媒介されて、されなくても良く、そしてそれによってMVによって感染可能である。この用語は、正常細胞、例えば、非感染または非癌細胞と比較したとき、ウイルスへの曝露またはウイルスによる感染に際し、減少または欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を含む。これは、インターフェロンに非応答性である細胞、およびアポトーシス経路の減少または欠損したアポトーシス応答または誘導を有する細胞を含む。この欠損は、感染、遺伝子欠陥、または環境ストレスを含む種々の原因によって引き起こされ得る。しかし、この欠損が現存する感染によって引き起こされるとき、MVによる重複感染は排除され得、そして当業者はもこのような例を容易に識別し得る。当業者は、容易に、過度の実験を要することなく、任意の所定の細胞型が、欠損した先天的抗ウイルス応答を有するか否か、そしてそれ故、粘液腫症ウイルスよって感染可能であるか否かを決定し得る。例えば、VSVが、細胞の抗ウイルス応答を測定するために一般に用いられている。
所定の細胞型、例えば、所定の癌細胞型が欠損した先天的抗ウイルス応答を有するか否かを評価するために、当業者は、細胞のいくらかをインビトロで増殖した外植体を採用し得、そしてVSVにより、またはそれに代わって粘液腫症ウイルスにより、感染可能性を決定する。
明細書全体で用いられる用語「インターフェロンに非応答性である細胞」は、インターフェロンの活性、例えば、インターフェロンの抗ウイルスまたは抗腫瘍活性に応答しない細胞、あるいは異常なインターフェロン応答、例えば、インターフェロンに対する減少または非効率的な応答、または、例えば、転写因子、例えば、STAT1のようなシグナル伝達分子のリン酸化または活性化よって測定したときの異常なインターフェロンシグナル伝達を有する細胞を意味する。例えば、制限されずに、この細胞は、増殖の阻害を受けないかも知れないか、またはそれは、インターフェロンに応答性である細胞中のそのような応答を誘導するに十分なインターフェロンレベルに曝されるとき、殺傷されないかも知れない。インターフェロンに非応答性である細胞は、細胞内シグナル伝達経路、または応答性細胞で通常活性化される経路に欠陥を有し得る。代表的には、VSVよる感染に対する感受性は、インターフェロンに対する応答性の指標であり、そして当業者は、特定の細胞がインターフェロンに非応答性であるか否かを、インターフェロンの存在下でVSV感染を阻害するその能力またはその欠如、または、当該分野で公知のインターフェロン活性のその他のマーカー、例えば、PKR、STAT、OAS、MXのようなIFNで刺激される遺伝子の発現のレベルを用いて容易に決定し得る。
本明細書を通じて用いられるとき、用語「複製−コンピテント」は、特定の宿主細胞内に感染および複製し得るウイルスをいう。
本明細書で用いられるとき、用語「細胞」は、単一の細胞および複数または集団の細胞を含む。薬剤を細胞に投与することは、インビトロおよびインビボ投与の両方を含む。
本明細書で用いられるとき、用語「有効量」は、所望の結果を達成するために必要な投薬量および期間で有効な量を意味する。
本明細書で用いられるとき、用語「動物」は、ヒトを含む動物界のすべてのメンバー
含む。
用語、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を「阻害する」は、この細胞を増殖または分裂できないようにすることに加え、溶解または細胞死のその他の機構による細胞死を含む。
粘液腫症ウイルスは、複製−コンピテントであるポックスウイルスのLeporipoxvirus種に属する任意のウイルスであり得る。この粘液腫症ウイルスは、粘液腫症ウイルスの野生型株であり得るか、またはそれは、粘液腫症ウイルスの遺伝子的に改変された株であり得る。
この粘液腫症ウイルスゲノムは、当業者に公知であって、例えば、Sambrookら((2001)Molecular Cloning:a Laboratory Mannual、第3版、Cold Spring Harbour Laboratory Press)に記載される標準的な分子生物学技法を用いて、1つ以上の治療導入遺伝子を発現するように容易に改変され得る。当業者は、粘液腫症ウイルスゲノムのどの部分がこのウイルスがなお増殖的な感染をし得るように欠失され得るかを容易に決定し得る。例えば、欠失され得るこのウイルスの非必須領域は、公開されたウイルスゲノム配列を、その他の良く特徴付けられたウイルスのゲノム(例えば、C.Cameron、S.Hota−Mitchell、L.Chen、J.Barrette、J−X.Cao、C.Macaulay、D.Willer、D.Evans、およびG.McFadden、Virology(1999)264:298−318を参照のこと)と比較することから推論され得る。
本明細書で用いられるとき、用語「治療遺伝子」または「治療導入遺伝子」は、その発現が、所望の結果、例えば、抗癌効果を行う任意の遺伝子を広く記載するために意図される。例えば、上記ウイルスは、ウイルス処置の抗癌効果を増大する遺伝子を保持するよう改変され得る。このような遺伝子は、アポトーシスの誘因に関連するか、またはインターフェロンに対する応答の欠如を修復する遺伝子のような、免疫破壊について感染細胞を標的にすることに関与するか、または、細菌細胞表面抗原のような抗体応答を刺激する細胞表面マーカーの発現を生じる遺伝子であり得る。上記ウイルスはまた、新生物細胞または癌細胞の増殖および成長を遮断することに関与する遺伝子を発現するように改変され得、それによって、これら細胞が分裂することを防ぐ。同様に、このウイルスは、化学療法剤の合成に関与する遺伝子のような治療遺伝子を含むように改変され得るか、または、それは、阻害または殺傷されるべき細胞が由来する特定種の細胞、例えば、ヒト細胞中で増加した複製レベルを有するよう改変され得る。その抗癌効果を増大するために粘液腫症ウイルス中に挿入され得る遺伝子の特定の例は、TRAKタンパク質のヒト遺伝子、またはE4 orf4ポリペプチドをコードするアデノウイルス遺伝子を含み、これらタンパク質の両方は、ヒト腫瘍細胞を殺傷することに関与している。
粘液腫症ウイルスの治療効果は、このウイルスによるか、または治療産物送達による細胞溶解によって達成され得ることが理解される。
このウイルスは、当該技術分野で公知の標準的な技法を用いて調製され得る。例えば、このウイルスは、培養されたウサギ細胞を使用されるべき粘液腫症ウイルス株で感染すること、この感染を、このウイルスが上記培養された細胞中で複製するように進行させることによって調製され得、そして細胞表面を破壊するための当該技術分野で公知の標準的な方法によって放出され得、そしてそれによってこのウイルスの粒子を回収のために放出する。一旦、回収されると、ウイルス力価が、ウサギ細胞の集密層(lawn)を感染すること、およびプラークアッセイ(Mossmanら(1996)Virology 215:17−30を参照のこと)を実施することにより決定され得る。
1つの実施形態では、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在よって特徴付けられる疾患状態の処置を、そのような処置の必要がある患者において行う方法が提供され、この患者に有効量の粘液腫症ウイルスを投与する工程を包含する。この患者は、ヒトを含む哺乳動物を含む任意の動物であり得る。
本明細書で用いられるとき、「欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態」は、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在にともなうか、関連するか、または特徴である、任意の疾患、障害または状態をいい、そしてその疾患、障害、状態または症状は、これら細胞を殺傷することにより処置され得る。例えば、この疾患状態は癌であり得る。この疾患状態はまた、ウイルスでの慢性的感染を含み得る。
疾患状態を「処置すること」は、臨床結果を含む有益または所望の結果を得るためのアプローチをいう。有益または所望の臨床結果は、制限されないで、検出可能または検出不能のいずれかの、1つ以上の症状または状態の軽減または回復、疾患の程度の減退、疾患の状態の安定化、疾患の進行の防止、疾患の拡散の防止、疾患進行のおくれまたは遅延、疾患発症のおくれまたは遅延、疾患状態の回復または緩和、および緩解(部分的または全部)を含む。「処置すること」はまた、処置の不在下で予期される生存を超えて、患者の生存を延長することを意味し得る。「処置すること」はまた、疾患の進行を阻害すること、疾患の進行を一時的に遅延することを意味し得るが、より好ましくは、それは、疾患の進行を永久的に停止することを含む。当業者によって理解されるように、特定の疾患状態を改善しながら、この処置が、この処置により行われる任意の利益を上回る処置される患者に対する副作用を生じる場合、結果は、有益または所望されるものではないかも知れない。
1つの実施形態では、疾患状態は癌である。この癌は、任意のタイプの癌であり得、必ずしもすべての細胞ではないが、少なくともいくつかの細胞は、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する。1つの実施形態では、癌は、少なくともいくつかの細胞がインターフェロンに非応答性である癌であり得る。本明細書で用いられるとき、用語「腫瘍」、「腫瘍細胞」、「癌」および「癌細胞」は(交換可能に用いられ)、細胞増殖の制御の有意な損失によって特徴付けられる異常増殖を示す細胞、または不死化した細胞をいう。用語「癌」または「腫瘍」は、転移性および非転移性癌または腫瘍を含む。本明細書で用いられるとき、「新生物の」または「新生物」は、癌および形成異常または過形成に加え、正常な増殖阻害機構なくして増殖し、そしてそれ故、良性腫瘍を含む細胞(単数または複数)を広くいう。
癌は、悪性腫瘍の存在を含む、当該技術分野で一般に受容された規準を用いて診断され得る。
本発明に従って処置され得る癌のタイプは、制限されないで、白血病およびリンパ腫を含む造血細胞癌、結腸癌、肺癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、口腔癌、卵巣癌、咽頭癌、肝細胞癌、胆管癌、扁平上皮細胞癌腫、前立腺癌、乳癌、頸部癌、結腸直腸癌、黒色腫および任意のその他の腫瘍を含む。肉腫および癌腫のような固形腫瘍は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、およびその他の肉腫、骨膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、平滑筋肉腫、結腸癌腫、リンパ系悪性腫瘍、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌腫瘍、扁平上皮細胞癌腫、基底細胞癌腫、腺癌、汗腺癌腫、乳頭状癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌腫、ウィルムス腫瘍、頸部癌、精巣腫瘍、膀胱癌腫、およびCNS腫瘍(神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、過誤芽腫、聴神経腫、乏希突起神経膠腫、メナンギオーマ(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫など)を含む。
別の実施形態では、上記疾患状態は、慢性ウイルス感染である。
慢性的に感染するウイルスは、病理学的状態を引き起こすように延長された期間に亘り持続する様式で動物の細胞中で感染および複製する任意のウイルスであり得る。この慢性的に感染するウイルスは、癌の発生にともなうか、または関連するウイルスであり得る。
ウイルスによる慢性的感染は、当該分野で公知の標準的な方法を用いて診断され得る。例えば、慢性的ウイルス感染は、患者中の抗ウイルス抗体の存在、または患者の細胞中のRNAまたはDNAの存在に対するポジティブ試験によって検出され得る。
上記ウイルスは、投与の標準的な方法を用いて患者に投与され得る。1つの実施形態では、上記ウイルスは、全身投与される。別の実施形態では、上記ウイルスは、疾患部位で注射によって投与される。特定の実施形態では、上記疾患状態は固形腫瘍であり、そして上記ウイルスは、腫瘍部位で注射によって投与される。種々の実施形態では、上記ウイルスは、経口的または非経口的、または当該技術分野で公知の任意の標準的方法によって投与され得る。
患者に投与されるとき、ウイルスの有効量は、上記疾患の進行を軽減、改善、和らげる、回復、安定化、その拡散を防ぐ、遅くするかまたは遅延する、あるいは治療する投与量および十分な期間で必要な量である。例えば、それは、癌細胞または新生物細胞の数を減少するか、もしくは破壊するか、または、ウイルスで慢性的に感染した細胞の数を減少するか、もしくは破壊するか、あるいは、このような細胞の成長および/または増殖を阻害する効果を達成するに十分な量であり得る。
患者に投与されるべき有効な量は、ウイルスの薬力学的性質、投与の様式、年齢、患者の健康および体重、疾患状態の性質および程度、処置の頻度、および存在する場合、同時処置のタイプ、ならびにウイルスの病原性および力価のような多くの因子に依存して変動し得る。
当業者は、上記の因子を基に、適切な量を決定し得る。上記ウイルスは、最初、患者の臨床応答に依存して、必要に応じて調節され得る適切な量で投与され得る。ウイルスの有効量は、経験的に決定され得、そしてウイルスが安全に投与され得る最大量、および所望の結果を生成するウイルスの最小量に依存する。
上記ウイルスを全身投与するとき、疾患部位でのウイルスの注入により達成される臨床的効果と同じ臨床的効果を生成するために、有意により多い量のウイルスの投与が要求され得る。しかし、適切な投与量レベルは、所望の結果を達成し得る最小量である。
投与されるべきウイルスの濃度は、投与されるべき粘液腫症ウイルスの特定の株の病原性、および標的にされている細胞の性質に依存して変動し得る。1つの実施形態では、約10より小さいプラーク形成単位(「pfu」)の投与量がヒト患者に投与される。種々の実施形態では、約10から約10pfuまでの間、約10から約10pfuまでの間、約10から約10pfuまでの間、または約10から約10pfuまでの間で、単回投与量で投与され得る。
有効量のウイルスは、初期処置養生法の効果に依存して、繰り返して与えられ得る。投与は、代表的には、任意の応答をモニターしながら、定期的に与えられる。投与スケジュールおよび選択された経路に従って、上記に示された投与量より低いか、または高い投与量が与えられ得ることが当業者によって認識される。
上記ウイルスは、単独、または化学療法、放射線療法またはその他の抗ウイルス治療を含む、その他の治療と組み合わせて投与され得る。例えば、上記ウイルスは、主要な腫瘍の外科的除去の前後のいずれか、または放射線療法または従来の化学療法薬物の投与のような次の処置の前、それと同時もしくはその後のいずれかで投与され得る。1つの実施形態では、上記ウイルスは、変動する腫瘍細胞タイプに対して特異性を示し得るその他の腫瘍崩壊性ウイルスと組み合わせて、またはそれと逐次的様式で投与され得る。
投与を支援するために、上記ウイルスは、薬学的組成物中の成分として処方され得る。従って、さらなる実施形態では、粘液腫症ウイルスおよび薬学的に受容可能な希釈剤を含む薬学的組成物が提供される。本発明は、1つの局面でまた、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を阻害すること、または欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態を処置することにおける使用のためのこのような薬学的組成物を含む。これら組成物は、慣用的に、薬学的に受容可能な濃度の塩、緩衝化剤、保存剤および種々の適合性キャリアを含み得る。送達のすべての形態について、組換えウイルスが、生理学的塩溶液中で処方され得る。
上記薬学的組成物は、抗癌剤のようなその他の治療剤をさらに含み得る。1つの実施形態では、この組成物は、化学療法剤を含む。この化学療法剤は、例えば、患者の癌細胞または新生物細胞に対する腫瘍崩壊性効果を示し、しかも、ウイルスの腫瘍殺傷効果を阻害またはなくさない実質的に任意の薬剤であり得る。例えば、この化学療法剤は、制限されずに、アントラサイクリン、アルキル化剤、アルキルスルホン酸、アジリジン、エチレンイミン、メチルメラミン、ナトトロジェンマスタード、ニトロソウレア、抗生物質、葉酸アナログ、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、酵素、ポドフィロトキシン、白金含有薬剤またはサイトカインを含む。好ましくは、この化学療法剤は、癌または新生物である特定の細胞型に対して有効であることが知られている薬剤である。
薬学的に受容可能な希釈剤の比率および正体は、投与の選択された経路、生存ウイルスとの適合性、および標準的な薬学的習慣によって選択される。一般に、この薬学的組成物は、生存ウイルスの生物学的性質を有意に損なわない成分とともに処方される。
この薬学的組成物は、患者への投与のために適切な薬学的に受容可能な組成物の調製のための公知の方法によって、有効量の活性物質が、薬学的に受容可能なビヒクルとの混合物中に組み合わせられるように調製され得る。適切なビヒクルは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pa、USA 1985)に記載されている。これを基礎に、上記組成物は、排他的ではないが、1つ以上の薬学的に受容可能なビヒクルまたは希釈剤とともにウイルスの溶液を含み、そして適切なpHおよび生理学的流体と等浸透圧をもつ緩衝液溶液中に含まれる。
上記薬学的組成物は、当業者によって理解されるように、選択された投与の経路に依存して種々の形態で患者に投与され得る。本発明の組成物は、経口的に、または非経口的に投与され得る。非経口投与は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、鼻、肺内、くも膜下腔内、直腸および投与の局所様式を含む。非経口投与は、選択された時間に亘る連続注入によってなされ得る。
上記薬学的組成物は、不活性希釈剤と、または吸収可能なキャリアと経口的に投与され得るか、または、それは、硬殻または軟殻ゼラチンカプセル中に囲まれるか、またはそれは、錠剤に圧縮され得る。経口治療投与には、上記ウイルスは、賦形剤とともに取り込まれ得、そして摂取可能な錠剤、頬錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハーなどの形態で用いられる。
上記ウイルスの溶液は、生理学的に適切な緩衝液中に調製され得る。貯蔵および使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防ぐが、上記生存ウイルスを不活性化しない保存剤を含む。当業者は、適切な処方物を調製する方法を知っている。適切な処方物の選択および調製のための従来の手順および成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences中、および1999年に公開されたThe United States Pharmacopeia:The National Formulary(USP 24 NF19)に記載されている。
異なる実施形態では、上記組成物は、腫瘍部位のような疾患部位に直接注入(皮下、静脈内、筋肉内など)により、または経口投与により、あるいは経皮投与により投与される。
注射可能な使用に適切な薬学的組成物の形態は、滅菌注射用溶液または分散物の即座の調製のために、滅菌水溶液または分散物および滅菌粉末を含み、ここで、用語滅菌は、投与されるべきである生存粘液腫症ウイルス自身には拡張されない。すべての事例において、上記形態は、滅菌されなければならず、そして容易な注入可能性が存在する程度まで流体でなければならない。
用いられるべき薬学的組成物の投与量は、処置されるべき特定の状態、状態の重篤度、年齢、身体状態、サイズおよび体重、処置の持続時間、(存在する場合)同時治療の性質、投与の特定の経路および健常実施者の知識および専門知識内であるその他の類似の因子を含む個々の患者のパラメータに依存する。これらの因子は、当業者に公知であり、そして最小の慣用的な実験で取り扱われ得る。
粘液腫症ウイルス、または粘液腫症ウイルス含む薬学的組成物はまた、それを必要とする患者において、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を阻害するための粘液腫症ウイルスの使用、または欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態を処置するための粘液腫症ウイルスの使用のための指示書を含むキットとして梱包され得る。この疾患状態は癌であり得るか、またはそれは、慢性ウイルス感染であり得る。
本発明はまた、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を阻害するための粘液腫症ウイルスの使用を企図する。1つの実施形態では、この細胞は、インターフェロンに非応答性である。さらに提供されるのは、その必要性のある患者中で、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態を処置するための粘液腫症ウイルスの使用である。1つの実施形態では、この疾患状態は癌である。また提供されるのは、その必要がある患者における、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を阻害するため、または欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在によって特徴付けられる疾患状態を処置するための使用である。
その天然の宿主以外の動物において欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を選択的に感染するMVの能力は、インターフェロンに非応答性である細胞を含む、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する動物中の細胞を検出することでMVの使用を提供する。このような細胞は、そうでなければ、容易に検出可能ではないかも知れず、例えば、明瞭な腫瘍までいまだ進行していないか、または動物において認知し得る症状を未だ誘導していない特定の癌細胞がある。
従って、1つの実施形態では、患者において、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を検出するための方法が提供され、この患者に、検出可能なマーカーを発現するように改変された粘液腫症ウイルスを投与する工程;このウイルスを、上記患者中で欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞に感染させる工程;およびこの患者中で上記検出可能なマーカーを発現する細胞を検出する工程を包含する。
感染細胞は、診断イメージを見えるようにするための任意の従来の方法を用いて検出され得る。検出の方法は、用いられる特定の検出可能なマーカーに依存する。例えば、蛍光タンパク質を発現するように遺伝子的に改変された粘液腫症ウイルスで感染された細胞は、蛍光デジタル造影顕微鏡を用いて検出され得る。その他の方法は、コンピューター断層撮影(CT)、位置エミッショントモグラフィ、磁気共鳴造影(MRI)、および断層撮影のような全体走査を含む。当業者は、特定の検出可能なマーカーを検出するために適切な方法を決定し得る。
この検出可能なマーカーは、制限されないで、その発現または合成のための遺伝子が、改変ウイルスによって感染される細胞内でマーカーの発現または合成を生じるように粘液腫症ウイルス中に挿入され得る任意のマーカーを含む。例えば、1つの実施形態では、この検出可能なマーカーは、蛍光タンパク質であり得る。上記感染細胞は、患者への改変されたウイルスの投与後、適切な時間間隔で検出され得、このウイルスが欠損した先天的抗ウイルス応答を有する任意の細胞に感染すること、およびこのような細胞中でこの検出可能なマーカーの検出を可能にし得るレベルで発現することを可能にする。例えば、検出は、蛍光タンパク質を発現するように遺伝子が改変されたウイルスの患者への投与後、2から20日の間のいずれかで生じる。
この検出する方法は、患者における欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の存在をモニターするために、その患者で間隔をおいて実施され得る。例えば、粘液腫症ウイルスを用いてこのような細胞を検出するための方法は、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞の性質、および患者中のこのような細胞の存在の結果として引き起こされる任意の疾患状態の性質に依存して、必要に応じて、6月、1年または2年間隔で患者に対して実施され得る。この方法を経時的に繰り返すことは、疾患状態、または患者の身体内の疾患の拡散の進行または緩解のモニタリングを可能にする。
粘液腫症ウイルスは、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を選択的に感染し得、そして細胞中のこのような欠損の指標として用いられ得る。従って、患者から除去された細胞は、本発明の方法を用いて先天的抗ウイルス応答における欠損についてアッセイされ得る。このような決定は、その他の指標と組み合わせるとき、患者が特定の疾患状態、例えば、癌を患っているかも知れないことを示し得る。
1つの実施形態では、従って、サンプル中の、欠損した先天的抗ウイルス応答を有する細胞を検出する方法が提供され、この細胞を培養する工程、培養された細胞を粘液腫症ウイルスに曝す工程;および粘液腫症ウイルスによる細胞の感染度を決定する工程を包含する。
細胞は、公知の生検方法を用いて、ヒト被験体を含む被験体から取り出され得る。この生検方法は、試験されるべき細胞の位置および型に依存する。
細胞は、公知の培養技法に従って培養され、そしてこの培養培地に生存ウイルスを添加することによりMVに曝される。感染の多重度(「MOI」)は、MVへの曝露に際し感染されることが知られるポジティブコントロールを用いて、所定の細胞型、密度および培養技法について最適MOIを決定するために変動され得る。
MVによる培養細胞の感染度は、細胞死を引き起こすMVの能力を含む、当業者に公知の種々の方法によって決定され得る。それはまた、ウイルス発現産物との酵素的または化学的反応を完成するための細胞培養への試薬の添加を含み得る。このウイルス発現産物は、MVゲノム中に挿入されたレポーター遺伝子から発現され得る。
1つの実施形態では、このMVは、感染状態の検出の容易さを増大するように改変され得る。例えば、このMVは、位相顕微鏡、蛍光顕微鏡により、または放射線造影により容易に検出され得るマーカーを発現するように遺伝子的に改変され得る。このマーカーは、発現された蛍光タンパク質、または比色法または放射線標識反応に関与され得る発現された酵素であり得る。別の実施形態では、このマーカーは、試験される細胞の特定の機能を中断または阻害する遺伝子産物であり得る。
本明細書中に引用されるすべての参考文献は、参考として完全に援用される。
(ウイルス株)
用いたウイルス株は、野生型MV、グリーン蛍光タンパク質(「GFP」)またはβ−ガラクトシダーゼ(「LacZ」)のいずれかを発現するよう改変されたMV、および死滅(「死」)MVを含む。ウイルスは、標準的な技法を用いて調製され、および滴定された。
(細胞株)
マウス実験は、野生型マウス、および以下のマウスノックアウト由来のマウス胎児繊維芽細胞(「MEF」)を用いて実施した:IFNα/βレセプターホモ接合型ノックアウト;STAT1ホモ接合型ノックアウト;PKRヘテロ接合型;RNaseLヘテロ接合型ノックアウト;Mx1ヘテロ接合型ノックアウト;三重PKR/RNaseL/Mx1ノックアウト。
ヒト実験は、Stojdlら、Cancer Cell(2003)4:263−275に記載のように、BGMKコントロール細胞およびヒト腫瘍細胞株HT29、HOP92、OVCAR4、OVCAR5、SK−MEL3、SK−MEL28、M14、SKOV3、PC3、DU145、CAKI−1、786−0、T47D、MDAMB435、SF04、U87、A172、U373、DaoyおよびD384に対して実施した。
(方法)
一般に、アッセイおよび実験は、Lalaniら、Virology(1999)256:233−245およびJohnstonら、J Virology(2003)77(13):7682−7688に記載のように実施した。
インビボマウス研究には、ヌードマウスに、頭蓋内ヒト神経膠腫U87を移植した。移植後15日に、マウスに、腫瘍内に、5×10の力価で生存または死滅MV GFP、または偽感染を注射した。感染後72時間に、動物を屠殺し、脳を取り出し、OCT(最適切断温度化合物)中に包埋し、そして凍結切片を切断した。粘液腫症ウイルス−GFPを蛍光顕微鏡によって全体の脳切片中で可視化した。次いで、切片を固定し、そしてH&E(ヘマトキシリンおよびエオシン)で染色して腫瘍を見えるようにした。
ヒト腫瘍細胞アッセイには、これら腫瘍をトリプシン処理し、そして手術後直ちにプレートにまき、そして翌日、MOI 0.1、1.0または10のウイルスで感染した。細胞毒性およびウイルス発現に関するデータを、感染後24および48時間に、位相顕微鏡および蛍光顕微鏡をそれぞれ用いて集めた。黄色のテトラゾリウム塩MTTを用いるアッセイを実施し、感染後48、72または96時間における細胞生存%(細胞生存偽感染の%として)を定量した。
ヒト小児髄芽細胞腫細胞株DaoyおよびD384を、10 M.O.I.の粘液腫症ウイルス−GFPで感染した。感染後72時間に、細胞生存率を、MTTを用いて測定した。
(マウス細胞株の感染)
先の研究者は、ケモカインレセプターでトランスフェクトしたマウス3T3のいくつかのクローンが、粘液腫症ウイルスで感染可能であったが、そうではないクローンもあったことを示した。その他のマウス細胞中の粘液腫症ウイルス向性が任意の特定のレセプターに依存していたか否かを調査するために、本発明者らは、野生型(WT)マウスおよび種々の遺伝子ノックアウトから、原発性マウス胎児線維芽細胞(MEF)を開発した。
IFNは、抗ウイルス応答を高めることで重要な役割を演じているので、本発明者らは、限定された表現型が、IFNにより媒介される「抗ウイルス状態」に関連したと仮定した。IFNシステムの事象の連鎖の破壊は、循環性IFNを抗体で中和すること、またはIFNレセプターネガティブマウス、もしくはシグナル伝達の細胞内経路中に欠失遺伝子をもつマウスを生成することは、代表的には正常マウス細胞に感染しない粘液腫症ウイルスに対する宿主の耐性を重篤に損なうであろう。
この仮説を試験するために、本発明者らは、非許容性細胞における粘液腫症ウイルスの非感染がIFNの抗ウイルス作用に起因したかどうかを示す必要があった。細胞内IFNシグナル伝達応答に関与する1つ以上のタンパク質のノックアウトを有する種々のMEF細胞型を、IFN経路に対するMV感染の影響について試験した。
原発性MEFに対して実施した実験は、野生型(「WT」)MEFが、粘液腫症ウイルスによって感染可能でないことを示した。これらMEFは、上記IFN経路がIFNα/βに対する中和抗体によってブロックされるとき、粘液腫症ウイルスによって完全に感染可能である(図2)。しかし、IFNγに対する中和抗体に曝されたMEFは、非許容性のままであった。これは、粘液腫症ウイルスがインビトロでMEFに感染するための許容性環境を生成することにおいて、IFNγではなく、IFNα/βの重要性の概要を示す。IFNα/βとIFNγとに対し、異なる細胞内シグナル伝達経路が文献中で同定されている。しかし、IFNα/βおよびIFNγの両方は、培養された線維芽細胞とは異なり、感染された宿主中で重要な役割を演じているようである。本発明者らは、IFNα/βおよび/またはIFNγ経路のいずれかにおけるヒト腫瘍欠損が、インビボで粘液腫症ウイルス感染を受けると予測する。
本発明者らは、MVで感染された非許容性WT MEFにおけるSTAT1およびSTAT2の活性を調べた。図3に示された結果は、STAT1およびSTAT2が活性化されたことを示した。さらなる研究は、STAT3、STAT4およびSTAT5は活性化されていないことを示した(図4)。
MEFにおける非許容性状態を維持することにおけるIFNα/β細胞内経路の重要性を確認するために、IFNα/βレセプター中、および細胞内カスケード中に破壊を提供する遺伝子欠失研究を実施した。IFNレセプターまたはJAK1またはSTAT1の遺伝子欠失を実施した。MVを用いてWT MEF、IFNα/β R−/− MEFおよびSTAT1 −/− MEFを感染した。IFNα/β R−/− MEFおよびSTAT1 −/− MEFは、MVに許容性であり、IFNα/βおよびSTAT1シグナル伝達経路は、MV感染のために重要であることを示す(図5)。
プロテインキナーゼR(PKR)は、IFNα/βによって広範な種類の細胞中で誘導される酵素である。このキナーゼは、dsRNAの存在下で、自己リン酸化を行い、そして次に、真核生物タンパク質合成開始因子(eIF−2α)(このリン酸化は、タンパク質翻訳およびアポトーシスの阻害を誘導する)を含むいくつかの細胞内タンパク質をリン酸化する。PKRはまた、RNaseLの活性化で示されている。本発明者らは、MV感染後の非許容性MEFにおけるPKRの活性化を調べた。PKRは、非許容性MEF中ではリン酸化されず、そこでは、抗ウイルス状態が良好に確立されている(図6)。さらに、MV感染は、PKRリン酸化を阻害する(図7)。さらに、PERF(PRK−様、ERキナーゼ)は、粘液腫症ウイルス感染後、原発性WT MEF中ではリン酸化されない(図8)。
MVを用いて、PKR、RNaseLまたはMx1の単一遺伝子ノックアウトをもつMEFを感染した。PKR、RNaseLおよびMx1は、粘液腫症ウイルス感染に対して非許容性を維持するために必須ではないことが発見された。PKR、RNaseLおよびMx1の必須ではない役割をさらに確認するために、三重ノックアウトPKR−/−、RNaseL−/−およびMx1−/−を実施した。PKR−/−、RNaseL−/−およびMx1−/−三重ノックアウトは、粘液腫症ウイルス感染を支持しないが(図10)、しかし、インターフェロンα/βに対する中和抗体で処理したPKR、RNaseおよびMx1の三重KOをもつMEFは、粘液腫症ウイルス感染に許容性になる(図10と11とを比較のこと)。これらの実験は、PKR、RNaseLおよびMx1が、MVに対するMEFの非許容性を媒介することで必須ではないことを示す。
MV感染後の非許容性野生型MEFおよび許容性IFNα/β R−/− MEFおよびSTAT1 −/− MEFにおけるeIF−2αおよびPKRの活性化を調べるためにさらなる研究を実施した。MV感染後、eIF−2αは、非許容性および許容性MEFでリン酸化されるが、PKRはいずれの場合もリン酸化されない(図12)。これは、PKRおよびPERKが関与することなく、抗ウイルス状態がeIF2αリン酸化を引き起こす別の経路によって媒介されることを示す。
STAT1は、非許容性PKR、RNaseLおよびMx1三重KO MEF中で粘液腫症ウイルス感染後、セリンおよびチロシンリン酸化の両方を受ける(図13)。粘液腫症ウイルス感染後の非許容性PKR−/− + RNaseL−/− + Mx1−/− MEFにおけるチロシンリン酸化の細胞下局在化もまた示される(図14)。
要約すれば、これらの結果は、IFN/STAT1を含む、パラレルなPKR/PERK−非依存性抗ウイルス経路が、ポックスウイルス向性にとって重要であることを示す。さらに、eIF2αリン酸化は、INFによる抗ウイルス作用の最良のマーカーである。
(ヒト腫瘍研究)
本発明者らは、インビボ系内で、ヒト腫瘍細胞を感染するMVの能力を調べた。ヌードマウスにヒト神経膠腫細胞を注射し、そして次に頭蓋内神経膠腫を増殖させた。生存ウイルスは、これらヒト腫瘍細胞に感染することはできたが、周辺の細胞には感染しなかった(図15)。GFPからの蛍光シグナルの腫瘍への局在化は図16中に描写される。
多くのヒト腫瘍がインターフェロンに非応答性であり、しかもこれら腫瘍細胞が、正常ヒト細胞中で見出されるのと比較して正常なIFNシグナル伝達カスケードを有さないと仮定して、ヒト腫瘍に対する粘液腫症ウイルスの影響を調査するための研究を実施した。
最初に、粘液腫症ウイルスを用いて、以下の種々のコントロールおよびヒト腫瘍細胞株に対する感染度および細胞溶解効果を調べた:BGMK、HT29、HO92、OVCAR4、SK−MEL3、およびSK−MEL28。MVは、種々の感染度および細胞溶解結果を示した:HT29(図17)HOP92(図18)、OVCAR4(図19)、SK−MEL3(図20)、およびSK−MEL28(図21)およびBGMK(図22)。
さらなる腫瘍細胞を試験し、そして以下の表1は、試験された種々の腫瘍型を、非許容性、許容性または半許容性として分類する。半許容性は、粘液腫症ウイルスか、許容性砂防株と比較したとき、中程度に感染可能であったこと示す。
Figure 0004800924
種々のヒト腫瘍株は、増加する濃度のMV−LacZでの感染に対し変動する応答性を示した。例えば、U373細胞は、U87中でより低いウイルス力価で達成される細胞殺傷のレベルを達成するためにより高いウイルス力価を必要とした(図23および図24)。粘液腫症ウイルスは、効率的に、星状細胞腫細胞(図25)、および神経膠腫細胞(図26)に感染した。粘液腫症ウイルスは、ヒト星状細胞腫および小児髄芽細胞腫細胞を殺傷することで、感染後48時間で有効であった(図27および28)。
当業者によって理解され得るように、本明細書中に記載された例示の実施形態に対する多くの改変が可能である。本発明は、むしろ、特許請求の範囲で規定されるような、その範囲内のすべてのこのような改変を包含することが意図される。
図1は、細胞のウイルス感染に際して誘導される、インターフェロン媒介抗ウイルスシグナル伝達スキームの概略図である。 図2は、粘液腫症ウイルスに曝された後の非許容性WTマウス胎児線維芽細胞(「MEF」)の位相顕微鏡写真であり、これらMEFが、中和抗体でのインターフェロンα/βの阻害後許容性になることを示す。 図3は、粘液腫症ウイルス感染後のSTAT1およびSTAT2のリン酸化状態(活性化)を示すウェスタンブロットであり、MEF細胞の非許容性感染が、STAT1およびSTAT2の活性化と関連していることを示す。 図4は、粘液腫症ウイルス感染後のSTAT3、STAT4、STAT5およびSTAT6のリン酸化状態(不活性化)を示すウェスタンブロットであり、MEF細胞の非許容性感染が、これら種のいずれをも活性化しないことを示す。 図5は、粘液腫症ウイルス感染後のIFNα/β R−/− MEFおよびSTAT1 −/− MEF、IFNα/β R−/− MEFおよびSTAT1 −/− MEFの位相差顕微鏡写真であり、IFN/STAT/JAKシグナル伝達の不活性化が、細胞を、粘液腫症ウイルス感染について許容性にすることを示す。 図6は、粘液腫症ウイルス感染後の非許容性野生型MEFにおけるPKRのリン酸化状態を示すウェスタンブロットであり、PKRが粘液腫症ウイルス感染によって活性化されないことを示す。 図7は、粘液腫症ウイルスで偽感染されたか、または予備感染されたかのいずれかの野生型MEFにおけるPKRのリン酸化状態を示すウェスタンブロットであり、粘液腫症ウイルスが、MEF細胞におけるPKR活性化をブロックすることを示す。 図8は、粘液腫症ウイルス感染後の野生型MEFにおけるPKRのリン酸化状態を示すウェスタンブロットであり、粘液腫症ウイルスが、MEF細胞におけるPKR活性化をブロックすることを示す。 図9は、粘液腫症ウイルス感染後のPKR −/−、RNase L−/−およびMx1−/−三重ノックアウトの位相差顕微鏡写真であり、MEF細胞における抗ウイルス状態が別個の経路によって媒介されることを示す。 図10は、粘液腫症ウイルスへの曝露後のPKR −/−、RNase L−/−およびMx1−/−三重ノックアウトの位相差顕微鏡写真である。 図11は、IFNα/βに対する中和抗体での処理後、および粘液腫症ウイルスへの曝露後のPKR −/−、RNase L−/−およびMx1−/−三重ノックアウトの位相差顕微鏡写真である。 図12は、IFNα/βに対する中和抗体での処理後、および粘液腫症ウイルスへの曝露後の非許容性MEFにおけるeIF2αおよびPKRのリン酸化レベルを示すウェスタンブロットであり、非許容性細胞におけるeIF2αリン酸化がPKR−非依存性経路によって触媒されることを示す。 粘液腫症ウイルス感染後のPKR −/−、RNase L−/−およびMx1−/−三重ノックアウトにおけるSTAT1リン酸化を示すウェスタンブロットであり、正常なIFN−誘導性シグナル伝達応答を示す。 図14は、感染後12時間におけるPKR−/− + RNaseL−/− + Mx1 −/−細胞におけるチロシン−リン酸化STAT1の細胞下局在化を示す位相差顕微鏡写真であり、正常IFN/STATシグナル伝達応答について推定されるように、活性化STATが核に局在化することを示す。 図15は、死滅またはGFPを発現する生存粘液腫症ウイルスで偽感染または感染された頭蓋内神経膠腫を有するヌードマウスからの脳の傾向イメージであり、神経膠腫細胞への粘液腫症の標的化を示す。 図16は、GFPを発現する生存粘液腫症ウイルスで感染された薄切片にされたマウス神経膠腫の蛍光イメージおよび写真であり、粘液腫症ウイルスが腫瘍細胞でのみ複製することを示す。 図17は、粘液腫症ウイルス感染後のX−GalまたはCrystal violetのいずれかで染色されたHT29ヒト腫瘍細胞の位相顕微鏡写真であり、ヒト細胞における非許容性感染の例を示す。 図18は、粘液腫症ウイルス感染後のX−GalまたはCrystal violetのいずれかで染色されたHOP92ヒト腫瘍細胞の位相顕微鏡写真であり、ヒト細胞における許容性感染の例を示す。 図19は、粘液腫症ウイルス感染後のX−GalまたはCrystal violetのいずれかで染色されたOVCAR4ヒト腫瘍細胞の位相顕微鏡写真であり、ヒト細胞における許容性感染の例を示す。 図20は、粘液腫症ウイルス感染後のX−GalまたはCrystal violetのいずれかで染色されたSK−MEL3ヒト腫瘍細胞の位相顕微鏡写真であり、ヒト細胞における許容性感染の例を示す。 図21は、粘液腫症ウイルス感染後のX−GalまたはCrystal violetのいずれかで染色されたSK−MEL28ヒト腫瘍細胞の位相顕微鏡写真であり、ヒト腫瘍細胞における半許容性感染の例を示す。 図22は、粘液腫症ウイルス感染後のX−GalまたはCrystal violetのいずれかで染色されたBGMK細胞の位相顕微鏡写真であり、代表的な許容性コントロール感染を示す。 図23は、X−Galで染色された、LacZタンパク質を発現する粘液腫症ウイルスの増加する濃度で感染された、ポジティブコントロールBGMK細胞およびヒト腫瘍株U87、A172およびU373の位相顕微鏡写真であり、これらのヒト神経膠腫細胞は、すべて粘液腫症ウイルスについて許容性であったことを示す。 図24は、粘液腫症ウイルスで、このウイルスの増加する濃度で感染されたBGMK、U87、A172およびU373の感染後72時間の生存率を描写するグラフであり、粘液腫症がこれら細胞のすべてを殺傷する能力を示す。 図25は、MV GFPで感染されたSF04 1585星状細胞腫細胞の位相差顕微鏡写真および蛍光顕微鏡写真であり、原発性ヒト神経膠腫細胞における感染を示す。 図26は、LacZタンパク質を発現する粘液腫症ウイルスで感染され、そしてX−Galで染色されたU373神経膠腫細胞の位相差顕微鏡写真であり、これらヒト腫瘍細胞の感染を示す。 図27は、感染後48時間のMV GFPで感染されたSF04 1585の生存率を描写するグラフであり、これら感染されたヒト腫瘍細胞の殺傷を示す。 図28は、GFPを発現する粘液腫症ウイルスで感染されたDaoyおよびD384髄芽細胞腫の蛍光顕微鏡写真であり、これらヒト腫瘍細胞の感染を示す。

Claims (54)

  1. 哺乳動物癌細胞阻害するための薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、粘液腫症ウイルスを含、薬学的組成物。
  2. 前記細胞が、インターフェロンに非応答性である、請求項1に記載の薬学的組成物。
  3. 前記細胞が、異常インターフェロンシグナル伝達を示す、請求項2に記載の薬学的組成物。
  4. 前記細胞が、ヒト癌細胞である、請求項に記載の薬学的組成物。
  5. 前記粘液腫症ウイルスが、野生型ウイルスである、請求項に記載の薬学的組成物。
  6. 前記粘液腫症ウイルスが、遺伝子的に改変されている、請求項に記載の薬学的組成物。
  7. 前記粘液腫症ウイルスが、遺伝子的に改変されて治療遺伝子を発現する、請求項に記載の薬学的組成物。
  8. 前記細胞が、肺癌細胞、黒色腫細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、腎臓癌細胞、神経膠腫細胞または星状細胞腫細胞である、請求項に記載の薬学的組成物。
  9. 哺乳動物癌細胞存在によって特徴付けられる疾患状態を処置するための薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、粘液腫症ウイルスを含、薬学的組成物。
  10. 前記疾患状態が、癌である、請求項に記載の薬学的組成物。
  11. 前記癌が、固形腫瘍である、請求項1に記載の薬学的組成物。
  12. 前記癌が、造血細胞癌、結腸癌、肺癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、口腔癌、卵巣癌、咽頭癌、肝細胞癌、胆管癌、扁平上皮細胞癌腫、前立腺癌、乳癌、頸部癌、結腸直腸癌または黒色腫である、請求項1に記載の薬学的組成物。
  13. 前記造血細胞癌が、白血病またはリンパ腫である、請求項1に記載の薬学的組成物。
  14. 前記癌が、肺癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、神経膠腫または星状細胞腫である、請求項1に記載の薬学的組成物。
  15. 前記薬学的組成物が、ヒトへの投与のために処方される、請求項1に記載の薬学的組成物。
  16. 前記粘液腫症ウイルスが、野生型ウイルスである、請求項1に記載の薬学的組成物。
  17. 前記粘液腫症ウイルスが、遺伝子的に改変されている、請求項1に記載の薬学的組成物。
  18. 前記粘液腫症ウイルスが、遺伝子的に改変されて治療遺伝子を発現する、請求項1に記載の薬学的組成物。
  19. 前記薬学的組成物が、注入による前記癌の部位への投与のために処方される、請求項1に記載の薬学的組成物。
  20. 前記薬学的組成物が、全身投与のために処方される、請求項1に記載の薬学的組成物。
  21. 前記薬学的組成物が、10pfuより少ない前記ウイルスの投与のために処方される、請求項1に記載の薬学的組成物。
  22. 前記薬学的組成物が、約10pfuと10pfuとの間の前記ウイルスの投与のために処方される、請求項2に記載の薬学的組成物。
  23. 哺乳動物癌細胞阻害するための医薬の製造における、有効量の粘液腫症ウイルスの使用
  24. 前記細胞が、インターフェロンに非応答性である、請求項2に記載の使用。
  25. 前記細胞が、異常インターフェロンシグナル伝達を示す、請求項2に記載の使用。
  26. 前記細胞が、ヒト癌細胞である、請求項請求項2から2のいずれか1項に記載の使用。
  27. 前記細胞が、肺癌細胞、黒色腫細胞、腎臓癌細胞、神経膠腫細胞または星状細胞腫細胞である、請求項26に記載の使用。
  28. 前記粘液腫症ウイルスが、野生型ウイルスである、請求項2から27のいずれか1項に記載の使用。
  29. 前記粘液腫症ウイルスが、遺伝子的に改変されている、請求項2から27のいずれか1項に記載の使用。
  30. 前記粘液腫症ウイルスが、遺伝子的に改変されて治療遺伝子を発現する、請求項29に記載の使用。
  31. 患者における疾患状態を処置するための医薬の製造における有効量の粘液腫症ウイルスの使用であって、ここで、該疾患状態が、哺乳動物癌胞の存在によって特徴付けられ、使用。
  32. 前記疾患状態が、癌である、請求項3に記載の使用。
  33. 前記癌が、固形腫瘍である、請求項3に記載の使用。
  34. 前記癌が、造血細胞癌、結腸癌、肺癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、口腔癌、卵巣癌、咽頭癌、肝細胞癌、胆管癌、扁平上皮細胞癌腫、前立腺癌、乳癌、頸部癌、結腸直腸癌または黒色腫である、請求項3に記載の使用。
  35. 前記造血細胞癌が、白血病またはリンパ腫である、請求項3に記載の使用。
  36. 前記癌が、肺癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、神経膠腫または星状細胞腫である、請求項3に記載の使用。
  37. 前記患者が、ヒトである、請求項3から36のいずれか1項に記載の使用。
  38. 前記粘液腫症ウイルスが、野生型ウイルスである、請求項3から37のいずれか1項に記載の使用。
  39. 前記粘液腫症ウイルスが、遺伝子的に改変されている、請求項3から37のいずれか1項に記載の使用。
  40. 前記粘液腫症ウイルスが、遺伝子的に改変されて治療遺伝子を発現する、請求項39に記載の使用。
  41. 哺乳動物癌細胞存在によって特徴付けられる疾患状態を処置する際に使用するための、粘液腫症ウイルスおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物
  42. 前記疾患状態が、癌である、請求項4に記載の薬学的組成物。
  43. 前記癌が、固形腫瘍である、請求項4に記載の薬学的組成物。
  44. 前記癌が、造血細胞癌、結腸癌、肺癌、腎臓癌、膵臓癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、口腔癌、卵巣癌、咽頭癌、肝細胞癌、胆管癌、扁平上皮細胞癌腫、前立腺癌、乳癌、頸部癌、結腸直腸癌または黒色腫である、請求項4に記載の薬学的組成物。
  45. 前記造血細胞癌が、白血病またはリンパ腫である、請求項44に記載の薬学的組成物。
  46. 前記癌が、肺癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、神経膠腫または星状細胞腫である、請求項4に記載の薬学的組成物。
  47. 治療剤をさらに含む、請求項46に記載の薬学的組成物。
  48. 前記治療剤が、化学療法剤である、請求項47に記載の薬学的組成物。
  49. 前記薬学的組成物が、前記腫瘍の部位での注入に適する、請求項46に記載の薬学的組成物。
  50. 哺乳動物癌細胞阻害するための、粘液腫症ウイルスおよび指示書を含む、キット
  51. 前記細胞が、インターフェロンに非応答性である、請求項5に記載のキット。
  52. 癌の処置の必要がある患者における癌を処置するための、粘液腫症ウイルスおよび指示書を含む、キット。
  53. 患者中の、哺乳動物癌細胞検出するためのキットであって、検出可能なマーカーを発現するように改変された粘液腫症ウイルス;該ウイルスを該患者中の該細胞に感染させて該患者において該検出可能なマーカーを発現する細胞を検出することについての指示書、を備え、キット。
  54. サンプル中の、哺乳動物癌細胞検出するための方法であって、該細胞を培養する工程、培養された細胞を粘液腫症ウイルスに曝す工程;および粘液腫症ウイルスによる細胞の感染度を決定する工程、を包含る、方法。
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