以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[全体構成]
まず、本実施形態に係る内燃機関の過給機制御装置が適用されたシステムの全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る内燃機関の過給機制御装置が適用された車両の構成を示す概略図である。図1では、実線矢印がガスの流れを示し、破線矢印が信号の入出力を示している。なお、図1においては、シングルターボモードに設定した場合のガスの流れを示している。
車両は、主に、エアクリーナ2と、吸気通路3と、ターボ過給機4、5と、吸気切替弁6と、リード弁7と、内燃機関8と、過給圧センサ9と、排気通路10と、EGR通路11と、EGR弁14と、排気切替弁15と、排気バイパス弁16と、ECU(Engine Control Unit)50と、を備える。
エアクリーナ2は、外部から取得された空気(吸気)を浄化して、吸気通路3に供給する。吸気通路3は途中で吸気通路3a、3bに分岐されており、吸気通路3aにはターボ過給機4のコンプレッサ4aが配設されており、吸気通路3bにはターボ過給機5のコンプレッサ5aが配設されている。コンプレッサ4a、5aは、それぞれ、吸気通路3a、3bを通過する吸気を圧縮する。
また、吸気通路3b中には、吸気切替弁6、及びリード弁7が設けられている。吸気切替弁6は、ECU50から供給される制御信号S6によって開閉が制御され、吸気通路3bを通過する吸気の流量を調整可能に構成されている。例えば、吸気切替弁6を開閉させることにより、吸気通路3bにおける吸気の流通/遮断を切り替えることができる。リード弁7は、通路中の圧力が所定以上となった際に開弁するように構成されている。更に、コンプレッサ4a、4bの下流側の吸気通路3には、過給圧センサ9が設けられている。過給圧センサ9は、過給された吸気の圧力(以下、「実過給圧」とも呼ぶ。)を検出し、この実過給圧に対応する検出信号S9をECU50に供給する。
内燃機関8は、左右のバンク(気筒群)8L、8Rにそれぞれ4つずつの気筒(シリンダ)8La、8Raが設けられたV型8気筒のエンジンとして構成されている。内燃機関8は、吸気通路3より供給される吸気と燃料との混合気を燃焼することによって、動力を発生する装置である。内燃機関8は、例えばガソリンエンジンやデーゼルエンジンなどによって構成される。そして、内燃機関8内における燃焼により発生した排気ガスは、排気通路10に排出される。なお、内燃機関8を、8気筒で構成することに限定はされない。
排気通路10中には、EGR通路11が接続されている。EGR通路11は、一端が排気通路10に接続されており、他端が吸気通路3に接続されている。EGR通路11は、排気ガス(EGRガス)を吸気系に還流するための通路である。具体的には、EGR通路11には、EGRクーラ12と、EGR弁14と、バイパス通路11aと、バイパス弁13とが設けられている。EGRクーラ12はEGRガスを冷却する装置であり、EGR弁14はEGR通路11を通過するEGRガスの流量を調節する弁、言い換えると吸気系に還流させるEGRガスの量を調節する(即ちEGR率を調節する)弁である。この場合、EGR弁14は、ECU50から供給される制御信号S14によって開度が制御される。また、バイパス通路11aは、EGRクーラ12をバイパスする通路であり、通路上にはバイパス弁13が設けられている。このバイパス弁13によって、バイパス通路11aを通過するEGRガスの流量が調節される。なお、図1においては、EGR弁14が閉に設定されているため、EGRガスは還流されない。
排気通路10は途中で排気通路10a、10bに分岐されており、排気通路10aにはターボ過給機4のタービン4bが配設されており、排気通路10bにはターボ過給機5のタービン5bが配設されている。タービン4b、5bは、それぞれ、排気通路10a、10bを通過する排気ガスによって回転される。このようなタービン4b、5bの回転トルクが、ターボ過給機4内のコンプレッサ4a及びターボ過給機5内のコンプレッサ5aに伝達されて回転することによって、吸気が圧縮される(即ち過給される)こととなる。なお、ターボ過給機4は、低中速域で過給能力の大きい小容量の低速型の過給機として構成され、ターボ過給機5は、中高速域で過給能力の大きい大容量の高速型の過給機として構成されている。
更に、排気通路10bには、排気切替弁15が設けられていると共に、排気バイパス通路10baが接続されている。排気切替弁15は、ECU50から供給される制御信号S15によって開閉が制御され、排気通路10bを通過する排気ガスの流量を調整可能に構成されている。例えば、排気切替弁15を開閉させることにより、排気通路10bにおける排気ガスの流通/遮断を切り替えることができる。また、排気バイパス通路10baは、排気切替弁15が設けられた排気通路10bをバイパスする通路として構成されている。具体的には、排気バイパス通路10baは、排気切替弁15が設けられた排気通路10bよりも、通路の径が小さく構成されている。また、排気バイパス通路10ba中には排気バイパス弁16が設けられており、この排気バイパス弁16によって、排気バイパス通路10baを通過する排気ガスの流量が調節される。
なお、前述した吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16が全て閉である場合には、ターボ過給機4にのみ吸気及び排気ガスが供給され、ターボ過給機5には吸気及び排気ガスが供給されない。そのため、ターボ過給機4のみが作動し、ターボ過給機5は作動しない。一方、吸気切替弁6が開であり、排気切替弁15及び排気バイパス弁16のいずれかが開である場合には、ターボ過給機4、5の両方に吸気及び排気ガスが供給される。そのため、ターボ過給機4、5の両方が作動する。
ECU50は、図示しないCPU、ROM、RAM、及びA/D変換器などを含んで構成される。ECU50は、車両内の各種センサから供給される出力等に基づいて、車両内の制御を行う。具体的には、ECU50は、過給圧センサ9から実過給圧を取得し、この実過給圧などに基づいて、吸気切替弁6、EGR弁14、及び排気切替弁15、並びに排気バイパス弁16などに対する制御を行う。
本実施形態では、ECU50は、主に、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を制御することによって、ターボ過給機4のみを作動させるモード(以下、「シングルターボモード」と呼ぶ。)と、ターボ過給機4、5の両方を作動させるモード(以下、「ツインターボモード」と呼ぶ。)とを切り替える制御を行う。詳しくは、ECU50は、運転状態等に基づいて目標過給圧を演算し、この目標過給圧に基づいて、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替え、及びツインターボモードからシングルターボモードへの切り替えを判断する。このように、ECU50は、本発明における内燃機関の過給機制御装置として機能する。具体的には、ECU50は、目標過給圧演算手段、及び切り替え判断手段として動作する。
ここで、シングルターボモードとツインターボモードとを切り替える際に実行される基本的な制御について、簡単に説明する。前述したように、モードの切り替えは、ECU50が、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を制御することによって行う。具体的には、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合には、ECU50は、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を閉から開に制御する。この場合、ECU50は、基本的には、排気バイパス弁16、排気切替弁15、吸気切替弁6の順に弁を開にすることによって、切り替えを実行する。より詳しくは、まず排気バイパス弁16を少しずつ開いていき、この状態において所定の条件が満たされたときに排気切替弁15を開いていき、その後に吸気切替弁6を開く。この場合、最初に排気バイパス弁16を少し開くのは、比較的小流量の排気ガス(排気バイパス通路10baの径が小さいため)をターボ過給機5に供給することで、ターボ過給機5を徐々に作動(即ち、助走)させるためである。言い換えると、最初に排気切替弁15を開くことによって、比較的大流量の排気ガスがターボ過給機5に一気に流れて、トルクショックなどが生じてしまうことを防止するためである。一方、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合には、ECU50は、上記と同様にして、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を開から閉に制御する。
[切り替え方法]
次に、本実施形態に係るモードの切り替え方法について、具体的に説明する。本実施形態では、切り替え時における過給圧落ち込み(過給圧変動)、及びそれに伴うトルクショックの発生が抑制されるように、シングルターボモードとツインターボモードとの切り替えの判断を行う。具体的には、過給圧落ち込み及びトルクショックの発生が抑制されるような条件(以下、「切り替え条件」と呼ぶ。)を設定し、この切り替え条件に基づいてモードの切り替えを実行する。
ここで、吸入空気量に基づいて切り替え条件を設定した場合(以下、吸入空気量に基づいて切り替え条件を設定する方法を「比較例に係る方法」とも呼ぶ。)における不具合について説明する。まず、現在の吸入空気量は、切り替え時の過給圧落ち込み及びトルクショックに対して直接の相関がないため、最適な基準値の設定が困難であると言える。つまり、トルクショックの発生を抑制するためには発生可能なトルクに差が無い条件でモードの切り替えを行う必要があるが、その時々の吸入空気量は切り替え時のトルクとは相関が無いため、最適な設定が困難となる。また、EGR量などの設定の仕方によっては、吸入空気量は単純に増加せず、変曲点を持つ可能性があり、トルクショックが最小となる切り替え条件の設定が非常に困難となる。また、切り替え条件の設定にも時間がかかる傾向にある。以上より、比較例に係る方法では、最適な切り替え条件を迅速に設定することは困難であると言える。
したがって、本実施形態では、トルクショックに相関の強い目標過給圧に基づいて、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替え、及びツインターボモードからシングルターボモードへの切り替えを判断する。これにより、最適な切り替え条件を設定して、トルクショックの発生を適切に抑制することが可能となる。また、目標過給圧はもともと過給圧制御のためにEGR率や可変ノズル制御状態を含めて算出されているものであるので、シングルターボモードにおける目標過給圧及びツインターボモードにおける目標過給圧を継続算出して、これらの目標過給圧に基づいてモードの切り替えを判断することにより、複雑な付加演算が不要となる。よって、モード切り替えの判断に要する時間を短縮することができる。
以下では、本発明の実施形態に係る切り替え方法について、具体的に説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る切り替え方法について説明する。
第1実施形態では、予め設定された現在の状態(シングルターボモード及びツインターボモードのいずれかのモード)における目標過給圧と、同一運転条件の切り替え後の状態における目標過給圧との差に基づいてモードの切り替えを判断し、モードの切り替えを実行する。より具体的には、シングルターボモードにおける目標過給圧(以下、「1個ターボ目標過給圧」と呼ぶ。)と、ツインターボモードにおける目標過給圧(以下、「2個ターボ目標過給圧」と呼ぶ。)との差に基づいて切り替え条件を設定する。詳しくは、1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差の絶対値が第1の所定値未満となった際に(言い換えると、概ね「0」となった際に)、切り替えを実行すべきであると判断して、モードの切り替えを実行する。これにより、切り替え前後のトルクが概ね同一となるため、トルクショックの発生を適切に抑制することが可能となる。
ここで、図2を参照して、第1実施形態に係る切り替え方法について具体的に説明する。図2(a)は目標過給圧差を示し、図2(b)は目標過給圧を示し、図2(c)は吸入空気量を示している。なお、図2は、横軸にエンジン回転数・負荷を示している。また、ここでは、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合を例に挙げて説明する。
図2(b)は、細い実線61が1個ターボ目標過給圧を示し、破線62が2個ターボ目標過給圧を示している。また、図2(a)は、図2(b)に示す1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差(目標過給圧差)を示している。第1実施形態では、1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」になった際に、シングルターボモードからツインターボモードに切り替える。具体的には、図2(a)中の符号A1で示す点のエンジン回転数・負荷を、シングルターボモードからツインターボモードに切り替える切り替え点として設定する。このように切り替え条件を設定した場合には、図2(b)中の太い実線63で示す目標過給圧が制御に用いられることとなる。
ここで、比較例に係る方法(吸入空気量に基づいて切り替え条件を設定する方法)によって切り替え条件を設定する場合を考える。この場合、図2(c)で示すように、EGR量などの設定によって吸入空気量に変曲点が存在する場合には、最適な切り替え条件(トルクが等しくなるという条件)に設定することは困難となる。これに対して、第1実施形態に係る方法では、2つの目標過給圧の差に基づいて切り替え条件を設定するため、変曲点が存在していても適切に最適な条件を設定することができる。また、第1実施形態に係る方法では、複雑な付加演算が不要となる。
図3は、第1実施形態に係る切り替え判定処理を示すフローチャートである。この処理は、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替えるべき状況であるかを判断するために実行される。なお、切り替え判定処理は、前述したECU50によって繰り返し実行される。
まず、ステップS101では、ECU50は、1個ターボ目標過給圧、及び2個ターボ目標過給圧を取得する。この場合、ECU50は、車両の運転状態などに基づいて、1個ターボ目標過給圧及び2個ターボ目標過給圧を演算する。より具体的には、ECU50は、エンジン回転数、燃料噴射量、及びEGRバルブ14の開度(以下、「EGRバルブ開度」と呼ぶ。)によって規定されたマップを参照して、現在のエンジン回転数、燃料噴射量、及びEGRバルブ開度に対応する1個ターボ目標過給圧及び2個ターボ目標過給圧を取得する。このマップは、1個ターボ目標過給圧を取得するためのマップと、2個ターボ目標過給圧を取得するためのマップの2つが存在する。なお、エンジン回転数や燃料噴射量などに基づいて演算された開度によってEGRバルブ開度の制御などが実行される場合には、この演算されたEGRバルブ開度を、目標過給圧を取得する際に用いることができる。以上の処理が終了すると、処理はステップS102に進む。
ステップS102では、ECU50は、ステップS101で取得された1個ターボ目標過給圧及び2個ターボ目標過給圧に基づいて、切り替え条件が成立しているか否かの判定を行う。具体的には、ECU50は、1個ターボ目標過給圧から2個ターボ目標過給圧を減算した値が所定値α1未満であるか否かを判定する。なお、所定値α1は、第1の所定値に対応し、概ね「0」である値に設定される。
1個ターボ目標過給圧から2個ターボ目標過給圧を減算した値が所定値α1未満である場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS103に進む。この場合には、切り替え条件が成立しているため、ECU50は、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替えを実行する(ステップS103)。具体的には、ECU50は、ターボ過給機5が適切に作動を開始するように(つまりトルクショックなどが発生しないように)、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を開弁させる制御を行う。そして、処理は当該フローを抜ける。
一方、1個ターボ目標過給圧から2個ターボ目標過給圧を減算した値が所定値α1以上である場合(ステップS102;No)、処理はステップS104に進む。この場合には、切り替え条件が成立していないため、ECU50は、シングルターボモードに保持する(ステップS104)。具体的には、ECU50は、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を閉に維持する。そして、処理は当該フローを抜ける。
以上の第1実施形態に係る切り替え方法によれば、最適な切り替え条件を適切に設定して、切り替え時のトルクショックの発生を適切に抑制することが可能となる。また、第1実施形態によれば、目標過給圧の設定を行うと自ずと切り替え点を設定することができるので、切り替え条件の設定に要する時間を大きく短縮することができる。
なお、上記では、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替え方法の例について示したが、ツインターボモードからシングルターボモードへ切り替える場合にも、第1実施形態に係る切り替え方法を同様に実行することができる。この場合には、2個ターボ目標過給圧から1個ターボ目標過給圧を減算した値が第1の所定値(α1)未満となった際に、ツインターボモードからシングルターボモードへ切り替えることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る切り替え方法について説明する。
前述した第1実施形態では、1個ターボ目標過給圧から2個ターボ目標過給圧を減算した値が第1の所定値未満となった際に(即ち、概ね「0」となった際に)、モードの切り替えを実行すべきであると判断したが、第2実施形態では、2個ターボ目標過給圧から1個ターボ目標過給圧を減算した値が第2の所定値よりも大きくなった際に、モードの切り替えを実行すべきであると判断する。つまり、第2実施形態では、切り替え後の目標過給圧が少なくとも切り替え前の目標過給圧よりも大きいという条件を切り替え条件として用いる。こうするのは、モードの切り替えに起因する過給圧の落ち込み(トルクショック)の発生を抑制するためである。
ここで、図4を参照して、第2実施形態に係る切り替え方法について説明する。図4(a)、(b)は、切り替え条件による過給圧の変化の具体例を示している。また、図4(a)、(b)は、横軸にエンジン回転数・負荷を示し、縦軸に目標過給圧を示している。なお、ここでは、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合を例に挙げて説明する。
図4(a)は、1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧とが概ね同一の値になった際に切り替えを実行した場合の過給圧変化の一例を示している。図4(a)では、細い実線71は1個ターボ目標過給圧を示し、破線72は2個ターボ目標過給圧を示す。そして、太い実線73は、上記のように切り替えを実行した場合の過給圧の変化を示す。これより、矢印74で示すように、大きな過給圧の落ち込みが発生していることがわかる。このように、1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧とが概ね同一の値になった際に切り替えを実行した場合には、過給圧の落ち込みが発生する可能性がある。
図4(b)は、2個ターボ目標過給圧から1個ターボ目標過給圧を減算した値が第2の所定値よりも大きくなった際に(即ち、切り替え後の目標過給圧が少なくとも切り替え前の目標過給圧よりも大きいという切り替え条件が成立した際に)、モードの切り替えを実行した場合の過給圧変化の一例を示している。即ち、第2実施形態に係る切り替え方法を実行した場合の過給圧変化を示している。具体的には、図4(b)では、細い実線75は1個ターボ目標過給圧を示し、破線76は2個ターボ目標過給圧を示す。そして、太い実線77は、第2実施形態に係る切り替えを実行した場合の過給圧の変化を示す。この場合、図4(a)に示す切り替え点から、図中の白抜き矢印で示すように切り替え点をずらして、モードの切り替えを実行する。このようにモードの切り替えを実行することによって、矢印78で示すように、モードの切り替えに起因する過給圧の落ち込みが大きく抑制されていることがわかる。こうなるのは、切り替え直後の目標過給圧が、切り替え前の目標過給圧に比して大きな値に設定されることとなるからである。
図5は、第2実施形態に係る切り替え判定処理を示すフローチャートである。この処理は、ECU50によって実行され、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替えるべき状況であるかを判断するために実行される。なお、図5中のステップS201、S203、S204の処理は、それぞれ、前述した第1実施形態に係る切り替え判定処理におけるステップS101、S103、S104の処理(図3参照)と同様であるため、ここでは、ステップS202の処理について詳細に説明する。
ステップS202では、ECU50は、ステップS201で取得された1個ターボ目標過給圧及び2個ターボ目標過給圧に基づいて、切り替え条件が成立しているか否かの判定を行う。具体的には、ECU50は、2個ターボ目標過給圧から1個ターボ目標過給圧を減算した値が所定値α2よりも大きいか否かを判定する。なお、所定値α2は、第2の所定値に対応し、前述した所定値α1よりも少なくとも大きな値に設定される。
2個ターボ目標過給圧から1個ターボ目標過給圧を減算した値が所定値α2よりも大きい場合(ステップS202;Yes)、処理はステップS203に進む。この場合には、切り替え条件が成立しているため、ECU50は、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替えを実行する(ステップS203)。一方、2個ターボ目標過給圧から1個ターボ目標過給圧を減算した値が所定値α2以下である場合(ステップS202;No)、処理はステップS204に進む。この場合には、切り替え条件が成立していないため、ECU50は、シングルターボモードに保持する(ステップS204)。以上のステップS203及びS204の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
以上の第2実施形態に係る切り替え方法によれば、モードの切り替えに起因する過給圧の落ち込み及びトルクショックを、より効果的に抑制することが可能となる。
なお、上記では、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替え方法の例について示したが、ツインターボモードからシングルターボモードへ切り替える場合にも、第2実施形態に係る切り替え方法を同様に実行することができる。この場合には、1個ターボ目標過給圧から2個ターボ目標過給圧を減算した値が第2の所定値(α2)よりも大きくなった際に、ツインターボモードからシングルターボモードへ切り替えることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る切り替え方法について説明する。
前述した第1及び第2実施形態では、1個ターボ目標過給圧から2個ターボ目標過給圧に基づいて切り替えを判断したが、第3実施形態では、過給圧センサ9が検出した実過給圧、1個ターボ目標過給圧、及び2個ターボ目標過給圧を比較することによって、モードの切り替えを判断する。詳しくは、第3実施形態では、現在の状態(シングルターボモード及びツインターボモードのいずれかのモード)における実過給圧と、同一運転条件の切り替え後の状態における目標過給圧との差に基づいて切り替え条件を設定する。具体的には、シングルターボモードにおける実過給圧と、ツインターボモードにおける2個ターボ目標過給圧との差の絶対値が第3の所定値未満となった際に(言い換えると、概ね「0」となった際に)、シングルターボモードからツインターボモードに切り替えを実行すべきであると判断する。
ここで、上記のような第3実施形態に係る切り替え方法を行う理由を説明する。上記のようにシングルターボモードとツインターボモードとが切り替え可能なシステムでは、吸気切替弁6及び排気切替弁15からのガス漏れが発生した場合、シングルターボモードに設定されている際には、実過給圧が1個ターボ目標過給圧よりも低下する傾向にある。この場合には、過給圧を向上させるために、速やかにツインターボモードに切り替えることが好ましい。一方、急加速時においては、過給遅れが生じることによって、実過給圧が2個ターボ目標過給圧よりも低下する傾向にある。この場合には、排気圧損を低下させて加速性を向上させるために、通常よりも低過給圧(低空気量・低トルク)の状態において、シングルターボモードからツインターボモードに切り替えることが好ましい。
したがって、第3実施形態では、上記したような状況においてツインターボモードへの切り替えが速やかに行われるように、実過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」となった際に、シングルターボモードからツインターボモードに切り替える。この場合、実過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」に達するほうが、1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」に達するよりも早くなる。よって、速やかにモードを切り替えることが可能となる。以上より、第3実施形態に係る切り替え方法によれば、ガス漏れによる過給圧落ち込みや急加速による過給遅れが生じた場合において、最適な切り替え条件を設定でき、速やかにツインターボモードに切り替えることができる。なお、ガス漏れや急加速などが生じていない場合には、実過給圧は1個ターボ目標過給圧に概ね一致するため、上記した第3実施形態に係る切り替え方法によれば、このような場合においても、モードの切り替えを適切に実行することができる。
ここで、図6及び図7を参照して、第3実施形態に係る切り替え方法について具体的には説明する。
図6は、ガス漏れ時における過給圧の挙動を示す図である。図6(a)は過給圧差を示し、図6(b)は過給圧を示す。また、図6(a)、(b)は、それぞれ、横軸に時間を示している。なお、ここでは、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合を例に挙げて説明する。
図6(a)では、太い実線85は実過給圧と2個ターボ目標過給圧との差を示し、破線86は1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差を示している。また、図6(b)では、細い実線81が1個ターボ目標過給圧を示し、破線82が2個ターボ目標過給圧を示し、一点鎖線83が実過給圧を示す。そして、太い実線84が第3実施形態に係る切り替え方法を実行した場合における過給圧の変化を示す。
図6(b)中の細い実線81及び一点鎖線83より、実過給圧が1個ターボ目標過給圧よりも低下していることがわかる。このような実過給圧の低下は、ガス漏れなどによって発生し得る。第3実施形態では、実過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」になった際に、シングルターボモードからツインターボモードに切り替える。この場合、時刻t11において、実過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」になるため(太い実線85参照)、モードの切り替えが行われる。これに対して、1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」になった際にモードの切り替えを行う場合、時刻t12において、モードの切り替えが行われる(破線86参照)。
ここで、第3実施形態に係る切り替え方法による切り替えを行った場合(太い実線84参照)と、1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差に基づいて切り替えを行った場合(一点鎖線83参照)とを比較すると、第3実施形態に係る切り替え方法によれば、速やかにツインターボモードに切り替わっていることがわかる。そのため、図6(b)中の白抜き矢印で示すように、過給圧が速やかに上昇することとなる。即ち、第3実施形態に係る切り替え方法によれば、ガス漏れなどが発生した場合において、モードを速やかに切り替えることができ、過給圧を効果的に上昇させることができる。
次に、図7を参照して、急加速時における過給圧の挙動について説明する。図7(a)は過給圧差を示し、図7(b)は過給圧を示す。また、図7(a)、(b)は、それぞれ、横軸に時間を示している。なお、ここでは、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合を例に挙げて説明する。
図7(a)では、太い実線95は実過給圧と2個ターボ目標過給圧との差を示し、破線96は1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差を示している。また、図7(b)では、細い実線91が1個ターボ目標過給圧を示し、破線92が2個ターボ目標過給圧を示し、一点鎖線93が実過給圧を示す。そして、太い実線94が第3実施形態に係る切り替え方法を実行した場合における過給圧の変化を示す。
図7(b)中の細い実線91及び一点鎖線93より、実過給圧が、1個ターボ目標過給圧だけでなく2個ターボ目標過給圧よりも低下していることがわかる。このような実過給圧の低下は、急加速により過給遅れが大きい場合に発生し得る。第3実施形態では、実過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」になった際に、シングルターボモードからツインターボモードに切り替える。この場合、時刻t21において、実過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」になるため(太い実線95参照)、モードの切り替えが行われる。これに対して、1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差が概ね「0」になった際にモードの切り替えを行う場合、時刻t22において、モードの切り替えが行われる(破線96参照)。
ここで、第3実施形態に係る切り替え方法による切り替えを行った場合(太い実線94参照)と、1個ターボ目標過給圧と2個ターボ目標過給圧との差に基づいて切り替えを行った場合(一点鎖線93参照)とを比較すると、第3実施形態に係る切り替え方法によれば、速やかにツインターボモードに切り替わっていることがわかる。そのため、図7(b)中の白抜き矢印で示すように、過給圧が速やかに上昇することとなる。即ち、第3実施形態に係る切り替え方法によれば、急加速により過給遅れが大きい場合において、モードを速やかに切り替えることができ、過給圧を効果的に上昇させることができる。
図8は、第3実施形態に係る切り替え判定処理を示すフローチャートである。この処理は、ECU50によって実行され、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替えるべき状況であるかを判断するために実行される。
まず、ステップS301では、ECU50は、実過給圧を取得すると共に、2個ターボ目標過給圧を取得する。この場合、ECU50は、過給圧センサ9から実過給圧を取得する。そして、ECU50は、エンジン回転数、燃料噴射量、及びEGR開度によって規定されたマップを参照して、2個ターボ目標過給圧を取得する。以上の処理が終了すると、処理はステップS302に進む。
ステップS302では、ECU50は、ステップS301で取得された実過給圧及び2個ターボ目標過給圧に基づいて、切り替え条件が成立しているか否かの判定を行う。具体的には、ECU50は、実過給圧から2個ターボ目標過給圧を減算した値の絶対値が所定値α3未満であるか否かを判定する。なお、所定値α3は、第3の所定値に対応し、概ね「0」である値に設定される。
実過給圧から2個ターボ目標過給圧を減算した値の絶対値が所定値α3未満である場合(ステップS302;Yes)、処理はステップS303に進む。この場合には、切り替え条件が成立しているため、ECU50は、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替えを実行する(ステップS303)。一方、実過給圧から2個ターボ目標過給圧を減算した値の絶対値が所定値α3以上である場合(ステップS302;No)、処理はステップS304に進む。この場合には、切り替え条件が成立していないため、ECU50は、シングルターボモードに保持する(ステップS304)。以上のステップS303及びS304の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
以上の第3実施形態に係る切り替え方法によれば、ガス漏れが発生した時や急加速時において、複雑な演算などを行うことなく最適な切り替え条件を設定でき、速やかにツインターボモードに切り替えることができる。言い換えると、ガス漏れや急加速の発生の有無に拠らずに適切なモードの切り替えを判断することができる。
なお、上記では、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替え方法の例について示したが、ツインターボモードからシングルターボモードへ切り替える場合にも、第3実施形態に係る切り替え方法を同様に実行することができる。この場合には、実過給圧と1個ターボ目標過給圧との差の絶対値が第3の所定値(α3)未満となった際に、ツインターボモードからシングルターボモードへ切り替えることができる。