JP4797898B2 - 二次イオン質量分析装置の較正用標準試料及びその製造方法 - Google Patents

二次イオン質量分析装置の較正用標準試料及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、遷移領域(Transient領域)の原子濃度分布を測定するための較正に用いられる二次イオン質量分析装置の較正用標準試料及びその製造方法に関する。
二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Spectromertry)装置は、一次イオンを試料表面に照射して試料表面をスパッタしながら、スパッタにより放出される2次イオン(イオン化した測定すべき不純物原子)を質量分析することで、試料に含まれる不純物原子の深さ方向の濃度分布を分析する。この二次イオン質量分析装置は、試料表面近傍の不純物原子の濃度分布を高感度で測定することができることから、半導体装置の不純物原子濃度、例えばイオン注入層の不純物原子濃度の観測に多用されている。
しかし、スパッタにより生成される2次イオン生成率は、不純物原子の種類により大きく異なる。図4は、各種原子の相対2次イオン化率を表す図であり、図4(a)はO- イオンを13.5eV、1nAで照射した場合、図4(b)はCs+ イオンを13.5eV、1nAで照射した場合を表している。
図4から明らかなように、相対2次イオン化率は原子の種類に大きく依存しており、二次イオン質量分析における2次イオン生成率も不純物原子ごとに大きく異なる。このため、二次イオン質量分析装置を用いて不純物原子濃度分布を定量的に観測するには、観測する不純物原子ごとに二次イオン質量分析装置の感度較正をなさねばならない。
感度較正は、次のようにしてなされる。まず、予め不純物原子濃度分布が知られている標準試料を準備し、その標準試料の不純物原子濃度分布を二次イオン質量分析装置により測定する。そして、測定された不純物原子濃度分布がその標準試料の既知の不純物原子濃度に一致するように、補正係数を決定する。その後に行なわれる試料の不純物原子濃度分布の測定において、この補正係数を測定値に乗ずることで試料内の不純物原子濃度を定量することができる。
上述した二次イオン質量分析装置の較正に用いられる標準試料は、正確な濃度分布を具備することは勿論、さらに母材及び表面状態が試料と同等であることが要求される。なぜなら、2次イオン生成率は、同一原子であっても母材(マトリックス)あるいは他の原子の存否に依存して変化する。このため、感度較正に用いられる標準試料は、測定すべき試料と母材及び不純物原子が同一であることが好ましい。また、二次イオン質量分析では、スパッタ速度及びイオン生成率がスパッタの進行とともに変化する遷移領域が極表面近傍(例えば10nm以下の表面層)に存在する。この遷移領域のスパッタ速度及びイオン生成率は、1次イオン種が同一であっても、試料の表面状態、例えば表面荒さ及び表面の化学的状態により変わる。従って、この領域を定量分析するには、試料と同じ表面状態ないし同等のスパッタ速度及びイオン生成率を有する表面状態をもつ標準試料を用いて二次イオン質量分析装置を較正しなければならない。
従来、二次イオン質量分析装置の較正では、不純物原子をイオン注入した標準試料が通常用いられている。イオン注入は、予測される濃度の濃度分布を形成することが容易であり、かつ、作製された標準試料は濃度分布のピークを有することから二次イオン質量分析装置の較正に適している。
図5は従来の標準試料の不純物原子濃度分布を表す図であり、不純物原子としてAsをシリコン基板にイオン注入して作製された標準試料のAs濃度分布を表している(例えば、非特許文献1を参照。)。
図5を参照して、As濃度は、イオン注入の投影飛程に相当する深さ、約70nmの深さにピークを有して分布する。この投影飛程(即ち、ピーク位置)及びピーク濃度は、計算及びイオン注入量の測定から十分正確に予測することができる。従って、イオン注入を用いて、正確な不純物原子濃度分布を有する標準試料を容易に作製することができる。
しかし、イオン注入により作製された標準試料は数十nm程度の深い位置に濃度ピークを有する。このように濃度ピーク位置が深いと、表面近傍の濃度はピーク濃度に比べて非常に小さくなるため、10nm以下の浅い遷移領域の濃度を正確に予測することは難しくなる。このため、遷移領域の測定値を較正するための標準試料として使用することは難しい。
投影飛程を短くして遷移領域のような浅い領域、例えば2〜5nm以下の領域に濃度分布のピークを形成することはできる。しかし、それには、注入イオンの加速エネルギーを小さく、例えば1〜2keVより小さくしなければならない。このような小さな加速エネルギーのイオン注入では、注入イオンの表面反射が増加するため、基板内に注入される不純物原子量を正確に予測することができない。その結果、予測される不純物原子濃度のピーク濃度が不正確になってしまう。このため、遷移領域内、とくに2〜5nmの領域に予測された濃度のピークを有する標準試料をイオン注入によって作製することは難しい。
かかる場合、例えばラザフォード後方散乱(Rutherford Backscattering Spectroscopy)を用いてピーク濃度を実測し、この実測された試料を標準試料とすることはできる。だが、このような測定には多大な手間と大規模かつ高価な装置が必要であり、注入条件が異なる多数の標準試料の全てについて測定することは実用に適さない。
1次イオンを制御して、表面から10nm以下の遷移領域の不純物原子濃度を、二次イオン質量分析により測定する試みがなされている(例えば、非特許文献2を参照。)。ここでは、試料の雰囲気と、1次イオンの注入エネルギー及び入射角を制御することで、遷移領域の2次イオン生成率を一定に制御できることが開示されている。
この遷移領域の定量測定の試みでは、試料として、不純物原子のデルタドープ層とエピタキシャル層とを交互に多層に積層したシリコン基板が用いられた。この試料の二次イオン質量分析では、当然に、深さ方向にデルタドープ層の積層周期で周期的に変化する不純物分布が観測される。このデルタドープされた試料では、遷移領域内でも遷移領域を超えた深い領域,即ち2次イオン生成率が定常になる領域でも、同一周期で変動する同一不純物原子濃度分布を有する。従って、観測される周期的変動が両領域で同じであれば、両領域で2次イオン生成率が同一であると確認できる。1次イオンの注入エネルギー及び入射角を選択して、これらの全ての領域で観測される不純物原子濃度の周期的変動が同じになる条件、即ち、遷移領域での2次イオン生成率が一定になる条件が示された。
このように不純物原子がドープされたエピタキシャル層は、表面近くまで均一な濃度でドープされるため、エピタキシャル層を遷移領域の2次イオン生成率を較正するための標準試料として使用することができる。
しかし、エピタキシャル層のドーズ量は成長条件に大きく依存するから、予測どおりの不純物原子濃度を有する標準試料を作製することは極めて難しい。このため、標準試料とするためには、ラザフォード後方散乱分光等を用いた定量分析が不可欠であり、実用性に乏しい。また、多数の濃度分布が異なる標準試料を作製するには、エピタキシャル成長は煩雑に過ぎる。
さらに、エピタキシャル層の表面状態は、実際の試料、例えば半導体装置のイオン注入領域の表面状態と異なる。その結果、表面近傍のスパッタ速度及びイオン生成率も異なるため、標準試料としてそのまま使用することはできない。なお、イオン注入により作成された深い位置に濃度ピークを有する標準試料の表面を、研摩又はスパッタ等で除去して濃度ピークを浅くした場合も、表面状態が試料と異なるため同様に適切な標準試料とはならない。
遷移領域の深い位置に濃度ピークを有する、イオン注入により作製された複数の標準試料を用いて、遷移領域の浅い位置における二次イオン質量分析装置の感度較正を行なう方法が知られている(例えば、特許文献1)。
この方法では、遷移領域からより深い領域(イオン生成率が一定となる領域)にかけてそれぞれ異なる深さに濃度ピークを有する複数の標準試料を準備し、それらの標準試料のピーク濃度を二次イオン質量分析装置で測定する。そして、浅い領域で観測される2次イオン強度が、標準試料のピーク濃度から予測される測定値(イオン強度)より小さくなる領域を遷移領域とみなし、この領域の2次イオン強度が標準試料のピーク濃度(既知である)から予測される測定値に一致するように補正式を作成する。これにより、深い位置に濃度ピークを有する従来の標準試料を用いて、二次イオン質量分析装置の遷移領域の感度を較正することができる。
しかし、この方法では、イオン注入された不純物原子濃度分布、とくに濃度ピークの位置(深さ)と濃度とが正確に予測されることを前提に、予測値と実測値との乖離を補正式に基づき較正している。しかし、遷移領域の浅い領域にピークを有するイオン注入では、イオンの加速エネルギーが低いため不純物原子濃度の正確な予測は難しい。
このため、補正式を、深い位置に濃度ピークを有する標準試料から算出し、浅い遷移領域の較正は外挿により求める。従って、浅い遷移領域の測定は、標準試料の実測により較正することができない。加えて、この補正式は、遷移領域の誤差が1次イオン注入効果から発生するとし、他の誤差要因を考慮してない。このように、1次イオン注入効果による補正式を外挿する較正方法では、試料表面の状態や1次イオン注入効果以外の効果が反映されず、精密な較正を行なうことは難しい。
特開平5−188020号公報 National Institute of Standards & Technology,’Certificate of Analysis,Standerd Reference Material 2134’,Certificate Issue Date:09.Auguest 2000 Charles W.Magee等, ’Sputtering rate chang and surface roughening during oblique and normal incidence O2 + bombardment of sillicon, with and without oxygen’, J.Vac.Sci.Technol.B16(6). Nov/Dec 1998, p3099−p3104
上述したように、イオン注入により作製された標準試料は、濃度ピークの深さ及びピーク濃度を正確に予測することが容易なため、二次イオン質量分析装置の較正用標準試料として適している。
しかし、イオン注入の注入エネルギーが低いと反射するイオンが多くなり、正確なピーク濃度を予測することが困難になる。このため、遷移領域のような浅い領域に濃度ピークを有する標準試料を作製することは難しい。このため,浅い領域での二次イオン質量分析装置の精密な較正をすることができない。
また、エピタキシャル成長により作製された試料、又は、基板にイオン注入した後に表面を除去して濃度ピーク位置を浅くすることで作製された試料は、いずれも表面状態が測定すべき試料と異なるため正確な較正をすることができない。さらに、エピタキシャル成長では正確な濃度の試料、とくに正確な位置に正確なピーク濃度を有する試料を作製することは難しい。
1次イオン注入効果の補正式を遷移領域の深い領域に濃度ピークを有する標準試料の測定結果に基づき算出し、この補正式を浅い領域まで外挿して較正する方法では、標準試料の実測による較正ができないため、1次イオン注入効果以外の効果及び表面状態が反映されず、必ずしも正確な較正が担保されない。
本発明の目的は、2〜5nm程度の浅い領域に予測された濃度の濃度ピークを有する二次イオン質量分析装置の較正用標準試料及びその標準試料を容易に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料は、基板表面に5nm以上かつ10nm以下の投影飛程を有するイオン注入により形成された不純物原子のイオン注入層を、熱処理により前記基板側から前記基板表面側へ再結晶化させて形成された再結晶化層を有する。
上記標準試料では、不純物原子のイオン注入層を形成後、基板側から基板表面に向けて再結晶化された再結晶化層が形成される。このイオン注入層が再結晶化する際に、イオン注入層に濃度ピークを有する不純物原子が再結晶化層の表面、即ち未だ再結晶化していないイオン注入層と再結晶化層との界面に移動し、この界面近傍に不純物原子の濃度ピークを形成する。この界面は、再結晶化の進行とともに基板表面に移動するから、これに伴い濃度ピークも基板表面に移動し、基板表面の極めて浅い領域、例えば2〜5nmの深さに不純物原子の濃度ピークが形成される。従って、本発明の標準試料は、投影飛程の深さにピークを有するイオン注入層の濃度ピークに比べて、浅い位置、例えば5nm未満の位置に不純物原子濃度分布のピークを有する。このため、二次イオン質量分析により遷移領域の不純物原子濃度を定量分析する際に、二次イオン質量分析装置の較正用標準試料として使用することができる。
この標準試料の表面は、イオン注入層を再結晶化熱処理した状態であり、この状態は通常の半導体装置のイオン注入層と表面状態が類似している。従って、半導体装置のイオン注入層の二次イオン質量分析の較正にとくに適している。
さらに、本発明の標準試料の母材を、被測定試料の母材と同一とすることが、母材によるイオン生成率の違いに起因する較正誤差を回避する意味で好ましい。なお、被測定物が半導体の不純物領域であるときは、母材はシリコン等の半導体とする。さらに、母材は、イオン注入層が熱処理により基板側から再結晶化する材料であればよく、多結晶又は単結晶であるかを問わない。
イオン注入層は、ピーク濃度が十分精密に予測し得るように、投影飛程が5nm以上の注入エネルギーで形成することが好ましい。投影飛程が5nm未満では、イオン注入エネルギーが低く反射が多くなるため、精密なピーク濃度の予測が困難になる。また、投影飛程が大きいと、不純物原子が基板内部に拡散して、浅い領域に形成される不純物原子のピーク濃度が小さくなるので好ましくない。従って、投影飛程は10nm以下であることが好ましい。
上記較正用標準試料は、まず、基板表面に5nm以上かつ10nm以下の投影飛程を有する不純物原子のイオン注入によりイオン注入層を形成したのち、再結晶化熱処理により前記基板側から前記基板表面側へ再結晶化させて再結晶化層を形成することで製造することができる。
イオン注入層は非晶質層をなし、これを熱処理すると基板側から再結晶化が進行する。このとき、イオン注入された不純物原子は、非晶質層と再結晶化層との界面近傍に集積し濃度ピークを形成する。その結果、イオン注入により形成されたイオン注入層の深さより浅い位置に不純物原子の濃度ピークが形成される。従って、所望の厚さの非晶質層、即ち再結晶化されていないイオン注入層が基板の表面に残るように再結晶化熱処理を制御することで、不純物原子の濃度ピークの位置(深さ)を精密に制御することができる。
再結晶化熱処理の温度は、400℃〜900℃とすることが好ましい。400℃未満では再結晶化の時間が長く実用に適さない。一方、900℃を超えると不純物原子が基板内に拡散するためピーク濃度が低下してしまう。加熱時間が10秒〜60秒程度のフラッシュアニールを用いた再結晶化熱処理では、600℃以上とすることが熱処理時間の観点から好ましく、とくに基板内への不純物原子の拡散を抑制しピーク濃度を精密に制御する観点からは700℃以下とすることが好ましい。
さらに、上述した製造方法により製造された本発明の標準試料から少なくとも1つを選択し、その標準試料の不純物原子濃度分布をラザフォード後方散乱分光を用いて測定することが好ましい。同一条件で製造された標準試料は同一の濃度分布を有するから、測定に供した標準試料と同一条件下で製造された標準試料を、測定に供した標準試料と同一の濃度分布を有する標準試料として扱うことができる。これにより、標準試料を、濃度分布を単に計算により算出するよりも、実測に基づくより正確な濃度分布を有するものとすることができる。
本発明によれば、5nm未満の浅い位置に濃度ピークを有する二次イオン質量分析装置の較正用標準試料を、イオン注入と熱処理という簡易な方法を用いて提供することができる。このため、遷移領域を定量観測するための二次イオン質量分析装置を、精密に較正することができる。
本発明の第1実施形態は、シリコン基板に不純物原子としてAsをドープした二次イオン質量分析装置の較正用標準試料に関する。
図1は、本発明の第1実施形態製造工程断面図であり、標準試料を構成する基板の断面を表している。
図1(a)を参照して、本第1実施形態における標準試料の製造では、まず、(100)を主面とするシリコン単結晶からなる基板1の表面に、不純物原子イオン3としてAsイオンを注入し、基板表面にAsイオンが注入されたイオン注入層2を形成する。イオン注入の加速電圧は3keV、ドーズ量は1×1015cm-2とした。
次いで、表1に示す条件でランプアニールによる再結晶化熱処理を行ない、試料2〜6からなる標準試料を製造した。
Figure 0004797898
図1(b)を参照して、この再結晶化工程の初期には、非晶質のイオン注入層2と基板1の界面に再結晶化層4が形成された。次いで、図1(c)を参照して、再結晶化工程の進行と共に再結晶化層4は厚くなり、再結晶化層4の上にあるイオン注入層2は薄くなる。そして、図1(d)を参照して、ついにはイオン注入層2全体が再結晶化層4に変換された。なお、イオン注入の加速電圧に依存する投影飛程、再結晶化熱処理温度及び再結晶化熱処理時間により、標準試料の不純物原子の濃度分布が制御される。
本第1実施形態では、再結晶化熱処理時間が異なる複数の標準試料を作製し、これらの標準試料の深さ方向の濃度分布をラザフォード後方散乱分光を用いて測定した。ラザフォード後方散乱は、300keVに加速されたHe+ を試料に[101]方向のチャネリングを起こす条件で入射してなされた。
図2は、本発明の第1実施形態標準試料の濃度分布を表す図であり、ラザフォード後方散乱分光により観測された標準試料の不純物原子の濃度分布を表している。横軸は基板1表面からの深さ、縦軸は基板1中のAs濃度(即ち不純物原子濃度)を表している。
図2中の曲線イは、イオン注入したままの濃度分布を表す。図2中の曲線ロ−10、曲線ロ−30及び曲線ロ−60はイオン注入後、600℃でそれぞれ10秒間、30秒間及び60秒間の再結晶化熱処理を経た表1に示す試料1、2及び3の濃度分布を表す。また、図2中の曲線ハ−10及び曲線ニ−10は、それぞれ700℃及び900℃で10秒間の再結晶化熱処理を経た表1に示す試料4、5の濃度分布を表す。
図2の曲線イを参照して、イオン注入された不純物原子(本実施形態ではAs)は、深さ6nmに1.9×1021原子/cm3 のピーク濃度を有する。この濃度分布は周知のLSS理論に基づくイオン注入層の濃度分布の計算から予測される濃度分布と同様である。
次いで、図2の曲線ロ−10を参照して、600℃、10秒間の再結晶化熱処理により、イオン注入層の濃度分布と比較して、ピーク濃度の深さは5.7nmと浅い位置に移動し、ピーク濃度は1.9×1021原子/cm3 と高くなっている。さらに、図2の曲線ロ−30及び曲線ロ−60を参照して、再結晶化熱処理が30秒間、60秒間と長くなるに従いピーク濃度の深さはそれぞれ4nm、3.3nmと浅くなる。同時に、ピーク濃度はそれぞれ2.3×1021原子/cm3 及び1.9×1021原子/cm3 と、熱処理時間が長くなるほど低下している。
さらに、図2の曲線ハ−10を参照して、熱処理温度を700℃と高くすると、熱処理温度が600℃で熱処理時間が同じ10秒間の曲線ロ−10と比較して、ピーク濃度の深さが2.4nmと非常に浅くなる。また、ピーク濃度は2.2×1021原子/cm3 と高くなる。その結果、浅い領域に鋭いピークを有する濃度分布が形成される。さらに熱処理温度を高く900℃にすると、図2の曲線ニ−10を参照して、ピーク濃度の深さは2.2nmとさらに浅く、ピーク濃度は2.5×1021原子/cm3 とさらに高くなる。なお、基板1表面からほぼ2.0nmまで、自然酸化膜が形成されている。
かかる熱処理による濃度分布の変化は、イオン注入条件及び熱処理条件により定まるから、一旦ラザフォード後方散乱分光によりある条件で製造された基板1の濃度分布が測定されると、同一条件で製造された基板1は同一濃度分布を有すると見做し、これを既知の濃度分布を有する標準試料として利用することができる。
このように、イオン注入層2のピーク濃度より浅い位置、例えば2〜5nmの領域に高いピーク濃度を有し、かつ濃度分布が精密に制御された標準試料が、イオン注入と熱処理との制御のみで容易に製造される。
図3は本発明の第1実施形態の標準試料のラザフォード後方散乱強度を表す図であり、上述した図2の測定に用いられたラザフォード後方散乱分光の結果である。図3中の曲線に付した記号ロ−10〜ロ−60、ハ−10及びニ−10は、図2中の曲線に付した記号と同一で、それぞれ試料1〜5に対応している。
図3中、Siを付した矢印近傍のピークは、非晶質のイオン注入層による散乱である。また、Asを付した矢印近傍のピークは、Si基板1中のAs原子からの散乱である。いずれの散乱ピークについても、ピークの低エネルギー側の散乱は深い位置からの散乱に対応し、ピークの高エネルギー側の散乱は浅い位置からの散乱に対応している。
図3のSiを付した矢印近傍のピークを参照して、非晶質層(イオン注入層)からの散乱ピークは、熱処理温度が同じ600℃の場合、熱処理時間が10秒(曲線ロ−10)、30秒(曲線ロ−30)及び60秒(曲線ロ−60)と長くなるにつれてピーク幅が減少する。また、熱処理時間が同じ10秒の場合は、熱処理温度が600℃(曲線ロ−10)、700℃(曲線ハ−10)及び900℃(曲線ニ−10)と高温になるにつれてピーク幅が減少する。
これらのピーク幅の減少は、非晶質層(即ち、イオン注入層)の厚さが薄くなること、言い換えれば、非晶質層の一部が再結晶化したことを示している。図3の結果は、この再結晶化が、曲線ロ−10、ロ−30、ロ−60、ハ−10、ニ−10の順で進行したことを示している。
一方、このピーク幅の減少は、ピークの低エネルギー側の散乱強度が減少することから生じ、高エネルギー側の散乱強度の変化は無視し得る程度である。これは、非晶質層の再結晶化が深い側(基板側)から起こり、浅い側(基板の表面側)に向けて進行したことを示している。従って、これらのピークの低エネルギー側の立ち上がり位置は、再結晶化層と非晶質層との界面に対応している。
次ぎに、図3中のAsを付した矢印近傍のピークを参照して、上述した再結晶化が進行した順、即ち曲線ロ−10、ロ−30、ロ−60、ハ−10、ニ−10の順で、Asによる散乱ピークは、ピーク幅が狭くなると同時に、ピーク位置が高エネルギー側、即ち基板の浅い側へ移動している。
このAsによる散乱ピークの幅の減少及びピーク位置の浅い側への移動は、再結晶化の進行とともに、Asの濃度分布が急峻なピークを有するようになること、その濃度ピークが浅い側に移動することを示している。
さらに、図3から得られる再結晶化層と非晶質層との界面の位置と、図2のAs濃度分布のピーク位置とは、各試料2〜6ともほぼ一致している。このことは、イオン注入層のAsが、再結晶化層と非晶質層(イオン注入層)との界面に集積して、そこに濃度ピークを形成したことを示している。そして、上述したように熱処理の進行によりその界面が基板の表面側に移動するため、Asの濃度ピークも界面とともに基板表面近くへ移動する結果、本第1実施形態の標準試料の非常に浅い位置に不純物原子の濃度ピークが形成される。
上記第1実施形態では、不純物原子としてAsを選択したが、その他の不純物原子、例えばP、B、Sbをについても同様の方法で標準試料を製造することができる。また、基板材料も必要に応じてSi以外の母材を用いることができることはいうまでもない。
上述した本明細書には以下の付記記載の発明が開示されている。
(付記1)5nm以上かつ10nm以下の投影飛程を有する不純物原子のイオン注入により基板表面に形成された前記不純物原子のイオン注入層を再結晶化熱処理し、前記基板側から前記基板表面側へ再結晶化させて形成された再結晶化層を有することを特徴とする二次イオン質量分析装置の較正用標準試料。
(付記2)前記基板は、前記試料と同一母材からなることを特徴とする付記1記載の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料。
(付記3)前記再結晶化層の上に、非晶質の前記イオン注入層を有することを特徴とする付記1又は2記載の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料。
(付記4)基板表面に、投影飛程が5nm〜10nmとなる加速エネルギーで不純物原子をイオン注入してイオン注入層を形成する工程と、
再結晶化熱処理により、前記イオン注入層を前記基板側から前記基板表面側へ再結晶化させて再結晶化層を形成する工程とを有することを特徴とする二次イオン質量分析装置の較正用標準試料の製造方法。
(付記5)前記再結晶化熱処理は、400℃以上かつ900℃以下の温度で熱処理することを特徴とする付記4記載の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料の製造方法。
(付記6)請求項3又は4記載の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料の製造方法により複数の前記較正用標準試料を製造する工程と、
前記複数の較正用標準試料から選択された少なくとも1つの前記較正用標準試料の前記不純物原子の濃度分布を、ラザフォード後方散乱分光を用いて測定する工程とを有し、
残りの前記複数の較正用標準試料を、前記ラザフォード後方散乱分光を用いて測定された濃度分布を有する標準試料とすることを特徴とする付記4又は5記載の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料の製造方法。
本発明を、二次イオン質量分析装置の較正用標準試料に適用することで、二次イオン質量分析装置の遷移領域の較正を精密になすことができる。これにより、半導体装置の精密な不純物原子濃度分布の測定が可能となり、半導体装置の性能向上に寄与する所が大きい。
本発明の第1実施形態製造工程断面図 本発明の第1実施形態標準試料の濃度分布を表す図 本発明の第1実施形態の標準試料のラザフォード後方散乱強度を表す図 各種原子の相対2次イオン化率を表す図 従来の標準試料の不純物原子濃度分布を表す図
符号の説明
1 基板
2 イオン注入層
3 不純物原子イオン
4 再結晶化層

Claims (5)

  1. 5nm以上かつ10nm以下の投影飛程を有する不純物原子のイオン注入により基板表面に形成された前記不純物原子のイオン注入層を再結晶化熱処理し、前記基板側から前記基板表面側へ再結晶化させて形成された再結晶化層を有することを特徴とする二次イオン質量分析装置の較正用標準試料。
  2. 前記再結晶化層の前記基板表面側に、再結晶化されていない前記イオン注入層からなる非晶質層を有することを特徴とする請求項1記載の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料。
  3. 基板表面に、投影飛程が5nm〜10nmとなる加速エネルギーで不純物原子をイオン注入してイオン注入層を形成する工程と、
    再結晶化熱処理により、前記イオン注入層を前記基板側から前記基板表面側へ再結晶化させて再結晶化層を形成する工程とを有することを特徴とする二次イオン質量分析装置の較正用標準試料の製造方法。
  4. 前記再結晶化熱処理は、400℃以上かつ900℃以下の温度で熱処理することを特徴とする請求項3記載の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料の製造方法。
  5. 請求項3又は4記載の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料の製造方法により複数の前記較正用標準試料を製造する工程と、
    前記複数の較正用標準試料から選択された少なくとも1つの前記較正用標準試料の前記不純物原子の濃度分布を、ラザフォード後方散乱分光を用いて測定する工程とを有し、
    残りの前記複数の較正用標準試料を、前記ラザフォード後方散乱分光を用いて測定された濃度分布を有する標準試料とすることを特徴とする請求項3又は4記載の二次イオン質量分析装置の較正用標準試料の製造方法。
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