しかしながら、上記したミキサー装置では、例えば、粉材と液体との固液混合物を撹拌混合するような場合において、粉材が粉玉状に団粒化してしまうと、かかる団粒化した固形分を粉砕することが難しく、結果、団粒化した粉材を細かく粉砕して液体中に均等分散させるために、固液混合物を長い間撹拌する必要があり、撹拌混合処理に要する時間が長期化してしまうという問題点があった。
しかも、このように撹拌混合時間が長期化すると、固液混合物と撹拌用の羽根体との摩擦抵抗に伴う摩擦熱や、固液混合物中への外気の混入によって、固液混合物の温度が上昇してしまい、結果、調理に必要となる粉材本来の特性が阻害されて、かかる固液混合物の品質が低下してしまうという問題点があった。
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するため、固液混合物中に存在する団粒化した粉材等の固形分を、極めて短時間で粉砕して液体中に均等分散させることができるミキサー装置を提供することを目的としている。
この目的を達成するために請求項1のミキサー装置は、固液混合物中の固形分を粉砕して液体中に均等混合させるミキサーヘッドと、そのミキサーヘッドを駆動する駆動装置とを備えており、前記ミキサーヘッドに回転不能に固定され、多数の小孔が周壁に穿設される筒状体に形成され、その筒状体の軸方向一端部に開口される流出口を有する筒状部材と、その筒状部材の内周部に回転可能に配設され、その回転によって前記流出口へ向かう固液混合物の流れを生成する回転ブレードと、その回転ブレードによって固液混合物の流れが向かう前記流出口に近接して前記ミキサーヘッドに回転可能に配設され、その回転によって前記流出口から流出する固液混合物に含まれる固形分を切断又は粉砕する回転カッターと、その回転カッター及び流出口に近接して前記ミキサーヘッドに配設され、その流出口から流出する固液混合物の流れを反射して前記筒状部材の周囲へ方向転換させる還流部材とを備えている。
この請求項1のミキサー装置によれば、まず、固液混合物が容器に貯留され、ミキサーヘッドが、その容器内へ入れられて固液混合物中に沈設される。そして、この状態で、回転ブレード及び回転カッターが回転されると、回転ブレードの回転によって筒状部材の内周部に流出口へ向かう固液混合物の流れが生成される。このような流れが筒状部材の内周部に生成されると、筒状部材の周囲にある固液混合物が、筒状部材の周壁に穿設される多数の小孔から筒状部材の内周部へ向けて吸引される。
この吸引によって、筒状部材の周囲にある固液混合物は各小孔を通じて筒状部材の内周部へ吸入されるのであるが、このとき、固液混合物に含まれる固形分のうちで塊状のもの又は団粒化しているものは、小孔を通過する際に小孔の口径以下のサイズに粉砕される。そして、各小孔から筒状部材の内周部へ吸入された固液混合物は、回転ブレードの回転によって筒状部材の流出口へ向けて流れ、流出口から流出される。このとき、かかる流出口には回転カッターが近接して配設されるため、かかる回転カッターによって、固液混合物に含まれる固形分が切断又は粉砕される。
すると、この回転カッターの切断又は粉砕によって、固液混合物に含まれる固形分のサイズが更に細かくされる。そして、流出口から流出した固液混合物の流れは、還流部材によって反射されることで方向転換されて、筒状部材の周囲へ向けて送り返される。つまり、還流部材によって、筒状部材の周囲から筒状部材の内周部へ吸入された固液混合物は、再び筒状部材の周囲へ還流させられることとなる。
この結果、固液混合物が、筒状部材の周囲から、筒状部材における複数の小孔、その内周部、及び、その流出口を通過して、還流部材によって再び筒状部材の周囲へ還流するという固液混合物の循環液流が生成される。このように循環液流となった固液混合物は、筒状部材及び回転カッターによって繰り返し切断又は粉砕されるため、短時間で固形分が細かく均等に粉砕される。
請求項2のミキサー装置は、請求項1のミキサー装置において、前記回転ブレード及び回転カッターの双方は同じ回転軸の軸方向先端部に連結固定されており、その回転軸は、前記回転ブレード及び回転カッターの連結固定部分から前記駆動装置へ向けて延設される長尺状の軸体であり、その駆動装置は、その回転軸の軸方向基端部に連結されて当該回転軸に回転力を付与するものである。
この請求項2のミキサー装置によれば、請求項1のミキサー装置と同様に作用する上、回転ブレードと回転カッターとは、それらに回転力を伝達する回転軸が共通化されているので、かかる1つの回転軸に対して駆動装置から回転力を付与することで、双方一体となって回転駆動される。
また、回転ブレード及び回転カッターの双方に回転力を伝達する回転軸は、回転ブレード及び回転カッターの連結固定部分から駆動装置へ向けて延設される長尺状の軸体であるので、回転軸と駆動装置との連結部分を固液混合物の外に設けることができ、かかる駆動装置自体又はその構成要素の一部をミキサーヘッドに搭載する必要がなく、これらの駆動装置又はその一部の構成要素が食用となる固液混合物に接触することが防止される。
請求項3のミキサー装置は、請求項1又は2のミキサー装置において、前記還流部材は、前記流出口と間隙を隔てて離間配置され、その流出口に覆設され前記筒状部材より外径が大きく形成されており、その還流部材の外周縁部には、前記筒状部材の周囲へ向けて斜設されて、前記流出口から流出する固液混合物の流れを前記筒状部材の周囲へ向けて案内する案内部が周設されている。
この請求項3のミキサー装置によれば、請求項1又は2のミキサー装置と同様に作用する上、流出口から流出した固液混合物は、その流出口から僅かに間隙を隔てて離間した還流部材に衝突させられる。このように還流部材に衝突した固液混合物は、還流部材の外周縁部に斜設される案内部に沿って流されて、その流れ方向が筒状部材の周囲に方向転換される。
請求項4のミキサー装置は、請求項1から3のいずれかのミキサー装置において、前記流出口は、前記筒状部材の軸方向に向かって開口形成されており、前記回転カッターは、前記筒状部材の略軸直角平面内で回転される板状体であり、その板状体の外周縁部に複数のカッター刃が形成され、そのカッター刃の刃先が当該回転カッターの外周側に向けられている。
この請求項4のミキサー装置によれば、請求項1から3のいずれかのミキサー装置と同様に作用する上、固液混合物は、筒状部材の流出口から筒状部材の軸方向へ向けて流出され、回転カッターは、この固液混合物の流出方向に対する略軸直角平面内で回転される。さすれば、回転カッターが回転される場合に、複数のカッター刃は、固液混合物の流出方向に対する略軸直角方向に切り込むように繰り返し切り回される。
すると、流出口から流出する固液混合物は、複数のカッター刃によって、まるで断ち切られ、叩き切られ、スライスされ、又は、切り刻まれるように連続的に繰り返して切断される。そして、この複数のカッター刃の連続的な切断動作によって、固液混合物に含まれる大きな固形分が切断又は粉砕される。
請求項5のミキサー装置は、請求項1から4のいずれかのミキサー装置において、前記回転ブレード及び回転カッターの双方は同じ回転軸の軸方向先端部に連結固定されており、その回転軸は、前記回転ブレード及び回転カッターの連結固定部分から前記駆動装置へ向けて延設される長尺状の軸体であり、その駆動装置は、前記回転軸の軸方向基端部に連結されて当該回転軸に回転力を付与するものであり、前記筒状部材は、前記ミキサーヘッドに取り外し可能に固定されており、前記還流部材は、前記回転ブレード及び回転カッターを残したまま前記回転軸の軸方向基端側へスライド移動可能に形成されている。
この請求項5のミキサー装置によれば、請求項1から4のいずれかのミキサー装置と同様に作用する上、例えば、筒状部材は多数の小孔を有するがため、回転ブレードは筒状部材の内周部で回転されるがため、及び、回転カッターは還流部材とともに筒状部材の流出口に近接するがため、いずれも固液混合物の残留物が付着したら除去しにくいものであり、ミキサーヘッドの使用後の衛生管理において細心の注意を要するものである。
しかしながら、このミキサー装置によれば、その使用後は、筒状部材をミキサーヘッドから取り外してから、かかる筒状部材に付着した固液混合物の残留物が洗浄によって容易に除去される。しかも、還流部材を、回転ブレード及び回転カッターの回転軸に沿って、回転軸の駆動装置連結側へスライド移動させれば、回転ブレード及び回転カッターのみが回転軸の軸方向先端部に残されるので、かかる回転ブレード及び回転カッターに付着した固液混合物の残留物が洗浄によって容易に除去される。
請求項1記載のミキサー装置によれば、固液混合物の循環液流を生成して、筒状部材及び回転カッターによって固液混合物に含まれる固形分を繰り返し切断又は粉砕することで、かかる固形分を短時間で細かく均等混合できるという効果がある。すると、固液混合物と回転ブレード等との摩擦抵抗に伴う摩擦熱による固液混合物の温度上昇を抑制でき、固液混合物中への外気が多量に混入することも防止でき、調理に必要となる粉材本来の特性を維持した高品質の固液混合物を生成できるという効果が得られる。
請求項2のミキサー装置によれば、請求項1のミキサー装置の奏する効果に加え、回転ブレード及び回転カッターの双方とこれらに回転力を付与する駆動装置とは長尺状の軸体である回転軸を介して連結されるので、回転ブレード及び回転カッターを駆動する駆動装置自体をミキサーヘッドに搭載する必要もなく、駆動装置の構成要素の一部、例えば、回転ブレードや回転カッターを軸支する軸受(ベアリング)及びこれを保護する水密性のあるシール部品等をミキサーヘッドに設けることも不要となる。
このため、ミキサーヘッドに駆動装置自体、軸受(ベアリング)又は水密性のあるシール部品などを搭載すること自体が不要となるため、これらが食用の固液混合物と接触することが確実に防止されて、食用の固液混合物の衛生管理を極めて容易に行えるという効果がある。しかも、食用固液混合物に対する衛生管理上の目的のため、ミキサーヘッドに駆動装置やその構成要素の一部である軸受(ベアリング)などを搭載する場合に水密性のあるシール部品が不要となるので、その分、ミキサーヘッドの構造を簡素化できるという効果がある。
請求項3のミキサー装置によれば、請求項1又は2のミキサー装置の奏する効果に加え、還流部材は、筒状部材の外径より大きくて、その外周縁部が筒状部材の外周へ向けて斜設される案内部とされているので、流出口から流出した固液混合物の流れをスムーズに筒状部材の周囲へ還流させることができるという効果がある。
請求項4のミキサー装置によれば、請求項1から3のいずれかのミキサー装置の奏する効果に加え、例えば、回転カッターを高速回転させることで、筒状部材の内周部から軸方向に流出される固液混合物は、その流出方向に対する略軸直角方向から繰り返し連続的に切り込まれる複数のカッター刃によって切断されるので、かかる固液混合物の固形分を効率よく短時間で切断又は粉砕して細かくできるという効果がある。
請求項5のミキサー装置によれば、請求項1から4のいずれかのミキサー装置の奏する効果に加え、筒状部材、回転ブレード及び回転カッターはいずれも固液混合物の残留物が付着したら除去しにくいものであるものの、筒状部材が取り外され、かつ、回転ブレード及び回転カッターを回転軸の軸方向先端部に残したまま還流部材が回転軸の軸方向基端部へスライド移動されることで、回転ブレード及び回転カッターが剥き出しの状態となるので、これらに付着する残留物を容易に洗浄除去することができ、衛生管理を極めて容易に行えるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明のミキサー装置の一実施例であるスタンドミキサー1の側面図である。図1に示すように、スタンドミキサー1は、主に、本体フレーム2と、被撹拌混合物である固液混合物を収容する収容容器3と、その収容容器3に収容される固液混合物を撹拌混合するミキサーヘッド4と、このミキサーヘッド4を駆動させる駆動装置5とを備えている。
本体フレーム2は、ミキサーヘッド4及び駆動装置5が搭載される支持構造体であって、その下端部に前後方向(図1左右方向)延設される脚部2aを備えており、この脚部2aは、本体フレーム2の幅方向(図1の紙面に対する垂直方向)両側にそれぞれ1本ずつ設けられている。
一対の脚部2aにおける前後方向両端部の下面にはそれぞキャスター6が1個ずつ転動可能に取着されており、これら合計4個のキャスター6が床面上で転動されることで、本体フレーム2は移動可能に構成されている。また、本体フレーム2は、各脚部2aの後部側(図1右側)に略垂直姿勢で立設される直立部2bを備えており、この直立部2bには制御盤7が配設されている。
制御盤7には、駆動装置5を電気的に制御する制御回路(図示せず)が内蔵されており、この制御盤7の前面(図1左側面)には、スタンドミキサー1の運転条件を設定するための操作パネル8が設けられている。この操作パネル8が使用者によって操作されることでスタンドミキサー1の運転条件が設定され、この設定条件に基づいて制御回路が駆動装置5の運転動作を制御するのである。
また、本体フレーム2の直立部2bからは前方へ向けて延出されるアーム部2cが設けられている。このアーム部2cの先端部には図1中の矢印R方向及び反矢印R方向へ向けて揺動可能に駆動装置5が軸支されており、このため、駆動装置5は、アーム部2cに対する取り付け角度が変更可能とされている。よって、この取り付け角度を変更させることで、駆動装置5にドライブシャフト14を介して連結されるミキサーヘッド4は、その向きが図中の矢印R方向又は反矢印R方向へ動かされて調整されるのである。
さらに、このアーム部2cは、本体フレーム2の直立部2bに内蔵される昇降用モータ(図示せず)によって鉛直方向に昇降移動可能に構成されている。そして、この昇降用モータは、操作パネル8の操作に基づいて制御回路によって制御される。よって、操作パネル8を操作すれば、制御回路によって昇降用モータが制御駆動されてアーム部2cが自在に昇降される。このため、ミキサーヘッド4は、駆動装置5ごと上下動されて、その上下位置が調整されるのである。
また、アーム部2cの先端部には、駆動装置5の揺動動作を制止するための制止パッド9と操作レバー10とが設けられている。これら制止パッド9及び操作レバー10によれば、操作レバー10が下方へ傾動されることで制止パッド9によって駆動装置5が制止されてアーム部2cに固定される一方、逆に操作レバー10を上方へ傾動させることで制止パッド9による制止が解除されて駆動装置5がアーム部2cに対して揺動可能となるのである。
駆動装置5は、主として、電源からの給電によって回転力を発生する電動モータ11と、その電動モータ11の回転力を減速してミキサーヘッド4のドライブシャフト14に伝達する減速機12と、その減速機12を介して電動モータ11により回転されるドライブシャフト14を回転自在に軸支する軸受ユニット13とを備えている。
軸受ユニット13は、減速機12の出力部(図1左側)から略鉛直下方へ垂設されており、ドライブシャフト14は、この軸受ユニット13の内周部に同心状の遊挿されている。また、ドライブシャフト14は、その軸方向基端部(図1上側)が減速機12の出力軸に連結されており、ドライブシャフト14の略下側半分は、軸受ユニット13の軸方向先端(図1下側)よりも更に下方に延出されている。
しかも、ミキサーヘッド4を収容容器3内に入れた場合に、軸受ユニット13は、その軸方向先端部が収容容器3の上端よりも上方となるように配設されており、かかる軸受ユニット13を含めた駆動装置5の全体が、常に収容容器3の外部に配置されるように構成されている。このため、収容容器3内に貯留される固液混合物に駆動装置5の構成要素が接触することがなく、これら駆動装置5の構成要素を水密性のあるものにする必要もなく、食用の固液混合物の衛生管理も容易となる。
収容容器3は、本体フレーム2とは別体に形成される有底無蓋の略直方体状の容器体であって、その内部に被撹拌混合物を収容可能な空間3aが設けられている。この収容容器3の下面には合計4個のキャスター3bが転動可能に取着されており、各キャスター3bが床面上を転動することで移動可能に構成されている。
図2は、図1の部分拡大図であって軸受ユニット13を部分的に縦断面視したものである。図2に示すように、軸受ユニット13は、主に、ドライブシャフト14を内周部で回転自在に軸支する円筒状の軸受スリーブ15と、その軸受スリーブ15の下端部外周に周設されて当該軸受スリーブ15よりも大径状の略円板状(図3参照)に形成される支持フランジ16とが一体化されて形成されたものである。
軸受スリーブ15の軸方向下端部の内周には、ころがり軸受の一種であるラジアル軸受17が2個並設されている。各ラジアル軸受17はいずれも、その外輪が軸受スリーブ15の内周に内嵌固定されており、その内輪にドライブシャフト14が嵌入されている。このように、軸受スリーブ15は、これらのラジアル軸受17を介することでドライブシャフト14を回転自在に自らの内周部に軸支することができる。
支持フランジ16は、複数本(本実施例では3本)のスライドロッド18を介してミキサーヘッド4のステータ22を支持するものである。複数本のスライドロッド18は、軸受スリーブ15及びドライブシャフト14と同軸方向に延びる軸体であって、支持フランジ16に摺動可能に貫設されている。しかも、支持フランジ16の上面には、各スライドロッド18に対応つけて円筒状のガイドスリーブ19が立設されており、各ガイドスリーブ19の内周に各スライドロッド18が摺動可能に挿通されている。
各ガイドスリーブ19は、その軸方向下端部が支持フランジ16の上面に溶接により固定されており、その軸方向上端部からは各スライドロッド18が上方へ貫通されている。また、各スライドロッド18の軸方向基端部(図2上側)にはガイドスリーブ19の外径と略同一外径のストッパ20が取着されており、このストッパ20がガイドスリーブ19の上端面に引っ掛かることでスライドロッド18が支持フランジ16から抜脱することが防止されている。
図3は、図2のIII−III線における横断面図である。図3に示すように、複数本のスライドロッド18は、支持フランジ16の周方向に等間隔で配設されており、支持フランジ16に設けられるガイドスリーブ19内に挿通されている。また、各ガイドスリーブ19の外周部にはハンドル21がそれぞれ取着されており、このハンドル21には、スライドロッド18をガイドスリーブ19に対して固定するための止めネジ21aが一体的に形成されている。
このハンドル21によれば、その止めネジ21aが各ガイドスリーブ19に螺着されており、このハンドル21を回して止めネジ21aをガイドスリーブ19内へ螺入させることで、この止めネジ21aの先端がスライドロッド18に押し当てられて、スライドロッド18がガイドスリーブ19に固定されるようになっている。一方、ハンドル21を回して各止めネジ21aが緩められれば、各スライドロッド18の固定は解除されて、各スライドロッド18が各ガイドスリーブ19内で摺動可能な状態となる。
例えば、このように各ハンドル21の止めネジ21aを緩めた状態で、ストレーナ24が取り外されて、ミキサーヘッド4が軸受ユニット13配設側(図1上側)へ向けて押し動かされれば、各スライドロッド18がドライブシャフト14及び軸受スリーブ15と同軸方向上側へ向けてスライド移動されて、ミキサーヘッド4のステータ22を、軸受スリーブ15の下端部とほぼ当接する位置まで持ち上げることもできる。
図2に戻って説明すると、ミキサーヘッド4は、主に、上記した各スライドロッド18に対して回転不能に固定されるステータ22と、そのステータ22内で上記したドライブシャフト14を回転軸として回転されるインペラー23(図4参照)とを備えており、かかるインペラー23を回転させることによってステータ22内外にある固液混合物に流れを生じさせて、固液混合物中の固形分を粉砕して細粒化するものである。
ステータ22は、下記するように、主として、固液混合物の固形分を細粒化するためのストレーナ24と、そのストレーナ24をステータ22に抱え込むように保持して固定する複数枚(本実施例では3枚)の抱持プレート25と、ミキサーヘッド4の周囲に固液混合物の循環液流を生成するための還流部材26と、3枚の抱持プレート25を補強する円環状の補強リング27とを備えている。
ストレーナ24は、ステータ22の構成要素の一部であって、その周壁体24aが円筒状体に形成されており、このストレーナ24の周壁体24a全体には多数の小孔24bが穿設されている。具体的に、複数の小孔24bは、ストレーナ24の周方向に略等ピッチでかつ、ストレーナ24の上下方向に4列分だけ穿設されており、全体としてストレーナ24の周壁体24aに千鳥状に配列されている。このため、ストレーナ24の周囲にある固液混合物はストレーナ24の周壁体24aにある各小孔24bを通じてストレーナ24の内周部へ吸入される。
ストレーナ24の周壁体24aの下端部外周には円筒状の係合リング24cが一体的に周着されており、ストレーナ24は、この係合リング24cを介して3枚の抱持プレート25に対して回転不能かつ取り外し可能に係合及び固定される。このため、ミキサーヘッド4を洗浄するとき、ステータ22からストレーナ24を取り外して洗浄することができ、ストレーナ24に付着した固液混合物の残留物を容易に除去できる。
なお、ストレーナ24をステータ22に取り外し可能に係合及び固定する構造の詳細については、図7及び図8を用いて後から説明する。
図4は、ミキサーヘッド4の内部構造を示した縦断面図であり、図中の矢印(2点鎖線)は、ミキサーヘッド4により生成される固液混合物の循環液流を示した仮想線である。図4に示すように、ストレーナ24は、その軸方向一端面(上端面)の全体が当該ストレーナ24の軸方向に向けて開口されており、この開口がストレーナ24の内周部へ吸入された固液混合物を外部へ流出させる流出口24dとなっている。
一方、ストレーナ24の軸方向他端面(下端面)には底板24eが全体に敷設されており、この底板24eにも複数の小孔24fが千鳥配列状に穿設されている。このため、ストレーナ24よりも下側にある固液混合物も、底板24eにある各小孔24fを通じてストレーナ24の内周部へ吸入される。
還流部材26は、ストレーナ24の流出口24dから流出する固液混合物の流れを反射して、そのストレーナ24の周囲へ方向転換させるため、ステータ22の構成要素の一部として設けられており、上記した複数本のスライドロッド18を介して軸受ユニット13に回転不能に固定されている。この還流部材26は、平面視略円板状の反射板部26aと、その反射板部26aの外周縁部に周設される斜流板部26bとを備えており、この斜流板部26bを軒先とする逆浅皿状又は薄い台形錐状の屋根状体に形成されている。
還流部材26の反射板部26aは、ドライブシャフト14に対して略軸直角に配置されており、その外径がストレーナ24の外径より大きく形成されている。また、還流部材26の反射板部26aは、ストレーナ24の流出口24dと対向配置されており、かかる流出口24dに対して全体的に覆設されている。このため、ストレーナ24の流出口24dから流出した固液混合物の流れは、還流部材26の反射板部26aによって遮断され、この反射板部26aの下面に衝突することで反射されて、かかる反射板部26aの下面に沿って還流部材26の外周側、即ち、斜流板部26b側へ向けて拡散させられる。
還流部材26の斜流板部26bは、反射板部26aに対して鈍角を成すように折曲されてストレーナ24の周囲へ向けて下降傾斜するように斜設されており、その外径が反射板部26aよりも更に大きくされている。また、還流部材26の反射板部26aとストレーナ24の上端面との間には、ごく僅かな隙間C1が設けられており、還流部材26の反射板部26aは、かかる隙間C1を隔ててストレーナ24の流出口24dから離間しながらも、双方互いに近接した状態で対向配置されている。
もっとも、ストレーナ24の上端面と反射板部26aの下面との隙間C1は、還流部材26の全体厚Wよりも小さいものであるため、還流部材26の斜流板部26bは、その軒先がストレーナ24の上端面(流出口24dの端面)よりも下側まで延出されており、ストレーナ24の上端面(流出口24dの端面)に覆い被さっている。このため、還流部材26の反射板部26aによって反射された固液混合物の流れは、斜流板部26bの下面に沿ってスムーズに案内され、ストレーナ24の周囲へ向けて方向転換される。
還流部材26の反射板部26aの上面には、上記した各スライドロッド18の軸方向先端部(図4下側)が溶接により固着されており、この固着によって、ミキサーヘッド4のステータ22は、軸受ユニット13に対して回転不能に支持されている。また、還流部材26の反射板部26aの平面視略中央部にはドライブシャフト14が遊挿される通孔26a1が穿設されており、この通孔26a1を通じて、ドライブシャフト14の軸方向先端部(図4下側)は、還流部材26の下側まで貫通され、この還流部材26の下側でインペラー23の回転カッター29の上面略中央部に連結固定されている。
ドライブシャフト14は、ミキサーヘッド4のインペラー23に駆動装置5の回転力を伝達するための回転軸(駆動軸)であって、インペラー23の構成要素である回転ブレード28及び回転カッター29に共通した回転軸である。このドライブシャフト14は、インペラー23との連結固定部分から駆動装置5へ向けて延設されている中実状かつ長尺状の軸体であり、インペラー23は、このドライブシャフト14の軸方向先端部(図4下側)に一体的に連結固定されている。
インペラー23は、ステータ22内で回転されることによって固液混合物を撹拌混合するための流れを生成するためのものであり、その回転中心(ドライブシャフト14の軸心)がストレーナ24と略同軸状とされている。このインペラー23は、複数枚(本実施例では3枚)の回転ブレード28と、回転カッター29とを備えており、かかる回転カッター29の下面に複数枚の回転ブレード28が溶接によって固着されることで一体物とされたものである。
複数枚の回転ブレード28は、ステータ22のストレーナ24の内周部で回転されることによって、そのストレーナ24の流出口24dへ向かう固液混合物の流れを生成するものである。この複数枚の回転ブレード28は、ストレーナ24の流出口24dから遊挿されており、これら一組の回転ブレード28がストレーナ24の内周部に回転可能に配設されている。
回転カッター29は、ストレーナ24の内周部でインペラー23が回転されることによって、そのストレーナ24の流出口24dから流出する固液混合物に含まれる固形分を切断又は粉砕するものであり、その外周縁部にカッター刃29aが形成されている(図5(a)参照)。この回転カッター29は、平面視略円形状の板状体で形成されており、還流部材26における反射板部26aの下面とストレーナ24における流出口24dの端面との間に設けられる隙間C1内に配設されている。
このように回転カッター29は、ストレーナ24と還流部材26との間にある隙間C1内に配設されることでストレーナ24の流出口24dに近接して配設される。もっとも、回転カッター29は、ドライブシャフト14によってストレーナ24に対する略軸直角平面内で回転されるものであるため、隙間C1内に流出口24dに近接配設されるとはいえ、回転不能なステータ22と接触しないように、ストレーナ24の上端面からも離間され、かつ、還流部材26の反射板部26aからも離間されている。
図5及び図6を参照して、インペラー23の細部について説明する。図5(a)は、インペラー23の平面図であり、図5(b)は、ストレーナ24と回転カッター29と位置関係を説明する横断面図(図4のVb−Vbにおける横断面図)である。
図5(a)に示すように、カッター刃29aは、回転カッター29の外周縁部における周方向の複数箇所(本実施例では3箇所)に等間隔に形成されている。ここで、回転カッター29は、その刃底円直径dがストレーナ24の内径(即ち、流出口24dの口径)よりも小さくされており、その刃先円直径Dがストレーナ24の内径よりも大きく且つ反射板部26aの直径より小さくされている。
なお、刃底円直径dとは、回転カッター29の最小直径であって各カッター刃29aの刃底部分29bの上を通過する円の直径をいい、刃先円直径Dとは、回転カッター29の最大直径であって各カッター刃29aの最先端部分の上を通過する円の直径をいう。
図5(b)に示すように、回転カッター29は、ストレーナ24の流出口24dの略全体に覆設されているが、その刃底部分29bの刃底円直径dが流出口24dの口径より小さいがため、かかる回転カッター29の刃底部分29bにストレーナ24の流出口24dと通ずる隙間流路30ができるようになっている。このため、ストレーナ24の流出口24dから流出される固液混合物は、この隙間流路30を通じることでストレーナ24の外へ流出され易くなっている。
ところが、回転カッター29の刃先円直径Dはストレーナ24の流出口24dの口径より大きくなっているため、インペラー23が高速回転されることで、流出口24dを通じてストレーナ24の内周部からストレーナ24の軸方向へ流出される固液混合物は、隙間流路30を通過して還流部材26の反射板部26aへ向けて流れる途中で、各カッター刃29aによって、その流出方向に対する略軸直角方向から繰り返し連続的に切り込まれて切り細裂かれることとなる。この結果、固液混合物に含まれる固形分は、効率よく短時間で細かく切断又は粉砕される。
図6(a)は、インペラー23の正面図であり、図6(b)は、図5(a)のVIb−VIb線における部分断面図である。図6(a)に示すように、カッター刃29aの刃先は、回転カッター29の外周側(外方)へ向かって尖った形状とされている。また、各回転ブレード28の内周端部には、略鋸歯状又は略三角波状の凹凸部28aがそれぞれ形成されており、この凹凸部28aによって固液混合物に含まれる固形分を直接粉砕したり、或いは、この凹凸部28aによって固液混合物の流れを乱すことで固液混合物中の固形分を粉砕することもできる。
また、図6(b)に示すように、各回転ブレード28は、回転カッター29の下面に所定の掬い角(すくいかく)θを成して固着されており、インペラー23が回転されることで固液混合物を掬い上げて回転カッター29側(ストレーナ24の流出口24d)へ向かって旋回上昇する流れを生成することができる。
図7及び図8を参照して、ストレーナ24をステータ22に取り外し可能に係合及び固定する構造の詳細について説明する。まず、図7(a)は、ミキサーヘッド4の平面図(厳密には図2のVIIa−VIIa線における横断面図)であり、図7(b)は、ミキサーヘッド4の拡大正面図である。
図7(a)に示すように、3枚の抱持プレート25は、ストレーナ24の周囲を囲むように配設されており、ストレーナ24の外周面から等角間隔で放射状に配設されている。ストレーナ24は、この3枚の抱持プレート25により囲まれた空間内に抱持されており、かかる空間からストレーナ24が取り外される場合は、補強リング27の内周にある開口(図4参照)を通じて各抱持プレート25の内周部から引き抜かれる。
図7(b)に示すように、3枚の抱持プレート25は、その上端部が還流部材26の斜流板部26bの下面に溶接により固着されており、還流部材26の下面から略三脚状に延出されている。また、いずれの抱持プレート25も、ストレーナ24の下端面より更に下方へ延設されており、その下端部に略円形輪状の補強リング27が溶接により固着されている。
図8(a)は、図7(a)の矢印A方向からの矢視図であり、図8(b)は、図7(a)の矢印B方向からの矢視図であり、図8(c)は、図7(a)の矢印C方向からの矢視図であり、図8(d)は、ストレーナ24の正面図である。なお、図8(a)から図8(c)においては、ドライブシャフト14、スライドロッド18、インペラー23及びストレーナ24の図示が省略されている。
図8(a)及び図8(b)に示すように、3枚の抱持プレート25のうち、2枚の抱持プレート25の内周端面には略コ字形の係合凹部25aが凹設されており、各抱持プレート25の係合凹部25aには、図8(d)に示すストレーナ24の係合リング24c全周から凸設される係合凸部24gが抜脱可能に係合される(図4参照)。
また、図8(c)に示すように、残る1枚の抱持プレート25については、他の2枚の抱持プレート25とは異なり、その内周端面に係合凹部25aが凹設されておらず、その代わりに、その側面に略平板状のロック板31が揺動自在に軸着されている。この抱持プレート25のロック板31は、図8(d)に示したストレーナ24の下端部に欠切されるロック溝24hに係合可能に形成されている。
このように構成される3枚の抱持プレート25によれば、これらの内周部にストレーナ24を挿嵌し、そのストレーナ24の係合凸部24gを2箇所ある係合凹部25aにそれぞれ係合し、それからロック板31を(図8の反計方向へ)回転させれば、ストレーナ24のロック溝24hに抱持プレート25のロック板31が係合されて、ストレーナ24がステータ22に固定される。
これに対し、ロック板31を(図8の時計方向へ)回転させて、ロック板31をロック溝24hから抜脱させれば、ストレーナ24は、ステータ22から取り外し可能な状態となる。さすれば、補強リング27の下側から補強リング27の内周開口へ手を差し入れてストレーナ24を掴んで、ロック板31が軸着されている抱持プレート25側に引き寄せながら、3枚の抱持プレート25の内周部から下方へ引き抜けば、ストレーナ24の係合凸部24gが2枚の抱持プレート25の係合凹部25aから抜脱されて、ストレーナ24が補強リング27の内周を通じてステータ22から取り外される。
また、このようにしてステータ22からストレーナ24を取り外してしまえば、軸受ユニット13の各ガイドスリーブ19の止めネジ21aを緩めて、各スライドロッド18を軸受スリーブ15の軸方向基端側(図4上側)へスライドさせることで、ステータ22を、インペラー23を残したままドライブシャフト14の軸方向に沿って、ドライブシャフト14の軸方向基端側(図4上側)、即ち、駆動装置5との連結部分側へスライド移動させることができるようになる。
このようにステータ22をスライド移動させれば、回転ブレード28及び回転カッター29からなるインペラー23のみが、ドライブシャフト14の軸方向先端部に残されるので、かかる回転ブレード28及び回転カッター29に付着した固液混合物の残留物を洗浄によって容易に除去することができるのである。
次に、上記のように構成されたスタンドミキサー1の動作について説明する。本実施例のスタンドミキサー1によれば、まず、固液混合物が収容容器3に貯留され、ミキサーヘッド4が、その収容容器3内へ入れられて固液混合物中に沈設される。そして、この状態で、駆動装置5の電動モータ11が稼働されると、電動モータ11が発生する回転力が減速機12を介してドライブシャフト14に伝達されて、ミキサーヘッド4のインペラー23がステータ22内で回転される。
すると、インペラー23の回転ブレード28の回転によってストレーナ24の内周部に流出口24dへ向かう固液混合物の流れが生成される。かかる固液混合物の流れがストレーナ24の内周部に生成されると、ストレーナ24の周囲にある固液混合物は、ストレーナ24の周壁体24aや底板24eに穿設される多数の小孔24b,24fからストレーナ24の内周部へ向けて吸引される。すると、固液混合物に含まれる固形分のうちで塊状のもの又は団粒化しているものは、小孔24b,24fを通過する際に小孔24b,24fの口径以下のサイズに粉砕される。
そして、各小孔24b,24fからストレーナ24の内周部へ吸入された固液混合物は、回転ブレード28の回転によってストレーナ24の流出口24dへ向けて流れ、流出口24dから流出される。このとき、流出口24dでは、インペラー23の回転カッター29のカッター刃29aによって、固液混合物に含まれる固形分が切断又は粉砕されて、この切断又は粉砕によって、固液混合物に含まれる固形分のサイズが更に細かくされる。
その後、流出口24dから流出した固液混合物は、還流部材26の反射板部26aに衝突することで方向転換されて、かかる反射板部26aに沿って斜流板部26bへ向けて流される。すると、固液混合物の流れは、還流部材26の斜流板部26bに沿って、ストレーナ24の周囲へ向けて送り返される。つまり、還流部材26によって、ストレーナ24の周囲からストレーナ24の内周部へ吸入された固液混合物は、再びストレーナ24の周囲へ還流させられることとなる。
この結果、固液混合物が、ストレーナ24の周囲から、ストレーナ24の各小孔24b,24f、ストレーナ24の内周部、及び、ストレーナ24の流出口24dを通過して、還流部材26によって再びストレーナ24の周囲へ還流するという固液混合物の循環液流(図4中の2点鎖線の矢印)が生成される。このように循環液流となった固液混合物は、ストレーナ24及び回転カッター29によって繰り返し切断又は粉砕されるため、短時間で固形分が細かく均等に粉砕されるのである。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、各部材に係る形状、サイズ、配置、方向などについて、種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。