JP4795626B2 - 多孔体膜並びに薄膜の作製方法 - Google Patents

多孔体膜並びに薄膜の作製方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、界面活性剤ミセルを内包しているナノメートルサイズの細孔(ナノチャンネル)体を有する多孔体膜並びにかかる薄膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来において、界面活性剤を利用して、ナノメートルサイズの均一な細孔径を有する酸化物のナノチャンネル体を配列させたメソポーラス膜の作製が検討されている。特に近年では、界面活性剤の存在下でアルコキシシラン化合物を加水分解させることにより、界面活性剤ミセルの周りにアルコキシシラン化合物が重合したメソポーラス膜の作製方法や、かかるメソポーラス膜を焼成することにより界面活性剤ミセルを除去したメソポーラスシリカ膜の作製方法が提案されている。
【0003】
また、メソポーラス膜の作製方法の例として、マイカ基板上へのメソポーラス膜の作製(例えば、非特許文献1参照。)、溶媒の蒸発によるシリコン基板上でのメソポーラス膜の作製(例えば、非特許文献2参照)、気−液界面でのメソポーラス膜の作製(例えば、非特許文献3参照。)等が報告されている。更には、メソポーラス膜を組み込んだマイクロチャンネルチップ(例えば、非特許文献4参照。)等も提案されている。
【0004】
【非特許文献1】
Hong Yang et al., Nature, Vol. 379, pp. 703-705 (1996)
【非特許文献2】
Yun Feng et al., Nature, Vol. 389, pp. 364-368 (1997)
【非特許文献3】
Hong Yang et al., Nature, Vol. 381, pp. 589-592 (1996)
【非特許文献4】
Hongyou Fan et al., Nature, vol. 405, pp. 56-59 (2000)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の技術は、メソポーラス膜を作製するための界面活性剤やアルコキシシラン化合物を含んだ前駆体溶液と接する固体表面上で、自発的に形成される界面活性剤−シリカナノ複合体を利用したナノチャンネル体を有するメソポーラス膜を作製している。このため、作製されたメソポーラス膜におけるナノチャンネルの配向は、図9に示すように基板表面に対して必然的に平行に配列することになる。
【0006】
このような配向からなるナノチャンネル体に進入した物質の移動は基板表面に対して平行となり、例えば、溶液層−メソポーラス膜−固体基板の3層系において、溶液層からメソポーラス膜を透過して基板表面に物質が移動するような膜透過を実現することができない。
【0007】
即ち、メソポーラス膜を化学物質の分離、濃縮や生化学分析、微量成分分析等のセンサとして用いる場合に、さらには高分子合成や触媒反応等に用いる場合には、ナノチャンネルが基板表面に対して垂直方向に配列させることにより、メソポーラス膜における物質透過を実現する必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ナノチャンネル体が表面に対してほぼ垂直方向となるような多孔体膜並びに薄膜の作製方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
基板表面に対して垂直に形成されているナノオーダーのマクロ細孔内に、界面活性剤を含む前駆体溶液を導入することにより細孔壁を形成すると、この細孔壁とマクロ細孔内を透過する溶液との界面は、基板表面に対して垂直となる。従って、界面活性剤やアルコキシシラン化合物を含んだ前駆体溶液をこのマクロ細孔内に導入すれば、界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体が細孔壁に沿って形成される。このナノチャンネル体とマクロ細孔の配向は同方向であり、結果的にナノチャンネル体が基板表面に対してほぼ垂直となることが期待される。
【0010】
また、界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体を含むメソポーラス膜を焼成することにより、かかる界面活性剤ミセルを除去したシリカナノ細孔が形成されることが期待される。
【0011】
即ち、マクロ細孔を有する薄膜の膜厚が薄く、かつマクロ細孔が表面から底面まで貫通するように形成されていれば、これらのナノチャンネル体やシリカナノ細孔を含む多孔体膜を作製することができ、またこの多孔体膜は、物質が透過し得るメソポーラス膜として取り扱うことができる。
【0012】
本発明者は、上述した予測に基づき、基板を酸化させて生成した酸化物層からなる多孔体膜であって、界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体が上記酸化物層の表面から底面にかけて貫通するように形成されてなる多孔体膜を発明し、さらには、シリカナノ細孔体が上記酸化物層の表面から底面にかけて貫通するように形成されてなる多孔体膜を発明した。
【0013】
すなわち、本発明を適用した多孔体膜は、基板を酸化させて生成した酸化物層からなる多孔体膜において、直径10nm〜500nmのマクロ細孔が表面から底面にかけて貫通するようにして形成されてなる上記酸化物層の該マクロ細孔内に、カチオン系界面活性剤及びシリカを含有するナノチャンネル体が該酸化物層の表面に対してほぼ垂直となるように配向して形成されてなり、上記酸化物層が、陽極酸化アルミナであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明を適用した多孔体膜は、上述した多孔体膜において、基板を酸化させて生成した酸化物層からなる多孔体膜において、直径10nm〜500nmのマクロ細孔が表面から底面にかけて貫通するようにして形成されてなる上記酸化物層の該マクロ細孔内に、シリカナノ細孔体が該酸化物層の表面に対してほぼ垂直となるように配向して形成されてなり、上記酸化物層は、陽極酸化アルミナであることを特徴とする。
【0015】
本発明者は、上述した予測に基づき、直径約10nm〜数μmのマクロ細孔が表面から底面にかけて貫通するように形成されてなる酸化物層にカチオン系界面活性剤を接触させることで、界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体を有する薄膜の作製方法を発明し、また上記カチオン系界面活性剤を接触させた酸化物層をさらに焼成することにより、シリカナノ細孔体を有する薄膜の作製方法を発明した。
【0016】
即ち、本発明を適用した薄膜の作製方法では、界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体を有する薄膜の作製方法において、直径10nm〜500nmのマクロ細孔が表面から底面にかけて貫通するように形成されてなる、陽極酸化アルミナからなる酸化物層にカチオン系界面活性剤及びアルコキシシラン化合物を接触させ、上記マクロ細孔内に上記酸化物層の表面に対してほぼ垂直の配向となるようにナノチャンネル体を形成させる。
【0017】
また本発明を適用した薄膜の作製方法では、上記カチオン系界面活性剤を接触させた酸化物層をさらに焼成する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本発明は、例えば図1に示すような多孔体膜1に適用される。この多孔体膜1は、例えばAl基板を酸化することにより生成した酸化物層10から構成される。かかる酸化物層10には、直径約10nm〜500nmのマクロ細孔11が酸化物層10の表面10aから底面10bにかけて貫通するように形成されている。このマクロ細孔11の細孔壁に沿ってナノメートルサイズの均一な細孔径を有するナノチャンネル体12が形成される。
【0020】
このナノチャンネル体12は、シリカ等の無機層と、界面活性剤等の有機分子の集合体がナノオーダーで組織化して、いわゆる疎水場を形成したいわゆる界面活性剤−シリカナノ複合体である。即ち、このナノチャンネル体12は、界面活性剤ミセルを内包し、酸化物層10の表面10aから底面10bにかけて貫通するように形成されている。
【0021】
ちなみに、このナノチャンネル体12は、酸化物層10の表面10a又は底面10bに対してほぼ垂直となるように配向されていてもよい。このナノチャンネル体12の平均細孔径は、約3nm〜約4nmであり、BET法による窒素吸着比表面積が5.78m/gと極めて大きな表面積を有する。
【0022】
また、本発明は、このナノチャンネル体12の代替として、ナノチャンネル体12を所定の条件下で焼成することにより作製したシリカナノ細孔体13が形成されてなる多孔体膜5に適用してもよい。このシリカナノ細孔体13は、内包されていた界面活性剤ミセル取り除いて、約3nm〜約4nmの平均細孔径からなるナノ細孔を形成したものである。
【0023】
このような構成からなる多孔体膜1,5では、試料溶液が接触する表面10aとの界面に対して、ナノチャンネル体12やシリカナノ細孔体13がほぼ垂直となるように配向している。このため、表面10aに接触する試料溶液は、このナノチャンネル体12やシリカナノ細孔体13を通じて多孔体膜1,5を透過することが可能となる。即ち、この多孔体膜1,5は、化学物質の分離,濃縮や生化学分析,微量成分分析などのセンサとして、さらには高分子合成や触媒反応等において適用することが可能となる。
【0024】
このような構造からなる多孔体膜1は、以下の図2に示す手順により作製することができる。
【0025】
最初に、図2(a)に示す手順に基づき、カチオン系界面活性剤とアルコキシシリカを含む前駆体溶液を調整する。工程S11において、エタノール7.68g,Tetraethoxysilane (TEOS,アルコキシシラン)11.57g,1mlのHC1水溶液(2.78mm)を混合し、60℃で90分間加熱する。次に工程S12へ移行し、エタノール15g,Cetyltrimethylammonium Bromide(CTAB,界面活性剤)1.52g,4mlのHCl水溶液(54.8mm)をこれに添加し、30分間攪拌することで、前駆体溶液を調整する。ちなみに、この前駆体溶液の調整には、非特許文献1〜非特許文献4に示される手法を用いてもよい。
【0026】
次に、図2(b)に示すように、工程S13においてマクロ細孔11を有する酸化物層10として、リン酸溶液中で、Al基板を定電圧で陽極酸化させた陽極酸化アルミナ膜(マクロ細孔径:〜200nm,膜厚:〜60μm)を準備する。次に、工程S14へ移行し、この酸化物層10に対して、調整した前駆体溶液を滴下し、アルピレーターで吸引することで、マクロ細孔11内に前駆体溶液を導入し、これを乾燥させる。ちなみに、このマクロ細孔11への前駆体溶液の導入については、マクロ細孔11が形成されている酸化物層10の表面に、かかる前駆体溶液を接触させてもよいし、調整した前駆体溶液中にかかる酸化物層10を浸漬させてもよい。
【0027】
このマクロ細孔11に対する前駆体溶液導入後において、酸化物層10のみをリン酸溶液でエッチングして劈開した後にSEM観測を行うと、例えば図3(a)に示すようなマクロ細孔11中にロッド状の構造物が形成されることが確認される。ちなみに、このロッド状の構造物の長さは、5〜20μmである。またこのロッド状の構造物は、例えば図3(b)に示すように、前駆体溶液を滴下した酸化物層10表面から数μm程度離れた部分から形成されてなる。
【0028】
図4は、前駆体溶液導入後の酸化物層10をイオンミリングなどにより研磨し、膜上部からTEM観測を行った結果を示している。この図4に示すように、酸化物層10に形成されたマクロ細孔11内には、ロッド状構造物が充填されていること、さらにこのロッド状の構造物にはナノチャンネル体12が形成されていることが確認される。さらに、この図4に示すTEM観測により、ナノチャンネル体12の配向は、酸化物層10表面に対して垂直であることが示される。
【0029】
次に、このような工程を経て作製された多孔体膜1におけるナノチャンネル体12の構造評価の結果について説明をする。
【0030】
図5は、作製された多孔体膜1を400℃で3時間焼成し、鋳型となった界面活性剤を除去したシリカナノ細孔体13を形成させた多孔体膜5とした後に、窒素吸着測定を行った結果を示している。この図5に示すように、前駆体溶液を導入していない酸化物層10に対し、焼成により界面活性剤の除去された多孔体膜5は、窒素の吸着量が増大していることから、比表面積が増大していることが示される。また界面活性剤を鋳型として形成するシリカナノ細孔体12の特徴である変曲点が吸着等温線に存在し、かかる吸着等温線の解析結果からシリカナノ細孔体13の直径が3〜4nm程度であることが示される。
【0031】
以上の構造評価の結果により、焼成前には直径が3〜4nm程度である界面活性剤−シリカナノ複合体として構成されるナノチャンネル体12が、焼成後には、ほぼ同等の細孔径からなるシリカナノ細孔体13として再形成されることが示される。またナノチャンネル体12又はシリカナノ細孔体13の配向がマクロ細孔11と同様であることも示される。
【0032】
次に、本発明を適用した多孔体膜1,5における物質透過性について説明をする。図6は、この物質透過性を検出するためのサイズ効果実験系2を示している。このサイズ効果実験系2では、作製した多孔体膜1,5を第1のガラス管21と第2のガラス管22に挟み込んで固定する。次に、第1のガラス管21には、ローダミンB,ビタミンB12,ミオグロビン,アルブミン等を溶質とした水溶液で満たし、第2のガラス管22には、pHを例えば6〜8に調整するためのpH緩衝剤が添加されたMES緩衝液で満たす。ちなみに、このローダミンB,ビタミンB12,ミオグロビン,アルブミンの分子サイズはそれぞれ1.0nm,1.7nm,4.0nm,6.4nmである。即ち、このサイズ効果実験系2に固定される多孔体膜1,5の表面は、各分子サイズの水溶液が接触し、またこの多孔体膜1,5の底面には、MES緩衝液が接触している状態にある。換言すれば、多孔体膜1,5の表面10aと底面10bには、濃度勾配の異なる2種類の水溶液がそれぞれ接触している状態となる。
【0033】
次にこのサイズ効果実験系2では、その水溶液間の濃度勾配により、多孔体膜1,5を透過する分子量を観測する。図7は、この多孔体膜1,5を透過した分子量を経時的に観測した結果を示している。図7(a)に示すように、焼成後のシリカナノ細孔体13を有する多孔体膜5では、上述した各分子サイズの分子全てにつき膜透過を確認することができる。一方、焼成前のナノチャンネル体12を有する多孔体膜1では、図7(b)に示すように、分子サイズの小さいローダミンB,ビタミンB12では膜透過が確認されるが、分子サイズの大きいミオグロビン,アルブミンでは膜透過が確認されない。
【0034】
即ち、この図7に示される結果により、本発明を適用した多孔体膜1,5における物質透過性を確認することができる。また、界面活性剤ミセルを内包している多孔体膜1と、これを内包しない多孔体膜5では、透過する分子サイズが異なる。このため、化学分析等において透過させる分子サイズに応じて、作製時に焼成工程を導入するか否か決定することにより、多孔体膜1又は多孔体膜5のいずれを使用するか選択することもできる。
【0035】
なお、本発明を適用した多孔体膜1,5において任意の箇所にナノチャンネル体12又はシリカナノ細孔体13を形成させる方法につき説明をする。
【0036】
上述の如く酸化物層10の任意の箇所に、マイクロピペットを用いて前駆体溶液を滴下し、アルピレーターで吸引することにより、任意のマクロ細孔11内に前駆体溶液を導入し、乾燥させる。その後、ナノチャンネル体の形成を確認するためにエタノールと水を体積比2:98に調整した溶液に2.1mmナイルブルーAを添加したナイルブルーA溶液に、酸化物層10を5分間浸漬し、洗浄、乾燥後、蛍光画像および蛍光スペクトルを測定すると、図8に示すように、ナノチャンネル体12が形成されている箇所につき、強いナイルブルーAの蛍光が観測される。一般にナイルブルーAは疎水的な環境で発光収率が増大し、かつ発光の極大波長が短波長側にシフトする。このため、ナイルブルーAの観測された領域は、ナノチャンネル体12における界面活性剤-シリカナノ複合体の疎水的な界面活性剤の集合層にナイルブルーAが分配されたことを示すものである。換言すれば、このナイルブルーAの蛍光領域を通じてナノチャンネル体12の形成された領域を識別することが可能となる。
【0037】
このように、酸化物層10に対して、ナイルブルーA溶液を接触させる領域を制御することにより、任意の箇所にナノチャンネル体12、更にはシリカナノ細孔体13を形成することができる。これにより、以下に示す効果を期待することができる。
【0038】
例えばアルキル鎖の長さが異なる界面活性剤からなる複数種の前駆体溶液を調整し、各溶液につき酸化物層10の任意の箇所に導入すると、細孔径の異なるナノチャンネル体12を任意の箇所に形成させることができる。
【0039】
また、ナノチャンネル体12が形成された各箇所につき、各種分子・イオン認識試薬、更には生体成分認識試薬を導入した酸化物層10を試料溶液中に浸漬して、取り出した後に蛍光画像や蛍光スペクトルを分析すると、様々な物質の一斉分析が可能となる。
【0040】
マイクロピペットを用いて前駆体溶液を滴下する場合には、各スポット部位の大きさは、数mm程度であるが、DNAチップ作製に使用されているスポッター等を用いることにより、かかるスポット部位の大きさを数百μm程度まで縮小することが可能となる。これにより、数cm角の基板上に複数のプローブ分子を固定化した分析チップの作製も可能となる。
【0041】
なお、本発明では、形成されるナノチャンネル体12として、カチオン性界面活性剤(CTAB)とアルコキシシラン(TEOS)を用いた界面活性剤−シリカナノ複合体を例に挙げて説明したが、かかる場合に限定されるものではない。このナノチャンネル体12の作製は、界面活性剤等の有機物による自己集合構造や、かかる自己集合構造上に形成されるアルコキシド化合物の酸化物層10等に支配される。
【0042】
上記工程S13において使用するマクロ細孔11を有する酸化物層10は、陽極酸化アルミナに限定されるものではない。例えば、酸化物層10を形成するための化合物として様々な金属アルコキシド化合物を使用してもよく、例えば、チタン,ジルコニウム,ハフニウム,タンタル,ニオブ,ガリウム,希土類元素などの各種のアルコキシドを使用してもよい。また、自己集合構造を形成する有機物としては、例えば4級アンモニウム型の界面活性剤を用いるようにしてもよいし、またメソポーラス材料の作製において用いられるブロックコポリマー等を用いるようにしてもよいことは勿論である。これにより、使用する界面活性剤の種類を変えることでナノチャンネル体の細孔径を自在に制御することも可能となる。
【0043】
また、酸化物層10として、陽極酸化アルミナではなく、他の親水性能を有する親水性物質を用いるようにしてもよい。この親水性物質は、例えば、アルミナやシリカ等をそのまま用いるようにしてもよいし、これらの表面にシラノール基を設けた親水性アルミナ、親水性シリカを用いるようにしてもよい。また、他の金属酸化物に対して黒鉛等をコーティングするようにしてもよい。
【0044】
このように、酸化物層10として親水性物質を用いることにより、接触させる前駆体溶液は、酸化物層10表面に広がり、ナノチャンネル12を均一に形成させることが可能となる。
【0045】
なお、本発明を適用した多孔体膜1,5では、約10nm〜500nmの細孔径からなるマクロ細孔11が形成されている場合につき説明をしたが、かかる場合に限定されるものではなく、この細孔径は、約10nm〜数μmの範囲内であればよい。
【0046】
【発明の効果】
本発明を適用した多孔体膜は、基板を酸化させて生成した酸化物層からなる多孔体膜において、界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体、或いはシリカナノ細孔体が、酸化物層の表面から底面にかけて貫通するように形成されてなる。
【0047】
これにより、本発明を適用した多孔体膜は、試料溶液が接触する表面に対して、ナノチャンネル体やシリカナノ細孔体がほぼ垂直となるように配向している。このため、多孔体表面に接触する試料溶液は、このナノチャンネル体やシリカナノ細孔体を通じて透過することが可能となる。即ち、本発明に係る多孔体膜は、化学物質の分離,濃縮や生化学分析,微量成分分析などのセンサとして、さらには高分子合成や触媒反応等において適用することが可能となる。
【0048】
本発明を適用した薄膜の作製方法は、直径約数十nm〜数μmのマクロ細孔が表面から底面にかけて貫通するように形成されてなる酸化物層にカチオン系界面活性剤を接触させる。
【0049】
これにより、界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体を酸化物層の表面から底面にかけて貫通するように形成させることができる。
【0050】
また本発明を適用した薄膜の作製方法は、カチオン系界面活性剤を接触させた酸化物層をさらに焼成する。これにより、シリカナノ細孔体を酸化物層の表面から底面にかけて貫通するように形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した多孔体膜の構造について模式的に示す図である。
【図2】本発明を適用した多孔体膜の作製方法について説明するための図である。
【図3】前駆体溶液を導入することにより形成されるロッド状の構造物について説明するための図である。
【図4】前駆体溶液導入後の酸化物層をTEM観測した結果について説明するための図である。
【図5】窒素吸着測定の結果について説明するための図である。
【図6】物質透過性を検出するためのサイズ効果実験系を示す図である。
【図7】多孔体膜1,5を透過した分子量を経時的に観測した結果を示す図である。
【図8】ナノチャンネル体が形成されている箇所につき、強いナイルブルーAの蛍光が観測された結果を示す図である。
【図9】溶液層−メソポーラス膜−固体基板の3層系における物質移動につき説明するための図である。
【符号の説明】
1,5 多孔体膜、2 サイズ効果実験系、11 マクロ細孔体、12 ナノチャンネル体、13 シリカナノ細孔体、21 第1のガラス管、22 第2のガラス管

Claims (6)

  1. 基板を酸化させて生成した酸化物層からなる多孔体膜において、
    直径10nm〜500nmのマクロ細孔が表面から底面にかけて貫通するようにして形成されてなる上記酸化物層の該マクロ細孔内に、カチオン系界面活性剤及びシリカを含有するナノチャンネル体が該酸化物層の表面に対してほぼ垂直となるように配向して形成されてなり、
    上記酸化物層が、陽極酸化アルミナである多孔体膜。
  2. 上記ナノチャンネル体の細孔径は、3nm〜4nmである請求項1記載の多孔体膜。
  3. 基板を酸化させて生成した酸化物層からなる多孔体膜において、
    直径10nm〜500nmのマクロ細孔が表面から底面にかけて貫通するようにして形成されてなる上記酸化物層の該マクロ細孔内に、シリカナノ細孔体が該酸化物層の表面に対してほぼ垂直となるように配向して形成されてなり、
    上記酸化物層は、陽極酸化アルミナである多孔体膜。
  4. 界面活性剤ミセルを内包しているナノチャンネル体を有する薄膜の作製方法において、
    直径10nm〜500nmのマクロ細孔が表面から底面にかけて貫通するように形成されてなる、陽極酸化アルミナからなる酸化物層にカチオン系界面活性剤及びアルコキシシラン化合物を接触させ、上記マクロ細孔内に上記酸化物層の表面に対してほぼ垂直の配向となるようにナノチャンネル体を形成させる薄膜の作製方法。
  5. 上記カチオン系界面活性剤及びアルコキシシラン化合物を接触させた酸化物層をさらに焼成する請求項4記載の薄膜の作製方法。
  6. 上記酸化物層に対して、上記カチオン系界面活性剤及びアルコキシシラン化合物を接触させる領域を制御する請求項4記載の薄膜の作製方法。
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