JP4795524B2 - 防舷装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は防舷装置に関し、特に潜水艦等の特殊な船体形状を有した船舶の接舷に適した防舷装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図17は従来の防舷装置の使用状態を示した概略図である。
【0003】
図を参照して、海面23には岸壁24に接舷すべき潜水艦等の特殊な胴体形状を有した船舶21が浮遊している。そして船舶21の胴体22と岸壁24との間には浮遊式防舷材75が設置され、浮遊式防舷材75はガイチェーン26を介して岸壁24に係留されている。このようにして船舶21の接舷時における岸壁24に対する緩衝を、浮遊式防舷材75によって行なっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の浮遊式防舷材にあっては特殊な船舶等に対しては緩衝効果を十分発揮できないという問題があった。すなわち、潜水艦のような海中に船体全部が又は一部が深く沈み込んでおり、しかも船体の胴体の断面形状がほぼ円形をしているような船舶である場合、接舷しようとすると浮遊式防舷材が上方に押し上げられてしまい、十分な緩衝効果を得ることができない。
【0005】
このようなことからこの問題を解決するために俵型の浮遊式防舷材を縦型(鉛直方向)にしたものが提案されている。
【0006】
図18はこのような浮遊式防舷材を使用した状態を示した概略図である。
【0007】
図を参照して、海面23に接舷すべき潜水艦等の特殊な形状を有した船舶21が浮遊している。船舶21と岸壁24との間には縦型空気式防舷材76がガイチェーン26を介して岸壁24に係留されている。縦型空気式防舷材76の内部には液体77が所定量充填されており更にその下部には重錘78が取付けられ、縦型空気式防舷材76の海面23に対する上下浮遊位置が調整されている。
【0008】
このような縦型空気式防舷材76を用いた場合、船舶21が接舷しても図17で示したような浮遊式防舷材75のように縦型空気式防舷材76は上方に押し上げられる虞はない。従って十分な緩衝効果を船舶21の胴体22に対して発揮することが可能となる。
【0009】
しかしながら、このような縦型の浮遊式防舷材を用いた場合、縦型空気式防舷材76が接する岸壁24の面が平坦なものであれば問題ないが、岸壁24が鋼管矢板や鋼矢板のように表面の凹凸が極めて大きな場合に問題を生じる虞がある。
【0010】
図19はこのような状態を説明するための平面図である。
【0011】
図を参照して、岸壁24は鋼矢板71を用いた岸壁であり、大きな凹み部80が所定間隔で形成されている。縦型空気式防舷材76はガイチェーン26を介して岸壁24に係留されているが、ガイチェーン26の長さの範囲において移動自在となっている。従って、縦型空気式防舷材76が、実線の位置から二点鎖線の位置に移動して鋼矢板71の凹み部80にはまり込んでしまう場合がある。このような状態になると縦型空気式防舷材76の表面を損傷する虞があり、又、接舷する船舶に対する十分な緩衝効果を発揮できない虞もあった。
【0012】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、潜水艦等の特殊な船体形状を有する船舶であっても十分な緩衝効果を発揮するとともに岸壁の形状等にも十分順応できる防舷装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1記載の発明は、剛性を有する本体と、本体の一方面に取付けられ、吃水が変化し得ると共に特殊な船体形状を有する船舶が接舷する第1の緩衝材と、本体の一方面とは反対方向に面する他方面に取付けられ、岸壁等に接触する第2の緩衝材とを備え、第1の緩衝材の船舶との接触面は該船舶の胴体の側面形状に沿った凹面形状に前もって形成されており、本体は中空箱型形状を有し、本体はその内部への液体の給水及び内部からの排水を可能とする給排水手段を有し、本体が貯留する液体の量が制御され、第1の緩衝材の凹面形状が接舷する船舶の胴体の側面形状に合致するように吃水位置が変化するものである。
【0014】
このように構成すると、船舶の接舷に対する緩衝は第1の緩衝材が受け持ち、岸壁からの反力は第2の緩衝材が吸収する。又、潜水艦等の特殊な船体形状を有した船舶に対する反力が吃水の変化にかかわらず集中せずに分散される。更に、給排水手段によって本体の全体重量が制御されるので、所望の吃水位置に調整できる。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、第1の緩衝材は、合成樹脂繊維とゴムとの積層体よりなるものである。
【0018】
このように構成すると、船舶の接舷による第1の緩衝材の変形が小さくなる。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明の構成において、第2の緩衝材はサークル型防舷材よりなるものである。
【0020】
このように構成すると、岸壁への接触方向に関わらず安定して接触エネルギーが吸収される。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、給排水手段は、本体のケーシングの上面に形成された開口と、開口を塞ぐようにして取付けられた開閉自在の蓋体とを含むものである。
【0024】
このように構成すると、開口を介してケーシング内部への給水や内部貯留水の排水が可能となる。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、給排水手段は、本体のケーシングの上面に設置された制御部と、制御部にケーシングの外面に沿うようにして接続され、本体を浮遊させる海水等を吸水するための外部吸水管と、制御部にケーシングの上面を内面に向かって貫通した状態で接続され、外部吸水管から吸水されてきた液体をケーシング内に排水するための内部排水管と、制御部にケーシングの上面を内面に向かって貫通した状態に接続され、ケーシング内に貯留された液体を吸水するための内部吸水管と、制御部にケーシングの外面に沿うようにして接続され、内部吸水管から吸水されてきた液体をケーシング外に排水するための外部排水管とを備え、制御部はポンプ手段を有し、外部吸水管、内部排水管、内部吸水管及び外部排水管を介して本体が所望の上下位置において浮遊するように、ケーシング内に貯留する液体の量を制御するものである。
【0026】
このように構成すると、本体の全体重量は制御部によって調整される。
【0027】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、本体のケーシングの側面に取付けられた本体の上下の浮遊位置を検知する液面センサと、浮遊位置を指示する指示手段とを更に備え、制御部は、検知された浮遊位置に基づいて指示された浮遊位置に本体が保持されるように貯留された液体の量を制御するものである。
【0028】
このように構成すると、検知された浮遊位置に基づいて貯留される液体の量が制御される。
【0035】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、第2の緩衝材の岸壁との接触面に取付けられ、接触面を規定する外郭線より大きな外郭線を有する受衝板を更に備えたものである。
【0036】
このように構成すると、受衝板によって岸壁への接触面積が拡大する。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、船舶の緩衝に対しては第1の緩衝材が受け持ち岸壁からの反力は第2の緩衝材が吸収するので、船舶の形状や岸壁の形状に応じた適切な防舷装置とすることができる。又、特殊な胴体形状を有した船舶に対する反力が吃水の変化にかかわらず集中せずに分散されるため、緩衝効果をより高めることができる。更に、本体の全体重量が制御されるので、接舷する船舶の吃水に応じて防舷装置の吃水位置の調整が容易となるため使い勝手が良い。
【0043】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、船舶の接舷による変形が小さくなるため、安定した緩衝効果を発揮することが可能となる。
【0044】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、岸壁への接触方向に関わらず接触エネルギーが安定して吸収されるので、装置の信頼性が向上する。
【0046】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、ケーシング内部への給水や内部貯留水の排水が可能となるため本体重量の調整が容易となる。
【0047】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、本体重量は制御部によって調整されるので、防舷装置の浮遊位置の効率的な調整が容易となり使い勝手が向上する。
【0048】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、浮遊位置を指示するだけで自動的に液体の貯留量が制御されるので、より使い勝手が向上する。
【0052】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、受衝板によって岸壁への接触面積が拡大するため、岸壁の凹凸に対して第2の緩衝材による緩衝効果を高めることができる。
【0055】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の第1の実施の形態による防舷装置の使用状態を示した概略図である。
【0056】
図を参照して、海面23には岸壁24に接舷すべき潜水艦、双胴船等の特殊な船体形状を有する船舶21が浮遊している。船舶21と岸壁24との間にはこの実施の形態による防舷装置25が海面23に浮遊しており、ガイチェーン26を介して岸壁24に係留されている。尚、船舶21の胴体22は、ほぼ円形断面形状を有しており、その側面は船首及び船尾方向に向かって先細りする曲面形状を有している。
【0057】
図2は図1で示した防舷装置25の概略形状を示した図であり、図3は図2のIII−IIIラインから見た図であり、図4は図2のIV−IVラインから見た図であり、図5は図3のV−Vラインの断面図である。
【0058】
これらの図を参照して、防舷装置25は箱型中空形状の剛性を有する浮遊可能な本体31を中心として構成されている。本体31は一般には鉄板を溶接して構成されるが、これに代えて合成樹脂やFRPによって一体的に形成されたものでも良い。本体31のケーシング34の上面には開口42が形成されており、開口42にはこれを覆うように、開閉自在とされる蓋板41が取付けられている。本体31のケーシング34内には開口42から給水された所定量の液体44が貯留されている。
【0059】
本体31の一方面には第1の緩衝材32が取付けられている。第1の緩衝材32の外方面には、これに接舷する船舶21の胴体22の形状に沿った凹面39が形成されている。これによって接舷時の胴体22に対する第1の緩衝材32からの反力が分散され、胴体22の損傷を防止する。
【0060】
尚、第1の緩衝材32には、ナイロン繊維等の繊維層38とゴム37との積層体構造が採用されている。このように積層ゴム構造を用いると、図6に示しているように繊維層を含まない総ゴムの構造物に比べて、同一変位Wに対して反力Pを大きくとることができる。従って総ゴム構造に比べて、同一の力が船舶21の胴体22から第1の緩衝材32に加わった場合の第1の緩衝材32の変形は少なく、より安定した緩衝効果を発揮することができる。
【0061】
又、総ゴムの構造物の場合、船舶の接岸速度が設計を大幅に上回った時当該接岸エネルギーを吸収するためには、防舷装置の船舶側に取り付けた第1の緩衝材32が大きく変位しなければならない。そのため、防舷措置の本体31に大きな反力が加わり本体31が破損する虞がある。本体31が破損すると防舷装置としての機能が低下し、船舶21の推進装置等が破損する危険性がある。
【0062】
一方、積層ゴム構造であれば、圧縮されるとゴム中に埋設された繊維が破断することにより、図7に示しているように積層体構造の反力の上昇を抑えながら、吸収する接岸エネルギー(斜線部)を大きくすることができる。この破断荷重は、内部積層繊維の材質や枚数によって明確にできるため、本体31の強度を第1の緩衝材32の破断荷重以上に設定することにより、本体32自身の破損を防止することができる。このようにして、第1の緩衝材32を構成する繊維とゴムとの積層体構造の破断荷重を上回る強度を本体31に持たせることにより、船舶21の接岸速度が設計条件を大幅に上回ったとしても、本体31が破損することなく、又その機能が低下することを確実に防止することができる。
【0063】
又、本体31の第1の緩衝材32の取付け面と反対方向の他方面にはサークル型の防舷材よりなる第2の緩衝材33が取付けられている。第2の緩衝材33は、図4及び図5から明らかなように上下左右いずれの方向にも同一断面形状を有しているため、防舷装置25の岸壁24に対する接触方向が変化しても岸壁24に対する吸収エネルギーを安定して発揮することが可能となる。
【0064】
次に、この防舷装置25の使用方法について説明する。
【0065】
第1の緩衝材32の凹面39の形状は前もって接舷すべき船舶21の胴体22の形状に沿ったものとしておけばよいが、船舶21の吃水は接舷時の状況によって変化する場合がある。このため防舷装置25の吃水位置が常時一定であれば、第1の緩衝材32の凹面39が船舶21の胴体22に合致しない場合が生じる。このとき、本体31の蓋板41を開き、開口42を介して防舷装置25が所定の吃水位置に浮遊するように液体44の量を調整する。これによって防舷装置25の吃水を所望の位置に調整すれば、第1の緩衝材32の凹面39を精度よく船舶21の胴体22に接触させるように調整することが容易となる。この結果第1の緩衝材32からの反力が確実に分散されて船舶21の胴体22に伝達されるため、胴体22の局部的な損傷等を生じる虞がない。
【0066】
又、防舷装置25はケーシング34の上面に形成された係留具36に連結されたガイチェーン26を介して岸壁24に係留されている。そのため防舷装置25が不用意に岸壁24から移動することはなく、船舶21の接舷によって防舷装置25の第2の緩衝材33は安定して岸壁24に接触し、岸壁24からの反力を確実に吸収する。
【0067】
このようにこの実施の形態であれば、本体31を中心として第1の緩衝材32を船舶21に対応させたものを採用し、且つ岸壁24に対しては適切な第2の緩衝材33を設定することが可能となるため、接舷すべき船舶の種類や岸壁24の形状に関わらず安定した防舷装置としてその緩衝効果を発揮することが可能となる。
【0068】
図8はこの発明の第2の実施の形態による防舷装置の本体の概略構造を示した図であり、先の実施の形態において説明した第1の緩衝材32と第2の緩衝材33との取付け面に平行な面によって本体31を切断した場合の断面図である。尚、第1の緩衝材32及び第2の緩衝材33の構造については先の実施の形態と同一であるためここでの説明は繰り返さない。
【0069】
図を参照して、本体31のケーシング34の上面には給排水機能を有するポンプ等を内蔵した制御部48が取付けられている。制御部48にはケーシング34の外面に沿うように接続され本体31が浮遊する海面23の海水等を吸水するための外部吸水管49が接続されている。又、制御部48の下面にはケーシング34の上面を内方に向かって貫通した状態で接続され、外部吸水管49から吸水されてきた液体をケーシング34内に排水するための内部排水管52が接続されている。尚、外部吸水管49と内部排水管52とは制御部48内においてポンプ等を介して接続されており、制御部48の制御の下で外部吸水管49から吸水された海水等の液体がケーシング34内に排出される。
【0070】
更に、制御部48の下面にはケーシング34の上面を内方に向かって貫通した状態で接続され、ケーシング34内に貯留されている貯留水54を吸水させるための内部吸水管51が接続されている。又、制御部48には、ケーシング34の外面に沿うように接続され、内部吸水管51から吸水されてきた液体をケーシング34の外に排水するための外部排水管50が接続されている。尚、内部吸水管51と外部排水管50とは制御部48内において他のポンプ等を介して接続されており、制御部48の制御によって貯留水54は内部吸水管51を介して外部排水管50から外部に排出される。このように構成することによって、ケーシング34内の貯留水54の量は制御部48の制御によって自在に調整することが可能となる。
【0071】
一方、ケーシング34の側面には本体31の海面23の位置(吃水位置)を検知するための液面センサ53が取付けられており、液面センサ53からの検知信号は制御部48に入力される。又、図示していないが制御部48には本体31の海面23に対する上下方向の浮遊位置すなわち吃水位置を指示するための指示手段が設けられている。尚、この指示手段は制御部48に取付けてもよく、あるいは遠隔操作によって制御部48に指示を与えるように構成してもよい。
【0072】
次に、この実施の形態による防舷装置の使用方法について説明する。接舷すべき船舶21の吃水位置によって防舷装置25の吃水位置が定められると、その吃水位置に基づいた本体31の浮遊位置を指示手段によって指示する。この指示手段による指示内容に従って、制御部48はポンプ等を駆動して液面センサ53が所定の液面位置を検知するまでケーシング34内の貯留水54の量を制御する。このようにして防舷装置25の所望の吃水位置を指示するだけで、制御部48によって自動的にその吃水位置に防舷装置25が浮遊するように自動的に制御されるものである。尚、上述のように浮遊位置を指示する指示手段を遠隔操作できるようにしておけば、外方からの目測に基づいて船舶21に対して防舷装置25を自在にその浮遊位置を調整できるためより使い勝手が向上する。
【0073】
図9はこの発明の第3の実施の形態による防舷装置の本体の断面形状を示した図であり、図8で示した第2の実施の形態による断面に対応するものである。
【0074】
図を参照して、本体31のケーシング34の上方に貫通するように給水管57が取付けられ、給水管57の外方端部に給水弁58が接続されている。又、ケーシング34の下方にこれを貫通するように排水管59が取付けられ、排水管59の外方端部には排水弁60が接続されている。
【0075】
使用時においてはケーシング34に貯留すべき貯留水54の量を前もって計算しておき、図示しない給水管を給水弁58に接続する。そして排水弁60を閉状態とした後、給水弁58を開状態として給水管57を介してケーシング34内に給水する。これによって所定量の貯留水54がケーシング34内に貯留され、防舷装置25を所望の浮遊位置に調整することが可能となる。尚、防舷装置25の浮遊位置をより高く調整したい場合には、排水弁60を開状態として排水管59を介して所定量の貯留水54を外部に排出すればよい。
【0076】
このように給水弁58及び排水弁60を介してケーシング34内に給排水することによって、防舷装置25の吃水位置を所望の位置に調整することが可能となる。
【0077】
図10はこの発明の第4の実施の形態による防舷装置の概略構造を示した図であり、図11は図9のXI−XIラインからみた図である。
【0078】
これらの図を参照して、防舷装置25の基本的な形状は先の第1の実施の形態によるものと同一であるが、この実施の形態においては、更に本体31のケーシング34の対向する側面の各々に断面略半円形状の中実柱状のフロート63a,フロート63bが取付けられている。フロート63a,フロート63bは例えば発泡ウレタンによって形成されており、使用時において防舷装置25に浮力を与えるためのものである。これによって防舷装置25の浮遊位置の調整範囲をより広く取ることが可能となり、船舶21の吃水位置の変化に対応できる範囲がより拡大することになる。
【0079】
又、このようなフロート63a,フロート63bを取付けることによって、複数の防舷装置25を隣接するようにして使用した場合の、相互の接触による本体31の損傷を防止する効果も奏するものである。
【0080】
図12はこの発明の第5の実施の形態による防舷装置の概略構造を示した図である。
【0081】
図を参照して、本体31及び第2の緩衝材33は先の第1の実施の形態によるものと同一であるためここでの説明は繰り返さない。この実施の形態による防舷装置においては、本体31の船舶側に取付けられる第1の緩衝材32が二層構造となっている。すなわち、本体31には一定厚さの緩衝体67が取付けられており、緩衝体67の外方面にはスポンジ等の弾性体68が取付けられている。尚、緩衝体67は先の第1の実施の形態による第1の緩衝材32と同一構成である繊維層とゴムとの積層体よりなるものである。
【0082】
このため緩衝体67は変位が少ないが、弾性体68は接触すべき船舶21の胴体22の形状に応じて容易に変形するものとなる。すなわち、接舷すべき船舶21の種々の船体形状に応じて弾性体68がその外面形状に沿うように変形する。これによって先の実施の形態のように接舷すべき船舶21の胴体22に合わせた凹面39を固定的に形成する必要がないため、汎用性が高くなり使い勝手が向上する。
【0083】
図13はこの発明の第6の実施の形態による防舷装置の概略形状を示した図であり、図14は図13のXIV−XIVラインから見た図である。
【0084】
これらの図を参照して、防舷装置25を構成する本体31、第1の緩衝材32及び第2の緩衝材33の構造は、先の第1の実施の形態によるものと同一であるためここでの説明は繰り返さない。この実施の形態においては、第2の緩衝材33の接触面に板状の受衝板70が取付けられている。受衝板70の外郭線73は第2の緩衝材33の接触面を規定する外郭線74より大きなものとなっている。
【0085】
このため、防舷装置25は岸壁24に対してより大きな範囲で接触することが可能となる。その結果、図13に示されているように岸壁24が鋼矢板71によって構成されて大きな凹凸面が形成されているような場合であっても、第2の緩衝材33が凹み部80にはまり込んだりするような虞が少なくなる。このため防舷装置25の岸壁24に対する接触による岸壁24からの反力が受衝板70全体によって受けられ、第2の緩衝材33によって効率的に吸収されることになる。尚、受衝板70の大きさは第2の緩衝材33の接触面を規定する外郭線74より大きなものとしているが、岸壁24の最大の凹み部80に対しても影響を受けないような大きさにすればより効果を奏するものである。
【0086】
図15はこの発明の第7の実施の形態による防舷装置の概略形状を示したものであって上方から見た図である。
【0087】
図を参照して、防舷装置25を構成する本体31及び第1の緩衝材32は先の第1の実施の形態によるものと同一であるためここでの説明は繰り返さない。この実施の形態においては、本体31に2つの第2の緩衝材33a,第2の緩衝材33bが取付けられており、第2の緩衝材33a,第2の緩衝材33bのいずれにもサークル型防舷材が採用されている。そして第2の緩衝材33a,第2の緩衝材33bの接触面には受衝板70が取付けられている。
【0088】
受衝板70は第2の緩衝材33a,第2の緩衝材33bの接触面を規定する外郭線74a,74bのいずれをも覆うような大きさの形状となっている。これによって岸壁24が鋼管製矢板72によって構成されてその表面に凹凸が生じた場合であっても、受衝板70によって防舷装置25は安定して岸壁24に接触することが可能となる。このため、岸壁24からの反力は受衝板70に伝達され、第2の緩衝材33a,第2の緩衝材33bによって効率的に吸収されることになる。
【0089】
図16はこの発明の第8の実施の形態による防舷装置の概略構造を示した図である。
【0090】
図を参照して、防舷装置25は板状の剛性を有する本体65を中心として構成されている。本体65の一方面には横置式の浮遊式防舷材66a,浮遊式防舷材66bが上下に並べて取付けられている。一方、本体65の他方面には同様に横置式の浮遊式防舷材66c,浮遊式防舷材66dが上下方向に並べて取付けられている。そして、浮遊式防舷材66b及び浮遊式防舷材66dが完全に海面23より下方に位置するように、本体65の重量が定められている。このように構成することによって、潜水艦等の特殊断面形状を有する船舶21の胴体22を浮遊式防舷材66c及び浮遊式防舷材66dによって上下方向から挟み込むようにして接触させて緩衝効果を高めることが可能となる。
【0091】
又、岸壁24側の浮遊式防舷材66a,浮遊式防舷材66bにあっては横置式としているため、岸壁24に凹凸面が形成されていても安定した岸壁24への接触を可能とする。尚、本体65は中実体としているが、先の実施の形態のように中空構造としてこれに液体等を投入することによって防舷装置25全体の上下浮遊位置を調整するように構成してもよい。
【0092】
尚、図16においては浮遊式防舷材66を横置式としているが、岸壁24の凹凸に対して浮遊式防舷材66の径が十分に大きなものであれば縦置式として本体65に取付けてもよい。
【0093】
又、上記の各実施の形態では、第2の緩衝材は岸壁に接触するようにしているが、岸壁に代えて他の船舶等の浮遊構造物に接触させて使用するようにしても同様の効果を奏する。
【0094】
更に、上記の各実施の形態では、第1の緩衝材は繊維とゴムとの積層体としているが、これに代えて総ゴムや合成樹脂等の中実体、中空体あるいは中空体内部に緩衝物としての樹脂粒や砂等を所定量充填したものを用いても良い。
【0095】
更に、上記の各実施の形態では、本体31に海水等の液体を注入しているが、これに代えて砂等の固形粒状物を注入するようにして全体重量を調整するようにしても良い。
【0096】
更に、上記の各実施の形態では、第2の緩衝材としてサークル型の防舷材を用いているが、これに代えてV型、円筒形等の防舷材を用いても良い。
【0097】
更に、上記の各実施の形態では、本体31の幅、すなわち第1の緩衝材32と第2の緩衝材33との間隔を一定としているが、潜水艦のような船首及び船尾に向かって先細りする曲面形状を有する船舶であれば、潜水艦の胴体と岸壁との間隔が一定ではなくなる。そこで、その場合には、同一幅の本体を複数連結したり、あるいは幅の異なった本体に第1緩衝材及び第2緩衝材を取り付けた防舷装置を用いれば良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態による防舷装置の使用状況を示した図である。
【図2】図1で示した防舷装置の概略構造を示した図である。
【図3】図2で示したIII−IIIラインから見た図である。
【図4】図2で示したIV−IVラインから見た図である。
【図5】図3で示したV−Vラインの断面構造図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態における第1の緩衝材32として用いた積層ゴムと一般の総ゴムとにおける変位と反力との関係を示した図である。
【図7】この発明の第1の実施の形態における第1の緩衝材32として用いた積層ゴムの強度と本体31の強度とについて、変位と反力との関係において示した図である。
【図8】この発明の第2の実施の形態による防舷装置の本体の概略断面構造を示した図である。
【図9】この発明の第3の実施の形態による防舷装置の本体の概略断面構造を示した図である。
【図10】この発明の第4の実施の形態による防舷装置の概略構造を示した図である。
【図11】図10で示したXI−XIラインから見た図である。
【図12】この発明の第5の実施の形態による防舷装置の概略構造を示した図である。
【図13】この発明の第6の実施の形態による防舷装置の概略構造を示した図である。
【図14】図13で示したXIV−XIVラインから見た図である。
【図15】この発明の第7の実施の形態による防舷装置の概略構造を示した図である。
【図16】この発明の第8の実施の形態による防舷装置の概略構造を示した図である。
【図17】従来の防舷装置の使用状態を示した図である。
【図18】従来の防舷装置の使用状態の他の例を示した図である。
【図19】図18で示した防舷装置の問題点を説明するための概略図である。
【符号の説明】
21…船舶
22…胴体
23…海面
24…岸壁
25…防舷装置
31,65…本体
32…第1の緩衝材
33…第2の緩衝材
34…ケーシング
37…ゴム
38…繊維層
39…凹面
41…蓋板
42…開口
44…液体
47…給排水装置
48…制御部
49…外部吸水管
50…外部排水管
51…内部吸水管
52…内部排水管
53…液面センサ
54…貯留水
57…給水管
58…給水弁
59…排水管
60…排水弁
66…浮遊式防舷材
67…緩衝体
68…弾性体
70…受衝板
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

Claims (7)

  1. 剛性を有する本体と、
    前記本体の一方面に取付けられ、吃水が変化し得ると共に特殊な船体形状を有する船舶が接舷する第1の緩衝材と、
    前記本体の前記一方面とは反対方向に面する他方面に取付けられ、岸壁等に接触する第2の緩衝材とを備え、
    前記第1の緩衝材の船舶との接触面は、該船舶の胴体の側面形状に沿った凹面形状に前もって形成されており、
    前記本体は中空箱型形状を有し、前記本体はその内部への液体の給水及び内部からの排水を可能とする給排水手段を有し、
    前記本体が貯留する液体の量が制御され、前記第1の緩衝材の前記凹面形状が前記接舷する船舶の胴体の前記側面形状に合致するように吃水位置が変化する、防舷装置。
  2. 前記第1の緩衝材は、合成樹脂繊維とゴムとの積層体よりなる、請求項1記載の防舷装置。
  3. 前記第2の緩衝材は、サークル型防舷材よりなる、請求項1又は請求項2に記載の防舷装置。
  4. 前記給排水手段は、
    前記本体のケーシングの上面に形成された開口と、
    前記開口を塞ぐようにして取付けられた開閉自在の蓋体とを含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の防舷装置。
  5. 前記給排水手段は、
    前記本体のケーシングの上面に設置された制御部と、
    前記制御部に前記ケーシングの外面に沿うようにして接続され、前記本体を浮遊させる海水等を吸水するための外部吸水管と、
    前記制御部に前記ケーシングの上面を内面に向かって貫通した状態で接続され、前記外部吸水管から吸水されてきた液体を前記ケーシング外に排水するための内部排水管と、
    前記制御部に前記ケーシングの上面を内面に向かって貫通した状態に接続され、前記ケーシング内に貯留された液体を吸水するための内部吸水管と、
    前記制御部に前記ケーシングの外面に沿うようにして接続され、前記内部吸水管から吸水されてきた液体を前記ケーシング外に排水するための外部排水管とを備え、
    前記制御部はポンプ手段を有し、前記外部吸水管、前記内部排水管、前記内部吸水管及び前記外部排水管を介して、前記本体が所望の上下位置において浮遊するように前記ケーシング内に貯留する液体の量を制御する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の防舷装置。
  6. 前記本体の前記ケーシングの側面に取付けられた前記本体の上下の浮遊位置を検知する液面センサと、
    前記浮遊位置を指示する指示手段とを更に備え、
    前記制御部は、前記検知された浮遊位置に基づいて、前記指示された浮遊位置に前記本体が保持されるように貯留された液体の量を制御する、請求項5記載の防舷装置。
  7. 前記第2の緩衝材の岸壁との接触面に取付けられ、前記接触面を規定する外郭線より大きな外郭線を有する受衝板を更に備えた、請求項1から請求項6のいずれかに記載の防舷装置。
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