JP4792170B2 - 顕微鏡用対物レンズ組立体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顕微鏡用対物レンズ組立体に関し、特に大口径、長焦点化を可能にするとともに高い解像度が得られ、細胞生物学、病理学等の分野に用いて好適な顕微鏡用対物レンズ組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、顕微鏡に用いられている倍率Xが10倍の対物レンズは、焦点距離fが1.5〜20mm程度で場合、実視野が1.8〜2.5mm程度である。倍率を高くすると、当然焦点距離が短くなり実視野はもっと狭くなる。
【0003】
ところで、細胞生物学の分野において、遺伝子、タンパク質、RNA(リボ核酸)などの細胞成分を顕微鏡で観察する場合、通常適当な蛍光プローブで照射して反応させた後、蛍光プロフィールをスキャナーで取り込み発現の様子を画像解析している。しかし、スキャンニングに要する時間は無視できない。病理学の分野では、スライドガラスに固定した組織切片を組織化学染色した後、このスライドガラスをステージの上に設置し、ステージを動かして組織接片を観察している。したがって、観察すべき被検物が対物レンズの実視野に比べて大きい場合は、ステージを動かす回数が増加するため、観察に長時間を要する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来の顕微鏡は、実視野が狭いため、大きな組織切片等の被検物を広い視野で観察するには、ステージを動かす必要があり、またその回数が増加する。したがって、例えば、直径が43mm程度の被検物を観察しようとすると、分割し長時間にわたって観察する必要があった。このように、観察に長時間を要すると、被検物が生きた組織切片の場合は、組織切片のある部分を観察している間に未観察部分の組織が変異したり、死滅したりすることがあるため、組織全体を短時間に観察することができないという問題があった。このため、細胞生物学、病理学等の分野においては、実視野が広くて大きな被検物を短時間に、しかも鮮鋭に観察することができる顕微鏡の開発が要望されている。
【0005】
そこで、従来の対物レンズを単純に10倍にスケールアップして、例えば口径108mm、焦点距離180mmの屈折系対物レンズを製作すると、光の波長ごとに屈折角が異なり分散されるためバックフォーカス(bf)が異なり、1つの波長に対してピントを合わせ、他の波長に対して使用するとピンボケになる(色収差)。これは再フォーカスすれば済む問題であるが、光学ガラスの屈折率の波長に対する変化の特徴にしたがって球面収差曲線、非点収差曲線の形が異なってきて再フォーカスしても実際は良好な性能が得られない。
【0006】
図9に従来の対物レンズにおける球面収差曲線を示す。この図は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)領域内の3つの代表色であるC線(波長:656.3nm)、d線(波長:587.6nm)、F線(波長:486.1nm)の光における球面収差曲線を示すもので、d線のみに着目して最高性能になるように補正したものである。すなわち、近軸光線においてd線の球面収差が最少になるように補正している。しかし、d線のみに着目して補正すると、C線はよりアンダー(補正不足)に、F線はよりオーバー(補正過剰)になり、F線−d線間では0.074mm、C線−d線間では0.065mmの軸上収差があり、これは再フォーカスすれば改善できるが、球面収差は限界で、d線で−0.042mm、C線で−0.069mm、F線で+0.026mmとなり、ペッツファール和(光学系による平面物体の像の湾曲の軸上特性)がプラスのこのレンズでは、特にF線でよい性能が到底得られない。
【0007】
この3波長に対し、クラウン系ガラスからなる凸レンズとフリント系ガラスからなる凹レンズの組み合わせによってどの波長の線も高性能になるように最適化しようとしても、F線の性能向上に引っ張られてd線に対しても、C線に対しても高性能にならない。言い換えれば、C線、d線、F線における球面収差曲線を略一致させることができない。
【0008】
このような傾向は、大口径になればなる程、また長焦点になればなる程顕著に現れる。これは図10に示すようにフリント系ガラスFGがクラウン系ガラスKGより、屈折率が短波長で急峻に高くなるためで、光学ガラス材料の物性に起因しているため、通常の方法では避けられない。
【0009】
このことをd線、C線、F線のスポットダイアグラムで見ると、図11〜図13の通りに現れる。すなわち、図11(a)〜(e)において、d線のbf=8.0mmの位置でのスポットダイアグラムは、一辺の長さが20μmのボックスの中に全て入り、密集した小さな核があって目標を達成している。つまり、軸上収差が少ない。なお、同図(a)〜(e)におけるスポットダイアグラムの入射角は、それぞれ0.0000、3.4000、4.3000°、6.1800°、6.8000°で、光軸中心からのスポットの距離は0.000mm、10.673mm、13.491mm、19.342mm、21.246mmである。
【0010】
d線のbf=8.0mmの位置で、C線のスポットダイアグラムを見ると、図12(a)〜(e)に示すように20μmのボックス一杯に広がり、核がなく目標を果たすことができない。つまり、軸上収差が大きすぎる。F線のスポットダイアグラムは、図13(a)〜(e)に示すように100μmのボックス一杯に広がっており目標には程遠い。
【0011】
フォーカスしてbfをC線で8.04mm、F線で8.12mmに位置させた場合、C線は図14(a)〜(e)に示すようにかなり目標に近づいてきているが未だ不十分である。F線は図15(a)〜(e)に示すように40μmのボックス一杯に広がっており、到底目標を達成したとは言えない。すなわち、再フォーカスして軸上収差の影響を除去できても、球面収差の色差の影響で目標とする性能を達成することができない。
【0012】
図16に従来のタイプでの対物レンズにおける非点収差曲線を示す。この図から明らかなように、C線、d線、F線の非点収差曲線は大きくずれている。なお、Tは環状方向の非点収差、Sは放射方向の非点収差である。
【0013】
このような傾向は、上記した球面収差曲線と全く同様な理由から、大口径になればなる程、また長焦点になればなる程顕著に現れるため、通常の方法では避けられない。
【0014】
反射系レンズを用いた場合は、色収差の問題は解消されるが、3枚の非球面オファクシス矩形アパーチャーになるため、高精度に非球面加工することが著しく困難になり反射系レンズに比べて高価になったり、使用する光束がリング状になったりするといった別の問題が発生する。したがって、屈折系レンズでこれらの難点を解決することが望ましい。
【0015】
そこで、本発明者らは、大口径で長焦点の顕微鏡用対物レンズの開発、実用化について鋭意検討した結果、レンズ毎に主波長をそれぞれC線、d線、F線とし、各レンズの主波長の光における球面収差曲線、非点収差曲線を略一致するように最適に補正した単色光用の3つの屈折系レンズを製作し、これらのレンズを選択的に使用することにより、いずれのレンズを用いた場合でも、色が異なるだけで、バックフォーカスを調節することなく球面収差、非点収差が最適に補正された鮮鋭な像を広い実視野で、しかも同一の倍率でもって観察または撮影することができることを見出した。このような対物レンズは、可視域全体を使用するが、同時に可視域全体を使用することのない用途、例えば分子生物学等において用いて有効である。
【0016】
本発明は上記した従来の問題、要請および検討結果に基づいてなされたもので、その目的とするところは、大口径、長焦点を可能にし、高い解像度が得られる顕微鏡用対物レンズ組立体を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために第1の発明は、交換不能な1組のレンズ群と、このレンズ群とそれぞれが一体に交換可能に組み付けられる3組のレンズ群とからなり、上記交換可能な3組のレンズ群は、波長が300〜520nm、500〜620nm、600〜700nmの範囲内のある特定の波長をそれぞれ主波長とし、これらの主波長の光における球面収差曲線を略一致させるように構成されているものである。
【0018】
第2の発明は、交換不能な1組のレンズ群と、このレンズ群とそれぞれが一体に交換可能に組み付けられる3組のレンズ群とからなり、上記交換可能な3組のレンズ群は、波長が300〜520nm、500〜620nm、600〜700nmの範囲内の波長をそれぞれ主波長とし、これらの主波長の光における非点収差曲線を略一致させるように構成されているものである。
【0019】
これらの発明においては、交換可能な3組のレンズ群の主波長の光における球面収差曲線、非点収差曲線がそれぞれ略一致しているので、いずれのレンズ群を用いても、色が異なるだけでバックフォーカスを調節することなく球面収差、非点収差が最適に補正された鮮鋭な像を同一の倍率でもって観察または撮影することができる。また、交換可能な3組のレンズ群は3つの代表的な色を主波長として設計されているので、R,G,Bの可視域全般に有効に使用できる。
【0020】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記交換可能な3組の各レンズ群が、それぞれ凹レンズと、この凹レンズよりアッベ数が大きく屈折率が低く設定された凸レンズとで構成されているものである。
この発明においては、交換可能な3組の各レンズ群の球面収差、非点収差をそれぞれ良好に補正する。凸レンズの屈折率nは1.8以下、アッベ数νは45以下が望ましい。凹レンズは相対的に屈折率nが大きく、アッベ数νが小さい。
【0021】
第4の発明は、上記第1、第2または第3の発明において、上記交換可能な3組のレンズ群の主波長の光をそれぞれC線、d線、F線としたものである。
この発明においては、3つの代表色であるC線、d線、F線を主波長として用いているので、可視域全域に有効に使用することができる。
【0022】
第5の発明は、上記第1、第2、第3または第4の発明において、交換可能な3組のレンズ群が交換不能なレンズ群より前側に配置されているものである。
この発明においては、前側に配置すると後側に配置した場合に比べて周縁光線の出射角が小さく、したがって屈折角も小さく、コマ収差等の収差を小さくすることができ、収差補正のためのレンズを追加したりする必要がない。したがって、レンズ設計が後側に配置する場合に比べて容易で、安価に製作することができる。
【0023】
第6の発明は、上記第5の発明において、対物レンズ組立体の前端から後端までの全長をTとしたとき、交換可能なレンズ群を前記対物レンズ組立体の前端から0.35T以内に配置したものである。
この発明においては、レンズ群が0.35T以内であって薄く、周縁光線の出射角が小さく、したがって屈折角も小さくコマ面収差等の収差を小さくする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る対物レンズ組立体を備えた顕微鏡の概略構成を示す図、図2は対物レンズ組立体を示す図である。これら図において、全体を符号1で示す顕微鏡は、光源2、集光レンズ3、ハーフミラー4、対物レンズ組立体5、撮像レンズ組立体6、撮像装置7等で構成されている。光源2としては、白色電球、レーザー光源等が用いられる。集光レンズ組立体3は、光源2が白色電球の場合、一例として1枚の凹レンズ3aと2枚の凸レンズ3b,3cが用いられ、光源2から出た光を平行光にしてハーフミラー4に導く。ハーフミラー4は、例えば透過率と反射率の比が1対1のものが用いられ、集光レンズ組立体3によって平行光となった光源2からの光を下方に反射して対物レンズ組立体5に導き、被検物8によって反射され対物レンズ組立体5を通って戻ってくる光を透過し、前記撮像装置7に導く。撮像装置7としては、CCD、デジタルカメラ、一眼レフカメラ等が用いられる。被検物8の大きさは直径が43mmである。
【0025】
前記対物レンズ組立体5は、図示してない顕微鏡本体に固定された交換不能な複数のレンズG1 〜G4 ,G7 と、これらのレンズG1 〜G4 ,G7 に対してそれぞれ交換可能に組み付けられる3組のレンズ群5B1 〜5B3 とで構成されており、焦点距離F=180mm、バックフォーカス(bf)>8mm、倍率X10、F/2.5の明るさ、43mmの画面サイズで2.2億画素を越える解像力、テレセントリック条件で可視域全体での使用を可能にしている。画面サイズを43mmに設定した理由は、通常の写真フィルム(36×24mm)による撮影を可能にするためである。
【0026】
交換不能なレンズG1 〜G4 ,G7 のうち、4枚のレンズG1 〜G4 は、1組のレンズ群5Aを構成している。これらのレンズのうちレンズG1 とレンズG2 は、所定の開口数N・Aを確保するためのもので、凸レンズと凹レンズとをエポキシ樹脂、カナダ・バルサム等の光学レンズ用接着剤によって一体的に貼り合わせた2枚一組とするダブレットを構成している。また、レンズG3 とレンズG4 は、対物レンズ組立体5の収差をバランスさせるためのもので、凸レンズと凹レンズとをエポキシ樹脂、カナダ・バルサム等の光学レンズ用接着剤によって一体的に貼り合わせた2枚一組とするダブレットを構成している。残り1枚のレンズG7 は凸レンズからなり、対物レンズ組立体5Bの前側(光源側)に配置されている。
【0027】
レンズG1 〜G4 ,G7 の曲率半径(Rmm)、間隔(dmm)および屈折率(n値&V)を下記表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
交換可能な3組のレンズ群5B1 〜5B3 は、それぞれ口径が108mmで、顕微鏡1の図示しない鏡筒に回転自在または移動自在に設けたレンズ転換器11にそれぞれ配設されている。レンズ転換器11は、回転自在に設けられる場合、顕微鏡1の光軸12に対して垂直な面内において回転自在で、その回転中心が光軸12から所定距離離間するように設けられ、内部に前記3組のレンズ群5B1 〜5B3 がレンズ転換器11の回転中心を中心とし光軸12までの距離を半径とする同一円周上に周方向に略等間隔おいて、かつ略同一平面内に位置するようにそれぞれ配設されている。したがって、レンズ転換器11を所要角度回転させると、各レンズ群5B1 〜5B3 の光学中心(光軸)を顕微鏡1の光軸12に対して選択的に一致させることができる。また、通常の顕微鏡における対物レンズ転換器と同様に、スライドガラスのステージに対する着脱操作を容易にするためにレンズ転換器11の中心軸線を光軸12に対して所要角度傾けて回転自在に取付けられるものであってもよい。移動自在に設けられる場合は、顕微鏡の光軸12に対して垂直な面内において移動自在で、内部に3組のレンズ群5B1 〜5B3 がレンズ転換器11の移動方向と平行な同一直線上に位置するように配列される。なお、図1においては中央のレンズ群5B2 の光軸を顕微鏡の光軸12と一致させて被検物8の観察を行っている状態を示している。
【0030】
また、移動可能な3組のレンズ群5B1 〜5B3 は、それぞれ色収差を補正し、バックフォーカスを一致させるとともに、主波長における球面収差曲線、非点収差曲線をそれぞれ略一致させるために凸レンズと凹レンズとで構成されている。各レンズ群5B1 〜5B3 の凸レンズは屈折率nが1.8以下で、アッベ数νが45以上で、凹レンズは相対的に屈折率nが大きく、アッベ数νが小さく設定されている。また、各レンズ群5B1 〜5B3 は、色の3原色であるR,G,Bの各領域、言い換えれば波長が300〜520nm程度の範囲、500〜620nm程度の範囲、600〜700nm程度の範囲内のある特定の波長をそれぞれ主波長としている。
【0031】
さらに、各レンズ群5B1 〜5B3 を詳述すると、図1において中央のレンズ群5B1 は、凸レンズG6 と凹レンズG5 とを貼り合わせた2枚一組とするダブレットからなり、主波長が587.6nmのd線とされる。
【0032】
左側のレンズ群5B2 は、同じく凸レンズG8 と凹レンズG9 とを貼り合わせた2枚一組とするダブレットからなり、主波長が656.3nmのC線とされる。
【0033】
右側のレンズ群5B3 は、同じく凸レンズG10と凹レンズG11とを貼り合わせた2枚一組とするダブレットからなり、主波長が486.1nmのF線とされる。
【0034】
各レンズ群5B1 〜5B3 の曲率半径R1 ,R2 ,R3 ,R4 (mm)、屈折率(n)およびアッベ数(ν)を下記表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
凸レンズG6 ,G8 ,G10の中心厚d1 はそれぞれ40mm、凹レンズG7 ,G9 ,G11の中心厚d2 はそれぞれ4.65mmである。なお、レンズ設計において屈折率nとアッベ数νが異なる光学ガラス材料を用いた場合には、各レンズの球面の曲率R1 ,R2 ,R3 ,R4 、中心厚d1 ,d2 が異なることは言うまでもない。
【0037】
このような各レンズ群5B1 〜5B3 の凸レンズG6 ,G8 ,G10と凹レンズG5 ,G9 ,G11は、それぞれエポキシ樹脂、カナダ・バルサム等の光学レンズ用接着剤によって一体的に貼り合わされているが、これに限らず両レンズ間に空隙を設けたものか、またはシリコーンオイルを介在させたものであってもよい。
【0038】
さらに、各レンズ群5B1 〜5B3 は、対物レンズ組立体5の全長をTとすると、対物レンズ組立体5の前端から0.35T以内に位置するように配置されている。このため、各レンズ群5B1 〜5B3 の厚さ、すなわち凸レンズの前端から凹レンズの後端までの距離は、最大でも0.35T(レンズG7 を用いない場場合)である。なお、上記説明においては対物レンズ組立体5の焦点距離を180mmとして説明したが、厳密には各レンズ群5B1 〜5B3 によってきわめて僅かではあるが異なり、レンズ群5B1 を用いた場合は180.0001mm、レンズ群5B2 を用いた場合は180.0003mm、レンズ群5B3 を用いた場合は179.9997mmである。
【0039】
凸レンズG6 ,G8 ,G10の材料としては、屈折率の低いクラウン系の光学ガラス材料が用いられ、凹レンズG5 ,G9 ,G11の材料としてはフリント系の光学ガラス材料が用いられる。この他、凸レンズと凹レンズの材料としては、クラウン系とフリント系のガラス材料に限らず、人工サファイア、水晶、蛍石等からなる異常分散性光学材料を使用することも可能である。
【0040】
前記撮像レンズ組立体6は、複数枚の凸レンズと凹レンズG12〜G17とで構成されており、対物レンズ組立体5およびハーフミラー4を透過した被検物8の映像光を撮像装置7に導く。撮像レンズ組立体6の倍率Xは1で、ハーフミラー4を透過する映像光は、光軸12に平行な平行光である。
【0041】
このような顕微鏡1において、被検物8が貼り付けられたスライドガラスをステージの上に設置する。次いで、交換可能な3つのレンズ群5B1 〜5B3 のうちのいずれか1つ、例えばレンズ群5B1 を選択して光軸12と一致させ、光源2を点灯させる。光源2から出た光は集光レンズ組立体3によって平行光に変換された後、ハーフミラー4によって下方に反射され、対物レンズ組立体5によって被検物8の表面に集光される。そして、被検物8の表面で反射した光は、再び対物レンズ組立体5を通り、さらにハーフミラー4を透過した後、撮像レンズ組立体6によって撮像装置7の受光面7aに投影され、被検物8の映像としてCCDによって撮像されるかまたはデジタルカメラや一眼レフカメラによって撮影される。
【0042】
この場合、被検物8の撮像または撮影に際してレンズ群5B1 を用いているため、その主波長であるd線の色(黄色)の画像が得られる。レンズ群5B2 を用いた場合はC線の色(赤)の画像が得られ、レンズ群5B3 を用いた場合はF線の色(青)の画像が得られる。
【0043】
図3と図4に各レンズ群5B1 〜5B3 の球面収差曲線と非点収差曲線をそれぞれ示す。これらの図から明らかなように、3つのレンズ群5B1 〜5B3 の球面収差曲線と非点収差曲線は、それぞれ略一致しており非常によく似た補正状況を示していることが判る。これは、光学レンズの特性からして唯1つのレンズ群ではC線、d線、F線の全ての光における球面収差曲線および非点収差曲線を略一致させることは不可能であるが、各レンズ群5B1 〜5B3 の主波長をそれぞれC線、d線、F線の単波長としているため、レンズ群5B1 についてはd線の光における球面収差曲線および非点収差曲線の収差補正を適正に行うだけでよく、レンズ群5B2 についてはC線の光における球面収差曲線および非点収差曲線の収差補正をd線の球面収差曲線および非点収差曲線とそれぞれ略一致するように適正に行うだけでよく、またレンズ群5B3 についてはF線の光における球面収差曲線および非点収差曲線の収差補正をd線、C線の光における球面収差曲線および非点収差曲線とそれぞれ略一致するように行うだけでよいからである。したがって、いずれのレンズ群5B1 〜5B3 を用いて被検物8を撮像または撮影した場合でも、映像の色が異なるだけでレンズ群を交換した時にバックフォーカスする必要が全くなく、同一の倍率で同一の像を撮像または撮影することができる。
【0044】
また、対物レンズ組立体5のレンズ設計に当たっては、交換可能な3つのレンズ群5B1 〜5B3 を交換不能な1組のレンズ群5Aの前側に配置しているので、レンズ設計が容易で、安価に製作することができる。すなわち、後側に配置した場合は、各レンズ群5B1 〜5B3 の縁近くを通る周縁光線の出射角が大きくなり、屈折角が大きくなるため画面周辺部に影響の大きい収差が生じる。このため、その収差を補正するためのレンズをさらに追加する必要がある。したがって、レンズ設計が複雑になり高価になる。一方、前側に配置した場合は後側に配置した場合に比べて周縁光線の出射角が小さいため屈折角も小さく、画面周縁部に収差が生じず、レンズの枚数を増やさないでも良好な映像を得ることができる。
【0045】
また、被検物8が直径43mmの大きなものであっても、全体を照射することができるので、ステージを動かして撮像または撮影したい箇所を探す必要がなく、被検物8全体を一枚の画面に撮像または撮影することができる。
【0046】
図5〜図7にd線、C線、F線のスポットダイアグラムを示す。
図5において、d線のスポットダイアグラムは、どの画角でも20μmのボックスの中に全て入り、密集した小さな核があって目標を達している。同図(a)〜(e)におけるスポットダイアグラムの入射角は、それぞれ0.0000、3.4000、4.3000°、6.1800°、6.8000°で、光軸中心からのスポットの距離は0.000mm、10.673mm、13.491mm、19.342mm、21.246mmであった。
【0047】
図6において、C線についてもd線と同様に密集した小さな核があって達成できていることが判る。同図(a)〜(e)におけるスポットダイアグラムの入射角は、それぞれ0.0000、3.4000、4.3000°、6.1800°、6.8000°で、光軸中心からのスポットの距離は0.000mm、10.685mm、13.507mm、19.365mm、21.272mmであった。
【0048】
一方、F線の光はC線とd線の光における球面収差曲線とは異なり補正過剰なため、補正するのに最も困難であったが、光線をカットして少なくすることにより、図7に示すように、C線、d線と略同様なスポットダイアグラムが得られた。同図(a)〜(e)におけるスポットダイアグラムの入射角は、それぞれ0.0000、3.4000、4.3000°、6.1800°、6.8000°で、光軸中心からのスポットの距離は0.000mm、10.674mm、13.492mm、19.342mm、21.246mmであった。
【0049】
以上のことから、スポットが80%集中する直径が、画面中心で3μmくらい、隅部で5μm以下にまとまっていて、この種の大口径、長焦点レンズでは従来では期待できなかった高性能であることが判る。
【0050】
このような顕微鏡1は、細胞生物学、病理学等の分野において、遺伝子、タンパク質、RNA、組織接片などの被検物を観察する際に用いて有効である。すなわち、これらの被検物は、励起光を被検物に照射すると蛍光を発するので、3つのレンズ群5B1 〜5B3 のうちからその色に近い主波長のレンズ群を選択して観察すると、被検物を良好に観察することができる。蛍光物質の種類によって発する蛍光の分光分布は、さして広い波長域にはわたらないが、用途により蛍光物質が何種類も使われるので、その全部をカバーする波長域はかなり広い。そこで、3つのレンズ群5B1 〜5B3 の主波長をC線、d線、F線とすることにより、赤色領域、緑色領域、青色領域の可視域全般にわたる蛍光物質に対して使用が可能である。
【0051】
図8は本発明の他の実施の形態を示す顕微鏡の概略構成図である。
この実施の形態は、図1に示した撮像レンズ組立体6と撮像装置7の代わりに結像レンズ組立体21と投影スクリーン22を用いている。顕微鏡1の倍率は10倍である。投影スクリーン22は、直径が430mmである。その他の構造は、図1に示した実施の形態と全く同一であるため、同一構成部材のものについては同一符号をもって示し、その説明を省略する。
【0052】
このような顕微鏡1においては、被検物8の像を結像レンズ組立体21によって投影スクリーン22に投射させることができるので、観察者は投影スクリーン22に投影された被検物8の像を肉眼で観察することができる。
【0053】
なお、上記した実施の形態においては、交換可能な3つのレンズ群5B1 〜5B3 の主波長して、C線、d線、F線を用いた例を示したが、本発明はこれに何等限定されるものではなく、赤色、緑色、青色の各領域の波長の範囲内におけるある特定の適宜な波長の線、例えば、D線(589.3nm)、E線(527.0nm)、G線(430.8nm)等を主波長として用いてもよい。
また、撮像レンズ組立体6や結像レンズ組立体21の代わりに接眼レンズを用いることも可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る顕微鏡用対物レンズ組立体によれば、可視域全体で使用することができ、特に特定波長の単色光による観察であるため、励起光を被検物に照射し、蛍光を発しさせたり、あるいは被検物を化学染色して観察を行う細胞生物学、病理学等の分野に用いて好適である。
【0055】
また、長焦点で大口径の屈折系レンズが得られ、いずれのレンズ群を用いた場合でもバックフォーカスの調整をする必要がなく、被検物を同一の倍率で観察することができる。
【0056】
また、実視野を広くすることができるため大きな被検物の全画面を一度に撮影することが可能でき、画像解析するときコンピュータによる解析処理が容易で、大量の被検物を迅速に解析することができる。さらに、レンズ群の交換時にその都度バックフォーカスの調整をする必要がないため、顕微鏡の取扱いも容易である。
【0057】
また、本発明は交換可能なレンズ群を交換不能なレンズ群より前側に配置しているので、後側に配置した場合に比べて屈折角が小さく、コマ収差等の収差を小さくすることができ、収差補正のためのレンズを追加したりする必要がなく、レンズ設計が容易で、安価に製作することができる。
【0058】
さらに、本発明によれば、レンズ群の厚さが薄く、周縁光線の出射角を小さくでき、したがって屈折角も小さく、コマ面収差等の収差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る対物レンズ組立体を備えた顕微鏡の概略構成を示す図である。
【図2】 対物レンズ組立体を示す図である。
【図3】 レンズ群の球面収差曲線を示す図である。
【図4】 レンズ群の非点収差曲線を示す図である。
【図5】 d線のスポットダイアグラムである。
【図6】 C線のスポットダイアグラムである。
【図7】 F線のスポットダイアグラムである。
【図8】 本発明の他の実施の形態を示す顕微鏡の概略構成図である。
【図9】 従来の対物レンズにおける球面収差曲線を示す図である。
【図10】 クラウン系ガラスとフリント系ガラスの屈折率と波長の関係を示す図である。
【図11】 従来の対物レンズにおけるd線のスポットダイアグラムである。
【図12】 従来の対物レンズにおけるC線のスポットダイアグラムである。
【図13】 従来の対物レンズにおけるF線のスポットダイアグラムである。
【図14】 フォーカス後のC線のスポットダイアグラムである。
【図15】 フォーカス後のF線のスポットダイアグラムである。
【図16】 従来の対物レンズにおける非点収差曲線を示す図である。
【符号の説明】
1…顕微鏡、2…光源、3…集光レンズ組立体、4…ハーフミラー、5…対物レンズ組立体、5A…交換不能なレンズ群、5B1 〜5B3 …交換可能なレンズ群、6…撮像レンズ組立体、7…撮像装置、8…被検物、12…光軸、21…結像レンズ組立体、22…投影スクリーン、G6 ,G8 ,G10…凸レンズ、 G5 ,G9 ,G11…凹レンズ。
Claims (6)
- 交換不能な1組のレンズ群と、このレンズ群とそれぞれが一体に交換可能に組み付けられる3組のレンズ群とからなり、上記交換可能な3組のレンズ群は、波長が300〜520nm、500〜620nm、600〜700nmの範囲内のある特定の波長をそれぞれ主波長とし、これらの主波長の光における球面収差曲線を略一致させるように構成されていることを特徴とする顕微鏡用対物レンズ組立体。
- 交換不能な1組のレンズ群と、このレンズ群とそれぞれが一体に交換可能に組み付けられる3組のレンズ群とからなり、上記交換可能な3組のレンズ群は、波長が300〜520nm、500〜620nm、600〜700nmの範囲内のある特定の波長をそれぞれ主波長とし、これらの主波長の光における非点収差曲線を略一致させるように構成されていることを特徴とする顕微鏡用対物レンズ組立体。
- 請求項1または2記載の顕微鏡用対物レンズ組立体において、
上記交換可能な3組の各レンズ群は、それぞれ凹レンズと、この凹レンズよりアッベ数が大きく屈折率が低く設定された凸レンズとで構成されていることを特徴とする顕微鏡用対物レンズ組立体。 - 請求項1,2または3記載の顕微鏡用対物レンズ組立体において、
上記交換可能な3組のレンズ群の主波長の光がそれぞれC線、d線、F線であることを特徴とする顕微鏡用対物レンズ組立体。 - 請求項1,2,3または4記載の顕微鏡用対物レンズ組立体において、
交換可能な3組のレンズ群が交換不能なレンズ群より前側に配置されていることを特徴とする顕微鏡用対物レンズ組立体。 - 請求項5記載の顕微鏡用対物レンズ組立体において、
対物レンズ組立体の前端から後端までの全長をTとしたとき、交換可能なレンズ群を前記対物レンズ組立体の前端から0.35T以内に配置したことを特徴とする顕微鏡用対物レンズ組立体。
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