JP4790356B2 - 低級炭化水素改質触媒 - Google Patents

低級炭化水素改質触媒 Download PDF

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Description

本発明はメタンを主成分とする天然ガスやバイオガス、メタンハイドレートの高度利用に関する。天然ガス、バイオガス、メタンハイドレートは地球温暖化対策として最も効果的なエネルギーと考えられ、その利用技術に関心が高まっている。メタン資源はそのクリーン性を活かして、次世代の新しい有機資源、燃料電池用の水素資源として着目されている。
本発明は、特に、メタンからプラスチック類などの化学製品の原料であるベンゼンおよびナフタレン類を主成分とする芳香族化合物と高純度の水素ガスを効率的に製造しうる触媒化学変換技術に関する。
低級炭化水素とりわけメタンからベンゼン等の芳香族化合物と水素と併産する方法としては、触媒の存在下、酸素または酸化剤の非存在下でメタンを反応させる方法が知られている。前記触媒としては例えば非特許文献1(JOURNAL OF CATALYSIS(1997))によるとZSM−5にモリブデンを担持したものが有効とされている。しかしながら、これらの触媒を使用した場合でも、炭素析出が多いことやメタンの転化率が低いという問題を有している。
そこで、モリブデン等を多孔質のメタロシリケートに担持してなる触媒が提案されている(例えば特許文献1(特開平10−272366号公報)及び特許文献2(特開平11−60514号公報))。これらの公報によると、担体として7オングストロームの細孔経を有する多孔質のメタロシリケートを採用し、これに触媒材料を担持している。この触媒を用いた実験によると、低級炭化水素が効率良く芳香族化され、これに付随して高純度の水素が得られることが確認されている。特に特許文献2においては、モリブデンのみばかりではなく第二成分としてモリブデン以外の金属類を添加することで前記触媒の特性を向上させたことが記載されている。
JOURNAL OF CATALYSIS,1997年,pp.165,pp.150−161 特開平10−272366号公報(段落番号(0008)〜(0013)及び(0019)) 特開平11−60514号公報(段落番号(0007)〜(0011)及び(0020))
しかしながら、今日においても、芳香族化合物及び水素の製造効率をさらに高めるために、なお一層優れた触媒の開発が望まれている。特に、天然ガス等のメタンを主成分とする低級炭化水素を用いて有用な化学原料であるベンゼン、ナフタレン等の芳香族化合物と水素ガスとを工業的に量産するうえで、芳香族化合物の生成速度の安定性と芳香族化合物の選択率の向上が望まれている。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、その目的は、低級炭化水素を改質及び芳香族化する際に芳香族化合物の生成速度の安定性を向上させると共に芳香族化合物の選択率を高めた低級炭化水素改質触媒の提供にある。
請求項1記載の発明は、低級炭化水素と水素とを含んだガスの反応空間速度が2700ml/g/h以上のもとで、当該ガスと反応させて芳香族化合物を生成する低級炭化水素改質触媒であって、メタロシリケートにモリブデンと白金とを担持してなることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の低級炭化水素改質触媒において、前記メタロシリケートはH型ZSM−5またはH型MCM−22からなることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の低級炭化水素改質触媒において、前記低級炭化水素と水素とを含んだガスの反応空間速度は、2700〜5400ml/g/hであることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の低級炭化水素改質触媒において、前記低級炭化水素と水素とを含んだガスは水素9%含んだことを特徴とする。
請求項1〜4記載の発明によれば、低級炭化水素を改質及び芳香族化する際に芳香族化合物の生成速度の安定性を向上させると共に芳香族化合物の選択率を高めることができる。特に、メタロシリケートにおいてモリブデンの他に白金を担持させると、芳香族化合物生成速度の安定性が顕著に高まることが確認されている。
また、請求項2記載の発明のように、H型MCM−22からなるメタロシリケートを用いると、芳香族化合物の選択性がさらに高まることが確認されている。
さらに、請求項4記載の発明のように、触媒と反応させる低級炭化水素と水素とを含んだガスには水素9%含まれていると、芳香族化合物生成速度の安定性と芳香族化合物の選択性がより一層高まることが確認されている。
本発明の請求項1〜4記載の低級炭化水素改質触媒によれば、低級炭化水素を改質及び芳香族化する際に芳香族化合物の生成速度の安定性を向上させると共に芳香族化合物の選択率を高めることができる。
本発明の発案にあたり、発明者らは低級炭化水素の低級炭化水素改質触媒の触媒活性を長時間安定化させるために前記改質触媒についてさまざまな検討を行ってきた。
例えば、ZSM系のゼオライト触媒においてモリブデンに加え第二金属成分として白金族の金属成分を担持したものが前記発明者らによって提案されている。また、第二金属成分を担持させたZSM系のゼオライト触媒と反応させる原料ガス中に水素ガスを併せて供給し、前記水素ガスを供給した状態のまま、前記原料ガスの供給を一定時間停止することにより、触媒活性の安定性させたものが提案されている。
前記ゼオライト触媒によって低級炭化水素からベンゼン等の芳香族類を工業的に量産するためには、さらなる芳香族類の生成速度の安定化と触媒活性の長時間維持が望まれる。
そこで、ゼオライト触媒に対する単位時間当たりのガス流通量を増加させる方法、すなわち空間速度(Space Velocity)を大きくさせる方法や、芳香族類の変換に際してもっとも望む生成物(例えば基礎化学製品として需要の大きなベンゼン)のみを高選択的に変換する触媒の組成、反応条件を最適化する方法によっても、芳香族類を高収率で生産できるものと考えられる。さらに、これらの方法を組み合わせれば芳香族の収量が増加することも考えられる。
これまでの提案では、モリブデンの他に第二金属成分を担持させたZSM系のゼオライト触媒と反応させる原料ガスに水素を定量的に供給することによって、触媒活性の長時間安定化が図られてきた。
芳香族類を工業的に量産するためには、下記の反応式の例から明らかなように、原料ガスである低級炭化水素を含んだガスへの水素の添加量を増やせば、反応平衡関係によって芳香族類、特にベンゼンの生成物選択率が向上することが理論的に推察できる。
6CH4 → C66(ベンゼン) + 9H2
10CH4 → C108(ナフタレン) + 16H2
このことは反応試験結果から確認され、水素添加量の増加につれて、ナフタレン等の高次芳香族類の選択率が減少し、ベンゼンの選択性が高まる傾向となった。
しかしながら、反応系の空間速度の値を増大させて、芳香族類の収量を増やそうとすると、触媒活性が短時間で低下する問題が生じた。
本発明の低級炭化水素改質触媒は、反応系の空間速度が増大しても、触媒活性が長時間安定すると共に特定の芳香族化合物の選択率が向上させたものである。
以下の実施例に基づき本発明の低級炭化水素改質触媒について説明する。
1.低級炭化水素改質触媒の製造
触媒の主成分であるメタロシリケートにはアンモニウム型のゼオライト触媒(SiO2/Al23=25〜60)であるH型ZSM−5及びH型MCM−22を採用した。そして、このゼオライトに触媒金属を担持したゼオライト粉末を得、これを他の無機成分と有機バインダー等と共に混練して成形し、乾燥さらに焼成して低級炭化水素改質触媒(以下、触媒と称する)を得た。以下に比較例及び実施例に係る触媒の製造の各工程について説明する。
(比較例1)
比較例1の触媒はゼオライト触媒にH型ZSM−5が採用され、これにモリブデンのみを担持したものである。
(1)モリブデンの担持
先ず、蒸留水5リットルに7モリブデン酸アンモニウム6水和物522g(モリブデン含有量300g)を溶かし含浸水溶液を調製した。次に、この調製した含浸水溶液を高速攪拌機で攪拌しながら、前記ゼオライト5kgを加えて3時間攪拌した。そして、この攪拌物を70〜100℃で乾燥、蒸発乾固した後、この乾燥物を空気中で550℃、5時間焼成して、ゼオライトに対して6重量%モリブデンを担持したゼオライト粉末を得た。
(2)触媒構成成分の配合
無機成分の配合:モリブデン担持ゼオライト(82.5重量%)、粘土(10.5重量%)、ガラス繊維(7重量%) 全体配合:前記無機成分(65.4重量%)、有機バインダー(13.6重量%)、ポリマービーズ(松本油脂製薬製F−80E;平均粒径90〜110μm,真比重0.0025)(5.0重量%)、水分(21重量%)
(3)触媒の成型
前記配合比率で前記無機成分、有機バインダー、ポリマービーズ及び水分を配合し混練手段(ニーダ)によって混合、混練した。次に、この混合体を真空押し出し成型機によって棒状(径5mm)に成型した。このときの成型時の押し出し圧力は70〜100kg/cm2に設定した。
(4)触媒の乾燥、焼成
乾燥工程では成型時に添加した水分を除去するために100℃で約5時間行なった。焼成工程における昇温速度及び降温速度は30〜50℃/時に設定した。このとき、成型時に添加したポリマービーズが瞬時に燃焼しないように、120〜150℃で2時間保持し、その後、有機バインダーも瞬時に燃焼しないように250〜450℃の温度範囲の中に2〜5時間程度の温度キープを2回実施し、バインダーを除去した。これは昇温速度及び降温速度が前記速度以上であってバインダーを除去するキープ時間を確保しない場合にはバインダーが瞬時に燃焼して焼成体の強度が低下するためである。
(5)炭化処理
上記の方法にて製造した触媒を空気雰囲気のもと550℃まで昇温させ、この状態を1時間維持させた後、雰囲気をCH4+4H2の反応ガスに切り替え、700℃まで昇温させ、この状態を6時間以上維持した。
(実施例1)
実施例1の触媒は、H型ZSM−5にモリブデンとロジウムとを担持したもので、担持工程以外は比較例1の触媒の製造工程と同じ方法で製造した。
担持工程では、塩化ロジウムが添加されたモリブデン酸アンモニウム水溶液を用い、モリブデン担持量は焼結体重量に対して6重量%、ロジウム担持量はモリブデンとのモル比でロジウム:モリブデン=0.2:1.0とした。
(実施例2)
実施例2の触媒は、H型ZSM−5にモリブデンと白金とを担持したもので、以下の方法で製造した。
(1)モリブデンおよび白金族成分の担持
蒸留水5リットルに7モリブデン酸アンモニウム6水和物522g(モリブデン含有量300g)と塩化白金酸水和物(白金40重量%含有)305g(白金含有量122g)を溶かして混合し、含浸水溶液を調製した。次にこの調製した含浸水溶液を攪拌しながらゼオライト5kgを加えて3時間攪拌した。この攪拌物を乾燥し水分を除去した後、空気中で550℃のもと10時間焼成してゼオライトに対してモリブデンを6重量%、白金はモリブデンとのモル比で白金:モリブデン0.2:1.0としたモリブデンと白金を担持した金属担持ゼオライト粉末を得た。
(2)触媒構成成分の配合
触媒の構成成分とその配合比率を以下に示した。
無機成分:有機バインダー:ポリマービーズ:水分=65.4:13.6:5.0:21.0
また、無機成分の構成成分とその配合比率を以下に示した。
金属担持ゼオライト:粘土:ガラス繊維=82.5:10.5:7.0
無機成分と有機バインダーと水分とを前記比率で配合し、ニーダ等の混練手段によって混練した。次いで、この混合体を真空押し出し成型機によって棒状(径5mm)に成型したこのときの成型圧力は70〜100kg/cm2とした。そしてこの押出成型で得られた径5mmの棒状担体を10mmに切断して成型体を得た。
(3)触媒の乾燥、焼成
乾燥工程では成型時に添加した水分を除去するために100℃で約12時間行った。また焼成温度は、600℃から700℃の範囲とした。焼成工程における昇温速度および降温速度は、30〜50℃に設定した。このとき添加したポリマービーズが瞬時に焼成しないように120℃〜150℃で2時間保持し、その後、有機バインダーも瞬時に燃焼しないように250〜450℃の温度範囲の中に2〜5時間程度の温度保持を2回実施し、バインダーを除去した。これは昇温速度および降温速度が前記速度以上であって、バインダーを除去する保持時間を確保しない場合にはバインダーが瞬時に燃焼して焼成体の強度が低下するためである。以上の操作によってモリブデンと白金族成分が担持された発泡状の触媒を得た。
(4)炭化処理
上記の方法にて製造した触媒を空気雰囲気のもと550℃まで昇温させ、この状態を1時間維持させた後、雰囲気をCH4+4H2の反応ガスに切り替え、700℃まで昇温させ、この状態を6時間以上維持した。
(比較例2)
比較例2の触媒はゼオライトにH型MCM−22が採用され、これにモリブデンのみが担持されて得られたものであり、H型ZSM−5の代わりにH型MCM−22が採用されたこと以外、比較例1と構成成分の配合及び製造工程等は同じである。
(実施例3)
実施例3の触媒は、H型MCM−22にモリブデンとロジウムとを担持したもので、H型ZSM−5の代わりにH型MCM−22が採用されたこと以外、実施例1と触媒構成成分の配合及び製造工程等は同じである。
(実施例4)
実施例4の触媒は、H型MCM−22にモリブデンと白金とを担持したもので、H型ZSM−5の代わりにH型MCM−22が採用されたこと以外、実施例2と触媒構成成分の配合及び製造工程等は同じである。
2.比較例及び実施例の触媒の評価
比較例及び実施例の触媒の評価法について述べる。
固定床流通式反応装置のインコネル800H接ガス部カロライジング処理製反応管(内径18mm)に評価対象の触媒を14g充填(ゼオライト率82.50%)した。そして、これにメタンと水素とを含んだ混合ガス(メタン+10%アルゴン+4〜12%水素)を供給して、反応空間速度=2700〜5400ml/g−MFI/h(CH4gas flow base)、反応温度750℃、反応時間10時間、反応圧力0.3MPaの条件で、触媒と混合ガスとを反応させた。この際、生成物分析を行うと共に芳香族化合物(ベンゼン)が生成する速度を経時的に調べた。生成物分析はTCD−GC、FID−GCを用いて行った。
表1は比較例1、実施例1、実施例2、比較例2、実施例3及び実施例4の触媒活性挙動を比較したものである。比較例1、実施例1及び実施例2の生成物選択率(Hydrocarbon selectivity)は6%水素を含んだ混合ガスとの反応を開始してから3時間後の値である。比較例2、実施例3及び実施例4の生成物選択率は9%水素を含んだ混合ガスとの反応を開始して3時間後の値である。いずれの反応条件も反応空間速度=2700ml/g/hとした。
Figure 0004790356
表1に示された結果から明らかなように、H型ZSM−5系のゼオライトにおいてモリブデンに加え第二金属成分として白金またはロジウムを担持させれば、第2金属成分を担持しない場合に比べ、ナフタレンの選択率が減少し、ベンゼンの選択率が向上することが確認できる。同様に、H型MCM−22系のゼオライトにおいて、モリブデンに加え第二金属成分として白金またはロジウムを担持させれば、第2金属成分を担持しない場合に比べ、ナフタレンの生成を抑制すると共に、ベンゼンの選択率が向上することが確認できる。
図1は比較例1、実施例1、実施例2の触媒を反応空間速度=2700ml/g/hの反応条件のもとで6%水素を含んだ混合ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図である。
この特性図から明らかなように、H型ZSM−5系のゼオライトにおいてモリブデンに加え第二金属成分として白金またはロジウムを担持させれば、第2金属成分を担持しない場合に比べ、ベンゼンの生成速度が長時間安定することが確認できる。特に、第二金属成分として白金を担持させると、ベンゼン生成速度が一層高くなると共に触媒活性もより一層安定することが確認できる。
図2は比較例1、実施例1、実施例2の触媒を反応空間速度=5400ml/g/hの反応条件のもとで6%水素を含んだ混合ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図である。
この特性図から明らかなように、空間速度を上げた反応空間速度=5400ml/g/hの反応条件では、モリブデンに加え第二金属成分として白金を担持させたH型ZSM−5系のゼオライトによる反応の安定化効果が顕著に発現することが確認できる。
表2は反応条件が反応空間速度=5400ml/g/hである場合の比較例1、実施例1、実施例2、比較例2、実施例3及び実施例4の触媒活性挙動を比較したものである。表2において、比較例1、実施例1及び実施例2の生成物選択率(Hydrocarbon selectivity)は6%水素を含んだ混合ガスとの反応を開始してから3時間後の値である。比較例2、実施例3及び実施例4の生成物選択率は9%水素を含んだ混合ガスとの反応を開始して3時間後の値である。
Figure 0004790356
表2に示された結果から明らかなように、H型ZSM−5系のゼオライトにおいてモリブデンに加え第二金属成分として白金またはロジウムを担持させれば、反応空間速度=5400mlの反応条件においても、ナフタレンの選択率が減少し、ベンゼンの選択率が向上することが確認できる。また、H型MCM−22系のゼオライトにおいて、モリブデンに加え第二金属成分として白金またはロジウムを担持させれば、ナフタレンの生成を抑制すると共に、C2化合物及びベンゼンの選択率が向上することが確認できる。
表3は反応条件が反応空間速度=2700ml/g/hである場合の比較例1の触媒活性挙動を示したものである。比較例1の生成物選択率(炭化水素選択率)は9%水素を含んだ混合ガスとの反応を開始して3時間後の値である。表3に示された生成物選択率(炭化水素選択率)の値と表1に示された比較例1の生成物選択率の値との比較から明らかなように、反応空間速度=2700ml/g/hの反応条件でモリブデンが担持されたH型ZSM−5系のゼオライトを9%水素含有混合ガスと反応させると、ナフタレンの選択率が減少し、ベンゼンの選択率が高くなることが確認できる。
Figure 0004790356
また、モリブデンが担持されたH型MCM−22系のゼオライトについても、水素9%含有の混合ガスと反応させると、表3の結果と同様に、ベンゼンの選択率がより一層高まることが確認された。
図3は比較例2、実施例3、実施例4の触媒を反応空間速度=2700ml/g/hの反応条件のもとで9%水素を含んだ混合ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図である。
この特性図から明らかなように、H型MCM−22系のゼオライトにおいてモリブデンに加え第二金属成分として白金またはロジウムを担持させれば、第2金属成分を担持しない場合に比べ、初期ベンゼン生成速度が若干減少したが、長期的にはベンゼン生成速度が安定することが確認できる。特に、第二金属成分として白金を担持させると、ベンゼン生成速度が一層高くなると共に触媒活性もより一層安定することが確認できる。
また、図4は比較例2、実施例3、実施例4の触媒を反応空間速度=5400ml/g/hの反応条件のもとで9%水素を含んだ混合ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図である。
この特性図から明らかなように、反応空間速度=5400ml/g/hの反応条件では、モリブデンに加え第二金属成分として白金を担持させたH型MCM−22系のゼオライトによる反応の安定化効果が顕著に発現することが確認できる。
図5は反応空間速度=2700ml/g/h,5400ml/g/hの反応条件のもとで比較例2、実施例3、実施例4の触媒を9%水素含有混合ガスと50時間反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図である。
この特性図から明らかなように、H型MCM−22系のゼオライトにおいてモリブデンに加え第二金属成分として白金を担持させると、反応系の空間速度が増大(2700ml/g/hから5400ml/g/hまで増加)しても、ベンゼンの選択率が向上すると共に触媒活性が長時間安定することが確認できる。
以上のように、低級炭化水素と水素とを含んだガスと反応させて芳香族化合物を生成する低級炭化水素改質触媒において、ZSM系またはMCM系のメタロシリケートにモリブデンの他に第二金属成分として白金またはモリブデンを担持することで、低級炭化水素を改質及び芳香族化する際に芳香族化合物の生成速度の安定性が向上すると共に芳香族化合物の選択率を高まることが示された。
特に、前記メタロシリケートにおいて第二金属成分として白金を担持させると、反応系の空間速度が増大しても、芳香族化合物生成速度の安定性と芳香族化合物の選択性が顕著に高まることが示された。
また、MCM系より具体的にはH型MCM−22からなるメタロシリケートを用いると、芳香族化合物の選択性がさらに高まることが示された。
さらに、前記触媒と反応させる低級炭化水素と水素とを含んだガスには水素9%含まれていると、芳香族化合物生成速度の安定性と芳香族化合物の選択性がより一層高まることが示された。
前記メタロシリケートとしては、アルミノシリケートの場合、シリカおよびアルミナから成る4.5〜6.5オングストローム径の細孔を有する多孔質体であればよい。したがって、モリブデンに加えて前記第二金属成分を担持させることは、ZSM系やMCM系のメタシリケートの他に、モレキュラーシーブ5A,フォジャサイト(NaYおよびNaX)等にも有効である。さらに、リン酸を主成分とするALPO−5,VPI−5等の6〜13オングストロームのミクロ細孔からなる多孔質体、チャンネルからなるゼオライト担体、シリカを主成分とし一部アルミナを成分として含むメゾ細孔(10〜1000オングストローム)の筒状細孔(チャンネル)を有するFSM−16やMCM−41等にも有効である。また、前記アルミナシリケートの他に、シリカおよびチタニアからなるメタロシリケート等にも有効である。
そして、上記材料を配合してからの成形にあたっては高圧成形法を採用している。炭化水素を改質するための触媒担体は数μmから数百μmの粒径の粒子を用いて流動床触媒の形態で使用することが通常である。かかる触媒は触媒担体を有機バインダー、無機バインダー及び水と混合してスラリー状としてスプレードライヤーで造粒成形した後に焼成するのが常套の手段である。この場合、成形圧力が小さいため、焼成強度を確保するために焼成助材として加える粘土の添加量は40〜60重量%程度必要になる。本発明の触媒の製造過程における成形工程では高圧成形法を採用することで、粘土等の無機バインダーの添加量を触媒において15〜25重量%までに低減、すなわち触媒におけるメタロシリケート成分を75〜85重量%までに高めることができ、スプレードライヤーで造粒成形して得た触媒よりも、実質的な触媒活性が高くなる。高圧成形法の具体的な手段として例えば真空押し出し成形機等がある。また、このときの押し出し圧力は70〜100kg/cm2の範囲で設定するとよい。尚、成形体の形状は、触媒の使用形態に応じて、粉末状または棒状の他、中空円柱状、ペレット状、ハニカム状、リング形状若しくはその他の形状に形成される。また、成形時にポリマービーズを添加した後に焼成させると、触媒の中央細孔直径、気孔率が向上するので、触媒活性を高めることができる。
以上のようにして製造された低級炭化水素改質触媒は反応装置に充填され、そして、この反応装置に低級炭化水素と水素とを含んだガスが一定の空間速度の条件で供されることにより、芳香族化合物が製造される。前記低級炭化水素としてはメタンの他、エタン、エチレン、プロパン、プロプレン、n‐ブタン、イソブタン、n−ブテン及びイソブテン等が例示される。
尚、図5に示された特性図によると、反応時間が30時間を経過すると、触媒の活性が低下する傾向にある。この場合、実施例3及び実施例4においては、前記低級炭化水素のみの供給を一定時間停止し、この時間帯の間、水素ガスのみを供給すれば、前記触媒が再賦活されるので、長時間安定した芳香族化合物の製造が可能となる。
比較例1、実施例1、実施例2の触媒を反応空間速度=2700ml/g/hの反応条件のもとで6%水素を含んだ混合ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図。 比較例1、実施例1、実施例2の触媒を反応空間速度=5400ml/g/hの反応条件のもとで6%水素を含んだ混合ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図。 比較例2、実施例3、実施例4の触媒を反応空間速度=2700ml/g/hの反応条件のもとで9%水素を含んだ混合ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図。 比較例2、実施例3、実施例4の触媒を反応空間速度=5400ml/g/hの反応条件のもとで9%水素を含んだ混合ガスと反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図。 反応空間速度=2700ml/g/h,5400ml/g/hの反応条件のもとで比較例2、実施例3、実施例4の触媒を9%水素含有混合ガスと50時間反応させた場合のベンゼン生成速度の経時的変化を示した特性図。

Claims (4)

  1. 低級炭化水素と水素とを含んだガスの反応空間速度が2700ml/g/h以上のもとで、当該ガスと反応させて芳香族化合物を生成する低級炭化水素改質触媒であって、
    メタロシリケートにモリブデンと白金とを担持してなること
    を特徴とする低級炭化水素改質触媒。
  2. 前記メタロシリケートはH型ZSM−5またはH型MCM−22からなることを特徴とする請求項1記載の低級炭化水素改質触媒。
  3. 前記低級炭化水素と水素とを含んだガスの反応空間速度は、2700〜5400ml/g/hであること
    を特徴とする請求項1または2に記載の低級炭化水素改質触媒。
  4. 前記低級炭化水素と水素とを含んだガスは水素9%含んだこと
    を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の低級炭化水素改質触媒。
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