JP4790259B2 - 汚れ防止剤及び汚れ防止方法 - Google Patents

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本発明は、(1)炭素数3〜4のモノオレフィン又はアルコールの気相接触酸化によるアクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸等の製造において、並びに(2)アンモニアの存在下、炭素数3〜4のモノオレフィンの気相接触酸化によるアクリロニトリル等の製造において、気相接触酸化後の水系溶媒による回収工程の汚れ防止剤及び汚れ防止方法に関する。
一般にアクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸等は、プロペン、イソブテン、第3級ブチルアルコール(以下、「tert−ブタノール」と記す)などを触媒存在下、気相接触酸化して得られる。また、アクリロニトリル等はプロペン、イソブテンなどをアンモニアの存在下、気相接触酸化して得られる。例えば、メタクリル酸はイソブテン、第3級ブチルアルコール、メタクロレイン等を気相接触酸化し、得られた反応生成ガスを水系溶媒による冷却、凝縮(例えば急冷塔における水系溶媒との接触)による目的物の回収工程、さらに得られたメタクリル酸水溶液からギ酸、ホルムアルデヒド、アセトン等の低沸物を除去した後、抽出塔においてメタクリル酸水溶液に抽出溶剤を接触させるメタクリル酸の抽出工程、蒸留により抽出溶剤とメタクリル酸を分離する蒸留精製工程等によって製造される。これらのメタクリル酸製造工程の中で、反応生成ガスを水系溶媒で冷却、凝縮させる急冷塔内では、該反応生成ガスと接触させた後の急冷塔内の水系溶媒中には、反応過程で副生する種々の不純物が存在する。不純物としては、具体的には、ホルマリン、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、トルイル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのカルボン酸類、さらにこれらの付加物あるいは付加重合物、タール状物質などが知られている(例えば、特許文献1参照)。これらの不純物の中で水系媒体への溶解度が低いものは、急冷塔内壁や冷却塔で使用する水系溶媒循環配管等に付着し、汚れとなる(以下、「汚れ物質」とする)。この汚れ物質は、重合性に富むメタクロレインやメタクリル酸を含むことが多いため、これらのメタクロレインやメタクリル酸は汚れ物質内部で容易に重合を起こし、汚れを助長される場合がある。また、一般的には急冷塔に使用される水系媒体は循環再利用される場合が多く、この汚れは少量でも、長期間連続運転を行うと、急冷塔内壁、急冷塔水系溶媒循環配管の汚れが蓄積し、急冷塔の内部容量の低下、急冷塔水系溶媒循環配管の流量低下および閉塞等で目的とする流量が維持できなくなるほか、急冷水循環ポンプのポンプストレーナーを閉塞させ、安定操業に支障を来すようになる。
これらの汚れ防止方法として、タール分を活性炭あるいはイオン交換樹脂により除去する方法(例えば、特許文献2参照)、反応生成ガスを水系媒体で冷却する際に疎水性溶剤を共存させて汚れを溶解・吸収する方法(例えば、特許文献3参照)、アルカリ金属等の塩基性物質を添加する方法(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。しかし、これらの方法は急冷塔を対象とした汚れ防止方法としては十分でなく、依然として定期的に人力による汚れの除去作業を行わざるを得ず、作業上の安全性の向上、操業の安定化のためにかかる工程での汚れ防止方法が強く求められていた。
特開昭62−438号公報 特開昭50−52021号公報 特開昭50−151805号公報 特開昭58−99434号公報
本発明は、(1)炭素数3〜4の炭化水素又はアルコールの触媒存在下で気相接触酸化による不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造において、および(2)炭素数3〜4のモノオレフィンのアンモニアの存在下で気相接触酸化による不飽和ニトリル化合物の製造において、気相接触酸化後の反応生成物の水系溶媒による回収工程での汚れ防止剤及びこれを用いた汚れ防止方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、(1)プロペン、イソブテン、tert−ブタノールなどの気相接触酸化によるアクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸等の製造において、もしくは(2)プロペン、イソブテンなどのアンモニアの存在下で気相接触酸化によるアクリロニトリル等の製造において、気相接触酸化した後、反応生成ガスを水系溶媒による回収工程にメラミン樹脂酸コロイド及び/又はメラミン−尿素樹脂酸コロイドを用いることにより、当該反応生成ガスに含まれる汚れ物質の工程内装置の内壁、配管等への汚れ物質の付着防止効果が奏することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下の内容を包含するものである。
本発明の第1は、(1)炭素数3〜4のモノオレフィン又はアルコールを気相接触酸化させて得られた反応生成ガスを水系媒体に接触させて不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を抽出、分離する回収工程で用いられる汚れ防止剤、もしくは(2)炭素数3〜4のモノオレフィンをアンモニアの存在下に気相接触酸化させて得られた反応生成ガスを水系媒体に接触させて不飽和ニトリル化合物を抽出、分離する回収工程で用いられる汚れ防止剤であって、当該反応生成ガス中に含まれる副生成物由来の汚れの粘着性を軽減する作用を有し、水系媒体に添加するための、メラミン樹脂酸コロイド及びメラミン−尿素樹脂酸コロイドのうちの少なくとも1種を有効成分として含むことを特徴とする汚れ防止剤である。
第2は、メラミン樹脂酸コロイドが、メラミン1モルに対してアルデヒドが1〜6モル結合したメチロールメラミン樹脂、メラミンに対する酸のモル比が0.3〜1.5の値になる相当量の酸からなる第1の汚れ防止剤である。
第3は、メラミン−尿素樹脂酸コロイドが、メラミンと尿素の合計に対して尿素を90モル%以下で含み、メラミンと尿素の合計とアルデヒドがモル比1:1〜1:6で結合したメチロールメラミン−尿素樹脂、メラミンと尿素の合計に対する酸のモル比が0.3〜1.5の値になる相当量の酸からなる第1の汚れ防止剤である。
第4は、酸が塩酸又は乳酸である第1乃至3のいずれかの汚れ防止剤である。
第5は、炭素数3〜4のモノオレフィンが、プロペン又はイソブテンである第1乃至4のいずれかの汚れ防止剤である。
第6は、アルコールが、tert−ブタノールである第1乃至4のいずれかの汚れ防止剤である。
第7は、不飽和アルデヒドがアクロレイン又はメタクロレイン、不飽和カルボン酸が第1乃至6のいずれかの汚れ防止剤である。
第8は、(1)炭素数3〜4のモノオレフィン又はアルコールを気相接触酸化させて得られた反応生成ガスを水系媒体に接触させて不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を抽出、分離する回収工程を含む不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造法において、もしくは(2)炭素数3〜4のモノオレフィンをアンモニアの存在下に気相接触酸化させて得られた反応生成ガスを水系媒体に接触させて不飽和ニトリル化合物を抽出、分離する回収工程を含む不飽和ニトリル化合物の製造法において、水系媒体にメラミン樹脂酸コロイド及びメラミン−尿素樹脂酸コロイドのうちの少なくとも1種を添加することを特徴とする回収工程における汚れ防止方法である。
第9は、メラミン樹脂酸コロイドが、メラミン1モルに対してアルデヒドが1〜6モル結合したメチロールメラミン樹脂と、メラミンに対する酸のモル比が0.3〜1.5の値になる相当量の酸からなる第8の汚れ防止方法である。
第10は、メラミン−尿素樹脂酸コロイドが、メラミンと尿素の合計に対して尿素を90モル%以下で含み、メラミンと尿素の合計とアルデヒドがモル比1:1〜1:6で結合したメチロールメラミン−尿素樹脂と、メラミンと尿素の合計に対する酸のモル比が0.3〜1.5の値になる相当量の酸からなる第8の汚れ防止方法である
第11は、酸が塩酸又は乳酸である第9乃至10のいずれかの汚れ防止方法である。
第12は、炭素数3〜4のモノオレフィンが、プロペン又はイソブテンである第8乃至11のいずれかの汚れ防止方法である。
第13は、炭素数3〜4のアルコールが、tert−ブタノールである第8乃至11のいずれかの汚れ防止方法である。
第14は、不飽和アルデヒドがアクロレイン又はメタクロレイン、不飽和カルボン酸がアクリル酸又はメタクリル酸、そして不飽和ニトリル化合物がアクリロニトリル又はメタクリロニトリルである第8乃至13のいずれかの汚れ防止方法である。
本発明の方法により、(1)プロペン、イソブテン、tert−ブタノール等の気相接触酸化によるアクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造において、並びに(2)アンモニアの存在下、プロペン、イソブテン等の気相接触酸化によるアクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物の製造において、気相接触酸化後の反応生成ガスの水系溶媒による回収工程での汚れ物質の付着を著しく軽減できることが可能になり、安定な長期操業が実現できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、(1)炭素数3〜4の炭化水素又はアルコールを触媒存在下、気相接触酸化による不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造において、もしくは(2)炭素数3〜4の炭化水素をアンモニアの存在下、気相接触酸化によるアクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物の製造において、気相接触酸化し、得られた反応生成ガスを水系溶媒と接触させて目的とする不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸、もしくは不飽和ニトリル化合物を抽出、分離する回収工程に、特定のメラミン樹脂酸コロイド及び/又はメラミン−尿素樹脂酸コロイドを水系溶媒に存在させることにより、当該反応生成ガスに含まれる反応副生成物由来の汚れの粘着性を低減させ、回収工程での汚れの付着防止に有効な汚れ防止剤及びこれを用いる回収工程での汚れ防止方法である。
本発明において、出発原料として用いられる適当な炭素数3〜4のモノオレフィンの例は、プロペン、イソブテンである。また、炭素数3〜4のアルコールは、イソプロパノール、2−メチルプロパノール、tert−ブタノールである。中でも、好ましくはプロペン、イソブテン、tert−ブタノールである。
本発明において、目的物である不飽和カルボニル化合物はアクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸およびアクロレイン、メタクロレインなどの不飽和アルデヒドであり、そして不飽和ニトリル化合物はアクリロニトリル及びメタクリロニトリルである。
本発明の炭素数3〜4のモノオレフィン又はアルコールの気相接触酸化により得られる不飽和カルボニル化合物および不飽和ニトリル化合物は、具体的にはプロペンの気相接触酸化によりアクリル酸、アクロレイン、アクリロニトロルが得られ、イソブテンあるいはtert−ブタノールの気相接触酸化によりメタクロレイン、メタクリル酸が得られる。
本発明における気相接触酸化は、特に限定されるものではないが、通常、モリブデン−ビスマス系酸化物触媒などの気相酸化触媒を用い、炭素数3〜4のモノオレフィン又はアルコールを高温で加熱した気相酸化触媒上を接触させて反応させ、目的とする不飽和カルボニル化合物および不飽和ニトリル化合物を得る。反応温度は、用いる炭素数3〜4のモノオレフィン又はアルコールと目的とする不飽和カルボニル化合物および不飽和ニトリル化合物を考慮して、適宜選択されれば良いが、通常、約250〜400℃の範囲である。気相接触酸化の後、反応生成物は目的とする不飽和カルボニル化合物および不飽和ニトリル化合物の回収工程に送られる。
本発明における不飽和カルボニル化合物および不飽和ニトリル化合物の回収工程は、気相接触酸化された高温の反応生成物と水系溶媒を冷却塔(あるいは急冷塔)において接触させて、反応生成物中の目的とする不飽和カルボニル化合物および不飽和ニトリル化合物を水系溶媒中に回収する工程である。水系溶媒は、通常、冷却塔上部から常温でスプレーにより冷却塔の下方より導入した反応生成物と接触させて冷却する。水系溶媒としては、水あるいは水と水溶性低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等がある。)の混合液が用いられ、通常、該水系溶媒は冷却塔内で循環使用されている。
気相接触酸化により得られた反応生成物には、通常、ホルマリン、アセトン、アセトアルデヒドなどのアルデヒド・ケトン類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、安息香酸、トルイル酸、マレイン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのカルボン酸類、さらにこれらの種々の付加物あるいは付加重合物、タール状物質等が含まれることが知られ、特に親油性あるいは難水性の付加重合物やタール状物質は多くの場合に粘着性があり、回収工程の冷却塔内の内面および水系溶媒循環配管や循環ポンプ内に付着、蓄積する傾向が高いが、本発明はこれら汚れ物質の粘着性を不粘着化ないしは著しく軽減化し得るものである。
水系溶媒は、冷却塔上部からスプレーされて、高温の反応生成物と接触するために冷却塔内では水系溶媒のミストが充満し、汚れの付着は広範囲に及ぶ。そのために通常、接触酸化生成物であるアクリル酸、メタクリル酸、アクロレイン、メタクロレイン、アクリロニトロルやその他の副生成物の重合を抑制・防止するために、水系溶媒には予め重合抑制剤が添加されている。具体的な重合抑制剤としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のピペリジン−1−オキシル類;2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、3−ヒドロキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル等の2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル類:ハイドロキノン、メトキノン等のキノン類;フェノチアジン、p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン等のアミン類などがあり、これらの1種以上を用いることができる。重合抑制剤の添加量は回収工程の運転状況と水系溶剤の循環量を考慮して適宜決定されるが、通常、水系溶剤に対して1〜1,000ppm添加される。
本発明で用いるメラミン樹脂酸コロイド又はメラミン−尿素樹脂酸コロイドは、メラミン又はメラミン−尿素と炭素数1〜3のアルデヒドが結合したメチロールメラミンと酸からなるメラミン樹脂酸コロイド又はメチロールメラミン−尿素と酸からなるメラミン−尿素樹脂酸コロイドである。また、メチロールメラミン又はメチロールメラミン−尿素を低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等)でエーテル化したアルキルエーテル化メチロールメラミン又はエーテル化したアルキルエーテル化メチロールメラミン−尿素もこれに包含される。
メラミン樹脂酸コロイドのメラミン樹脂は、メラミンとアルデヒドから得られる縮合体である。メラミン樹脂におけるメラミンとアルデヒドの比率は、通常、モル比で1:1〜1:、好ましくは1:2.5〜1:5である。アルデヒドの比率がこの範囲より少ないと安定なメラミン樹脂酸コロイドが得られない場合がある。また、アルデヒドの比率がこの範囲を超えると未反応の刺激性を有するアルデヒドが多く残存するようになり作業環境上、好ましくない場合がある。
一方、メラミン−尿素樹脂酸コロイドのメラミン−尿素樹脂は、メラミンと尿素とアルデヒドから得られる縮合体である。メラミン−尿素樹脂における尿素の比率は、通常、メラミンと尿素の合計に対して90モル%以下、好ましくは50モル%以下、より好ましくは25モル%以下である。メラミン−尿素樹脂における尿素の比率が、90モル%を超えると安定な酸コロイドが得られなかったり、本発明の効果が得られなかったりする場合がある。また、メラミン−尿素樹脂におけるアルデヒドの比率は、メラミンと尿素の合計に対してモル比で1:1〜1:、好ましくは1:2.5〜1:5である。アルデヒドの比率がこの範囲より少ないと安定なメラミン−尿素樹脂酸コロイドが得られない場合があり、アルデヒドの比率がこの範囲を超えると未反応の刺激性を有するアルデヒドが多く残存するようになり作業環境上、好ましくない場合がある。
メラミン樹脂およびメラミン−尿素樹脂に使用する炭素数1〜3のアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドおよびホルムアルデヒドの3量体であるパラホルムアルデヒドがあり、好ましくはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドである。
メラミン樹脂酸コロイドおよびメラミン−尿素樹脂酸コロイドに用いる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸等の有機酸などがある。中でも一塩基酸が好ましく、具体的には塩酸、乳酸があげられる。
メラミン樹脂酸およびメラミン−尿素樹脂酸の分子量は、特に限定されるものではないが、通常、400〜50,000であり、好ましくは500〜5,000である。
メラミン樹脂酸およびメラミン−尿素樹脂酸コロイドの製造は、特に限定されるものではなく、一般に行われているメラミン樹脂酸コロイドの調製方法により得られる。具体的には、メラミン樹脂酸コロイドを例に説明する。反応容器に所定量のメラミン、パラホルムアルデヒド、水を入れ、水酸化ナトリウムでpHを10に調整し、70℃に加温して約80分、撹拌して反応させてメチロールメラミンの懸濁液を得る。得られたメチロールメラミン懸濁液に所定量の塩酸を撹拌下、徐々に加え、半透明〜透明なメラミン樹脂酸コロイド液を得、常温下、2日静置して熟成し、メラミン酸コロイド液が得られる。また、アルキルエーテル化メチロールメラミンは水溶性であるため、これを所定量水に溶かし、撹拌下、所定量の塩酸を徐々に添加すれば、加水分解が起こりアルキルエーテル化メチロールメラミンはメチロールメラミンになり、さらにメチロールメラミン懸濁液を生じると同時に徐々に半透明〜透明なメラミン酸コロイド液が得られる。メラミン−尿素樹脂酸コロイドの製造は、上記のメラミン樹脂酸コロイドの製造において、メラミンをメラミンと尿素の混合物に置き換えることにより同様な方法で製造することができる。
メラミン樹脂酸およびメラミン−尿素樹脂酸コロイド液中の樹脂濃度は、通常、0.1〜20%であり、好ましくは1〜15%、より好ましくは4〜10%である。
メラミン樹脂酸あるいはメラミン−尿素樹脂酸コロイド液の熟成期間は、メラミン樹脂酸あるいはメラミン−尿素樹脂酸コロイド液の固形分濃度、メラミン樹脂あるいはメラミン−尿素樹脂の組成、使用した酸の種類により異なり一律に決定できないが、通常、常温下であれば2日〜30日、50℃であれば2〜5時間が目安となる。
本発明においてメラミン樹脂酸およびメラミン−尿素樹脂酸コロイドは、通常、汚れが付着し易い回収工程の冷却塔塔底部や回収工程の冷却塔内を循環する水系溶媒に添加され、回収工程の運転状況に応じて連続添加あるいは間歇添加される。添加方法は、一般に薬液注入ポンプを用いて冷却塔塔底部や水系溶媒の循環ラインあるいはスプレーラインに注入される。
本発明におけるメラミン樹脂酸あるいはメラミン−尿素樹脂酸コロイドの添加量は、回収工程の運転状況、反応生成物温度、反応生成物組成、汚れの程度、水系溶媒の水温、水系溶媒の回収工程内の循環水量等を考慮して適宜決定されれば良いが、一般に水系溶媒の供給液に対してメラミン樹脂酸あるいはメラミン−尿素樹脂酸コロイド液のメラミン樹脂分あるいはメラミン−尿素樹脂分として1ppm〜1,000ppm、好ましくは5ppm〜100ppmさらに好ましくは10ppm〜50ppmである。添加量がこの範囲より少ないと本発明の効果が得られない場合があり、また、添加量がこの範囲を超えて添加しても、添加量に見合うだけの効果の向上が得られず、経済的に好ましくない場合がある。
具体的に図1を参照して、イソブテンの気相接触酸化によるメタクリル酸の製造においてメラミン−尿素樹脂酸コロイドを用いた例で本発明を説明する。イソブテンを触媒存在下の接触酸化反応器にて酸化反応させ、生じた反応生成ガス1は反応生成ガスライン2を通り、回収工程の急冷塔3の塔底付近に導入される。回収工程の急冷塔3の塔内では循環ポンプ4によって、反応生成ガス1中のメタクリル酸の重合を抑制するために予め重合抑制剤を重合抑制剤注入ライン12を通して添加した後、水系溶剤をスプレー状に散水し、急冷塔下方から導入された反応生成ガスを目的温度(60〜90℃以下)まで冷却する。反応生成ガス1中の重合性不純物あるいはメタクリル酸は、水系溶剤とともに塔底に滞留し、水系溶剤の一部はフィルターを通り、循環ポンプ4によって再度、スプレー状に散水され、反応生成ガス1の冷却が行われる。メラミン−尿素樹脂酸コロイド7は、その注入ポンプ8および注入ライン9によって重合性不純物あるいはメタクリル酸の重合に由来する汚れが付着し易い塔底に添加される。また、急冷塔下方から導入された反応生成ガス1と水系溶剤の接触によって飛散した重合性不純物あるいはメタクリル酸が塔内壁面に付着し汚れとなるために、メラミン−尿素樹脂酸コロイド7を水系溶剤の循環ポンプ4手前の注入ライン13でも注入し、急冷塔冷却段に添加される。
以下、製造例および実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(メラミン樹脂酸コロイドの製造)
イオン交換水200mlにメラミン126g(1.0モル)とパラホルムアルデヒド60g(ホルムアルデヒドとして2モル)とを加え、水酸化ナトリウムでpHを10.0に調整し、70℃に加熱した。5分間、70℃で反応させた後、反応混合物を徐々に冷却してメラミン樹脂を析出させた。この析出物を濾別し、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥した。元素分析の結果、メラミンとホルムアルデヒドのモル比は、1:2.05であった。このメラミン樹脂7gと35重量%濃度の塩酸1.18gをイオン交換水91.82gに加え、室温で攪拌し、メラミン樹脂酸コロイド液(1)を得た。同様にして、メラミンとパラホルムアルデヒドのモル比をメラミン:ホルムアルデヒド=1:1.10としてメラミン樹脂酸コロイド液(2)を、メラミン:ホルムアルデヒド=1:4.01としてメラミン樹脂酸コロイド液(3)をそれぞれ得た。
(メラミン−尿素樹脂酸コロイドの製造)
前記メラミン樹脂酸コロイド液(3)の製造において、メラミンに代えて、メラミンと尿素をモル比で10:90の混合物として、イオン交換水200mlに加え、同様な手順でメラミン−尿素樹脂酸コロイド液(1)を得た。同様にして、メラミンと尿素をモル比で50:50の混合物からメラミン−尿素樹脂酸コロイド(2)、メラミンと尿素をモル比で75:25の混合物からメラミン−尿素樹脂酸コロイド(3)を得た。
(比較例2〜4で使用した分散剤)
・PAA:ポリアクリル酸系分散剤:「アロンT−50」〔商品名、東亞合成(株)製〕
(汚れ防止試験1)
蓋付きガラス瓶にプロペンの接触酸化によるアクリル酸製造における回収工程内の急冷塔の塔底液を500ml入れ、メラミン樹脂酸コロイド液(1)を所定量添加し、80℃に設定した恒温槽に浸漬させた。液温が80℃に上昇したのを確認した後、急冷塔の塔底から採取した汚れを1g添加し、攪拌した後、80℃に維持して18時間保持した。その後、ガラス瓶底部に付着する汚れの付着状況を下記のように目視評価した。
○:フロック状で粘着性がない。
△:少し粘着性あり
×:粘着性あり
さらにガラス瓶内の塔底液を捨て、付着した汚れをスパーテルでかきとり、105℃で乾燥した後、汚れ重量(g)を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004790259
(汚れ防止試験2)
イソブテン、窒素、酸素、炭酸ガスから成る混合ガス(イソブテン濃度:6.0体積%、イソブテンと酸素のモル比が1.8)を供給温度290℃、空間速度(SV)900hr−1、モリブデンービスマス含有複合酸化物触媒を用いた接触気相酸化反応塔によりメタクロレインを合成した後、反応生成ガス1を図1の急冷塔3(直径150mm、高さ8,000mm)に導入した。急冷塔の塔底部より反応生成ガス1を導入し、塔上部から水を100g/hrで連続的に供給し、メタクロレインの抽出、分離を行っていた。塔底液の蒸発残渣は平均10.0重量%で3日間連続運転すると、塔差圧が運転開始初期の0.011Mpaから3日間運転後には0.031Mpaまで上昇し、反応生成ガス1の供給が不安定となり、急冷塔内部に設置されている不規則充填物中の断面積比で約40%が茶褐色の汚れで閉塞しており、塔内壁の表面にも全体的に付着し、操業に支障を来していた。その改善策として、表2記載の汚れ防止剤を塔上部から供給する水に対して有効成分として50ppm添加し、効果を評価した。評価は、塔頂と反応生成ガス1の導入口である塔底との差圧、その上昇速度(Mpa/日)、不規則充填物の閉塞率(閉塞している断面積比率を目視で評価)、塔壁面の汚れについて評価し、差圧、その上昇速度(Mpa/日)、塔壁面の汚れは低い方が好ましく、不規則充填物の閉塞率(%)は10%以下が好ましい。「良好」を「○」、「好ましくない」を「×」として評価し、その結果を表2に示した。
Figure 0004790259
メタクリル酸の製造における回収工程の急冷塔の概略図である。
符号の説明
1:反応生成ガス
2:反応生成ガスライン
3:急冷塔
4:水系溶媒循環ポンプ
5:反応ガス排出ライン
6:反応ガス
7:汚れ防止剤
8:汚れ防止剤注入ポンプ
9、13:汚れ防止剤注入ライン
10:急冷塔排水ライン
11:急冷塔排水
12:重合抑制剤注入ライン
14:熱交換器

Claims (14)

  1. (1)炭素数3〜4のモノオレフィン又はアルコールを気相接触酸化させて得られた反応生成ガスを水系媒体に接触させて不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を抽出、分離する回収工程で用いられる汚れ防止剤、もしくは(2)炭素数3〜4のモノオレフィンをアンモニアの存在下に気相接触酸化させて得られた反応生成ガスを水系媒体に接触させて不飽和ニトリル化合物を抽出、分離する回収工程で用いられる汚れ防止剤であって、当該反応生成ガス中に含まれる副生成物由来の汚れの粘着性を軽減する作用を有し、水系媒体に添加するための、メラミン樹脂酸コロイド及びメラミン−尿素樹脂酸コロイドのうちの少なくとも1種を有効成分として含むことを特徴とする汚れ防止剤。
  2. メラミン樹脂酸コロイドが、メラミン1モルに対してアルデヒドが1〜6モル結合したメチロールメラミン樹脂と、メラミンに対する酸のモル比が0.3〜1.5の値になる相当量の酸からなる請求項1記載の汚れ防止剤。
  3. メラミン−尿素樹脂酸コロイドが、メラミンと尿素の合計に対して尿素を90モル%以下で含み、メラミンと尿素の合計とアルデヒドがモル比1:1〜1:6で結合したメチロールメラミン−尿素樹脂と、メラミンと尿素の合計に対する酸のモル比が0.3〜1.5の値になる相当量の酸からなる請求項1記載の汚れ防止剤。
  4. 酸が塩酸又は乳酸である請求項1乃至3のいずれか記載の汚れ防止剤。
  5. 炭素数3〜4のモノオレフィンが、プロペン又はイソブテンである請求項1乃至4のいずれか記載の汚れ防止剤。
  6. 炭素数3〜4のアルコールが、tert−ブタノールである請求項1乃至4のいずれか記載の汚れ防止剤。
  7. 不飽和アルデヒドがアクロレイン又はメタクロレイン、不飽和カルボン酸がアクリル酸又はメタクリル酸、そして不飽和ニトリル化合物がアクリロニトリル又はメタクリロニトリルである請求項1乃至6のいずれか記載の汚れ防止剤。
  8. (1)炭素数3〜4のモノオレフィン又はアルコールを気相接触酸化させて得られた反応生成ガスを水系媒体に接触させて不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を抽出、分離する回収工程を含む不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造法において、もしくは(2)炭素数3〜4のモノオレフィンをアンモニアの存在下に気相接触酸化させて得られた反応生成ガスを水系媒体に接触させて不飽和ニトリル化合物を抽出、分離する回収工程を含む不飽和ニトリル化合物の製造法において、水系媒体にメラミン樹脂酸コロイド及びメラミン−尿素樹脂酸コロイドのうちの少なくとも1種を添加することを特徴とする回収工程における汚れ防止方法。
  9. メラミン樹脂酸コロイドが、メラミン1モルに対してアルデヒドが1〜6モル結合したメチロールメラミン樹脂と、メラミンに対する酸のモル比が0.3〜1.5の値になる相当量の酸からなる請求項8記載の汚れ防止方法。
  10. メラミン−尿素樹脂酸コロイドが、メラミンと尿素の合計に対して尿素を90モル%以下で含み、メラミンと尿素の合計とアルデヒドがモル比1:1〜1:6で結合したメチロールメラミン−尿素樹脂と、メラミンと尿素の合計に対する酸のモル比が0.3〜1.5の値になる相当量の酸からなる請求項8記載の汚れ防止方法。
  11. 酸が塩酸又は乳酸である請求項9乃至10のいずれか記載の汚れ防止方法。
  12. 炭素数3〜4のモノオレフィンが、プロペン又はイソブテンである請求項8乃至11のいずれか記載の汚れ防止方法。
  13. 炭素数3〜4のアルコールが、tert−ブタノールである請求項8乃至11のいずれか記載の汚れ防止方法。
  14. 不飽和アルデヒドがアクロレイン又はメタクロレイン、不飽和カルボン酸がアクリル酸又はメタクリル酸、そして不飽和ニトリル化合物がアクリロニトリル又はメタクリロニトリルである請求項8乃至13のいずれか記載の汚れ防止方法。
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