JP4789095B2 - ウイルムス腫瘍遺伝子(wt1)に対する発現阻害物質を含んで成る固形腫瘍治療剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はウイルムス腫瘍遺伝子(WT1)に対する発現阻害物質を含んで成る、固形腫瘍治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ウイルムス(Wilms) 腫瘍は、染色体11p13に位置するウイルムス腫瘍遺伝子(WT1)の両対立遺伝子の不活性化により生ずる小児腎腫瘍である(Call KM et al., Cell 60:509, 1990)。WT1の非コード上流配列 (C.E.Camphellら、Oncogene 9:583-595, 1994)及びイントロンを含むコード領域(D.A.Haberら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 88:9618-9622, (1991))はすでに報告されており、腫瘍等の増殖及び分化に関与することが予想される(D.A.Haberら、前掲)。
【0003】
また、本発明者らは、WT1が白血病細胞の増殖に関与している(K. Inoue, et al., Blood, 84 (9) 3071-3079 (1994))ことから、WT1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体が白血病細胞の増殖を抑制・阻害することを見い出した(PCT特許公開WO96/38176)。しかしながら、WT1の発現阻害物質が固形腫瘍の増殖を抑制・阻害することは知られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明は、ウイルムス(Wilms) 腫瘍遺伝子(WT1)に対する発現阻害物質を含んで成る固形腫瘍の治療剤を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、WT1に対する発現阻害物質を含んで成る固形腫瘍治療剤を提供する。ここで、固形腫瘍とは、例えば胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌、胚細胞癌、肝癌、皮膚癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌等である。本発明で使用するWT1に対する発現阻害物質は、WT1の発現を阻害するものであれば何でもよく、たとえば、WT1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体、WT1に対して dominant negativeに働くWT1変異遺伝子および変異タンパク質、デコイ DNAなどの低分子阻害物質またはWT1に特異的に結合し転写活性を阻害するペプチドなどの低分子阻害物質など挙げられる。本発明で使用するアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、例えば、WT1の転写キャッピング部位に対するもの、翻訳開始領域に対するもの、エクソンに対するものまたはイントロンに対するものなどのWT1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体である。
【0006】
例えばWT1の転写キャッピング部位を含む領域のセンスDNA鎖の塩基配列は配列番号:9で表わされ、またWT1のコード領域のエクソン1〜10のセンスDNA鎖の塩基配列は配列番号:10〜19で表わされるが、本発明はこのようなWT1のセンスDNA鎖の塩基配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体を用いる。このアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、通常WT1のアンチセンスDNA鎖またはRNA鎖の連続した5〜50個、好ましくは、9〜30個の塩基またはWT1のDNA鎖またはRNA鎖に結合することができるものであれば、断続的または部分的に相補的な5〜70個、好ましくは、9〜50個の塩基から成るアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体である。
【0007】
転写キャッピング部位に対するものとしては、例えば次の塩基配列:5′-AGGGTCGAATGCGGTGGG -3′(配列番号:2)及び5′-TCAAATAAGAGGGGCCGG-3′(配列番号:4)などのものが挙げられる。また、翻訳開始領域に対するものとしては、翻訳開始コドンATG並びにその上流及び/又は下流を含む領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体が挙げられ、例えば次の塩基配列:5′-GTCGGAGCCCATTTGCTG-3′(配列番号:6)などが挙げられる。
【0008】
また、WT1のコード領域には10個のエクソンが含まれており、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、これらのエクソンのいずれかに含まれる配列に対するもの、又はスプライシング後に連続するいずれか2個のエクソンにわたる配列に対するものあるいは、連続するイントロンとエクソンにわたる配列に対するもの、全てのイントロン及び3′,5′側非コード領域の配列に対するものである。1例として、第6エクソンに対するものであり、次の塩基配列:5′-CGTTGTGTGGTTATCGCT-3′(配列番号:8)に対するものが挙げられる。
さらに、WT1のDNA鎖またはRNA鎖と断続的または部分的に相補的な塩基配列を有する本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は対応する領域については特に問わないが、これらの中には、WT1のDNA鎖またはRNA鎖を切断する機能を有するリボザイムのようなものも含まれる。
【0009】
本発明において使用されるアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体の構造は、化1に示したとおりであるが、Xは独立して酸素(O)、イオウ(S)、低級アルキル基あるいは一級アミンまたは二級アミンのいずれでもよい。Yは独立して酸素(O)あるいはイオウ(S)のいずれでもよい。Zは水素または水酸基である。BはZが水素のときアデニン、グアニン、チミン、あるいはシトシンのいずれかから選ばれ、Zが水酸基のときアデニン、グアニン、ウラシルあるいはシトシンのいずれかから選ばれ、主としてWT1をコードするDNA又はmRNAの相補的オリゴヌクレオチドである。Rは独立して水素またはジメトキシトリチル基あるいは低級アルキル基である。nは7−28である。
【0010】
【化1】
【0011】
好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体としては修飾されていないアンチセンスオリゴヌクレオチドだけでなく、修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドでもよい。この様な修飾体として、例えば前述のメチルホスホネート型又はエチルホスホネート型のような低級アルキルホスホネート修飾体、その他ホスホロチオエート修飾体あるいはホスホロアミデート修飾体等が挙げられる(化2参照)。
【0012】
【化2】
【0013】
これらのアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は次のとおり常法によって得ることができる。
化1のX及びYがO、Zが水素又は水酸基であるアンチセンスオリゴヌクレオチドは市販のDNA合成装置(例えばApplied Biosystems社製など)によって容易に合成される。
【0014】
Zが水素であるアンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチドの合成法はホスホロアミダイトを用いた固相合成法、ハイドロジェンホスホネートを用いた固相合成法などで得ることができる。
例えば、 T.Atkinson, M.Smith, in Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach, ed.M.J.Gait, IRL Press, 35-81 (1984); M.H.Caruthers, Science, 230, 281 (1985); A.Kume, M.Fujii, M.Sekine, M.Hata, J.Org.Chem., 49, 2139 (1984);B.C.Froehler, M.Matteucci, Tetrahedron Lett., 27, 469 (1986); P.J.Garegg, I.Lindh, T.Regberg, J.Stawinski, R.Stromberg, C.Henrichson, ibid, 27, 4051 (1986);
【0015】
B.S.Sproat, M.J.Gait, in Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, ed.M.J.Gait, IRL Press, 83-115 (1984); S.L.Beaucage and M.H.Caruthers, Tetrahedron Lett., 22, 1859-1862 (1981);M.D.Matteucci and M.H.Caruthers, Tetrahedron Lett., 21, 719-722 (1980);M.D.Matteucci and M.H.Caruthers, J.Am.Chem.Soc., 103, 3185-3191 (1981)を参照のこと。
【0016】
Xが低級アルコキシ基であるリン酸トリエステル修飾体は、常法、例えば化学合成で得られたオリゴヌクレオチドをトシルクロリドのDMF/メタノール/2,6−ルチジン溶液で処理することにより得ることができる(Moody H.M., et al., Nucleic Acids Res., 17, 4769-4782 (1989)) 。
Xがアルキル基であるアルキルホスホネート修飾体は、常法、例えばホスホアミダイトを用いて得ることができる(M.A.Dorman, et.al., Tetrahedron, 40, 95-102 (1984);K.L.Agarwal and F.Riftina, Nucleic Acids Res., 6, 3009-3024 (1979)) 。
【0017】
XがSであるホスホロチオエート修飾体は、常法、例えばイオウを用いた固相合成法(C.A.Stein, et.al., Nucleic Acids Res., 16, 3209-3221 (1988)) あるいはテトラエチルチウラム ジスルフィドを用いて、固相合成法により得ることができる(H.Vu and B.L.Hirschbein, Tetrahedron Letters, 32, 3005-3008 (1991)) 。
X, YがともにSであるホスホロジチオエート修飾体は、例えばビスアミダイトをチオアミダイトに変換しイオウを作用させることにより固相合成法により得ることができる(W.K.-D.Brill, et.al., J.Am.Chem.Soc., 111, 2321-2322 (1989))。
【0018】
Xが一級アミンあるいは二級アミンであるホスホロアミデート修飾体は、例えばハイドロジェンホスホネートを一級あるいは二級アミンで処理することにより固相合成法で得ることができる(B.Froehler, et.al. Nucleic Acids Res., 16, 4831-4839 (1988))。あるいは、アミダイトをtert−ブチルハイドロパーオキサイドで酸化しても得ることができる(H.Ozaki, et.al., Tetrahedron Lett., 30, 5899-5902 (1989)) 。
【0019】
Zが水酸基であるアンチセンスオリゴリボヌクレオチドの合成法は、アンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチドに比べて、リボース(糖)に2′−水酸基があるためその保護を行わなければならない点できわめて複雑ではあるが、保護基およびリン酸化方法を適宜選択することによって合成することができる(微生物学基礎講座 8巻、遺伝子工学、大塚栄子、三浦一伸共著、安藤忠彦、坂口健二編、1987年10月10日、共立出版株式会社発行参照)。
【0020】
精製および純度確認は、高速液体クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で行うことができる。分子量の確認は、 Electrospray Ionization Mass Spectrometry又は Fast Atom Bonbardment-Mass Spectrometryで行うことができる。
本発明のWT1に対する発現阻害物質は、genomic DNA からmatureなmRNAに至るいかなる段階においても作用し、その発現を抑制することによって固形腫瘍細胞の増殖を阻害すると考えられる。従って、本願発明の発現阻害物質は固形腫瘍の治療のために有効であると期待される。
【0021】
本発明の発現阻害物質は、それらに対して不活性な適当な基剤と混和して塗布剤、パップ剤などの外用剤とすることができる。
また、必要に応じて、賦形剤、等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、無痛化剤等を加えて錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、液剤、点鼻剤など、さらに凍結乾燥剤とすることができる。これらは常法に従って調製することができる。
【0022】
本発明の発現阻害物質は患者の患部に直接適用するか、または血管内に投与するなどして結果的に患部に到達し得るように患者に適応させる。さらに持続性、膜透過性を高めるアンチセンス封入素材を用いることもできる。例えば、リポゾーム、ポリ−L−リジン、リピッド、コレステロール、リポフェクチン又はこれらの誘導体が挙げられる。
【0023】
本発明の発現阻害物質の投与量は、患者の状態、年齢、性別、体重などに応じて適宜調整し好ましい量を用いることができる。また、その投与方法は、患者の状態、薬剤形態などに応じ、経口投与、筋肉内投与、腹腔内投与、胸腔内投与、髄腔内投与、腫瘍内投与、皮内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与、直腸投与などの種々の投与方法から適宜好ましい方法を用いることができる。
以下本発明を実施例において詳しく説明する。
【0024】
【実施例】
合成例1.
以下に使用するオリゴデオキシリボヌクレオチド(配列番号:1〜8)およびランダム配列(Rand)を、自動合成装置(Applied Biosystems) を用いて合成し、高速液体クロマトグラフィーにより精製し、エタノール沈澱を3回行い、そしてリン酸緩衝液に懸濁した。
合成したオリゴヌクレオチドは次の通りである。なお、ランダム配列(Rand)は、塩基18個の配列で理論上4の18乗種類の配列の混合物となっている。
【0025】
配列番号:1 転写キャッピング部位のセンス配列(SE1)
配列番号:2 転写キャッピング部位のアンチセンス配列(AS1)
配列番号:3 転写キャッピング部位のセンス配列
配列番号:4 転写キャッピング部位のアンチセンス配列
配列番号:5 翻訳開始領域のセンス配列(SE2)
配列番号:6 翻訳開始領域のアンチセンス配列(AS2)
配列番号:7 エクソン6のセンス配列
配列番号:8 エクソン6のアンチセンス配列
【0026】
実施例1.
WT1発現陽性の胃癌AZ521株の細胞を5×104 個/ml、100μl/ウエルの量で、平底96−ウエルプレート内の、ウシ胎児血清(FCS)を含有しないRPMI1640培地に接種した。オリゴヌクレオチドAS1又は対照SE1もしくはrandを、3連のウエルに、最終濃度が100μg/mlとなるように添加した。2時間のインキュベーションの後、各ウエルに最終濃度が10%となるようにFCSを添加した。24時間毎に、前記の量の半分のオリゴヌクレオチドを培養物に添加した。
【0027】
96時間培養した後、色素排除法により生存細胞を計数した。対照培養物として、ヌクレオチドを含有しない同じ体積のPBSを添加し、そしてこの対照培養物の細胞数を100%とした。
この結果を図1に示す。この図から明らかな通り、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドAS1は、対応するセンスオリゴヌクレオチドSE1に比べて強く細胞の増殖を阻害した。
【0028】
実施例2.
実施例1と同様の実験を行ったが、オリゴヌクレオチドAS1もしくはAS2、又はrandを200μg/ml濃度で添加した。図2から明らかな通り、ランダム配列(rand)は胃癌細胞の増殖をほとんど阻害しなかったが、アンチセンスオリゴヌクレオチドAS1及びAS2は胃癌細胞の増殖を阻害した。
【0029】
実施例3.
実施例1と同様の実験を行ったが、オリゴヌクレオチドAS1もしくはAS2、又はrandを400μg/mlの濃度で添加した。図3から明らかな通り、ランダム配列(rand)に比べて、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドAS1又はAS2は胃癌細胞の増殖を阻害した。
なお、実施例1〜3の結果から明らかなごとく本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの胃癌細胞増殖阻害効果は濃度依存的であった。
【0030】
実施例4.
実施例1と同様の実験を行ったが、固形腫瘍細胞として肺癌OS3株の細胞を用い、アンチセンスオリゴヌクレオチドAS1もしくはAS2、又は対照ランダム配列(rand)を200μg/mlの量で用いた。図4から明らかな通り、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドAS1及びAS2は対照ランダム配列(rand)に比べて強い肺癌細胞増殖阻害効果を示した。
【0031】
実施例5.
実施例5と同様の実験を行ったが、アンチセンスオリゴヌクレオチドAS1を400μg/ml、又は対照としてSE1もしくはrandを400μg/ml使用した。図5から明らかな通り、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドAS1はその他の対照オリゴヌクレオチドに比べて、肺癌細胞増殖阻害効果を示した。
なお、実施例4及び5の比較から、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの肺癌細胞増殖阻害効果が濃度依存的であることが明らかである。
【0032】
実施例6.
実施例1と同様の実験を行ったが、固形腫瘍細胞として、卵巣癌TYKnu株の細胞を用い、アンチセンスオリゴヌクレオチドAS1を400μg/ml、又は対照オリゴヌクレオチドSE1もしくはrandを400μg/ml用いた。図6から明らかな通り、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドAS1は、その他の対照オリゴヌクレオチドに比べて顕著な卵巣癌細胞増殖阻害効果を示した。
【0033】
参考例1
実施例と同様の実験を行ったが、被験細胞として、WT1発現陰性の肺アデノカルシノーマ細胞系WTAS PC14を用い、アンチセンスオリゴヌクレオチドAS1もしくはAS2を400μg/ml又は対照オリゴヌクレオチドrandを400μg/ml用いた。図7から明らかな通り、WT1発現陰性の細胞に対しては、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは有意な増殖阻害効果を示さなかった。
【0034】
実施例7.
表2記載の各種の腫瘍細胞株からRNAを抽出し、下記のRT−PCR法を用いてWT1mRNAの発現量を定量した。表2に白血病細胞株K562におけるWT1の発現量を1.0として各種腫瘍細胞株でのWT1の発現量を相対的に示した。
各細胞株より通常の方法〔例えば acid-guanidine-phenol-chloroform method:Anal. Biochem., 162, 156 (1987)〕に従い総RNAを抽出し、ジエチルピロカーボネート処理水に溶解して、吸光度260nmにて光学的に定量化した。
【0035】
1μgの総RNAを含むジエチルピロカーボネート処理水15.5μlを、65℃で5分間加熱し、600Uの逆転写酵素(Moloney murine leukemia virus reverse transcriptase :GIBCO-BRL )、500mmol/1の各デオキシヌクレオチドトリフォスフェート(dNTP:Pharmacia)、750ngのオリゴdTプライマー及び40UのRNase阻害剤(Boehringer Mannheim )を含むRT緩衝液(50mmol/1トリスHCl(pH8.3);70mmol/1 KCl;3mmol/1 MgCl2 ;10mmol/1ジチオスレイトール)の14.5μlと混合した。
【0036】
混合物を37℃で90分間インキュベートし、70℃で20分間加熱後、使用時まで−20℃にて保存した。
PCRは、DNAサーマルサイクラー(Perkin Elmer-Cetus)にて、94℃、1分の変性、64℃、1分(βアクチン:60℃、1分)のプライマーアニーリング(annealing )及び、72℃、2分の鎖延長(chain elongation)の条件で繰り返しサイクルを行ない、PCR産物(第1ラウンドPCR)を得た。
該PCR産物のデンシトメーター単位(後記)が500未満の場合には、第1ラウンドPCR産物の2.5μlを含む反応液にて、ネステッド内方プライマーによる第2ラウンドPCRを行なった。
【0037】
得られたPCR産物を、文献〔J. Immunol., 147, 4307, (1991)〕記載の方法に準じて以下の通り定量した。
即ち、20ngの総RNAからのPCR産物を、0.05μg/mlのエチジュームブロマイドを含む1.3%アガロースゲルに分離し、ポラロイドフィルム(Polaroid 665 film, Polaroid Corp. )にて撮影した。
ネガフィルムを、25℃、5分間にて現像し、デンシトメーター(CS-9000 :島津)にて検定して「デンシトメーター単位」として得た。
尚、上記においてRNA不含の場合のPCR産物を用いた結果を陰性コントロールとした。
また、上記において使用したプライマーは表1に示す通りである。
【0038】
【表1】
【0039】
尚、内部コントロールとしたβアクチンのプライマーとしては、文献〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 82, 6133, (1985)〕に記載のものを使用した。これら各プライマーは全て常法に従い化学合成した。
RT−PCRへのRNA使用量と各サンプルにおけるRNA分解の相違を標準化するために、WT1遺伝子の結果(デンシトメーター単位)をβアクチンのそれで除し、これをWT1遺伝子発現レベルとした。
結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
上記の結果、種々の固形腫瘍由来の培養株においてWT1遺伝子が発現していることが確認された。
以上の通り、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは固形腫瘍細胞の増殖の阻害のために有効であり、従って新規な固形腫瘍治療剤として期待される。
【0042】
【配列表】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、胃癌AZ521株の細胞の増殖に対する100μg/mlのオリゴヌクレオチドの阻害効果を示すグラフである。
【図2】図2は、胃癌AZ521株の細胞の増殖に対する200μg/mlのオリゴヌクレオチドの阻害効果を示すグラフである。
【図3】図3は、胃癌AZ521株の細胞の増殖に対する400μg/mlのオリゴヌクレオチドの阻害効果を示すグラフである。
【図4】図4は、肺癌OS3株の細胞の増殖に対する200μg/mlのオリゴヌクレオチドの阻害効果を示すグラフである。
【図5】図5は、肺癌OS3株の細胞の増殖に対する400μg/mlのオリゴヌクレオチドの阻害効果を示すグラフである。
【図6】図6は、卵巣癌TYKnu株の細胞の増殖に対する400μg/mlのオリゴヌクレオチドの阻害効果を示すグラフである。
【図7】図7は、WT1発現陰性の肺アデノカルシノーマ細胞系、WTAS PC14の細胞の増殖に対する400μg/mlのオリゴヌクレオチドの阻害効果を示すグラフである。
Claims (1)
- ウイルムス腫瘍遺伝子(WT1)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体であって、次の塩基配列:
5′-AGGGTCGAATGCGGTGGG-3′(配列番号:2)又は
5′-GTCGGAGCCCATTTGCTG-3′(配列番号:6)
を有するものを含んで成る胃癌、肺癌または卵巣癌治療剤。
Priority Applications (8)
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