JP4788988B2 - 水処理薬剤の濃度管理システムおよび濃度管理方法 - Google Patents

水処理薬剤の濃度管理システムおよび濃度管理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
この発明は、冷却水から失われた水処理薬剤の最低必要量を補給(一次補給)すると共に、冷却水中の薬剤濃度を測定し、測定結果に基づいて不足分の薬剤を補給(二次補給)することからなる、冷却水中の薬剤濃度管理方法およびその方法を実施するための薬剤濃度管理システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製鉄、石油化学などの工場では、プロセス冷却用やユーティリティ保全用に、また学校、病院、ホテルなどのビルでは空調用に大量の冷却水が使用されている。開放循環式冷却水系では、冷却塔を設け、水を循環させて再利用し、さらに節水のため可能な範囲で高濃度運転を行い、水の有効利用を図っている。また、密閉循環式冷却水系では、熱交換により温度が上昇した水は、二次冷却水で再冷却され循環使用されるため、通常、系外に排出される量が少なく、蒸発などによる濃縮も起こらない。
【0003】
これらの冷却水系では、水に起因する腐食、スケール、スライムおよび藻類等の様々な障害が日常的に発生している。ことに、冷却水中の溶存塩類の濃縮に基づく水質の悪化により、これらの障害の発生頻度は高くなり、機器の耐用年数の短縮、機器・配管の閉塞・破損や熱効率の低下など、資源やエネルギーの損失、メンテナンス費用の増大、工場の生産効率の低下や生産停止などの問題を引き起こすことが知られている。
【0004】
従来、これらの障害を防止するために、水処理薬剤を冷却水に添加することが行われている。
例えば、腐食を防止するためには、モリブデン酸塩、亜硝酸塩、燐酸塩、重合燐酸塩、アゾール類、各種ホスホン酸類等が使用され、スケールを防止するためには、ポリリン酸塩、アクリル酸系重合体、各種ホスホン酸類が使用され、またスライムや藻類を防止するためには、次亜塩素酸塩、ヒダントイン、ブロモニトロアルコール類等が使用されている。
【0005】
開放循環式冷却水系では、大幅にブロー水量を低減させて補給水量を減らすと、水の使用量だけでなく、水処理薬剤の使用量も節減でき、経済的に好ましい反面、上記のように冷却水中の溶存塩類の濃度が上昇して循環水の水質悪化を招き、種々の障害を生じやすくなる。
【0006】
溶存塩類の高濃縮化による補給水量の節減効果は、濃縮倍数5倍程度までであり、それ以上に濃縮倍数を上げてもそれに見合った補給水量の低減効果は得られない。その上、添加した水処理薬剤の効力の持続性にも限度があるため、3〜5倍程度の濃縮となるようにブロー水量を調節しながら運転するのが普通である。
【0007】
つまり、一定量のブロー水を連続して排出したり、水中の塩類濃度や電気伝導率を測定して溶存塩類の濃縮度合いを計測し、その結果に基づいて間欠的にブロー水を排出したりして、溶存塩類の濃縮倍率がほぼ一定となるように、ブロー水量が調節されている。このように、濃縮倍率を調節するためのブロー水を強制ブロー水という。
【0008】
なお、冷却水系の運転開始後、一定期間を経過したときの濃縮倍数(Nt)は、次式により算出できる。
t=M/(B+W)−{M−(B+W)N0}/(B+W)exp(−t/Tr
(式中、Mは補給水量、Bは強制ブロー水量、Wは飛散水量、N0は運転開始時の循環水の濃縮倍数(通常は1)、tは運転開始後の経過時間(hr)、Trは滞留時間、なお、Mは蒸発水量、BおよびWの合計量である。)
これらの式で、蒸発量と飛散水量は冷却水系の運転条件が一定ならば系固有の値であるため、強制ブロー水量を調整することによって冷却水系の濃縮管理を行なうことができる。
【0009】
そして、強制ブロー水と共に排出された水処理薬剤の不足分を補給するため、種々の方法が採用されている。
すなわち、連続ブローの場合には上記式により求められる強制ブロー水量に対応して一定量の薬剤をポンプで連続補給する方法、間欠ブローの場合にはブローポンプに連動して薬剤を補給する方法、連続または間欠ブローを冷却水貯水槽の水位変化により感知する場合には補給水ポンプに連動して薬剤を補給する方法、冷却水中の水処理薬剤の濃度を分析測定し、その結果に基づいて薬剤添加量を調節する方法などが採用されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法のうち、薬剤の連続添加やブローポンプに連動して薬剤を補給する方法を採用した場合、水処理薬剤は強制ブロー水や冷却設備からの飛散水のみでなく、冷却水を他の施設へ転用する場合、洗浄水として使用する場合等予期できない冷却水の流失(これらを併せて、転用水という)によっても失われることがあるので、失われた水処理薬剤の量を正確に把握することは困難であった。
【0011】
また、補給水ポンプに連動して薬剤を補給する方法を採用した場合には、水位変化を感知するまでにタイムラグがあり、適時に薬剤の補給ができないとともに、補給水は薬剤の損失を伴わない蒸発により失われる多量の水を補給するため、薬剤濃度が必要以上に高い水準に維持されることとなり、経済的な面で不利であるとともに、補給水量を的確に把握し、その量に対応した薬剤量を補給するためには、工事や諸設備の設置が必要となり、経済的に高価な投資となるので好ましくない。
【0012】
さらに、冷却水中の水処理薬剤の濃度を測定し、その結果に基づいて薬剤添加量を調節する方法の場合には、薬剤濃度の測定に計測機器や器具を必要とするため、試料水を一旦分析室まで持ち帰らなければならず、冷却水中の薬剤濃度を適時に調節することができなかった。そのため、冷却水中の薬剤濃度がばらついて、薬剤の効果が期待するように発揮されなかったり、薬剤濃度が必要以上に高く維持されたりする問題があった。
【0013】
一方、密閉循環式冷却水系では蒸発などによる濃縮が起こらず、しかも冷却塔を有しないために強制ブロー水や飛散水による薬剤の流出もない。しかし、転用水による薬剤の流出が頻繁に起こる場合がある。この場合、転用水の流出によって失われた薬剤量を、1日あたりの補給水量(=転用水量)の平均値に対応した薬剤量(1日あたりの補給水量×薬剤維持濃度)に換算して冷却水系に連続して定量添加されている。しかし、突発的な転用水の流出があると一時的に薬剤濃度が低下して、所望の効果が発揮されない場合があった。そこで、定期的(一週間に一度程度)に冷却水中の薬剤濃度を持ち帰り分析を行うが、冷却水中の薬剤濃度を適時に調節することができなかった。例えば、補給水量を的確に把握し、その量に対応した薬剤量を補給することで上記問題は解決するのであるが、工事や諸設備の設置等が必要となり、経済的に高価な投資となるので好ましくない。
【0014】
そこで、本出願人は、有機燐酸系化合物や無機燐酸系化合物の濃度を連続的かつ自動的に測定できる方法やそのための装置(特許第3199469号)、長期間安定な定量試薬(特許第2005037号)を提案してきた。
【0015】
これらの水処理薬剤の連続的測定装置による方法や、安定な定量試薬を用いた簡易測定法を採用すれば、試料水を分析室に持ち帰らなくても、現場で薬剤濃度を簡便に測定することができるため、その測定結果に基づいて薬剤注入量を比較的短時間で制御することができ、したがって有効量の薬剤濃度を維持できるという効果を期待できる。
【0016】
しかしながら、上記連続的測定装置による方法や、安定な定量試薬を用いた簡易測定方法は、薬剤濃度を吸光度で測定するため、その発色に一定の時間を要するため、本発明の二次補給に相当するこれらの方法だけでは、冷却水中の薬剤濃度を的確に管理することはできなかった。
また、強制ブロー水や転用水の流出が突発的に起こると、短時間に失われる薬剤量が大きく変動するため、必要な薬剤量を適時に補給することは困難であった。
【0017】
この発明は、このような技術的背景のもとになされたものであり、強制ブロー水量や転用水量の突発的な変動にもかかわらず、短時間のうちに冷却水中の水処理薬剤の濃度を所定の値に的確に調節できる、より経済的な水処理薬剤の濃度管理方法および濃度管理システムを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、冷却水系から失われた水処理薬剤の最低必要量を補給(一次補給)する共に、冷却水中の薬剤濃度を測定し、測定結果に基づいて不足分の薬剤を補給(二次補給)することにより、強制ブロー水量や転用水量の突発的な変動にもかかわらず、冷却水中の薬剤濃度をほぼ一定の値に適時に調節できることを見出し、この発明を完成した。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の水処理薬剤の濃度管理システムが適用される工業用冷却装置の一例を示すブロック図であり、この図に基づいて本発明を具体的に説明する。
上記の工業用冷却装置は、開放循環式冷却設備31、薬剤濃度監視部32および制御部33からなっている。
そして、冷却設備31は、冷却水貯水槽1、冷却水送水ポンプ2、冷却水送水管3、熱交換器4、冷却塔5、薬剤貯留槽6、冷却水排出(ブロー)管7、冷却水補給管8、薬剤補給管9および10、ブロー水流量調節部11、補給水量調節部12、ならびに薬剤注入ポンプ13および14からなっている。
この冷却設備31において、冷却水は冷却水貯水槽1から冷却水送水ポンプ2により冷却水送水管3を通って、熱交換器4、冷却塔5、そして貯水槽1へ循環している。
【0020】
なお、この例では、冷却水の濃縮倍数は一般的な電気伝導率計(図示略)による公知の水質管理方法が採用されており、強制ブロー水量は管の途中に設けられた流量計(図示略)により把握できるようになされており、飛散水量および蒸発水量は冷却塔の規模や様式に対応して計算により求められる。
そして、上記のブロー水量、飛散水量および蒸発水量に見合った補給水が冷却水補給管8から補給される。なお、この補給水量は、冷却水貯水槽1に設けられた水位計(図示略)により行なってもよい。
また、上記の例では、強制ブロー水および飛散水とともに失われた薬剤の最低必要量に見合った薬剤が薬剤注入ポンプ13から補給(一次補給)されるようになされている。
【0021】
上記のように強制ブロー水量が流量計により把握される場合には、このブローにより失われた薬剤量と、冷却塔の規模や様式に対応して計算により求められる飛散水の最低量により失われた薬剤量との合計が、一次補給されるべき最低必要量となる。
なお、強制ブロー水量が流量計により把握されない場合には、計算上把握される強制ブロー水量の最低量により失われた薬剤量と、冷却塔の規模や様式に対応して計算により求められる飛散水の最低量により失われた薬剤量との合計が、一次補給されるべき最低必要量となる。
【0022】
転用水は、一般に冷却水送水ポンプの枝管や冷却送水管などから排出されるため、その量を把握するのは困難であり、その量を把握するための流量計等の設置は、工事や諸設備の設置等が必要となり、このような経済的に高価な投資を負担することは通常できない。しかし、転用水の一部が強制ブロー配管等から排出されその流量が把握できる場合には、その転用水量に見合った薬剤量を一次補給すべき最低量に加えてもよい。
【0023】
ここで、飛散水量は冷却塔の設計により異なり、計算により算出されるが、一般的に強制通風型の冷却塔の飛散水量は、循環水量の0.05%〜0.2%と言われている。したがって、飛散水により失われた薬剤の最低量は[循環水量×0.0005×冷却水中の薬剤の標準濃度]により求められる。
【0024】
密閉循環方式において、転用水の流出によって失われた薬剤の最低必要量の補給(一次補給)は、1日あたりの補給水量(=転用水量)の最小値に対応した薬剤量(1日あたりの補給水量×薬剤維持濃度)を換算して冷却水系に連続して定量添加されるのが経済的な点から好ましい。
【0025】
薬剤濃度監視部32は、薬剤濃度測定部21、演算部22、記録部23および指令部24からなっている。
薬剤濃度を測定すべき冷却水は、送水管3の途中で採取され、薬剤濃度測定部21へ随時送られ、冷却水中の薬剤濃度が測定される。この測定頻度は、特に限定されないが、例えば発色に要する時間を考慮して、通常15分〜120分ごと、好ましくは30分〜60分ごとに測定すれば、本発明の効果を得るのに十分である。
【0026】
記録部23には、予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度(Cs)が入力されている。
上記の薬剤濃度測定部21で得られた薬剤濃度の測定値(Cm)は、電気信号として演算部22へ送られる。
【0027】
演算部22では、薬剤濃度の測定値(Cm)と、予め設定されて記録部23に入力されている標準的な薬剤維持濃度(Cs)とが比較され、測定値(Cm)が標準的な薬剤維持濃度(Cs)を下回るときは、添加すべき薬剤の量が演算部22で計算され、指令部23から制御部33へ信号が出力され、制御信号が制御部33から薬剤注入ポンプ14へ出力されて、指示量の薬剤が薬剤貯留槽5から冷却水貯水槽1へ補給(二次補給)される。なお、上記の例では薬剤の補給用に薬剤注入ポンプを二つ(13および14)備えているが、これらの薬剤注入ポンプを一つの注入ポンプで兼用することもできる。
上記の流れを示したのが図2のフローチャートである。
【0028】
上記、標準的な薬剤維持濃度(Cs)には幅を持たせてもよく、その上限値と下限値の範囲内で薬剤注入ポンプの注入量を制御してもよい。
そして、例えば、測定値(Cm)が予め設定した薬剤維持濃度(Cs)の上限値より高い場合には、次の測定結果が出るまで薬剤注入ポンプを停止させ、測定値(Cm)が薬剤維持濃度(Cs)の下限値未満の場合には、次の測定結果が出るまで薬剤注入ポンプを運転させるようにしてもよい。この場合の薬剤注入速度は、薬剤の不足量と薬剤濃度の測定間隔とに基づいて計算により求められるが、便宜的に数段階の薬剤注入速度を設定しておき、薬剤の不足量と薬剤濃度の測定間隔を考慮して、数段階の薬剤注入速度のうちで最適の注入速度を選定するようにしてもよい。
【0029】
また、測定値(Cm)が薬剤維持濃度範囲(Cs)の上限値と下限値の間にある場合には、上限値と下限値の差に対する上限値と測定値の差の割合に測定間隔(時間)を乗じた時間だけ薬剤注入ポンプを運転するようにしてもよい。
【0030】
次に、本発明における水処理薬剤の一例およびそれらの測定方法について説明する。
水処理薬剤としては、公知の腐食防止剤、スケール防止剤、スライム防止剤などが挙げられ、具体的には、オルソ燐酸塩、ヘキサメタリン酸塩等のポリ燐酸化合物、ニトリロトリメチルホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、トリメチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、1,1−ヒドロキシエタンジホスホン酸、1,1−アミノエタン−ジホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ビスポリ−2−カルボキシエチルホスフィン酸またはこれらの塩等の有機燐化合物、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸等の不飽和カルボン酸重合体、モリブデン酸またはその塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、銅の腐食防止剤であるアゾール化合物、殺藻・殺菌剤である次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、トリアジン系化合物、イソシアヌール酸、ヒダントイン系化合物、ブロモニトロ系化合物等が挙げられる。
【0031】
これらの水処理薬剤の測定は公知の方法に従って行われる。例えば、水処理薬剤が有機燐化合物の場合には、特許第3199469号に記載に記載の測定方法または測定装置を用いて行うことができる。すなわち、分解試薬としては、過硫酸のアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、過酸化水素、過塩素酸等の酸化剤が挙げられる。この分解試薬の量は、通常、有機燐化合物含有工程水に対して5〜30g/lが適当である。この発明においては、分解試薬を添加した水処理薬剤を含有する工程水に該薬剤を分解させるに十分な量の紫外線を紫外線ランプ等を用いて照射する。この場合の紫外線の波長は240〜380nmが好ましく、その強度は500μW/cm2以上が好しい。この紫外線の照射は、上記工程水を石英ガラス、シリコン、テフロン(登録商標)、ポリエチレンまたはポリプロピレン等の紫外線透過性材料よりなる配管に注入して行われ、その強度によって影響されるが、通常、500〜2000μW/cm2の強度で30〜120分の間で行われる。紫外線ランプの形状は、円柱状であっても、前面照射状であってもさしつかえなく必要があれば、2個以上の紫外線ランプを設けてもよい。また、配管の形状もとくに制限はなく、紫外線の照射を充分受けやすくするために、その表面積が大きな方が好ましい。その形状としては、蛇管、出入口を有する円筒状中空配管又は偏平直方体状配管が挙げられ、特に好ましい形状は、円柱状の紫外線ランプを配管が螺旋状に覆っている形状である。
【0032】
上記操作により、有機燐酸系化合物が無機燐酸イオンに分解される。水処理薬剤がオルソ燐酸またはその塩、ポリ燐酸またはその塩の場合には、紫外線照射は必要ではない。分解された無機燐酸イオンは、モリブデン青法として公知の発色試薬が添加され、その後、発色がピークになるまで、通常20〜30分回流し、出入口を有するフローセル付の分光光度計に流入させる。ここで、その吸光度を連続的に測定し、予め作成した検量線から有機燐化合物の濃度を測定する。発色試薬として特許第2005037号で提案されている五価のモリブデンと六価のモリブデンとを前者/後者として0.5〜2.0の比で共存するモリブデン酸塩の酸性水溶液に、この酸性水溶液に対し5重量%から溶解度までの範囲の量のリチウム、マグネシウム及び/又はカルシウムの塩化物が含有されてなるリン類の定量試薬を用いるのが、試薬の安定性と取扱い性、定量精度の点で、また、縮合燐酸塩等の加水分解性燐化合物の加水分解も呈色反応時に同時に行える点で好ましい。薬剤がモリブデン酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、アゾール化合物、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、トリアジン系化合物、イソシアヌール酸、ヒダントイン系化合物の場合には、JIS K−0101、JIS K−0102または上水試験法等に記載の発色吸光度測定手段を用いて行うことができる。
【0033】
【実施例】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するものであり、本発明を限定するものではない。なお、以下の実施例および比較例では、薬剤濃度測定装置として特許第3199469号の実施例に記載の装置を用いた。
【0034】
比較例1
図1と同様の開放循環式冷却設備31を有する某工場の開放循環冷却水系(保有水量400m3 、循環水量2400m3 /h)では、電気伝導度による濃縮倍率の管理を行っていなく、冷却水の濃縮倍率を5倍に維持するため、連続的に強制ブロー水量を約13m3 /hに設定した。試験期間中に強制ブロー水量は11m3 /h〜15m3 /hの範囲で変化し、平均値は13m3 /hであった。また強制ブロー水、飛散水および蒸発水により流出した保有水を補給するための補給水量の平均値は77m3 /hであった。
【0035】
そして、スケール防止剤として、1,1−ヒドロキシエタンジホスホン酸を10重量%含有する水処理薬剤をその薬剤濃度が保有水量に対して、40mg/lとなるように維持するため、強制ブロー水の平均値である13m3 /hと計算上求められた平均飛散水量2.4m3 /h(循環水量×0.1%)の流失により失われた水処理薬剤を注入補給するとともに、月に3回定期的に当該冷却水を採取して持ち帰り、JIS K−0101に準じて1,1−ヒドロキシエタンジホスホン酸をオートクレーブで分解し、オルトリン酸の合計濃度をモリブデン酸青法により吸光度測定し、その結果に基づいて薬剤の注入量を調節して、180日間運転した。その結果を図3に示す。なお、冷却水採取から測定結果に基づいて薬剤の注入量を調節するまでに1週間を要した。試験結果から明らかなように、水処理薬剤濃度は最高値85.5mg/lから最低値17mg/lと大幅に変化し、当該濃度を的確にコントロールすることが困難であった。その理由は、冷却水の一部を他の設備に突発的に転用したり、洗浄水として使用しているためであり、その流出量を的確に把握することが困難であったからであると推測される。
【0036】
実施例1
比較例1と同じ開放循環式冷却設備を有する冷却水系で、本発明の水処理薬剤管理システムにより180日間運転した。すなわち、当該冷却設備に図1と同様の薬剤濃度監視部32および制御部33を取り付け、強制ブロー水量および飛散水量に対応して失われた薬剤の最低必要量(強制ブロー水量の最小値である11m3 /hと計算上求められた飛散水量の最小値である1.2m3 /h(循環水量×0.05%)との流失により失われた水処理薬剤量)を薬剤注入ポンプ13から補給(一次補給)した。また、冷却水中の薬剤濃度を特許第3199469号の実施例に記載の測定装置を用いて薬剤濃度測定部21で30分ごとに測定し、その結果に基づいて演算部22で計算し、指令部23から制御部33へ信号が出力され、制御信号が制御部33から薬剤ポンプ14へ出力し、指示量の薬剤を薬剤貯留槽5から冷却水貯留槽1へ補給(二次補給)した。なお、予め記録部において冷却水中の薬剤濃度(Cs)を38〜42mg/lと入力した。そして、測定値(Cm)が予め設定した薬剤維持濃度(Cs)の上限値より高い場合には、次の測定結果がでるまで、薬剤注入ポンプを停止させ、測定値(Cm)が薬剤維持濃度(Cs)の下限値未満の場合には、次の測定結果がでるまで、薬剤注入ポンプを運転させる制御を行った。また、測定値(Cm)が薬剤維持濃度範囲(Cs)の上限値と下限値の間にある場合には、上限値と下限値の差に対する上限値と測定値の差の割合に測定間隔(時間)を乗じた時間だけ薬剤注入ポンプを運転させる制御を行った。その結果を図4に示す。
【0037】
比較例2
水処理薬剤の一次補給をしないで、実施例1と同様の二次補給のみで運転した結果を図5に示す。
【0038】
比較例3
某工場の冷却水系(保有水量4500m3 、循環水量3400m3 /h)は、二次クーラーを用いる密閉循環系であるが、冷却水の一部を他の設備に頻繁に転用しているため、短時間で転用水量の変動が著しく、工業用水が間欠的に補給されている。この冷却水系設備は冷却塔を有していないため、冷却水の蒸発や飛散がなく、濃縮もされていない。1日の補給水量は150m3〜250m3の範囲で変化し、その平均値は、200m3であった。
【0039】
この冷却水系では、スケール防止剤として、1,1−ヒドロキシエタンジホスホン酸を10重量%含有する水処理薬剤を用いて、冷却水中の薬剤濃度が30mg/lとなるように、1日あたりの補給水量(=転用水量)の平均値に対応して薬剤が冷却水系に連続して添加されている。
月に3回定期的に当該冷却水を採取して持ち帰り、JIS K−0101に準じて1,1−ヒドロキシエタンジホスホン酸をオートクレーブで分解し、オルトリン酸の合計濃度をモリブデン酸青法により吸光度測定した。
【0040】
その結果に基づいて、薬剤添加量を変化させ、ほぼ10か月間試験した。なお、冷却水を採取してから測定結果に基づいて薬剤注入量を制御するまでに1週間を要した。その結果を図6の左側に示す。試験結果から明らかなように、水処理薬剤濃度は最高値95mg/lから最低値11mg/lと大幅に変化し、当該濃度を的確にコントロールすることが困難であった。その理由は、冷却水の一部を他の設備に突発的に転用したり、洗浄水として使用しているためであり、その流出量を的確に把握することができないからである。そこで、転用水量に対応して失われた薬剤を補給水量の平均値に対応して補給し、1週間後の薬剤濃度の測定結果に基づいて、薬剤の添加量を調節していたからである。
【0041】
実施例2
比較例3と同じ冷却水系に実施例1と同様の薬剤濃度監視部と制御部を取り付けた本発明による薬剤濃度管理システムを導入し、上記の比較例3に引き続いて冷却設備を運転した。転用水量に対応して失われた薬剤の最低必要量(1日あたりの補給水量(=転用水量)の最小値である150m3により失われた水処理薬剤量)を連続的に定量補給(一次補給)した。なお、冷却水中の薬剤濃度(Cs)を28〜32mg/lと入力した以外は、薬剤濃度の測定およびその測定結果に基づく薬剤の二次補給は、実施例1と同様に行った。その結果を比較例3の結果と併せて図6の右側に示す。
図6から明らかなように、実施例2では、本発明の水処理濃度管理システムにより、冷却水中の薬剤濃度がほぼ一定となるように的確に管理されている。
【0042】
【発明の効果】
この発明によれば、冷却水系から失われた水処理薬剤の最低必要量を補給(一次補給)するとともに、冷却水中の水処理薬剤の濃度を随時測定し、その結果に基づいて不足分の薬剤が補給(二次補給)される。
したがって、強制ブロー水量、飛散水量、転用水量等が大きく変動しても、冷却水中の薬剤濃度をほぼ一定に維持することができるので、期待した通りの薬剤効果が発揮されるとともに、冷却設備を経済的に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薬剤濃度管理システムが適用される工業用冷却装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の薬剤濃度管理システムの流れを示すフローチャートである。
【図3】比較例1における薬剤濃度の推移を示すグラフである。
【図4】実施例1における薬剤濃度の推移を示すグラフである。
【図5】比較例2における薬剤濃度の推移を示すグラフである。
【図6】比較例3および実施例2における薬剤濃度の推移を示すグラフである。
【符号の説明】
1 冷却水貯水槽
2 冷却水送水ポンプ
3 冷却水送水管
4 熱交換器
5 冷却塔
6 薬剤貯留槽
7 冷却水排出(ブロー)管
8 冷却水補給管
9 薬剤補給管
10 薬剤補給管
11 ブロー水量調節部
12 補給水量調節部
13 薬剤注入ポンプ
14 薬剤注入ポンプ
21 薬剤濃度測定部
22 演算部
23 記録部
24 指令部
31 冷却設備
32 薬剤濃度監視部
33 制御部

Claims (5)

  1. 開放循環式冷却水系において、当該水系から強制ブロー水および飛散水によって排出される水に伴って失われた水処理薬剤の最低必要量を当該水系の水処理薬剤濃度を測定することなしに、流量計により測定された強制ブロー水量×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度+循環水量×0.0005×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度である薬剤量、あるいは強制ブロー水量が流量計により把握されない場合には、計算上把握される強制ブロー水量の最低量×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度+冷却塔の規模や様式に対応して計算により求められる飛散水の最低量×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度である薬剤量を補給(一次補給)する薬剤補給手段と、冷却水中の薬剤濃度を監視する薬剤濃度監視手段と、その監視結果に基づいて薬剤補給量を制御する制御手段と、その制御指示に基づいて予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度に対する不足分の薬剤を補給(二次補給)する薬剤補給手段とを含むことを特徴とする、冷却水系の水処理薬剤の薬剤濃度管理システム。
  2. 密閉循環式冷却水系において、当該水系から転用水によって排出される水に伴って失われた水処理薬剤の最低必要量を当該水系の水処理薬剤濃度を測定することなしに、1日当たりの補給水量の最小値×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度である薬剤量を連続して定量補給(一次補給)する薬剤補給手段と、冷却水中の薬剤濃度を監視する薬剤濃度監視手段と、その監視結果に基づいて薬剤補給量を制御する制御手段と、その制御指示に基づいて予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度に対する不足分の薬剤を補給(二次補給)する薬剤補給手段とを含むことを特徴とする、冷却水系の水処理薬剤の薬剤濃度管理システム。
  3. 薬剤濃度監視手段が、薬剤濃度測定部、演算部および指令部からなる請求項1または2に記載の薬剤濃度管理システム。
  4. 開放循環式冷却水系において、当該水系から強制ブロー水および飛散水によって排出される水に伴って失われた水処理薬剤の最低必要量を当該水系の水処理薬剤濃度を測定することなしに、流量計により測定された強制ブロー水量×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度+循環水量×0.0005×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度である薬剤量、あるいは強制ブロー水量が流量計により把握されない場合には、計算上把握される強制ブロー水量の最低量×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度+冷却塔の規模や様式に対応して計算により求められる飛散水の最低量×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度である薬剤量を補給(一次補給)すると共に、冷却水中の薬剤濃度を測定し、測定結果に基づいて予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度に対する不足分の薬剤を補給(二次補給)することを特徴とする水処理薬剤の薬剤濃度管理方法。
  5. 密閉循環式冷却水系において、当該水系から転用水によって排出される水に伴って失われた水処理薬剤の最低必要量を当該水系の水処理薬剤濃度を測定することなしに、1日当たりの補給水量の最小値×予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度である薬剤量を連続して定量補給(一次補給)すると共に、冷却水中の薬剤濃度を測定し、測定結果に基づいて予め設定された冷却水中の標準的な薬剤維持濃度に対する不足分の薬剤を補給(二次補給)することを特徴とする水処理薬剤の薬剤濃度管理方法。
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