JP4787426B2 - ボールを駆動輪とする電動車両 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールを駆動輪とする新規な電動車両に関し、特に、電動車椅子やショッピングカートなど比較的小型で小回りが要求される種類のものに適した電動車両に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、電動車椅子やショッピングカート、電動フォークリフト等の電動車両は、従来一般的に、最小でも4つの車輪を備えていて、このうちの左右一対の駆動輪をモーターで回転させる構造になっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このため、走行方向の向きを変えるには、車体全体の向きを変えなければならず、最小限、左右の駆動輪間距離と同じ長さの回転半径が必要になるので、オフィスや倉庫など狭い場所での使い勝手が非常に悪いという問題があった。
また近時、この種の車両の中には、座席の向きを変えないで横走行へ走行することができるようにしたものも見られるが、そのために駆動輪やこれを回転させるための駆動機構が極めて複雑になっていて、重量も重く、コストも驚くほど高いものになっている。
【0004】
本発明は上記した問題点に鑑みて為されたものであり、走行方向を変更するのに車体全体の向きを変えたり駆動輪の向きを変更する必要が無くて、回転のための特別な空間も殆ど要らず、しかも、駆動輪とこれを回転させるための駆動手段がごく簡単なもので済み、また、それでいて横走行することもできる画期的な電動車両を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、中心軸が上下方向を向いた円筒状のボール収納部と前記ボール収納部の内周面に沿ってほぼ環状に配列された多数の回転部材と、前記ボール収納部の外周面の下部から放射状に突出した複数の脚と、前記脚のそれぞれに取り付けられた自在車と、前記ボール収納部の中に納まり、前記回転部材に接触して回転自在に保持されたボールとを有する台車と、水平な円帯形のベースリングと、前記ベースリングから垂直に立ち上がった支柱と、前記支柱の上端に固定された天板と、前記天板の上に取り付けられた座席部のシートとを有し、前記ベースリングが前記台車のボール収納部の外周面を囲むと共に前記台車の脚に着座した状態で、前記台車に前記ボール収納部の中心軸の軸回り回転自在に支持された座席部付き回転座と、該回転座の天板水平方向に回転自在且つ上下方向に変位可能に支持されながら上記ボールの頂部にその自重が乗せられた駆動ローラーとこの駆動ローラーを回転させる走行モーターを備えた駆動ユニットと、駆動ユニット回転モーターを備え、その駆動ユニット回転モーターの駆動力で前記駆動ユニットの駆動ローラーを前記中心軸の軸回りに回転させる駆動ユニット回転手段と、前記回転座の天板に取り付けられた回転座回転モーターと、この回転座回転モーターの出力軸に取り付けられ前記台車のボール収納部の内側の周璧上に圧着された遊星転輪とを備え、その回転座回転モーターの駆動力で前記回転座を回転させる回転座回転手段と、前記走行モーターと前記駆動ユニット回転モーターと前記回転座回転モーターに対する動作命令を行う操縦手段とを備えたことを特徴とするボールを駆動輪とする電動車両である。
【0007】
この電動車両にあっては、走行モーターが駆動することで駆動ローラーが回転し、この回転によりボールが回転されて車体が走行する。走行方向は上から見た駆動ローラーの径方向とその回転方向とで決まる。この駆動ローラーの径方向は、操縦手段による命令で駆動ユニット回転手段を駆動させることにより変更される。
【0008】
駆動ユニットを回転座に対して回転させ得るように支持させているので、座席部を所望の方向へ向けることの他に、駆動ユニット回転手段に対する命令で走行方向を選択して走行するという操縦を行うことができる。
【0009】
従って、このような構造の本発明電動車両にあっては、駆動輪としてのボールは1個で足り、座席部の回転中心や駆動ユニットの回転中心がいずれもボールのほぼ中心を通る垂直軸であるため、座席の向きや走行方向の変更に、車体の平面サイズより大きい空間は殆ど必要とせず、最も小回りの利く車両を構成できる。特に、この電動車両では、走行方向を変更するのに、車体全体の向きは勿論、駆動輪の向きさえ変更する必要が無く、この変更には座席部付き回転座又は駆動ローラーの向きを変更すれば足りるので、駆動輪を駆動させる駆動系の機械的構造や電気的配線が極めて簡単で済む。
【0010】
しかも、座席部の向きを変えずに走行方向を変更することができるので、横方向への走行も行うこともできる。このことは、オフィスや倉庫など比較的狭い空間内で優れた機動性を発揮する。
【0011】
駆動ユニット回転手段のモーターは回転座に取り付け、このモーターの回転をベルトやギアなどの回転伝達手段で駆動ユニットのベース部材に伝達するようにしており、駆動ユニットと駆動ユニット回転手段との位置関係を固定できるため、構造を簡素化できると共に、電気的配線を無理無く行うことができる。
【0012】
尚、本発明において、台車に設ける自在車とボールとの位置関係はいろいろ考えられるが、車体の重心をボールの中心上又はその近くに位置させて安定性を確保するためには、3以上の自在車を上から見てボールの周囲に配置した形にするのが望ましい。駆動ローラーがボールに真上から接触するようにしているので、駆動ユニットの回転を1つの垂直軸を中心として行えば済むため、それだけ構造を簡単にすることができる。駆動ローラーの形状は横円柱形や横鼓形、或いはこれらの複合形態などが考えられる。
【0014】
ボール収納部が上方に向かって開口するので、ここに収納されたボールに駆動ローラーを上から接触させることが容易に実現できるし、ボールや駆動ローラの交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。また、回転部材としては、ローラーや球などが考えられる。
【0017】
この発明にあっては、回転座回転モーターが駆動することによって、遊星転輪にはボール収納部の周璧上を転がる回転力が付勢され、この回転力で回転座回転モーター自体が上記周壁に沿って移動し、それにより回転座が回転する。従って、本発明によれば、回転座回転モーターを回転座の内側に組み込むこともできるため、回転座回転手段を回転座からはみ出さないコンパクトな形に構成することができる。この遊星転輪としては、ボール収納部の周璧に圧着される摩擦車でも良いし、ボール収納部の周璧に設けたギア歯列に噛合するギアであっても良い。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態に係る電動車椅子1を図面に従って説明する。
〔A.構造〕
この電動車椅子1は、1個のボール7を回転自在に保持した台車3と、この台車3に回転自在に支持された回転座15と、この回転座15に取り付けられた座席部30と、ボール7や回転座15を回転させるための各種の手段とその操縦手段などで構成されている。
【0019】
〔A−1.台車、ボール〕(図1〜図4、図6、図7)
台車3は、そのボスを為すボール収納部4と、5本の脚5と、自在車6と、ボール収納部4に収納されたボール7などから成る。
ボール収納部4は、上下両面が開口した円筒状をしており、その高さは直径の半分余りで、上端部4a(図2参照)はその余の部分より多少拡径されている。このボール収納部4の内周面に、横長のボール受けローラー8(図2、図3参照)が10個、周方向へ等間隔で取り付けられている。これらボール受けローラー8は、上方から見てコ字形をしたローラー支持金具9に回転自在に支持されており、このローラー支持金具9がボール収納部4の内周面に固定されることで、10個のボール受けローラー8が平面視ほぼ正十角形を為すように配列される。このボール収納部4とボール受けローラー8とでボール保持手段が構成される。
【0020】
5本の脚5は、ボール収納部4の外周面の下部から水平な姿勢で放射状に突出していて、その先端部に自在車6が回転自在に取り付けられている。また、各脚5の基端部上面には単球ベアリング10(図1〜図3参照)が上向き姿勢で取り付けられている。従って、5つの自在車6は、上から見てボール収納部4の周囲に配置される。
【0021】
ボール7は、この電動車椅子1の駆動輪を為すもので、例えばゴム様弾性を有する皮で中空に形成されており、その大部分がボール収納部4の中に納まる。
通常、ボール7の接地点は、図2に示すように、自在車6が接地する面と同じ高さにあり、この状態で、ボール7の外周面のうちその中心と同じ高さにある部分がボール受けローラー8に接触し、これにより、ボール7が10個のボール受けローラー8に回転自在に保持される。
【0022】
〔A−2.回転座〕(図1〜図4)
回転座15は、水平な円帯形のベースリング16と、このベースリング16の中心角90゜間隔の位置から垂直に立ち上がった4本の支柱17と、この支柱17の上端に固定された水平な円板形の天板18とから成る架構を備えており、この架構は化粧囲い19(図1だけに示してある)で囲撓されている。
ベースリング16の上面のうち各支柱17の脇の位置にベアリング支持金具20が固定され、この各ベアリング支持金具20に単球ベアリング21が互いに内側を向く姿勢で取り付けられている。
【0023】
4本の支柱17のうち、互いに隣接する1組の支柱(図3における右側2本の支柱)の間にはモーター取付け壁22(図2、図3参照)が掛け渡すように固定され、また、この2本の支柱のそれぞれとこれに各別に隣接する支柱との間には図示しない側腕取付け壁が掛け渡すように固定されている。
天板18の中心部には、縦形円筒状の軸受け24がここを貫通する状態で取り付けられている。
【0024】
このような回転座15は、ベースリング16がボール収納部4を囲う状態で、脚5の5つの単球ベアリング10に着座し、且つ、回転座15の4つの単球ベアリング21がボール収納部4の外周面に接することで、ボール収納部4の中心軸、換言すればボール7の中心を通る垂直軸を中心として回転するように台車3に回転自在に支持される。図2を見て分かるように、回転座15の4つの単球ベアリング21は、ボール収納部4の外周面のうち上端部4aに続く段差部に接しており、それにより、回転座15を持ち上げたときは台車3が一緒に持ち上がるようになっている。
【0025】
〔A−3.座席部、バッテリー〕(図1〜図3、図6、図7)
回転座15には座席部30が取り付けられている。即ち、回転座15の上面にはシート取付け台31(図2参照)が取り付けられており、ここにシート32が固定され、このシート32の後端部から背当て33が立ち上がっている。また、回転座15の図示しない側腕取付け壁からはそれぞれL字形の側腕34が上に延びていて、この側腕34の上端に水平な肘掛バー35が固定されている。この肘掛バー35にはソフトカバーが被せられている。また、回転座15のベースリング16からはフットレストステー36が延びており、このフットレストステー36の先端にフットレスト37が固定されている。これらシート32と、背当て33と、左右の肘掛バー35と、フットレスト37とで座席部30が構成される。従って、座席部30は常に回転座15と一体的に回転する。
【0026】
背当て33の下方後側にはバッテリーケース39(図2参照)が設けられていて、ここに、12ボルト蓄電池40が2個収納されている。この2つの蓄電池40は直列に接続されて、後述するシーケンス回路の24ボルト電源となる。
【0027】
〔A−4.駆動ユニット〕(図2〜図4、図6、図7)
50は駆動ユニットを示す。この駆動ユニット50は、ボール7を回転させて車椅子1を走行させるための機構であって、表面部がゴム製の駆動ローラー51と、これを回転させる走行モーター52と、これらを水平な姿勢で取り付けたユニットベース53と、このユニットベース53から垂直に立ち上がった円柱状のユニット軸54などから構成されている。
【0028】
ユニットベース53の半部は下向きに開口した横長のほぼコ字形を為し、そのコ字形の両側部にピローブロック55が固定され、このピローブロック55に駆動ローラー51のローラー軸51aの両端部が各別に支持されている。走行モーター52は減速機構付きの直流モーターで、駆動ローラー51と並ぶように配置され、その出力軸にはスプロケットホィール56が取り付けられている。そして、ローラー軸51aの一端部にもスプロケットホィール57が取り付けられていて、これらスプロケットホィール56、57間にチェーン58が無端状に掛け渡されている。
【0029】
ユニット軸54は、ユニットベース53のうち駆動ローラー51の中央部に対応した位置から立ち上がっていて、回転座15の前記軸受け24に回転自在に挿通されると共に、シート取付け台31に形成された孔31a(図2参照)を通され、この孔31aから上に突出した上端部に抜止めピン59が取り付けられている。従って、駆動ユニット50は、ある程度の範囲内で上下方向へ変位することができ且つユニット軸54の軸回りへ回転し得る状態で回転座15に支持され、その自重で駆動ローラー51がボール7の頂部に乗る。
しかして、走行モーター52が駆動すると、駆動ローラー51が回転してボール7を回転させるので、このボール7の回転で電動車椅子1が走行する。
【0030】
〔A−5.駆動ユニット回転手段〕(図2〜図4)
前記した2つの側腕34の一方にはその下端面に駆動ユニット回転モーター71(図1、図4参照)が取り付けられている。この駆動ユニット回転モーター71はウォームギア式の減速機構を備えており、その出力軸にはタイミングプーリー72が取り付けられている。また、ユニット軸54の下端部にもタイミングプーリー73が取り付けられていて、これらタイミングプーリー72と73にタイミングベルト74が無端状に掛け渡されている。従って、駆動ユニット回転モーター71が駆動していない状態では、ユニット軸54の軸回り方向での向きが固定するので、回転座15に対する駆動ローラー51の向きも固定するが、駆動ユニット回転モーター71が駆動したときは、ユニット軸54が軸回りへ回転されるので、それによって、回転座15に対する駆動ローラー51の向きが変更される。
【0031】
回転座15及び座席部30に対する駆動ユニット50の位置は、上から見た駆動ローラー51の径方向が図3に示すように座席部30の前後方向へ延びる正対位置と、図7に示すように正対位置より90゜左側を向いた左向き位置と、正対位置より90゜右側を向いた右向き位置のいずれかに制御される。
図示は省略してあるが、この位置制御を行うために、ユニットベース53の上面には磁気近接スイッチのマグネット部が一つ取り付けられ、回転座15の天板18の下面には上記マグネット部の回転軌跡と対応した位置に磁気近接スイッチのコンタクト部が3つ、90゜間隔で取り付けられていて、これらマグネット部とコンタクト部とで駆動ユニット50の上記3つの位置が検出される。
【0032】
〔A−6.回転座回転手段〕(図2〜図4)
回転座15には、回転座回転モーター81が取り付けられている。このモーター81は回転座15を回転させるためのもので、逆さ向きでモーターケース82に取り付けられ、このモーターケース82から下へ突出した出力軸に遊星ゴムローラー83が固定されている。モーターケース82は、左右へ張り出した耳82aを有し、遊星ゴムローラー83は前記ボール収納部4の上端部4aに内側から接触するように位置する。
回転座15に設けられている前記モーター取付け壁22からは、互いに平行な左右2本のモーター取付けボルト84が内側へ向けて水平に突出している。このモーター取付けボルト84は、上記耳82aに形成されている孔を通されると共に、その孔から先の部分にコイルバネ85とバネ受け座86が外嵌され、先端部にナット87が取り付けられている。
【0033】
従って、ナット87をモーター取付けボルト84に対してねじ込み方向へ回して行くと、コイルバネ85が圧縮されてモーターケース82を前方へ押圧するので、この押圧によって遊星ゴムローラー83がボール収納部4の上端部4aに内側から圧着される。
しかして、回転座回転モーター81が駆動すると、遊星ゴムローラー83にボール収納部4の内周面を転がる回転力が付勢されるため、この回転力によって回転座回転モーター81自体に移動力が生じる。従って、回転座回転モーター81が駆動すると、座席部30付きの回転座15がボール収納部4の中心軸を中心として回転する。
【0034】
〔A−7.操縦手段等〕(図1〜図3、図5〜図7)
前記バッテリーケース39の下方には制御ボックス90(図2参照)が設けられており、この中に、前記走行モーター52や駆動ユニット回転モーター71及び回転座回転モータ81等を制御するための図示しないシーケンス回路が組み込まれている。
右側の肘掛バー35の先端部には4方向型のジョイスティック91と、走行方向切替えレバー92と、スナップスイッチ形の電源スイッチ93が取り付けられている。電源スイッチ93は、上記シーケンス回路の電源スイッチである。
【0035】
ジョイスティック91は垂直に立った姿勢で設けられており、シート32の側から見て、これを前方へ傾けると走行モーター52が正転して駆動ローラー51を正転(図2における時計回り方向への回転)させ、後方へ傾けると走行モーター52が逆転して駆動ローラー51を逆転(図2における反時計回り方向への回転)させる。また、ジョイスティック91を左側へ傾けると回転座回転モーター81が正転して回転座15及び座席部30を上から見た反時計回り方向へ回転させ、右側へ傾けると回転座回転モーター81が逆転して回転座15及び座席部30を上から見た時計回り方向へ回転させる。
【0036】
ジョイスティック91のこのような機能を表示するために、ジョイスティック91の根元周りには次のようなマークが表示されている(図5参照)。即ち、ジョイスティック91の前側には前進を意味するマーク94aが、後側には後進を意味するマーク94bが、左側には左回転を意味するマーク94cが、右側には右回転を意味するマーク94dが、それぞれ設けられている。
【0037】
走行方向切替えレバー92は、2つの接点を持つ3ポジション式スナップスイッチの操作レバーであり、これを左側へ倒したときは駆動ユニット回転モーター71が正転して駆動ユニット50を上から見た見た反時計回り方向へ回転させ、右側へ倒したときは駆動ユニット回転モーター71が逆転して駆動ユニット50を上から見た時計回り方向へ回転させる。
【0038】
この回転は、駆動ユニット50の前記3つの位置を検出するための図示しない近接スイッチからの信号入力に従って停止する。例えば、駆動ユニット50が正対位置に来ている状態から走行方向切替えレバー92を右側へ倒すと、駆動ユニット50が時計回り方向へ回転し始め、駆動ユニット50が右向き位置に到達したところでこの位置を検出するコンタクト部から所定の信号が出力して駆動ユニット回転モーター71の回転が停止する。また、この状態から走行方向切替えレバー92を左側へ倒すと、駆動ユニット50が反時計回り方向へ回転し始め、駆動ユニット50が正対位置に到達したところでこの位置を検出するコンタクト部から所定の信号が出力して駆動ユニット回転モーター71の回転が停止する。
【0039】
走行方向切替えレバー92の根元回りには、駆動ユニット50の位置を発光表示する次のような方向指示マークが設けられている(図5参照)。即ち、走行方向切替えレバー92の前側には駆動ユニット50が正対位置に来ていることを示す方向指示マーク95aが、左側には駆動ユニット50が左向き位置に来ていることを示す方向指示マーク95bが、右側には駆動ユニット50が右向き位置に来ていることを示す方向指示マーク95cがそれぞれ設けられている。これら方向指示マーク95a〜95cの下には図示しない発光体が各別に配置されていて、駆動ユニット50の現在の位置に対応した発光体が発光して当該方向指示マークを光輝させる。例えば、現在、駆動ユニット50が左向き位置に来ているときは、電源スイッチ93の投入と同時に、方向指示マーク95bが光輝する。
電動車椅子1は以上のように構成されている。
【0040】
〔B.使用方法等〕(図6、図7)
次に、電動車椅子1の使用方法等を説明する。
〔B−1.乗車と、座席の向きの変更〕
この電動車椅子1を使用する者は、シート32に腰を下ろしてフットレスト37に足を乗せることで乗車する。そして、腕を左右の肘掛バー35に置き、電源スイッチ93を投入する。
座席部30の向きを変更するときは、ジョイスティック91を左又は右へ傾けて座席部30付き回転座15を回転させ、所望の向きになったところでジョイスティック91を中立位置に戻す。この回転が行われるとき、台車3は全く動かないので、向きを変更するための特別な空間は殆ど必要無い。
【0041】
〔B−2.前進走行、後進走行〕
前記したように、この電動車椅子1は、駆動ローラー51がボール7を回転させることで走行するので、その走行方向は、駆動ユニット50の位置(駆動ローラー51の向き)と走行モーター52の回転方向とで規定される。
すなわち、方向指示マーク95aが発光している場合は駆動ユニット50が正対位置に来ているので、この状態からジョイスティック91を前側へ傾けると駆動ローラー51が正転して車椅子1を座席部30から見た真正面へと向かって走行させ、ジョイスティック91を後側へ傾けると駆動ローラー51が逆転して車椅子1を真後ろへ向かって走行させる。
【0042】
この場合の座席部30の向きと走行方向との関係は、座席部30付きの回転座15の向きを変えても常に同じである。例えば、図6(A)に示す状態から、ジョイスティック91を右側へ傾けて座席部30付き回転座15を同図(B)に示すように90゜右回転させると、それと一体的に駆動ユニット50も90゜右回転するからである。従って、この(B)の状態からジョイスティック91を前側へ傾ければ車椅子1は前方へ走行し、ジョイスティック91を後側へ傾ければ車椅子1は後方へ走行する。
【0043】
〔B−3.横走行〕
また、座席部30の向きを変えないで横方向へ走行するときは、走行方向切替えレバー92を左又は右へ傾けて駆動ユニット50の向きを変更する。例えば、図6(A)に示す状態から、回転座15の向きを変えずに左へ横走行しようとする場合は、走行方向切替えレバー92を左側へ傾ける。これにより、駆動ユニット回転モーター71が正転して駆動ユニット50を図7に示すように左向き位置へと回転させるので、方向指示マーク95bが発光するのを確認してから、ジョイスティック91を前側へ傾けると、車椅子1は左真横へ向かって走行する。
そして、所望の距離横走行した後、例えば前方へ走行したいときは、走行方向切替えレバー92を右側へ傾けて駆動ユニット50を正対位置に戻し、方向指示マーク95aが発光するのを確認してから、ジョイスティック91を前側へ傾ければ、車椅子1は前方へ向かって走行する。
【0044】
しかして、この電動車椅子1にあっては、走行方向を変更するのに、車体全体の向きは勿論、駆動輪であるボール7の向きでさえ変更する必要が無く、この変更には座席部30付き回転座15又は駆動ユニット50の向きだけを変更すれば足り、駆動ユニット50の姿勢変更は回転座15の中で行われるので、走行方向を変更する際に特別な空間は全く必要としない。
【0045】
尚、駆動ユニット50は回転座15に対して多少上下方向へ変位することができるようになっているため、ボール7が何らかの突起物に乗り上がる場合は、ボール7と共に駆動ユニット50も上へ変位することで車体の傾きを最小限に抑える。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成がこの実施の形態に限定されるものでは無く、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更等があっても本発明に含まれる。
特に、実施の形態においては、回転座に対する駆動ローラーの向きを変更することができるようにしたが、本発明を実施するに当たって横走行させる必要が無い場合は回転座に対する駆動ローラーの向きを固定しても良い。
また、本発明は車椅子に限らず、ショッピングカートやフォークリフトその他各種の電動車両として、広く適用することができる。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、駆動輪としてのボールは1個で足り、座席部の回転中心や駆動ユニットの回転中心がいずれもボールのほぼ中心を通る垂直軸であるため、座席の向きや走行方向の変更に、車体の平面サイズより大きい空間は殆ど必要とせず、最も小回りの利く車両を構成できる。特に、この電動車両では、走行方向を変更するのに、車体全体の向きは勿論、駆動輪の向きでさえ変更する必要が無く、この変更には座席部付き回転座又は駆動ローラー等の向きだけを変更すれば足りるので、駆動輪を駆動させるための駆動系の機械的構造や電気的配線が極めて簡単で済む。
【0048】
また、座席部の向きを変えずに走行方向を変更することができるので、横方向への走行も行うこともできる。このことは、オフィスや倉庫など比較的狭い空間内で優れた機動性を発揮する。
【0049】
また、ボール収納部に収納されたボールに駆動ローラーを上から接触させることが容易に実現できるし、ボールや駆動ローラの交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0050】
この発明によれば、回転座の回転すなわち座席部の向きの変更もモーターを駆動源とする電動式で行うことができるので、操作がより安楽なものになる。
【0051】
この発明によれば、回転座回転モーターを回転座の内側に組み込むこともできるため、回転座回転手段を回転座からはみ出さないコンパクトな形に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る電動車椅子の全体斜視図である。
【図2】図1の電動車椅子を一部切断して示す側面図である。
【図3】図2のA−A線に沿って切断した断面図である。
【図4】図1の電動車椅子における要部を拡大した斜視図である。
【図5】図1の電動車椅子における操縦手段の近くを拡大した平面図である。
【図6】図1の電動車椅子の操縦方法の一例を示す平面図である。
【図7】図1の電動車椅子の操縦方法の別の例を示す平面図である。
【符号の説明】
1…ボールを駆動輪とする電動車両 3…台車 4…ボール収納部
4、8…ボール保持手段 6…自在車輪 7…ボール 8…回転部材
15…座席部付き回転座 30…座席部 50…駆動ユニット
51…駆動ローラー 52…走行モーター
71、72、73、74…駆動ユニット回転手段
81…回転座回転モーター 81、82、93,84…回転座回転手段
83…遊星転輪 91…操縦手段 92…操縦手段

Claims (2)

  1. 中心軸が上下方向を向いた円筒状のボール収納部と前記ボール収納部の内周面に沿ってほぼ環状に配列された多数の回転部材と、前記ボール収納部の外周面の下部から放射状に突出した複数の脚と、前記脚のそれぞれに取り付けられた自在車と、前記ボール収納部の中に納まり、前記回転部材に接触して回転自在に保持されたボールとを有する台車と、
    水平な円帯形のベースリングと、前記ベースリングから垂直に立ち上がった支柱と、前記支柱の上端に固定された天板と、前記天板の上に取り付けられた座席部のシートとを有し、前記ベースリングが前記台車のボール収納部の外周面を囲むと共に前記台車の脚に着座した状態で、前記台車に前記ボール収納部の中心軸の軸回り回転自在に支持された座席部付き回転座と、
    該回転座の天板水平方向に回転自在且つ上下方向に変位可能に支持されながら上記ボールの頂部にその自重が乗せられた駆動ローラーと、この駆動ローラーを回転させる走行モーターを備えた駆動ユニットと、
    駆動ユニット回転モーターを備え、その駆動ユニット回転モーターの駆動力で前記駆動ユニットの駆動ローラーを前記中心軸の軸回りに回転させる駆動ユニット回転手段と、
    前記回転座の天板に取り付けられた回転座回転モーターと、この回転座回転モーターの出力軸に取り付けられ前記台車のボール収納部の内側の周璧上に圧着された遊星転輪とを備え、その回転座回転モーターの駆動力で前記回転座を回転させる回転座回転手段と、
    前記走行モーターと前記駆動ユニット回転モーターと前記回転座回転モーターに対する動作命令を行う操縦手段
    とを備えたことを特徴とするボールを駆動輪とする電動車両。
  2. 請求項1に記載したボールを駆動輪とする電動車両において、
    台車に回転座が単球ベアリングを介して支持されていることを特徴とするボールを駆動輪とする電動車両。
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