JP4786833B2 - 復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水の除鉄方法 - Google Patents

復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水の除鉄方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水から鉄を除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
火力発電所あるいは原子力発電所等の復水浄化系に使用する復水脱塩装置は、複数の脱塩塔からなる通水系統と、脱塩塔内のイオン交換樹脂を再生するための再生系統とで構成されている。そして前記脱塩塔は、塔内にH形あるいはNH形のカチオン交換樹脂と、OH形のアニオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂層を充填してなるものである。当該脱塩塔は、復水中の不純物イオンをイオン交換作用により、また復水中の酸化鉄微粒子、いわゆるクラッドを濾過作用あるいは吸着作用によって除去するものであるが、イオン交換樹脂層への酸化鉄微粒子の蓄積により圧力損失が増加したり、あるいは定体積処理量に達した場合、あるいは不純物イオンで飽和した場合には、脱塩塔内の混合イオン交換樹脂を前記再生系統に移送して再生を行う。この場合の再生処理としては、混合イオン交換樹脂層を、まず圧力空気でバブリングし、次いで洗浄水で逆洗することによって混合イオン交換樹脂層内に蓄積されている酸化鉄微粒子を除去し、しかる後にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とに逆洗分離して、酸、アルカリ等の再生剤を用いるという処理が行われる。
【0003】
上述のような再生処理における、逆洗用水、樹脂移送水、樹脂洗浄水としては、通常、純水が使用されるので、これら復水脱塩装置の再生処理により生じる、逆洗スクラビング排水、樹脂移送排水、洗浄排水等を含む排水は、酸化鉄微粒子をFe(鉄元素)として0.5〜10mg/L程度含んでいるものの、それ以外のイオン等の不純物の量が少なく、一般には、電気伝導率が1〜50μS/cm程度の低塩排水である。このため、該低塩排水中の酸化鉄微粒子を除去すれば、純水製造用の原水、前述のような混合イオン交換樹脂層の逆洗用水、あるいはイオン交換樹脂の再生に用いる酸、アルカリ等の再生薬品の希釈水等の種々の用途に再利用することが可能となる。
このため、従来から、低塩排水から酸化鉄微粒子を除去し、鉄含有量が低減された処理水を再利用することが行われており、かかる酸化鉄微粒子の除去方法として、低塩排水中の酸化鉄微粒子を砂濾過塔および活性炭濾過塔等を用いて濾別する方法、限外濾過膜を用いて濾別する方法、並びに低塩排水に凝集剤を添加して酸化鉄微粒子を凝集させ、これを濾別する方法等が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、低塩排水は復水脱塩装置の再生処理により生じるものであるという性質上、該低塩排水中に含まれる酸化鉄微粒子の濃度は一定ではなく、また酸化鉄微粒子の粒径などの物理的特性も一定ではない。このため、低塩排水を砂濾過および活性炭濾過塔を用いて濾過処理する場合には、砂濾過処理および活性炭濾過処理によっては鉄の除去が充分とはならない場合があり、実際に処理を行わないと処理水の良否が判断できないという問題があった。そして、このような処理系の不安定さにより、濾過処理後の処理水に要求される鉄の濃度によっては、利用可能な範囲の鉄含有量の処理水を安定的に回収することが困難であった。
また、限外濾過膜を使用する方法は、鉄の除去能に優れるという利点はあるものの、限外濾過膜が高価であるという問題を有している。
さらに、低塩排水に凝集剤を添加して酸化鉄微粒子を凝集させ、これを濾別する方法では、凝集剤として高分子凝集剤を使用する場合には、回収された処理水中に凝集剤由来の成分が残存するので、純度の高い水を回収できない。同様に、凝集剤として、塩化第2鉄、水酸化ナトリウム等を多量に添加する場合には、回収された処理水中に凝集剤由来のナトリウムイオン、塩素イオンが多量に残存するので、純度の高い水を回収できない。また、これら凝集剤を用いる場合には、多量の凝集物が形成されるので、該凝集物の濾過に使用される砂濾過塔などが目詰まりしやすいという問題もある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、復水脱塩装置の再生処理により生じる、鉄元素を含有する低塩排水に、微量の水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム、並びに微量の鉄塩を添加し、該低塩排水を空気撹拌することにより、後段の濾過塔で濾別可能なフロックを形成させ、該フロックを濾別することにより、該低塩排水の塩濃度を一定範囲に維持しつつ、安価かつ効率的に、該低塩排水から鉄を除去する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は請求項1として、復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水に、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムを2〜6mg/L、並びに鉄塩を鉄元素として0.06〜0.3mg/L添加し、該低塩排水を空気撹拌して、フロック含有処理水を生じさせ、さらに該フロック含有処理水を濾過処理してフロックを濾別し、鉄低減処理水を回収することを特徴とする、低塩排水の除鉄方法を提供する。
本発明は請求項2として、フロック含有処理水の濾過処理が、該フロック含有処理水を砂濾過塔を用いて濾過処理し、次いで、前記濾過処理により得られた濾液を活性炭濾過塔を用いて濾過処理するものである、請求項1記載の低塩排水の除鉄方法を提供する。
本発明は請求項3として、低塩排水が、鉄元素を0.5〜10mg/Lの濃度で含有し、該低塩排水の電気伝導率が1〜50μS/cmである請求項1または2記載の、低塩排水の除鉄方法を提供する。
本発明は請求項4として、鉄低減処理水中の鉄元素の濃度が50μg/L以下であり、該処理水の電気伝導率が1〜50μS/cmである請求項1〜3のいずれか1項記載の、低塩排水の除鉄方法を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法により処理される低塩排水は、復水脱塩装置の再生処理により生じた排水である。ここで、復水脱塩装置とは、火力発電所あるいは原子力発電所等の復水浄化系に使用される装置であって、1以上の脱塩塔からなる通水系統と、脱塩塔内のイオン交換樹脂を再生するための再生系統とで構成されるものである。また、復水脱塩装置に使用される脱塩塔は、例えば、塔内にH形あるいはNH形のカチオン交換樹脂と、OH形のアニオン交換樹脂の混合イオン交換樹脂層を充填したものであるがこれに限定されるものではなく、復水中の不純物イオンをイオン交換作用により、また復水中の酸化鉄微粒子、いわゆるクラッドを濾過作用あるいは吸着作用によって除去するものであれば任意の態様が可能である。
【0008】
低塩排水とは復水脱塩装置の再生処理により生じた排水のうち、復水脱塩装置の逆洗スクラビング排水、樹脂移送排水、樹脂洗浄排水等をいい、再生通薬工程、押出し工程の際に生じる、いわゆる再生廃液は含まない。また、これら任意の前記排水を任意の比率で混合し、プールしたものであっても良い。上述のような再生処理における、逆洗用水、樹脂移送水、樹脂洗浄水としては、通常、純水が使用されるので、復水脱塩装置の再生処理により生じた排水は、イオン濃度の低い低塩排水となる。本発明の処理に供される低塩排水のイオン濃度を一定範囲にするという観点から、低塩排水としては、復水脱塩装置の再生処理により生じる種々の排水を混合し、プールしたものであり、より好ましくは、プールすることにより所定のイオン濃度範囲とされたものである。
本発明において要求される、低塩排水が含有するイオン濃度の範囲は、本発明の方法によって得られる鉄低減処理水に要求されるイオン濃度に応じて適宜設定されるものであるが、一般的には、電気伝導率が1〜50μS/cmであり、好ましくは、1〜10μS/cm、より好ましくは、1〜5μS/cmである。
【0009】
本発明の低塩排水は、復水脱塩装置の再生処理により生じた排水であり、不純物としては、他の元素と比較して鉄元素を多く含んでおり、該鉄元素は主として酸化鉄微粒子の形態で存在する。低塩排水に含まれる鉄の量は、復水脱塩装置の使用状態、洗浄に使用される水量等により変動するが、一般的には、鉄元素量として、0.5〜10mg/Lであり、好ましくは、0.5〜2mg/L、より好ましくは、0.5〜1mg/Lである。
【0010】
本発明の方法においては、まず、「復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水に、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム、並びに鉄塩を微量添加し、該低塩排水を空気撹拌して、フロック含有処理水を生じさせる」という、フロック形成処理が行われる。
本発明において、低塩排水に添加される水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの量は微量であり、好ましくは、2〜6mg/Lであり、より好ましくは、3〜5mg/Lであり、さらにより好ましくは、3〜4mg/Lである。低塩排水に添加される水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムはいずれか1種類であっても良いし、両化合物が任意の割合で添加されても良い。水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの量が6mg/Lより多い場合には、フロックが充分に形成されず除鉄が不充分になる場合があり、また本発明の方法によって最終的に回収される処理水(以下、鉄低減処理水ともいう)中に、ナトリウムイオンが高濃度で残存することとなるので望ましくない。また、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムの量が2mg/Lより少ない場合には、低塩排水中の鉄とのフロック形成が充分とならず、最終的に回収される処理水中に鉄が残存することとなる。
【0011】
本発明において低塩排水に添加される鉄塩としては、低塩排水に鉄イオンを供給できるのであれば、任意の鉄塩が可能であり、例えば、塩化第2鉄、塩化第1鉄、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、鉄塩は塩化第2鉄である。
低塩排水に添加される鉄塩の量は微量であるが、好ましくは、鉄元素として0.06〜0.3mg/Lであり、より好ましくは、鉄元素として0.06〜0.1mg/Lである。鉄塩の量が鉄元素として0.3mg/Lより多いと、フロックの形成が充分とならない場合があり、また鉄低減処理水中に過剰なアニオンが含まれるので望ましくない。また、鉄元素として0.06mg/Lより少ないと、フロック形成に長時間を要することになり望ましくない。
【0012】
本発明の特徴の1つは、低塩排水でのフロック形成処理において、鉄塩が使用されるところにある。
本発明の発明者は、復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水に、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムを微量、好ましくは、2mg/L〜6mg/L添加して空気撹拌することにより、フロックが形成され、さらに、該フロックを含有する処理水を濾過処理することにより、所望の鉄含有量、電気伝導度の鉄低減処理水が得られることを見出した。しかし、鉄塩を添加しない上記方法では、フロック形成に一晩程度の長時間を要するため、発電所の復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水を継続して処理するには不充分であった。というのも、一般に、発電所から排出される前記低塩排水は図1の態様のように、低塩排水貯留槽1に貯留された低塩排水が低塩排水処理槽2に移送されてフロック形成処理されるのであるが、通常は、低塩排水貯留槽1に貯留された低塩排水が1日1サイクルで処理されることが要求されているからである。
本発明においては、フロック形成処理で鉄塩を微量添加することにより、フロック形成処理時間を約1時間程度にまで短縮可能にし、それにより、低塩排水を1日1サイクルで処理することを可能にしたところに、その有利な効果を有しているのである。
【0013】
本発明の方法でのフロック形成処理において、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム、並びに鉄塩を添加された低塩排水は空気撹拌される。
フロック形成処理において空気撹拌を行うことが本発明のさらなる特徴の1つである。本発明における空気撹拌とは、処理対象である低塩排水に空気を供給するような撹拌をいい、例えば、低塩排水のバブリングなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
本発明の発明者は、フロック形成処理において、復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水に、本発明で使用される微量の水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム、並びに微量の鉄塩、例えば、塩化第2鉄を添加して、該低塩排水に空気を供給しないような態様で撹拌を行った場合、すなわち、空気撹拌でない撹拌の場合には、望まれる程度にフロックが形成されないことを見出した。
一般に、排水の凝集処理において、鉄塩と水酸化ナトリウムを添加してフロックを形成させることは公知である。しかし、従来知られているこれら凝集剤の添加量は、通常、水酸化ナトリウム10〜20mg/L、および鉄塩は鉄元素として10〜20mg/L程度である。本発明においては、最終的に回収する処理水に一定以下のイオン濃度が要求されるところ、通常使用されるような量でこれら化合物を用いれば、鉄低減処理水中に該化合物由来のイオンが高濃度で残存し、イオン濃度を低く維持するという本発明の目的に反する。
また、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム、並びに、鉄塩の添加量を低減しただけでは、低塩排水から有効に鉄を除去できないのは、上述した通りである。すなわち、本発明は、通常使用されるよりも低減された量で水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム、並びに、鉄塩を低塩排水に添加するだけでなく、これに空気撹拌を組み合わせた点に特徴を有するのであり、これにより、低塩排水から有効に鉄を除去しつつ、イオン濃度を一定範囲に維持するという有利な効果を奏するものである。
【0014】
フロック形成処理における低塩排水の空気撹拌は、低塩排水に前記化合物を添加した後に開始しても良いし、添加前から撹拌していても良い。低塩排水の空気撹拌は、低塩排水に空気を供給することによって、該低塩排水を撹拌できるのであれば任意の方法、装置を使用することが可能であり、例えば、図1の態様のように、低塩排水処理槽2の底部に空気供給装置3を設け、該空気供給装置3から空気を該低塩排水処理槽2に貯留された低塩排水4に供給するような態様が可能であるが、これに限定されるものではない。また、好ましくは、低塩排水4への二酸化炭素および/または酸素の溶解効率を高めるために、該空気供給装置3にはセラミック等の多孔板、多孔球、多孔管などの散気板、散気球、散気管を取り付けることも可能である。
【0015】
低塩排水は、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム、並びに鉄塩が添加され、空気撹拌されることにより、該低塩排水中に含まれる鉄がフロックを形成する。添加方法および手段は特に限定されるものではないが、添加量の調節が容易であるとの観点から、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムは水溶液にして添加されるのが好ましい。また、鉄塩も水溶液にして添加されるのが好ましい。
本発明におけるフロックは、空気撹拌を行うことにより、まず、白色のフロックが形成され、次いで、時間の経過に伴い、フロックが茶褐色となるという過程を経て形成される。
【0016】
本発明のフロック形成処理において形成されるフロックは、上述のような白色または茶褐色のフロックであるが、該フロックは必ずしも目視によって確認できるものである必要はない。目視により確認できなくても、本発明の濾過処理において、要求される程度に鉄が濾別できるのであれば、フロックが形成されているものと認められる。
また、本発明のフロック形成処理においては、低塩排水に水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムを添加することにより、該低塩排水のpHが9程度に上昇する。そして、空気撹拌することによりpHが7付近にまで低下し、このpHの低下がフロックの形成と関連している。ただし、pHに大きな低減がなく、空気撹拌後もpH9付近であるような場合には、目視ではフロックは確認できないが、濾過処理によって除去可能な程度のフロックは形成されている場合がある。
【0017】
空気撹拌に使用される空気としては、通常の空気の組成を有するものであれば任意の空気を使用可能であり、特に限定されるものではない。また、本発明におけるフロック形成処理においては、空気中の二酸化炭素および/または酸素が関与していると考えられるので、通常の空気にこれら二酸化炭素および/または酸素を富化した空気も本発明の範囲内のものとして使用可能である。
【0018】
フロック形成処理においては、低塩排水に溶解する酸素および/または二酸化炭素の量が増大するに従って、フロックの形成速度も速くなる。よって、低塩排水に供給される空気量を増大させることにより、また、散気球、散気板、散気管を利用するなどして、低塩排水に供給される空気の気泡を小さくすることにより、フロックの形成速度を速くすることが可能である。
フロック形成のために必要とされる撹拌空気量は、低塩排水処理槽の大きさおよび形状、処理される低塩処理水の量、空気の気泡の大きさ、要求される処理時間等により適宜設定されるものであるが、例えば、低塩排水処理槽に、低塩排水が800m、水深が3mで貯留されている場合に、該貯留槽の底部から空気を供給して空気撹拌する場合には、3Nm/m/hrの空気量(線速度に換算すると3m/hr)であれば、約1〜2時間で、その後の砂濾過および活性炭濾過処理により除去できる程度のフロックを含有する処理水を得ることが可能となる。
【0019】
フロック形成処理は、フロック含有処理水を生じさせることができるのであれば、バッチ処理、連続処理など任意の方法により行うことが可能であるが、フロックを充分に形成させ、安定的に鉄の除去を行うという観点から、バッチ処理により行われるのが好ましい。低塩排水処理槽に低塩排水を貯留し、各化合物を必要量添加して空気撹拌し、フロックが形成される一定時間経過後から、一定量のフロック含有処理水を濾過処理に供する方法がより好ましい。
【0020】
本発明の方法においては、上述のフロック形成処理に引き続いて、「フロック含有処理水を濾過処理して、フロックを濾別し、鉄低減処理水を得る」濾過処理が行われる。
濾過処理は、鉄低減処理水に要求されるレベルまで鉄の含有量を低減できるものであれば、任意の、公知の濾過塔、濾過装置を用いることが可能であり、使用される濾過塔、濾過装置、濾過方法は特に限定されるものではない。一般に、復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水の処理にあたっては、砂濾過塔、活性炭濾過塔が使用されており、これら既存の設備を利用できるという点、コスト、および本発明において要求されるレベルまで鉄を低減できる点等を考慮すると、砂濾過塔および/または活性炭濾過塔を使用するのが好ましい。より好ましい態様としては、図1に示されるように、砂濾過塔7でフロック含有処理水を濾過処理し、該濾過処理により得られた濾液を活性炭濾過塔11を用いて濾過処理する態様が挙げられる。
【0021】
濾過処理において砂濾過塔が使用される場合には、濾過塔の大きさ、濾材の充填量、濾材の種類および粒径は、本発明の目的に反しない限りは特に限定されるものではない。また、使用される濾材は、複数種類の濾材が重層して充填されていても良い。濾材としては、アンスラサイト、濾過砂、除鉄用マンガンコーティング濾過砂等で、通常の濾過処理に使用される粒径のものが使用可能である。砂濾過塔の好ましい態様としては、図1のような、アンスラサイト8と濾過砂9を濾過砂利10の上に重層した態様が挙げられる。
活性炭濾過塔が使用される場合には、濾過塔の大きさ、濾材の充填量、濾材の種類および粒径は、本発明の目的に反しない限り、特に限定されるものではない。活性炭濾過塔の好ましい態様としては、図1のような、濾過砂利13の上に活性炭12を充填した態様が挙げられる。
これら濾過塔を流れるフロック含有処理水の流量は、使用される濾過塔の大きさ、濾材の種類、粒径、充填量などに応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではない。
【0022】
フロック形成処理で得られたフロック含有処理水を濾過処理することにより、フロックが濾別され、鉄元素が50μg/L以下である鉄低減処理水を得ることが可能となる。本発明の方法が、図1の態様のような、砂濾過塔7および活性炭濾過塔11を使用する場合には、砂濾過後の処理水中の鉄元素含有量を50μg/L以下、好ましくは、10μg/L以下にすることができ、活性炭濾過後の処理水、すなわち、本発明の方法によって最終的に得られる鉄低減処理水中の鉄元素含有量を10μg/L以下、好ましくは、5μg/L以下にすることが可能となる。また、本発明の方法によって得られる鉄低減処理水は、電気伝導率が1〜50μS/cm、好ましくは、1〜10μS/cmに維持されている。よって、本発明の方法においては、純水製造用の原水、前述のような混合イオン交換樹脂層の逆洗用水、あるいはイオン交換樹脂の再生に用いる酸、アルカリ等の再生薬品の希釈水等の種々の用途に再利用可能な水質の処理水を回収できる。
【0023】
本発明の低塩排水の除鉄方法の実施態様の1つを、発電所において通常使用される低塩排水処理装置の概略図である図1に基づいて詳述する。
本発明の方法で処理される低塩排水4は、復水脱塩装置の再生処理により生じる排水を貯留する低塩排水貯留槽1から、低塩排水処理槽2に供給される。図1においては、低塩排水貯留槽1は1つであるが、復水脱塩処理において使用される脱塩塔の数、再生により生じる排水の種類等に応じて、低塩排水貯留槽1を複数設けることも可能であり、特に限定されるものではない。低塩排水処理槽2には空気供給装置3が設置されており、該空気供給装置3は、ブロワによって移送される空気を低塩排水処理槽2内に貯留された低塩排水4に供給し、空気撹拌する。低塩排水処理槽2には、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムを供給するための水酸化ナトリウム供給手段5および鉄塩を供給する鉄塩供給手段6が設けられ、これらにより、低塩排水処理槽2に貯留された低塩排水4に水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム、並びに鉄塩が供給される。
一定時間空気撹拌を行うとフロックが形成され、低塩排水4はフロック含有処理水となる。得られたフロック含有処理水はポンプによって砂濾過塔7に移送され、フロック含有処理水が該砂濾過塔7を上から下に通過することにより、濾過処理が行われる。該砂濾過塔7においては、アンスラサイト8および濾過砂9が濾過砂利10の上に充填された態様であるが、本発明はこの態様に限定されるものではないのは、既に述べたとおりである。次いで、砂濾過塔7から排出される処理水は、活性炭濾過塔11に移送され、該活性炭濾過塔11を上から下に通過することにより、濾過処理が行われる。該活性炭濾過塔11においては、活性炭12が濾過砂利13の上に充填されているが、本発明はこの態様に限定されるものではない。
図1の態様においては、活性炭濾過塔11を通過した処理水は、鉄の含有量が低減された鉄低減処理水であり、該処理水は鉄低減処理水貯留槽14に貯留され、必要に応じて、純水製造のための原水等として使用される。
以下、実施例で本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0024】
【実施例】
実施例1
原子力発電所の復水脱塩装置の再生処理により得られた低塩排水(pH7.1、電気伝導率28.5μS/cm、鉄元素含有量1496μg/L)1Lをビーカーに入れ、水酸化ナトリウム溶液(25%水溶液)、および塩化第2鉄水溶液(38%水溶液)を表1に示される濃度となるように添加し、該低塩排水に空気を3.3Nm/m/hrで供給して、空気撹拌した。一定時間空気撹拌した後のpHを測定し、さらに目視によりフロックの形成を評価した。結果を表1に示す。表中のフロック形成における表示は以下の通りである;◎最も良好なフロック形成;○良好なフロック形成;×フロック形成しない。また、表中の処理液の状態とは、30分間撹拌処理された後の低塩排水の状態であり、フロックの量、上澄水の透明度等を示す。
【0025】
【表1】
Figure 0004786833
【0026】
表1の結果から、水酸化ナトリウムの添加量には至適範囲が存在することが明らかとなった。
【0027】
比較例1
撹拌を空気撹拌にせず、スターラーにて撹拌する方法を使用したことを除き、実施例1と同じ低塩排水を用いて、同じ方法でフロック形成処理を行ったが、実施例1で行った、いずれの濃度においてもフロックの形成は認められず、また、pHの低下も認められなかった。
このことから、本発明の方法において、空気撹拌が必須であることが明らかとなった。
【0028】
実施例2
小スケールでの除鉄効果
原子力発電所の復水脱塩装置の再生処理により得られた低塩排水(pH6.9、電気伝導率25.7μS/cm、鉄元素含有量807μg/L)20Lを容器に入れ、水酸化ナトリウム溶液(25%水溶液)、および塩化第2鉄水溶液(38%水溶液)を表2に示される濃度となるように添加し、該低塩排水に空気を3.3Nm/m/hrで供給して、空気撹拌した。60分間空気撹拌した後に、フロック含有処理水を20L/120分の流速で、砂濾過カラムおよび活性炭カラムに順次通過させて、得られた濾液の鉄元素含有量を測定した。また、該処理中に適宜、処理水のpHを測定し、さらに目視によりフロックの形成を評価した。なお、使用された砂濾過カラムは、内径3cmのカラムで、最上層としてアンスラサイトを30cm、次いで、その下層に濾過砂を30cmの高さで充填したものであり、また、活性炭カラムは内径3cmのカラムに活性炭を60cmの高さで充填したものである。また、使用された充填剤としては、アンスラサイトは約0.9mm、濾過砂は約0.55mm、また活性炭は0.6〜0.9mmの粒径のものを使用した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
Figure 0004786833
【0030】
実施例2の結果から、本発明の方法は、低塩排水に含有される鉄を10μg/L以下に低減できることが明らかとなった。
【0031】
低塩排水処理装置の実機の運転における本発明の除鉄効果
実施例3
原子力発電所の復水脱塩装置の再生処理により得られた低塩排水の処理装置における本発明の除鉄効果を検討した。低塩排水処理装置としては、図1に示される態様のものが使用された。低塩排水処理槽に800トンの低塩排水(pH6.56、電気伝導率28.5μS/cm、鉄元素含有量1600μg/L)が貯留された。貯留時の深さは3mであった。低塩排水処理槽の底部に設けられた空気供給装置から3.3Nm/m/hrの量で空気を低塩排水に供給した。空気撹拌をしつつ、水酸化ナトリウム溶液(25%水溶液)を7.5L添加し、1分後に塩化第2鉄水溶液(38%水溶液)を2L(鉄元素として0.13mg/Lとなる)添加した。空気撹拌を100分間行った後に、フロック含有処理水移送用のポンプを駆動し、濾過処理を開始した。なお、濾過処理開始後も空気撹拌は継続した。濾過処理は、フロック含有処理水を80トン/hrの通水量で、砂濾過塔および活性炭濾過塔に順次通過させて行い、砂濾過装置入口、および各濾過塔の出口で鉄の含有量およびpHをモニターした。なお、使用された砂濾過塔は、内径320cmで、最上層としてアンスラサイトを60cm、次いで、その下層に濾過砂を60cmの高さで充填したものであり、また、活性炭濾過塔は内径320cmで、活性炭を100cmの高さで充填したものであった。また、使用された充填剤としては、アンスラサイトは約0.9mm、濾過砂は約0.55mm、また活性炭は0.6〜0.9mmの粒径のものを使用した。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
Figure 0004786833
【0033】
実機においては、薬液添加から145分経過した後であっても、そのpHが約9という高い値を示しており、目視によるフロックの形成も認められなかったが、活性炭濾過塔出口の処理水においては、鉄含有量が10μg/L以下と顕著に低減されていた。このことから、目視確認はできないものの、低塩排水処理槽においてフロックが形成されており、後の濾過処理によりこれらフロックが濾別されたことが解る。よって、本発明の方法は、発電所の復水脱塩装置のために通常設けられている低塩排水処理装置に適用可能であることが明らかとなった。
また、低塩排水の電気伝導率は、原排水において28.5μS/cm、薬液添加後は36.4μS/cmであり、要求される水質を満足するものであった。
【0034】
実施例4
フロック形成と供給空気量との関係
実施例3において、濾過処理開始直後(薬液添加から100分後)に砂濾過処理塔入口水を容器に採取し、供給空気量の差によるpH低下およびフロック形成に要する時間について比較した。
砂濾過処理塔入口水20Lを容器に入れたものを2つ準備し、一方は3.3Nm/m/hrの空気量で撹拌し、もう一方は0.33Nm/m/hrの空気量で撹拌した。経時的に目視によってフロックの形成を、およびpHを観察した。結果を表4に示す。表中、フロックの有無において「形成」とあるのはその時点でフロックの形成が確認されたことを意味し、「−」はフロックが形成されていないことを意味する。
【0035】
【表4】
Figure 0004786833
【0036】
実施例4の結果から、空気撹拌における空気量を増大することにより、フロックの形成が促進されることが明らかとなった。
【0037】
実施例5および比較例2
原子力発電所の復水脱塩装置の再生処理により得られた低塩排水(pH6.56、電気伝導率25.7μS/cm、鉄元素含有量807μg/L)1Lをビーカーに入れ、水酸化ナトリウム溶液(25%水溶液)、および塩化第2鉄水溶液(38%水溶液)を表5に示される濃度となるように添加し、該低塩排水に空気を3.3Nm/m/hrまたは0.33Nm/m/hrで供給して、空気撹拌した。また、比較例2として、塩化第2鉄を添加せずに空気撹拌を行った。空気撹拌した後のpHを経時的に測定し、さらに目視によりフロックの形成を評価した。結果を表5に示す。
【0038】
【表5】
Figure 0004786833
【0039】
実施例5の結果から明らかなように、水酸化ナトリウムと塩化第2鉄を添加し、供給空気量が3.3Nm/m/hrの場合には、pHの低減およびフロックの形成が認められたが、空気供給量が0.33Nm/m/hrである場合には、時間の経過と共にpHの低下は認められたものの、フロックは目視確認できなかった。このことから、撹拌空気量が多い程フロックの形成が促進されることが明らかとなった。
また、塩化第2鉄が添加されない場合には、pHは若干しか低下せず、フロックの形成も認められなかった。このことから、フロックの形成による除鉄という本発明の方法においては、塩化第2鉄の添加が必要であることが明らかとなった。
【0040】
実施例6
気泡の大きさとフロック形成との関係
原子力発電所の復水脱塩装置の再生処理により得られた低塩排水(pH6.68、電気伝導率25.8μS/cm、鉄元素含有量1000μg/L)1Lをビーカーに入れ、水酸化ナトリウム溶液(25%水溶液)を3.4mg/L、および塩化第2鉄水溶液(38%水溶液)を鉄元素として0.13mg/Lとなるように添加し、該低塩排水に空気を1.1Nm/m/hrで供給して、空気撹拌した。空気撹拌を直径6mmのホースからそのまま空気を供給するものと、ホースの先端にセラミック製の散気管を設けたものを用いて空気を供給するものについて、一定時間空気撹拌した後のpH、および目視によるフロックの形成を比較した。結果を表6に示す。
【0041】
【表6】
Figure 0004786833
【0042】
実施例6の結果から明らかなように、散気管を設けて、気泡を微細にした方がpHの低下およびフロックの形成が速く、空気撹拌における気泡を小さくし、二酸化炭素および/または酸素の溶解速度を上げることが本発明において有用であることが解る。
【0043】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の低塩排水の除鉄方法は、復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水に、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウム、並びに鉄塩を微量添加して空気撹拌することにより、通常の砂濾過塔および/または活性炭濾過塔において濾別可能なフロックを形成させ、これを濾別することにより、該低塩排水の塩濃度を一定範囲に維持しつつ、安価かつ効率的に、該低塩排水から鉄を除去する効果を有する。
また、本発明の方法は、発電所における復水脱塩装置の再生処理で生じる低塩排水を、1日1サイクルで処理可能であるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は低塩排水処理装置を用いた本発明の一態様を示す概略図である。
【符号の説明】
1 低塩排水貯留槽
2 低塩排水処理槽
3 空気供給装置
4 低塩排水
5 水酸化ナトリウム供給手段
6 鉄塩供給手段
7 砂濾過塔
8 アンスラサイト
9 濾過砂
10 濾過砂利
11 活性炭濾過塔
12 活性炭
13 濾過砂利
14 鉄低減処理水貯留槽

Claims (4)

  1. 復水脱塩装置の再生処理により生じる低塩排水に、水酸化ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムを2〜6mg/L、並びに鉄塩を鉄元素として0.06〜0.3mg/L添加し、該低塩排水を空気撹拌して、フロック含有処理水を生じさせ、さらに該フロック含有処理水を濾過処理してフロックを濾別し、鉄低減処理水を回収することを特徴とする、低塩排水の除鉄方法。
  2. フロック含有処理水の濾過処理が、該フロック含有処理水を砂濾過塔を用いて濾過処理し、次いで、前記濾過処理により得られた濾液を活性炭濾過塔を用いて濾過処理するものである、請求項1記載の低塩排水の除鉄方法。
  3. 低塩排水が、鉄元素を0.5〜10mg/Lの濃度で含有し、該低塩排水の電気伝導率が1〜50μS/cmである請求項1または2記載の、低塩排水の除鉄方法。
  4. 鉄低減処理水中の鉄元素の濃度が50μg/L以下であり、該処理水の電気伝導率が1〜50μS/cmである請求項1〜3のいずれか1項記載の、低塩排水の除鉄方法。
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