JP4784718B2 - 電解質および電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池などの電気化学素子に用いられる電解質、およびそれを用いた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはラップトップコンピュータに代表されるポータブル電子機器が広く普及し、それらの小型化、軽量化および長時間連続駆動が強く求められている。それに伴い、それらのポータブル電源として、電池、特に二次電池のエネルギー密度を向上させるための研究開発が活発に進められている。中でも、リチウムイオン二次電池あるいはリチウム二次電池は、従来の非水系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため期待されている。
【0003】
従来、このリチウムイオン二次電池あるいはリチウム二次電池の電解質としては、炭酸プロピレンまたは炭酸ジエチルなどの炭酸エステル系非水溶媒に電解質塩としてLiPF6 が溶解されたものが、導電率が高く、電位的にも安定であるという点から広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、LiPF6 は熱的安定性が満足できるものではなく、そのため電池のサイクル特性あるいは保存特性が低くなってしまうという問題があった。このような特性劣化は、電解質中でLiPF6 の熱分解が僅かに生じた場合でも起こってしまう。
【0005】
LiPF6 以外の電解質塩としては、従来より、LiBF4 ,LiCF3 SO3 ,LiClO4 あるいはLiAsF6 なども知られている。しかし、LiBF4 は熱的安定性および酸化安定性は高いが導電率が低く、LiCF3 SO3 は熱的安定性は高いが導電率および酸化安定性が低く4V以上の高電圧で充電すると充分な放電特性が得られないという問題があった。また、LiClO4 およびLiAsF6 は、導電率は高いが良好なサイクル特性が得られないとう問題があった。
【0006】
また、近年では、LiN(CF3 SO2 2 ,LiN(C2 5 SO2 2 あるいはLiN(C4 9 SO2 )(CF3 SO2 )などが、比較的高い導電率を得ることができ、熱的安定性も高いことから、電解質塩として期待されている。しかし、これらの電解質塩は、酸化安定性が劣っているため、充電電圧が4Vを越えるリチウムイオン二次電池の電解質塩として用いた場合には、良好な導電率、サイクル特性および保存特性を同時に実現することができないという問題があった。
【0007】
なお、これらの問題は、従来のリチウムイオン二次電池あるいはリチウム二次電池に限ったものではなく、より高いエネルギー密度の実現に向けて発明者らが近年開発した二次電池、例えば負極の容量がリチウムの吸蔵および離脱による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分との和により表される二次電池についても同様である。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、導電率が高く、熱的安定性および酸化安定性に優れた電解質およびそれを用いた電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による電解質は、電解質塩および非水溶媒と、非水溶媒中に溶け出しているアルミニウムに吸着する化合物を含み、アルミニウムに吸着する化合物がアルミノンおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含むものである。
【0010】
本発明による電池は、正極および負極と共に電解質を備え電解質は、電解質塩および非水溶媒と、非水溶媒中に溶け出しているアルミニウムに吸着する化合物を含み、アルミニウムに吸着する化合物がアルミノンおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含むものである。
【0011】
本発明による他の電池は、正極および負極と共に電解質を備え負極の容量は、軽金属の吸蔵および離脱による容量成分と、軽金属の析出および溶解による容量成分との和により表され、電解質は、電解質塩および非水溶媒と、非水溶媒中に溶け出しているアルミニウムに吸着する化合物を含み、アルミニウムに吸着する化合物がアルミノンおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含むものである。
【0012】
本発明による電解質では、非水溶媒中に溶け出しているアルミニウムに吸着する化合物をみ、そのアルミニウムに吸着する化合物がアルミノンおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含んでいるので、導電率が高く、かつ熱的安定性および酸化安定性が向上する。
【0013】
本発明による電池および他の電池では、本発明による電解質を備えているので、電解質の導電率および安定性が高く、高い放電容量が得られると共に、サイクル特性、高温特性および保存安定性などが改善される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る電解質は、例えば、電解質塩と、この電解質塩を溶解する溶媒とを含んで構成されている。電解質塩は、解離によりイオン伝導性を持たせるためのものである。電解質塩としては、軽金属塩などが挙げられ、具体的には、リチウム(Li)塩、ナトリウム(Na)塩あるいはカリウム(K)塩などのアルカリ金属塩、またはマグネシウム(Mg)塩あるいはカルシウム(Ca)塩などのアルカリ土類金属塩、またはアルミニウム(Al)塩などから目的に応じて1種または2種以上が用いられる。
【0016】
なお、リチウム塩としては、例えば、LiAsF6 、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiB(C6 5 4 、LiCH3 SO3 、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 2 、LiN(C2 5 SO2 2 、LiN(C4 9 SO2 )(CF3 SO2 )、LiC(CF3 SO2 3 、LiAlCl4 、LiSiF6 、LiClおよびLiBrなどが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。中でも、LiPF6 は、高い導電率を得ることができ、酸化安定性にも優れているので好ましく、LiBF4 は、熱的安定性および酸化安定性に優れているので好ましい。また、LiClO4 は高い導電率が得られるので好ましく、LiN(CF3 SO2 2 およびLiN(C2 5 SO2 2 は、比較的高い導電率を得ることができ、熱的安定性も高いので好ましい。
【0017】
電解質塩の含有量(濃度)は、溶媒に対して0.5mol/dm3 〜2.0mol/dm3 の範囲内、あるいは0.5mol/kg〜2.0mol/kgの範囲内が好ましい。この範囲内において電解質のイオン伝導度を高くすることができるからである。
【0018】
溶媒は、例えば、液状の有機溶媒などの非水溶媒により構成されている。なお、液状の非水溶媒というのは、例えば、1種以上の非水化合物よりなり、25℃における固有粘度が10.0mPa・s以下のものを言う。なお、電解質塩を溶解した状態での固有粘度が10.0m・Pa以下のものでもよく、複数種の非水化合物を混合して溶媒を構成する場合には、混合した状態での固有粘度が10.0m・Pa以下であればよい。このような非水溶媒としては、従来より使用されている種々の非水溶媒を用いることができる。具体的には、炭酸プロピレンあるいは炭酸エチレンなどの環状炭酸エステル、炭酸ジエチルなどの鎖状エステル、プロピオン酸メチルあるいは酪酸メチルなどのカルボン酸エステルおよび、γ−ブチロラクトン,スルホラン,2−メチルテトラヒドロフランあるいはジメトキシエタンなどのエーテル類などが挙げられる。特に、酸化安定性の点からは、炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。
【0019】
この電解質は、また、添加剤として、溶媒に可溶なアルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含んでいる。これにより、この電解質では、導電率を高く保持しつつ、熱的安定性および酸化安定性を向上させることができるようになっている。
【0020】
アルミニウム化合物としては、例えば、アルミン酸リチウム(LiAlO2 )、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4 )、あるいは化1の化学式で表されるアルミニウム−アセチルアセトネートおよびその誘導体が挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
【化1】
Figure 0004784718
【0022】
アルミニウムに吸着する化合物としては、例えば、化2に示した構造式で表されるアルミノンが挙げられる。このようなアルミニウムに吸着する化合物は、電解質が接触している部材から電解質中に溶けだしているアルミニウムに吸着することにより、電解質中において、アルミニウム化合物と同様に機能するものと考えられる。
【0023】
【化2】
Figure 0004784718
【0024】
これらアルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物の含有量は、例えば混合して用いられる場合にはその合計の含有量であり、溶媒に対して、0.01質量%以上10.0質量%未満の範囲内であることが好ましく、0.01質量%より多く2質量%以下の範囲内であればより好ましい。この範囲内においてより高い改善効果を得ることができるからである。
【0025】
なお、この電解質は、これら電解質塩,液状の溶媒および添加剤などからなる液状のいわゆる電解液とされていてもよいが、更に、これらを保持する高分子化合物を含み、ゲル状とされていてもよい。この場合、高分子化合物の種類および添加量などは、イオン伝導度が室温で1mS/cm以上となるように調整されることが好ましい。
【0026】
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に、電気化学的安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物が好ましい。
【0027】
これら高分子化合物には、イオン伝導性を有さないものもあるが、電解質塩を解離させることができ、イオン伝導性を有するものもあり、そのどちらを用いてもよい。但し、電解質塩を解離させることができ、イオン伝導性を有する高分子化合物は、溶媒としても機能する。よって、このような高分子化合物は、電解質塩の含有量あるいはアルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物の含有量を規定する際の溶媒に含まれる。
【0028】
電解液に対する高分子化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、通常、電解液の5質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0029】
この電解質は、例えば、溶媒に電解質塩を溶解させたのち、アルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物からなる群のうちの少なくとも1種を添加することにより製造することができる。また、ゲル状とする場合には、例えば、この電解液を高分子化合物の出発原料であるモノマーと混合し、モノマーを重合させることにより製造することができる。
【0030】
このように本実施の形態に係る電解質によれば、アルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むようにしたので、導電率を高く保持しつつ、熱的安定性および酸化安定性を向上させることができる。よって、この電解質を用いて電池などの電気化学素子を構成するようにすれば、その特性をより向上させることができる。
【0031】
このような電解質は、例えば、次のような二次電池に好ましく用いられる。ここでは、電極反応種としてリチウムを用いた二次電池の例を挙げ、図面を参照して説明する。
【0032】
図1は本実施の形態に係る電解質を用いた二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケルのめっきがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0033】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものであり、例えば、チタン酸バリウム系半導体セラミックスにより構成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0034】
巻回電極体20は、例えば、センターピン24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0035】
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21aの両面に正極合剤層21bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21aの片面のみに正極合剤層21bを設けるようにしてもよい。正極集電体21aは、例えば、厚みが5μm〜50μm程度であり、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。正極合剤層21bは、例えば、厚みが80μm〜250μmであり、軽金属であるリチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料を含んで構成されている。なお、正極合剤層21bの厚みは、正極合剤層21bが正極集電体21aの両面に設けられている場合には、その合計の厚みである。
【0036】
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物,リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするには、一般式Lix MO2 で表されるリチウム複合酸化物あるいはリチウムを含んだ層間化合物が好ましい。なお、Mは1種類以上の遷移金属が好ましく、具体的には、コバルト(Co),ニッケル(Ni),マンガン(Mn),鉄(Fe),アルミニウム(Al),バナジウム(V)およびチタン(Ti)のうちの少なくとも1種が好ましい。xは、電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。また、他にも、スピネル型結晶構造を有するLiMn2 4 、あるいはオリビン型結晶構造を有するLiFePO4 なども高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
【0037】
なお、このような正極材料は、例えば、リチウムの炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物と、遷移金属の炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物とを所望の組成になるように混合し、粉砕した後、酸素雰囲気中において600℃〜1000℃の範囲内の温度で焼成することにより調製される。
【0038】
正極合剤層21bは、また、例えば導電剤を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいてもよい。導電剤としては、例えば、黒鉛,カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料があげられ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられる。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるようにしてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリビニリデンフルオロライドなどの高分子材料が挙げられ、そのうちの1種または2種以上を混合して用いられる。例えば、図1に示したように正極21および負極22が巻回されている場合には、結着剤として柔軟性に富むスチレンブタジエン系ゴムあるいはフッ素系ゴムなどを用いることが好ましい。
【0039】
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22aの両面に負極合剤層22bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22aの片面のみに負極合剤層22bを設けるようにしてもよい。負極集電体22aは、良好な電気化学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。特に、銅箔は高い電気伝導性を有するので最も好ましい。負極集電体22aの厚みは、例えば、6μm〜40μm程度であることが好ましい。6μmよりも薄いと機械的強度が低下し、製造工程において負極集電体22aが断裂しやすく、生産効率が低下してしまうからであり、40μmよりも厚いと電池内における負極集電体22aの体積比が必要以上に大きくなり、エネルギー密度を高くすることが難しくなるからである。
【0040】
負極合剤層22bは、軽金属であるリチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて、例えば正極合剤層21bと同様の結着剤を含んでいてもよい。負極合剤層22bの厚みは、例えば、80μm〜250μmである。この厚みは、負極合剤層22bが負極集電体22aの両面に設けられている場合には、その合計の厚みである。
【0041】
なお、本明細書において軽金属の吸蔵・離脱というのは、軽金属イオンがそのイオン性を失うことなく電気化学的に吸蔵・離脱されることを言う。これは、吸蔵された軽金属が完全なイオン状態で存在する場合のみならず、完全なイオン状態とは言えない状態で存在する場合も含む。これらに該当する場合としては、例えば、黒鉛に対する軽金属イオンの電気化学的なインタカレーション反応による吸蔵が挙げられる。また、金属間化合物あるいは合金の形成による軽金属の吸蔵も挙げることができる。
【0042】
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛,難黒鉛化性炭素あるいは易黒鉛化性炭素などの炭素材料が挙げられる。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好な充放電サイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。
【0043】
黒鉛としては、例えば、真密度が2.10g/cm3 以上のものが好ましく、2.18g/cm3 以上のものであればより好ましい。なお、このような真密度を得るには、(002)面のC軸結晶子厚みが14.0nm以上であることが必要である。また、(002)面の面間隔は0.340nm未満であることが好ましく、0.335nm以上0.337nm以下の範囲内であればより好ましい。
【0044】
黒鉛は、天然黒鉛でも人造黒鉛でもよい。人造黒鉛であれば、例えば、有機材料を炭化して高温熱処理を行い、粉砕・分級することにより得られる。高温熱処理は、例えば、必要に応じて窒素(N2 )などの不活性ガス気流中において300℃〜700℃で炭化し、毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1500℃まで昇温してこの温度を0時間〜30時間程度保持し仮焼すると共に、2000℃以上、好ましくは2500℃以上に加熱し、この温度を適宜の時間保持することにより行う。
【0045】
出発原料となる有機材料としては、石炭あるいはピッチを用いることができる。ピッチには、例えば、コールタール,エチレンボトム油あるいは原油などを高温で熱分解することにより得られるタール類、アスファルトなどを蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチーム蒸留),熱重縮合,抽出,化学重縮合することにより得られるもの、木材還流時に生成されるもの、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラートまたは3,5−ジメチルフェノール樹脂がある。これらの石炭あるいはピッチは、炭化の途中最高400℃程度において液体として存在し、その温度で保持されることで芳香環同士が縮合・多環化し、積層配向した状態となり、そののち約500℃以上で固体の炭素前駆体、すなわちセミコークスとなる(液相炭素化過程)。
【0046】
有機材料としては、また、ナフタレン,フェナントレン,アントラセン,トリフェニレン,ピレン,ペリレン,ペンタフェン,ペンタセンなどの縮合多環炭化水素化合物あるいはその誘導体(例えば、上述した化合物のカルボン酸,カルボン酸無水物,カルボン酸イミド)、またはそれらの混合物を用いることができる。更に、アセナフチレン,インドール,イソインドール,キノリン,イソキノリン,キノキサリン,フタラジン,カルバゾール,アクリジン,フェナジン,フェナントリジンなどの縮合複素環化合物あるいはその誘導体、またはそれらの混合物を用いることもできる。
【0047】
なお、粉砕は、炭化,仮焼の前後、あるいは黒鉛化前の昇温過程の間のいずれで行ってもよい。これらの場合には、最終的に粉末状態で黒鉛化のための熱処理が行われる。但し、嵩密度および破壊強度の高い黒鉛粉末を得るには、原料を成型したのち熱処理を行い、得られた黒鉛化成型体を粉砕・分級することが好ましい。
【0048】
例えば、黒鉛化成型体を作製する場合には、フィラーとなるコークスと、成型剤あるいは焼結剤となるバインダーピッチとを混合して成型したのち、この成型体を1000℃以下の低温で熱処理する焼成工程と、焼成体に溶融させたバインダーピッチを含浸させるピッチ含浸工程とを数回繰り返してから、高温で熱処理する。含浸させたバインダーピッチは、以上の熱処理過程で炭化し、黒鉛化される。ちなみに、この場合には、フィラー(コークス)とバインダーピッチとを原料にしているので多結晶体として黒鉛化し、また原料に含まれる硫黄や窒素が熱処理時にガスとなって発生することから、その通り路に微小な空孔が形成される。よって、この空孔により、リチウムの吸蔵・離脱反応が進行し易しくなると共に、工業的に処理効率が高いという利点もある。なお、成型体の原料としては、それ自身に成型性、焼結性を有するフィラーを用いてもよい。この場合には、バインダーピッチの使用は不要である。
【0049】
難黒鉛化性炭素としては、(002)面の面間隔が0.37nm以上、真密度が1.70g/cm3 未満であると共に、空気中での示差熱分析(differential thermal analysis ;DTA)において700℃以上に発熱ピークを示さないものが好ましい。
【0050】
このような難黒鉛化性炭素は、例えば、有機材料を1200℃程度で熱処理し、粉砕・分級することにより得られる。熱処理は、例えば、必要に応じて300℃〜700℃で炭化した(固相炭素化過程)のち、毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1300℃まで昇温し、この温度を0〜30時間程度保持することにより行う。粉砕は、炭化の前後、あるいは昇温過程の間で行ってもよい。
【0051】
出発原料となる有機材料としては、例えば、フルフリルアルコールあるいはフルフラールの重合体,共重合体、またはこれらの高分子と他の樹脂との共重合体であるフラン樹脂を用いることができる。また、フェノール樹脂,アクリル樹脂,ハロゲン化ビニル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ポリアセチレンあるいはポリパラフェニレンなどの共役系樹脂、セルロースあるいはその誘導体、コーヒー豆類、竹類、キトサンを含む甲殻類、バクテリアを利用したバイオセルロース類を用いることもできる。更に、水素原子(H)と炭素原子(C)との原子数比H/Cが例えば0.6〜0.8である石油ピッチに酸素(O)を含む官能基を導入(いわゆる酸素架橋)させた化合物を用いることもできる。
【0052】
この化合物における酸素の含有率は3%以上であることが好ましく、5%以上であればより好ましい(特開平3−252053号公報参照)。酸素の含有率は炭素材料の結晶構造に影響を与え、これ以上の含有率において難黒鉛化性炭素の物性を高めることができ、負極22の容量を向上させることができるからである。ちなみに、石油ピッチは、例えば、コールタール,エチレンボトム油あるいは原油などを高温で熱分解することにより得られるタール類、またはアスファルトなどを、蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチーム蒸留),熱重縮合,抽出あるいは化学重縮合することにより得られる。また、酸化架橋形成方法としては、例えば、硝酸,硫酸,次亜塩素酸あるいはこれらの混酸などの水溶液と石油ピッチとを反応させる湿式法、空気あるいは酸素などの酸化性ガスと石油ピッチとを反応させる乾式法、または硫黄,硝酸アンモニウム,過硫酸アンモニア,塩化第二鉄などの固体試薬と石油ピッチとを反応させる方法を用いることができる。
【0053】
なお、出発原料となる有機材料はこれらに限定されず、酸素架橋処理などにより固相炭化過程を経て難黒鉛化性炭素となり得る有機材料であれば、他の有機材料でもよい。
【0054】
難黒鉛化性炭素としては、上述した有機材料を出発原料として製造されるものの他、特開平3−137010号公報に記載されているリン(P)と酸素と炭素とを主成分とする化合物も、上述した物性パラメータを示すので好ましい。
【0055】
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料としては、また、リチウムと合金あるいは化合物を形成可能な金属あるいは半導体、またはこれらの合金あるいは化合物が挙げられる。これらは高いエネルギー密度を得ることができるので好ましく、特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。
【0056】
このような金属あるいは半導体としては、例えば、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)およびイットリウム(Y)が挙げられる。これらの合金あるいは化合物としては、例えば、化学式Mas Mbt Liu 、あるいは化学式Map Mcq Mdr で表されるものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチウムと合金あるいは化合物を形成可能な金属元素および半導体元素のうちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa以外の金属元素および半導体元素のうち少なくとも1種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、MdはMa以外の金属元素および半導体元素のうち少なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよびrの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q>0、r≧0である。
【0057】
中でも、4B族の金属元素あるいは半導体元素、またはそれらの合金あるいは化合物が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズ、またはそれらの合金あるいは化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0058】
このような合金あるいは化合物について具体的に例を挙げれば、LiAl、AlSb、CuMgSb、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Mg2 Sn、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 4 、Si2 2 O、SiOv (0<v≦2)、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSiOあるいはLiSnOなどがある。
【0059】
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、酸化鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどの酸化物や、あるいはLiN3 などが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン,ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0060】
また、この二次電池では、充電の過程において、開回路電圧(すなわち電池電圧)が過充電電圧よりも低い時点で負極22にリチウム金属が析出し始めるようになっている。つまり、開回路電圧が過充電電圧よりも低い状態において負極22にリチウム金属が析出しており、負極22の容量は、リチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウム金属の析出・溶解による容量成分との和で表される。従って、この二次電池では、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料とリチウム金属との両方が負極活物質として機能し、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料はリチウム金属が析出する際の基材となっている。
【0061】
なお、過充電電圧というのは、電池が過充電状態になった時の開回路電圧を指し、例えば、日本蓄電池工業会(電池工業会)の定めた指針の一つである「リチウム二次電池安全性評価基準ガイドライン」(SBA G1101)に記載され定義される「完全充電」された電池の開回路電圧よりも高い電圧を指す。また換言すれば、各電池の公称容量を求める際に用いた充電方法、標準充電方法、もしくは推奨充電方法を用いて充電した後の開回路電圧よりも高い電圧を指す。具体的には、この二次電池では、例えば開回路電圧が4.2Vの時に完全充電となり、開回路電圧が0V以上4.2V以下の範囲内の一部においてリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の表面にリチウム金属が析出している。
【0062】
これにより、この二次電池では、高いエネルギー密度を得ることができると共に、サイクル特性および急速充電特性を向上させることができるようになっている。これは、負極22にリチウム金属を析出させるという点では負極にリチウム金属あるいはリチウム合金を用いたいわゆるリチウム二次電池と同様であるが、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料にリチウム金属を析出させるようにしたことにより、次のような利点が生じるためであると考えられる。
【0063】
第1に、いわゆるリチウム二次電池ではリチウム金属を均一に析出させることが難しく、それがサイクル特性を劣化させる原因となっていたが、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料は一般的に表面積が大きいので、この二次電池ではリチウム金属を均一に析出させることができることである。第2に、いわゆるリチウム二次電池ではリチウム金属の析出・溶出に伴う体積変化が大きく、それもサイクル特性を劣化させる原因となっていたが、この二次電池ではリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の粒子間の隙間にもリチウム金属が析出するので体積変化が少ないことである。第3に、いわゆるリチウム二次電池ではリチウム金属の析出・溶解量が多ければ多いほど上記の問題も大きくなるが、この二次電池ではリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料によるリチウムの吸蔵・離脱も充放電容量に寄与するので、電池容量が大きいわりにはリチウム金属の析出・溶解量が小さいことである。第4に、いわゆるリチウム二次電池では急速充電を行うとリチウム金属がより不均一に析出してしまうのでサイクル特性が更に劣化してしまうが、この二次電池では充電初期においてはリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料にリチウムが吸蔵されるので急速充電が可能となることである。
【0064】
これらの利点をより効果的に得るためには、例えば、開回路電圧が過充電電圧になる前の最大電圧時において負極22に析出するリチウム金属の最大析出容量は、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の充電容量能力の0.05倍以上3.0倍以下であることが好ましい。リチウム金属の析出量が多過ぎるといわゆるリチウム二次電池と同様の問題が生じてしまい、少な過ぎると充放電容量を十分に大きくすることができないからである。また、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の放電容量能力は、150mAh/g以上であることが好ましい。リチウムの吸蔵・離脱能力が大きいほどリチウム金属の析出量は相対的に少なくなるからである。なお、負極材料の充電容量能力は、例えば、リチウム金属を対極として、この負極材料を負極活物質とした負極について0Vまで定電流・定電圧法で充電した時の電気量から求められる。負極材料の放電容量能力は、例えば、これに引き続き、定電流法で10時間以上かけて2.5Vまで放電した時の電気量から求められる。
【0065】
セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ23を構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化することで用いることができる。
【0066】
このポリオレフィン製の多孔質膜は、例えば、溶融状態のポリオレフィン組成物に溶融状態で液状の低揮発性溶媒を混練し、均一なポリオレフィン組成物の高濃度溶液としたのち、これをダイスにより成型し、冷却してゲル状シートとし、延伸することにより得られる。
【0067】
低揮発性溶媒としては、例えば、ノナン,デカン,デカリン,p−キシレン,ウンデカンあるいは流動パラフィンなどの低揮発性脂肪族または環式の炭化水素を用いることができる。ポリオレフィン組成物と低揮発性溶媒との配合割合は、両者の合計を100質量%として、ポリオレフィン組成物が10質量%以上80質量%以下、更には15質量%以上70質量%以下であることが好ましい。ポリオレフィン組成物が少なすぎると、成型時にダイス出口で膨潤あるいはネックインが大きくなり、シート成形が困難となるからである。一方、ポリオレフィン組成物が多すぎると、均一な溶液を調製することが難しいからである。
【0068】
ポリオレフィン組成物の高濃度溶液をダイスにより成型する際には、シートダイスの場合、ギャップは例えば0.1mm以上5mm以下とすることが好ましい。また、押し出し温度は140℃以上250℃以下、押し出し速度は2cm/分以上30cm/分以下とすることが好ましい。
【0069】
冷却は、少なくともゲル化温度以下まで行う。冷却方法としては、冷風,冷却水,その他の冷却媒体に直接接触させる方法、または冷媒で冷却したロールに接触させる方法などを用いることができる。なお、ダイスから押し出したポリオレフィン組成物の高濃度溶液は、冷却前あるいは冷却中に1以上10以下、好ましくは1以上5以下の引取比で引き取ってもよい。引取比が大きすぎると、ネックインが大きくなり、また延伸する際に破断も起こしやすくなり、好ましくないからである。
【0070】
ゲル状シートの延伸は、例えば、このゲル状シートを加熱し、テンター法、ロール法、圧延法あるいはこれらを組み合わせた方法により、二軸延伸で行うことが好ましい。その際、縦横同時延伸でも、逐次延伸のいずれでもよいが、特に、同時二次延伸が好ましい。延伸温度は、ポリオレフィン組成物の融点に10℃を加えた温度以下、更には結晶分散温度以上融点未満とすることが好ましい。延伸温度が高すぎると、樹脂の溶融により延伸による効果的な分子鎖配向ができず好ましくないからであり、延伸温度が低すぎると、樹脂の軟化が不十分となり、延伸の際に破膜しやすく、高倍率の延伸ができないからである。
【0071】
なお、ゲル状シートを延伸したのち、延伸した膜を揮発溶剤で洗浄し、残留する低揮発性溶媒を除去することが好ましい。洗浄したのちは、延伸した膜を加熱あるいは送風により乾燥させ、洗浄溶媒を揮発させる。洗浄溶剤としては、例えば、ペンタン,ヘキサン,ヘブタンなどの炭化水素、塩化メチレン,四塩化炭素などの塩素系炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭素、またはジエチルエーテル,ジオキサンなどのエーテル類のように易揮発性のものを用いる。洗浄溶剤は用いた低揮発性溶媒に応じて選択され、単独あるいは混合して用いられる。洗浄は、揮発性溶剤に浸漬して抽出する方法、揮発性溶剤を振り掛ける方法、あるいはこれらを組み合わせた方法により行うことができる。この洗浄は、延伸した膜中の残留低揮発性溶媒がポリオレフィン組成物100質量部に対して1質量部未満となるまで行う。
【0072】
セパレータ23には、本実施の形態に係る電解質が含浸されている。この電解質には、電解質塩としてリチウム塩が含まれている。本実施の形態では、電解質にアルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物からなる群のうちの少なくとも1種が含まれているので、電解質の導電率、熱的安定性および酸化安定性が高くなっており、放電容量を高く保持しつつ、サイクル特性、高温特性および保存安定性などを改善できるようになっている。
【0073】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0074】
まず、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な正極材料と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散してペースト状の正極合剤スラリーとする。この正極合剤スラリーを正極集電体21aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極合剤層21bを形成し、正極21を作製する。
【0075】
次いで、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散してペースト状の負極合剤スラリーとする。この負極合剤スラリーを負極集電体22aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極合剤層22bを形成し、負極22を作製する。
【0076】
続いて、正極集電体21aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解質を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。
【0077】
また、正極リード25および負極リード26を取り付けたのち、正極合剤層21bおよび負極合剤層22bに電解質を塗布し、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回するようにしてもよい。後は、上述したようにして、電池缶11の内部に収納し、電池蓋14を固定する。これにより、図1に示した二次電池が形成される。
【0078】
この二次電池は次のように作用する。
【0079】
この二次電池では、充電を行うと、正極合剤層21bからリチウムイオンが離脱し、セパレータ23に含浸された電解液を介して、まず、負極合剤層22bに含まれるリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料に吸蔵される。更に充電を続けると、開回路電圧が過充電電圧よりも低い状態において、充電容量がリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の充電容量能力を超え、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の表面にリチウム金属が析出し始める。そののち、充電を終了するまで負極22にはリチウム金属が析出し続ける。これにより、負極合剤層22bの外観は、例えばリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料として炭素材料を用いる場合、黒色から黄金色、更には白銀色へと変化する。
【0080】
次いで、放電を行うと、まず、負極22に析出したリチウム金属がイオンとなって溶出し、セパレータ23に含浸された電解液を介して、正極合剤層21bに吸蔵される。更に放電を続けると、負極合剤層22b中のリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料に吸蔵されたリチウムイオンが離脱し、電解液を介して正極合剤層21bに吸蔵される。よって、この二次電池では、いわゆるリチウム二次電池およびリチウムイオン二次電池の両方の特性、すなわち高いエネルギー密度および良好な充放電サイクル特性が得られる。
【0081】
特に本実施の形態では、電解質にアルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含んでいるので、電解質の導電率が高く保持されると共に熱的安定性および酸化安定性が向上し、サイクル特性、高温特性および保存安定性などがより改善される。
【0082】
このように本実施の形態によれば、電解質にアルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含んでいるので、電解質の導電率を高く保持しつつ熱的安定性および酸化安定性を向上させることができる。よって、高い放電容量を得ることができると共に、サイクル特性、高温特性および保存安定性などの電池特性をより改善することができる。
【0083】
なお、上記では、負極22の容量が、リチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウムの析出・溶解による容量成分との和により表される二次電池を例に挙げて説明したが、他の構成を有する二次電池についても本実施の形態に係る電解質を同様に用いることができる。
【0084】
他の構成を有する二次電池としては、例えば、負極の容量がリチウムの吸蔵・離脱による容量成分で表されるいわゆるリチウムイオン二次電池や、あるいは負極の容量がリチウム金属の析出・溶解による容量成分で表されるいわゆるリチウム二次電池が挙げられる。リチウムイオン二次電池は、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の量が正極材料に対して相対的に多く、充電の途中において負極にリチウム金属が析出しないことを除き、他は上記二次電池と同様の構成を有する。また、リチウム二次電池は、例えば、負極がリチウム金属などにより構成されることを除き、他は上記二次電池と同様の構成を有する。
【0085】
よって、これらの二次電池についても、本実施の形態に係る電解質を用いるようにすれば、上記二次電池と同様の効果を得ることができる。すなわち、電解質の導電率を高く保持しつつ熱的安定性および酸化安定性を向上させることができ、高い放電容量を得ることができると共に、サイクル特性、高温特性および保存安定性などをより改善することができる。
【0086】
【実施例】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。なお、以下の実施例では、図1および図2に示したような円筒型二次電池を作製した。よって、ここでは、図1および図2を参照し、その符号を用いて説明する。
【0087】
(実施例1,2)
実施例1,2として、負極22の容量が、リチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウム金属の析出・溶解による容量成分との和により表される二次電池を作製した。
【0088】
まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3 :CoCO3 =0.5:1(モル比)の割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極材料であるリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調製した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散して正極合剤スラリーとし、厚み20μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体21aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極合剤層21bを形成し、正極21を作製した。そののち、正極集電体21aの一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
【0089】
また、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料としてピッチコークスを用意し、このピッチコークス90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調整した。次いで、この負極合剤を溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状としたのち、厚み10μmの帯状銅箔よりなる負極集電体22aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極合剤層22bを形成し、負極22を作製した。そののち、負極集電体22aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。なお、正極21および負極22を作製する際には、充電の途中で負極22にリチウム金属が析出するようにそれらの厚み、すなわち正極材料と負極材料との量を調整した。
【0090】
正極21および負極22をそれぞれ作製したのち、厚み25μmの微多孔性ポリエチレン延伸フィルムよりなるセパレータ23を用意し、負極22,セパレータ23,正極21,セパレータ23の順に積層してこの積層体を渦巻状に多数回巻回し、巻回電極体20を作製した。
【0091】
巻回電極体20を作製したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回電極体20をニッケルめっきした鉄製の電池缶11の内部に収納した。そののち、電池缶11の内部に電解液を注入した。電解液には、炭酸プロピレン50体積%と炭酸ジエチル50体積%とを混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を溶媒に対して1.0mol/dm3 の含有量で溶解させたものに、添加剤として化2に示したアルミノンを添加したものを用いた。その際、アルミノンの含有量を、溶媒に対して、実施例1、2で表1に示したように変化させた。
【0092】
【表1】
Figure 0004784718
【0093】
電池缶11の内部に電解液を注入したのち、表面にアスファルトを塗布したガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、実施例1,2について直径18mm、高さ65mmの円筒型二次電池を得た。
【0094】
得られた実施例1,2の二次電池について、室温(23℃)において充放電試験を行い、室温における充放電サイクル特性を調べた。充放電サイクル特性としては、1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量の比率(充放電容量維持率)、すなわち(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100を求めた。その際、充電は1Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で充電時間の総計が4時間に達するまで行い、放電は0.5Aの定電流で終止電圧2.5Vまで行った。得られた結果を表1に示す。
【0095】
また、実施例1,2の二次電池について、上述した条件で1サイクル充放電を行ったのち再度完全充電させたものを解体し、目視および 7Li核磁気共鳴分光法により、負極合剤層22bにリチウム金属が析出しているか否かを調べた。更に、上述した条件で2サイクル充放電を行い、完全放電させたものを解体し、同様にして、負極合剤層22bにリチウム金属が析出しているか否かを調べた。その結果、完全充電状態においては負極合材層22bにリチウム金属の存在が認められ、完全放電状態においてはリチウム金属の存在が認められなかった。すなわち、負極22の容量は、リチウム金属の析出・溶解による容量成分とリチウムの吸蔵・離脱による容量成分との和により表されることが確認された。
【0096】
本実施例に対する比較例1として、アルミノンを添加しなかったことを除き、他は本実施例と同様にして二次電池を作製した。比較例1の二次電池についても、本実施例と同様にして、室温における放電容量維持率を求めた。その結果も表1に合わせて示す。
【0097】
表1から分かるように、アルミノンを添加した実施例1,2によれば、添加しなかった比較例1に比べて、室温における放電容量維持率について高い値が得られた。なお、1サイクル目の放電容量すなわち初期放電容量は、実施例1,2および比較例1のいずれもほぼ等しい値であった。すなわち、電解質にアルミノンを添加すれば、放電容量を高く保持しつつ充放電サイクル特性を向上させることができ、容量特性を改善できることが分かった。
【0098】
(実施例3〜7)
実施例3〜7として、負極22の容量がリチウムの吸蔵・離脱による容量成分で表されるリチウムイオン二次電池を作製した。その際、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料として難黒鉛化性炭素を用いると共に、充電の途中で負極22にリチウム金属が析出しないように正極21と負極22との厚みを調整した。また、電解質には、添加剤としてアルミン酸リチウムを加え、その溶媒に対する含有量を実施例3〜7で表2に示したように変化させた。他は実施例1,2と同一とした。
【0099】
【表2】
Figure 0004784718
【0100】
また、難黒鉛化性炭素は、出発原料に石油ピッチを用い、これに酸素を含む官能基を10%〜20%導入して酸素架橋を行い、不活性ガス気流中において1000℃で焼成することにより作製した。得られた難黒鉛化性炭素についてX線回折測定を行ったところ、(002)面の面間隔は0.376nmであり、真比重は1.58gであった。この難黒鉛化性炭素を粉砕して平均粒径10μmの粉末状とし、負極材料とした。
【0101】
得られた実施例3〜7の二次電池について、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。それらの結果を表2に示す。
【0102】
なお、高温保存特性としては、60℃における保存後の放電容量維持率を次のようにして求めた。まず、20℃において充放電を行い保存前容量を求めた。その際、充電は1Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で充電時間の総計が4時間に達するまで行い、放電は0.5Aの定電流で終止電圧2.5Vまで行った。次いで、60℃で1週間保存したのち、20℃において保存前容量を求めた時と同一の充放電条件で充放電を4サイクル行い、4サイクル中で最も高かった値を保存後容量とした。続いて、この保存後容量の保存前容量に対する割合、すなわち(保存後容量/保存前容量)×100を60℃保存後の放電容量維持率として算出した。
【0103】
また、高温サイクル特性としては、60℃における100サイクル後の放電容量維持率を求めた。これは、60℃において高温保存特性と同一の充放電条件で100サイクル充放電を行い、100サイクル目の放電容量の1サイクル目の放電容量に対する割合、すなわち(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100から算出した。
【0104】
本実施例に対する比較例2として、アルミン酸リチウムを添加しなかったこと除き、他は本実施例と同様にして二次電池を作製した。比較例2の二次電池についても、本実施例と同様にして、高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。得られた結果を表2に示す。
【0105】
表2から分かるように、アルミン酸リチウムを添加した実施例3〜7によれば、添加しなかった比較例2に比べて、60℃保存後の放電容量維持率または60℃における100サイクル後の放電容量維持率について高い値が得られた。なお、実施例3〜7および比較例2のいずれにおいても、高温保存特性における保存前容量、および高温サイクル特性における1サイクル目の放電容量はほぼ等しい値であった。すなわち、電解質にアルミン酸リチウムを添加すれば、放電容量を高く保持しつつ、高温保存特性および高温サイクル特性を向上させることができ、容量特性を改善できることが分かった。
【0106】
また、実施例3〜6によれば、高温保存特性および高温サイクル特性の両方について、比較例2と同等かそれ以上の値を得ることができ、実施例4〜6によれば、その両方について比較例2よりも優れた値を得ることができた。すなわち、アルミン酸リチウムの含有量を、溶媒に対して、0.01質量%以上10質量%未満とすればより高い効果を得ることができ、0.01質量%より多く2質量%以下とすれば更に好ましいことが分かった。
【0107】
(実施例8〜11)
実施例8〜11として、電解質塩の種類を代え、アルミン酸リチウムの含有量を表3に示したように変化させたことを除き、他は実施例3〜7と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。電解質塩には、実施例8,9ではLiBF4 を用い、実施例10,11ではLiPF6 とLiN(CF3 SO2 2 とをLiPF6 :LiN(CF3 SO2 2 =9:1のモル比で混合した混合物を用いた。また、実施例8,9に対する比較例3および実施例10,11に対する比較例4として、アルミン酸リチウムを添加しなかったことを除き、他は本実施例と同様にして二次電池を作製した。これら実施例8〜11および比較例3,4の二次電池についても、実施例3〜7と同様にして高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。得られた結果を実施例4,5および比較例2と共に表3に示す。
【0108】
【表3】
Figure 0004784718
【0109】
表3から分かるように、実施例8〜11によれば、実施例3〜7と同様に、比較例よりも優れた高温保存特性および高温サイクル特性が得られた。なお、高温保存特性における保存前容量、および高温サイクル特性における1サイクル目の放電容量は、実施例8,9および比較例3において、または実施例10,11および比較例4において、ほぼ等しい値であった。すなわち、電解質塩にLiBF4 またはLiN(CF3 SO2 2 などを用いても、電解質にアルミン酸リチウムを添加すれば、放電容量を高く保持しつつ高温保存特性および高温サイクル特性を改善できることが分かった。
【0110】
(実施例12〜17)
実施例12〜17として、添加剤の種類および含有量を表4に示したように変化させたことを除き、他は実施例3〜7と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。添加剤には、実施例12,13では化1に示したアルミニウム−アセチルアセトネートを用い、実施例14,15では水素化アルミニウムリチウムを用い、実施例16,17では化2に示したアルミノンを用いた。実施例12〜17の二次電池についても、実施例3〜7と同様にして高温保存特性および高温サイクル特性を調べた。得られた結果を実施例4,5および比較例2の結果と共に表4に示す。
【0111】
【表4】
Figure 0004784718
【0112】
表4から分かるように、実施例12〜17によれば、実施例3〜7と同様に、比較例よりも優れた高温保存特性および高温サイクル特性が得られた。なお、高温保存特性における保存前容量、および高温サイクル特性における1サイクル目の放電容量は、実施例4,512〜17および比較例2のいずれについてもほぼ等しい値であった。すなわち、電解質にアルミニウム化合物あるいはアルミニウムに吸着する化合物を含むようにすれば、放電容量を高く保持しつつ、高温保存特性および高温サイクル特性を改善できることが分かった。
【0113】
なお、上記実施例では、アルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物について具体的にいくつかの例を挙げて説明したが、他のアルミニウム化合物あるいは他のアルミニウムに吸着する化合物を用いても同様の結果を得ることができる。また、アルミニウム化合物およびアルミニウムに吸着する化合物を複数種混合して用いても同様の結果を得ることができる。
【0114】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例においては、電極反応種としてリチウムを用いた電池について説明したが、他の軽金属、または軽金属を含む合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その場合、軽金属を吸蔵・離脱可能な負極材料、正極材料、非水溶媒、あるいは電解質塩などは、その軽金属に応じて選択される。但し、軽金属としてリチウムまたはリチウムを含む合金を用いるようにすれば、現在実用化されているリチウムイオン二次電池との電圧互換性が高いので好ましい。なお、軽金属としてリチウムを含む合金を用いる場合には、電解質中にリチウムと合金を形成可能な物質が存在し、析出の際に合金を形成してもよく、また、負極にリチウムと合金を形成可能な物質が存在し、析出の際に合金を形成してもよい。
【0115】
また、上記実施の形態および実施例においては、電解液または固体状の電解質の1種であるゲル状の電解質について説明したが、本発明は、他の電解質にも同様に適用することができる。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた有機固体電解質、イオン伝導性セラミックス,イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質、またはこれらの無機固体電解質と電解液とを混合したもの、またはこれらの無機固体電解質とゲル状の電解質あるいは有機固体電解質とを混合したものが挙げられる。
【0116】
更に、上記実施の形態および実施例においては、巻回構造を有する円筒型の二次電池について説明したが、本発明は、巻回構造を有する楕円型あるいは多角形型の二次電池、または正極および負極を折り畳んだりあるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、いわゆるコイン型,ボタン型あるいはカード型など二次電池についても適用することができる。
【0117】
また、上記実施の形態および実施例においては、本発明の電解質を二次電池に用いる場合について説明したが、一次電池などの他の電池についても適用することができる。また、コンデンサ、キャパシタあるいはエレクトロクロミック素子などの他の電気化学素子に用いることもできる。
【0118】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電解質によれば、電解質塩および非水溶媒と、非水溶媒中に溶け出しているアルミニウムに吸着する化合物からなる群を含み、アルミニウムに吸着する化合物がアルミノンおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含むようにしたので、導電率を高く保持しつつ、熱的安定性および酸化安定性を向上させることができる。
【0119】
また、本発明の電池によれば、本発明の電解質を用いるようにしたので、電解質の導電率を高く保持しつつ安定性を向上させることができる。よって、高い放電容量を得ることができると共に、サイクル特性、高温特性および保存安定性をより向上させることができ、優れた電池特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【符号の説明】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15a…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…巻回電極体、21…正極、21a…正極集電体、21b…正極合剤層、22…負極、22a…負極集電体、22b…負極合剤層、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード

Claims (22)

  1. 電解質塩および非水溶媒と、前記非水溶媒中に溶け出しているアルミニウムに吸着する化合物を含み、
    前記アルミニウムに吸着する化合物は、アルミノンおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含む、
    電解質。
  2. 前記アルミニウムに吸着する化合物の含有量は、前記非水溶媒に対して、0.01質量%以上10質量%未満の範囲内である請求項1記載の電解質。
  3. 記電解質塩は、LiPF6 を含有する請求項1記載の電解質。
  4. 記電解質塩は、LiBF4 を含有する請求項1記載の電解質。
  5. 記電解質塩は、LiClO4 を含有する請求項1記載の電解質。
  6. 記電解質塩は、LiN(CF3 SO2 2 を含有する請求項1記載の電解質。
  7. 記電解質塩は、LiN(C2 5 SO2 2 を含有する請求項1記載の電解質。
  8. 正極および負極と共に電解質を備え
    前記電解質は、電解質塩および非水溶媒と、前記非水溶媒中に溶け出しているアルミニウムに吸着する化合物を含み、
    前記アルミニウムに吸着する化合物は、アルミノンおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含む、
    電池。
  9. 正極および負極と共に電解質を備え
    前記負極の容量は、軽金属の吸蔵および離脱による容量成分と、軽金属の析出および溶解による容量成分との和により表され、
    前記電解質は、電解質塩および非水溶媒と、前記非水溶媒中に溶け出しているアルミニウムに吸着する化合物を含み、
    前記アルミニウムに吸着する化合物は、アルミノンおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含む、
    電池。
  10. 前記アルミニウムに吸着する化合物の含有量は、前記非水溶媒に対して、0.01質量%以上10質量%未満の範囲内である請求項または請求項記載の電池。
  11. 記電解質塩は、LiPF6 を含有する請求項または請求項記載の電池。
  12. 記電解質塩は、LiBF4 を含有する請求項または請求項記載の電池。
  13. 記電解質塩は、LiClO4 を含有する請求項または請求項記載の電池。
  14. 記電解質塩は、LiN(CF3 SO2 2 を含有する請求項または請求項記載の電池。
  15. 記電解質塩は、LiN(C2 5 SO2 2 を含有する請求項または請求項記載の電池。
  16. 前記負極は軽金属を吸蔵および離脱することが可能な負極材料を含む請求項または請求項記載の電池。
  17. 前記負極は炭素材料を含む請求項または請求項記載の電池。
  18. 前記負極は、黒鉛、易黒鉛化性炭素および難黒鉛化性炭素からなる群のうちの少なくとも1種を含む請求項または請求項記載の電池。
  19. 前記負極は黒鉛を含む請求項または請求項記載の電池。
  20. 前記負極は、前記軽金属と合金または化合物を形成可能な金属、半導体、これらの合金、および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む請求項16記載の電池。
  21. 前記負極は、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム(Al),インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr)およびイットリウム(Y)の単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む請求項または請求項記載の電池。
  22. 前記軽金属はリチウム(Li)を含む請求項16記載の電池。
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