JP4783767B2 - 温間・熱間塑性加工用潤滑剤 - Google Patents

温間・熱間塑性加工用潤滑剤 Download PDF

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Description

本発明は、鉄などの金属材料に対して温間あるいは熱間領域で、鍛造、押出しまたはプレス等の塑性加工を行うための潤滑剤に関するものである。
従来から、金属の塑性加工において金属材料と工具、あるいは金型間の摩擦を低減し、金属の塑性変形を円滑に行うとともに、工具あるいは金型の冷却、保護ならびに工具や金型からの金属材料の離型を容易にするために潤滑剤が使用されている。そのような潤滑剤として、黒鉛粉末を油もしくは水に分散したタイプの黒鉛系潤滑剤が使用されている。黒鉛系潤滑剤は潤滑性と離型性に優れている。
しかしながら、黒鉛系潤滑剤を使用すると、黒鉛粉末が飛散したり、機械などに付着したりして、作業環境を悪化させるという問題があった。また、黒鉛系潤滑剤を長期間使用すると、供給のための配管やノズルに堆積して詰まり、供給が不安定となった。そのメンテナンスのために、作業効率を低下させたり、不良品を生産するといった不具合が生じていた。
そこで、黒鉛系潤滑剤による上記問題点を解決するために、黒鉛粉末を含有しない無黒鉛系の潤滑剤が求められている。この要求に応えるものとして、カルボン酸系潤滑剤がよく知られている。例えば、アルカリ金属の炭酸塩または炭酸水素塩と芳香族カルボン酸塩を用いた潤滑剤などが挙げられる(特許文献1)。
特開2001−240891号公報
しかしながら、カルボン酸系潤滑剤は黒鉛系潤滑剤と比較して、作業環境は改善されるが、加工温度が高い時など、加工条件が厳しい時に、潤滑性が不足し、所定の製品寸法が得られなかったり、材料表面に焼き付きあとが発生したりする、という問題があった。また潤滑性を補うために、有機増粘剤を用いると、金型温度が低い時に潤滑膜の生成速度が遅くなり、生産性の低下を招いた。
以上のように、温間・熱間塑性加工において、黒鉛系潤滑剤と同等の耐焼き付き性と潤滑性とを有した上で、生産性を低下させることなく使用できる非黒鉛系の潤滑剤は見出されていないのが現状である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、温間もしくは熱間条件での金属材料の塑性加工時において、生産性および作業環境性を低下させることなく、優れた潤滑性および耐焼き付き性を発揮する温間・熱間塑性加工用潤滑剤を提供することを目的とする。
本発明は、
(a)リン酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種類;
(b)芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ塩から選ばれる少なくとも1種類;
(c)無水マレイン酸とラジカル重合性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩もしくはアルカリ塩から選ばれる少なくとも1種類;および
(d)水
を含むことを特徴とする温間・熱間塑性加工用潤滑剤。
本発明の温間・熱間塑性加工用潤滑剤は優れた潤滑性および耐焼き付き性を示すので、加工時において金型負荷を低減できるとともに、被処理材料の表面欠陥を防止できる。しかも、潤滑膜形成性にも優れるため、生産性を低下させることなく、塑性加工を行うことができる。
本発明の潤滑剤は、従来の黒鉛系潤滑剤と比較して、黒色粉塵の発生がないので、周辺の環境汚染を防止する。しかも、作業者自身の汚れを軽減できるので、衛生面での改善も図ることができる。
本発明に係る温間・熱間塑性加工用潤滑剤(以下、単に「潤滑剤」ということがある)は、少なくとも以下に示す成分(a)〜成分(d)を含むものである。
成分(a)はリン酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物である。成分(a)を構成するリン酸としては、例えばリン酸、二リン酸、三リン酸、ペルオキソ酸一リン酸、ペルオキソ二リン酸、次リン酸、亜リン酸、二亜リン酸、次亜リン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸等が挙げられる。好ましいリン酸はリン酸、二リン酸、次亜リン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸であり、より好ましくはリン酸、二リン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸である。成分(a)を構成するアルカリ金属としてはカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属が適している。成分(a)の具体例としてリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、二リン酸ナトリウム、二リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。成分(a)は1種類で含有されてもよいし、または2種類以上で含有されてもよい。
成分(a)の含有量は通常、潤滑剤全量に対して0.1〜35重量%であり、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.15〜25重量%である。含有量が少なすぎると耐焼き付き性と潤滑性が不十分となる。含有量が多すぎると潤滑剤の液安定性が不十分となる。成分(a)は1
種類で使用しても良いし、2種類以上で使用しても良く、2種類以上の場合でもその合計量が上記範囲内であればよい。
成分(b)は芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ塩から選ばれる少なくとも1種類の化合物である。成分(b)を構成する芳香族カルボン酸としては特に限定されず、一塩基酸、二塩基酸であっても三塩基酸以上のポリ塩基酸であってもよい。また芳香族カルボン酸は芳香族環として、ベンゼン環を有してもよいし、ナフタレン環等の縮合環を有してもいてもよい。芳香族カルボン酸としては安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリト酸、メリト酸、ジフェン酸などが挙げられ、好ましくはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリト酸、より好ましくはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸のような二塩基酸、三塩基酸である。
そのような芳香族カルボン酸とともに成分(b)を構成するアルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリとしては、例えばアンモニア、モルホリン、あるいはアルキルアミン、アルカノールアミン等のアミンが挙げられる。アルキルアミン、アルカノールアミンとしては炭素数1〜4のものが好ましく、例えばアルキルアミンとしてはメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミンなどである。アルカノールアミンとしてはモノメタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミンなどであり、これらはイソ体などの異性体を使用してもよい。アミン類でより好ましくは炭素数2〜3のアルカノールアミンである。
成分(b)の具体例としては、例えばフタル酸ナトリウム、フタル酸カリウム、フタル酸アンモニウム、フタル酸モノエタノールアミン塩、フタル酸ジエタノールアミン塩、フタル酸トリエタノールアミン塩、フタル酸モノイソプロパノールアミン塩、フタル酸ジイソプロパノールアミン塩、フタル酸トリイソプロパノールアミン塩、イソフタル酸ナトリウム、
イソフタル酸カリウム、イソフタル酸アンモニウム、イソフタル酸モノエタノールアミン塩、イソフタル酸ジエタノールアミン塩、イソフタル酸トリエタノールアミン塩、イソフタル酸モノイソプロパノールアミン塩、イソフタル酸ジイソプロパノールアミン塩、イソフタル酸トリイソプロパノールアミン塩、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、テレフタル酸アンモニウム、テレフタル酸モノエタノールアミン塩、テレフタル酸ジエタノールアミン塩、テレフタル酸トリエタノールアミン塩、テレフタル酸モノイソプロパノールアミン塩、テレフタル酸ジイソプロパノールアミン塩、テレフタル酸トリイソプロパノールアミン塩、ヘミメリト酸ナトリウム、ヘミメリト酸カリウム、ヘミメリト酸アンモニウム、ヘミメリト酸モノエタノールアミン塩、ヘミメリト酸ジエタノールアミン塩、ヘミメリト酸トリエタノールアミン塩、ヘミメリト酸モノイソプロパノールアミン塩、ヘミメリト酸ジイソプロパノールアミン塩、ヘミメリト酸トリイソプロパノールアミン塩、トリメリト酸ナトリウム、トリメリト酸カリウム、トリメリト酸アンモニウム、トリメリト酸モノエタノールアミン塩、トリメリト酸ジエタノールアミン塩、トリメリト酸トリエタノールアミン塩、トリメリト酸モノイソプロパノールアミン塩、トリメリト酸ジイソプロパノールアミン塩、トリメリト酸トリイソプロパノールアミン塩、トリメシン酸ナトリウム、トリメシン酸カリウム、トリメシン酸アンモニウム、トリメシン酸モノエタノールアミン塩、トリメシン酸ジエタノールアミン塩、トリメシン酸トリエタノールアミン塩、トリメシン酸モノイソプロパノールアミン塩、トリメシン酸ジイソプロパノールアミン塩、トリメシン酸トリイソプロパノールアミン塩などが挙げられる。成分(b)は1種類で含有されてもよいし、または2種類以上で含有されてもよい。
成分(b)の含有量は通常、潤滑剤全量に対して0.1〜45重量%であり、好ましくは1〜40重量%であり、特に好ましくは2〜35重量%である。含有量が少なすぎると、耐焼き付き性と潤滑性が不十分となる。含有量が多すぎると、潤滑剤の液安定性が不十分となる。成分(b)は1種類で使用しても良いし、2種類以上で使用しても良く、その場合でも合計量が上記範囲内であればよい。
成分(a)、成分(b)の合計含有量は通常、潤滑剤全量に対して1〜45重量%であり、好ましくは1.5〜40重量%、特に2〜35重量%である。含有量が少なすぎると耐焼き付き性、もしくは潤滑性の何れかか、両方とも不十分となる。含有量が多すぎると潤滑剤の液安定性が不十分となる。
成分(a)と成分(b)との含有比率は耐焼き付き性と潤滑性、潤滑剤における沈殿、堆積の防止と、生産性の維持の観点から、成分(a)/成分(b)で好ましくは0.01〜2、さらに好ましくは0.02〜1.5である。
成分(c)は無水マレイン酸とラジカル重合性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩、もしくはアルカリ塩から選ばれる少なくとも1種類の化合物である。本明細書中、無水マレイン酸とラジカル重合性モノマーとの共重合体はその部分エステル化物も含む概念で用いるものとする。部分エステル化物とは、当該共重合体における無水マレイン酸ユニットの一部にC1〜C18の直鎖、または分岐のアルキルが入ってエステル化したものである。成分(c)を構成するラジカル重合性モノマーは特に限定されず、例えばプロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ドデセン及び1−テトラデセン等のα−オレフィン、スチレン等の芳香族ビニル化合物、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物、ブタジエン、イソプレン等のジエン系化合物等が挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ドデセン及び1−テトラデセン等のα−オレフィン化合物とスチレン等の芳香族ビニル化合物である。
成分(c)を構成する共重合体の分子量は本発明の目的が達成されるに限り特に制限されるものではなく、通常、重量平均分子量で5000〜400000、特に20000〜250000が好ましい。
また共重合体における重合比は当該共重合体が水に可溶な限り特に制限されるものではない。
そのような共重合体は市販品として入手可能である。例えばイソブチレン−無水マレイン酸共重合体はイソバン(クラレ社製)として入手可能である。また例えばスチレン−マレイン酸共重合体はSMA(SARTOMER社製)として入手可能である。
そのような共重合体とともに成分(c)を構成するアルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリとしてはアンモニア、あるいは成分(b)の説明で記載した同様のアミンが挙げられる。成分(c)は全ての無水環が開環し、全ての遊離カルボキシル基がアルカリ金属塩、もしくはアルカリ塩の形態を有していなければならないというわけではなく、水に対して溶解し得る程度に少なくとも一部の無水環が開環して遊離カルボキシル基がアルカリ金属塩もしくはアルカリ塩の形態を有していればよい。
成分(c)の具体例としては、例えばイソブチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体カリウム塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アンモニウム塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体モノエタノールアミン塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体ジエタノールアミン塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体トリエタノールアミン塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体モノイソプロパノールアミン塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体ジイソプロパノールアミン塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体トリイソプロパノールアミン塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体カリウム塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体アンモニウム塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体モノエタノールアミン塩、
スチレン−無水マレイン酸共重合体ジエタノールアミン塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体トリエタノールアミン塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体モノイソプロパノールアミン塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体ジイソプロパノールアミン塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体トリイソプロパノールアミン塩等が挙げられる。成分(c)は1種類で含有されてもよいし、または2種類以上で含有されてもよい。
成分(c)の含有量は通常、潤滑剤全量に対して0.1〜15重量%であり、好ましくは0.15〜12重量%、特に好ましくは0.2〜10重量%である。含有量が少なすぎると高温の被処理材表面への潤滑剤の付着性を十分に向上させることができず、それ自身の潤滑性も働かすことができないため、潤滑剤の潤滑性が不十分となる。含有量が多すぎると潤滑剤が被処理材表面に付着した時に、速やかに潤滑皮膜を形成できないために、乾燥するまで待機する必要が生じる。しかも被処理材に残渣物として潤滑剤の一部が残り、処理材と被処理材との離型性が低下したり、処理材に残渣物が押し込まれ、形状不良をもたらすといったような不具合が生じる。それらの結果、生産性の著しい低下を招く。
成分(d)は水であり、上記した成分(a)、成分(b)および成分(c)の残部として使用される。例えば、水は潤滑剤中の固形分濃度が1.1〜60重量%、好ましくは1.65〜52重量%、より好ましくは2.2〜45重量%となるような量で使用される。固形分濃度とは潤滑剤全量に対する成分(a)〜成分(c)ならびに後述の添加剤の合計量の割合である。
成分(a)〜成分(c)の好ましい組み合わせを以下に示す;
成分(a);リン酸、二リン酸、トリポリリン酸およびヘキサメタリン酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種類;
成分(b);イソフタル酸およびトリメリト酸のアルカリ金属塩およびアルカリ塩から選ばれる少なくとも1種類;
成分(c);イソブチレン−無水マレイン酸およびスチレン−無水マレイン酸のアルカリ金属塩およびアルカリ塩から選ばれる少なくとも1種類。
潤滑剤には、塑性加工用潤滑剤の分野で従来より添加されている、例えば、いわゆる増粘剤、防腐剤、防錆剤、イオン封鎖剤、界面活性剤等の添加剤を、さらに含有されてもよい。
以上のような潤滑剤は原液で使用することもできるし、経済面と運送費用を考慮して予め固形分を多く含有させたもの液の安定性を損なわない範囲で作製し、使用前に希釈して使用してもよい。
潤滑剤は塑性加工の対象となる金属等の被処理材に対して、いかなる方法で供給されてよい。例えば被処理材に対して噴霧することにより潤滑剤を供給することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は当該実施例に限定的に解釈されるべきではないことは明らかである。
(実施例/比較例)
本発明の温間・熱間塑性加工用潤滑剤の性能を明らかにするために、表1〜9(実施例)および表10(比較例)に示す組成を有する潤滑剤について、以下に示す項目の性能評価を行った。評価に際して潤滑剤は希釈せずそのまま用いた。
実施例および比較例よりリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、二リン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムは太平化学産業社製のものを使用した。炭酸ナトリウムはトクヤマ社製のものを使用した。イソフタル酸はエイジイインタナショナル社製、トリメリト酸はエムジシー・デュポン社製のものを使用し、それぞれアルカリ金属、もしくはアルカリで当量中和の塩とした。イソブチレン−無水マレイン酸共重合体はクラレ社製のイソバン06(分子量80000〜90000)、スチレン−無水マレイン酸共重合体はSartomer社製のSMA−3024(分子量24000)を使用し、それぞれアルカリ金属、もしくはアルカリで中和度80%の塩とした。
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(潤滑性・耐焼き付き性(900℃試験))
リング圧縮試験により摩擦係数を測定した。すなわち150tプレス機にセットした金型を150℃に加熱後、試料(潤滑剤)を金型φ100mmに対して5mlを上下金型にスプレー塗布し、3分間放置する。次いで900℃に熱したリング(SUJ−2)を素早く下金型に置き、圧下率60%設定でプレスした。プレス後のリングを測定してリング圧縮試験の校正曲線を用いて摩擦係数を算出した。またリング表面を観察して焼き付きの有無を評価した。
摩擦係数μ(900℃)については以下の基準に基づいて評価した。
○:μ≦0.105
×:0.105<μ(実用上問題あり)
焼き付き性については以下の基準に基づいて評価した。
○:焼き付きは全く発生していなかった。
×:焼き付きが発生しており、実用上問題があった。
××:焼き付きが広い範囲で発生していた。
(潤滑性・耐焼き付き性(600℃))
リング温度を900℃から600℃に変更したこと以外、上記潤滑性・耐焼き付き性の900℃試験評価方法と同様の方法により評価を行った。
摩擦係数μ(600℃)については以下の基準に基づいて評価した。
○:μ≦0.135
×:0.135<μ(実用上問題あり)
焼き付き性については900℃試験と同様の基準に基づいて評価した。
焼き付き性については900℃試験と同様の基準に基づいて評価した。
(潤滑性・耐焼き付き性(1000℃))
リング温度を900℃から1000℃に変更したこと以外、上記潤滑性・耐焼き付き性の900℃試験評価方法と同様の方法により評価を行った。
摩擦係数μ(1000℃)については以下の基準に基づいて評価した。
○:μ≦0.085
×:0.085<μ(実用上問題あり)
焼き付き性については900℃試験と同様の基準に基づいて評価した。
潤滑皮膜形成性
加熱した熱板を用いて試料の皮膜形成性を測定した。試験概要としてまず、120℃に加熱した熱板に試料(潤滑剤)をφ100mmに対して1.5mlをスプレー塗布し、表面に乾燥した潤滑皮膜を形成するまでの時間(t)を測定した。
以下の基準に基づいて評価した。
○:t≦30
△:30<t≦60(実用上問題なし)
×:60<t(実用上問題あり)
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潤滑性・耐焼き付き性について
実施例の潤滑剤は各温度域において摩擦係数が比較的低く、焼き付きの発生がない良好な結果を示した。
比較例の潤滑剤は、摩擦係数が比較的低くても焼き付きがあり、または焼き付きがなくても摩擦係数が比較的高い、といったように、金型への負荷低減と材料欠陥の発生防止との両者を満たすものはなかった。
潤滑皮膜形成性について
実際の加工時において皮膜形成時間の許容時間は60秒以内である。実施例の潤滑剤は十分な潤滑皮膜形成性を有していた。比較例2は実加工において生産性の低下を招く。
本発明の潤滑剤は鉄、銅、ステンレス、アルミニウムなどの金属材料に対して温間領域(例えば500〜1000℃)あるいは熱間領域(1000℃以上)で行う、鍛造、押し出し、引き抜き、圧延またはプレス等の塑性加工用として有用である。特に本発明の潤滑剤は加工材と被加工材の接触時間が0.1秒よりも長い鍛造、押し出し、引き抜き、プレス等の塑性加工において、潤滑剤が耐熱性を有しており、熱によって焼失することがないため、有用である。

Claims (2)

  1. (a)リン酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種類;
    (b)芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ塩から選ばれる少なくとも1種類;
    (c)無水マレイン酸とラジカル重合性モノマーとの共重合体のアルカリ金属塩もしくはアルカリ塩から選ばれる少なくとも1種類;および
    (d)水
    を含む温間・熱間塑性加工用潤滑剤であって、成分(a)の含有量が潤滑剤全量に対して0.1〜35重量%であり、成分(b)の含有量が潤滑剤全量に対して0.1〜45重量%であり、成分(a)と(b)の合計含有量が潤滑剤全量に対して1〜45重量%であり、成分(a)と成分(b)との含有比率が成分(a)/成分(b)で0.01〜2であり、成分(c)の含有量が潤滑剤全量に対して0.1〜15重量%であり、成分(d)が残部である、鍛造塑性加工、押出し塑性加工またはプレス塑性加工を行うための温間・熱間塑性加工用潤滑剤
  2. リン酸がリン酸、二リン酸、次亜リン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸およびヘキサメタリン酸からなる群から選択され、芳香族カルボン酸がフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸およびピロメリト酸からなる群から選択され、ラジカル重合性モノマーがα−オレフィン化合物および芳香族ビニル化合物からなる群から選択される請求項1に記載の温間・熱間塑性加工用潤滑剤
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