JP4783057B2 - 粉末成形体の成形方法、粉末成形体及び焼結機械部品 - Google Patents

粉末成形体の成形方法、粉末成形体及び焼結機械部品 Download PDF

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Description

この発明は、主部の外周に欠け易い突部が設けられている粉末成形体を健全に製造するための成形方法と、その方法で得られる粉末成形体と、この成形体(圧粉体)を焼結して得られる焼結機械部品に関する。
既知の焼結機械部品の中に、図4に示すようなものがある。例示の焼結機械部品1は、カムシャフトなどとして使用する鍔付き部品であり、主部2の外周に突部5を備えている。主部2は、ボス部3の一端に鍔4を設けて構成されており、その鍔4の外周に突部5が径方向に突き出して設けられている。この鍔付き焼結機械部品は、突部5がセンサ突起として使用される。なお、類似の部品の中には動力伝達用センサ突起付きプーリなどもある。
前述の部品のセンサ用突部5などは特に、機能面からの設置規制を受け易く、寸法を大きくして機械的強度を高めることが許容されないことがある。また、この突部5は、成形用金型の構造上の制約により、金型のダイで成形しなければならないことがある。
図5に、粉末成形装置に用いられるダイセット方式の金型の一般的な構造を示す。例示の金型は、ダイ11と、3つに分けた下パンチ、すなわち、下第1パンチ12、下第2パンチ13、下第3パンチ14と、コア15と、上第1パンチ16と、上第2パンチ17を組み合わせて構成される。この金型は、構造上、装着可能なパンチの数が制限され、そのために、ダイ11に成形溝18を設けてその成形溝18で部品の突部5を成形する方法を採っている。
上述したように、主部の外周の一部分に形成する突部の成形をダイで行う場合、成形体をダイから取り出すいわゆる型抜き時に突部が欠け易い。その欠けは、突部の側面がダイに接触した部分の摩擦抵抗が突部の強度を上回ることによって起こる。粉末成形では、圧縮後の除圧時に、成形体にスプリングバックによる軸方向の応力が作用する。このとき、ダイに接触している成形体の主部の外周は、接触部に働く摩擦力で元の位置に残ろうとするので、主部の外周の突部に無理な力が加わってその突部が欠けたり、突部の根元に亀裂が生じたりする。
ここで、下記特許文献1は、成形体の外側形状を成形するダイの内穴に、成形体の抜き出し側へ拡大する1/5000〜1/1000のテーパを付け、さらに、ダイの表面に摩擦係数の小さいコーティング層を設けることによって抜き出し時の摩擦抵抗を低減することを述べているが、同文献1が開示している方法では、上述した成形体外周の突部の欠けの問題を解消することができない。
なお、上記の摩擦抵抗に対して、図4の鍔付き焼結機械部品1は、鍔4の側面4a(外周)に抜きテーパθを付けており、その抜きテーパθと同じ角度の抜きテーパθを突部5の側面5aにも付けている。これらの抜きテーパθを大きくすると、突部5の欠けを発生させずに成形体をダイから抜き出すことができるが、抜きテーパθを大きくすると製品の寸法面での要求仕様を満たせなくなることがあり、そのような理由によって小さな抜きテーパしか許容されないときには、抜きテーパの角度不足が原因で型抜き時に突部の欠けが発生し、製品の歩留まりが悪化する。また、実用上許容される歩留まりを実現できず、量産性やコスト面で有利な焼結部品の使用を断念せざるを得なくなることもある。
特開2002−129201号公報
この発明は、主部の外周に欠け易い突部が設けられている粉末成形体を、型抜き時の突部の欠けを防止して健全に製造できるようにすること、および、それによって焼結機械部品の製造歩留まりを高めることを課題としている。
上記の課題を解決するため、この発明においては、主部の外周に径方向に突出した突部
を有する粉末成形体の成形方法であって、原料の粉末を金型に投入し、この粉末を圧縮成
形した後、成形体を金型から抜き出し、その抜き出しを、前記主部に0°以上、1.8°以下の抜きテーパθ2をつけ、なおかつ、前記突部の抜きテーパを主部の抜きテーパよりも0.2°〜1°の範囲で大きくして行う方法を採る。
かかる成形方法で得られる粉末成形体は、主部とその主部の外周に設けられた突部が共
に抜きテーパを有し、突部の抜きテーパが主部の抜きテーパよりも0.2°〜1°の範囲で大きいものになる。この発明は、その粉末成形体も併せて提供する。
なお、この発明の成形方法は、以下に列挙する粉末成形体に適用すると特に大きな効果を期待できる。
(1)前記突部が主部の抜き出し側端面の外周縁部の一部分に突出して設けられている粉末成形体。
(2)前記突部の抜き出し方向の肉厚Thと径方向の肉厚Tlの比が、Tl/Th≧0.5に設定された粉末成形体。肉厚Thと肉厚Tlは最大部寸法を比較する。
(3)前記主部の抜き出し側端面の外周縁部の突部設置領域を含めた全周長さLと、突部設置領域の外周縁部の合計長さLtの比が、Lt/L≦1/2、より好ましくはLt/L≦1/3に設定された粉末成形体。なお、突部設置領域の外周縁部の合計長さLtとは、突部が複数個設置される場合、全ての突部設置領域の周縁部長さを加算した値を言う。
(4)前記主部に抜きテーパを有する鍔部が含まれ、その鍔部の外周に抜きテーパを有する突部が径方向に突出して設けられ、その突部の抜きテーパが前記鍔部の抜きテーパよりも大きい粉末成形体。
この発明は、前記(1)〜(4)のいずれかの構成を有する質量比で2%Cu−0.8%C−0.8%潤滑剤−残Feの成分の混合粉で形成された成形体を焼結して得られる焼結機械部品も同時に提供する。
この発明の成形方法では、主部の外周に設ける突部の抜きテーパを主部の抜きテーパよりも大きくして成形体を金型から抜き出すので、型抜き時に突部に作用する応力が突部の抜きテーパと主部の抜きテーパを同一にした場合に比べて小さくなる。
上述したように、突部の抜きテーパを主部の抜きテーパよりも大きくすると、主部の抜きテーパ面(テーパを付けた側面。以下も同じ)と突部の抜きテーパ面に働く摩擦抵抗に差が生じてスプリングバックによる応力が主部の抜きテーパ面で受圧されるようになり、そのため、突部に働く応力が主部と突部の抜きテーパに差が無い場合に比べて小さくなり、それによって突部の欠けが防止される。
このように、この発明では、主部の抜きテーパ面と突部の抜きテーパ面に働く摩擦抵抗に差を生じさせ、スプリングバックによる応力を主部の抜きテーパ面で受圧して突部を保護するので、主部の抜きテーパ面と突部の抜きテーパ面の設置領域の割合によって効果の度合いが左右される。そこで、主部の抜き出し側端面の外周縁部の突部設置領域を含めた全周長さLと、外周縁部の突部設置領域の合計長さLtの関係について調査し、Lt/L≦1/2、より好ましくはLt/L≦1/3の条件を満たす場合に特に良い効果が得られることを確認した。
また、この発明は、突部の抜き出し方向の肉厚Thと径方向の肉厚Tlの比が、Tl/Th≧0.5に設定された粉末成形体や、主部の鍔部の外周に径方向に突出した突部が径方向に突出して設けられ、その突部の抜きテーパが前記鍔部の抜きテーパよりも大きい粉末成形体の成形に利用すると特に効果的であることも確認した。
以下、この発明の実施の形態を添付図面の図1乃至図3に基づいて説明する。図1に示した焼結機械部品1は、ボス部3の一端外周に鍔4を設けて主部2を構成した鍔付き機械部品であり、鍔4の外周に径方向に突出した突部5を備えている。鍔4の側面4aと突部5の側面5aにはそれぞれ図2に示す抜きテーパが付けられており、鍔4の抜きテーパθ2は突部5の抜きテーパθ1よりも小さい。
鍔4の抜きテーパθ2と突部5の抜きテーパθ1の差Δθ(=θ1−θ2)は、突部5
の保護効果を十分に得るために、下限を0.2°、上限を1°にする。突部5の抜きテーパθ1は、部品の寸法面での要求仕様を満たすために3°以下、より好ましくは2°以下にするのがよい。
さらに、図2における突部5の抜き出し方向の肉厚Thと径方向の肉厚Tlの比を、Tl/Th≧0.5にするのが好ましく、また、鍔4の抜き出し側端面の外周縁部の突部設置領域を含めた全周長さLと、突部設置領域の外周縁部の合計長さLt(Ltはl〜lを加算した値)の比も、Lt/L≦1/2、より好ましくはLt/L≦1/3に設定するのがよい。
−実施例1−
以下に、発明の効果の確認試験結果を記す。試験は、図3の焼結機械部品1(図のそれは車のエンジンに使用される動力伝達用センサ突起付きプーリ)の成形を、抜きテーパの大きさや抜きテーパの差などを変えて実施し、そのときの突部5の破損状況を調べた。図3の焼結機械部品1は、質量比でFe96.4%−Cu2%−C0.8%−潤滑剤0.8%の混合粉を、室温下で面圧600MPaの圧力を加えて成形した。
その成形を、先ず、突部5の抜きテーパθ1を鍔4の抜きテーパθ2との間に差をつけずに変化させて行った。このときの突部5の抜き出し方向の肉厚Thと径方向の肉厚Tlの比は、Tl/Th=0.5、また、鍔4の抜き出し側端面の外周縁部の突部設置領域を含めた全周長さLと、突部設置領域の外周縁部の合計長さLtの比Lt/L=1/24とした。上記の各条件でのテスト回数をN=5として成形を行った結果を表1に示す。
Figure 0004783057
この表1からわかるように、このテストでは抜きテーパが3°以下で鍔4と突部5の抜きテーパに差がない場合には突部の破損が避けられない。なお、鍔4と突部5の抜きテーパを共に3°にしたものは、製品の要求寸法を満足させることができなかった。このように、健全な成形のためにはテーパを大きくとる必要があり、製品の寸法、形状の制約となる。突部破損の形態の一つの例として、例えば、図4の焼結機械部品は、主部の一部である鍔4や突部5をダイで成形する際に、この鍔4や突部5が上パンチによる上加圧のみで成形される場合には特に、上面側の成形密度に比べて下面側の成形密度が低くなる傾向にあり、そのために、下面側の強度が低くなって型抜き時に突部の下面側のエッジなどに欠けが生じ易い。その欠けは、図4の焼結機械部品の場合、鍔4の下面側の外周エッジ等にも生じることがある。
−実施例2−
鍔4と突部5の抜きテーパに差をつけ、その他の条件は実施例1と同じにして成形を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0004783057
この結果に、鍔4と突部5の抜きテーパに差をつけることの有効性が良く現れている。なお、その抜きテーパの差をつけても鍔4の抜きテーパがゼロであると、表2の結果からわかるように鍔4の破損が起こる。
−実施例3−
鍔4の抜きテーパθ2と突部5の抜きテーパθ1の組み合わせ、及び鍔4の抜き出し側端面の外周縁部の突部設置領域を含めた全周長さLと、突部設置領域の外周縁部の合計長さLtの比Lt/Lをいろいろと変化させて成形を行った。他の条件は実施例1と同じである。この試験の結果を表3に示す。
Figure 0004783057
なお、表3中の○は突部の破損無し、△は一部破損有りを示す。テーパθ1、θ2を同じにした場合に比べ全て良好な結果であったが、特に、Lt/Lの値が小さくなるほど抜きテーパ差を大きくした方がよいことが、この表3の結果に現れている。
この発明の成形方法で成形して製造した焼結機械部品の一例を示す斜視図 図1の焼結機械部品の要部の拡大断面図 効果の確認試験に用いた焼結機械部品の断面図 焼結機械部品の一例を示す斜視図 図4の焼結機械部品の製造に用いる粉末成形用金型の断面図
符号の説明
1 焼結機械部品
2 主部
3 ボス部
4 鍔
4a 側面
5 突部
5a 側面
11 ダイ
12 下第1パンチ
13 下第2パンチ
14 下第3パンチ
15 コア
16 上第1パンチ
17 上第2パンチ
18 成形溝
θ、θ1、θ2 抜きテーパ

Claims (8)

  1. 主部の外周に径方向に突出した突部を有する粉末成形体の成形方法であって、原料の粉
    末を金型に投入し、この粉末を圧縮成形した後、成形体を金型から抜き出し、その抜き出
    しを、前記主部に0°以上、1.8°以下の抜きテーパθ2をつけ、なおかつ、前記成形体の前記突部の抜きテーパθ1を主部の抜きテーパθ2よりも0.2°〜1°の範囲で大きくして行うことを特徴とする粉末成形体の成形方法。
  2. 前記原料の粉末として、質量比で2%Cu−0.8%C−0.8%潤滑剤−残Feの成分の混合粉を使用する請求項1に記載の粉末成形体の成形方法。
  3. 請求項1に記載の成形方法で成形された粉末成形体であって、主部とその主部の周囲に径方向に突出して設けられた突部が共に抜きテーパを有し、突部の抜きテーパθ1が主部の抜きテーパθ2よりも0.2°〜1°の範囲で大きいことを特徴とする粉末成形体。
  4. 前記突部が主部の抜き出し側端面の外周縁部の一部分に突出して設けられていることを
    特徴とする請求項に記載の粉末成形体。
  5. 前記突部の抜き出し方向の肉厚Thと径方向の肉厚Tlの比が、Tl/Th≧0.5で
    あることを特徴とする請求項3又は4に記載の粉末成形体。
  6. 前記主部の抜き出し側端面の外周縁部の突部設置領域を含めた全周長さLと突部設置領
    域の外周縁部の合計長さLtの比が、Lt/L≦1/2であることを特徴とする請求項
    に記載の粉末成形体。
  7. 前記主部に抜きテーパを有する鍔が含まれ、その鍔の外周に抜きテーパを有する突部が
    径方向に突出して設けられ、その突部の抜きテーパが前記鍔の抜きテーパよりも大きいこ
    とを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の粉末成形体。
  8. 請求項3乃至7のいずれかに記載の成形体が質量比で2%Cu−0.8%C−0.8%潤滑剤−残Feの成分の混合粉で形成され、その成形体を焼結した焼結機械部品。
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