JP4782949B2 - 高屈折率(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する樹脂組成物 - Google Patents
高屈折率(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する樹脂組成物 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な高屈折率(メタ)アクリレート化合物およびこれを含有する樹脂組成物に関するものであり、さらにはその硬化物が、高屈折率で低吸水性であり、さらには耐薬品性および透明性にも優れている、主にレンズ用途に適した新規な樹脂組成物およびその硬化物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高屈折率であるプラスチック材料の光学レンズやオプトエレクトロニクスへの進出は著しく、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、光ファイバー、光導波路等への検討が盛んに行われている。その中でも眼鏡レンズの場合は、高屈折率であるプラスチック材料が、成形加工が容易なこと、軽いことなどの特徴を生かして、広く用いられるようになっている。眼鏡レンズとして用いられる透明プラスチックの主流は、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の熱硬化性プラスチックである。この様なプラスチックレンズに要求される性能として重要なものには、屈折率、低比重、成形性、耐熱性、復元性、耐衝撃性、低吸水性、成形品の面精度、染色性等が挙げられる。そして近年、これらの特性の更なる向上が要求されるようになってきており、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等に代わる各種のモノマー、オリゴマーを用いてプラスチックレンズを製造する方法が提案されてきた。
なお、プラスチック材料を光学レンズのような注型物として使用する場合、硬化物はプレス法、キャスト法等の方法により成形される。硬化物をプレス法で成形する場合は、加熱、加圧、冷却工程のサイクルで製造するために、生産性がよくない。また、キャスト法の場合は、金型に樹脂を流し込んで硬化するために製造時間が長くなり、また金型が多数必要となるため、製造コストが高くなるという問題があった。このような問題を解決するために、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を使用することについて、例えば、特開昭61−177215、特開昭61−248707、特開昭61−248708、特開昭63−163330、特開昭63−167301、特開昭63−199302、特開昭64−6935等に種々の提案が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の従来より使用されている熱硬化性プラスチックよりもさらに高屈折率であるレンズ用材料が求められるようになり、高屈折率の新規な透明プラスチックを開発する試みが多数行われている。しかしながら、プラスチック材料はその化学構造からみて、高屈折率な材料を得ることは一般的に容易なことではない。
プラスチック材料を構造的に高屈折率な材料にする場合、プラスチック材料用樹脂の分子構造中に芳香族環や不飽和基等のπ電子系の構造を導入する、フッ素原子以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子等の孤立電子対をもつ原子を導入する等の方法がある。プラスチック材料用樹脂の分子構造中に芳香族環を導入する場合は、導入される芳香族環の数により効果的に屈折率を高くすることができる。しかし、プラスチック材料用樹脂の1分子中に芳香族環が多く入りすぎた場合は、硬化後のプラスチックレンズそのものが黄変したり、耐衝撃性に劣ったり、硬化物の比重が大きくなるなどの欠点を生じる。また不飽和基を多く導入する場合はそれほど効果的な屈折率の向上は期待できず、むしろ熱や光に対する安定性が悪くなることが懸念される。また、プラスチック材料用樹脂の分子構造中にフッ素原子以外のハロゲン原子を導入する方法は、樹脂の屈折率を高くする効果は大きいが、導入すればするほど硬化物の比重が極めて大きくなり、またハロゲン原子の導入が多すぎると透明感のある硬化物が得られず、また耐衝撃性や一般の分散染料による染色性に問題がある。硫黄原子を導入する方法も樹脂の屈折率を高くする効果は大きいが、一般に樹脂そのものあるいは硬化物から臭気が生じやすい。リン原子を導入する場合も、リン原子の導入が多すぎると硬化物そのものが脆くなり、復元性や透明性に劣る等の問題を生じる可能性がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する高屈折率化合物を合成し、これを成分として用いることによって、高屈折率で低吸水性であり、さらには耐薬品性および透明性にも優れた硬化物が得られる樹脂組成物を見いだし、本発明に至った。すなわち、本発明は、
〔1〕式(1)
【0005】
【化2】
【0006】
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は水素原子またはフェニル基であり、nは0〜2の整数を表す。)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)、
〔2〕〔1〕記載の式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)と、(A)成分以外の不飽和基含有化合物(B)を含有することを特徴とする樹脂組成物、
〔3〕〔1〕記載の式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)と光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする樹脂組成物、
〔4〕光重合開始剤(C)を含有することを特徴とする〔2〕に記載の樹脂組成物、
〔5〕用途が光学用物品であることを特徴とする〔2〕ないし〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
〔6〕用途がレンズ用であることを特徴とする〔2〕ないし〔5〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
〔7〕〔2〕ないし〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物、
に関するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)は、下記式(2)で表される化合物と2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを反応させることにより得ることができる。
【0008】
【化3】
【0009】
(式中、R2は水素原子またはフェニル基であり、nは0〜2の整数を表す。)
【0010】
前記式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、ジフェニルメタノール、トリフェニルメタノール、2,2−ジフェニルエタノール、2,2,2−トリフェニルエタノール、3,3−ジフェニルプロパノール、3,3,3−トリフェニルプロパノール等を挙げることができる。
【0011】
本発明で用いられる前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)を合成する方法において、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートの仕込量は、前記式(2)で表される化合物1.00モルに対して0.80〜1.20モルとなるように仕込むのが好ましく、より好ましくは0.98〜1.00モルとなるように仕込むのがよい。なおこの反応は、前記式(2)で表される化合物の末端水酸基と2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートの末端イソシアネート基の反応を促進させるために、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート等のジラウリレート類を触媒として用いることができる。触媒の添加量は、反応混合物全体に対して0.001〜5.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1.0重量%である。反応時間は1〜10時間が好ましい。また、反応温度は30〜100℃が好ましく、より好ましくは40〜80℃である。
【0012】
前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)の合成方法において、反応は無溶剤で行うことができる。ただし場合によっては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等のイソシアネート基に不活性な溶剤を反応溶剤として用いることができる。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)のみを使用してもよいが、屈折率、粘度等の諸物性の調整を目的として(A)成分以外の不飽和基含有化合物(B)を混合して使用してもよい。ここで用いることのできる(A)成分以外の不飽和基含有化合物としては、単官能(メタ)アクリレート化合物、2官能〜多官能(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、アリル化合物等の反応性モノマーや、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の反応性オリゴマーが挙げられる。
【0014】
不飽和基含有化合物(B)として用いられる反応性モノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、p−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、p−フェニルフェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタおよびヘキサ(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフィン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)スルフィド、2,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシナフタレン等の2官能〜多官能(メタ)アクリレート化合物、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、1−ビニルベンゼン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリル、ジアリルフタレート等のアリル化合物等を挙げることができる。
【0015】
また、不飽和基含有化合物(B)として用いられる反応性オリゴマーの具体例としては、例えば、エポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネート類と分子中に水酸基を1個含有する(メタ)アクリレート類、あるいはジオール類とジイソシアネート類と分子中に水酸基を1個含有する(メタ)アクリレート類の反応物であるウレタン(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。
【0016】
不飽和基含有化合物(B)として用いられるエポキシ(メタ)アクリレート化合物を得るために使用するエポキシ樹脂類としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フルオレンエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0017】
不飽和基含有化合物(B)として用いられるウレタン(メタ)アクリレート化合物を、ジイソシアネート類と分子中に水酸基を1個含有する(メタ)アクリレート類を反応させて得る場合、原料として使用するジイソシアネート類の具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、ジイソシアネート類と反応させる分子中に水酸基を1個含有する(メタ)アクリレート類の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、不飽和基含有化合物(B)として用いられるウレタン(メタ)アクリレート化合物を、ジオール類とジイソシアネート類と分子中に水酸基を1個含有する(メタ)アクリレート類を反応させて得る場合、原料として使用するジオール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の低分子量のジオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール類、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類との反応によって得られるポリエステルポリオール類、ポリ−ε−カプロラクトン変性ポリオール、ポリメチルバレロラクトン変性ポリオール類、ポリカーボネートポリオール類等を挙げることができる。なお、反応に用いるジイソシアネート類と分子中に水酸基を1個含有する(メタ)アクリレート類は、不飽和基含有化合物(B)として用いられるウレタン(メタ)アクリレート化合物をジイソシアネート類と分子中に水酸基を1個含有する(メタ)アクリレート類を反応させて得る場合と同様の化合物を用いることができる。
【0018】
上記に例示したこれら不飽和基含有化合物(B)成分は、1種類だけを選んで使用してもよいが、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0019】
これら不飽和基含有化合物(B)成分のうち、好ましいものとしては、例えば、分子構造中に芳香族を有するか、あるいは置換基として芳香族基を有し、25℃での屈折率が1.50以上である単官能か2官能の(メタ)アクリレートモノマーである。そのような単官能か2官能の(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、p−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、p−フェニルフェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)スルフィン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル)スルフィン、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)スルフィド、ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)スルフィド、2,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシナフタレン等を挙げることができる。
【0020】
本発明の樹脂組成物に使用される前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)成分と不飽和基含有化合物(B)成分の使用割合は、好ましくは重量比で5:95〜90:10であり、特に好ましくは20:80〜80:20である。
【0021】
本発明の樹脂組成物を紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化する場合は、光重合開始剤(C)を使用するのが好ましい。本発明の樹脂組成物に用いられる光重合開始剤(C)としては公知のどのような光重合開始剤を用いても構わないが、配合した後の貯蔵安定性のよいことが要求される。このような光重合開始剤(C)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン等が挙げられる。これら光重合開始剤(C)は1種類だけを使用してもよいが、2種類以上任意の割合で混合して使用しても構わない。光重合開始剤(C)の添加量は、前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)成分と不飽和基含有化合物(B)成分の総量に対して、通常、0.1〜10.0w%であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0w%である。
【0022】
また、本発明の樹脂組成物は、前記(A)〜(C)成分以外に、必要に応じて、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン等)、熱重合開始剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、着色剤(例えば、染料、顔料等)、無機フィラー、有機フィラー等を併用することができる。本発明の樹脂組成物は、前記各成分を均一に混合、溶解することにより得ることができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、活性エネルギー線を照射することにより得ることができる。ここで本発明の樹脂組成物に紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化する場合に用いられる光源の具体例としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、複写用高圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、あるいは走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等を挙げることができる。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ等のプラスチックレンズ用材料として有用であるが、その他にも、光ディスク、光ファイバー、光導波路等のオプトエレクトロニクス向け用途、印刷インキ、塗料、コーティング剤、ツヤニス、接着剤等にも使用できる。
【0025】
本発明で得られる樹脂組成物を用いたプラスチックレンズの作製法としては、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体等からなるガスケットと所望の形状の2枚のガラス鋳型によって造られた型を作り、これに本発明で得た樹脂組成物を注入した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して本発明で得られた樹脂組成物を硬化し、硬化物を型より剥離する方法等がある。
【0026】
また、本発明で得られる樹脂組成物をプラスチックレンズのような注型物以外の用途においては、本発明の樹脂組成物を基材に塗布して使用することもできる。本発明の樹脂組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、刷毛塗り、バーコーター、アプリケーター、ロールコーターあるいはローラーブラシ等により直接塗布する方法、エアースプレーまたはエアーレススプレー塗装機等によるスプレー塗布法、シャワーコーターまたはカーテンフローコーター等による流し塗り法(フローコート)、浸漬法、キャスティング法、スピナーコーティング法等を用いることができる。なおこれらの塗布法は、基材の材質、形状あるいは用途等に応じて適宜使い分けることが望ましい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0028】
前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)の合成例
実施例1:
300mlのセパラブルフラスコに、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズMOI、昭和電工(株)製)209.0g、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.2gを攪拌しながら40℃まで昇温した。この溶液に、ジフェニルメタノール248.0gを、反応液の温度が50℃を越えないようにゆっくりと仕込んだ。ジフェニルメタノールを仕込み終えてから、そのまま40〜50℃で2時間攪拌し、さらに昇温して70〜80℃で2時間攪拌して無色透明な粘性液体の反応物を得た。なお、この反応物のNCO価を測定したところ、NCO価は0.1w%以下であり、25℃における粘度は4570mPa・sであり、25℃における屈折率は1.5522であった。得られた反応物は下記式(3)で表される化合物である。得られた化合物の元素分析の結果を表1に示す。
【0029】
【化4】
【0030】
【0031】
組成物の実施例
実施例2:
実施例1で得た反応生成物100.0g、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュアー184、チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)2.1gを配合し、無色透明な樹脂組成物を得た。このものの25℃における屈折率は1.5524であり、25℃における粘度は4030mPa・sであった。この樹脂組成物をアルミニウム板上に150〜200μmの厚さになるようにバーコーターで塗工し、塗膜表面に無色透明なPETフィルムを乗せて塗膜表面と密着させた後、高圧水銀ランプで600mJ/cm2の照射強度で紫外線を照射して硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
【0032】
実施例3:
実施例1で得た反応生成物80.6g、フェノキシエチルアクリレート(商品名:ビスコート#192、大阪有機化学工業(株)製)20.0g、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを実施例2と同様にして配合し、無色透明な樹脂組成物を得た。このものの25℃における屈折率は1.5454であり、25℃における粘度は360mPa・sであった。この樹脂組成物を実施例2と同様な方法で紫外線を照射し、硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
【0033】
実施例4:
実施例1で得た反応生成物60.1g、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(商品名:KAYARAD R−128H、日本化薬(株)製)40.2g、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを実施例2と同様にして配合し、無色透明な樹脂組成物を得た。このものの25℃における屈折率は1.5414であり、25℃における粘度は710mPa・sであった。この樹脂組成物を実施例2と同様な方法で紫外線を照射し、硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
【0034】
実施例5:
実施例1で得た反応生成物60.5g、o−フェニルフェニルオキシエチルアクリレート(商品名:KAYARAD OPP−1、日本化薬(株)製)40.1g、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.1gを実施例2と同様にして配合し、無色透明な樹脂組成物を得た。このものの25℃における屈折率は1.5618であり、25℃における粘度は620mPa・sであった。この樹脂組成物を実施例2と同様な方法で紫外線を照射し、硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
【0035】
【0036】
注)
*1 屈折率およびアッベ数:多波長アッベ屈折計DR−M2((株)アタゴ社)を用いて測定した。
*2 吸水率:硬化膜を23℃の純水に24時間浸漬し、重量増加を%で表示した。
*3 耐薬品性:メチルエチルケトンを含浸させた脱脂綿で硬化物の表面を20回拭き、硬化物の表面の変化を観察した。
○・・・硬化物の表面に変化が見られない。
*4 透明性:硬化膜を観察し、白化して不透明となっている部分の有無の確認を行った。
○・・・硬化膜に白化した部分がない。
【0037】
【発明の効果】
実施例2〜5、および表2の結果から明らかなように、本発明の樹脂組成物は紫外線等の活性エネルギー線を照射して速やかに硬化することが可能であり、その硬化物は高屈折率であり、吸水率が低く、耐薬品性および透明性に優れているので、眼鏡レンズ等の光学的な用途に用いることができる。
Claims (9)
- 請求項1記載の式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)と、(A)成分以外の不飽和基含有化合物(B)を含有し、(A)成分と(B)成分の使用割合が重量比で5:95〜90:10であることを特徴とする樹脂組成物。
- 請求項1記載の式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物(A)と光重合開始剤(C)を含有し、(A)成分に対して(C)の添加量が0.1〜10.0w(重量)%であることを特徴とする樹脂組成物。
- (A)成分と(B)成分の総量に対して、光重合開始剤(C)を0.1〜10.0w(重量)%含有することを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
- 用途が光学用物品であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 用途がレンズ用であることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 請求項2ないし4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
- 請求項5に記載の樹脂組成物を硬化して得られる光学用物品。
- 請求項6に記載の樹脂組成物を硬化して得られるレンズ。
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