JP4780079B2 - 電池パック及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、金属ラミネートフィルムに封入した電池素子と、回路基板と、該電池素子と回路基板を囲むように配置したフレームとを、薄板状の包装体で包んだものも提案されている(例えば、特許文献6参照)。
また、金属缶に封入した電池素子を用いた電池パックにあっては、電解質として液状の電解液を用いているため、日常生活においては、簡単に開口しない防爆用の構造を電池パックに設ける必要がある。
なお、金属酸化物セラミックスを電池パックの外装材として用いることも考えられているが、金属酸化物セラミックスは、金属よりも硬さに優れるものの、脆性を有するため、外装材として薄く密着させて加工する必要がある。
上記の如く、本発明の電池パックは、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、上記電池の保護基板を外装材で一体的に被覆して成るものであり、この外装材の一部に、異常時に上記電池から発生するガスによって開裂し、該ガスを電池パックの外部に放出するガス放出口を形成する開裂可能部を設けたものである。
以下、電池パックを構成する外装材及び開裂可能部を説明した後、電池パックを構成する他の要素について説明する。
外装材は、形状維持ポリマーとフィラー材とを含む複合材料を用いることが好ましい。この形状維持ポリマーとしては、フィラー材と親和性、相溶性ないしは反応性を有し、且つ、高い寸法精度及び機械的強度を発現できる樹脂であることが好ましい。
しかし、高温の外装材が成形型に流し込まれると、成形型内に収容された電池素子を構成するポリエチレンベースのセパレータが溶融して微細孔がシャットダウンし、セパレータとしての機能を果たさなくなる虞がある。また、非水系電解質として用いられるPVdF(ポリフッ化ビニリデン)等の物理ゲルが溶融して電池が変形する虞もある。更に、保護回路基板に組み込まれたPCT(Positive Temperature Coefficient:正温度係数,ここで「正温度係数」とは、温度が上昇するに従い電池抵抗値も上昇し、正の係数値が変化する特性をいい、本明細書において、PCTとは、該特性を有する素子をいう。)や温度ヒューズ等の素子がダメージを受け、保護回路基板としての役割を果たさなくなる虞がある。
そこで、外装材に用いる形状維持ポリマーとしては、好ましくは120℃以下、より好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは50〜90℃で硬化する熱硬化性樹脂又は紫外線で硬化する紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。
このような硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて成形型枠内に流し込んでから硬化するまでの時間が長く、流動性に優れるため、成形型枠内の狭い周囲空間に充填することが可能となる。そのため、上記の樹脂を外装材として用いることにより、外装材の厚さを熱可塑性樹脂の場合と比較して薄くし(例えば、熱可塑性樹脂を用いた場合は、数百μmの厚さに対して、硬化性樹脂の場合は、数十μm〜数μmの厚さ)、小型軽量化することができる。また、上記の硬化性樹脂を外装材として用いることにより、金属板よりも薄く生産性に優れた加工を施すことができる。
従って、上記の硬化性樹脂を外装材として用いることにより、電池パックの体積エネルギー密度を向上させることができ、電池パックの形成が容易であり、寸法精度が高くなって歩留まりを向上させ、多種多様な用途に応じてサイズや形状の設計自由度を広げることができる。
形状維持ポリマーは、外装材の機械的強度を高めるために、柔軟性を寄与する非結晶部分と、表面硬さを寄与する結晶部分のバランスが良好なものであることが好ましい。
形状維持ポリマーと共に硬化剤を用いる場合は、長い高分子鎖の架橋点を少なくして柔軟性に寄与する非結晶部分を形成するための架橋点が二つ以上の硬化剤と、高分子鎖の架橋点を多くして硬さ寄与する結晶部分を形成するための架橋点が三つ以上の硬化剤を併用することが好ましい。
この条件を満たすために、外装材に用いる形状維持ポリマーは、該形状維持ポリマーのガラス転移点が、電池パックを平常使用する温度以上であり、且つ、異常時における温度以下のものであることが好ましい。
ガラス転移点が、電池パックを平常使用する温度以上であると、形状維持ポリマーを構成する高分子の熱運動が抑制されており、形状維持ポリマーは硬いままであり、優れた機械的強度を発現することができる。
一方、形状維持ポリマーのガラス転移点が、異常時における温度以下であると、形状維持ポリマーを構成する鎖状高分子の熱運動の部分が激しくなって柔軟性を発現し、外装材が破壊され易くなる。
形状維持ポリマーのガラス転移点(Tg)は、好ましくは45〜130℃、より好ましくは60〜120℃、更に好ましくは80〜110℃の範囲にあることが好ましい。
金属酸化物フィラー又は金属窒化物フィラーとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)の酸化物若しくは窒化物、又は、これら酸化物若しくは窒化物の任意の混合物を挙げることができる。このような金属酸化物又は金属窒化物フィラーは、この外装材の硬さ及び熱伝導性を向上する機能を果たし、形状維持ポリマーを含む層と接触した状態で、金属酸化物フィラー又は金属窒化物フィラーを含む層を配置してもよく、この金属酸化物フィラー又は金属窒化物フィラーを形状維持ポリマーを含む層に混入してもよい。この場合、形状維持ポリマー層の全体に亘って、金属酸化物フィラー又は金属窒化物フィラーが均一に散在していることが好ましい。
このような外装材は、以下の物性値を有するものであることが好ましい。
外装材のJIS K7171により測定した曲げ強度は、好ましくは10〜120MPa、より好ましくは20〜110Mpa、更に好ましくは70〜100MPaである。
また、外装材のJIS K7171により測定した曲げ弾性率は、好ましくは30〜3000MPa、より好ましくは250〜2500MPa、更に好ましくは1000〜2500MPaである。
外装材は、JIS K7215に規定された標準温度(23℃±2℃)で測定したデュロメータD硬さよりも、異常時の温度、例えば、60℃以上の温度で測定したデュロメータD硬さの方が小さいものであることが好ましい。 異常時の温度下で、外装材の硬さが、標準時における硬さよりも小さくなると、異常時に発生したガスによって、外装材が開裂し易くなるからである。通常使用温度と異常環境時の温度で外装の硬さが変わらない場合には,異常時での温度で開裂し易く設定すると通常使用時に強度を確保しにくい虞がある。通常使用温度と異常環境時の温度で外装の硬さが変わらない場合には、通常使用時に十分な強度を確保すると、異常環境時の温度ではポリマー電池の特色である早い開裂による安全性確保を損なう虞がある。
次に、上記外装材に設ける開裂可能部について説明する。
上記外装材に設ける開裂可能部の好適形態の一例としては、上記開裂可能部が、上記外装材を成形型内に充填して硬化する段階で形成される充填痕から成る薄肉部であることが好ましい。
本発明の電池パックは、上述のように外装材が特定のガラス転移点を有する特定の形状維持ポリマーで構成されていることに加えて、外装材に薄肉部からなる開裂可能部が形成されているので、外装材でポリマー電池を被覆した形態の電池パックであっても、異常時に電池から発生したガスによって、薄肉部が容易に壊れ、薄肉部が開裂して形成されたガス放出口から、電池パックの外部にガスを放出して爆発を防止し、安全性を確保することができる。
しかし、本発明者らが確認したところ、驚くべきことに、電池パックの耐衝撃性は、薄肉部を形成しない場合よりも薄肉部を形成した場合の方が高くなっていた。
これは、外装材に形成された薄肉部が、落下時等の衝撃を吸収し、変形に対する抵抗力が増加したためと考えられる。
このように、本発明の電池パックは、外装材に開裂可能部となる薄肉部を形成したことによって、安全性の確保を可能にすると共に、機械的強度を高めることも可能となった。
図1〜5は、外装材1に形成した薄肉部2の好適形態の例を示す平面図である。
薄肉部2が外装材1の最大面3に形成されていると、電池素子を包装した包装体のシール部分の近くに、薄肉部2から成る開裂可能部が形成されていることになり、異常時に発生したガスによって薄肉部2が開裂し、ガスが外部に放出されやすくなる。
また、図1(a)に示すように、薄肉部2の形状は、交差する二本の線分状凹部から成る回転対称体に形成することが好ましい。
このような形状に薄肉部2が形成されていると、電池から発生したガスによって、外装材1の最大面3の一面全体が一定圧により均等に割れて、ガス放出口4が形成されるので、安全性を向上させることができる(図1(b)参照)。
なお、回転対称とは、ある形状をある回転で回転したときに、元の形状に重なるものをいう。
また、図3は、外装材1の最大面3の対角線上に、交差する二本の線分状凹部から成る回転対称体の形状に形成された薄肉部2と、この薄肉部2の端部に、最大面3の中心部方向に膨出するように湾曲する湾曲線分状凹部から成る薄肉部2aを形成した電池パックを示す平面図である。
該薄肉部2,2aが開裂することによってガス放出口が大きくなるので好ましい。
図1〜3に示すように、開裂可能部となる薄肉部の形態が、外装材の面と連続している形態であると、薄肉部が破壊されて外装材にガス放出口が形成された場合であっても、開裂した外装材の破壊片が飛び散らず、安全性を高めることができる。
図4(a)は、外装材1の最大面3の、外装材1の内部に収容されている電池の端子と対面する部分に、一つの長方形状の閉塞線状凹部から成る薄肉部2を形成した例を示し、図5は、外装材1の最大面3のトップ部の近傍に、四つの多角形状(十角形状:星形形状)の閉塞線状凹部から成る薄肉部2を形成した例を示す。
異常時に発生するガスは、電池の端子部分から発生しやすいので、この電池の端子と対面する部分に開裂可能部となる薄肉部2が形成されていると、電池から発生したガスによって薄肉部2が壊れ易く、ガス放出口4が形成され易くなるので好ましい(図4(b)参照)。
薄肉部の厚さtが70%を超え,かつ100μm以上であると、該薄肉部2が容易に開裂せず、電池パックの外部にガスを放出することができない。一方、薄肉部の厚さtが20%未満であると、電池パックの機械的強度が低くなる。なお、図6中、符号10は電池、符号32は保護回路基板、符号34は緩衝材である。
また、開裂可能部となる薄肉部の製造方法としては、上述の例に限らず、例えば、外装材を成形した後に、外装材の表面に機械的に溝部を形成することによって、該溝部の部分を薄肉部としてもよい。
次に、上記外装材に設ける開裂可能部の好適形態の他例について説明する。
開裂可能部は、電池及び保護回路基板と共に外装材に埋設する、上記外装材よりも機械的強度の小さい脆弱部材から成るものであることが好ましい。脆弱部材は、内部に空隙部を備えたものであることが好ましい。
異常時に発生したガスが、この脆弱部材を押圧し、又は、脆弱部材の空隙部に流入することによって、脆弱部材が外装材の内部で破裂する等の変形を生じ、この脆弱部材の変形により発生したエネルギーによって、外装材が破壊されてガス放出口が形成され、外部にガスを放出して爆発を防止し、電池パックの安全性を確保することができる。
脆弱部材は、脆弱部材の一面の一辺の長さが外装材の最大面積の最長の一辺の長さの3%以上の長さ又は1mm以上の長さを有し、該脆弱部材の厚さが、外装材の全厚さの20%以上の厚さ又は100μm以下の厚さを有するものであることが好ましい。
脆弱部材の寸法が上記範囲内であると、異常時に発生したガスによって脆弱部材が破裂するなどのように変形した場合に、変形の際に生じたエネルギーによって、外装材を確実に開裂させて、ガスを放出することができる。
脆弱部材のJIS K7215により測定した、60℃におけるデュロメータD硬さは、D3〜D60であり、脆弱部材のJIS K6253により測定した、60℃におけるデュロメータA硬さはA20〜A90であることが好ましい。
脆弱部材の硬さが上記範囲内であると、異常時と想定される、例えば、60℃以上の温度域において、電池から発生するガス等により脆弱部材が優先的に破裂等の変形を生じ、この変形時のエネルギーによって外装材を開裂させて、ガスを外部に放出することができる。
このように、脆弱部材が消火剤及び/又は吸熱剤を含むものである場合は、例えば、ガスの発生が避けられない200℃以上の高温下に置かれた異常時に、ガスによって変形した脆弱部材から消火剤や吸熱剤を放出させることによって、ガスの昇温反応を抑制することができる。
消火剤や吸熱剤は、脆弱部材と共に混合して、脆弱部材の内部に含有させてもよく、脆弱部材が空隙部を備えたものである場合は、この空隙部に封入して含有させてもよい。
消火剤としては、例えば、ハロン2402、ハロン1211、ハロン1301などのハロゲン化合物、リン酸アンモニウムなどリン系化合物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸系化合物、界面活性剤を主成分とする起泡性化合物など、一般的に知られている消火剤を用いることができる。
吸熱剤としては、例えば、アルミナ、シリカなどのセラミックスの他、金属ニッケル、金属セラミックスなどの金属を含む粉体及びこれらを樹脂で固めた体積熱容量が2J/K・cm3を超えるものを用いることができる。
図7〜9は、外装材1の内部に脆弱部材5を設けた好適形態の例を示す平面図である。
図7は、脆弱部材5を、電池10の正極端子15a及び負極端子15bの間に設けた状態を示し、図8は、脆弱部材5,5を、電池10の正極端子15aの上方及び負極端子15bの上方に各々1つずつ設けた状態を示し、図9は、電池10の正極端子15aの上方から負極端子15bの上方に亘って1つの脆弱部材5を設けた状態を示す。なお、図7〜9中、符号32は保護回路基板を示している。
このように、脆弱部材5が電池10の正極端子15a及び負極端子15bの近傍に設けられていると、異常時に発生するガスによって脆弱部材5が変形し易く、該変形によって生じたエネルギーによって外装材を開裂させて、ガス放出口が形成され、ガスを外部に放出させ易くなり、爆発の危険性を低減することができる。
図10は、脆弱部材5を、電池10の端子15の外方側に設けた状態を示し、図11は、保護回路基板32から電池10に亘る外方側部に、脆弱部材5を設けた状態を示す。
図10及び11に示す例では、脆弱部材5は、外装材1のトップ部近傍に設けているが、本例に限らず、脆弱部材5は、外装材1のサイド部に設けてもよく、外装材1のトップ部やボトム部に設けてもよく、成形型枠内における電池及び保護回路基板の周囲空間のいずれの位置に設けてもよい。また、脆弱部材は、1つ又は複数設けてもよい。
図12〜図18は、本発明の電池パックの一実施形態を示しており、図16に示すように、この電池パックは、電池素子10を金属ラミネートフィルム17で被覆して作製される電池20を備えている。この電池20において、ラミネートフィルム17に形成した凹部17a(空所17a)に電池素子10を収容して、その周辺部を封止するようになっており、この場合、ラミネートフィルム17の空所17aは、矩形板状を成している電池素子10の形状に対応した矩形板状の空間となっている。
合はシーラント16と適宜称する)が被覆してある。
[正極]
正極は、正極活物質を含有する正極活物質層を正極集電体の両面状に形成して成るものである。正極集電体は、例えばアルミニウム(Al)箔などの金属箔により構成され、一方、正極活物質層は、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成される。ここで、正極活物質、導電剤、結着剤及び溶剤は、均一に分散していればよく、その混合比は問われない。
LiXMO2…(1)
(式中のMは少なくとも一種の遷移金属を示し、Xは電池の充放電状態によって異なるが、通常は0.05〜1.10である)で表されるリチウムと遷移金属との複合酸化物を用いることができる。なお、リチウム複合酸化物を構成する遷移金属(M)としては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)等を用いることができる。
負極は、負極活物質を含有する負極活物質層を負極集電体の両面上に形成して成るものである。負極集電体は、例えば銅(Cu)箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
電解液としては、リチウムイオン電池に一般的に使用される電解質塩と非水溶媒が使用可能である。
マトリクスポリマは、上記非水溶媒に上記電解質塩が溶解されてなる非水電解液に相溶可能であり、ゲル化できるものであればよい。このようなマトリクスポリマとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、及びポリメタクリロニトリルを繰り返し単位に含むポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
セパレータは、例えば、ポリプロピレン(PP)若しくはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系の材料から成る多孔質膜、又は、セラミック製の不織布などの無機材料から成る多孔質膜により構成され、これらの二種以上の多孔質膜を積層した構造としてもよい。中でも、ポリエチレンやポリプロピレンの多孔質フィルムが最も有効である。
上述のようにして作製したゲル状電解質溶液を正極11及び負極12に均一に塗布し、正極活物質層及び負極活物質層に含浸させた後、常温で保存するか、若しくは乾燥工程を経てゲル状電解質層14を形成する。
また、上述のように、ラミネートフィルム17への電池素子10の収容及び封止を行った後、図18(A)及び図18(B)に示すように、電池素子10を収容した凹部17aの両側の部分(以下、サイド封止部と適宜称する)17bを凹部17aの方向に向けて折り曲げる。
更に、本発明の電池パックの製造方法では、成形用金型に形成した突起、又は、貼付した突起によって、上記電池及び保護回路基板の周囲空間に充填されて硬化する外装材に、充填痕である薄肉部から成る、異常時に電池から発生するガスによって開裂する開裂可能部を形成する。
なお、図示を省略したが、成形用金型Cには、外装材の薄肉部を構成する充填痕を形成するための突起が設置されている。
なお、図示を省略したが、上記の薄肉部2から成る開裂可能部の代わりに、電池20及び保護回路基板32と共に、キャビティCa内に脆弱部材を収容し、外装材18で、電池及び保護回路基板32と共に、開裂可能部となる脆弱部材も被覆して一体化した電池パックを得てもよい。
に限定されるものではない。
外装材に埋設した脆弱部材から成る開裂可能部を設けた電池パックの例を示す。
まず、表1に示す各フィルムで包装した電池を用意し、この電池をその電圧及び電流を制御可能な保護回路基板に接続した状態で、緩衝材、スペーサ及び表1に示す形状の脆弱部材と共に、成形型内のキャビティの所定位置に挿入し固定した。その後、成形型の上部の三箇所に位置する孔径0.5mmの樹脂注入孔から表1に示すフィラー材を含む樹脂を注入して、キャビティ内に充填し、成形型の下部に三箇所に位置する樹脂排出孔から余分の樹脂が排出された時点で、表1に示す各温度の恒温槽内において各時間放置し、又は、透明な成形型を用いて表1に示す時間、波長が365nmの紫外線を照射して、樹脂を硬化させて外装材を形成し、排出口に残った余分な樹脂を切断して、各例の電池パックを作製した。
なお、表1に示す最大幅とは、脆弱部材の最大の寸法を示し、設置辺の寸法とは、外装材の最大面における最大の長さを示し、設置辺に対する割合とは、設置辺の寸法に対する最大幅の割合(最大幅(mm)/設置辺の寸法(mm)×100(%))を示す。また、最大厚みとは、脆弱部材の最大の厚みを示し、設置辺に対する厚みの割合とは、外装材の全厚みに対する脆弱部材の最大の厚みの割合(最大厚み/外装材の全厚み×100(%))を示す。
比較例1として、アルミラミネートフィルムを有する電池を用意した。比較例2として、脆弱部材を用いることなく、フィラー材を含まない樹脂をキャビティ内に充填した後、常温で1日放置して、該樹脂を硬化させたこと以外は実施例1〜16と同様にして電池パックを作製した。比較例3、4として、脆弱部材を用いることなく、フィラー材を含まない樹脂を、表1に示す温度で溶融して押し出し成形し、表1に示す時間で硬化させたこと以外は実施例1〜16と同様にして電池パックを作製した。比較例5として、脆弱部材を用いることなく、フィラー材を含まない樹脂をキャビティ内に充填して、100℃で1.5時間放置して、該樹脂を硬化させたこと以外は実施例1〜16と同様にして、電池パックを作製した。
(1)定格エネルギー密度(Wh/l)
23℃の温度下において、上限4.2Vで15時間の1Cの定電流定電圧充電と、終止電圧2.5Vまでの1Cの定電流放電を繰り返し行い、定格エネルギー密度を、1サイクル目の放電容量から求めた。結果を表2に示す。
定格エネルギー密度(Wh/l)=(平均放電電圧(V)×定格容量(Ah))/電池体積(l)
なお、1Cは、電池の理論容量を一時間で放出可能な電流値を示す。
各例における電池パックの機械的強度のばらつきを観察するため、各例毎に電池パックを各々10個ずつ作製し、全ての電池パックを2mの高さからコンクリートの床に自由落下させた。1個の電池パックの6つの平面が全て床に当たるように、1個の電池パック当たり10回ずつ行い、ダメージがない個数をOKとし、割れたり部品が外れたり個数をNGとした。結果を表2に示す。
各例の電池パックを1.2mの高さからコンクリートの床に50回自由落下させた後の寸法変化(Δt)を測定した。結果を表2に示す。
定格容量850mAhの放電状態の電池パックを50℃の恒温槽の中に入れ、正極と負極の端子間に18Vの電圧と1700mA(2C)の充電電流を3時間流して過充電を実施し、温度変化を観察して過充電特性を評価した。
また、表2に示す1.2m高さからの落下試験によれば、実施例1〜16の電池パックは、寸法変化が1.1以下と小さく、機械的強度が高いものであるのに対して、比較例1〜5の電池及び電池パックは寸法変化が2.0以上と高く、機械的強度が低かった。
一方、比較例1〜5の電池又は電池パックは、最大温度が400℃を超えるものがあり、
異常環境時においてガス噴出や発火などの熱暴走に至ってしまうことが確認できた。
なお,角形形状の電池パックのサイズは383450や413454のように標記される。左から順に0.1mm単位の厚み,1mm単位の横寸法,1mm単位の縦寸法を意味する慣用表現であり,383450であれば厚みが3.8mm,横寸法が34mm,縦寸法が50mmであることを示す。
外装材に突起痕である凹状の薄肉部から成る開裂可能部を設けた電池パックの例を示す。
まず、アルミラミネートフィルムで包装した電池を用意し、この電池をその電圧及び電流を制御可能な保護回路基板に接続した状態で、緩衝材、スペーサと共に、成形型内のキャビティの所定位置に挿入し固定した。その後、成形型の上部の三箇所に位置する孔径0.5mmの樹脂注入孔から表3に示す樹脂を注入して、キャビティ内に充填し、成形型の下部に三箇所に位置する樹脂排出孔から余分の樹脂が排出された時点で、表3に示す各温度の恒温槽内において各時間放置し、又は、透明な成形型を用いて表3に示す時間、波長が365nmの紫外線を照射して、樹脂を硬化させて外装材を形成した。この外装材には、成形型枠内の所定位置に形成又は貼付された突起によって形成された突起痕(充填痕)である、表3に示した図1〜5に表す形状の薄肉部を形成した。そして、排出口に残った余分な樹脂を切断して、各例の電池パックを作製した。
外装材に埋設した脆弱部材から成る開裂可能部を設けた電池パックの例を示す。
表3に示す条件で、表3に示す形状の脆弱部材を設けたこと以外は、実施例1〜16と同様にして、各例の電池パックを作製した。
表3に示す条件で、薄肉部又は脆弱部材を設けないこと以外は、実施例17〜25と同様にして、各例の電池パックを作製した。
また、表4に示す1.2m高さからの落下試験によれば、実施例17〜25の電池パックは、寸法変化が1.5以下であり、機械的強度が高いものであるのに対し、比較例6〜10の電池パックは寸法変化が2.1以上と高く、機械的強度が低かった。
一方、比較例6〜10の電池又は電池パックは、最大温度が400℃を超えるものがあり、異常環境時においてガス噴出や発火などの熱暴走に至ってしまうことが確認できた。
なお,角形形状の電池パックのサイズは383450や413454のように標記される。左から順に0.1mm単位の厚み,1mm単位の横寸法,1mm単位の縦寸法を意味する慣用表現であり,383450であれば厚みが3.8mm,横寸法が34mm,縦寸法が50mmであることを示す。
Claims (3)
- 正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、
上記電池の保護回路基板と、
上記電池及び上記保護回路基板を一体的に被覆する外装材とを備え、
上記外装材は、上記電池及び上記保護回路基板を一体的に被覆し、形状維持ポリマーからなる第1の材料と、該第1の材料に対して埋設され、上記第1の材料よりも機械的強度が小さい脆弱部材からなる第2の材料とからなり、
上記第1の材料の表面硬度がD50〜D90、上記第2の材料の60℃における硬さが、上記第1の材料の60℃における硬さ以下であり、上記第2の材料の60℃におけるデュロメータ硬さがD3〜D60、又は、JIS K6253により測定した60℃におけるデュロメータA硬さがA20〜A90である材料を用い、
異常時に上記電池から発生するガスによって上記第2の材料が埋設された位置で上記第1の材料が開裂し、該ガスを電池パックの外部に放出するようになされた電池パック。 - 上記第1の材料は、
ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である形状維持ポリマーと、
フィラー材と
を含む複合材料である請求項1に記載の電池パック。 - 正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る電池素子を包装体で包装した電池と、
上記電池の保護回路基板と、
成形型の成形空間に充填される第1の材料よりも機械的強度が小さい脆弱部材からなる第2の材料とを上記電池の端子を外部に導出した状態にして上記成形型の上記成形空間内に収容し、
上記成形空間に上記第1の材料を充填して硬化させることにより、上記電池及び上記保護回路基板を一体的に被覆する外装材を形成し、
上記第1の材料が形状維持ポリマーからなり、
上記第1の材料の表面硬度がD50〜D90、上記第2の材料の60℃における硬さが、上記第1の材料の60℃における硬さ以下であり、上記第2の材料の60℃におけるデュロメータ硬さがD3〜D60、又は、JIS K6253により測定した60℃におけるデュロメータA硬さがA20〜A90である材料を用い、
異常時に上記電池から発生するガスによって、上記第2の材料が埋設された位置で上記第1の材料が開裂し、該ガスを電池パックの外部に放出するようになされた電池パックの製造方法。
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