JP4778313B2 - アンカーの定着具 - Google Patents
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Description
もし、ジャッキdによってすべてのPC鋼線bを同一の距離だけ緊張すると、短いPC鋼線bには大きな緊張力が導入され、長いPC鋼線bには少ない緊張力が導入されることになる。
しかし複数本のPC鋼線bが一体となってアンカーとして作用するのであるから、一部のPC鋼線bに大きな緊張力が作用するのではなく、すべてのPC鋼線bには等しい緊張力が導入されることが望ましい。
そのための解決方法として、緊張前に第1、第2、第3の各PC鋼線bの伸びをあらかじめ算定しておく方法がある。
そしてまず各PC鋼線bの伸びの差分を緊張し、すべてをそろえた後に順次各PC鋼線bを緊張するような方法である。
しかしこの方法では、伸びの差分を緊張するためには、各PC鋼線bごとに色違いの目印を付けるなどの区別が必要になる。
この色違いの表示は、オイルや泥で汚れると不鮮明になりやすく、薄暗い現場で、PC鋼線aを識別して正確に決められた順序にしたがって緊張してゆくという作業は、現場でのわずらわしい管理が必要となる。
したがって従来のように緊張に際して、汚れやすかったり、照明の不十分な現場において煩雑な管理を行わなくとも、複数本のPC鋼線に均等の緊張力を導入することができ、短いPC鋼線にのみ大きな緊張力が作用するような不都合が生じない。
さらにアンカーとしての用途が終了したら、定着具に取付けたPC鋼線を、簡単に引き抜いて除去することができる。
本発明のアンカーの定着具Cを実際に使用する状態は図6に示すとおりである。
すなわち、複数本のPC鋼線Bの先端を、本発明の定着具Cを介して耐荷体Aに取付け、アンカー孔E内に配置し、注入した硬化剤が硬化した後、アンカー孔E外の1台のジャッキDによって複数本のPC鋼線Bを同時に緊張する工法である。
そしてこの本発明の定着具Cは、外筒1と、クサビ座筒2と、PC鋼線Bを把持するクサビ片3と、ストッパリング4および調整筒5とによって構成するものである。
PC鋼線Bはシース部B1と、シースの一部を除去した鋼線部B2によって構成し、鋼線部B2をクサビ片3で把持する構造である。
なお、以下の実施例では特定の構造の除去式アンカーを例として説明する。
しかし除去を行わない永久アンカーでも、PC鋼線が腐食するなどの原因で、PC鋼線を交換したい場合に対応できる定着具としても使用することができる。
外筒1は、中空の筒体である。
この外筒1の孔底側(本発明の定着具Cをアンカー孔E内に配置した場合に、アンカー孔Eの最深部側のこと)は底栓13によって閉塞している。
底栓13は底面を備えた容器状の円柱であり、後述する係止筒5が孔底側に移動した場合に、容器状の底栓13の内面に、係止筒6のリング64が嵌合する。
一方、外筒1の孔口側は、後述する調整筒5のねじをねじ込んで閉塞する。
外筒1の内面には、筒の中心軸に対して横断方向に、円周溝41を形成し、この円周溝41の内部にストッパリング4を収納する。
このストッパリング4は、内側へ収縮する弾性を備えているが、通常は内部に後述するクサビ座筒2の円錐筒23が位置しているから、ストッパリング4が内側へ収縮することができない。
なお、モルタルの外筒1内への侵入を阻止するために、外筒1の内部にグリースを充填しておくことも可能である。
クサビ座筒2は、外筒1の内部に摺動自在に収納した筒体である。
このクサビ座筒2は内部に貫通孔21を設けた筒体であるが、貫通孔21の内径は同一ではなく、孔口側へ向けて徐々に小さくなる円錐筒として構成する。
クサビ座筒2の孔底側の端面の直径は、クサビ片3群の直径よりも大きく形成し直径の差から生じる段差はストッパリング4を係止するための係止段24を形成する。
クサビ片3は、中空の円錐台を軸方向に複数に分割した形状の複数の部材である。
このクサビ片3は、クサビ座筒2の貫通孔21の内部に収納してあり、貫通孔21の内径は、孔口側へ向けて徐々に小さく円錐筒して構成あるから、クサビ片3群の内部にPC鋼線Bを位置させて孔口側へ引き寄せると、周囲のクサビ片3群の内径が収縮し、この収縮によって、PC鋼線Bの鋼線部B2を周囲から強固に把持することができる。
なお、以上のようなクサビ片3群とクサビ座筒2の組み合わせによってPC鋼線Bを把持するための機構は公知である。
クサビ片3の孔底側は、係止筒6を取り付ける。
クサビ片3を取付けるために、クサビ片3の内側に食い込みようの縁棚31を内向きに突設し、この縁棚31が係止筒6の係止溝61の内部に係合するように構成する。
クサビ片3群の縁棚31を係合溝61に係合させた場合に、クサビ片3群は完全に円筒を構成せず、各クサビ片3の間に多少の隙間ができるような寸法に製作してある。
この隙間があるために、クサビ片3がクサビ座筒2の斜面した貫通孔21を孔口側に移動した場合に、クサビ片3間の隙間を縮小してPC鋼線Bをその周囲から強固に把持することが可能となる。
係止筒6は内部に底面63を有する穴62を開口した筒体であり、その穴62の内径はPC鋼線Bの露出部分の外径にほぼ等しい。
PC鋼線Bを定着具Cの孔口側から挿入した場合に、PC鋼線Bの先端はこの係止筒6の穴62の底面63に当るので、それ以上、孔底側へ挿入することができない構造となっている。
係止筒6の孔底側には、その外周に環状のクッションリング64を取り付け、このクッションリング64が底栓13の内面に係合する寸法に構成する。
この係止筒6には孔底側から弱いばねによって孔口側への押し出し力を与えておき、クサビ片3が常にクサビ座筒2内に挿入された状態を維持する構成を採用することもできる。
クサビ座筒2の孔口側には、クサビ座筒2を孔底側へ押し戻す反力バネ7を配置する。
この反力バネ7の弾力によってクサビ座筒2には孔底側へ押し出される力が作用する。
PC鋼線Bに孔外からジャッキによって強力な引っ張り力を与えた時には、クサビ片3によってPC鋼線bを把持しているクサビ座筒2によって反力バネ7が加圧されて収縮する。
外筒の孔口側に調整筒5を取付ける。
この調整筒5は内部の貫通した筒体であり、その外周にねじ山を刻設する。
したがって、この調整筒5を回転させることによって外筒1の中心軸方向に向けて出入りさせることができる。
内部に貫通した貫通孔は、PC鋼線挿入孔51として開口する。
調整筒5に貫通したPC鋼線挿入孔51の孔口側の端面からさらにネジ筒52をねじ込む場合には、このネジ筒52にもPC鋼線を挿入するための挿入孔を貫通して開口する。
調整筒5を回転させて出入りさせる場合に、その先にはクサビ座筒2の端、あるいは端の位置させた受圧リング25が位置している。
受圧リング25は、単なる穴あきの円盤である。
調整筒5を外筒1の内部で移動させておけば、PC鋼線Bを孔外から緊張した場合に、各定着具ごとにクサビ座筒2の孔口側への移動距離Lを調整することができる。
アンカー孔Eを削孔した現地、あるいは工場において、各固定具CごとにPC鋼線Bを挿入してクサビ片3で把持させる。
しかし複数の固定具Cは、孔内においてその配置する位置が、孔内の浅い位置、深い位置、中間の位置というように異なる。
そこで固定具Cごとに、その配置する位置に応じて調整筒5の外筒1内への挿入量を調整する。
この挿入量の調整は、事前にPC鋼線Bの長さごとに基づく計算で決定しておく。
そしてもっとも孔口に近い位置に配置する予定の固定具Cでは、調整筒5を孔口側へ移動させ、クサビ座筒2の移動可能な距離Lを大きく設定する。
一方、もっとも孔底に近い位置に配置する予定の固定具Cでは、調整筒5を孔底側へ移動させ、クサビ座筒2の移動可能な距離Lを短く設定する。
上記したような調整筒5の調整の終わった定着具Cの外筒1のPC鋼線挿入孔からPC鋼線Bを挿入する。
PC鋼線をいったん挿入した後、PC鋼線Bを軽く引き出すだけでクサビ片3がクサビ座筒2内の傾斜面をスライドしてPC鋼線Bの鋼線部B2を把持する。
こうして各PC鋼線Bごとに、その鋼線部B2の端に1個の定着具Cを取付ける。
こうして、長さの異なる複数本のPC鋼線Bにおのおの定着具Cを取付け、各定着具Cには耐荷体Aを取りつけて、それらを複数の位置でテープで束ねて、1本のテンドンを構成する。
なお、図6の実施例は2本のPC鋼線Bで1個の耐荷体Aを取り付ける状態を説明しているが、他の公知の構成を採用することもできる
上記の工程で組み立てたテンドンを、事前に削孔したアンカー孔E内へ挿入し、モルタルなどの硬化剤を注入する。
モルタルなどが硬化したのち、アンカー孔Eの外に露出した複数本のPC鋼線Bの端を、1台のジャッキDで同時に引っ張って緊張する。
PC鋼線Bは、その内部の鋼線は外部のシースに対してスライドが自在であるから、モルタルなどで硬化したシースは移動せず、内部の鋼線だけが孔口側へ移動する。
すると、PC鋼線Bを拘束したクサビ座筒2は、孔口側へ移動し、反力バネ7は収縮する。
鋼材のヤング率は同一だから、短いPC鋼線Bの伸び量は小さく、長いPC鋼線Bでの伸び量は大きい。
この差は固定具Cの間に距離に応じた量だけ生じるが、一般に固定具Cと固定具Cとの間隔は5〜10メートルである。
その結果、調整量を考慮せずに一定値以上引っ張ると、前記したように、短いPC鋼線Bに先に引っ張り力が作用し、その際には長いPC鋼線Bはまだゆるんだ状態にあるから引っ張り力は作用しない。
それ以上の緊張を続けると、すでにゆるみのなくなった短いPC鋼線Bは必要以上に大きな引張り力が作用し、一方、長いPC鋼線Bではまだ引張り力が作用していない、という不均衡が生じる。
ところが本発明の固定具Cでは設置位置に応じて調整筒5の位置が調整してあり、クサビ座筒2の移動可能な距離Lが調整してある。
すなわち浅い位置の固定具Cでは、クサビ座筒2の移動可能距離Lを長めにとり、深い位置の固定具Cではクサビ座筒2の移動可能距離Lを短めにとるように調節してある。もっとも孔底の奥に設置する定着具Cでは移動可能距離をゼロに設定できる。
そのために同一のジャッキで長さの異なるPC鋼線Bを同一の距離だけ緊張しても、浅い位置の固定具のPC鋼線Bでは大きく変形を吸収するが、深い位置の固定具CのPC鋼線Bでは小さく変形を吸収することになり、結局、すべてのPC鋼線Bにおいてほぼ同一の距離だけの伸び量となる。
こうして、長さの異なる複数本のPC鋼線Bであるにもかかわらず、ほぼ均一な緊張力を導入することが可能となる。
PC鋼線Bを孔外からジャッキDで強力に引くことによって、PC鋼線Bを把持しているクサビ片3と、その周囲のクサビ座筒が2孔口側に移動する。
この移動によってクサビ座筒2がストッパリング4の位置よりも孔口側へ移動すると、ストッパリング4が外筒1の内面に露出した状態となる。(図2)
この状態でアンカーとして、擁壁の支持や法枠の支持といった、本来の機能を達成することができる。
アンカーとしての用途が終了したら、PC鋼線Bを引きぬいて除去する。
そのためにまずジャッキDの緊張を緩めると、バネ7の弾力でクサビ座筒2が孔底側に戻るが、ストッパリング4によって後退を阻止されてしまう。
その状態でPC鋼線Bに対して外部の露出端から孔底側への押し込み力を与える。(図3)
しかしクサビ座筒2は、その孔底側の係止段24がストッパリング4によって移動が阻止されており、孔底側への移動ができないから、クサビ片3群と係止筒6だけが、クサビ座筒2から離脱して孔底側へ戻る。
そして孔底側において、係止筒6のリング64が底栓31の内面に係合して把持されることになる。
この係合によってクサビ片3の移動は拘束され、PC鋼線Bを再度、孔口側へ引き出しても、PC鋼線bとともに孔口側へ移動することがない。
その結果、PC鋼線Bは把持力が失われたクサビ片3から引き出すことが可能となり、PC鋼線Bは人力によっても容易に孔外へ引き出して除去することが可能となる。
C:定着具
1:外筒
2:クサビ座筒
3:クサビ片
4:ストッパリング
5:調整筒
Claims (2)
- 複数本のPC鋼線の先端を、定着具を介して耐荷体に取付け、アンカー孔内に配置するアンカーの定着具であって、
定着具は、外筒と、クサビ座筒と、PC鋼線を把持するクサビ片とによって構成し、
外筒の孔底側は閉塞し、
外筒の孔口側には、調整筒を外筒内へ出入り自在に取り付け、
クサビ座筒の孔口側にはクサビ座筒を孔底側へ押し戻す反力バネを配置し、
調整筒にはPC鋼線挿入孔を貫通して開口し、
クサビ座筒は外筒の内部に摺動自在に収納した筒体であり、
クサビ片は、中空の円錐台を軸方向に複数に分割した部材であり、クサビ座筒の内部の貫通孔に収納してあり、
クサビ座筒内の貫通孔は、孔口側の内径を小さくした円錐筒として形成し、
クサビ片群によって、PC鋼線の端部を把持する構成であり、
調整筒の外筒内への挿入量によってクサビ座筒の孔口側への移動可能な距離を設定するように構成した、
アンカーの定着具。 - 複数本のPC鋼線の先端を、定着具を介して耐荷体に取付け、アンカー孔内に配置するアンカーの定着具であって、
定着具は、外筒と、クサビ座筒と、PC鋼線を把持するクサビ片とによって構成し、
外筒の孔底側は閉塞し、
外筒の孔口側には調整筒を外筒内へ出入り自在に取り付け、
クサビ座筒の孔口側にはクサビ座筒を孔底側へ押し戻す反力バネを配置し、調整筒にはPC鋼線挿入孔を貫通して開口し、
外筒の内側に刻設した溝内にはストッパリングを収納し、
クサビ座筒は外筒の内部に摺動自在に収納した筒体であり、
クサビ片は、中空の円錐台を軸方向に複数に分割した部材であり、クサビ座筒の内部に収納してあり、
クサビ座筒の一端は、孔口側の内径を小さくした円錐筒として形成し、
クサビ片群によって、PC鋼線の端部を把持する構成であり、
調整筒の外筒内への挿入量によってクサビ座筒の孔口側への移動可能な距離を設定するように構成し、
かつPC鋼線を緊張した際にクサビ座筒が孔口側へ移動することによって、
ストッパリングが外筒の内側へ突出して、クサビ座筒の孔底側への移動を阻止するように構成した、
アンカーの定着具。
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