JP4663502B2 - アンカーの定着具 - Google Patents
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もし、ジャッキdによってすべてのPC鋼線bを同一の距離だけ緊張すると、短いPC鋼線bには大きな緊張力が導入され、長いPC鋼線bには少ない緊張力が導入されることになる。
しかし複数本のPC鋼線bが一体となってアンカーとして作用するのであるから、一部のPC鋼線bに大きな緊張力が作用するのではなく、すべてのPC鋼線bには等しい緊張力が導入されることが望ましい。
そのための解決方法として、緊張前に第1、第2、第3の各PC鋼線bの伸びをあらかじめ算定しておく方法がある。
そしてまず各PC鋼線bの伸びの差分を緊張し、すべてをそろえた後に順次各PC鋼線bを緊張するような方法を採用していた。
しかし、伸びの差分を緊張するためには、各PC鋼線bごとに色違いの目印を付けるなどの区別が必要になる。
この色違いの表示は、オイルや泥で汚れると不鮮明になりやすく、薄暗い現場で、PC鋼線aを識別して正確に決められた順序にしたがって緊張してゆくという作業は、現場でのわずらわしい管理が必要となる。
したがって従来のように緊張に際して、汚れやすかったり、照明の不十分な現場において煩雑な管理を行わなくとも、複数本のPC鋼線に均等の緊張力を導入することができ、短いPC鋼線にのみ大きな緊張力が作用するような不都合が生じない。
さらにアンカーとしての用途が終了したら、定着具に取付けたPC鋼線を、簡単に引き抜いて除去することができる。
本発明のアンカーの定着具Cを実際に使用する状態は図6に示すとおりである。
すなわち、複数本のPC鋼線Bの先端を、本発明の定着具Cを介して耐荷体Aに取付け、アンカー孔E内に配置し、アンカー孔E外のジャッキDによって複数本のPC鋼線Bを緊張する工法である。
そしてこの本発明の定着具Cは、外筒1と、クサビ座筒2と、PC鋼線Bを把持するクサビ片3と、ストッパリング4および調節ボルト5とによって構成するものである。
なお、以下の実施例では特定の構造の除去式アンカーを例として説明するが、本発明の構成は、いわゆるUターンタイプなどの他の構造の除去式アンカー、および除去を行わない各種の永久アンカーにも使用することができるものである。
外筒1は、中空の筒体である。
外筒1の孔底側(本発明の定着具Cをアンカー孔E内に配置した場合に、アンカー孔Eの最深部側のこと、以下同じ)は底栓13によって閉塞しており、そこに耐荷体Aを取り付ける。
定着具Cの孔口側には栓体11をねじ込んで閉塞するが、栓体11には外筒1の内径よりも小さい内径のPC鋼線挿入孔12を開口する。
あるいは図1の実施例のように栓体11の端面からさらにネジ筒14をねじ込む場合には、このネジ筒14にも挿入孔12を開口する。
外筒1の内面には、筒の中心軸に対して横断方向に、円周溝41を形成し、この円周溝41の内部にストッパリング4を収納する。
このストッパリング4は、内側へ収縮する弾性を備えているが、通常は内部に後述するクサビ座筒2の円錐筒23が位置しているから、ストッパリング4が内側へ収縮することができない。
なお、モルタルの外筒1内への侵入を阻止するために、外筒1の内部にグリースを充填しておくことも可能である。
クサビ座筒2は、外筒1の内部に摺動自在に収納した筒体である。
このクサビ座筒2は内部に貫通孔を設けた筒体であるが、貫通孔21の内径は同一ではなく、孔口側へ向けて徐々に小さくなる円錐筒として構成する。
クサビ座筒2の孔底側の端面の直径は、クサビ片群の直径よりも大きく形成し
直径の差から生じる段差はストッパリング4を係止するための係止段24を形成する。
クサビ片3は、中空の円錐台を軸方向に複数に分割した形状の複数の部材である。
このクサビ片3は、クサビ座筒2の貫通孔21の内部に収納してあり、貫通孔21の内径は、孔口側へ向けて徐々に小さく円錐筒して構成あるから、クサビ片3群の内部にPC鋼線Bを位置させて孔口側へ引き寄せると、周囲のクサビ片3群の内径が収縮し、この収縮によって、PC鋼線Bの端部を周囲から強固に把持することができる。
なお、以上のようなクサビ片3群によってPC鋼線Bを把持するための機構は公知である。
クサビ片3の孔底側は、係止筒6を取り付ける。
クサビ片3を取付けるために、クサビ片3の内側に食い込みようの縁棚31を内向きに突設し、この縁棚31が係止筒6の係止溝61の内部に係合するように構成する。
クサビ片3群の縁棚31を係合溝61に係合させた場合に、クサビ片3群は完全に円筒を構成せず、各クサビ片3の間に多少の隙間ができるような寸法に製作してある。
この隙間があるために、クサビ片3がクサビ座筒2の斜面した貫通孔21を孔口側に移動した場合に、クサビ片3間の隙間を縮小してPC鋼線Bをその周囲から強固に把持することが可能となる。
係止筒6は内部に底面63を有する穴62を開口した筒体であり、その穴62の内径はPC鋼線Bの露出部分の外径にほぼ等しい。
PC鋼線Bを定着具Cの孔口側から挿入した場合に、PC鋼線Bの先端はこの係止筒6の穴62の底面63に当るので、それ以上、孔底側へ挿入することができない構造となっている。
この係止筒6には孔底側から弱いばね64によって孔口側への押し出し力を与えておき、クサビ片3が常にクサビ座筒2内に挿入された状態を維持する。
係止筒6の孔底側には、後述する調節ボルト5が位置している。
クサビ座筒2の孔口側には、クサビ座筒2を孔底側へ押し戻す反力バネ7を配置する。
この反力バネ7の弾力によってクサビ座筒2には孔底側へ押し出される力が作用する。
PC鋼線Bに孔外からジャッキによって強力な引っ張り力を与えた時には、クサビ片3によってPC鋼線bを把持しているクサビ座筒2によって反力バネ7が加圧されて収縮する。
外筒の孔底側に取付けた底栓13には、調節ボルト5を取付ける。
この調節ボルト5は通常のボルトであり、回転させることによって、外筒の中心軸方向に向けて出入りする。
調節ボルト5の出入りする先には係止筒6が位置している。
したがって調節ボルト5を外筒1の内部に侵入する方向へ移動させれば、係止筒6、クサビ座筒2は孔底側へ接近することができない。
一方、調節ボルト5を外筒1の内部から引き抜く方向へ移動させれば、係止筒6、クサビ座筒2は孔底側へ接近する。
こうして調節ボルト5の出入り量を調整することによって、係止筒6にPC鋼線Bを挿入した場合に、係止筒6、クサビ座筒2の挿入位置の限界が規制されることになる。
その結果、PC鋼線の挿入可能長さを調節することができ、PC鋼線の長さの差による緊張力の不均一さを、均一なものに調整することができる。
固定具にPC鋼線Bに取り付ける前に、その固定具Cの孔内の設置位置に応じて調節ボルト5の外筒1内への挿入量を調整する。
すなわちもっとも孔口に近い位置に配置する予定の固定具Cでは、調節ボルト5を外筒1内において孔底側へ引き出してダブルボルトによって固定する。
もっとも孔底に近い位置に配置する予定の固定具Cでは、調節ボルト5はもっとも孔口側へ押し込んで固定する。
このように固定具Cは設置する位置が浅いか、深いかによって調節ボルト5の突出状態が明らかに相違するから、アンカーの組み立ての場合の位置の間違いを避けることができる。
削孔したアンカー孔の外で、PC鋼線Bごとに、その先端に各々定着具Cを取りつける作業を行う。
定着具Cの外筒1のPC鋼線挿入孔からPC鋼線Bを挿入する。
PC鋼線Bの先端は被覆を剥がしてあり、鋼線が露出している。
係止筒6の穴62の底面63が、PC鋼線Bの挿入の終端になっているから、PC鋼線Bを挿入することによって係止筒6は孔底側へ押し込まれる。
しかし係止筒6の孔底側には調節ボルト5の先端が位置しているから、その先端の位置よりも孔底側へ挿入することはできない。
PC鋼線をいったん挿入した後、PC鋼線Bを軽く引き出すだけでクサビ片3がクサビ座筒2内の傾斜面をスライドしてPC鋼線Bを強固に把持する。
こうして1本のPC鋼線Bの一端に1個の定着具Cを取付ける。固定具Cごとに、PC鋼線の挿入量が異なった状態でPC鋼線の挿入が完了する。
こうして、長さの異なる複数本のPC鋼線Bにおのおの定着具Cを取付け、各定着具Cには耐荷体Aを取りつけて、それらを複数の位置でテープで束ねて、1本のテンドンを構成する。
なお、図4の実施例は2本のPC鋼線Bで1個の耐荷体を取付ける状態を説明しているが、他の公知の構成を採用することもできる
削孔した孔Eの外に露出した複数本のPC鋼線Bの端を1台のジャッキDによって同時に引っ張って緊張する。
するとPC鋼線Bを拘束したクサビ座筒2は、孔口側へ移動し、反力バネ7は収縮する。
鋼材のヤング率は同一だから、短いPC鋼線Bの伸び量は小さく、長いPC鋼線Bでの伸び量は大きい。
この差は固定具Cの間に距離に応じた量だけ生じるが、一般に固定具Cと固定具Cとの間隔は5〜10メートルである。
その結果、調整量を考慮せずに一定値以上引っ張ると、前記したように、短いPC鋼線Bに大きな引張り力が作用し、長いPC鋼線Bでは小さな引張り力が作用するという不均衡が生じる。
ところが本発明の固定具Cでは設置位置に応じて調節ボルト5の位置が調整してある。
すなわち孔口に近い固定具Cでは係止筒6は孔底に接近する方向に移動させてある。(図2)
一方、孔底に近い側の固定具C、すなわち深い位置の固定具Cでは係止筒6は孔口に近い位置に移動させてある。
そのために、孔口に近い、浅い位置の固定具Cでは、変形量を吸収できる距離を長く取ることができる。
一方、孔底に近い、深い位置の固定具Cでは、変形量を吸収できる距離が短い。
このように浅い位置の固定具CのPC鋼線Bは長めに、深い位置の固定具CのPC鋼線Bは短めに調節してある。
そのために同一のジャッキで長さの異なるPC鋼線Bを同一の距離だけ緊張しても、浅い位置の固定具のPC鋼線Bでは大きく変形を吸収するが、深い位置の固定具CのPC鋼線Bでは小さく変形を吸収することになり、結局、すべてのPC鋼線Bにおいてほぼ同一の距離だけの伸び量となる。
こうして、長さの異なる複数本のPC鋼線Bであるにもかかわらず、ほぼ均一な緊張力を導入することが可能となる。
PC鋼線Bを孔外からジャッキDで強力に引くことによって、PC鋼線Bを把持しているクサビ片3と、その周囲のクサビ座筒が2孔口側に移動する。
この移動によってクサビ座筒2がストッパリング4の位置よりも孔口側へ移動すると、ストッパリング4がクサビ座筒2の孔底側の面、すなわち係合段24に係合する。
この状態でアンカーとして、擁壁の支持や法枠の支持といった、本来の機能を達成することができる。
アンカーとしての用途が終了したら、PC鋼線Bを引きぬく。
その場合に本定着具では、PC鋼線Bに対して外部の露出端から孔底側への押し込み力を与える。
あるいはPC鋼線Bの露出端をハンマーなどで叩いて孔底側への軽い衝撃と移動を与える。
するとPC鋼線Bを把持しているクサビ片群3が孔底側へ押し戻され
る。
しかしクサビ座筒2は、その孔底側の係止段がストッパリング4によって移動が阻止されており、孔底側への移動ができない。
そのためにPC鋼線の周囲のクサビ片3だけが孔底側へ移動し、係止筒6の孔底側の弾性リング64が円筒状の底栓13の内縁に係合する。
この係合によってクサビ片3の移動は拘束され、PC鋼線Bを再度、孔口側へ引き出しても、PC鋼線bとともに孔口側へ移動することがない。
その結果、PC鋼線Bは把持力が失われたクサビ片3から引き出すことが可能となり、PC鋼線Bは人力によっても容易に孔外へ引き出して除去することができる。
C:定着具
1:外筒
2:クサビ座筒
3:クサビ片
4:ストッパリング
5:調節ボルト
Claims (2)
- 複数本のPC鋼線の先端を、定着具を介して耐荷体に取付け、孔内に配置するアンカーの定着具であって、
定着具は、外筒と、クサビ座筒と、PC鋼線を把持するクサビ片とによって構成し、
外筒の孔底側は閉塞し、
外筒の孔口側にはPC鋼線挿入孔を開口し、
外筒の孔底側には、調整ボルトを外筒内へ出入り自在に取り付け、
クサビ座筒は外筒の内部に摺動自在に収納した筒体であり、
クサビ片は、中空の円錐台を軸方向に複数に分割した部材であり、クサビ座筒の内部の貫通孔に収納してあり、
クサビ座筒内の貫通孔は、孔口側の内径を小さくした円錐筒として形成し、
クサビ片群によって、PC鋼線の端部を把持する構成であり、
外筒の孔底側の調節ボルトの先端が、クサビ座筒の孔底側への移動を阻止するように構成した、
アンカーの定着具。
- 複数本のPC鋼線の先端を、定着具を介して耐荷体に取付け、孔内に配置するアンカーの定着具であって、
定着具は、外筒と、クサビ座筒と、PC鋼線を把持するクサビ片とによって構成し、
外筒の孔底側は閉塞し、
外筒の孔口側にはPC鋼線挿入孔を開口し、
外筒の孔底側には、調整ボルトを外筒内へ出入り自在に取り付け、
外筒の内側に刻設した溝内にはストッパリングを収納し、
クサビ座筒は外筒の内部に摺動自在に収納した筒体であり、
クサビ片は、中空の円錐台を軸方向に複数に分割した部材であり、クサビ座筒の内部に収納してあり、
クサビ座筒の一端は、孔口側の内径を小さくした円錐筒として形成し
クサビ片群によって、PC鋼線の端部を把持する構成であり、
外筒の孔底側の調節ボルトの先端が、クサビ座筒の孔底側への移動を阻止するように構成し、
かつPC鋼線を緊張した際にクサビ座筒が孔口側へ移動することによって、
ストッパリングが外筒の内側へ突出して、クサビ座筒の孔底側への移動を阻止するように構成した、
アンカーの定着具。
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